説明

熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムよりなる巻きテープ

【課題】
ハロゲンを含まず、難燃性であり、耐熱性があり、耐摩耗性であるという長所と繊維性非難燃性巻きテープのハロゲン不含の引張り強度及び柔軟性という機械的性質とを組合せそして更に優れた熱的老化防止性を有する巻きテープの提供。
【解決手段】
熱可塑性ポリウレタンよりなるフィルムを持つ高熱負荷可能なハロゲン不含の難燃性巻きテープにおいて、該フィルムがテトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びブタンジオール(1,4)よりなる熱可塑性ポリウレタンでありそして少なくとも1種類のハロゲン不含難燃剤を含有していることを特徴とする、前記巻きテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン不含の難燃性の好ましくは有色巻きテープ、更に好ましくは特に溶剤不含の粘着性被覆を有しそして空調設備の換気用チューブ、ワイヤー又はケーブルの回りに巻き付けるのに使用されそして自動車のケーブルルーム(loom)及び受像管のための界磁コイルに特に適する前記巻きテープに関する。このとき巻きテープは結束、絶縁、識別又は保護のために役立つ。
【背景技術】
【0002】
ケーブル巻き用テープ及び絶縁テープは一般に片面に粘着剤被覆を持つ可塑化PVCフィルムよりなる。この製品の欠点、例えば可塑剤の蒸発放出及び高いハロゲン含有量を排除することがますます望まれている。
【0003】
慣用の絶縁テープ及びケーブル巻きテープの可塑剤は徐々に蒸発し、このことが健康に害をもたらし、特に通常に使用されるDOPは特に好ましくない。更にこの蒸気は自動車では窓ガラスに沈着し、視認性(及びそれ故に相当に運転安全性)を悪くする。これは当業者に曇り(フォギング:DIN 75201)と称されている。高温、例えば自動車の機関室内での高温によって更に著しく蒸発する場合又は電気系装置での絶縁テープの場合には、巻きテープが生じる可塑剤損失及びPVC−ポリマーの分解によって脆化する。
【0004】
合成樹脂廃棄物、例えば自動車再生段階からの破砕廃棄物の焼却に関する論争の背景に、ハロゲン含有量を低減させ、すなわちダイオキシンの発生を減少させようとする趨勢が存在する。それ故にケーブル絶縁の場合の肉厚及び巻き付けに使用されるPVCフィルムのテープの厚みが薄くされている。巻きテープのためのPVCフィルムの通常の厚みは85〜150μmである。85μm以下ではカレンダー法では重大な問題が発生し、その結果、PVC含有量を減少させたそのような製品は決して製造できない。
【0005】
通例の巻きテープは鉛、カドミウム又はバリウムのような有害な重金属をベースとする安定剤を含有している。
【0006】
導体のセットを結束するために開発された従来技術には、接着剤被覆があるか又は無いPVC支持体材料よりなる巻きテープがあり、該PVC支持体材料は、著しい量(30〜40重量%)の可塑剤の混入によって柔軟にされている。この支持体材料は一般に片面をSBR−ゴムをベースとする粘着剤で被覆されている。特開平10−001,583A1号公報、特開平5−250,947A1号公報、特許出願公開2000年第198,895A1号公報及び特許出願公開2000年第200,515A1号公報には、典型的な軟質PVC接着テープが開示されている。軟質PVC材料の高い難燃性を達成するために、例えば特開平10−001,583A1号公報に記載されているように、強い毒性の化合物である酸化アンチモンが一般に使用される。
【0007】
軟質PVCフィルムの代わりに織物又はフリースを使用することも試みられている。しかしながらこれらから得られる生成物は、比較的に高価でありそして取り扱い性(例えば手での引裂性、弾性復元力)に及び濡れ状態(例えば湿潤状態での耐久性又は機械用液体への耐久性)が、得られる製品によって著しく相違し、以下で説明する通り厚みが特に重要になるので、実地において余り使用できない。この種類の厚いフリースは、たとえ防音にプラスの作用をするとはいえ、慣用のPVCテープよりもなお厚く、かつ、柔軟性がない。しかし防音効果はケーブルルームの幾つかの分野においてのみ有利である。しかしフリースは余り延伸することができずそして実質的に復元力がない。これらの性質は、ケーブルルームの細いブランチを、組み込むときにルーズにぶら下がらないように及びプラグをクリップで留めそして取り付ける前に容易に位置決めできるように十分にぴったりと巻き付けなければならないので重要なのである。繊維接着テープの別の一つの欠点は、接着層だけが絶縁しているので、約1kVの絶縁破壊電圧しかないことである。これに対してフィルムテープは5kVより大きいところにあり、良好な電圧安定性を有している。繊維製巻きテープは余り難燃性がないか又は難燃剤としてハロゲン化合物(一般に臭素化合物)を含有している。例は、ドイツ実用新案登録第20,022,272U1号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第1,123,958A1号明細書、国際特許出願公開第99/61,541A1号明細書及び米国特許第4,992,331A1号明細書から知ることができる。
