説明

熱可塑性ポリウレタン樹脂によって接着された布帛

【課題】布帛の端縁部を処理し、又は複数の布帛を接合する場合に、低温環境下においても端縁部や接合部が硬くならず風合いが良好な布帛を提供する。
【解決手段】有機ポリイソシアネート化合物と、側鎖にメチル基を有するセグメントを所定量含む特定構造のポリアルキレンエーテルジオール化合物とを反応させて得られる構造を含有する熱可塑性ポリウレタン樹脂によって接着された部分を有する布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂によって接着された部分を有する布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布帛の端縁部や複数の布帛の接合部は、糸により縫製されることが一般的であるが、近年、縫製を行うことなく接着樹脂テープを用いて衣類の端縁部を形成する方法(特許文献1参照)や熱融着テープにより複数の生地部品を接合して製作された衣類(特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
こうした接着樹脂テープとして一般的に用いられるホットメルト樹脂としては、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アタクチックポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル系、ポリ酢酸ビニル系及びアクリル系等の樹脂が挙げられるが、伸縮性、耐水性及び接着部分のソフト感を保つためにはポリウレタン系の樹脂が好適である。
【0004】
ポリウレタン樹脂のソフトセグメント成分としてポリエーテルが一般的に用いられる。中でもテトラヒドロフラン(以下、THFと記す)の重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと記す)を用いたポリウレタン樹脂は、弾性特性、耐加水分解性等の点に優れている。しかし、PTMGを用いたポリウレタン樹脂は、伸長時や低温環境下でソフトセグメントが結晶化し、伸縮性が低下すること、あるいは低温環境下で硬化することから、さらなる改良が望まれている。
【0005】
ポリウレタンの伸縮性の改良を目的として、共重合タイプのポリエーテルポリオールをポリウレタンのソフトセグメントとして使用することが従来提案されている。ネオペンチルグリコールが共重合したポリエーテルグリコール(特許文献3)、及び共重合ポリエーテルグリコールを用いたポリウレタン(特許文献4)が夫々記載されている。しかしこれらの技術では、共重合率が低いため、テープやフィルム状に成型した場合の強度、伸度及び弾性回復率、低温環境下での風合い等の機械的特性を向上させたポリウレタンテープを得ることは難しい。また、THFと3−アルキルテトラヒドロフランとの共重合ポリオールを用いたポリウレタン(特許文献5)が記載されているが、この文献には、伸縮時の伸長回復性及び低温環境下での風合いの改善についての記述はない。また、ネオペンチルグリコール基及び/又は3−メチル−1,5−ペンタンジオールを8〜85モル%共重合したポリウレタンによって弾性機能が改良されることが記載されている(特許文献6)が、熱可塑性ポリウレタンに関する開示はない。
【0006】
【特許文献1】特開2007−211369号公報
【特許文献2】特開2005−226175号公報
【特許文献3】特開昭61−120830号公報
【特許文献4】米国特許第4,658,065号明細書
【特許文献5】特開平5−239177号公報
【特許文献6】特開平2−49022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いて、布帛の端縁部を処理し、又は複数の布帛を接合する場合に、低温環境下においても端縁部や接合部が硬くならず風合いが良好な布帛を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成は以下のとおりである。
【0009】
[1] (i)有機ポリイソシアネート化合物を、
(ii)分子量が300〜30,000のポリアルキレンエーテルジオール化合物であて、下記の構造単位(A):
【化1】

並びに構造単位(B):
【化2】

及び/又は構造単位(C):
【化3】

からなり、かつ下記式(1):
0.08≦(MB+MC)/(MA+MB+MC)≦0.85 (1)
{式中、MA、MB及びMCは、それぞれ、ポリアルキレンエーテルジオール化合物中に存在する構造単位(A)、(B)及び(C)のモル数である。}
を満たすもの
と反応させて得られる構造を含有する熱可塑性ポリウレタン樹脂によって接着された部分を有する布帛。
【0010】
[2] 前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物からなる鎖延長剤に由来する構造をさらに含有する、請求項1に記載の布帛。
【0011】
[3] 前記イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物がジオール類である、請求項2に記載の布帛。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いて布帛の端縁部を処理し、又は複数の布帛を接合する場合に、低温環境下においても布帛の端縁部や接合部が硬くならず、良好な風合いの布帛が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0014】
本発明の布帛は、
(i)有機ポリイソシアネート化合物(以下、有機ポリイソシアネート化合物(i)ともいう。)を、
(ii)分子量が300〜30,000のポリアルキレンエーテルジオール化合物であって、下記の構造単位(A):
【化4】

