説明

熱可塑性ポリウレタンに基づく繊維、特に不織布

無機添加剤(無機添加剤の粒子の少なくとも70%が、熱可塑性ポリウレタンの繊維径の75%よりも小さい最大粒子径を有する)を含む熱可塑性ポリウレタン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維、特に無機添加剤を含む熱可塑性ポリウレタンに基づく繊維を含む不織布であって、該無機添加剤の個々の粒子の少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも99.9%が、熱可塑性ポリウレタンの繊維径の75%より小さく、好ましくは60%より小さく、より好ましくは50%より小さい最大粒子径を有する、不織布に関する。本発明はまたこのような繊維又は不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(以下TPUと称する)に基づく繊維、また、これらの繊維を含む織物、編物又は不織布は、良く知られた一般的知識であり、広く市販されている。繊維の製造のためにTPUを使用する不利な面は、この材料の粘着性及びブロッキング性である。これにより、パッケージの巻取りが、織物の更なる加工作業のために必要とされる高速での巻き取りを不可能とする。この問題を避けるための近年における方法は、例えばシリコーンに基づく紡糸油を4〜8%の濃度で使用することである。これには、その後の処理段階で、シリコーン油を再び洗い流さなければならないという不都合がある。このことは非常に費用がかかり、不便で、また、水を大量に消費し、大量の洗剤と乳化剤を使用するために、環境との相性が悪い。
【0003】
このTPUの表面構造の欠点は、また、TPUが不織布に使用されるときにも存在する。不織布は、不織布テキスタイル構造を意味し、該構造は、繊維を機械的、化学的、熱的若しくは溶媒工学的方法又はこれらの組み合わせにより、粘着又は結合又は粘着と結合させることにより製造される。高分子の不織布(ポリマー性不織布)は主に連続的処理で製造される。メルトブロー法及びスパンボンド法が、特に記載できる。この方法では、ポリマーは、押出機内で溶解され、紡糸マニホールドへ汲み上げられる。近代における不織布製造方法では、今日、5mまでのマニホールドを使用し、高い処理量で不織布を連続的に製造している。
【0004】
メルトブロー法及びスパンボンド法による不織布の製造は、主に、ポリプロピレン及びポリエステルを使用する。しかしながら、これらのプラスチックから製造された不織布に弾性はない(非弾性である)。近年、不織布を製造するためにTPUを使用する努力がなされた理由がここにある。熱可塑性ポリウレタンは、構成材料を加工処理と使用の典型的な温度範囲で繰り返し加熱と冷却を行っても、熱可塑性を維持するポリウレタンを意味する。ポリウレタンに関して、熱可塑性とは、ポリウレタンの以下の特性を表している。すなわち、ポリウレタンにとっては通常の温度である150〜300℃の範囲で、加熱された時に柔らかくなり、冷却された時には硬化するという挙動が繰り替えされ、柔らかくなった状態では、成形、押し出し又は形成部分として、中間生成物又は最終製品に繰り返し成形可能可能な特性を表している。TPUに基づく不織布は、極めて高い弾性、良好な回復性(recovery)、低い残存伸張(residual extension)及び引張強度の点で著名である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP−A922719
【特許文献2】EP−B922719
【特許文献3】WO2003/014179
【特許文献4】DE−A2302564
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Plastics Additive Handbook Cal,Hanser,Verlag,Munich,ISBN3-446-21654-5
【非特許文献2】Plastics Additive Handbook 第五版、H.Zweifel編,Hanser Publishers,Munich,2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、TPUをこのように不織布に使用することには不利な面がある。数時間、人間の肌に直接接触すると、衣類の着心地がゴムのように感じられ不愉快である。これが、TPU不織布がしばしば2成分状態で製造される理由である。2成分とは、TPUコアが、例えばポリオレフィンの覆い(被覆)で囲まれるというものである。これは滑らかで、ブロッキングされていない表面を提供する。しかしながら、この2成分処理は、非常に非効率でそれ故コストがかかる。従って、この設備のすべての部品(部分)が2つずつ必要となる。すなわち2つの別々の押出機、2つの別々のメルトライン、ポンプ等である。さらに、紡糸口金ダイは高技術を要するためコストがかかる。あるいは、サンドイッチ式についてはTPU不織布及び2つの外側のポリオレフィン不織布から製造することができる。しかしこれもまたコストがかかり、複雑な構造であり、さらにポリオレフィンのTPUへの接着という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
TPUのブロッキングを減少させるために、ポリオレフィンやポリスチレン等の添加剤をTPUに導入することができる。しかしながら、これらの添加剤は繊維の紡糸性を低下させる。繊維が絞り成形を受けるときに、大きな力がTPU溶融物に働く。この繊維の欠点(例えば不均一に溶解した添加剤)によって、繊維が裂け、また連続的な紡糸稼働の崩壊を引き起こす。
【0009】
本発明の目的は、TPUに基づく繊維、及び特に粘着及びブロッキングする傾向の低い表面を有する不織布を提供することにある。これらの繊維は、触感がよく、極めて良好な処理特性(特に改善された延伸比)を有する。布地の手触りがよく、容易に処理でき、及び良好な機械的性質(特に良好な破断伸長)を有する、耐光性のTPU不織布を開発することが特に望ましい。
【0010】
これらの目的は、冒頭で説明した繊維、特にこれらの繊維を含む不織布によって達成されることが見出された。
【0011】
本発明の繊維及び不織布に使用されるTPUでは、無機添加剤を特定のサイズで添加することによって表面の性質が最適化される。さらに特にこの材料は、粘着又はブロッキングする傾向が低く、改善された触感を有する。本発明の、無機粒子のサイズ分布では、これらの機械的性質は、添加剤の添加によっては、重大に、また不利に影響されない。さらに特に、添加剤の導入は、最大延伸比の著しい増加をもたらす。
【0012】
本発明の添加剤の更なる利点は、この粒子サイズ又は粒子サイズ分布が工程に依存しないこと(process independent)であり、すなわちTPUの処理段階(工程段階)の間で、著しい変化はないことである。このことは、ポリオレフィンやポリスチレン等の高分子添加剤に優る大きな利点である。これらは、例えば癒着現象によって処理の間に粒子サイズが変化し得るものである。