【0008】
熱可塑性ポリエステルよりなる巻きテープ及びケーブル絶縁体はケーブルルームを製造するために実験的に使用されている。これらはその難燃性、柔軟性、加工性、老化防止性又はケーブル材料への適合性に重大な欠点を有している。しかしながらポリエステルの最も重大な欠点は、加水分解に非常に過敏であり、その結果安全性の理由から自動車において使用できないことである。ポリエステルをベースとする巻きテープは難燃性がないか又は難燃剤としてハロゲン化合物を含有している。例は、ドイツ特許出願公開第10,002,180A1号明細書,特開平10−149,725号公報、特開平09−208,906A1号公報、特開平05−017,727A1号公報及び特開平07−150,126A1号公報に記載されている。
【0009】
これらの特許文献にはポリオレフィンよりなる巻きテープが開示されている。しかしながらこれらは容易に燃焼し得るか又はハロゲン含有難燃剤を含有している。更にエチレン共重合体から製造される材料は低過ぎる軟化点を有しており(一般に熱老化安定性を試験する実験において既に溶融する)、そして通例のポリプロピレンポリマーを用いる場合には、この材料は大抵は柔軟性がな過ぎる。一部の場合には金属水酸化物を使用しているが、40〜100phrの使用量では十分な難燃性とするには少な過ぎ、すなわち、自己消火性でないだけでなく、比較的に高い燃焼速度を示す(例えばMVSS 302によれば100mm/分以上)。100phr以上の難燃剤を含有するフィルムは技術的に実質的に製造不可能である。別の因子はこのようなフィルムが小さい引張り強度でありそして非常に堅いことである。すなわち、一般的なPVC系の巻きテープの実質的な加工性がない。
【0010】
国際特許出願公開第00/71634A1号明細書には、フィルムのベース材料がエチレンコポリマーである巻き接着テープが開示されている。この支持体フィルムはハロゲン含有難燃剤のデカブロモ−ジフェニルオキサイドを含有している。このフィルムは95℃以下の温度で軟化するが、通常の利用温度はしばしば100℃以上であるか又は短時間ではそれどころか130℃以上である。内燃機関室で使用する場合にはこれは稀ではない。
【0011】
国際特許出願公開第97/05206A1号明細書では、支持体フィルムが低密度ポリエチレンとエチレン/酢酸ビニル−コポリマー又はエチレン/アクリレート−コポリマーとのポリマーブレンドよりなるハロゲン不含巻き接着テープが開示されている。難燃剤としては40〜90phrの水酸化アルミニウム又はポリリン酸アンモニウムが使用されている。この支持体フィルムの顕著な欠点はここでも軟化温度が低いことである。これに対向するために、シラン架橋を使用することが記載されている。しかしこの架橋法は非常に不均一に架橋した材料しかもたらさず、結果として実地において安定な製造法或いは均一な製品品質が実現されない。
【0012】
国際特許出願公開第99/35,202A1号明細書及び米国特許第5,498,476A1号明細書に記載された電気用接着テープの場合には、欠陥のある熱形状安定性の同様な問題が発生する。支持体フィルム材料としてのEPDMとEVAとよりなるブレンドを難燃剤としてのエチレンジアミンホスファートと組合せて記載されている。このものはポリリン酸アンモニウムと同様に高い加水分解過敏性を有している。更にEVAとの組合せでエージングのときに脆性を示す。ポリオレフィンと水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムとよりなる通例のケーブルに使用すると、相容性が悪い。更にこれらの金属水酸化物は後記に説明する通り燐化合物と相対する作用をするので、このようなケーブルルームの燃焼挙動は悪い。記載された絶縁テープはケーブルルーム用巻きテープにとって厚過ぎそして堅過ぎる。
【0013】
低過ぎる軟化温度、柔軟性、難燃性及びハロゲン不含と要求から来るジレンマを解決する試みが、以下の各特許文献に記載されている。
【0014】
ヨーロッパ特許出願公開第0,953,599A1号明細書には、LLDPE及びEVAよりなるポリマー混合物をケーブル絶縁材として及びフィルム材料として使用することが特許請求されている。難燃剤としては特別な表面を持つ水酸化マグネシウムと赤燐との組合せが記載されている。しかしながらこの組合せは比較的に低い温度での軟化を伴っている。水酸化マグネシウムの量は63phrである。このように充填剤含有量が多いにもかかわらず燃焼特性が不満足なので赤燐が使用されている。
【0015】
非常に類似する組合せがヨーロッパ特許出願公開第1,097,976A1号明細書に記載されている。ここでは熱形状安定性を改善するためにLLDPEの代わりに、比較的に高い軟化温度を有するPPポリマーが使用されている。しかしながらこれから得られる小さい柔軟性が欠点である。EVA又はEEAとブレンドするには、フィルムが十分な柔軟性を有しているこが堅持される。しかしながらこの文献から当業者は、難燃性を改善するためにこれらのポリマーをポリプロピレンとブレンドすることを知る。上記の生成物は0.2mmのフィルム厚さを有しているが、充填剤含有ポリオレフィンフィルムの場合にはこの厚さで柔軟性が無くなる。何故ならば柔軟性は厚さの3乗に依存するからである。記載された押出成形の方法は、使用されるポリオレフィンが極めて低いメルトインデックスの場合には、当業者に知られる通り、製造ラインで実施することが実質的に不可能であり、業界に適合する薄いフィルムについては正に実施不能である。極めて低いメルトインデックスは水酸化マグネシウムの使用量を50〜100phrに制限している。