並びに構造単位(B):
【化5】

及び/又は構造単位(C):
【化6】

からなり、かつ下記式(1):
0.08≦(MB+MC)/(MA+MB+MC)≦0.85 (1)
{式中、MA、MB及びMCは、それぞれ、ポリアルキレンエーテルジオール化合物中に存在する構造単位(A)、(B)及び(C)のモル数である。}
を満たすもの(以下、ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)ともいう。)
と反応させて得られる構造を含有する熱可塑性ポリウレタン樹脂によって接着された部分を有する。
【0015】
有機ポリイソシアネート化合物(i)としては、分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)、メチレン−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)、2,4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、m−又はp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、1−アルキルフェニレン−2,4又は2,6−ジイソシアネート、3−(α−イソシアネートエチル)フェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニル−ジメチルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−又は1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソフォロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)は、前記の構造単位(A)並びに構造単位(B)及び/又は(C)からなり、かつ前述の式(1)式で定義されたように、構造単位(B)及び(C)から形成されるセグメント、すなわち側鎖にメチル基を持つセグメントを、構造単位(A)、(B)及び(C)のモル数の合計の8モル%以上かつ85モル%以下含む。側鎖にメチル基を持つセグメントが8モル%以上85モル%以下であれば種々の弾性機能、例えば破断伸度及び弾性回復性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られるため、これを用いることにより低温環境下でも良好な風合いを有する布帛が得られる。より好ましくは下記式(2)、さらに好ましくは下記式(3)で示す範囲である。
0.09≦(MB+MC)/(MA+MB+MC)≦0.45 (2)
0.09≦(MB+MC)/(MA+MB+MC)≦0.30 (3)
(式(2)及び(3)中、MA、MB及びMCは前述の式(1)において説明したのと同じ意味である。)
【0017】
ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)は、例えば、THFと、ネオペンチルグリコール及び/若しくは3−メチル−1,5−ペンタンジオール、又はそれらの脱水環状低分子化合物、例えば、3,3−ジメチルオキセタンとを、特開昭61−123628号公報に記載の方法に従って、水和数を制御したヘテロポリ酸を触媒として反応させることにより製造できる。得られる共重合ジオールは、所定の分子量、共重合成分構成及び共重合比となるように、反応の方法及び条件を種々変化させることによって容易に製造できる。
【0018】
該ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)を構成するネオペンチル単位及び/又は3−メチル−1,5−ペンチレン単位は、テトラメチレン単位に対してランダム状あるいはブロック状のいずれで分布していてもよく、ヘテロポリ酸触媒を用いた反応ではブロック状又はランダム状いずれにも分布させることができ、得られるアルキレンエーテルジオール化合物(ii)の結晶性を種々効果的に変えることが可能であり、本発明で用いる熱可塑性ポリウレタン樹脂の特性に合わせて各々の結晶性を持つジオールを製造することができる。
【0019】
本発明で用いられるポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)の数平均分子量は300〜30,000であり、好ましくは500〜5,000で、さらに好ましくは900〜2,000である。数平均分子量が300より小さいと、熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成されたテープの伸度が低くなって本発明の布帛の引き伸ばし性が悪くなり、該布帛を例えば衣服に用いた際、着用時に引き伸ばすことができない。また、数平均分子量が30,000より大きいとテープの強度が低くなり布帛の耐久性が悪くなる。
【0020】
ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)は、他のジオールとして、例えば、数平均分子量250〜20,000程度のジオール、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール及びポリオキシペンタメチレングリコール等のホモポリエーテルジオール、炭素原子数2から6の2種以上のオキシアルキレンから構成される共重合ポリエーテルジオール、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸及びマロン酸等の二塩基酸の1種又は2種以上とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール,1,3−プロピレングリコール,2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール,1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン及び1,4−ジメチロールシクロヘキサン等のグリコールの1種又は2種以上とから得られたポリエステルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール及びポリバレロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエーテルジオール若しくはポリチオエステルジオール、又はこれらジオールの共重合物、等と任意の割合に混合すること等により併用できる。
【0021】
本発明において用いる熱可塑性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物(iii)からなる鎖延長剤に由来する構造をさらに含有することができる。イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物(iii)としては、例えば、(イ)低分子量のジオール類、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン又は1,4−ジメチロールシクロヘキサンヒドラジン、(ロ)炭素原子数2〜10の直鎖又は分岐した脂肪族、脂環族又は芳香族の活性水素を有するアミノ基を持つ化合物で例えばエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジペン酸ジヒドラジド又はセバシン酸ジヒドラジド、(ハ)1官能性アミノ化合物、例えば第2級アミン、すなわちジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチル−イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチル−イソブチルアミン又はメチルイソアミルアミン、(ニ)水、(ホ)上記ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)のうち有機ポリイソシアネート化合物(i)と反応していないもの、(ヘ)公知の数平均分子量250〜5,000程度のジオール類及び(ト)一価のアルコール類等が挙げられる。好ましくはジオール類であり、特に1,4−ブタンジオール及び/又は炭素原子数が4〜8のジアルキレングリコールがさらに好ましい。
【0022】
有機ポリイソシアネート化合物(i)と、イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物(iii)とは、夫々単独で用いてもよいが、必要に応じて予め混合して用いてもよい。
【0023】
ポリウレタン化反応の操作に関しては、公知のポリウレタン化反応の技術を採用できる。例えば、ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)と有機ポリイソシアネート化合物(i)とを、1:1.1〜1:3.0(当量比)の割合で有機ポリイソシアネート化合物(i)過剰の条件下で反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した後、該プレポリマー中のイソシアネート基に対して、イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物(iii)を添加し、反応させることができる。あるいは、有機ポリイソシアネート化合物(i)、ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)、及びイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物(iii)を同時に1段で反応させるワンショット重合法でも反応させることができる。
【0024】
ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)に対する有機ポリイソシアネート化合物(i)の当量比が小さい方が熱接着剥離応力が高い点では好ましく、より好ましくは1:1.3〜1:2.0、さらに好ましくは、1:1.5〜1:1.9である。
【0025】
また、有機ポリイソシアネート化合物(i)のイソシアネート基と、ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)の水酸基、及びイソシアネート基と反応する活性水素含有化合物(iii)の活性水素の合計とが概ね当量になるように反応させることが好ましい。
【0026】
上記のポリウレタン化反応においては、必要に応じ、触媒及び安定剤等を添加することができる。触媒としては例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレート及びオクチル酸第一錫等が挙げられ、安定剤としては、ポリウレタン樹脂に通常用いられる他の化合物、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス安定剤、帯電防止剤、着色剤、艶消し剤及び充填剤等が挙げられる。
【0027】