【0013】
この無機添加剤は、本発明の粒子サイズ及び粒子サイズ分布を有するものである。この粒子は、通常の無機材料に基づいてよく、例えば、二酸化ケイ素及びケイ酸塩、シリカゲル、金属酸化物、炭酸塩、ホウ酸塩、窒化ホウ素、滑石、岩粉、ゼオライト、モンモリオナイト、アルミノケイ酸塩などのシリコン化合物である。無機添加剤の例は、非特許文献1の587頁以降に記載されている。この無機添加剤は、好ましくは以下の成分を含み、より好ましくはこの添加剤は以下の成分から成る。
90〜95質量%のSiO2
1〜5質量%のAl23
1〜5質量%のFe23
0.1〜1質量%のP25
0.1〜1質量%のTiO2
0.1〜2質量%のCaO
0.1〜2質量%のMgO
0.01〜3質量%のNa2
0.01〜3質量%のK2O。
【0014】
シリコン(特にケイ酸塩)に基づく無機添加剤を使用するのが好ましい。またCelite Corporation USAのCelite(登録商標)Superfine Superflossnoという銘柄で利用可能な無機添加剤を使用するのが特に好ましい。
【0015】
添加剤の粒子の少なくとも90%が最大径15μm以下であることが好ましい。
【0016】
熱可塑性ポリウレタンにおける無機添加剤の質量割合は、無機添加剤を含む熱可塑性ポリウレタンの全質量に対して、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5%〜3質量%、特に0.75〜2質量%である。TPUが無機添加剤の存在下に製造できるように、無機添加剤はTPUの製造のための出発物質の一つに混ぜてもよく、あるいは例えば濃縮物としてTPUに混ぜてもよい。この場合、TPUに無機添加剤を導入するために、例えば紡糸する直前に、この濃縮物及びTPUは溶融状態で均一に混合される。この添加剤はまた、製造又は処理の過程で、直接TPUに添加することもできる。濃縮物としての添加が好ましい。
【0017】
驚くべきことに、本発明の添加剤(特に本発明のシリコンに基づく添加剤(特にCelite Superfine Sperfloss(登録商標)))は、TPU繊維のブロッキング傾向を低下させるだけでなく、それらの紡糸性を改善させることが分かった。すなわち、TPU繊維の延伸できる延伸比を10%以上、好ましくは100%以上増加させることができる。延伸比(draw ratio)は、取出し速度に対してのダイの中でのTPU溶融速度の比のことをいう。高い延伸比は、繊維又は不織布の製造工程の経済性のため、特に重要である。高い延伸比は、与えられたダイの形状で、フィラメントの太さを増大せずに、処理能力を増加(ダイにおけるより高い速度)させることができることを意味する。
【0018】
本発明は、このように、熱可塑性ポリウレタンに基づく繊維の製造方法も提供する。本方法は、繊維を形成するための溶融紡糸による、無機添加剤を含む熱可塑性ポリウレタンの処理を含む方法であるが、上記無機添加剤の粒子の少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは99.9%が、熱可塑性ポリウレタンの繊維径の75%、好ましくは60%、より好ましくは50%より小さい最大粒子径を有する。
【0019】
熱可塑性ポリウレタンに基づく繊維の製造は、通常の一般的知識であり、広く文献に記載されている。一般的に知られているTPU(好ましくは芳香族イソシアネートに基づくTPU)を使用することができる。繊維が溶融紡糸されたスパンデックスである場合、ショアA硬度が70〜90、より好ましくはショアA硬度が75〜85であるTPUを使用するのが好ましい。
【0020】
好ましい一実施の形態では、TPUはイソシアネート基を含む架橋剤と共に、繊維に加工処理される。適当な架橋剤及びその製造及び処理が、特許文献1に記載されている。有用な架橋剤として、特に特許文献2の第3頁[0011]段落に記載されている架橋剤が挙げられる。架橋剤は、脂肪族及び/又は芳香族イソシアネート、好ましくは芳香族イソシアネートに基づくもので良い。イソシアネート含有プレポリマーに基づく架橋剤は、架橋剤を含むTPUの全質量に対して、1〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%、特に10〜15質量%の濃度で好ましく使用される。
【0021】
繊維線密度は、好ましくは5〜3000dtex、より好ましくは10〜250dtex、特に15〜78dtexである。1dexは、繊維が10kmで1gであることを示す。
【0022】
繊維の残存伸長は、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満、特に12%未満である。残存伸長は、繊維を350%に伸ばすことにより測定される。繊維は次に緩められ、再度350%に伸ばされる。繊維が2回目に緩められた後、残存伸長を、繊維の初めの長さに対する繊維の長さの増加分として、百分率で測定する。
【0023】
熱可塑性ポリウレタン(ここではTPUとしても称される)及びその製造方法は、通常の一般的知識である。概して、TPUは、(a)イソシアネートと、(b)イソシアネート反応性化合物(通常、分子量(NW)が500〜10000、好ましくは500〜5000、より好ましくは800〜3000)と、(c)鎖延長剤(分子量が50〜499)とを、適切な場合には(d)触媒及び又は(e)通常の添加剤の存在下に、反応させることによって製造される。
【0024】
以下に、ポリウレタンの出発成分及びポリウレタンの製造方法の例を記載する。成分(a)、(b)、(c)、及び適切な場合にはポリウレタンの製造において通常使用される(d)及び/又は(e)の例を以下に示す。
【0025】
有用な有機イソシアネート(a)として、一般的に知られている芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族のイソシアネート、好ましくはジイソシアネートが挙げられる。例えば、2,2´−、2,4´及び/又は4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3´−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネート、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン−1,4−ジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1−ジイソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−及び/又は−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート及び/又は4,4´−、2,4´−及び2,2´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、より好ましくは、2,2´−、2,4´−及び/又は4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はIPDI、特に4,4´−MDI及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートである。この不織布は、好ましくは脂肪族イソシアネートに基づき、他の繊維は通常、芳香族イソシアネートを使用して製造される。
