説明

熱可塑性ポリイミド組成物、それを含む接着剤、積層体、及びデバイス

【課題】高い耐熱性と、良好な成膜性とを両立し得る熱可塑性ポリイミド組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】DMA法により測定されるガラス転移温度が100℃以上である熱可塑性ポリイミドAと、DMA法により測定されるガラス転移温度が前記熱可塑性ポリイミドAより100℃以上低い熱可塑性ポリイミドBと、を含む熱可塑性ポリイミド組成物であって、DMA法により測定されるポリイミドに由来するガラス転移温度が23℃〜260℃の範囲内で1つしか観測されず、かつ前記熱可塑性ポリイミドA100重量部に対し、前記熱可塑性ポリイミドBが1〜50重量部含まれる、熱可塑性ポリイミド組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリイミド組成物、それを含む接着剤、積層体、及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、優れた耐熱性、機械的特性、電気的特性、耐薬品性等を有し、電気・電子工業分野、機械工業分野、宇宙航空機器等の各種分野において広く用いられている。このポリイミドのフィルムを得る方法として、極性溶媒にポリイミド樹脂を溶解させてポリイミドワニスとし、このポリイミドワニスを乾燥させて成膜することが一般的に行われている。
【0003】
しかしながら、耐熱性の高いポリイミドフィルムを得ること等を目的として、高いガラス転移温度を有するポリイミド樹脂を用いる場合、その高いガラス転移温度以上にポリイミドワニスを加熱して溶媒を除去する必要があり、作業効率等が悪いという問題があった。一方で、フィルム作製時の作業効率向上のため、ポリイミド樹脂のガラス転移温度を低下させると、ポリイミドワニスに含まれる溶媒を低い温度で除去できる反面、得られるフィルムの耐熱性が、そのガラス転移温度以上で低下するという問題がある。また例えば、ガラス転移温度を低下させるため、ポリイミド樹脂に脂肪族成分を導入すると、分解温度が大幅に低下するという問題もある。
【0004】
そこで、例えばポリイミド樹脂に用いる脂肪族ジアミンと芳香族ジアミンとの割合を調整することにより低温での成形性を良好にすることが提案されている(特許文献1参照)。また、異なるガラス転移温度を有するポリイミド樹脂を混合することにより、フィルムの乾燥温度を下げ、作製効率を向上させることも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−120785号公報
【特許文献2】特開2004−176046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ポリイミド樹脂中に脂肪族骨格を多く導入することとなり、得られるフィルムの耐熱性が低下する。またフィルム化のためには、メインポリマーのガラス転移温度より高い温度で乾燥・成形を行う必要があり、必然的に高い温度で長時間加熱する必要があるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、樹脂組成物についてDMA法によりガラス転移温度を測定した場合、各ポリイミド樹脂由来のガラス転移温度が確認される。したがって、低温側のポリイミド樹脂由来のガラス転移温度以上で、樹脂組成物の粘弾性が低下し、耐熱性が低下するという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高い耐熱性と、良好な成膜性とを両立し得る熱可塑性ポリイミド組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したように、熱可塑性ポリイミドフィルムの耐熱性、及びフィルム作製時の成膜性には、ポリイミド樹脂のガラス転移温度が重要である。本発明者らは、高いガラス転移温度を有するポリイミド樹脂と、このポリイミド樹脂と相溶性の良い、低いガラス転移温度を有するポリイミド樹脂とを所定の割合で混合することで、ガラス転移温度が1つのみ観測される混合樹脂組成物を得た。またこのガラス転移温度は比較的高い温度であるため、得られるポリイミドフィルムの耐熱性を良好なものとすることができる。また、この樹脂組成物は、上記ガラス転移温度以下の温度で良好にフィルムが作製可能であること等も見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明は、以下の熱可塑性ポリイミド組成物、これを含む接着剤、積層体、及びデバイスに関する。
【0011】
[1]DMA法により測定されるガラス転移温度が100℃以上である熱可塑性ポリイミドAと、DMA法により測定されるガラス転移温度が前記熱可塑性ポリイミドAより100℃以上低い熱可塑性ポリイミドBとを含む熱可塑性ポリイミド組成物であって、DMA法により測定されるポリイミドに由来するガラス転移温度が23℃〜260℃の範囲内で1つしか観測されず、かつ前記熱可塑性ポリイミドA100重量部に対し、前記熱可塑性ポリイミドBが1〜50重量部含まれる、熱可塑性ポリイミド組成物。
【0012】
[2]前記熱可塑性ポリイミドA及び前記熱可塑性ポリイミドBが、いずれも有機溶媒に可溶である、[1]に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
[3]前記熱可塑性ポリイミドAの主鎖が、芳香環と、前記芳香環同士を結合するエーテル結合、炭化水素鎖結合、スルホン結合、及び直接結合からなる群から選ばれる1種類以上の結合とを有する、[1]または[2]に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【0013】
[4]前記熱可塑性ポリイミドAは、下記一般式(1A)または(2A)で表されるジアミンに由来する構造を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化1】

(一般式(1A)中、nは1〜20の整数を表す)
【化2】

(一般式(2A)中、n、m、lはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す)
【0014】
[5]前記熱可塑性ポリイミドAが、前記一般式(1A)または(2A)で表されるジアミン成分と、下記一般式(3A)または(4A)で表される一種以上の酸二無水物からなる酸成分とを、前記ジアミン成分のモル量(D)及び前記酸成分のモル量(E)が、0.5≦(D)/(E)≦2の関係を満たすように重縮合して得られた[4]に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化3】

(一般式(3A)中、Rは、単結合、エーテル結合、カルボニル基、スルホン基のいずれかを表す)
【化4】

【0015】
[6]前記熱可塑性ポリイミドBは、DMA法により測定されるガラス転移温度が−60〜180℃である、[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
[7]前記熱可塑性ポリイミドBが、下記一般式(1B−1)〜(1B−3)のいずれかで表される芳香族ジアミン(a)、下記一般式(2B)で表されるシリコーンジアミン(b)および下記一般式(3B)で表される脂肪族ジアミン(c)を含むジアミン成分と、下記一般式(4B)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)を含む酸無水物成分と、を縮合させて得られるポリイミドである[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化5】

(一般式(1B−1)中、nは1〜20の整数を表す)
【化6】

(一般式(1B−2)中、n、m、lはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す)
【化7】

【化8】

(一般式(2B)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5の2価の脂肪族基または炭素数6以上の2価の芳香族基を表し、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5の1価の脂肪族基または炭素数6以上の1価の芳香族基を表し、mは1以上の整数を表す)
【化9】

(一般式(3B)中、R、Rは、それぞれ独立に、カルボニル基、オキシカルボニル基、炭素数6以上の芳香族基および炭素数1以上の脂肪族基からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む有機基を表す。Xは−O−、−S−、−NH−、−ONH−、または−OS−を表す。lは1〜50の整数を表し、nは1以上の整数を表す)
【化10】

(一般式(4B)中、Rは、単結合、−O−またはカルボニル基を表す)
【0016】
[8]前記芳香族ジアミン(a)が下記一般式(1B−11)で表され、前記脂肪族ジアミン(c)が下記一般式(3B−1)で表され、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)が下記一般式(4B−1)で表される、[7]に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化11】

(一般式(1B−11)中、nは1〜20の整数を表す)
【化12】

(一般式(3B−1)中、R、Rは、それぞれ独立に、カルボニル基、オキシカルボニル基、炭素数6以上の芳香族基および炭素数1以上の脂肪族基からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む有機基を表す。lは1〜50の整数を表し、nは1以上の整数を表す)
【化13】

(一般式(4B−1)中、Rは、単結合、−O−またはカルボニル基を表す)
【0017】
[9]前記脂肪族ジアミン(c)が、下記一般式(3B−11)で表されるジアミン、または下記一般式(3B−12)で表わされるジアミンである、[7]または[8]に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化14】

