説明

熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末成形用材料及び成形品

【課題】低温下でのソフト感及び湿熱老化性に優れた樹脂粉末成形用材料を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)からなるポリウレタン樹脂粉末(A)と可塑剤(B)を含有してなる樹脂粉末成形用材料において、(B)が下記一般式(1)で示されるジエステルを含有し、かつ(A0)と(B)の溶解性パラメーターの差が0〜1.5である樹脂粉末成形用材料。


(式中、R、Rは、フェニル基、1〜3個の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および/またはハロゲン原子で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基であって、同じであっても異なっていてもよい。Aは炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基、Aの炭素数が2の場合nは3〜50、Aの炭素数が3又は4の場合nは2〜50である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末成形用材料に関するものである。さらに詳しくは、自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ成形用材料として適する熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末成形用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ成形用材料として、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末成形用材料が知られている。スラッシュ成形法は複雑な形状の成形体が容易に成形できること、材料の歩留まりが良いことから、自動車内外装材や家電部品、玩具、雑貨品等の用途に広く使用されている。これまでにスラッシュ成形用の熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末成形用材料として、成形性を確保するための粉体流動性、成形体としての性能(低温下でのソフト感、フォギング性等)について多くの改良がなされてきた。
例えば、芳香環含有ポリエステル系ポリウレタン樹脂粉末成形用材料(特許文献1参照)、
可塑剤としてリン酸エステル系可塑剤が使用されたポリエステル系ポリウレタン樹脂粉末成形用材料(特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−103957号公報
【特許文献2】特開2000−17032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリエステル系ポリウレタン樹脂は、加水分解を受けやすいエステル結合を有するために湿熱老化性が十分でないという問題点があり、さらなる向上が求められている。
本発明の課題は、粉末成形用材料として粉体流動性に優れ、低温下でのソフト感及び湿熱老化性に優れた成形体を得ることのできる樹脂粉末成形用材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】

本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、脂肪族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)からなるポリウレタン樹脂粉末(A)と可塑剤(B)を含有してなる樹脂粉末成形用材料において、(B)が下記一般式(1)で示されるジエステルを含有し、かつ(A0)と(B)の溶解性パラメーターの差(ΔSP値)が0〜1.5であることを特徴とする樹脂粉末成形用材料;及び該樹脂粉末成形用材料をスラッシュ成形してなる成形物である。
【化1】

(式中、R、Rは、フェニル基、1〜3個の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および/またはハロゲン原子で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基であって、同じであっても異なっていてもよい。Aは炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基、Aの炭素数が2の場合nは3〜50、Aの炭素数が3又は4の場合nは2〜50である。)
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂粉末成形用材料は、粉末成形用材料として粉体流動性に優れ、低温下でのソフト感及び湿熱老化性に優れた成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における脂肪族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)は、脂肪族ポリエステルジオールとジイソシアネートを反応して得られるウレタン樹脂である。
(A0)のガラス転移温度(以下、Tgと記載する。)は−70〜−30℃であることが好ましい。このうち−70〜−40℃がさらに好ましい。Tgが−30℃以下であると寒冷地で使用される場合に該材料のソフト感が得られ、引張試験における伸びが良好である。Tgが−70℃未満の熱可塑性ポリウレタン樹脂は通常得ることが困難である。
ここでいうガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置(例えばRheogel−E4000;株式会社ユービーエム製)で測定した表皮のE”ピークトップ温度をいう。
(A0)は、脂肪族ポリエステルジオールとジイソシアネートを必須成分として反応してなるウレタン樹脂であり、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン等を鎖伸長剤として用いる。