【0026】
有用なイソシアネート反応性化合物(b)として、一般的に知られているイソシアネート反応性化合物が挙げられる。例えば、ポリエステロール、ポリエーテロール及び/又はポリカーボネートジオール、であり、これらは慣習的に「ポリオール」という用語に含まれ、このポリオールは、分子量が500〜8000、好ましくは600〜6000、特に800〜3000未満であり、好ましくは、イソシアネートについての平均官能価が1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に2である。有用なポリエーテロール(ポリエーテルオール)としてさらに、いわゆる低不飽和ポリエーテロールが挙げられる。本発明において低不飽和ポリオールは、特に、不飽和化合物を0.02meg/g未満、好ましくは0.01meg/g未満で含むポリエーテルアルコールである。このようなポリエーテルアルコールは、通常、高活性触媒の存在下に、アルキレンオキシド(特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びこれらの混合物)を、上述したジオール又はトリオールに添加することによって製造される。このような高活性触媒の例は、水酸化セシウム及び複合金属シアン化触媒(DMC触媒としても知られる)である。ヘキサシアノコバルト亜鉛は、DMC触媒として用いられる。DMC触媒は、反応後にポリエーテルアルコール中に残しておくこともできるが、通常、例えば沈殿やろ過により除去される。更に、モル質量が500〜10000g/mol、好ましくは1000〜5000g/mol、特に2000〜3000g/molであるポリブタジエンジオールを使用することもできる。これらのポリオールを使用して製造されたTPUは、熱可塑性処理の後に放射線架橋をすることができる。これにより、例えば焼失挙動(burn-off behavior)が良好となる。様々なポリオールの混合物はただ一種のポリオールの代わりに使用することができる。ポリエーテロール−ポリエステロール混合物に基づくTPUを使用することが好ましい。
有用な鎖延長剤(c)としては、分子量が50〜499で好ましくは2官能性化合物である、一般的に知られている脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物が挙げられる。例えば、ジアミン及び/又はアルカンジオール(アルキレン基に2〜10の炭素原子を有する)、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び/又はジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ及び/又はデカアルキレングリコール(3〜8個の炭素源子を有する)、好ましくは対応するオリゴ及び/又はポリプロピレングリコールである(複数の鎖延長剤の混合物を含む)。
【0027】
混合物(a)〜(c)は、より好ましくは2官能性化合物である。すなわちジイソシアネート(a)、2官能性ポリオール、好ましくはポリエーテロール(b)及び2官能性鎖延長剤、好ましくはジオールである。
【0028】
有用な触媒(d)(ジイソシアネート(a)のNCO基と、構成単位成分(b)及び(c)のヒドロキシル基の間の反応を特に促進させる触媒)は、従来技術において知られている通常の第三級アミンである。例えば、トリメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N´−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン及びその類似物、さらに特に、チタンエステル等の有機金属化合物、例えば鉄(III)アセチルアセトネート等の鉄化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジラウレート等の錫化合物、又はジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の脂肪族カルボン酸の錫ジアルキル塩、又はその同等物である。この触媒は通常、ポリヒドロキシ化合物(b)の100質量部に対して0.0001〜0.1質量部の量が使用される。
【0029】
本発明における無機添加剤と同様に、通常の補助剤及び/又は添加剤(e)を、構成単位成分(a)〜(c)に添加することもできる。
【0030】
上述の例は、界面活性剤、核剤、滑り及び脱型補助剤(gliding and demolding aids)、染料、及び顔料、抗酸化剤(例えば、加水分解、光、熱又は変色に対して)、難燃剤、強化剤及び可塑剤、金属不活性剤である。好ましい一実施の形態では、成分(e)として、高分子又は低分子量のカルボジイミドなどの加水分解安定剤が挙げられる。好ましくは、熱可塑性ポリウレタンは、トリアゾール及び/又はトリアゾール誘導体及び抗酸化剤を、熱可塑性ポリウレタンの全質量に対して、0.1〜5%の量で含む。有用な抗酸化剤は、保護されるプラスチックにおいて、不必要な酸化過程を抑制し又は妨げる一般的な物質である。一般的には抗酸化剤は市販されている。抗酸化剤の例は、立体障害フェノール、芳香族アミン、チオ相乗剤、三価リンの有機リン化合物及びヒンダードアミン系光安定剤である。立体障害フェノールの例は、非特許文献2の第98〜107項及び第116〜121項に記載されている。芳香族アミンの例は、非特許文献2の第107〜108項に記載されている。チオ相乗剤の例は、非特許文献2の第104〜105項に記載されている。亜リン酸塩の例は、非特許文献2の第109〜112項に記載されている。ヒンダードアミン系光安定剤の例は、非特許文献2の第123〜136に記載されている。フェノール性抗酸化剤を使用するのが好ましい。好ましい一実施形態では、抗酸化剤は(特にフェノール性抗酸化剤)、モル質量は、350g/molよりも大きく、より好ましくは700g/molよりも大きく、また、最大モル質量は10000g/mol未満、好ましくは3000g/mol未満である。これらは更に、180℃未満の融点を好ましく有する。非晶質又は液体である抗酸化剤を使用することが更に好ましい。
【0031】
