説明

熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物

【課題】従来の熱可塑性ポリウレタンの欠点が改良された熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の提供。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタン(A)73〜98.9質量%と、ポリアミド樹脂(B)1〜25質量%と、滑剤(C)0.1〜2質量%とを混合してなる(上記AとBとCとの合計は100質量%である)ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、および該組成物から成形されたことを特徴とするケーブルシース、コンベアベルトまたはエアチューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた滑性が要求されるケーブルシース、コンベアベルトまたはエアチューブなどの製造に適した熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンは、高強度、耐摩耗性、耐屈曲性などの強靭な特性を有し、従来から耐圧チューブ・ホース、パッキン、コンベアベルトや靴底などの用途に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−212430号公報
【特許文献2】特開平04−268372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の熱可塑性ポリウレタンは滑性が小さいため、機器の可動部分に使用されるエアホースやケーブルにおいて、可動状態で機器の他の部分と接触した場合、滑性が小さいことによる摩擦によってポリウレタン部分が破壊されてしまう場合があった。
【0005】
本発明は、従来の熱可塑性ポリウレタンの上記欠点が改良された熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の提供を目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため種々検討した結果、熱可塑性ポリウレタンに、ポリアミド樹脂と滑剤とを同時に加えた組成物とし、該組成物から滑性が大きく、摩擦係数の小さい熱可塑性ポリウレタン成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、熱可塑性ポリウレタン(A)73〜98.9質量%、好ましくは79〜94.8質量%と、ポリアミド樹脂(B)1〜25質量%、好ましくは5〜20質量%と、滑剤(C)0.1〜2質量%、好ましくは0.2〜1質量%とを混合してなる(上記AとBとCとの合計は100質量%である)ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、および該組成物から成形されたことを特徴とするケーブルシース、コンベアベルトまたはエアチューブを提供する。
【0007】
上記本発明においては、前記熱可塑性ポリウレタンが、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカプロラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンまたはポリジメチルシロキサン構造を含むポリウレタンであること;前記ポリアミド樹脂が、6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンまたはアミド結合を有するポリアミドエラストマーであること;前記滑剤が、脂肪酸アミド系滑剤、モンタン酸系滑剤またはそれらの混合物であること;前記熱可塑性ポリウレタンが、ポリエーテル系ポリウレタンまたはポリカーボネート系ポリウレタンであり、前記ポリアミド樹脂が、6ナイロンまたは12ナイロンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、滑性が大きく、摩擦係数の小さい成形品を与える熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物が得られ、該熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、ケーブルシース、コンベアベルトまたはエアチューブ用などとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に発明を実施するための形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
従来、各種樹脂成形品にポリテトラフルオロエチレン粉末を加えることによって、当該樹脂成形品の滑性を向上させることが知られているが、ポリテトラフルオロエチレン粉末が高価であり、また、ポリテトラフルオロエチレン粉末が樹脂成形品から脱落するという欠点がある。また、各種樹脂成形品に鉱物油を加えることにより、樹脂成形品の滑性を向上させることが知られているが、鉱物油はポリウレタンに対して相溶性が低く、鉱物油が成形品表面からブリードし易く、成形品の外観上問題となり易い。
【0010】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンにポリアミド樹脂と滑剤を加えた樹脂組成物とすることにより、上記課題が解決され、良好な滑性を要する用途、例えば、ケーブルシース、コンベアベルトまたはエアチューブ用などの製造に有用な熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明で使用する熱可塑性ポリウレタンとしては、芳香族イソシアネート系のポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカプロラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン構造を含むシリコーン樹脂共重合系ポリウレタンが使用できる。また、脂肪族イソシアネート系のポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカプロラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン構造を含むシリコーン樹脂共重合系ポリウレタンが使用できる。
【0012】