(一般式(3B−11)中、oは、1〜50の整数を表す)
【化15】

(一般式(3B−12)中、p、qおよびrは、それぞれ独立に0〜10の整数を表す)
【0018】
[10]前記熱可塑性ポリイミドBは、前記シリコーンジアミン(b)と、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とから得られるイミドブロックb1と、前記イミドブロックb1の両端に導入された、前記芳香族ジアミン(a)、前記脂肪族ジアミン(c)および前記芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)から得られるイミドブロックb2と、を含むブロック共重合体である、[7]〜[9]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
[11]前記熱可塑性ポリイミドBは、前記シリコーンジアミン(b)と、1モルの前記シリコーンジアミン(b)に対して1モル超の前記芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とを重縮合させてオリゴマーを得るステップと、前記オリゴマーに、前記芳香族ジアミン(a)と前記脂肪族ジアミン(c)とをさらに重縮合させるステップとを経て得られる、[7]〜[10]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【0019】
[12]前記熱可塑性ポリイミドBを構成する前記ジアミン成分と前記酸無水物成分との合計モル数に対する、前記芳香族ジアミン(a)及び前記シリコーンジアミン(b)の合計モル数の比が0.01〜0.6である[7]〜[11]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
[13]前記熱可塑性ポリイミドBは、DMA法により測定されるガラス転移温度が40〜150℃であり、かつ熱分解温度が350℃以上である、[1]〜[12]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
[14]無機フィラーをさらに含む、[1]〜[13]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
[15]エポキシ化合物、アクリレート化合物、イソシアネート化合物、マレイミド化合物およびナジイミド化合物からなる群より選ばれる一種類以上の化合物をさらに含む、[1]〜[14]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【0020】
[16][1]〜[15]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物を含むポリイミドワニスであって、前記ポリイミドワニス100重量部に対して、熱可塑性ポリイミド組成物の固形分濃度が1重量部以上50重量部未満の範囲である、ポリイミドワニス。
[17][1]〜[15]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物を含む、接着剤。
[18]基材と、前記基材上に配置される、[1]〜[15]のいずれかに記載の熱可塑性ポリイミド組成物からなる樹脂層と、を有する、積層体。
[19]基材と、前記基材上に配置される樹脂層と、を有し、前記樹脂層は、前記基材上に塗布された[16]に記載のポリイミドワニスからなる塗布層を、190℃以下の温度で乾燥させて形成された、積層体。
【0021】
[20]DMA法により測定される前記熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度が150〜220℃であり、前記基材は、シリコン、または常温における弾性率が1GPa以上、かつガラス転移温度が240〜440℃のポリイミドである、[18]に記載の積層体。
[21]半導体素子と、前記半導体素子の表面に配置される、[1]〜[15]のいずれかに記載の熱可塑性熱可塑性ポリイミド組成物を含む樹脂層と、を有する、デバイス。
【発明の効果】
【0022】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、高いガラス転移温度を有する熱可塑性ポリイミドと、低いガラス転移温度を有する熱可塑性ポリイミドとを含有するにも関わらず、1つのガラス転移温度のみ観測される。観測されるガラス転移温度は、比較的高いガラス転移温度を有するものとでき、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は耐熱性に優れる。また本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、観測されるガラス転移温度以下でも成膜性が良好である。すなわち、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、低温での良好な成膜性と、良好な耐熱性とを併せ持つ。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のデバイスの一例を示す側面図である。
【図2】本発明のデバイスの他の例を示す側面図である。
【図3】本発明のデバイスの他の例を示す側面図である。
【図4】ボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージの一例を示す模式図である。
【図5】チップ・オン・フィルム(COF)パッケージの一例を示す模式図である。
【図6】ウェハ レベル チップ・サイズ・パッケージ(WL−CSP)の一例を示す模式図である。
【図7】実施例1における、貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接(tanδ)と温度との関係を示すグラフである。
【図8】実施例2における、貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接(tanδ)と温度との関係を示すグラフである。
【図9】実施例3における、貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接(tanδ)と温度との関係を示すグラフである。
【図10】実施例4における、貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接(tanδ)と温度との関係を示すグラフである。
【図11】比較例1における、貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接(tanδ)と温度との関係を示すグラフである。
【図12】比較例2における、貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接(tanδ)と温度との関係を示すグラフである。
【図13】比較例3における、貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接(tanδ)と温度との関係を示すグラフである。
【図14】比較例4における、貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接(tanδ)と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.熱可塑性ポリイミド組成物
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、DMA法により測定されるガラス転移温度が100℃以上異なるポリイミドを少なくとも2種含む組成物である。より具体的には、DMA法により測定されるガラス転移温度が100℃以上である熱可塑性ポリイミドAと、DMA法により測定されるガラス転移温度が前記熱可塑性ポリイミドAより100℃以上低い熱可塑性ポリイミドBとを含む熱可塑性ポリイミド組成物である。
【0025】
本発明でいうガラス転移温度は、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線におけるピークを示す温度から求められる。具体的には、熱可塑性ポリイミド組成物の試験片(厚さ:60μm程度)について固体粘弾性の温度分布測定(引張モード)を行い、貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’とを測定する。この貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’とから損失正接(tanδ=E’’/E)を求め、温度と損失正接(tanδ)とのグラフを作成する。このグラフにおいて、ピークを示す温度をガラス転移温度として求めることができる。
【0026】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、熱可塑性ポリイミドA100重量部に対し、熱可塑性ポリイミドBを1〜50重量部含み、好ましくは1〜20重量部含む。熱可塑性ポリイミドAと熱可塑性ポリイミドBとの含有比を上記範囲とすると、熱可塑性ポリイミド組成物の粘弾性の変化が熱可塑性ポリイミドAに大きく依存し、DMA法により測定される熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度が、熱可塑性ポリイミドAに由来するガラス転移温度のみとなる、と推察される。なお、熱可塑性ポリイミド組成物のDMA法により測定される、ポリイミドに由来するガラス転移温度は、23℃〜260℃の範囲内で1つであり、より好ましくは150℃〜220℃の範囲内で1つである。この熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度は、通常、熱可塑性ポリイミドAのガラス転移温度以下、かつ熱可塑性ポリイミドBのガラス転移温度以上の温度となる。
【0027】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、熱可塑性ポリイミドBのガラス転移温度以上、熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度未満の範囲で成膜性が良好である。これは、熱可塑性ポリイミドBのガラス転移温度以上に、熱可塑性ポリイミド組成物を加熱すると、熱可塑性ポリイミドBの粘弾性が、熱可塑性ポリイミド組成物全体の粘弾性を変化させるまでは変化しないものの、ポリイミドワニスに含まれる溶剤を容易に除去できるなど熱可塑性ポリイミド組成物の成膜性を向上させる程度には変化することに拠ると推察される。成膜性が向上するメカニズムは明らかではないが、熱可塑性ポリイミド組成物中に微分散した熱可塑性ポリイミドBが軟化することで、ポリイミドワニス中の溶剤が、前記熱可塑性ポリイミドBのネットワークを経由して、膜の外部に放出されるからだと推測される。
【0028】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物の熱分解温度は、400〜575℃であることが好ましい。上記下限値未満では熱分解しないものとすることにより、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を種々の用途に用いることが可能となる。
【0029】
熱可塑性ポリイミド組成物の熱分解温度は、島津製作所社製の熱重量測定装置(製品名:TGA−51)により測定されうる。具体的には、熱可塑性ポリイミド組成物からなるフィルムサンプルを粉砕して、島津製作所社製の製品名:TGA−51付属の石英ルツボに入れた後、窒素雰囲気下にて、常温から800℃までの熱分解挙動(重量減少)を測定する。そして、初期のサンプル重量の5重量%が減少したときの加熱温度を、(5%重量減少時の)熱分解温度として求めることができる。
【0030】
また、熱可塑性ポリイミドBに含まれるシリル基の量が過剰である場合、または熱可塑性ポリイミドA及び熱可塑性ポリイミドBに含まれるエーテル基量に対して、熱可塑性ポリイミドBに含まれるシリル基の量が多い場合、熱可塑性ポリイミドAと熱可塑性ポリイミドBとが大きく相分離する傾向がある。これらの相分離が進行すると、熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度が2つ以上観測されやすい。そこで、熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度を1つとするためには、熱可塑性ポリイミドBに含まれるシリル基の量、及び熱可塑性ポリイミドA及び熱可塑性ポリイミドBに含まれるエーテル基量に対する、熱可塑性ポリイミドB中のシリル基量、をそれぞれ調整することが好ましい。
【0031】
また、熱可塑性ポリイミドA及び熱可塑性ポリイミドBは、いずれも溶媒に可溶であることが好ましい。溶媒に不溶である場合には、熱可塑性ポリイミド組成物を溶媒に溶解させ、ポリイミドワニスとすることが困難となる。
【0032】
また本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、必要に応じてその他の任意の成分(例えば無機フィラー、溶媒等)を含むことができる。
【0033】
(1)熱可塑性ポリイミドA
本発明の熱可塑性ポリイミドにおける熱可塑性ポリイミドAは、DMA法により測定されるガラス転移温度が100℃以上であり、好ましくは150〜220℃である。熱可塑性ポリイミドAのガラス転移温度が上記範囲であることにより、熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度が好適な範囲となり、耐熱性に優れるものとし得る。また熱可塑性ポリイミドAの熱分解温度は500℃以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の熱可塑性ポリイミドAは、上記ガラス転移温度を有する熱可塑性ポリイミドであれば特にその種類に制限はないが、芳香環を主鎖に有するポリイミド(以下、「芳香族ポリイミド」ともいう)であることが好ましく、より好ましくは、芳香環を、エーテル結合、炭化水素鎖結合、スルホン結合、及び直接結合からなる群より選ばれるいずれかで結合した骨格を有することが好ましい。
【0035】
芳香族ポリイミドの具体的な構造としては、芳香環を有する芳香族ジアミン成分と、芳香環を有する酸二無水物成分からなる酸成分とを反応させて得られるポリイミドが好ましい。
【0036】
芳香族ジアミン成分としては、下記の一般式(1A)または(2A)で表されるジアミンが挙げられる。
【化16】

一般式(1A)中、nは1〜20の整数、好ましくは1〜13の整数、より好ましくは1〜9の整数を表す。なお、一般式(1A)において、ベンゼン環がそれぞれ独立に置換基(例えば炭素数1〜10のアルキル基)を有していてもよい。
【0037】
【化17】

一般式(2A)中、n、m、lはそれぞれ独立に0〜20の整数である。nは好ましくは1〜9であり、m及びlは、好ましくは0〜9である。なお、一般式(2A)において、ベンゼン環がそれぞれ独立に置換基(例えば炭素数1〜10のアルキル基)を有していてもよい。
【0038】
上記一般式(1A)及び(2A)で表されるジアミンのうち、一般式(1A)で表されるジアミンがより好ましい。
上記一般式(1A)で表わされるジアミンは、好ましくは、下記一般式(1A−2)で表わされる芳香族ジアミンである。
【化18】

一般式(1A−2)中、nは1〜20の整数、好ましくは1〜13の整数、より好ましくは1〜9の整数を表す。なお、一般式(1A−2)において、ベンゼン環がそれぞれ独立に置換基(例えば炭素数1〜10のアルキル基)を有していてもよい。
【0039】
反応させるジアミン成分の一部を一般式(1A−2)で表わされる芳香族ジアミンとすることで、得られるポリイミドの耐熱性をより高めることができ、かつ可撓性も高めることができる。したがって、可撓性ポリイミド組成物の耐熱性を向上させることができる。
【0040】
一般式(1A−2)で示されるジアミンの例には、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,3−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−4−メチルベンゼン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2−エチルベンゼン、1,3−ビス(3−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)−5−sec−ブチルベンゼン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,5−ジメチルベンゼン、1,3−ビス(4−(2−アミノ−6−メチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(2−アミノ−6−エチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)−4−メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(4−アミノフェノキシ)−4−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,4−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,3−ジメチルベンゼン、1,4−ビス(3−(2−アミノ−3−プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−4−メチルベンゼン、1,2−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−3−n−ブチルベンゼン、1,2−ビス(3−(2−アミノ−3−プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン等が含まれる。これらは、単独で用いても、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
反応させるジアミン成分には、前記一般式(1A)および(2A)で表されるジアミン以外の他のジアミンが含まれてもよい。他のジアミンの例には、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,12−ドデカンジアミンおよびノルボルナンジアミンなどが含まれる。
【0042】
ジアミン成分と反応させる酸成分は、特に制限されないが、耐熱性の観点から、好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、より好ましくは下記一般式(3A)または(4A)で表わされる一種以上の酸二無水物を用いることが好ましい。
【0043】
【化19】