特定成分a)、b)及びc)及び適切であればd)及びe)と同様に、通常31〜3000の分子量を有する鎖調整剤も使用することができる。このような鎖調整剤は、イソシアネート反応性官能基を1つだけ有する化合物であり、例えば、単官能性アルコール、単官能性アミン及び/又は単官能性ポリオールである。このような鎖調整剤により、特にTPUにおける流動性を特定値に調整することが可能となる。鎖調整剤は、一般的に、成分b)の100質量部(成分(c)を入れて定義して)に対して、0〜5質量部、好ましくは0.1〜1質量部の量で使用することができる。
【0032】
TPUの硬度を調整するため、構成単位成分(b)及び(c)は、比較的広いモル比において変更することができる。成分(b)の鎖延長剤(c)の全量に対するモル比は、10:1〜1:10、特に1:1〜1:4の範囲が有用であり、(c)の含有量が増加するとTPUの硬度が増加する。
【0033】
繊維の製造のために用いられる熱可塑性ポリウレタンは、メルトフロー速度(MFR)が、200℃及び試験質量が21.6kgの条件で測定して、5〜100g/10分、好ましくは10〜80g/10分、より好ましくは15〜40g/10分である。
【0034】
以下に、特に、本発明の繊維を含む不織布について述べ、特に、不織布にとって好ましいTPU及びその製造方法を示す。
【0035】
不織布は、摩擦及び/又は結合(粘着)及び/又は接着(付着)によって集約(統合)された、一方向に整列され又は不規則に配列された繊維の層、ウェブ及び/又はラップである。不織布(nonwoven)はまた、織物でないもの(non-woven)としても知られる。
【0036】
有用なTPUとしては、一般的に知られている全てのTPUが挙げられる。好ましくは、熱可塑性ポリウレタンは130〜220℃の範囲の結晶化温度を有し、脂肪族イソシアネート基に基づくものが好ましい。好ましい熱可塑性ポリウレタンの結晶化温度の測定は、通常の一般的知識であり、また、Perkin Elmer DSC7を使用するDSC(Dynamic Scanning Calorimetry)によって好ましく行われ、熱可塑性ポリウレタンは次の温度プログラムに従って処理される。
【0037】
1.)0.1分間、25℃に保つ。
2.)40K/分で25℃から100℃に加熱する。
3.)10分間、100℃に保つ。
4.)20K/分で100℃から−80℃に冷却する。
5.)2分間、−80℃に保つ。
6.)20K/分で−80℃から230℃まで加熱する。
7.)1分間、230℃に保つ。
8.)20K/分で230℃から−80℃に冷却する。
【0038】
そして、結晶化温度は、試料の発熱流量が冷却の間に最大値を有する温度であると考えている。
【0039】
これらの好ましい不織布は、使用される熱可塑性ポリウレタンが急速な凝固特性を有することで顕著である。すなわちTPUの急速な結晶化は、溶融フィラメントの冷却の過程で、高い温度で行われ、繊維の迅速な安定化をもたらす。これにより、布地の手触りを有する不織布を得るために、通常の設備での製造処理が可能となる。本明細書で布地の手触りとは、織物又は編物布地の触感に相当する不織布の触感を意味する。布地の手触りの逆は、例えば、不織布がプラスチックフィルムのように感じるプラスチックのような手触りである。脂肪族TPUに基づく不織布がまた好ましい。芳香族熱可塑性ポリウレタンは、芳香族イソシアネート(例えば4,4´MDI)に基づくTPUをいう。脂肪族TPUは、脂肪族イソシアネート(例えば1,6HDI)に基づくTPUをいう。特に好ましい熱可塑性ポリウレタンは、光学的な透明性と、急速に凝固する単層溶融物と、部分的に結晶化したポリエステルの固層の結果として、わずかに不透明な白い成形体にした外見を示す。
【0040】
特に好ましいTPUは、特に、(a)イソシアネートと、融点が150℃以上である(b1)ポリエステルジオールと、それぞれ融点が150℃以下であり且つ分子量が501〜8000g/molである(b2)ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールと、さらに分子量が62〜500g/molである(c)ジオールとの、反応により得られる。
【0041】
熱可塑性ポリウレタンは、特に好ましくは、熱可塑性ポリエステルと、ジオール(c)を反応させ、その後、
(i)融点が150℃以上の(bi)ポリエステルジオールを含む(i)の反応生成物と、適切な場合には(c)ジオールを、それぞれ融点が150℃以下であり且つ分子量が501〜8000g/molである(b2)ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールと共に、更に適切な場合には分子量が62〜500g/molである更なる(c)ジオールを、(a)イソシアネートと共に、適切な場合には(d)触媒及び/又は(e)補助剤の存在下に、
反応させることによって得られる。
【0042】
対応するTPUは特許文献3により一般的に知られており、製造物とその方法は詳しく後述する。
【0043】
特に好ましくは、この熱可塑性ポリウレタンは、ショアA硬度65〜95、より好ましくはショアA硬度75〜85を有する。
【0044】
結合糸やフィラメントの導入を経て接着した織物、編物、タフテッド、布地を有する紙又は製品は、本発明目的のための不織布としては扱われないことが好ましい。好ましい一実施の形態では、その繊維性成分の量(質量)の50%以上、特に60〜90%が、直径に対する長さの割合が300以上、及び特に500以上の繊維から成る場合、その材料は、本発明の目的のための不織布と考えられる。
【0045】
好ましい一実施の形態では、不織布の個々の繊維の直径は、50μm〜0.1μm、好ましくは10μm〜0.5μm、特に7μm〜0.5μmである。
【0046】
好ましい一実施の形態では、不織布の厚さは、ISO9073−2で測定して、0.01〜5mm、より好ましくは0.1〜2mm、さらにより好ましくは0.15〜1.5mmである。
【0047】
好ましい一実施の形態では、不織布の単位面積当たりの質量は、ISO9073−1で測定して、5〜500g/m2、より好ましくは10〜250g/m2、さらにより好ましくは15〜150g/m2である。
【0048】
不織布はさらに、機械的に強化してもよい。機械的強化は、片面又は両面の機械的強化の形で行う。2面機械的強化が好ましい。
【0049】
前述した機械的強化に加えて、不織布はさらに熱的強化を行ってもよい。熱的強化は例えば、不織布に熱風による処理を受けさせることにより、又は、不織布をカレンダリング(カレンダ処理)することにより達成されるのが好ましい。
【0050】
好ましい一実施の形態では、DIN EN12127で測定して、使用される不織布は20〜2000%、好ましくは100〜1000%、特に200〜1000%の機械方向(machine direction)破断伸びを有する。
【0051】
使用される不織布は、熱可塑性ポリウレタンに基づく。すなわち熱可塑性ポリウレタンを使用して製造される。これは、使用される不織布が熱可塑性ポリウレタンを、好ましくは必要不可欠な成分として含むことを意味するものとして理解される。好ましい一実施の形態では、不織布の全質量に対して、60〜100質量%、より好ましくは80%質量以上、特に97質量%以上、特に好ましくは100質量%の熱可塑性ポリウレタンを含む不織布を使用する。