【0016】
両方の解決法は赤燐と水酸化マグネシウムとの公知の相乗的難燃効果に基づくものである。しかしながら元素状燐の使用は重大な欠点及び危険をもたらす。加工の際に悪臭に満ちた自己消火性の高い毒性のホスフィンが発生する。完成巻きテープも熱く湿った用途雰囲気においてニンニクの様な臭いを発生させる。別の欠点は火災の際に非常に濃い白煙を発生することにある。更に褐色〜黒色の製品しか製造することができない。しかしながら巻きテープは色でのマーキングのために広範な色で使用される。
【0017】
特開2001−049,208A1号公報には、両方の層がEVA又はEEA、過酸化物架橋剤、シラン架橋剤、シラン縮合用触媒及び難燃剤(100phrの水酸化マグネシウム)の混合物よりなる接着テープのための耐油製で耐熱性のフィルムが開示されている。このフィルムは充填剤含有のポリプロピレンフィルムが柔軟性が悪いという問題だけでなく、老化防止性への高い要求も解消していない。
【0018】
国際特許出願公開第03/070,848A1号明細書には、反応性ポリプロピレンと40phrの水酸化マグナシウムよりなるフィルムが記載されている。この添加物の量は燃焼挙動を本質的に改善するには十分でない。
【0019】
従来技術の前述の各特許文献は前記欠点、特に難燃性、柔軟性、引張り強度及び/又は耐熱性が不足しているために、他の要求、例えば手での引裂性、ポリオレフィン製ケーブル絶縁材との相容性又は十分な巻き解き力も解消するフィルムを提供していない。更にフィルム製造過程での加工品質、比較的に高いフォギンフ値(fogging value)及び絶縁破壊電圧耐性に問題が残っている。ポリオレフィン及び金属水酸化物よりなる難燃性支持体フィルムをベースとする公知になった発明のこれらの主要な問題点は、機械的要求を難燃性の要求と結びつけていないことである。60重量%より少ない難燃材(金属水酸化物及び場合によっては他の難燃性添加物)では、自己消火性を達成できないし、40重量%の難燃剤の水準からは柔軟性及び引裂強度も許容できない低い水準である。ポリオレフィンと金属水酸化物との組合せは、作用メカニズム(金属水酸化物の吸熱分解及び水蒸気の発生による冷却)のために確かに燃焼の進行を遅延させるが自己消火までもたらさない。この組合せは、巻き取り工程で延伸するときに、若干のケースでは接着テープを巻き解くときにも白色化するという欠点も有している。これらのテープは一般に黒色であり、完全に巻き付けたときに黒灰色の斑点のある表面を有する。充填材の割合を増やした場合には、巻き解くときにテープが引き裂けるほどに引張り強度が小さくなり得る。
【0020】
ポリウレタン(PU)製の接着テープも公知であり、その一部は難燃性加工されている。大抵の場合、これらは粘着加工されたPU−フォーム及び後述するフィルムベースの接着テープである。
【0021】
特許出願公開第2001−020,178A1号公報には、ポリエステル織物及びハロゲン含有PU−層よりなる電磁遮蔽用両面テープが開示されている。
【0022】
特開2001−288,430A1号明細書には、支持体がポリウレタン樹脂溶液とジシアンジアミドとから製造された難燃性接着テープが記載されている。溶液から注型製造されたフィルムを用いることは、不経済であるだけでなく、熱可塑的加工によって溶剤不含状態で製造されるフィルムよりなる本発明のテープの環境保護的目的にも適合していない。ジシアンジアミドを熱可塑性ポリウレタン(TPU)に混入する試みは配合の際にTPUが分解するので成功していない。
【0023】
特開2003−013,026A1公報及び特開2004−115,608A1号公報は、支持体が同様に溶液から製造される、放射性物質と一緒に使用される(マスキング)接着テープを開示している。該支持体はポリウレタン樹脂溶液とヒドラゾジカルボンアミドとよりなる。ヒドラゾジカルボンアミドは熱可塑的加工のときに分解することで発泡剤として作用しそして高融点の硬質ブロック部分を有するTPU(すなわち、比較的に高い加工温度)に適していない。
【0024】
特開昭62−069,640A1号公報にはウエハーチップを製造するための透明な接着テープが開示されている。場合によっては難燃剤、例えば4,4’−ジクロロヘキシルメタンジイソシアネートを含有していてもよいそのPU製支持体は溶液から製造される。
【0025】