一般式(3A)中、Rは、単結合、エーテル結合、カルボニル基、スルホニル基のいずれかを表す。
【化20】

【0044】
このような酸二無水物を構成成分とするポリイミドは、柔軟性を極端に損なうことなく、良好な耐熱性が得られやすい、なお、一般式(3A)及び(4A)で表わされるテトラカルボン酸二無水物に含まれるベンゼン環は、置換基(例えばフッ素原子等)を有してもよい。
【0045】
一般式(3A)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が含まれる。
【0046】
また一般式(4A)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、3−フルオロピロメリット酸二無水物、3,6−ジフルオロピロメリット酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物等が含まれる。
【0047】
ジアミン成分と反応させる酸成分には、前記一般式(3A)または(4A)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の他のテトラカルボン酸二無水物が含まれてもよい。他のテトラカルボン酸二無水物は、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、柔軟性の観点からは脂肪族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0048】
他のテトラカルボン酸二無水物の例には、オキシジフタル酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’”,4,4’”−クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3””,4,4””−キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチニリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、ジフルオロメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2−テトラフルオロ−1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロ−1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン二無水物、ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタンニ無水物、2,2−ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1−エチニリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、3,3’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、およびエチレングリコールビストリメリテート二無水物などが含まれる。
【0049】
熱可塑性ポリイミドAは、前記ジアミン成分の総モル量(D)及び前記酸成分の総モル量(E)が、0.5≦(D)/(E)≦2の関係を満たすように重縮合することが好ましく、より好ましくは0.9≦(D)/(E)≦1.1を満たすように重縮合することが好ましい。このような範囲で重縮合することにより、熱可塑性ポリイミドAの分子量(重合度)を適度に調整することができる。
【0050】
熱可塑性ポリイミドAの合成方法は特に制限はなく、ジアミン成分と酸成分とを所定の条件で混合して攪拌することにより重縮合させて得ることができる。
【0051】
(2)熱可塑性ポリイミドB
本発明の熱可塑性ポリイミドにおける熱可塑性ポリイミドBは、DMA法により測定されるガラス転移温度が熱可塑性ポリイミドAより100℃以上低い熱可塑性ポリイミドである。熱可塑性ポリイミドBの好ましいガラス転移温度は、好ましくは−60〜180℃であり、より好ましくは、40〜150℃、さらに好ましくは50〜140℃である。また熱分解温度が350℃以上であることが好ましい。
【0052】
本発明の熱可塑性ポリイミドBは、上記ガラス転移温度を有する熱可塑性ポリイミドであれば特にその種類に制限はないが、特定の芳香族ジアミン(a)、シリコーンジアミン(b)および脂肪族ジアミン(c)を含むジアミン成分と、特定の芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)を含む酸無水物成分とを反応させて得られるポリイミドであることが好ましい。
【0053】
反応させるジアミン成分に含まれる芳香族ジアミン(a)は、好ましくはケト基やエーテル結合等を含む芳香族ジアミンであり、より好ましくは一般式(1B−1)〜(1B−3)のいずれかで表される芳香族ジアミンである。
【化21】

【化22】

一般式(1B−2)中、n、m、lはそれぞれ独立に0〜20の整数である。nは好ましくは1〜9であり、m及びlは、好ましくは0〜9である。なお、一般式(1B−2)において、ベンゼン環がそれぞれ独立に置換基(例えば炭素数1〜10のアルキル基)を有していてもよい。
【化23】

【0054】
一般式(1B−1)において、nは1〜20の整数を、好ましくは1〜13の整数を、より好ましくは1〜9の整数を表す。なお、一般式(1B−1)〜(1B−3)において、ベンゼン環が、それぞれ独立に置換基(例えば炭素数1〜10のアルキル基)を有してもよい。
【0055】
反応させるジアミン成分の一部を、一般式(1B−1)〜(1B−3)のいずれかで示される芳香族ジアミンとすることで、得られるポリイミドの耐熱性を高め、かつ、可撓性も高めることができる。そのため、熱可塑性ポリイミドBを含む熱可塑性ポリイミド組成物の耐熱性および成膜性が高まる。
【0056】
芳香族ジアミン(a)は、さらに好ましくは一般式(1B−11)で表される芳香族ジアミンである。
【化24】

【0057】
一般式(1B−11)において、nは1〜20の整数を、好ましくは1〜13の整数を、より好ましくは1〜9の整数を表す。一般式(1B−11)において、ベンゼン環が、それぞれ独立に置換基(例えば炭素数1〜10のアルキル基)を有してもよい。
【0058】
反応させるジアミン成分の一部を、一般式(1B−11)で示される芳香族ジアミンとすることで、得られるポリイミドの耐熱性をより高めることができ、かつ、可撓性もさらに高めることができる。そのため、熱可塑性ポリイミドBを含む熱可塑性ポリイミド組成物の耐熱性および成膜性がさらに高まる。
【0059】
一般式(1B−11)で示されるジアミンとしては、熱可塑性ポリイミドAに用いられる一般式(1A−2)で示されるジアミンで例示したものと同様とすることができる。これらは、単独で用いても、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
反応させるジアミン成分に含まれるシリコーンジアミン(b)は、好ましくは一般式(2B)で表されるシリコーンジアミンである。
【化25】

【0061】
一般式(2B)において、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜5の2価の脂肪族基または炭素数6以上の2価の芳香族基を表す。炭素数1〜5の2価の脂肪族基の例には、炭素数1〜5のアルキレン基等が含まれ、炭素数6以上の2価の芳香族基の例には、フェニレン基、ナフチレン基およびアントラセニレン基等が含まれる。
【0062】
およびRは、それぞれ独立に炭素数1〜5の1価の脂肪族基または炭素数6以上の1価の芳香族基を表す。RおよびRの炭素数1〜5の1価の脂肪族基または炭素数6以上の1価の芳香族基は、RおよびRの2価の脂肪族基または炭素数6以上の2価の芳香族基のそれぞれを1価にしたものであってよい。
【0063】
一般式(2B)において、mは、1以上の整数を、好ましくは1〜8の整数を表す。副生成物として混入することが多い環状シロキサンの揮発を抑制する点では、mが1であることが好ましい。
【0064】
ジアミンの一部を、一般式(2B)で示されるジアミンとすることで、熱可塑性ポリイミドBを含む熱可塑性ポリイミド組成物の低温成膜性を十分に高めることができる。
【0065】
一般式(2B)で表されるジアミンの例には、α,ω−ビスアミノポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビス(10−アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリ(ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン)コポリマー等が含まれる。
【0066】
反応させるジアミン成分に含まれる脂肪族ジアミン(c)は、好ましくは一般式(3B)で表される脂肪族ジアミンである。
【化26】

【0067】
一般式(3B)において、RおよびRは、それぞれ独立に、カルボニル基、オキシカルボニル基、炭素数6以上の芳香族基および炭素数1以上の脂肪族基からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む有機基を表す。Xは−O−、−S−、−NH−、−ONH−、または−OS−を表す。lは、1〜50の整数を、好ましくは1〜20の整数を表す。nは、1以上の整数を表し、好ましくは2〜10の整数を表す。
【0068】
炭素数1以上の脂肪族基を含む有機基の例には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基等が含まれ、炭素数6以上の芳香族基を含む有機基の例には、フェニレン基等が含まれる。耐熱性を得る点では、芳香族基を含む有機基であることが好ましく、柔軟性・可撓性を得る点では、脂肪族基を含む有機基であることが好ましい。
【0069】
一般式(3B)で表される脂肪族ジアミンは、好ましくは一般式(3B−1)で表されるジアミンが好ましい。一般式(3B−1)で表される脂肪族ジアミンは、より好ましくは一般式(3B−11)で表されるジアミンであるか、一般式(3B−12)で表されるジアミンである。
【化27】

【0070】
【化28】

(一般式(3B−11)中、oは、1〜50の整数を表す)
【化29】

(一般式(3B−12)中、p、qおよびrは、それぞれ独立に0〜10の整数を表す)
【0071】
一般式(3B−1)において、RおよびRは、それぞれ独立に、カルボニル基、オキシカルボニル基、炭素数6以上の芳香族基および炭素数1以上の脂肪族基からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む有機基を表す。lは、1〜50の整数を、好ましくは1〜20の整数を表す。nは、1以上の整数を表し、好ましくは2〜10の整数を表す。
【0072】
一般式(3B−11)において、oは1〜50の整数を、好ましくは10〜20の整数を表す。一般式(3B−11)における繰り返し単位は、ブロックとして導入されても、ランダムに導入されてもよい。
【0073】
一般式(3B−12)において、p、qおよびrは、それぞれ独立に0〜10の整数を表わす。一般式(3B−12)における各繰り返し単位は、ブロックとして導入されても、ランダムに導入されてもよい。これらの一般式(3B)で示される脂肪族ジアミンは、柔軟性が高いため、少量でも熱可塑性ポリイミド組成物に良好な成膜性が発現する。
【0074】
一般式(2B)で示されるシリコーンジアミンを多く含むポリイミドは、良好な低温成膜性を発現するものの、環状シロキサンの揮発量が増えるため好ましくない。これに対して、一般式(2B)で示されるシリコーンジアミンに加えて、一般式(3B)で示される脂肪族ジアミンを用いることで、一般式(2B)で示されるシリコーンジアミンを多く含まないポリイミドでも、良好な低温成膜性が得られる。
【0075】
反応させるジアミン成分には、前記一般式(1B−1)〜(1B−3)、(2B)及び(3B)で表されるジアミン以外の他のジアミンが含まれてもよい。他のジアミンとしては、熱可塑性ポリイミドAにおいて、一般式(1A)および(2A)で表されるジアミン以外の他のジアミンとして例示したものが挙げられる。これらは、単独で用いても、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
ジアミン成分と反応させる酸無水物成分は、特に制限されないが、耐熱性の観点から、好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、より好ましくは一般式(4B)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましくは一般式(4B−1)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物である。
【化30】