脂肪族ポリエステルジオールをジオールの主成分に使用した(A0)のガラス転移温度は通常だいたい−70〜−30℃となる。ジオール成分として芳香族ポリエステルジオールを使用してもよいが、脂肪族ポリエステルジオールと芳香族ポリエステルジオールの使用比率は100:0〜60:40重量%が好ましい。
【0008】
脂肪族ポリエステルジオールとしては、数平均分子量500〜10,000が好ましく、例えば、(1)縮合ポリエステルジオール、(2)ポリラクトンジオール、(3)ポリカーボネートジオール、及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。
上記(1)は例えばジオール(低分子ジオール及び/又はポリエーテルジオール等)の1種以上とジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、酸無水物、ハライド(クロライド等)等]との縮合重合、又は、ジオールとジカルボン酸無水物及びアルキレンオキサイドとの反応により製造することができる。
上記(2)は上記ジオールの1種以上を開始剤としてラクトンを開環重合して得られる。
上記(3)は上記ジオールとアルキレンカーボネート(エチレンカーボネート)との反応により製造することができる。
【0009】
上記(1)、(2)及び(3)のための原料ジオールのうち低分子ジオールとしては、例えば、脂肪族低分子ジオール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール等);環状基を有する低分子ジオール類[例えば特公昭45−1474号公報に記載のもの:1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及びこれらの2種以上の併用等を挙げることができ、ポリエーテルジオールとしては、例えば、2個の活性水素原子を有する化合物(2価アルコール、1級モノアミン等)にアルキレンオキサイドが付加した構造の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。また、上記2個の活性水素原子を有する化合物として好ましいものは2価アルコール、特に好ましいのは脂肪族低分子ジオール類(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,10−デカンジオール)である。
【0010】
上記(1)のための原料ジカルボン酸としては、例えば、炭素数2〜10の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等)、これらのエステル形成性誘導体(酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル、ジエチルエステル等)、酸ハライド(酸クロライド等)等及びこれらの2種以上の併用等が挙げられる。
【0011】
上記(1)の好ましい例としては、例えば、ポリヘキサメチレンサクシネートジオール、ポリブチレンアジペートジオール及びポリトリメチレンセバケートジオールならびにこれらの併用等を挙げることができる。
上記(2)ポリラクトンジオールの好ましい例としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の混合物のポリラクトンジオールが挙げられる。
上記(3)ポリカーボネートジオールの好ましい例としては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0012】
ジイソシアネートとしては、例えば、
炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート{1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート等};
炭素数4〜15の脂環族ジイソシアネート{イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等};
炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート{m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等};
これらジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物等)を使用することができる。
これらの中で脂肪族ジイソシアネートが好ましく、さらに1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。
【0013】
必要に応じて、鎖伸長剤として添加される低分子ジオールとしては、例えば、
脂肪族ジオール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等);
脂肪族環状基含有ジオール(1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA等)等が挙げられる。
【0014】
必要に応じて、鎖伸長剤として添加される低分子ジアミンとしては、例えば、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン及び/又は水が挙げられる。
上記脂肪族ジアミンとしては、例えば、炭素数4〜15の脂環族ジアミン{4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)等};
炭素数2〜18の脂肪族ジアミン{1,2−エチレンジアミン1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HDA)1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン等};
芳香脂肪族ジアミン(キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジアミン等);