ドイツ実用新案登録第20,306,801U1号明細書には、ポリウレタンフィルムよりなる接着テープが開示されている。ポリウレタンフィルムよりなる接着テープは数年来、実地において知られている。原料としてはポリエステルジオール及びポリエーテルジオール、芳香族及び脂肪族イソシアネートが挙げられている。これは公知の種類の原料を一般的に記載しているだけであり、特別な原料を挙げていない。このフィルムは添加物も含有していることが説明されている。添加物については紫外線及びオゾン安定剤、充填剤又は難燃剤が挙げられている。酸化防止剤又は加水分解防止剤は記載されていない。難燃剤としてはポリリン酸アンモニウム、三酸化アンチモン及びアルミニウム三水和物(ATH)が挙げられているが、実施例によって具体的に示されてはいない。ポリリン酸アンモニウム(APP)はポリウレタンの熱可塑的加工の際に分解することが実験で示されているが、これは、APPが吸湿性でありそしてそれ故に加水分解をひき起こし得るので、当業者にとって驚くべきことでない。更にAPPの酸性のために追加的に加水分解の触媒作用をする。APPは強いイオノゲニック塩として悪い電気的性質の作用もする。これは、例えばワイヤー絶縁要素のために他の材料中で使用することで分る。しかしながら本発明の巻きテープは良好な絶縁性も有しているべきである。更に当業者が知っている通り、三酸化アンチモンはハロゲンと組合せでしか作用せず、それ故にTPUだけの中では何の意味もない。当業者には、ATHは低い分解温度を有するために、難燃剤としてPE及びEVAのためだけに適していることも知られているが、ポリプロピレンには適しておらず、それ故に比較的に高い加工温度を有する高融点TPUには確実に適していない。
【0026】
ヨーロッパ特許出願公開第1,108,768A1号明細書には、飛行機のジョイント部を覆うTPU−支持体を持つ専ら無色の接着テープを開示しているが、巻き付け用途、特に自動車のワイヤー束の巻き付け用途については記載されていない。実地においてはこのような巻きテープは黒色であり、稀に明るく着色されており、実質的に無色ではない。更に接着テープは、ポリウレタンよりなる透明な粘着剤に限定されており、巻き付けるべき対象物に僅かに延伸された状態で適用するために、十分な巻き解き力或いは裏面への接着力を持つ巻きテープが要求されている。しかしながらこの目的のためには実質的にポリアクリレート、天然又は合成ゴムよりなる接着剤が適している。特許請求された接着テープの粘着剤は溶剤含有タイプであるが、粘着剤は環境を汚染しない溶剤不含タイプ、例えば分散物又はホトメルト接着剤であるべきである。接着テープは少なくとも9ミルの厚さを有していなければならず、すなわち、フィルムはボーイング規格BSS 7230F2を満足するために8ミル(0.2mm)の最少厚さを有していなければならない。更に、この特許文献に記載された接着テープは臭素含有難燃剤を含有している。記載された用途は特別な耐熱性を必要とせず、この文献はこの要求について言及していない。それ故にこの文献は酸化防止剤又は加水分解防止剤のような安定剤について言及しておらず、添加物としては半透明な染料、アンチブロッキング剤及び滑剤(潤滑剤)だけを挙げている。ポリウレタンフィルムについては特別な組成を示していない。
【0027】
特開2005−264,112A号公報は、主成分としてコポリアミドと副成分とよりなる支持体を持つ接着テープを説明している。後者にはポリウレタン及び窒素化合物がある。この文献は、ポリウレタンの添加が純粋なポリアミドフィルムの柔軟性を改善するが、多量では引掻き強度を著しく低減すること、それ故にポリアミドの割合は40〜90部とするべきであることを教示している。難燃剤としてはヒドラゾジカルボンアミド、モノ−、ジ−、トリシアノエチルシアヌレート、メラミンシアヌレート及びジシアンジアミドが記載されている。特にヒドラゾジカルボンアミドとメラミンシアヌレートとの組合せが有利である。後者はポリアミドのための難燃剤として実証されているが(例えば特開平11−349,809A1号公報)、これに対してヒドラゾジカルボンアミドは前述の理由から熱可塑的加工に本来適していない。しかしながらこの文献は150〜160℃の加工温度を説明しており、このような加工は低い軟化温度を持つ配合物の場合に実現すると思われる。その理由は選択された選択された原料の低い溶融温度にある。すなわちポリウレタンのそれが60〜120℃と記載されそしてポリアミドは100〜180℃と記載されており、実施例においては133℃の軟化点を持つポリアミドが使用されている。特開2005−264,112A号公報に記載のポリアミドフィルムは、熱安定化できないという欠点も有している。ポリアミドについては、銅安定剤が使用される。この銅安定剤はポリウレタン(特にポリエーテルベースのもの)又はポリオレフィンのばあいには酸化触媒として作用する。
【0028】
このフィルムは0.2mmの厚さを有している。記載された接着テープは燐系難燃剤を含有していない。この文献には熱安定性についての要求も酸化防止剤又は加水分解防止剤のような安定剤の使用について言及されていない。フィルム中のポリウレタンについては特別な組成が記載されていない。
【0029】
本発明の巻きテープのためのフィルムはこの文献に記載された、ヒドラゾジカルボンアミドとメラミンシアヌレートとの特別な組合せでは、高融点硬質ブロックを持つTPUの加工に必要とされる高温では分解するので、製造できない。
【0030】
更に、架橋した非熱可塑性ポリウレタンよりなる支持体を持つ接着テープも公知になっている。米国特許第5,807,637A号明細書には、基礎となるフィルムが充填剤として炭酸カルシウムを含有しておりそしてそれ故に難燃性でない、粘着剤層及びシーリング層を持つ接着テープを開示している。米国特許第6,129,983A号明細書も同様な、ただし2つの粘着性層を持つ生成物を開示している。