上述のような構成を採用すれば、融点が低いポリマー設計によって、熱接着性に優れるだけでなく、応力保持率も高い熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることができる。本発明においては、この熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いて布帛の端縁部を処理し、及び/又は複数の布帛を接合するので、低温(例えば130℃程度)接着でも高い熱接着剥離応力、高い応力保持率が得られるため、洗濯に対する高い耐久性(特に耐熱性)を実現できる。また上述の熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いると低温環境下においても布帛の端縁部や接合部が硬くならず、良好な風合いの布帛が得られる。
【0028】
本発明において用いる熱可塑性ポリウレタン樹脂の、フローテスターによって測定される融点(溶出開始温度)は80℃以上、130℃未満であることが好ましく、82℃以上、125℃未満がさらに好ましく、85℃以上、120℃未満が特に好ましい。なお上記融点は以下の方法で測定できる。すなわち、フローテスター(例えば島津フローテスターCFT−500D型((株)島津製作所製))を使用し、サンプル量1.5g、ダイ(ノズル)の直径0.5mm、厚み1.0mmの条件下で、294Nの押出荷重を加え、初期設定温度100℃で240秒間予熱した後、3℃/分の速度で等速昇温し、その際に描かれるプランジャーストローク−温度曲線を求める。等速昇温されるに従い、サンプルは徐々に加熱され、ポリマーが流出し始める。このときの温度を融点(溶出開始温度)とする。具体的には、図1に示すように、プランジャーストローク−温度曲線の立ち上がり部の接線と立ち上がり前の傾きが最小となる点の接線との交点を求め溶出開始温度とする。
【0029】
本発明において用いる熱可塑性ポリウレタン樹脂は、公知の熱可塑性ポリウレタン押出成型によりフィルム状又は繊維状に成型して布帛の接合に適用することができる。フィルムとしては、Tダイを使用して、広幅シート状に押出したもの、あるいはこれを所定の幅に切断してテープ状にしたもの、押出成型において、例えばスリットダイを使用することにより、直接テープ状に押出成形したものが挙げられる。また繊維としては、紡口を使用して繊維状に押出成型したものが挙げられる。
【0030】
上記フィルムの幅及び厚み並びに上記繊維の繊度等は、用途及び目的によって任意に選ぶことができる。フィルムの厚さは、通常、0.02〜0.5mm程度が好ましく、さらに好ましくは、0.04〜0.3mmである。繊維の繊度は、5dtex〜30000dtexが好ましく、より好ましくは100dtex〜20000dtex、さらに好ましくは1000dtex〜10000dtexである。
【0031】
本発明の布帛は、例えば木綿、羊毛、麻、シルク等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン弾性繊維、アクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、塩化ビニル系繊維等の化合繊から選ばれる1種の又は複数種を組合せた素材から形成された織布、不織布、編物等であることができる。
【0032】
本発明の布帛は、繊維製品全般に適用可能であり、例えば以下のものが挙げられるが、これに限定したものではない。衣類としては、ショーツ、シャツ、キャミソール、スリップ、ボディスーツ、ブリーフ、トランクス、肌着、ガードル、ブラジャー、スパッツ、腹巻き、パンティストッキング、タイツ、靴下等のインナーウェア、水着、トレーニングウェア、レオタード、スキーウェア、各種競技用スポーツウェア、アウトドア用ウェア等のスポーツウェア、Tシャツ、ジャケット、セーター、ベスト、パンツ、スカート、カットソー、コート、ジャンパー等のアウターウェア、各種衣類や服飾品の裏地、手袋、帽子、マフラー等の服飾品、パジャマ、ガウン等のナイトウェア、介護用ウェア等が挙げられる。その他の用途では、各種寝装寝具類、オムツ、インテリア用品、椅子張り地、靴類、鞄類、生活資材、テント・シート類、スポーツ・レジャー用品、カーシート類、各種カバー類、農業資材、園芸資材、各種補強用織編物等が挙げられる。
【0033】
本発明の布帛は、前述の熱可塑性ポリウレタン樹脂によって接着された部分を有することを特徴とする。接着される部分としては、以下の例、
−布帛の端縁部を折り返し、その内面同士を接着固定した、折り返し構造の端縁部、
−布帛の内面側又は外面側の端縁部に縁取りテープを接着固定した貼付け構造の端縁部、及び
−2つ折りした縁取りテープに布帛の端縁部を挿入して接着固定した、パイピング構造の端縁部
が挙げられるが、これに限定するものではない。
【0034】
また、本発明における複数の布帛の接合は、以下の例、
−各種繊維製品の複数の構造部品の接合、例えば衣類では、前身頃生地部品と後身頃生地部品等の接合、表地と裏地の接合、資材ではテントの生地の接合等、及び
−布帛本体と装飾部品や付属部品、例えばポケット、レース、リボン、モチーフ、アップリケ、エンブレム、織ネーム、ファスナー等との接合
が挙げられるが、これに限定するものではない。
【実施例】
【0035】
本発明を実施例でさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例及び比較例における測定値は、下記の測定法により求めたものである。
【0036】
[融点(溶出開始温度)の測定]
島津フローテスターCFT−500D型((株)島津製作所製)を使用し、サンプル量1.5g、ダイ(ノズル)の直径0.5mm、厚み1.0mmの条件下で、294Nの押出荷重を加え、初期設定温度100℃で240秒間予熱した後、3℃/分の速度で等速昇温し、その際に描かれるプランジャーストローク−温度曲線を求めた。等速昇温されるに従い、サンプルは徐々に加熱され、ポリマーが流出し始めた。このときの温度を融点(溶出開始温度)とした。具体的には、図1に示すように、プランジャーストローク−温度曲線の立ち上がり部の接線と立ち上がり前の傾きが最小となる点の接線との交点を求め溶出開始温度とした。