炭素数3〜17のカーボネート系ジアミン、例えばビス(2−アミノエチル)カーボネート、ポリオキシエチレンジアミン(分子量500以下)、ポリオキシテトラメチレンジアミン(分子量500以下);及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0015】
必要に応じて熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)の分子量を調整するための末端封止剤を使用することができる。末端封止剤としては例えば、低分子モノオール、炭素数2〜18の脂肪族モノアミン等を挙げることができる。
脂肪族モノアミンとしては、例えば、モノアルキルアミン{メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等];ジアルキルアミン{ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等};モノ−及びジ−アルカノールアミン{モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等};及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
低分子モノオールとしては、例えば脂肪族アルコール{メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール等};脂肪芳香族アルコール{ベンジルアルコール等}が挙げられる。これらのうち好ましいものは脂肪族アルコール、脂肪芳香族アルコール及び脂肪族モノアミンであり、さらに好ましいものは1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、ジプロピルアミン及びジブチルアミンである。
【0016】
脂肪族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)の数平均分子量は、好ましくは5,000〜50,000、さらに好ましくは8,000〜40,000である。成形体の破断強度の観点から5,000以上が好ましく、熱溶融時の溶融粘度の観点から50,000以下が好ましい。ここでいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0017】
脂肪族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)からなるポリウレタン樹脂粉末(A)としては、例えば以下の製造方法で得られるものが挙げられる。
(1)まず、脂肪族ポリエステルジオールと過剰のジイソシアネートから、公知の方法によりイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを製造する。水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平8−120041号公報等に記載されたものを使用することができる。
(2)(1)と同様のウレタンプレポリマーを、該ウレタンプレポリマーが溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/またはジオール)と反応させる方法で製造されるもの。具体的には、例えば、特開平4−202331号公報等に記載されたものを使用することができる。
(3)脂肪族ポリエステルジオールとジイソシアネートと必要に応じて鎖伸長剤(低分子ジオール、低分子ジアミン)とを反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下に細孔を通し切断する方法)する方法で製造されるもの。
上記の製造方法の内、(1)が好ましい。
【0018】
ポリウレタン樹脂粉末(A)の体積平均粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは70〜300μmの範囲にある。体積平均粒径は、レーザー回折/散乱法で行い、例えばマイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製MKIISRA 7997−10)で測定することができる。
【0019】
可塑剤(B)としては下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
【化2】

(式中、R、Rは、フェニル基、1〜3個の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および/またはハロゲン原子で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基であって、同じであっても異なっていてもよい。Aは炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基、Aの炭素数が2の場合nは3〜50、Aの炭素数が3又は4の場合nは2〜50である。)
【0020】
上記一般式(1)において、R及びRの具体例としては、フェニル基、トルイル基、キシレニル基、4−ブチルフェニル基、2,4−ジブチルフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
また、Aとしては炭素数2〜4の直鎖または分岐のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、イソブチレン基等)及びこれらのハロゲン置換された基(1−クロロメチルエチレン基、1−ブロモメチルエチレン基等)が挙げられる。
【0021】
これらのうち好ましいものはR及びRがフェニル基、Aがエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基のものである。上記一般式(1)においてAの炭素数が2の場合nは3〜50、Aの炭素数が3又は4の場合nは2〜50である。nが50を越えるとSP値が低くなり、ウレタン樹脂とのΔSPが大きくなり、ウレタン樹脂への相溶性が悪化し、樹脂粉末のベタツキ、さらには可塑剤のブリードアウトなどの不具合が発生する。Aの炭素数が2の場合nが3未満では分子量が低く沸点が低下するため、フォギングが発生する傾向がある。また、Aの炭素数が3又は4の場合nが2未満では分子量が低く沸点が低下するため、フォギングが発生する傾向がある。