【0031】
ヨーロッパ特許出願公開第1,101,807A1号明細書には架橋したポリウレタン及びポリエステルよりなる複合支持体を持つマーキング用接着テープを開示している。ポリウレタン層は充填剤で変性されていてもよいが、難燃剤は記載されていない。
【0032】
上記の接着テープ用支持体はポリオール、イソシアネート及び触媒を補助支持体上にインライン計量供給しそして混合することによって製造される。その長所は、TPUに比較して原料コストが小さいことであるが、製造が実地においては非常に実現困難である。支持体は架橋しているので、熱可塑的リサイクルが不可能である。しかしながらこの文献に記載の発明対象の本質的な欠点は、難燃性も、TPUの場合に硬質ブロックによる物理的架橋によって生じる十分な引っ張り強度もないので、巻きテープへの適合性がないことである。
【0033】
ヨーロッパ特許出願公開第1,469,052A1号明細書及び同第1,469,024A1号明細書には任意の支持体であるが、TPU−フィルムではないものの上に硬質接着剤として架橋したポリウレタンを持つ接着テープが開示されている。
【0034】
米国特許第5,858,495A1号明細書には、支持体がポリエステルアクリレート又はポリウレタンアクリレートと残光のある顔料との混合物を重合することによって製造される残光のある非常に厚い接着テープを開示している。この材料は化学的構造がTPUと異なるが、非常に硬いウレタン基含有の硬質ポリマーである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明の課題は、ハロゲンを含まず、難燃性であり、耐熱性があり、耐摩耗性であるという長所と繊維性非難燃性巻きテープのハロゲン不含のPVC−巻きテープの引張り強度及び柔軟性という機械的性質とを組合せそして更に優れた熱的エージング耐久性を有する巻きテープを提供することであり、その際にフィルムの大規模な工業生産性が保証されるべきでありそしてある用途分野では高水準の絶縁破壊電圧耐久性が必要とされる。重金属系安定剤及びフタレート可塑剤が存在しない結果として、巻きテープは環境衛生上及び労働衛生上有利であるべきである。可塑剤、特にDOPが完全に又は実質的に存在しないことが、高いフォギング値を達成しそして望遠鏡状変形又は縁部の粘着性化の様な、接着剤中への可塑剤の移動を避けるために望ましい。
【0036】
更に本発明の課題は、マーキング、保護、絶縁、シーリング又は結束するために特に確実でかつ速やかな巻き付け、特にワイヤー及びケーブルへの巻き付けを可能とするこの種の巻きテープを提供することである。その際に、従来技術の欠点を生じさせないか又は少なくとも従来の程には生じさせない。
【0037】
本発明の課題は、PVCの耐熱性を達成するだけでなく、それどころか更に優れている、添加剤組合せ物を含有する熱可塑的に製造されたフィルムを提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
この課題は、請求項1に詳細に規定する巻きテープによって解決される。従属形式の請求項の対象は本発明の対象の有利な実施態様並びに本発明の巻きテープの用途を記載している。
【0039】
従って本発明は、熱可塑性ポリウレタンよりなるフィルムを持つ高熱負荷可能なハロゲン不含の難燃性巻きテープにおいて、該フィルムがテトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びブタンジオール(1,4)よりなる熱可塑性ポリウレタンでありそして少なくとも1種類のハロゲン不含難燃剤を含有していることを特徴とする、前記巻きテープに関する。
【0040】
当業者にとって巻きテープに適する支持体が次の様に製造できることは驚くべきことであり、かつ予期できなかったことである。
【0041】
ポリウレタンは、
(A)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び
(B)テトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物及び
(C)ブタンジオール(1,4)及び
(E)ハロゲン不含で、非反応性の又は組み入れ可能な少なくとも1種類の難燃剤
から、好ましくは
(F)酸化防止剤及び/又は
(G)加水分解防止剤
の如き安定剤の使用下に、場合によっては
(G)触媒及び/又は
(H)別の助剤又は添加物
の使用下に好ましくはプレポリマー法で製造される。
【0042】
指数((A)のイソシアネート基と化合物(B)及び(C)のツェレビチノフ(Zerewitinoff)活性水素原子の総数との当量比の商を100倍して得られる値)は85〜120、好ましくは95〜110である。混入できる燐系難燃剤を使用する場合には、この指数は(A)のイソシアネート基と化合物(B)、(C)及び(E)のツェレビチノフ(Zerewitinoff)活性水素原子の総数との当量比の商を100倍して算出される。
【0043】