【化31】

【0077】
一般式(4B)および(4B−1)において、Rは、単結合、−O−またはカルボニル基を表す。このような酸二無水物を構成成分とするポリイミドは、柔軟性を極端に損なうことなく、良好な耐熱性が得られやすい。なお、一般式(4B)および(4B−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物に含まれるベンゼン環は、置換基(例えばフッ素原子等)を有してもよい。
【0078】
一般式(4B)および(4B−1)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が含まれる。
【0079】
反応させる酸無水物成分には、前記一般式(4B)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の他のテトラカルボン酸二無水物が含まれてもよい。他のテトラカルボン酸二無水物は、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、柔軟性の観点からは脂肪族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0080】
他のテトラカルボン酸二無水物としては、上述の熱可塑性ポリイミドAにおいて、一般式(4A)で表されるテトラカルボン酸二無水物、もしくは一般式(3A)または(4A)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の他のテトラカルボン酸二無水物として例示したものが挙げられる。
【0081】
熱可塑性ポリイミドBでは、前記ジアミン成分の総モル量(F)及び前記酸成分の総モル量(G)のモル比(G)/(F)=0.8〜1.2の範囲であることが好ましい。一定以上の重合度の熱可塑性ポリイミドBを得るためである。
【0082】
熱可塑性ポリイミドBの耐熱性と成膜性のバランスの点では、反応させる全ジアミン成分と全酸無水物成分との合計に対する、芳香族ジアミン(a)とシリコーンジアミン(b)との合計モル比が、0.01〜0.6であることが好ましく、0.1〜0.3であることがより好ましい。全ジアミン成分及び全酸無水物成分の合計に対する、芳香族ジアミン(a)及びシリコーンジアミン(b)の合計のモル比が大き過ぎると、ワニス安定性が低下する恐れがある。また、反応させる芳香族ジアミン(a)に対する、シリコーンジアミン(b)及び脂肪族ジアミン(c)の合計のモル比は0.25〜3.0であることが好ましく、0.3〜2.5であることがより好ましい。芳香族ジアミン(a)に対する、シリコーンジアミン(b)及び脂肪族ジアミン(c)の合計割合が0.25未満であると、熱可塑性ポリイミドBを含む熱可塑性ポリイミド組成物の低温成膜性が得られにくく、3.0を超えると、熱可塑性ポリイミド組成物の耐熱性が低下しやすくなるからである。
【0083】
環状シロキサンの揮発を抑制しつつ、耐熱性を得る点では、シリコーンジアミン(b)の脂肪族ジアミン(c)に対するモル比が、0.1〜1.0であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましい。シリコーンジアミン(b)の、脂肪族ジアミン(c)に対するモル比が0.1未満であると、耐熱性(熱分解温度)が低くなりやすく、1.0を超えると、環状シロキサンの揮発が増えるからである。つまり、シリコーンジアミン(b)は、脂肪族ジアミン(c)よりも分解し難く、耐熱性が高い一方、多く含まれすぎると環状シロキサンや未反応のシリコーンジアミンが揮発する。このため、シリコーンジアミン(b)の含有率は一定以下であることが好ましい。
【0084】
反応させる全ジアミン成分と全酸無水物成分の合計に対する、シリコーンジアミン(b)のモル比は、0.01〜0.28であることが好ましく、0.04〜0.15であることがより好ましい。全ジアミン成分及び全酸無水物成分の合計に対する、シリコーンジアミン(b)のモル比が小さすぎると、熱可塑性ポリイミド組成物をシリコン基板上に用いた際、シリコン基板に対する密着性が低下する恐れがある。一方、全ジアミン成分及び全酸無水物成分の合計に対する、シリコーンジアミン(b)のモル比が大きすぎると、ワニス安定性が低下する恐れがある。
【0085】
また、反応させる全ジアミン成分に含まれる、シリコーンジアミン(b)のモル比は、0.06〜0.28であることが好ましく、0.1〜0.2であることがより好ましい。全ジアミン成分に含まれる、シリコーンジアミン(b)のモル比が小さすぎると、熱可塑性ポリイミドBを含む熱可塑性ポリイミド組成物をシリコン基板上に用いた際、シリコン基板に対する密着性が低下する恐れがある。一方、全ジアミン成分に含まれる、シリコーンジアミン(b)のモル比が大きすぎると、熱可塑性ポリイミド組成物から得られるフィルムの透明性が低下する恐れがある。
【0086】
反応させる全ジアミン成分に対する、芳香族ジアミン(a)、シリコーンジアミン(b)および脂肪族ジアミン(c)の合計のモル比が、0.7以上、好ましくは0.9以上であり;かつ反応させる全酸無水物成分の合計に対する、芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)のモル比が0.7以上、好ましくは0.9以上である。これにより、熱可塑性ポリイミドBを含む熱可塑性ポリイミド組成物において、高い耐熱性と、優れた低温成膜性とが得られやすい。
【0087】
このようなジアミン成分と、酸無水物成分とを反応させて得られるポリイミドは、ランダム重合体であっても、ブロック重合体であってもよいが、好ましくはブロック重合体である。各ジアミン成分の特性が得られやすいからである。
【0088】
中でも、シリコーンジアミン(b)と芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とより得られるイミドブロックb1と、該イミドブロックb1の両端に導入された、シリコーンジアミン(b)以外のジアミン(芳香族ジアミン(a)および脂肪族ジアミン(c)等)と芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とより得られるイミドブロックb2と、を有するブロック共重合体が好ましい。このように、シリコーンジアミン(b)を用いて構成されたイミドブロックb1を、分子鎖の末端から離れた部位に閉じ込めることで、環状シロキサンを揮発させ難くし、ポリイミドの熱分解温度を高めることができる。また、シリコーンジアミン(b)の全部と酸無水物成分の一部との反応を、他のジアミンと酸無水物成分とを反応させる前に完結させておくことで、シリコーンジアミン(b)の未重合物を少なくすることができる。このため、シリコーンジアミン(b)の未重合物の揮発を少なくできる。
【0089】
このようなブロック共重合体の合成方法は、特に限定されないが、例えば、以下の1)や2)の方法が含まれる。
方法1):第1工程として、シリコーンジアミン(b)と、過剰量の芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とを反応させて、第1のイミドブロック(イミドブロックb1)を得る。得られた第1のイミドブロックを含む溶液に、第2工程として、さらにシリコーンジアミン(b)以外のジアミンを添加して、第1のイミドブロックの両端に、シリコーンジアミン(b)以外のジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とより得られる第2のイミドブロック(イミドブロックb2)を連結して、ブロック共重合体を得る。
【0090】
方法2):シリコーンジアミン(b)と、芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とを反応させて、第1のイミドブロック(イミドブロックb1)を含む溶液と;シリコーンジアミン(b)以外のジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とを反応させて、第2のイミドブロック(イミドブロックb2)を含む溶液とを、所定の溶媒中で別々に合成する。それらを所定の条件で混合して攪拌することによって、ブロック共重合体とする。
【0091】
前記方法1)の第1工程における、過剰量の芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)の添加量は、例えば1モルのシリコーンジアミン(b)に対して1モル超であればよい。
【0092】
(3)その他
熱可塑性ポリイミド組成物は、熱可塑性ポリイミドA及び熱可塑性ポリイミドB以外に、必要に応じて任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、例えばポリイミド樹脂以外の他の樹脂、表面改質剤等の添加剤、およびフィラー等とできる。
【0093】
ポリイミド以外の他の樹脂としては、特に制限されないが、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等のエポキシ化合物;カルボキシエチルアクリレート、プロピレングリコールアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレートおよび脂肪族エポキシアクリレート等のアクリレート化合物;メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびキシレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物;4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、m−フェニレンビスマレイミドおよびアミノフェノキシベンゼン−ビスマレイミド(APB−BMI)等のマレイミド化合物;およびアルケニル置換ナジイミド等のナジイミド化合物等が挙げられる。たとえば、熱可塑性ポリイミド組成物を接着性樹脂組成物として用いる場合に、接着性樹脂組成物に感光性を付与したい場合は、アクリレート化合物等の光硬化性樹脂や光硬化剤等を熱可塑性ポリイミドA及び熱可塑性ポリイミドBと共に含有させればよい。
【0094】
また熱可塑性ポリイミド組成物の耐熱性や熱伝導性を高めること等を目的としてフィラーを用いることができる。フィラーは、無機フィラーが好ましく用いられる。このような用途で用いられる無機フィラーとしては、電気絶縁性と高放熱性とを有する無機物質であれば、特に制限されない。その材質としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、ハイドロキシアパタイト、およびチタン酸バリウムなどが挙げられ、好ましくは窒化ホウ素などである。無機フィラーの、熱可塑性ポリイミド組成物における含有量は60体積%以下が好ましく、より好ましくは50体積%以下である。
【0095】
表面改質剤の例には、シランカップリング剤が含まれる。表面改質剤は、フィラーの表面を処理するために用いられてもよい。フィラーの表面改質を行うことにより、熱可塑性ポリイミドA及び熱可塑性ポリイミドBとの相溶性を高めることができ、フィラーの凝集や分散状態を制御することができる。
【0096】
(4)製造方法
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物の製造方法は特に制限はなく、例えば熱可塑性ポリイミドAと、熱可塑性ポリイミドBと、必要に応じてその他の成分とを混合して製造してもよい。
【0097】
また熱可塑性ポリイミドAを含むポリイミドワニスと、熱可塑性ポリイミドBを含むポリイミドワニスと、必要に応じてその他の成分とを攪拌機で混合して得てもよい。ポリイミドワニスを得る方法としては、溶媒中で、熱可塑性ポリイミドAもしくはBを構成する、ジアミン成分と酸無水物成分(酸成分)とを重合してポリアミック酸を得た後、脱水反応を行い、生成した水を系外に排出する方法とできる。
【0098】
(5)用途
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、上述したように、耐熱性が良好であり、さらに熱可塑性ポリイミド組成物の融点以下、すなわち比較的低い温度で成膜が可能である。したがって、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、後述するデバイスの接着材料(接着剤)、保護材料、および層間絶縁材料等や、電池用のバインダー、金属層表面の保護膜等、電気・電子工業分野、機械工業分野、宇宙航空機器等の各種分野において広く適用することが可能である。
【0099】
2.ポリイミドワニス
上述の熱可塑性ポリイミド組成物は、溶媒を含むポリイミドワニスとして用いることができる。ポリイミドワニスは、後述の接着剤として、もしくは各種積層体における樹脂膜の形成等に用いられる。
【0100】
ポリイミドワニス100重量部における熱可塑性ポリイミド組成物の固形分濃度は1重量部以上50重量部未満であることが好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。このような範囲とすることにより、ポリイミドワニスの塗工性が良好となる。
【0101】
ポリイミドワニスに用いる溶媒の種類は、上述の熱可塑性ポリイミドA及び熱可塑性ポリイミドBを溶解可能なものであれば特に限定されず、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホン、1,3,5−トリメチルベンゼンなどの他、これらの2種以上の混合溶媒、あるいはこれらの溶媒とベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゾニトリル、ジオキサン、シクロヘキサンなどとの混合溶媒などを用いうる。
【0102】
本発明のポリイミドワニスに含まれる上述の熱可塑性ポリイミド組成物は、比較的低温でのフィルム成膜性が良好である。したがって、ポリイミドワニスを塗布後、熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度以下の温度で乾燥させても、得られるフィルム表面の平坦性が良好となる。ポリイミドワニスの乾燥温度は、通常、熱可塑性ポリイミド組成物に含まれる熱可塑性ポリイミドBのガラス転移温度以上、熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度以下とすることができる。このような範囲とすることにより、効率よく熱可塑性ポリイミド組成物からなる層を形成可能であり、かつ安定して成膜を行うことが可能となる。
【0103】
3.接着剤
上記熱可塑性ポリイミド組成物は、接着剤に用いることも可能である。接着剤は、ワニス状であってもよく、またフィルム状であってもよい。ワニス状とする場合には、上述のポリイミドワニスと同様とすることができ、これを被接着物に塗布し、乾燥させて用いることができる。
【0104】
一方、フィルム状の接着剤とする場合には、上記ポリイミドワニスをフィルム状に成膜したフィルムとすることができる。フィルム状の接着剤の厚みは、用途にもよるが、例えば1〜200μm程度とすることができる。フィルム状の接着剤を用いる場合には、被接着物の間に挟み、熱圧着して用いられる。
【0105】
圧着の際の温度は、通常100〜280℃、好ましくは150〜230℃とする。このような範囲であれば熱可塑性ポリイミド組成物が熱分解することなく、十分な接着を行うことが可能である。
【0106】
4.積層体
本発明の積層体は、基材と、基材上に上記熱可塑性ポリイミド組成物からなる樹脂層を有するものとすることができる。この樹脂層の形成方法は特に制限はなく、例えば基材上に上述の熱可塑性ポリイミド組成物からなるフィルムを貼り合わせてもよく、また上述のポリイミドワニスを塗布し、190℃以下の温度で乾燥して形成することも可能である。
【0107】
ポリイミドワニスを塗布し、乾燥させて樹脂層を得る場合において、ポリイミドワニスの塗布方法は特に制限はなく、例えば例えば、ディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法、およびオフセット印刷法等とし得る。樹脂層の膜厚は、積層体の用途によって適宜選択されるが、例えば樹脂層を接着層等として用いる場合には、1〜100μm程度とできる。また樹脂層をデバイスの保護層や層間絶縁層等として用いる場合には、2〜200μm程度とできる。