可塑剤(B)としては上記一般式(1)で示される化合物であって、nの異なる化合物の混合物でもよく、混合物である場合、nは平均値で表すものとする。
【0022】
可塑剤(B)の製造方法としては、カルボン酸とポリオキシアルキレングリコールを特定組成のチタン触媒下、エステル化させる方法(例えば特開2001−64382記載の方法)が挙げられる。
チタン触媒については、例えば、O=Ti(OCOQCOOM)2
[式中、Mはアルカリ金属、Qは直接結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表す]で表されるものが好ましい。
【0023】
可塑剤(B)の具体例としては、例えば、
一般式(1)において
(1)R、Rがフェニル基、Aがエチレン基、nが6〜8
(2)R、Rがフェニル基、Aがトリメチレン基、nが3〜5
(3)R、Rがフェニル基、Aがテトラメチレン基、nが2〜4
のものが挙げられる。
【0024】
可塑剤(B)の配合割合は、上記ポリウレタン樹脂粉末(A)100重量部あたり2〜50重量部が好ましく、さらに好ましくは2〜30重量部である。2重量部以上であると、成形時の溶融粘度が低く成形性が良好であり、50重量部以下であると成形表皮表面へ経時でブリードアウトすることがない。
【0025】
可塑剤(B)は単独使用が好ましいが、必要に応じて、(B)以外の可塑剤を含有することも出来る。(B)以外の可塑剤の含有量は可塑剤(B)の重量に対して0〜50重量%であることが好ましい。
使用できる(B)以外の可塑剤としては特に制限はないが、例えば、エポキシ系可塑剤、エステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、エーテル系可塑剤等が挙げられる。
【0026】
脂肪族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)と可塑剤(B)の溶解性パラメーターの差(ΔSP値)は0〜1.5であり、0〜1.0が好ましく、0〜0.5がさらに好ましい。この範囲であると、両者の相溶性が良く、(B)が(A0)からなるウレタン樹脂粉末(A)に良く含浸するため、可塑剤としての性能を良く発現することが出来、さらに粒子表面にベタツキを発生しないため、粒子の粉体流動性に優れる。また、成形表皮表面へのブリードアウトの発生がない。
【0027】
(A0)と(B)の溶解性パラメーターは、「Polymer Enineering and Science、Vol.14,No.2,p147−154(1974)」に記載の方法(Fedors法)により計算することが出来る。なお、SP値は、次式で表せる。
SP値(δ)=(ΔH/V)1/2
ただし、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal)を、Vはモル体積(cm3)を表す。
また、ΔH及びVは、上記文献の151〜153頁に記載の原子団のモル蒸発熱の合計(ΔH)とモル体積の合計(V)を用いることができる。
この数値が近いもの同士はお互いに混ざりやすく(相溶性が高い)、この数値が離れているものは混ざりにくいことを表す指標である。
【0028】
本発明の樹脂粉末成形用材料は可塑剤と熱可塑性ウレタン樹脂とのΔSP値を制御する事により、可塑剤のウレタン樹脂への相溶性が良い。これにより、樹脂粉末表面は可塑剤のベタツキが発生せず、粉体流動性が良好であるため粉末成形用材料としての成形性に優れる。
また、(A0)のポリオール成分をガラス転移点の低い脂肪族ポリエステルジオール、さらに可塑剤骨格へアルキレン基を導入する事により、可塑剤自身のガラス転移点を低下させることで低温下でのソフト感を維持し、可塑剤(B)の一般式(1)に示すn数の調整により、可塑剤の沸点を制御する事で成形体のフォギング性を維持することができる。
さらに可塑剤自身が湿熱老化により加水分解を受けた際に、成形体の加水分解を促進させる強酸等の促進剤を発生しないため、湿熱老化性に優れた成形体を与えることができる。
【0029】
本発明の樹脂粉末成形用材料には、ポリウレタン樹脂粉末(A)、可塑剤(B)以外に、必要により、添加剤を添加することができる。添加剤としてはフィラー、安定剤、顔料、離型剤、ブロッキング防止剤、分散剤等が添加できる。
添加剤の添加量は(A)と(B)の合計重量に対して好ましくは0〜50重量%である。
【0030】
フィラーとは、例えばカオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー、金属粉末等の無機フィラーが挙げられる。これらのなかで、熱可塑性樹脂の結晶化促進の観点から、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウムが好ましく、特にカオリン、タルクがさらに好ましい。

無機フィラーの体積平均粒径は、熱可塑性樹脂中への分散性の観点から好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは1〜20μm、特に好ましくは5〜10μmである。
【0031】
安定剤とは、例えば公知の酸化防止剤及び/または光安定剤及び/または分子中に炭素原子間の二重結合(置換基を有していてもよいエチレン結合)(ただし芳香環中の二重結合は除く)、三重結合(置換基を有していてもよいアセチレン結合)を有する化合物である。
酸化防止剤とは、例えばフェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール等)、ビスフェノール系(2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)、リン系(トリフェニルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト等)等が挙げられる。