(A)の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの他に別の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族及びヘテロ環式ジイソシアネート又はこれらのジイソシアネートの任意の混合物を使用することができる(HOUBEN-WEYL “Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)”、第E 20巻、“Makromolekulare Stoffe“(巨大分子物質)” 、 Georg Thieme 出版社、シュトットガルト、ニューヨーク、1987、第1587〜1593頁又は Justus Liebigs Annalen der Chemie、 562、第75〜136頁)。
【0044】
以下に更に詳細に例示する:
脂肪族ジイソシアネート、例えばエチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート及び1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート並びに相応する異性体混合物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及び2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート並びに相応する異性体混合物;更に芳香族ジイソシアネート、例えば2,4−トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートと2,6−トルイレンジイソシアネートとの混合物、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナートジフェニルエタン−(1,2)及び1,5−ナフチレンジイソシアネートの混合物。
【0045】
好ましくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを単独のジイソシアネートとして使用する。これとは無関係に、技術的に避けることができない他の異性体のジフェニルメタンジイソシアネート不純物が存在していてもよい。
【0046】
テトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物はポリエーテロール(B)として使用される。三官能性ポリエーテルも二官能性ポリエーテルを基準として0〜30重量%の割合で使用することができるが、最高でも、熱可塑的に加工できる生成物が生じる量である。実質的に線状のポリエーテルジオールは好ましくは450〜6000ダルトン、特に好ましくは600〜1500ダルトンの数平均分子量Mn を有している。このものは個々にも互いの混合物の状態でも使用することができる。
【0047】
テトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物の他に、平均で少なくとも1.8〜最高3.0のツェルビノフ活性水素原子及び450〜10000ダルトンの数平均分子量Mn を持つ別の長鎖のツェルビノフ活性ポリオールを使用してもよい。このものは製造条件次第でしばしば僅かな量の非線状化合物を含有している。それ故にしばしば“実質的に線状のポリオール”という言葉を使用する。アミノ基、チオール基又はカルボキシル基を有する化合物の他に好ましくは2〜3つの、特に2つの水酸基を持つ化合物も450〜6000ダルトンの数平均分子量Mn を有する特別なもの、特に好ましくは600〜4500ダルトンの数平均分子量Mn を有するもの、例えば水酸基含有ポリエステル、ポリエーテル、ポリカルボナート及びポリエステルアミドが含まれる。
【0048】
適する追加的なポリエーテルジオールは、アルキレン基中炭素原子数2〜4の1種類以上のアルキレンオキサイドを2つの活性水素原子を結合含有する出発分子と反応させることによって製造することができる。
【0049】
アルキレンオキサイドとしては例えば以下のものが挙げられる:エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、エピクロロヒドリン及び1,2−ブチレンオキサイド及び2,3−ブチレンオキサイド。エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及び1,2−プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとの混合物が有利に使用される。アルキレンオキサイドは単独でも、交互に相前後して又は混合物としても使用することができる。
【0050】
出発分子としては例えば以下のものが適する:水、アミノアルコール、例えばN−アルキルジエタノールアミン、例えばN−メチルジエタノールアミン、及びジオール類、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール。場合によっては出発分子の混合物も使用することができる。
【0051】