【0052】
熱可塑性ポリウレタンと同様に、使用される不織布は、他のポリマー又は補助剤を更に含んでよい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン及び/又はポリスチレン及び/又はポリスチレンのコポリマー(例えばスチレン−アクリロニトリルコポリマー)である。
【0053】
本発明の不織布は、特許文献3に記載されているTPUを使用して好ましく製造される。以下に詳細に記載するこれらの特に好ましいTPUは、使用される熱可塑性ポリウレタンが急速な凝固特性(すなわち溶融の高い温度での非常に良好な結晶化)を有するという利点を有する。これにより、布地の手触りを有する不織布を得るために、通常の装置で熱可塑性ポリウレタンを処理することができるようになる。本明細書で布地の手触りとは、不織布の触感が織物又は編物の布地の触感に相当するという意味である。布地の手触りの逆は、例えば不織布がプラスチックフィルムのように感じるプラスチックのような手触りである。
【0054】
これらの特に好ましいTPUは、(a)イソシアネートと、(b1)融点が150℃以上のポリエステルジオールと、(b2)それぞれ融点が150℃以下で且つ分子量が501〜8000g/molのポリエーテルジオール及び/又はオリエステルジオール、及び適切な場合には(c)分子量が62〜500g/molであるジオールと、を反応させて得られることが好ましい。分子量が62〜500g/molであるジオール(c)のモル比が、成分(b2)に対して、0.2未満、特に好ましくは0.1〜0.01である熱可塑性ポリウレタンが、ここでは特に好ましい。1000〜5000g/molの分子量を好ましく有するポリエステルジオール(b1)が次の構造単位(I)を有する熱可塑性ポリウレタンが特に好ましい。
【0055】
【化1】

【0056】
R1、R2、R3及びXは下記のものを意味する。
R1:2〜15個の炭素原子を有する炭素質構成(carbonaceous scaffold)、好ましくは2〜15個の炭素原子を有するアルキレン基及び/又は6〜15個の炭素原子、より好ましくは6〜12個の炭素原子を有する2価の芳香族基。
R2:2〜8個、好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個の炭素原子を有する任意に分枝したアルキレン基、特に−CH2−CH2−及び/又は−CH2−CH2−CH2−CH2−である。
R3:2〜8個、好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個の炭素原子を有する任意に分枝したアルキレン基、特に−CH2−CH2−及び/又は−CH2−CH2−CH2−CH2−である。
X:5〜30の整数。上述の好ましい融点及び/又は好ましい分子量は、この好ましい実施形態において記載された構造単位(I)に基づく。
【0057】
ここでの「融点」とは、市販されているDSC機器(例えばPerkin−ElmerのDSC7)を使用して測定した加熱曲線の融解ピークの最大値のことを表すものとして理解される。
【0058】
本明細書で報告された分子量は、数平均分子量[g/mol]である。
【0059】
第一段階(i)において、好ましくは高分子量(好ましくは一部は結晶質)の熱可塑性ポリエステルと、ジオール(c)とを反応させ、その後、第二反応段階(ii)において、(b1)融点が150℃以上のポリエステルジオールを含む(i)の反応生成物と、適切な場合には(c)ジオールを、(b2)それぞれ融点が150℃未満で且つ分子量が501〜8000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールと共に、さらに適切な場合には(c)分子量62〜500g/molである更なるジオールを、イソシアネートと共に、適切な場合には(d)触媒及び/又は(e)補助剤の存在下に、反応させることにより、これらの特に好ましい熱可塑性ポリウレタンを好ましく製造することができる。
【0060】
反応(ii)のため、62〜500g/molの分子量を有するジオール(c)の、成分(b2)に対するモル比は0.2未満、及びより好ましくは0.1〜0.01である。
【0061】
段階(i)で、段階(i)で使用されるポリエステルにより、最終生成物のための硬質層が得られる一方で、軟質層は、段階(ii)で成分(b2)を使用することにより構成される。好ましい技術的教示としては、上述した効果的な結晶化硬化相を有するポリエステルは、反応押し出し機内で好ましくは溶解され、そして低分子量のジオールに分解され、遊離ヒドロキシル末端基を有する、より短いポリエステルを形成することが挙げられる。ポリエステル本来の高結晶化傾向(特性)は、処理中は維持され、そしてその次に、急速な処理反応において、有利な性質(すなわち、高い引張強度値、低い摩耗値、高くて狭い溶融範囲に起因する、高い熱変形抵抗性および低い圧力変形残余(derformation residuals))を有するTPUを得るために利用することができる。この好ましい処理では、このように高分子量(一部は結晶質)の熱可塑性ポリエステルが、適当な条件下で、低分子量のジオール(c)に分解され、短時間で高速結晶化ポリエステルジオール(b1)となり、これは、他のポリエステルジオール及び/又はポリエーテルジオール及びジイソシアネートと共に高分子量ポリマー鎖に順に組み込まれる。
【0062】
使用される熱可塑性ポリエステル(すなわちジオール(c)との反応(i)前に)は、15000〜40000g/molの分子量を好ましくは有し、また好ましくは160℃以上、より好ましくは170〜260℃の融点を好ましくは有する。
【0063】
段階(i)で好ましくは溶融状態、より好ましくは230〜280℃の温度で、好ましくは0.1〜4分、より好ましくは0.3〜1分の間、ジオールまたは複数のジオール(c)と反応する出発ポリエステルは、一般的に知られており、好ましくは高分子量であり、好ましくは一部が結晶質である熱可塑性ポリエステル(例えばペレット化した形)で良い。適当なポリエステルは、例えば脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、例えば、乳酸及び/又はテレフタル酸、並びに、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族ジアルコール、例えば、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール及び/又は1,6−ヘキサンジオールに基づく。
【0064】
特に好ましいポリエステルは、ポリ−L−乳酸及び/又はポリアルキレンテレフタレート、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、特にポリブチレンテレフタレートである。