光安定剤とは、紫外線吸収剤[ベンゾフェノン系(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等)、ベンゾトリアゾール系(2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等)等]、クエンチャー[ニッケルキレート系等]、サリチル酸系[フェニルサリシレート等]、ラジカル補足剤[ヒンダードアミン系((ビス2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等)等が挙げられる。
分子中に炭素原子間の二重結合(置換基を有していてもよいエチレン結合)(ただし芳香環中の二重結合は除く)、三重結合(置換基を有していてもよいアセチレン結合)を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類(2〜10価またはそれ以上の多価アルコール。以下同様)とのエステル[例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等];(メタ)アリルアルコールと2〜6価、またはそれ以上の多価カルボン酸類とのエステル[例えばジアリルフタレート、トリメリット酸トリアリルエステル等];多価アルコール類のポリ(メタ)アリルエーテル[例えばペンタエリスリトール(メタ)アリルエーテル等];多価アルコール類のポリビニルエーテル[例えばエチレングリコールジビニルエーテル等];多価アルコール類のポリプロペニルエーテル[例えばエチレングリコールジプロペニルエーテル等];ポリビニルベンゼン類[例えばジビニルベンゼン等]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは、ラジカル重合速度の点で、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類とのエステルであり、特に好ましいものはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。
【0032】
顔料としては、例えば公知の有機顔料及び/または無機顔料を使用することができる。有機顔料としては不溶性アゾ顔料、可溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられ、無機顔料としてはカーボンブラック、クロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物、硫化セレン化合物、金属塩類(硫酸塩、硅酸塩、炭酸塩、リン酸塩等)金属粉末等が挙げられる。
【0033】
離型剤としては、公知の離型剤が使用でき、例えば、フッ素系離型剤(リン酸フルオロアルキルエステル等)、シリコン系離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシル変性ジメチルポリシロキサン、エーテル変性ジメチルポリシロキサン等)、脂肪酸エステル系離型剤(アルカン(炭素数11〜24)酸アルケニル(炭素数6〜24)エステル等)、リン酸エステル系離型剤(リン酸トリブチルエステル等)等が挙げられる。
【0034】
ブロッキング防止剤としては、例えば公知の無機系ブロッキング防止剤及び/または有機系ブロッキング防止剤を使用することができる。無機系ブロッキング防止剤としては、例えばシリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、例えば粒子径10ミクロン以下の熱硬化性樹脂(熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂等)及び粒子径10ミクロン以下の熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート樹脂等)、マレイミド樹脂粉末等が挙げられる。
【0035】
上記添加剤をポリウレタン樹脂粉末(A)に添加、混合するときに使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置(ヘンシエルミキサー(登録商標)等)、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ(登録商標)等)を使ってドライブレンドする方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)、および円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ(登録商標、以下省略)等)を使用するのが好ましい。
【0036】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物をスラッシュ成形法で成形するには、例えば、本発明の粉末組成物が入ったボックスと200〜280℃に加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後冷却後固化させ、シートを製造する方法で好適に実施することができる。
本発明の成形用材料で成形されたシート厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。
これらの成形シートは金型形状により様々な形状に対応する事ができ、例えばインスツルメントパネルやドアトリム等の自動車内装部品、家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ成形用材料として適する。
【実施例】
【0037】
以下、製造例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0038】
製造例1
プレポリマー溶液1の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1,000のポリブチレンアジペートジオール(616.2部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]、体積平均径9μmのカオリン(90.7部)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて1−オクタノール(10.4部)、MEK(125.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(155.3部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571] を仕込み、均一攪拌し、プレポリマー溶液(UP−1)を得た。得られた(UP−1)のNCO含量は、2.1%であった。