適する追加的ポリエステルジオールは、例えば炭素原子数2〜12、好ましくは炭素原子数4〜6のジカルボン酸と多価アルコールとから製造できる。ジカルボン酸としては例えば脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸又は芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸がある。ジカルボン酸は単独でも又は混合物として、例えばコハク酸、グルタル酸及びアジピン酸の混合物の状態でも使用することができる。ポリエステルジオールを製造するためには、場合によってはジカルボン酸の代わりに相応するジカルボン酸誘導体、例えばアルコール残基中炭素原子数1〜4のカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物又はカルボン酸クロライドを使用することができる。多価アルコールの例には炭素原子数2〜10、好ましくは2〜6のグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール又はジプロピレングリコールがある。所望の性質次第で多価アルコールは単独で又は相互の混合物の状態で使用することができる。更にカルボン酸と前記のジオール類とのエステル、特に炭素原子数4〜6のジオール、例えば1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオール、ω−ヒドロキシカプロン酸の如きω−ヒドロキシカルボン酸の縮合生成物又はラクトン類、例えば場合によっては置換されたω−カプロラクトン類の重合生成物とのエステルが適する。ポリエステルジオールとしてはエタンジオール−ポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−ネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペート及びポリカプロラクトンを用いるのが有利である。ポリエステル−ジオールは450〜10000ダルトンの数平均分子量Mnを有しており、単独でも又は相互の混合物の状態でも使用することができる。
【0052】
テトラヒドロフラン(B)の水酸基含有重合生成物は別の長鎖のツェルビノフ活性ポリオールを併用せずに使用するのが有利である。
【0053】
1,4−ブタンジオール(C)は鎖延長剤として使用される。この他に別のツェルビノフ活性ポリオールを鎖延長剤として併用してもよい。これらは平均して1.8〜3.0個のツェルビノフ活性水素原子を有しており、60〜400ダルトンの分子量を有している。これらには、アミノ基、チオール基又はカルボキシル基を持つ他に2〜3個、好ましくは2個の水酸基を持つ化合物も含まれる。
【0054】
追加的な鎖延長剤としては例えば炭素原子数2〜14の脂肪族ジオール、例えばエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1.3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールを使用することができる。しかしながらテレフタル酸と炭素原子数2〜4のグリコール類とのジエステル、例えばテレフタル酸−ビスエチレングリコール又はテレフタル酸−ビス−1,4−ブタンジオール、ハイドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ハイドロキノン、エトキシル化ビスフェノール類、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ビスフェノールA、(環状)脂肪族ジアミン、例えばイソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−メチル−プロピレン−1,3−ジアミン、N,N’−ジメチル−エチレンジアミン及び芳香族ジアミン、例えば2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルイレンジアミン又は3,5−ジエチル−2,6−トルイレンジアミン又は第一モノ−、ジ−、トリ−又はテトラアルキル置換された4,4’−ジアミノジフェニルメタンが適する。この他に少量のトリオール類を添加してもよい。
【0055】
別の鎖延長剤を使用せずに1,4−ブタンジオールを使用するのが有利である。
【0056】
イソシアネートに対して単官能性の化合物をTPUを基準として2重量%までの割合でいわゆる連鎖停止剤として使用してもよい。例えばモノアミン類、例えばブチルアミン、ジブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、N−メチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジン又はシクロヘキシルアミン、モノアルコール類、例えばブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、種々のアミルアルコール、シクロヘキサノール及びエチレングリコールモノメチルエーテルが適している。
【0057】
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと1,4−ブタンジオールとの組合せは、温度負荷のときに試料が溶融するのに対して十分に高い耐久性を持つ硬質ブロックをもたらし、並びに1〜100%の伸び率での十分な力及び引張り強度をもたらす。テトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物よりなる軟質ブロックは加水分解、微生物分解及び酸化に対して比較的に安定している。このものから、巻きテープにとって卓越して適しておりそして本発明のフィルムのために適するハロゲン不含難燃剤を有している必要がありそして場合によっては安定剤及び粘着剤層を有しているべきベースポリマーがもたらされる。