【0108】
また、基材は用途に応じて適宜選択される。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、無機基材をはじめとする各種基材との接着性が良好である。したがって、基材として、シリコン、セラミックス、金属等を用いてもよい。また、基材として、常温における弾性率が1GPa以上、かつガラス転移温度が240〜440℃のポリイミドを用いることも可能である。このような基材を用いた積層体は、後述するデバイスに好適である。
【0109】
5.デバイス
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、前述の通り、良好な耐熱性と、低温成膜性とを有する。このため、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、デバイスの接着材料(接着剤)、保護材料、および層間絶縁材料等として好適である。
【0110】
本発明のデバイスは、例えば、半導体チップと、その少なくとも一方の面に配置された熱可塑性ポリイミド組成物層とを有するものとできる。熱可塑性ポリイミド組成物層は、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物から得られる層である。熱可塑性ポリイミド組成物層は、半導体チップの端子が形成される面(端子形成面)に配置されても、端子形成面とは異なる面に配置されてもよいが、端子形成面とは異なる面に配置されていることが好ましい。
【0111】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、例えば、一の半導体チップと、それに積層される他の半導体チップとを有するデバイスにおける、一の半導体チップと他の半導体チップとの接着;あるいは基板と、それに搭載される半導体チップとを有するデバイスにおける、基板と半導体チップとの接着などに好ましく用いられる。一つの半導体チップに積層される他の半導体チップは、例えば、基板に搭載された半導体チップとできる。また半導体チップが搭載される基板は、例えば半導体パッケージや回路基板等とし得る。
【0112】
半導体チップの例には、ダイオード、トランジスタおよび集積回路(IC)等が含まれ、パワー素子等も含まれる。
【0113】
図1は、本発明のデバイスの一例を示す側面図である。図1に示されるように、デバイス10は、半導体チップ12と、その端子形成面とは異なる面に配置された熱可塑性ポリイミド組成物層14と、を有する。そして、熱可塑性ポリイミド組成物層14を介して、基板16上に配置された他の半導体チップ12’などに積層される。半導体チップ12の端子12Aは、例えばワイヤボンディング等によりリードフレーム(不図示)等と接続される。
【0114】
これにより、半導体チップ12を、熱可塑性ポリイミド組成物層14を介して、基板16に実装された他の半導体チップ12’と積層固定できる。また、半導体チップ12および12’が、発熱の大きいパワー素子等であっても、熱可塑性ポリイミド組成物層14の耐熱性が高いため、良好な接着を維持できる。
【0115】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物層が無機フィラーをさらに含む場合は、良好な熱伝導性を有するため、例えば基板16の材料としても好ましく用いられうる。
【0116】
図2および図3は、本発明のデバイスの他の例を示す側面図である。図2に示されるデバイス10’は、熱可塑性ポリイミド組成物層14を、半導体チップ12の端子形成面のみに配置した以外は、図1と同様に構成されている。図3に示されるデバイス10”は、熱可塑性ポリイミド組成物層14を、半導体チップ12の端子形成面と、端子形成面とは異なる面の両面に配置した以外は、図1と同様に構成されている。図2および3において、基板26は、半導体チップ12の端子12Aが差し込まれる凹部26Aを有している。
【0117】
図2では、例えば半導体チップ12の端子形成面、または基板26の回路形成面を、熱可塑性ポリイミド組成物層14で保護しつつ、半導体チップ12と基板26とを接着させることができる。また図3では、半導体チップ12を、熱可塑性ポリイミド組成物層14を介して、(基板16に接合された)他の半導体チップ12’と積層固定させつつ、基板26とも、熱可塑性ポリイミド組成物層14を介して接着させることができる。この場合、半導体チップ12の端子形成面に配置された熱可塑性ポリイミド組成物層14の厚みは、端子12Aを露出させることができる程度であればよく、特に限定されない。
【0118】
このような熱可塑性ポリイミド組成物層が形成された半導体チップ(接着剤付き半導体チップ)は、(個片化する前の)シリコンウエハと、その少なくとも一方の面に形成した熱可塑性ポリイミド組成物層とを有する積層体を、個片化したものでもよいし;個片化された半導体チップに、熱可塑性ポリイミド組成物層を形成したものでもよい。熱可塑性ポリイミド組成物層は、ワニス状の熱可塑性ポリイミド組成物を、シリコンウエハまたは半導体チップに塗布した後、乾燥させて形成されてもよいし、フィルム状の熱可塑性ポリイミド組成物を、シリコンウエハまたは半導体チップと熱圧着させて形成されてもよい。
【0119】
ワニス状の熱可塑性ポリイミド組成物の塗布方法は、特に限定されず、例えば、ディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法、およびオフセット印刷法等でありうる。熱可塑性ポリイミド組成物の塗膜の乾燥温度は、半導体チップへの熱によるダメージを少なくする点から、できるだけ低い温度にすることが好ましく、約190℃以下、好ましくは150〜190℃程度とすることが好ましい。
【0120】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物層は、半導体チップと、他の半導体チップや基板等と比較的低温で良好に接着できる。また本発明の熱可塑性ポリイミド組成物層は、熱分解温度も高いため(耐熱性が高いため)、発熱の大きい半導体チップ等においても、環状シロキサンの揮発を抑制でき、それによる接点不良を抑制でき、さらに剥がれたりすることなく良好な接着性を維持できる。
【0121】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、その優れた成膜性と耐熱性を生かし、各種半導体パッケージのシール層またはアンダーフィル層を構成する材料としても好適に用いられる。図4は、ボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージの一例を示す模式図である。図4に示すように、BGAパッケージ70は、基板36の一方の面上に半導体チップ22が配置され、他方の面上に複数のバンプ17が形成されている。半導体チップ22の端子(図示せず)は、ワイヤー19によって基板36上のリード15に接続されている。そして、半導体チップ22の上面は、シール層24によって封止されている。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、このようなBGAパッケージ70のシール層24を構成するためのシール剤として用いることができる。
【0122】
図5は、チップ・オン・フィルム(COF)パッケージの一例を示す模式図である。図5に示すように、COFパッケージ80は、フィルム基板18の一方の面上に、バンプ27を介して半導体チップ32が配置されている。なお、バンプ27は、フィルム基板18上のリード25に接続されている。そして、半導体チップ32とフィルム基板18との間隙は、アンダーフィル層13によって封止されている。なお、図5中の符号50は、ソルダーレジストを示す。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、このようなCOFパッケージ80のアンダーフィル層13を構成するためのアンダーフィル材として用いることができる。
【0123】
図6は、ウェハ レベル チップ・サイズ・パッケージ(WL−CSP)の一例を示す模式図である。図6に示すように、パッケージ90は、半導体チップ42と、この半導体チップ42の一方の面上に配置されたフィルム基板28と、複数のAlパッド55とを備えている。Alパッド55には、バンプ下地金属層60、Cuポスト65、およびバンプ37が順次接続されている。そして、フィルム基板28の上面、およびCuポスト65同士の間隙は、シール層34によって封止されている。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、このようなパッケージ90のシール層34を構成するためのシール剤として用いることができる。
【0124】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、電池に用いられる電極を構成する電極材料を電極板(電極箔)の表面上に固定するためのバインダー(糊材)として使用することもできる。特に、リチウムイオン電池の高容量負極材料(負極活物質)として注目されているシリコン粒子を負極板(負極箔)の表面上に固定するためのバインダーとして好適である。
【0125】
リチウムイオン電池等の二次電池の電極は、通常、電極板(箔)と、電極板(箔)の表面上に層状に形成された電極層と、を備えている。電極層には、多数の粒子状の電極活物質と、バインダーと、が含まれている。なお、粒子状の電極活物質は、バインダーによって電極板(箔)の表面上に層状に固着されている。例えば、リチウムイオン電池においては、充放電過程において電極活物質がリチウムイオンの吸蔵と放出を繰り返すため、電極活物質の膨張と収縮が激しく、バインダーから電極活物質が剥離(脱落)し易いと推測されている。このため、電極の構成材料となるバインダーには、充放電に伴う電極活物質の膨張と収縮に耐えうる接着力、電気的な安定性、及び熱的な安定性が必要とされる。
【0126】
また、電極活物質がバインダー中に均一に分散していない場合には、電極活物質の膨張及び収縮により発生する応力が局所的に集中してしまい、電極層が電極板(箔)から剥離する等の電極破損の原因となることがある。このため、リチウムイオン電池の電極の構成材料であるバインダーには、高い接着力とともに、電極活物質を均一に分散可能であることが要求される。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、耐熱性に優れているとともに、電気的に安定な材料である。また、無機基材との接着力が高いとともに、安定なワニスを形成するため電極活物質を均一に分散し易く、破損し難く信頼性に優れた電極を形成することができる。
【0127】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を用いてリチウムイオン電池等の二次電池の電極を製造するには、先ず、粒子状の黒鉛やシリコン等の電極活物質と、バインダーとなる熱可塑性ポリイミド組成物とを、適当な溶媒の存在下に混合して電極スラリーを得る。なお、電極活物質と熱可塑性ポリイミド組成物との混合割合は、体積比で、電極活物質/熱可塑性ポリイミド組成物=50/50〜99/1とすることが好ましく、60/40〜98/2とすることが更に好ましい。次いで、銅箔やニッケル箔等の金属箔の表面上に得られた電極スラリーを層状に塗工する。乾燥、及び必要に応じてプレス加工等することにより、リチウムイオン電池等の二次電池の電極を得ることができる。
【0128】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、金属線表面の保護膜としても好ましく用いられる。特に、モーター等のコイルに使用される金属線の保護膜として好ましく用いられる。
【0129】
一般的に、金属線の表面に配設される保護膜には、絶縁性及び部分放電耐性(比誘電率が低いこと)が要求される。また、コイル等を製造するために金属線を湾曲させるような場合には、金属線から剥離しないよう、保護膜には一定の柔軟性が要求される。
【0130】
金属線の表面に配設される保護膜として一般的に用いられるポリアミドイミド樹脂は、柔軟性が高いが、比誘電率が高いという問題があった。また、一般的な熱可塑性ポリイミド組成物は、比誘電率は低いが、柔軟性や接着性が低い。このため、熱可塑性ポリイミド組成物を用いて形成した保護膜は、金属線を湾曲させた場合に金属線の表面から剥がれ易いという問題があった。
【0131】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、ポリアミドイミド樹脂に比して、比誘電率が低く、耐熱性が高い。また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、従来の熱可塑性ポリイミド組成物に比して、接着性、及び柔軟性に優れている。このため、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、金属線の保護層として、接着性や柔軟性を維持しつつ、絶縁性や部分放電耐性を高めることができる。
【0132】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を金属線表面の保護膜として用いる場合において、保護膜の厚さは、通常10〜200μm、好ましくは15〜100μmである。保護膜の厚さが10μm未満であると、絶縁性や部分放電耐性が不十分となる場合がある。一方、保護膜の厚さが200μm超であると、柔軟性が不十分となる場合がある。
【0133】
熱可塑性ポリイミド組成物からなる保護層は、例えば、ワニス状の熱可塑性ポリイミド組成物を金属線の表面に塗布した後、乾燥、及び必要に応じて焼き付けることによって形成することができる。
【0134】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物はさらに、電磁波シールドフィルムの導電性接着層を構成するためのバインダー樹脂として好適に用いることができる。一般的な電磁波シールドフィルムは、フィルム状又はシート状の保護層と、この保護層上に配置される導電性接着層と、を備える。導電性接着層には、導電性フィラーとバインダー樹脂とが含まれている。そして、導電性接着層は、バインダー樹脂中に導電性フィラーが分散及び固定化されることによって保護層上に形成されている。
【0135】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を用いることにより、導電性フィラーを高密度に充填することができる。このため、シールド性能の高い電磁波シールドフィルムを形成することができる。また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は柔軟性が高いため、肉厚の導電性接着層を形成した場合であっても十分な可撓性を有する。このため、導電性接着層を厚く形成し、可撓性を保持しつつ、電磁波シールド性をより高めることができる。
【0136】
導電性フィラーとしては、例えば、銀、銅等の扁平な金属粉;銀コート銅粉等の扁平な金属コート金属粉;扁平スチレン粒子コアのニッケル(Ni)コート、金(Au)フラッシュメッキ物等の金属コート樹脂粉等を挙げることができる。また、異方性導電接着剤において使用されているような球状の導電性粒子も使用することが可能である。導電性フィラーの平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは2〜20μm、更に好ましくは5〜10μmである。なお、導電性フィラーの形状が扁平であるとともに、その長径を粒径と仮定した場合には、導電性フィラーの厚みは、長径の5〜40%であることが好ましい。
【0137】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を用いて電磁波シールドフィルムを製造するには、例えば、熱可塑性ポリイミド組成物と導電性フィラーとを、溶剤とともに均一に混合してワニスを調製する。導電性フィラーと熱可塑性ポリイミド組成物との混合割合は、質量比で、導電性フィラー/熱可塑性ポリイミド組成物=70/30〜99/1とすることが好ましく、85/15〜95/5とすることが更に好ましい。調製したワニスを、保護層となる樹脂フィルム等に塗布した後、乾燥することにより、電磁波シールドフィルムを製造することができる。