【0039】
比較製造例2
プレポリマー溶液2の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mn1,000のポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(616.2部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]体積平均径9μmのカオリン(90.7部)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて1−オクタノール(10.4部)、MEK(125.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、イソホロンジイソシアネート(205.2部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571] とを仕込み、均一攪拌し、プレポリマー溶液(UP−2’)を得た。得られた(UP−2’)のNCO含量は、2.1%であった。
【0040】
製造例3
ジアミンのMEKケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミン(116部)、過剰のメチルエチルケトン(以下、MEKと記す。288部、ジアミンに対して4倍モル量)、n−ヘキサン(29部)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEK、n−ヘキサンを除去してMEKケチミン化物(K−1)を得た。
【0041】
製造例4
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液(UP−1)(100.0部)と製造例3で得たMEKケチミン化物(K−1)(5.4部)を混合投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8)(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0−1)からなるポリウレタン樹脂粉末(A−1)を製造した。(A0−1)のガラス転移温度は−46℃であった。
【0042】
比較製造例5
反応容器に、比較製造例2で得たプレポリマー溶液(UP−2’)(100.0部)と製造例3で得たMEKケチミン化物(K−1)(5.4部)を混合投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8)(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0−2’)からなるポリウレタン樹脂粉末(A−2’)を製造した。(A0−2’)のガラス転移温度は−29℃であった。
【0043】
製造例6
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置に安息香酸244g、ポリエチレングリコール(分子量330)330g、シュウ酸チタンカリウム0.51g、キシレン70gを仕込み、液中窒素パス(流量30ml/min)を行いながら200℃まで昇温した。8時間エステル化反応を行い、反応中に生成した縮合水を系外へ除去した。生成物を炭酸ナトリウム5重量%水溶液で洗浄した後、減圧下でキシレン留去し、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル(PEG安息香酸)(B−1)540gを得た。一般式(1)のn(平均値)は7.1である。
【0044】
製造例7
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置に安息香酸244g、ポリトリメチレングリコール250g(分子量250)(植物由来Dupont社製;Cerenol H250)、シュウ酸チタンカリウム0.51g、キシレン70gを仕込み、液中窒素パス(流量30ml/min)を行いながら200℃まで昇温した。8時間エステル化反応を行い、反応中に生成した縮合水を系外へ除去した。生成物を炭酸ナトリウム5重量%水溶液で洗浄した後、減圧下でキシレン留去し、ポリトリメチレングリコールジ安息香酸エステル(P3MG250安息香酸)(B−2)450gを得た。一般式(1)のn(平均値)は4である。
【0045】
製造例8
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置に安息香酸244g、ポリテトラメチレングリコール234g(分子量234)、シュウ酸チタンカリウム0.51g、キシレン70gを仕込み、液中窒素パス(流量30ml/min)を行いながら200℃まで昇温した。8時間エステル化反応を行い、反応中に生成した縮合水を系外へ除去した。生成物を炭酸ナトリウム5重量%水溶液で洗浄した後、減圧下でキシレン留去し、ポリテトラメチレングリコールジ安息香酸エステル(P4MG安息香酸)(B−3)400gを得た。一般式(1)のn(平均値)は3である。
【0046】
製造例9
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置に安息香酸244g、ポリトリメチレングリコール650g(分子量650)(植物由来Dupont社製;Cerenol H650)、シュウ酸チタンカリウム0.51g、キシレン70gを仕込み、液中窒素パス(流量30ml/min)を行いながら200℃まで昇温した。8時間エステル化反応を行い、反応中に生成した縮合水を系外へ除去した。生成物を炭酸ナトリウム5重量%水溶液で洗浄した後、減圧下でキシレン留去し、ポリトリメチレングリコールジ安息香酸エステル(P3MG650安息香酸)(B−4)850gを得た。一般式(1)のn(平均値)は10.9である。