【0037】
[風合い評価]
タテ15cm、ヨコ5cmの2枚の生地を、熱可塑性ポリウレタン樹脂がタテ方向の中心にくるように配置し、加熱によって生地と該樹脂とを溶融し接着して短冊サンプルを作製した。この短冊サンプルの風合いにつき、常温(20℃)でパネラー10名に評価してもらった。続いて同様のサンプルを−10℃の環境下に24時間放置したものにつき、−10℃の環境下でパネラー10名に風合い評価をしてもらい、常温20℃の環境下での風合いと比較して、低温環境下で風合いが変化したかどうかを以下の基準で判定してもらった。
○ : 常温と低温環境下とで、接着部の風合いに変化が見られない。
△ : 常温と低温環境下とで、若干風合いの変化が見られる。
× : 常温と低温環境下とで、著しく風合いが変化し、低温環境下で風合いが硬くなる。
【0038】
[実施例1]
ポリアルキレンエーテルジオール化合物(ii)として、共重合組成MB/(MA+MB)が0.1である、旭化成せんい株式会社製PTXG1800を使用し、PTXG1500g、及び有機ポリイソシアネート化合物(i)として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート365gを、窒素ガス気流下80℃において180分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。ついで、これを急速に25℃まで冷却した後、1,4−ブタンジオール56.3gを上記ポリウレタンプレポリマーに添加して30分間攪拌してポリウレタンを得た。
【0039】
このポリウレタンに、酸化防止剤としてアデカ製AO−60を9g、黄変防止剤としてアデカ製LA−36を9g混合した後、テフロン(登録商標)トレイに払い出し、トレイごと130℃の熱風オーブン中で3時間アニーリングして熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。
【0040】
この熱可塑性ポリウレタン樹脂を、ホーライ社製粉砕機UG−280型にて、3mm程度の粉末に粉砕して熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末を作製し、さらにこれをテクノベル社製二軸押出機KZW15TW−45HGにて溶融押出し成形した。幅150mm、リップ幅1.0mmのTダイスよりダイス温度200℃で剥離紙リンテック62AA(リンテック(株)社製)上に溶融物を押出し、厚み200μmのフィルムを得た。このフィルムをスリット加工し、6mm幅のテープを得た。このテープの融点(溶出開始温度)は114℃であった。
【0041】
40ゲージ2枚筬のトリコット編機を使用し、フロント筬(F)にナイロン22dtex/7fフルダル糸、バック筬(M)にスパンデックス22dTを用い、組織はデンビー組織で編成、通常の方法で染色、仕上げを行い、コース数72/インチ、ウェル数72/インチ、厚み320μmの編地を得た。この編地を編方向をタテ方向として、タテ15cm、ヨコ5cmとなるよう裁断し、こうして得た2枚の生地のニードルループ側を合わせて、生地の間に、熱可塑性ポリウレタン樹脂がタテ方向の中心にくるように配置して、熱プレス機(OA350型;アサヒ試験用プレス機(大阪アサヒ(株)社製)で圧力2kgf/cm2、温度100℃で10秒間接着し実施例1の布帛を得た。こうして得た実施例1の布帛につき、パネラー10名による風合い評価を実施した。
【0042】
[実施例2]
フィルムの厚みを100μmとする以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0043】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で得た熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末を直径50mmの単軸押出機にて溶融押出し、幅30mm、厚み0.2mmのスリットダイよりテープ状に押出し、延伸後、巻取って幅8mm、厚み170μmのテープを得た。このテープを用い、実施例1と同様の方法で、生地に熱プレスして実施例3の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0044】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で得た熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末を直径50mmの単軸押出機にて溶融押出し、丸断面の紡口を使用して繊維状に押出し、延伸後、巻取って繊度6000dTの繊維を得た。このテープを用い、実施例1と同様の方法で生地に熱プレスして実施例4の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0045】
[実施例5]
PTXG1800の使用量を1400g、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの使用量を389.4g、1,4−ブタンジオールの使用量を35gにする以外は実施例3と同様にして、実施例5の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0046】