より望ましい熱可塑性ポリウレタンは、耐加水分解性の点から芳香族イソシアネート系のポリエーテル系ポリウレタン、あるいはポリカーボネート系ポリウレタンである。上記熱可塑性ポリウレタンの使用量は、組成物全量の内で73〜98.9質量%、好ましくは79〜94.8質量%である。上記熱可塑性ポリウレタンの使用量が73質量%未満であると、ポリウレタン樹脂本来の特徴である良好な耐摩耗性を発現できなくなり、一方、上記熱可塑性ポリウレタンの使用量が98.9質量%を超えると、成形物の滑性が小さくなり、摩擦係数が大きくなってしまう。
【0013】
本発明で使用するポリアミド樹脂としては、従来公知の6ナイロン、66ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、46ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリエステルアミドエラストマー、可塑剤入りナイロン、ゴム強化ナイロンなどが使用できる。より望ましいポリアミド樹脂は、加工温度が熱可塑性ポリウレタンと近い11ナイロンまたは12ナイロンである。上記ポリアミド樹脂の使用量は、組成物全量の内で1〜25質量%、好ましくは5〜20質量%である。上記ポリアミド樹脂の使用量が1質量%未満であると、成形物の滑性が小さくなり、摩擦係数が大きくなってしまい、一方、上記ポリアミド樹脂の使用量が25質量%を超えると、ポリウレタン樹脂本来の特徴である良好な耐摩耗性を発現できなくなる。
【0014】
前記熱可塑性ポリウレタンと前記ポリアミド樹脂との好ましい組み合わせは、前記熱可塑性ポリウレタンがポリエーテル系ポリウレタンまたはポリカーボネート系ポリウレタンであり、前記ポリアミド樹脂が、6ナイロンまたは12ナイロンである組み合わせである。
【0015】
本発明で使用する滑剤としては、脂肪酸アミド系滑剤またはモンタン酸系滑剤の単独、あるいはそれらの混合物が使用できる。脂肪酸アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが使用できる。モンタン酸系滑剤としては、モンタン酸エステル、モンタン酸エステル部分ケン化物、モンタン酸ナトリウム塩、モンタン酸カルシウム塩などが使用できる。好ましくは、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、モンタン酸エステルまたはモンタン酸エステル部分ケン化物を、単独あるいはそれらを組み合わせて使用する。上記滑剤の使用量は、組成物全量の内で0.1〜2質量%、好ましくは0.2〜1質量%である。上記滑剤の使用量が0.1質量%未満であると、成形物の滑性が小さくなり、摩擦係数が大きくなってしまい、一方、上記滑剤の使用量が2質量%を超えると、成形物の滑性が大きくなり過ぎ、成形時の加工安定性が悪化する。
【0016】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、前記熱可塑性ポリウレタンとポリアミド樹脂と滑剤とを前記比率で混合し、必要に応じて任意の添加剤とともに、押出機やロールなどの任意の混練方法で混練することによって得られ、該組成物の形状は、ペレット状、フレーク状、板状、シート状、粉状など、何れの形状であってもよい。
【0017】
さらに、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、顔料や染料、ガラス繊維、金属繊維、金属フレーク、炭素繊維などの補強剤や充填剤、2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤、トリス(ミックスド、モノおよびジフェニル)ホスファイト、ジフェニル・イソデシルホスファイトなどのホスファイト系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジアステリアルチオジプロピオネートなどの硫黄系酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を適宜配合することができる。
【0018】
また、ビス(2,2,6,6)−テトラメチル−4−ピペリジニルなどの光安定剤、ヒドロキシルアルキルアミン、スルホン酸塩などの帯電防止剤、およびテトラブロムビスフェノールA、デカブロモビスフェノールオキサイド、TBAエポキシオリゴマー、TBAポリカーボネートオリゴマー、三酸化アンチモン、TPP、リン酸エステル、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メラミン、リン酸メラミンなどの難燃剤などの各種添加剤を適宜配合することができる。このような各種添加剤を配合することにより、樹脂組成物にさらに望ましい物性、特性を付与することができる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は特にケーブルシース、コンベアベルトまたはエアチューブなどの物品の製造に有用である。以下に上記物品の製造について説明する。
【0020】
「ケーブルシースの製造」
例えば、銅線を撚り合わせてなる導体上に、ポリエチレンの絶縁体層を設け、ケーブル中心部を形成する。さらにこのケーブル中心部の上に、クロスヘッドダイを持つ押出機でチューブ状に本発明の樹脂組成物を押し出して被覆層を施し、ケーブルシースとすることができる。
【0021】
「コンベアベルトの製造」
例えば、接着剤を塗布したポリエステル繊維の平織物状物に対して、Tダイを持つ押出機で押し出したフィルム状の本発明の樹脂組成物を接着させることによって、コンベアベルトとすることができる。
【0022】
「エアチューブの製造」
例えば、スパイラルダイを持つ押出機で本発明の樹脂組成物をパイプ状に押し出すことによって、エアチューブとすることができる。
【実施例】
【0023】
以下、実例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0024】
(実施例1)
硬度JIS A94のポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−1078F)90部に、6ナイロン(東レ製、商品名:アミランCM1007)10部とエルカ酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドE)0.7部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U1)の試料を得た。
【0025】
(比較例1)
硬度JIS A94のポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−1078F)90部に、6ナイロン(東レ製、商品名:アミランCM1007)10部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、比較例の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U2)の試料を得た。