【0047】
比較製造例10
ディーンスターク装置を取り付けたガラス製反応装置に安息香酸244g、ポリプロピレングリコール1503g(分子量1503)、シュウ酸チタンカリウム0.51g、キシレン70gを仕込み、液中窒素パス(流量30ml/min)を行いながら200℃まで昇温した。8時間エステル化反応を行い、反応中に生成した縮合水を系外へ除去した。生成物を炭酸ナトリウム5重量%水溶液で洗浄した後、減圧下でキシレン留去し、ポリプロピレングリコールジ安息香酸エステル(PPG安息香酸)(B−5’)1700gを得た。一般式(1)のn(平均値)は25.6である。
【0048】
実施例1
製造例4で得られたポリウレタン樹脂粉末(A−1)(103.0部)、製造例6で得られた可塑剤ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル(PEG安息香酸)(B−1)11.5部、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]0.3部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]0.3部を投入混合し、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)を得た。(S−1)の体積平均粒径は148μmであった。
【0049】
実施例2
ポリウレタン樹脂粉末(A−1)(103.0部)、製造例7で得られた可塑剤ポリトリメチレングリコールジ安息香酸エステル(P3MG250安息香酸)(B−2)11.5部、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]0.3部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]0.3部を投入混合し、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−2)を得た。(S−2)の体積平均粒径は151μmであった。
【0050】
実施例3
ポリウレタン樹脂粉末(A−1)(103.0部)、製造例8で得られた可塑剤ポリテトラメチレングリコールジ安息香酸エステル(P4MG安息香酸)(B−3)11.5部、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]0.3部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]0.3部を投入混合し、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−3)を得た。(S−3)の体積平均粒径は152μmであった。
【0051】
実施例4
ポリウレタン樹脂粉末(A−1)(103.0部)、製造例9で得た可塑剤ポリトリメチレングリコールジ安息香酸エステル(P3MG650安息香酸)(B−4)11.5部、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]1.0部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]1.0部を投入混合し、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−4)を得た。(S−4)の体積平均粒径は150μmであった。
【0052】
比較例1
ポリウレタン樹脂粉末(A−1)(103.0部)、比較製造例10で得られた可塑剤ポリプロピレングリコールジ安息香酸エステル(PPG安息香酸)(B−5’)11.5部、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]0.3部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]0.3部を投入混合し、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−5’)を得た。(S−5’)の体積平均粒径は151μmであった。
【0053】
比較例2
ポリウレタン樹脂粉末(A−1)(103.0部)、リン酸エステル系可塑剤(B−6’)(11.5部)[大八化学(株)製;CR741]、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]0.3部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]0.3部を投入混合し、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−6’)を得た。(S−6’)の体積平均粒径は150μmであった。
【0054】
比較例3
比較製造例5で得られたポリウレタン樹脂粉末(A−2’)(103.0部)、可塑剤ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル(B−1)11.5部、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]0.3部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]0.3部を投入混合し、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−7’)を得た。(S−7’)の体積平均粒径は149μmであった。
【0055】
実施例1〜4のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−4)、及び比較例1〜3のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−5’)〜(S−7’)を使用して、下記に示す方法で粉体流動性、引張強度、ガラス転移温度、フォギング、湿熱老化性を測定し、結果を表1に示した。
【0056】