【0065】
上述した出発材料からのこれらのエステルの製造は、通常の一般的な知識的事項であり、広く文献に記載されている。さらに適当なポリエステルが市販されている。
【0066】
熱可塑性ポリエステルは180℃〜270℃で好ましく溶融する。ジオール(c)との反応(i)は、230℃〜280℃、好ましくは240℃〜280℃で行われることが好ましい。
【0067】
熱可塑性ポリエステルとの反応のために、段階(i)及び適切な場合には段階(ii)で使用されるジオール(c)は、分子量が62〜500g/molである一般的に知られているジオールであって良い。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、好ましくは1,4−ブタンジオール及び/又は1,2−エタンジオールである。
【0068】
段階(i)の熱可塑性ポリエステルのジオール(c)に対する質量比は、通常、100:1.0〜100:10の範囲内であり、好ましくは100:1.5〜100:8.0の範囲内である。
【0069】
反応段階(i)での熱可塑性樹脂とジオール(c)との反応は、通常の触媒(例えば、以下に示す触媒)の存在下で好ましく行われる。本反応のためには金属に基づく触媒を使用するのが好ましい。段階(i)での反応は、ジオール(c)の質量に対して0.1〜2質量%の触媒の存在下で行われることが好ましい。このような触媒の存在下での反応は、この反応が、反応機(例えば反応押出機)の中で利用できる短い滞留時間で行うことができるので有利である。
【0070】
反応段階(i)での有用な触媒としては、例えばテトラブチルオルトチタネート及び/又は錫(II)ジオクトエート、好ましくは錫ジオクトエートである。
【0071】
(i)での反応生成物として得られるポリエステルジオール(bi)は、1000〜5000g/molの分子量を好ましくは有する。(i)での反応生成物として得られるポリエステルジオールの融点は、好ましくは150〜260℃、特に165〜245℃の範囲である。つまり、段階(i)での熱可塑性ポリエステルとジオールとの反応生成物は、固有の融点を有する化合物を含み、これは次の段階(ii)で使用される。
【0072】
段階(i)における熱可塑性ポリエステルとジオール(c)との反応は、エステル交換を介するジオール(c)によるポリマー鎖の切断を引き起こす。TPUの反応生成物はそれ故、遊離ヒドロキシル末端基を有し、また実際の生成物であるTPUを形成するために、更なる段階(ii)で、好ましくは更に処理される。
【0073】
段階(ii)における、段階(i)での反応生成物の変換は、(a)イソシアネートと、(b2)それぞれ融点が150℃未満であり且つ分子量が501〜8000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールとを、更に適切な場合には分子量が62〜500である更なるジオール(c)、(d)触媒及び/又は(e)補助剤を、段階(i)の反応生成物に対して、添加することによって好ましく達成される。この反応生成物とイソシアネートとの反応は、段階(i)で形成されたヒドロキシル末端基によって達成される。段階(ii)における反応は、好ましくは、190〜250℃の温度で、好ましくは0.5〜5分間、より好ましくは0.5〜2分間持続して行われ、この反応は、好ましくは反応押出機、より好ましくは段階(i)が行われたのと同じ反応押出機で行われる。例えば、段階(i)の反応は、通常の反応押出機の第一バレルセクションで行われ、対応する段階(ii)の反応が下流のポイント(すなわち下流のバレルセクションで)行われ、成分(a)及び(b2)の添加が続いて行われる。例えば、反応押出機の長さの最初の30〜50%が、段階(i)で使用され、残りの50〜70%が段階(ii)で使用することができる。
【0074】
段階(ii)における反応は、好ましくは、イソシアネート反応基に対して反応性の基に対して、イソシアネート基を過剰に使用して行われる。段階(ii)におけるイソシアネート基のヒドロキシル基に対する比は、好ましくは1:1〜1.2:1の範囲内、より好ましくは1.02:1〜1.2:1の範囲内である。
【0075】
反応(i)及び(ii)は、好ましくは、一般的に知られている反応押出機で行われる。このような反応押出機は、例えば、Werner&Pfleidererの会社出版物又は特許文献4に記載されている。
【0076】
好ましい処理を行う方法は、次のように行うのが好ましい。少なくとも一種の熱可塑性ポリエステル(例えばポリブチレンテレフタレート)が、反応押出機の第一バレルセクションに計量導入され、好ましくは180〜270℃の間、好ましくは240〜270℃の範囲内の温度で溶融される。次のバレルセクションにおいて、ジオール(c)(例えば、ブタンジオール)及びエステル交換触媒が添加され、そしてヒドロキシル末端基を有し且つ分子量が1000〜5000g/molであるポリエステルオリゴマーを得るために、240〜280℃の間の温度でポリエステルを分解させる。さらに次のバレルセクションにおいて、イソシアネート(a)と、分子量が501〜8000g/molである(b2)イソシアネート反応性化合物、また適切であれば分子量が62〜500の(c)ジオール、(d)触媒及び/又は(e)補助剤、が計量添加される。その後、190〜250℃の温度で、望ましい熱可塑性樹脂を形成するための合成が行われる。
【0077】
段階(ii)においては、分子量が62〜500であり、(i)の反応生成物中に生じた(c)ジオール以外には、分子量が62〜500の(c)ジオールは導入されないことが好ましい。
【0078】
熱可塑性樹脂が溶融する領域において、反応押出機は、好ましくは、中立(neutral)及び/又は逆運搬混練ブロック(reverse-conveying kneading blocks)及び逆運搬要素(reverse-conveying elements)を有する。また熱可塑性ポリエステルがジオールと反応する領域においては、好ましくは、スクリュー上の混合要素、及び鋸歯状ディスク、及び/又は鋸歯状混合要素を、逆運搬要素と組み合わせて有する。
【0079】
反応押出機の下流では、透明な溶融物は通常、ギアポンプによって水面下のペレタイザーに供給され、そしてペレット化される。
【0080】
最終生成物中(すなわち熱可塑性ポリウレタン)の熱可塑性ポリエステルの割合は、好ましくは、5〜75質量%である。好ましい熱可塑性ポリウレタンは、(i)の反応生成物を10〜70質量%、(b2)を10〜80質量%、及び(a)を10〜20質量%で含む混合物の反応生成物がより好ましい。これらの質量パーセントは、(a)、(b2)、(d)、(e)及び(i)の反応生成物、を含む混合物の全量に対するものである。
好ましい熱可塑性ポリウレタンは、次の構造単位(II)を好ましく有する。
【0081】