【0026】
(比較例2)
硬度JIS A94のポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−1078F)100部に、エルカ酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドE)0.7部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、比較例の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U3)の試料を得た。
【0027】
(実施例2)
硬度JIS A94のポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−2294)85部に、6ナイロン(東レ製、商品名:アミランCM1007)15部とオレイン酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドO−N)0.6部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U4)の試料を得た。
【0028】
(実施例3)
硬度JIS A94のポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−2294)85部に、11ナイロン(東レ製、商品名:リルサンBMNO)15部とモンタン酸エステル(ヘキストジャパン製、商品名:ヘキストワックスE)0.8部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U5)の試料を得た。
【0029】
(実施例4)
硬度JIS A94のポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−2294)85部に、12ナイロン(エムスケミージャパン製、商品名:グリルアミドL20G)15部とエルカ酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドE)0.7部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U6)の試料を得た。
【0030】
(実施例5)
硬度JIS A94のポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−2294)85部に、12ナイロン(エムスケミージャパン製、商品名:グリルアミドL20G)15部とエルカ酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドE)0.5部並びにモンタン酸部分ケン化エステル(ヘキストジャパン製、商品名:ヘキストワックスOP)0.2部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U7)の試料を得た。
【0031】
(比較例3)
硬度JIS A94のポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−2294)80部に、12ナイロン(エムスケミージャパン製、商品名:グリルアミドL20G)20部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、比較例の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U8)の試料を得た。
【0032】
(比較例4)
硬度JIS A94のポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−2294)100部に、エルカ酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドE)0.7部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、比較例の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U9)の試料を得た。
【0033】
(実施例6)
硬度JIS A94のポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−2294)80部に、アミドエラストマー(ダイセルデグサ製、商品名:ダイアミドPAE E62S3)20部とモンタン酸部分ケン化エステル(ヘキストジャパン製、商品名:ヘキストワックスOP)0.8部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U10)の試料を得た。
【0034】
(実施例7)
硬度JIS A95のポリカプロラクトン系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−4130F)80部に、11ナイロン(東レ製、商品名:リルサンBMNO)20部とオレイン酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドO−N)0.7部を加えて、200〜220℃の押出機で混合し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U11)の試料を得た。
【0035】
(実施例8)
硬度JIS A97のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−897)85部に、12ナイロン(エムスケミージャパン製、商品名:グリルアミドL20G)15部とモンタン酸エステル(ヘキストジャパン製、商品名:ヘキストワックスE)0.8部を加えて、200〜220℃で押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U12)の試料を得た。
【0036】
(実施例9)
硬度JIS A90のポリエーテル・シリコーン系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンSP−22490)75部に、アミドエラストマー(ダイセルデグサ製、商品名:ダイアミドPAE E62S3)25部とモンタン酸部分ケン化エステル(ヘキストジャパン製、商品名:ヘキストワックスOP)0.7部を加えて、200〜220℃押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U13)の試料を得た。
【0037】
(実施例10)