<粉体流動性(スパチュラ角・安息角)>
粉体流動性を評価するために、パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製PT−R型)にてスパチュラ角・安息角を測定した。測定は、温度23±0.5℃、湿度50±2%に調節した温調室にて実施した。スパチュラ角・安息角の値が小さいほど、粉体流動性が良い。
【0057】
<成形シートの作成方法>
予め270℃に加熱したシボ付きNi電鋳型に樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−4)、(S−5’)〜(S−7’)、ポリウレタン樹脂粉末(A−1)、(A−2’)を流し込み、10秒後余分な樹脂粉末を排出する。室温下で60秒間放置した後、水冷、脱型すると膜厚1mm程度の均一な表皮が得られた。
【0058】
上記の方法で作成した成形シートを下記の方法で引張強度及び引裂強度を測定した。
・引張強度はJIS K6251−2004に準拠して測定した。
・引裂強度はJIS K6252−2004に準拠して測定した。
【0059】
また、ガラス転移温度、フォギング試験、耐湿熱老化性試験はシート作成後、23℃、50%RHの条件下、24時間保管したものを使用した。
・ガラス転移温度
幅約5mm、長さ約45mmの試験片を切り取り、動的粘弾性測定装置(Rheogel−E4000、UBM製)に取り付け、周波数10Hzで−80℃から30℃まで引張温度依存性の測定を行った。得られたE’’ピークトップ温度を樹脂のガラス転移温度として見積もった。
・フォギング試験(ガラス霞み度)
内径50mm、長さ150mmの底付き円筒管に試験片5.0gを入れ、厚さ4mmの透明ガラス板で蓋をした後、100℃のオイルバスに底から50mmの位置まで浸して24時間静置加熱した。試験後、ガラス板の透過率を測定した。ガラス板の透過率が高いものほどフォギング成分の発生が少ない。
・耐湿熱老化性試験
試験片を80℃、95%RHに設定した恒温恒湿機に400時間保管した後、25℃、50%RHの条件下に24時間保管したものを測定に使用し、JIS K6252−2004に準拠して引裂強度を測定した。初期の引裂強度と試験後の引裂強度から変化率(%)を求め、評価した。変化率が小さいほど耐湿熱老化性に優れる。
変化率(%)=100×(初期の引裂き強度−400時間後の引裂き強度)/(初期の引裂き強度)
【0060】
【表1】

【0061】
表1からわかるように、実施例1〜4の本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は粉末成形用材料としての粉体流動性に優れる。いっぽう、比較例1の樹脂粉末組成物は粉体流動性に劣り、成形性が悪く、べたつきがあるために良好な表皮が得られなかった。
実施例1〜4の表皮は、Tgが低く低温下でのソフト感に優れる。いっぽう、比較例3の表皮はTgが高く低温下でのソフト感に劣る。
実施例1〜4の表皮は湿熱老化性に優れているが、比較例2の表皮は湿熱老化性に劣る。
実施例1〜4の表皮はフォギング成分の発生が少なく、引張強度、引裂強度も充分である。
本発明の樹脂粉末成形用材料から成形される表皮は、自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ成形用材料として、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等のスラッシュ成形用材料として好適に使用される。
さらに原料にバイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の樹脂粉末成形用材料から成形される表皮は、自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ成形用材料として、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等のスラッシュ成形用材料として好適に使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)からなるポリウレタン樹脂粉末(A)と可塑剤(B)を含有してなる樹脂粉末成形用材料において、(B)が下記一般式(1)で示されるジエステルを含有し、かつ(A0)と(B)の溶解性パラメーターの差(ΔSP値)が0〜1.5であることを特徴とする樹脂粉末成形用材料。
【化1】

(式中、R、Rは、フェニル基、1〜3個の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基および/またはハロゲン原子で置換されたフェニル基からなる群より選ばれる基であって、同じであっても異なっていてもよい。Aは炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレン基、Aの炭素数が2の場合nは3〜50、Aの炭素数が3又は4の場合nは2〜50である。)
【請求項2】
脂肪族ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)のガラス転移温度が−70〜−30℃である請求項1に記載の樹脂粉末成形用材料。
【請求項3】
可塑剤(B)をポリウレタン樹脂粉末(A)の重量に対して2〜50重量%含有する請求項1又は2に記載の樹脂粉末成形用材料。
【請求項4】
スラッシュ成形用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粉末成形用材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂粉末成形用材料をスラッシュ成形してなる成形物。
【請求項6】
自動車内装部品である請求項5に記載の成形物。


【公開番号】特開2010−285474(P2010−285474A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138294(P2009−138294)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】