[実施例6]
PTXG1800の使用量を1400g、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの使用量を389.4g、1,4−ブタンジオールの使用量を35gにする以外は実施例4と同様にして、実施例6の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0047】
[比較例1]
ポリアルキレンエーテルジオールとして、旭化成せんい株式会社製PTMG1,000を使用し、当該PTMG1400g及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート490.6gを、窒素ガス気流下80℃において180分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。ついで、これを25℃まで冷却した後、1,4−ブタンジオール50.4gを上記ポリウレタンプレポリマーに添加して30分間攪拌した。このポリウレタンに、酸化防止剤としてアデカ製AO−60を9g、黄変防止剤としてアデカ製LA−36を9g混合した後、テフロン(登録商標)トレイに払い出し、トレイごと130℃の熱風オーブン中で3時間アニーリングして熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。
【0048】
この熱可塑性ポリウレタン樹脂を、ホーライ社製粉砕機UG−280型にて、3mm程度の粉末に粉砕して熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末を作製し、さらにこれをテクノベル社製二軸押出機KZW15TW−45HGにて溶融押出し成形した。幅150mm、リップ幅1.0mmのTダイスよりダイス温度200℃で剥離紙上に溶融物を押出し、厚み200μmのフィルムを得た。このフィルムをスリット加工し、6mm幅のテープを得た。このテープを実施例1と同様の方法で生地に熱プレスし、比較例1の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0049】
[比較例2]
フィルムの厚みを100μmとする以外は、比較例1と同様の方法で、比較例2の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0050】
[比較例3]
比較例1と同様の方法で得た熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末を実施例3と同様の方法で押出して幅8mm、厚み170μmのテープとし、このテープを用いて実施例3と同様の方法で、生地に熱プレスして比較例3の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0051】
[比較例4]
比較例1と同様の方法で得た熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末を実施例4と同様の方法で押出して繊度6000dTの繊維とし、この繊維を用いて実施例4と同様の方法で、生地に熱プレスして比較例4の布帛を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0052】
以上の各実施例及び比較例における風合い評価の結果を表1に示す。表1の結果より、各実施例に係る本発明の布帛は、低温環境下においても布帛の端縁部や接合部が硬くならず、各比較例に係る布帛と比べて風合いが著しく向上したことが分かる。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の布帛は低温環境下で良好な風合いを有し、例えば衣類、各種資材等の織布、不織布又は編物として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明における溶出開始温度について説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)有機ポリイソシアネート化合物を、
(ii)分子量が300〜30,000のポリアルキレンエーテルジオール化合物であって、下記の構造単位(A):
【化1】

並びに構造単位(B):
【化2】

及び/又は構造単位(C):
【化3】

からなり、かつ下記式(1):
0.08≦(MB+MC)/(MA+MB+MC)≦0.85 (1)
{式中、MA、MB及びMCは、それぞれ、ポリアルキレンエーテルジオール化合物中に存在する構造単位(A)、(B)及び(C)のモル数である。}
を満たすもの
と反応させて得られる構造を含有する熱可塑性ポリウレタン樹脂によって接着された部分を有する布帛。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物からなる鎖延長剤に由来する構造をさらに含有する、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記イソシアネート基と反応する活性水素含有化合物がジオール類である、請求項2に記載の布帛。

【図1】
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【公開番号】特開2010−95810(P2010−95810A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265741(P2008−265741)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】