硬度JIS A97のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−897)85部に、6ナイロン(東レ製、商品名:アミランCM1007)15部とモンタン酸エステル(ヘキストジャパン製、商品名:ヘキストワックスE)0.8部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U14)の試料を得た。
【0038】
(実施例11)
硬度JIS A97のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−897)85部に、12ナイロン(エムスケミージャパン製、商品名:グリルアミドL20G)15部とエルカ酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドE)0.7部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U15)の試料を得た。
【0039】
(実施例12)
硬度JIS A97のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−897)85部に、6ナイロン(東レ製、商品名:アミランCM1007)15部とエルカ酸アミド(花王製、商品名:脂肪酸アマイドE)0.7部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U16)の試料を得た。
【0040】
(比較例5)
硬度JIS A97のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−897)100部に、モンタン酸エステル(ヘキストジャパン製、商品名:ヘキストワックスE)0.8部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U17)の試料を得た。
【0041】
(比較例6)
硬度JIS A97のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製、商品名:レザミンP−897)85部に、12ナイロン(エムスケミージャパン製、商品名:グリルアミドL20G)15部を加えて、200〜220℃の押出機で混練し、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U18)の試料を得た。
【0042】
上記の実施例1乃至12、比較例1乃至6の熱可塑性ポリウレタン樹脂を射出成形により試験片に加工し、硬度、100%モジュラス、引張強さ、伸びを日本工業規格JIS K7311に準じて機械的特性を求めた。
【0043】
[動摩擦係数]
動摩擦係数は、ウィリアムス式ゴム摩耗試験機(東洋精機製作所製)を用い、炭化ケイ素80メッシュ結合度Kの金剛砥石に対して、20mm平方試験片2枚に3.62kgの荷重を掛け、0.125r.p.mの回転数で測定した。測定結果を表1に示した。
【0044】
動摩擦係数試験の結果、実施例1乃至12の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U1、U4、U5、U6、U7、U10、U11、U12、U13、U14、U15、U16)では、動摩擦係数が0.65〜0.79と低い値が得られ、ケーブルシースまたはコンベアベルトまたはエアチューブなどの用途で、低摩擦係数で滑性の高いことを必要とする材料として適切であることを示した。
【0045】
比較例1乃至6に示す熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(U2、U3、U8、U9、U17、U18)では、動摩擦係数が0.91〜1.05と大きい値となり、低摩擦係数で滑性の高いことを必要とする用途の材料として不適切であることを示した。
【0046】

【0047】

【0048】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、滑性が大きく、摩擦係数の小さい成形品を与える熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物が得られ、該熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、ケーブルシース、コンベアベルトまたはエアチューブ用などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン(A)73〜98.9質量%と、ポリアミド樹脂(B)1〜25質量%と、滑剤(C)0.1〜2質量%とを混合してなる(上記AとBとCとの合計は100質量%である)ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリウレタンが、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカプロラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンまたはポリジメチルシロキサン構造を含むポリウレタンである請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂が、6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンまたはアミド結合を有するポリアミドエラストマーである請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記滑剤が、脂肪酸アミド系滑剤、モンタン酸系滑剤またはそれらの混合物である請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリウレタンが、ポリエーテル系ポリウレタンまたはポリカーボネート系ポリウレタンであり、前記ポリアミド樹脂が、6ナイロンまたは12ナイロンである請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂が5〜20質量%、前記滑剤が0.2〜1質量%、残りが前記熱可塑性ポリウレタンである請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物から成形されたことを特徴とするケーブルシース、コンベアベルトまたはエアチューブ。

【公開番号】特開2009−299026(P2009−299026A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98073(P2009−98073)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】