【0138】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、光半導体用反射材を構成するためのバインダー樹脂として好適に用いることもできる。一般的な光半導体用反射材には、光反射性フィラーとバインダー樹脂とが含まれている。そして、光半導体用反射材は、バインダー樹脂中に光反射性フィラーが分散及び固定化されることによって形成されている。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、光反射性フィラーを高密度に充填することができる。このため、高い反射率を有するとともに、筐体等における任意の箇所に確実に接着可能な光半導体用反射材を形成することができる。
【0139】
光反射性フィラーとしては、酸化チタン、チタン酸カリウム、無機ガラス、シリカ、アルミナ等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、珪酸カルシウム、炭酸ニッケル等の金属塩;ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、これらの架橋体等の樹脂等を挙げることができる。なお、光反射性フィラーは中空粒子であることが好ましく、光反射性及び取り扱い性の観点から、その外径が0.01〜500μmの中空粒子であることが更に好ましい。
【0140】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を用いて光半導体用反射材を製造するには、例えば、熱可塑性ポリイミド組成物と光反射性フィラーとを混合し、所定の形状に成形する。光反射性フィラーと熱可塑性ポリイミド組成物との混合割合は、質量比で、光反射性フィラー/熱可塑性ポリイミド組成物=50/50〜99/1とすることが好ましく、70/30〜95/5とすることが更に好ましい。その後、乾燥等させて硬化させること等により、光半導体用反射材を得ることができる。
【0141】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、導電性ペーストを得るためのバインダー樹脂としても好適に用いることができる。一般的な導電性ペーストには、導電性粒子とバインダー樹脂とが含まれており、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散している。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、導電性粒子を高密度に分散させることができる。このため、導電率の高い導電性ペーストを提供することができる。また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は柔軟性が高いため、各種部品を基板等に実装するための「はんだペースト」の構成材料として用いた場合に、各種部品と基板等との間に生ずる応力を効果的に緩和することができる。
【0142】
導電性粒子の種類は、一般的な導電性ペーストに用いられるものであれば特に限定されないが、融点が80〜240℃のはんだ粒子が好ましい。はんだ粒子の組成についても特に限定されないが、ベースである錫(Sn)と、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属との合金や、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)等の金属との合金を挙げることができる。
【0143】
導電性ペーストは、熱可塑性ポリイミド組成物と導電性粒子とを定法に従って混合すること等により製造することができる。導電性粒子と熱可塑性ポリイミド組成物との混合割合は、質量比で、導電性粒子/熱可塑性ポリイミド組成物=20/80〜90/10とすることが好ましく、30/70〜80/20とすることが更に好ましい。
【0144】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、さらに電子機器等の熱源から発生した熱を外部へと放出するための放熱材を構成するバインダー樹脂として好適に用いることができる。一般的な放熱材には、放熱性フィラーとバインダー樹脂とが含まれている。そして、放熱材は、バインダー樹脂中に放熱性フィラーが分散及び固定化されることによって形成されている。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、放熱性フィラーを高密度に充填することができる。このため、高い放熱性を有する放熱材を提供することができる。また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は柔軟性が高いため、この熱可塑性ポリイミド組成物を用いて得られた放熱材を部品実装した場合に、各種部品と基板等との間に生ずる応力を効果的に緩和することができる。
【0145】
放熱性フィラーの種類は、一般的な放熱材に用いられるものであれば特に限定されないが、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の無機充填材が好ましい。なかでも、熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材が好ましく、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナが更に好ましい。
【0146】
放熱材は、熱可塑性ポリイミド組成物と放熱性フィラーとを定法に従って混合すること等により製造することができる。放熱性フィラーと熱可塑性ポリイミド組成物との混合割合は、質量比で、放熱性フィラー/熱可塑性ポリイミド組成物=25/75〜85/15とすることが好ましく、35/65〜75/25とすることが更に好ましい。
【0147】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、断熱材用の発泡成形体の構成材料として好適である。断熱材は、例えばCPU等の発熱源から生ずる熱から各種電子部品を保護するために用いられる部材である。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は柔軟性が高いために、発泡成形等した場合であっても、得られる発泡成形体が脆くなり難く、十分な機械的強度が維持される。また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は低い温度での成膜性が良好であるため、発泡成形し易いといった利点がある。
【0148】
発泡成形体は、熱可塑性ポリイミド組成物を使用し、定法に従って発泡成形等することによって製造することができる。例えば、射出成形や押出成形等の成形方法によって、熱可塑性ポリイミド組成物を板状やシート状の形状に成形して成形体を得る。得られた成形体に不活性ガスを所定の温度、加圧下で含浸させて圧力を急激に開放し、不活性ガスの含浸した樹脂成形体に熱力学的な不安定性を付与して発泡核を形成する。
【0149】
不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、フッ素、二酸化炭素等を挙げることができる。不活性ガスの含浸温度は、20℃〜熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度(Tg)未満の温度とすることが好ましい。また、不活性ガスの含浸圧力は、5〜30MPaとすることが好ましい。発泡核が形成された樹脂成形体を加熱することにより、発泡体を製造することができる。樹脂成形体の加熱温度は、例えば、熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度(Tg)〜ガラス転移温度(Tg)−70℃以上とすればよい。
【0150】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、層間絶縁膜を構成するためのバインダー樹脂(低誘電材用バインダー)として好適に用いることができる。層間絶縁膜は、多層配線板において、配線を被覆するように設けられる部材である。なお、層間絶縁膜は、各層の配線を電気的に絶縁するための部材であるため、低誘電率であることが要求される。一般的な層間絶縁膜は、低誘電率材料と低誘電材用バインダーとが含まれており、低誘電率材料が低誘電材用バインダー中に分散している。
【0151】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物によれば、低誘電率材料を高密度に充填することができる。このため、より誘電率の低い層間絶縁膜を製造することができる。また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は柔軟性が高いため、この熱可塑性ポリイミド組成物を用いて得られた層間絶縁膜を部品実装した場合に、各種部品と基板等との間に生ずる応力を効果的に緩和することができる。
【0152】
低誘電率材料の種類は、一般的な層間絶縁膜に用いられるものであれば特に限定されないが、溶融シリカ、中空シリカ等を挙げることができる。層間絶縁膜は、熱可塑性ポリイミド組成物と低誘電率材料とを定法に従って混合した後、各種の成形方法により成形すること等によって製造することができる。低誘電率材料と熱可塑性ポリイミド組成物との混合割合は、質量比で、低誘電率材料/熱可塑性ポリイミド組成物=20/80〜70/30とすることが好ましく、30/70〜60/40とすることが更に好ましい。
【0153】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、面状発熱体用の接着剤として好適に用いることができる。面状発熱体の構成例としては、(i)ポリイミドフィルム/接着剤層/SUS層、(ii)アルミニウム層/接着剤層/SUS層、等を挙げることができる。上記(i)の構成例では、SUS層に形成された回路に電流を流して発熱させる。また、上記(ii)の構成例では、SUS層に形成された回路に電流を流して発熱させるとともに、アルミニウム層を冷却用の部材として機能させる。これらの構成を有する面状発熱体の用途としては、例えば、レーザープリンターヘッドのヒーター、車載用バックライトの予熱用ヒーター、遠赤外線パネルヒーター等を挙げることができる。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、優れた耐熱性を有し、かつ接着性も良好である。このため、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を面状発熱体用の接着剤として用いれば、高温条件化においても十分な接着性を発揮する接着層を有する面状発熱体を提供することができる。
【0154】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、熱可塑性であるとともに、低温成膜性に優れる。このため、発熱体上に接着層を形成する際に、アフターキュアが不要であるとともに、低温ラミネートが可能である。
【0155】
面状発熱体は、例えば、熱可塑性ポリイミド組成物を発熱体の所定の箇所(面上)に塗布して塗布層を形成した後、加熱乾燥すること等によって接着層を形成して製造することができる。なお、熱可塑性ポリイミド組成物は、必要に応じて溶剤と混合してもよい。
【0156】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、カバーレイフィルムの接着剤層を構成するための接着剤(カバーレイフィルム用接着剤)として好適に用いることができる。カバーレイフィルムは、フレキシブルプリント基板(FPC)の表面を保護するために用いられる部材である。一般的なカバーレイフィルムは、ポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルム上に配置される接着剤層と、を備える。なお、接着剤層上には、必要に応じて離型フィルム等が配置される。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、優れた耐熱性を有し、かつ接着力も良好である。このため、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物をカバーレイフィルム用接着剤として用いれば、高温条件化においても十分な接着性を発揮する接着層を有するカバーレイフィルムを提供することができる。
【0157】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、熱可塑性であるとともに、低温成膜性に優れる。このため、ポリイミドフィルム上に接着層を形成する際に、アフターキュアが不要であるとともに、低温ラミネートが可能である。更には、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は柔軟性が高いため、フレキシブルプリント基板(FPC)の屈曲性を向上させることができる。
【0158】
カバーレイフィルムは、例えば、熱可塑性ポリイミド組成物をポリイミドフィルム上に塗布して塗布層を形成した後、加熱乾燥すること等によって接着層を形成して製造することができる。なお、熱可塑性ポリイミド組成物は、必要に応じて溶剤と混合してもよい。
【0159】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、プレコートメタル(PCM)塗料のプライマー又は改質材として好適に用いることができる。PCM塗料のプライマーは、PCM塗料が塗布される鋼板の表面に予め塗布される成分である。また、PCM塗料の改質材は、PCM塗量に添加される成分である。いずれも、鋼板表面に対する塗膜の接着性を向上させるか、或いは塗膜に柔軟性を付与する。
【0160】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は接着性が高いため、PMC塗料のプライマー又は改質材として用いた場合に、鋼板上に形成される塗膜の剥離強度が向上する。また、本発明のポリイミド接着剤は柔軟性が高いため、PMC塗料のプライマー又は改質材として用いた場合に、鋼板上に形成される塗膜にクラックが発生し難くなる。更に、低温で乾燥することが可能となるので、プレコートメタル(塗膜が形成された鋼板)の生産性が向上する。
【0161】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、半導体用の液状封止材又はその改質材として好適に用いることができる。本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は柔軟性が高いため、半導体用の液状封止材又はその改質材として用いた場合に、応力緩和によって封止される半導体素子に割れ等の不具合が生ずることを抑制することができる。特に、近年、薄膜化が進行している半導体素子(チップ)の割れ防止に対して効果的である。
【0162】
また、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、低温乾燥が可能であるとともに、エポキシ樹脂等の他の樹脂成分と混合することができる。このため、半導体用の液状封止材又はその改質材として用いた場合には、エポキシ樹脂等が硬化しない程度の低い温度範囲で乾燥して溶剤を除去することで、B−ステージの状態の成形物(封止体)とすることができる。
【実施例】
【0163】
実施例および比較例で用いた化合物の略称を以下に示す。
(A)芳香族ジアミン
APB:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学社製)
(B)酸二無水物
s−BPDA;3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
(JFEケミカル製)
BTDA ;3,3’,4,4’−ベンゾテトラカルボン酸二無水物
(ダイセル製)
ODPA ;4,4’−オキシジフタル酸二無水物
(C)シリコーンジアミン
1−Si:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
(D)脂肪族ジアミン
14EL:ポリテトラメチレンオキシド ジ−p−アミノベンゾエート(製品名:エラスマー1000、イハラケミカル社製)
XTJ−542:下記式で表されるポリエーテルアミン(製品名:ジェファーミン、HUNTSMAN社製)
【化32】