【化2】

【0082】
R1、R2、R3及びXは下記のものを意味する。
R1:2〜15個の炭素原子を有する炭素質構成、好ましくは2〜15個の炭素原子を有するアルキレン基及び/又は6〜15個の炭素原子を有する芳香族基。
R2:2〜8個、好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個の炭素原子を有する任意に分枝したアルキレン基。特に−CH2−CH2−及び/又は−CH2−CH2−CH2−CH2−である。
R3:(b2)としてそれぞれ分子量が501〜8000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールの使用によって生じた基、又は、ジイソシアネートとの反応のための2個〜12個の炭素原子を有するアルカンジオールの使用によって生じた基。
X:5〜30の整数。
n、m:5〜20の整数。
【0083】
R1基は、使用されるイソシアネートによって決められる。R2基は、(i)における熱可塑性ポリエステルとジオール(c)との反応生成物によって決められる。R3基は、出発成分(b2)及び適切な場合にはTPUの製造における(c)によって決められる。
【0084】
本発明はまた、熱可塑性ポリウレタンに基づく不織布の製造方法を提供する。この製造方法は、不織布を形成するメルトブロー法及びスパンボンド法によるものであり、無機添加剤を含む熱可塑性樹脂の処理を含み、該無機添加剤の粒子の少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは99.9%は熱可塑性樹脂の繊維径の75%より、好ましくは60%より、より好ましくは50%より小さい最大粒子径を有する。
【0085】
熱可塑性ポリウレタンを含む不織布は、通常、慣用のメルトブロー法又はスパンボンド法による上述した熱可塑性ポリウレタンから製造することができる。メルトブロー法及びスパンボンド法は当業者に知られている。
【0086】
これらの方法で形成される不織布は、一般的に、これらの機械的特性及び整合性に関して相違する。スパンボンド法によって製造された不織布は、特に、水平でも垂直でも安定するが、連続気泡構造を有する。メルトブロー法によって製造された不織布は、繊維の特に密な網目を有し、またそれ故液体に対して非常に効果的な障壁を形成する。メルトブロー不織布が好ましい。メルトブロー法によってTPU不織布を製造するために、大量生産設備をメルトブロー不織布の製造のために使用することができる。このような設備は、例えばドイツのReifenhauser社から利用可能である。通常、メルトブロー法では、TPUは押出機の中に溶融され、通常の補助機(メルトポンプやフィルター等)によって紡糸マニホールドに供給される。ここで、ポリマーは通常、ノズルを貫流し、ノズルの出口において、繊維を形成するために気流によって細くなる。細くなった繊維は、通常、ドラムやベルトの上に置かれ、送られる。
【0087】
好ましい実施形態では、圧縮比が1:2〜1:3.5、特に好ましくは1.2〜1.3の一軸スクリュー押出機が利用される。長さと直径の比(L/D)が25〜30である3ゾーンスクリューを加えて用いるのが好ましい。3ゾーンは長さが等しいのが好ましい。3ゾーンスクリューは終始、0.8〜1.2D、特に好ましくは0.95〜1.05Dの一定ピッチである。スクリューとバレルの間の間隙は、0.1mmよりも大きく、好ましくは0.1〜0.2mmである。バリアスクリューに混合要素を備えた場合、これらの混合要素は、好ましくはせん断要素ではない。
【0088】
不織布設備は通常、TPUの滞留時間が可能な限り短くなるように(すなわち15分未満、好ましくは10分未満、より好ましくは5分未満)設計される。
【0089】
本発明のTPUは通常、180〜250℃、好ましくは200〜230℃の温度で処理される。
【0090】
冒頭で既に述べたように、無機添加剤は濃縮物(濃縮物の全量に対して、無機添加剤を10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%、特に25〜40質量%で含む)として熱可塑性ポリウレタンに導入することができる。
【0091】
本発明の不織布は、例えば、産業部門、衛生用品、フィルター、医薬製品、積層品及び布地における封止材として使用される。例えば、医療分野では、絆創膏、創傷包帯及び救急絆として、オムツや他の衛生用品の弾性要素として、衣服の伸縮性のそで口として、衣服のインライナーとして、例えば水蒸気透過性膜の製造におけるフィルムの裏地として、革製品の積層として、テーブルクロス、カーペットの滑り止め保護剤として、靴下の滑り止め保護剤として、自動車の内装、布地及びスポーツシューズ、カーテン、家具及びこれと似た物の、装飾的アップリケとして使用される。
【0092】
使用できる範囲を広げるため、本発明の不織布は、他の材料(例えば、不織布、織物
、革、紙)と積層してもよい。
【0093】
従って本発明はまた、産業分野、衛生用品、フィルター、医薬製品、積層品、布地、より好ましくは本発明の不織布を含む衛生用品及び/又は医薬製品を提供する。
【0094】
以下に実施例を使用して本発明を説明する。
【実施例1】
【0095】
実施例1:比較例
OH価が56.2である1000gのポリブタンジオールアジペートエステロール及び122gの1,4−ブタンジオール及び463gの4,4´MDIをから生成されるTPUを細管粘度計に溶融させ、その次に210℃で、偏向ローラの上で繊維を通らせ、また巻取速度を制御できる回転ボビン上でこれらを巻き上げることによって、紡糸した。紡糸性を分析するため、延伸比を徐々に変更した。延伸比は、繊維の巻き取る速さとダイの融解の速さの比である。さらに、フィラメントの厚さを、延伸比及びダイの径から計算することができる。この生成物の延伸比(DR)の最大値は815であった。この繊維同士は粘着し、分離することは不可能であった。
【実施例2】
【0096】
OH価が56.2である1000gのポリブタンジオールアジペートエステロール及び122gの1,4−ブタンジオール及び463gの4,4´MDIから生成されたTPUを、Elastollan(登録商標)1180A10及び35質量%のCelite(登録商標)Superfine Superfloss ケイ素−酸素化合物(Celite Corporation)から成る3質量%のマスターバッチと共に、細管粘度計に溶融させ、その次に210℃で、偏向ローラの上で繊維を通らせ、また巻取速度を制御できる回転ボビン上でこれらを巻き上げることによって、紡糸した。紡糸性を分析するため、延伸比を徐々に変更した。驚くべきことに、最大延伸比DRは、添加剤の添加によりDR=3200まで著しく増加した。すなわち、この製品は非常によい紡糸性を有した。この繊維はもはやこの繊維同士で粘着しない。
【実施例3】
【0097】
次の粒子サイズ分布を有するCelite(登録商標)Superfine Superfloss添加剤:
(粒子の10%が1.4μmより小さく、粒子の50%が4.7μmより小さく、粒子の90%が11.8μmより小さいという粒子サイズ分布)
を、濃縮物を生成(押出機上でTPUに無機添加剤を導入し、ポリマーストランドをペレット化することによる)するために、Elastollan(登録商標)2280A10(Elastogran Gmbh社製、ドイツ)と共に、処理した。
【0098】
次に、Elastollan(登録商標)2280A10と製造した濃縮物を3%で混合し、細管粘度計に溶融させ、その次に210℃で、繊維を偏向ローラの上に通らせ、また巻取速度を制御できる回転ボビン上でこれらを巻き上げることによって、紡糸した。
【0099】
線密度が5dtex、22dtex及び44dtexである繊維を製造した。これらの繊維径は、25〜73μmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンに基づく繊維であって、
無機添加剤を含み、該無機添加剤の粒子の少なくとも70%が、熱可塑性ポリウレタンの繊維径の75%よりも小さな最大粒子直径を有することを特徴とする繊維。
【請求項2】
不織布内に存在することを特徴とする請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記無機添加剤が、シリコンに基づくことを特徴とする請求項1に記載の繊維。
【請求項4】
前記無機添加剤がケイ酸塩を含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維。
【請求項5】
前記無機添加剤が次の構成成分:
90〜95質量%のSiO2
1〜5質量%のAl23
1〜5質量%のFe23
0.1〜1質量%のP25
0.1〜1質量%のTiO2
0.1〜2質量%のCaO、
0.1〜2質量%のMgO、
0.01〜3質量%のNa2O、
0.01〜3質量%のK2O、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリウレタン中の無機添加剤の質量割合が、無機添加剤を含む熱可塑性ポリウレタンの全量に対して、0.1〜5質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の繊維。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリウレタン以外に他のプラスチックが、不織布内に存在しないことを特徴とする請求項2に記載の繊維。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリウレタンが、130〜220℃の範囲に結晶化温度を有し、且つ、脂肪族イソシアネートに基づくことを特徴とする請求項1に記載の繊維。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリウレタンが、
(a)イソシアネートと、
(b1)融点が150℃以上であるポリエステルジオールと、
(b2)それぞれ融点が150℃以下であり且つ分子量が501〜8000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールと、
(c)さらに分子量が62〜500g/molであるジオールと、
の反応により得られることを特徴とする請求項1に記載の繊維。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂のショアA硬度が65〜95の範囲である請求項1に記載の繊維。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリウレタンが、
(i)熱可塑性ポリエステルとジオール(c)とを反応させ、その後に、
(ii)融点が150℃以上である(b1)ポリエステルジオールを含む(i)の生成物と、適切場合には、(c)ジオールとを、それぞれ融点が150℃以下であり且つ分子量が501〜8000g/molである(b2)ポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオールと、さらに適切であれば、分子量が62〜500g/molである更なる(c)ジオールを、(a)イソシアネートと、適切であれば(d)触媒及び/又は(e)補助剤の存在下に、
反応させることにより得られることを特徴とする請求項2に記載の繊維。
【請求項12】
前記不織布が、単位面積当たり5〜500g/m2の範囲のISO9073−1基準の質量を有することを特徴とする請求項2に記載の繊維。
【請求項13】
前記不織布が、0.01〜5mmのISO9073−2基準の厚さを有することを特徴とする請求項2に記載の繊維。
【請求項14】
産業分野、衛生用品、フィルター、医薬製品、積層品及び/又は布地における、請求項2に記載の不織布を含む封止材。
【請求項15】
前記熱可塑性ポリウレタンが架橋状態である請求項1に記載の繊維。
【請求項16】
熱可塑性樹脂に基づく不織布を製造する方法において、
熱可塑性ポリウレタンであって、無機添加剤を含み、該無機添加剤の粒子の少なくとも70%が、熱可塑性ポリウレタンの繊維径の75%よりも小さな最大粒子直径を有する熱可塑性ポリウレタンを、メルトブロー法又はスパンボンド法を使用して加工し、前記不織布を形成することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項2〜13の何れか1項に記載の繊維を含む不織布を製造することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
熱可塑性樹脂に基づく繊維を製造する方法において、
熱可塑性ポリウレタンであって、無機添加剤を含み、該無機添加剤の粒子の少なくとも70%が、熱可塑性ポリウレタンの繊維径の75%よりも小さな最大粒子直径を有する熱可塑性ポリウレタンを、溶融紡糸法を使用して加工し、前記繊維を形成することを特徴とする方法。
【請求項19】
前記熱可塑性ポリウレタンが、イソシアネート基を含む架橋剤と共に繊維に処理されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記無機添加剤が、濃縮物の状態で熱可塑性ポリウレタンに導入され、前記濃縮物は、該濃縮物の合計量に対して10〜60質量%の範囲の無機添加剤を含むことを特徴とする請求項16又は18に記載の方法。

【公表番号】特表2010−509512(P2010−509512A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535696(P2009−535696)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061860
【国際公開番号】WO2008/055860
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】