【0164】
(実施例1)
<熱可塑性ポリイミドAの調製>
N−メチルピロリドンとメシチレンとを8/2の比率で調整した溶媒中に、1種類のジアミン(APB)と、3種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA、及びODPA)とを、APB:s−BPDA:BTDA:ODPA=1.0:0.1:0.58:0.3:0.1のモル比で配合した。
【0165】
得られた混合物を、乾燥窒素ガスを導入することができるフラスコ内で攪拌して、樹脂固形分重量が15〜25重量%であるポリアミック酸溶液を得た。十分に攪拌したのち、ディーンスターク管が付属したフラスコ内で攪拌しながら、反応系180℃程度まで加熱し、脱水反応により発生した水を系外に取り出すことで熱可塑性ポリイミドAを含むポリイミドワニスIを得た。
ポリイミドワニスIにおける前記ポリイミドAの樹脂固形分重量は、18.2重量%であった。
【0166】
<熱可塑性ポリイミドBの調製>
N−メチルピロリドンとメシチレンを7/3の比率で調整した溶媒中に、ジアミン成分として1−Si、酸二無水物成分としてs−BPDAとを1−Si:s−BPDA=0.1:1.0のモル比で配合した。
【0167】
得られた混合物を、乾燥窒素ガスを導入することができるフラスコ内で4時間以上攪拌して、樹脂固形分重量が20〜25重量%であるポリアミック酸溶液を得た。十分に攪拌した後、ディーンスターク管が付属したフラスコ内で攪拌しながら、反応系を180℃程度まで加熱し、脱水反応により発生した水を系外に取り出すことでポリイミドワニス(A)を得た。
【0168】
さらに、当該ポリイミドワニス(A)に、ジアミン成分として3種類のジアミン(APB、14EL、XTJ−542)を、最終的に全モノマーの比が、APB:1−Si:14EL:XTJ−542:s−BPDA=0.49:0.1:0.2:0.21:1.0のモル比になるように後添加した。
【0169】
得られた混合物を、乾燥窒素ガスを導入することができるフラスコ内で1時間以上攪拌したのち、ディーンスターク管が付属したフラスコ内で攪拌しながら、反応系を180℃程度まで加熱し、脱水反応により発生した水を系外に取り出すことで、1−Si/s−BPDAのブロック構造が形成された熱可塑性ポリイミドBを含むポリイミドワニスIIを得た。また前記ポリイミドBの熱分解温度は390℃、ガラス転移温度は75℃であった。
ポリイミドワニスIIにおける前記ポリイミドBの樹脂固形分重量は、25.6重量%であった。
【0170】
<ワニスの混合>
ポリイミドワニスI及びII中の、ポリイミドA及びポリイミドBの重量比が100/1となるように秤取り、自転公転式攪拌機で10分攪拌、1分脱泡して、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を含むポリイミドワニス溶液を得た。
【0171】
<フィルムの作製>
得られたポリイミドワニス溶液を、離型処理がされたPETフィルム上に、10mm/secの速度で塗工した。得られた塗膜を150℃で5分間乾燥させて、溶媒を除去した。乾燥後、PETフィルムから、ピンセットなどを用いてフィルム部分を剥離し、ポリイミドフィルム(膜厚:30μm)を作製した。
また、上記と同様に、ポリイミドワニス溶液を、PETフィルム上に10mm/secの速度で塗工し、得られた塗膜を180℃で5分間乾燥させて、溶媒を除去したポリイミドフィルムも併せて作製した。
【0172】
<評価>
得られたポリイミドフィルムについて、以下の方法で、ガラス転移温度、残溶剤量評価、及び熱分解温度評価を行った。
【0173】
(ガラス転移温度)
作製したポリイミドワニスのガラス転移温度を評価した。測定は、固体粘弾性の温度分散測定(引張モード)により、貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’を評価し、損失正接tanδ=E’’/E’のピーク値からガラス転移温度を導出した。測定装置は、TA製のRSA−IIとした。貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接と温度との関係を示すグラフを図7に示す。
【0174】
(残溶剤量評価)
作製したポリイミドフィルムの残溶剤量を評価した。具体的には、上述のように150℃で作製したポリイミドフィルムを所定のサイズに切り出し、バイアル瓶(22mL)に秤取り、密栓後ヘッドスペース−GCで測定した(加熱条件:180℃×30分)。検出したNMPとメシチレンの合計を残溶剤量とした。測定装置はAgilent製GCを使用した。なお、フィルム作製温度以上の温度に加熱し、溶剤量を測定することで、当該フィルム中の残溶剤量を、短時間で効率よく評価することが可能である。そこで本実施例では、フィルム作製温度(150℃)以上である180℃に加熱し、150℃でのフィルム作製時にどの程度、溶剤が除去されているか評価した。
また、180℃で作製したポリイミドフィルムについても、同条件(180℃×30分)で残溶剤量を測定した。
【0175】
(熱分解温度評価)
作製したポリイミドフィルムの熱分解温度を評価した。測定装置は、島津製作所製のTGA−51とした。TGA−51付属の石英ルツボに所定量のサンプルを計り取り、装置の天秤に仕掛けた後、空気雰囲気下と窒素雰囲気下にて常温から800℃までの熱分解挙動(重量減少)を測定した。初期の重量よりも5%重量が減少した値を熱分解温度(5%重量減少)とした。
【0176】
(フィルム外観評価)
150℃で作製したポリイミドフィルムの外観を評価した。平均面に対し10mm以上の孔などのムラ観測されたものを×(ムラあり)、前記ムラが観測されなかったものを○(問題なし)、と評価した。
【0177】
(実施例2)
実施例1と同様にポリイミドワニスIとIIとを作製し、ポリイミドA及びポリイミドBの重量比が100/5となるように調整して、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を含むポリイミドワニスを得た。このポリイミドワニスを用い、ポリイミドフィルムを作製し、評価した。ガラス転移温度測定時の貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接と温度との関係を示すグラフを図8に示す。
【0178】
(実施例3)
実施例1と同様にポリイミドワニスIとIIとを作製し、ポリイミドA及びポリイミドBの重量比が100/10となるように調整し、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を含むポリイミドワニスを得た。このポリイミドワニスを用い、ポリイミドフィルムを作製し、評価した。ガラス転移温度測定時の貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接と温度との関係を示すグラフを図9に示す。
【0179】
(実施例4)
実施例1と同様にポリイミドワニスIとIIとを作製し、ポリイミドA及びポリイミドBの重量比が100/20となるように調整し、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を含むポリイミドワニスを得た。このポリイミドワニスを用い、ポリイミドフィルムを作製し、評価した。ガラス転移温度測定時の貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接と温度との関係を示すグラフを図10に示す。
【0180】
(比較例1)
実施例1と同様にポリイミドワニスIを作製した。ポリイミドワニスIのみを用いてポリイミドフィルムを作製し、評価した。ガラス転移温度測定時の貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接と温度との関係を示すグラフを図11に示す。
【0181】
(比較例2)
実施例1と同様にポリイミドワニスIとIIとを作製し、ポリイミドA及びポリイミドBの重量比が100/50となるように調整し、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を含むポリイミドワニスを得た。このポリイミドワニスを用い、ポリイミドフィルムを作製し、評価した。ガラス転移温度測定時の貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接と温度との関係を示すグラフを図12に示す。
【0182】
(比較例3)
実施例1と同様にポリイミドワニスIとIIとを作製し、ポリイミドA及びポリイミドBの重量比が100/100となるように調整し、本発明の熱可塑性ポリイミド組成物を含むポリイミドワニスを得た。このポリイミドワニスを用い、ポリイミドフィルムを作製し、評価した。ガラス転移温度測定時の貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接と温度との関係を示すグラフを図13に示す。
【0183】
(比較例4)
実施例1と同様にポリイミドワニスIIを作製した。ポリイミドワニスIIのみを用いてポリイミドフィルムを作製し、評価した。ガラス転移温度測定時の貯蔵弾性率E’と温度との関係、損失正接と温度との関係を示すグラフを図14に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
図7〜図10、及び上記表から、実施例1〜4では、二種類のポリイミドを用いているにも関わらず、一つのガラス転移温度のみ観測されることが明らかである。また実施例1〜4では、観測されるガラス転移温度以下である150℃で加熱・乾燥してフィルムを作製しても外観にムラがなく、問題なくフィルムを作製できた。
【0186】
一方、比較例1では、ガラス転移温度以下である150℃で加熱・乾燥してフィルムを作製したことによって、外観にムラが生じた。また、比較例4では、ガラス転移温度以上の温度で加熱・乾燥してフィルムを作製したため、フィルムは問題なく作製可能であったが、熱分解温度が低かった。また、比較例2及び3では、ガラス転移温度が複数観察された。比較例2及び3では得られたフィルムの外観にムラは生じなかったが、熱分解温度が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、半導体チップと、他の半導体チップまたは基板との接着材料、半導体チップの回路の保護材料、あるいは層間絶縁材料などとして幅広く用いることができる。特に本発明の熱可塑性ポリイミド組成物は、耐熱性に優れるので、特に発熱の大きい半導体チップを含むデバイスの接着材料、保護材料、あるいは絶縁材料に好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0188】
10,10’,10” デバイス
12,12’,22,32,42 半導体チップ
12A (半導体チップの)端子
13 アンダーフィル層
14 熱可塑性ポリイミド組成物層
15,25 リード
16,26,36 基板
17,27,37 バンプ
18,28 フィルム基板
19 ワイヤー
24,34 シール層
26A 凹部
50 ソルダーレジスト
55 Alパッド
60 バンプ下地金属層
65 Cuポスト
70 BGAパッケージ
80 COFパッケージ
90 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DMA法により測定されるガラス転移温度が100℃以上である熱可塑性ポリイミドAと、
DMA法により測定されるガラス転移温度が前記熱可塑性ポリイミドAより100℃以上低い熱可塑性ポリイミドBと、
を含む熱可塑性ポリイミド組成物であって、
DMA法により測定されるポリイミドに由来するガラス転移温度が23℃〜260℃の範囲内で1つしか観測されず、かつ前記熱可塑性ポリイミドA100重量部に対し、前記熱可塑性ポリイミドBが1〜50重量部含まれる、熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリイミドA及び前記熱可塑性ポリイミドBが、いずれも有機溶媒に可溶である、請求項1に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリイミドAの主鎖が、芳香環と、前記芳香環同士を結合するエーテル結合、炭化水素鎖結合、スルホン結合、及び直接結合からなる群から選ばれる1種類以上とを有する、請求項1または2に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリイミドAは、下記一般式(1A)または(2A)で表されるジアミンに由来する構造を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化1】

(一般式(1A)中、nは1〜20の整数を表す)
【化2】

(一般式(2A)中、n、m、lはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す)
【請求項5】
前記熱可塑性ポリイミドAが、
前記一般式(1A)または(2A)で表されるジアミン成分と、
下記一般式(3A)または(4A)で表される一種以上の酸二無水物からなる酸成分とを、
前記ジアミン成分のモル量(D)及び前記酸成分のモル量(E)が、
0.5≦(D)/(E)≦2の関係を満たすように重縮合して得られた請求項4に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化3】

(一般式(3A)中、Rは、単結合、エーテル結合、カルボニル基、スルホン基のいずれかを表す)
【化4】

【請求項6】
前記熱可塑性ポリイミドBは、DMA法により測定されるガラス転移温度が−60〜180℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリイミドBが、下記一般式(1B−1)〜(1B−3)のいずれかで表される芳香族ジアミン(a)、下記一般式(2B)で表されるシリコーンジアミン(b)および下記一般式(3B)で表される脂肪族ジアミン(c)を含むジアミン成分と、
下記一般式(4B)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)を含む酸無水物成分と、を縮合させて得られるポリイミドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化5】

(一般式(1B−1)中、nは1〜20の整数を表す)
【化6】

(一般式(1B−2)中、n、m、lはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す)
【化7】

【化8】

(一般式(2B)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5の2価の脂肪族基または炭素数6以上の2価の芳香族基を表し、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5の1価の脂肪族基または炭素数6以上の1価の芳香族基を表し、mは1以上の整数を表す)
【化9】

(一般式(3B)中、R、Rは、それぞれ独立に、カルボニル基、オキシカルボニル基、炭素数6以上の芳香族基および炭素数1以上の脂肪族基からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む有機基を表す。Xは−O−、−S−、−NH−、−ONH−、または−OS−を表す。lは1〜50の整数を表し、nは1以上の整数を表す)
【化10】

(一般式(4B)中、Rは、単結合、−O−またはカルボニル基を表す)
【請求項8】
前記芳香族ジアミン(a)が下記一般式(1B−11)で表され、
前記脂肪族ジアミン(c)が下記一般式(3B−1)で表され、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)が下記一般式(4B−1)で表される、請求項7に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化11】

(一般式(1B−11)中、nは1〜20の整数を表す)
【化12】

(一般式(3B−1)中、R、Rは、それぞれ独立に、カルボニル基、オキシカルボニル基、炭素数6以上の芳香族基および炭素数1以上の脂肪族基からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む有機基を表す。lは1〜50の整数を表し、nは1以上の整数を表す)
【化13】

(一般式(4B−1)中、Rは、単結合、−O−またはカルボニル基を表す)
【請求項9】
前記脂肪族ジアミン(c)が、下記一般式(3B−11)で表されるジアミン、または下記一般式(3B−12)で表わされるジアミンである、請求項7または8に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【化14】

(一般式(3B−11)中、oは、1〜50の整数を表す)
【化15】

(一般式(3B−12)中、p、qおよびrは、それぞれ独立に0〜10の整数を表す)
【請求項10】
前記熱可塑性ポリイミドBは、
前記シリコーンジアミン(b)と、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とから得られるイミドブロックb1と、
前記イミドブロックb1の両端に導入された、前記芳香族ジアミン(a)、前記脂肪族ジアミン(c)および前記芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)から得られるイミドブロックb2と、を含むブロック共重合体である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリイミドBは、
前記シリコーンジアミン(b)と、1モルの前記シリコーンジアミン(b)に対して1モル超の前記芳香族テトラカルボン酸二無水物(d)とを重縮合させてオリゴマーを得るステップと、
前記オリゴマーに、前記芳香族ジアミン(a)と前記脂肪族ジアミン(c)とをさらに重縮合させるステップと、
を経て得られる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリイミドBを構成する前記ジアミン成分と前記酸無水物成分との合計モル数に対する、前記芳香族ジアミン(a)及び前記シリコーンジアミン(b)の合計モル数の比が0.01〜0.6である、請求項7〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリイミドBは、DMA法により測定されるガラス転移温度が40〜150℃であり、かつ熱分解温度が350℃以上である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項14】
無機フィラーをさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項15】
エポキシ化合物、アクリレート化合物、イソシアネート化合物、マレイミド化合物およびナジイミド化合物からなる群より選ばれる一種類以上の化合物をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物を含むポリイミドワニスであって、前記ポリイミドワニス100重量部に対して、熱可塑性ポリイミド組成物の固形分濃度が1重量部以上50重量部未満の範囲である、ポリイミドワニス。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物を含む、接着剤。
【請求項18】
基材と、
前記基材上に配置される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリイミド組成物からなる樹脂層と、を有する、積層体。
【請求項19】
基材と、
前記基材上に配置される樹脂層と、を有し、
前記樹脂層は、前記基材上に塗布された請求項16に記載のポリイミドワニスからなる塗布層を、190℃以下の温度で乾燥させて形成された、積層体。
【請求項20】
DMA法により測定される前記熱可塑性ポリイミド組成物のガラス転移温度が150〜220℃であり、
前記基材は、シリコン、または常温における弾性率が1GPa以上、かつガラス転移温度が240〜440℃のポリイミドである、請求項18に記載の積層体。
【請求項21】
半導体素子と、
前記半導体素子の表面に配置される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱可塑性熱可塑性ポリイミド組成物を含む樹脂層と、を有する、デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−255107(P2012−255107A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129431(P2011−129431)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】