【0058】
難燃剤(E)としては例えば無機系又は好ましくは有機系燐含有化合物が選択される。例にはポリリン酸アンモニウム、エチレンジアミンポリホスファート、ポリリン酸エステル及びポリホスホン酸エステル、例えばトリフェニルホスファート、トリクレシルホスファート、アルキルフェニルホスファート又はジフェニルクレシルホスファートがある。
【0059】
特に有利なのは一般式
【0060】
【化1】

【0061】
[式中、Rは特に有利にはアリール基(例えばフェニル、クレシル基)であり、Aは結合基、例えばアリーレン基(例えばフェニレン基)、ビアリーレン基(例えばビフェニル基)、別の基、例えば-CH2-, -C(CH3) 2 -, -SO2 -又は -CO-によって連結されている2つのアリーレン基、又はアルキレン基(例えばネオペンチル基)でありそしてnは1〜10である。]
で表されるヒドロキシカルビル(ジヒドロカルビルホスファート)である。この種の化合物はリン酸又はホスホキシトリクロライド及びジフェニレン、例えばレゾルシン又はビスフェノールA(これらは基Aを形成する)及びモノフェノール類、例えばフェノール及びクレゾール(これらは基Rを形成する)から大規模に工業的に製造される。リン酸−1,3−フェニレン−テトラフェニルエステル及びリン酸−1,3−フェニレン−テトラフェニルエステル−オリゴマー並びにビスフェノールAビス(ジフェニルホスファート)及びそれのオリゴマーが特に有利である。
【0062】
中でも特に有利なのは、加水分解のときにフェノールもクレゾールも放出しないリン酸誘導体及びホスホン酸誘導体、これの例にはトリキシリルホスファート、ブチル化トリフェニルホスファート(例えばFyrquelTM EHC-S)、リン酸−1,3−フェニレン−テトラキシレニルエステル及びホスホン酸の塩、例えばプロパン−又はフェニルリン酸(ベンゾールホスホン酸)のナトリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩又はアルミニウム塩がある。
【0063】
混入できる燐含有化合物の例には平均して少なくとも1.5で最高3.0個のツェルビノフ活性水素原子及び60〜10000ダルトンの数平均分子量Mn を持ちそして次の構造式で表される:
【0064】
【化2】

【0065】
[式中、R、 R は炭素原子数1〜24の分岐した又は直鎖状のアルキレン残基、炭素原子数6〜20の置換された又は非置換のアリーレン基、炭素原子数6〜30の置換された又は非置換のあるアルアルキレン残基、炭素原子数6〜30の置換された又は非置換のアルキルアリーレン残基であり、ただし R、 R は同じでも異なっていてもよく、
はH、炭素原子数1〜24の分岐した又は直鎖状のアルキル残基、炭素原子数6〜20の置換された又は非置換のアリール基、炭素原子数6〜30の置換された又は非置換のあるアルアルキル残基、炭素原子数6〜30の置換された又は非置換のアルキルアリール残基であり、
x、yは1〜50である。]
で表されるホスホナート
又は
【0066】
【化3】

【0067】
[式中、Rは、H、炭素原子数1〜24の分岐した又は直鎖状のアルキル残基、炭素原子数6〜20の置換された又は非置換のアリール基、炭素原子数6〜30の置換された又は非置換のあるアルアルキル残基、炭素原子数6〜30の置換された又は非置換のアルキルアリール残基であり、
、Rは炭素原子数1〜24の分岐した又は直鎖状のアルキレン残基、炭素原子数6〜20の置換された又は非置換のアリーレン基、炭素原子数6〜30の置換された又は非置換のあるアルアルキレン残基、炭素原子数6〜30の置換された又は非置換のアルキルアリーレン残基であり、ただし R、 R は同じでも異なっていてもよい。]
で表されるホスフィンオキシドである。
【0068】
煩雑なIUPAC命名法を用いるのを避けるために、以下の若干の物質をそれのGAS−Noで示す。
【0069】
窒素含有難燃剤(E)としてメラミンシアヌレート、メラミン、ビュレット、トリュレット、アメリド、アメリン、シアヌル酸、トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(カルボメチル)イソシアヌレート、トリス(2−シアノエチル)イソシアヌレート、ビス(2−シアノエチル)イソシアヌレート、2−シアノエチルイソシアヌレート、トリメチルイソシアヌレート、
HA(L)S、例えばCAS−No.40601−76−1又は27676−62−6又は34137−09−2又は129757−67−1又は191680−81−6、メラム、メレム、ジイソシアンジアミド、グラナジン、ビグアナジン、トリフェニルイソシアヌレート又はトリクレシルイソシアヌレートの如き窒素含有化合物も適している。特に有利な窒素含有難燃剤にはメラミンシアヌレートがある。
【0070】
燐含有及び窒素含有難燃剤(E)としては、両方の元素を含有する化合物、例えばメラミンホスファート、メラミンポリホスファート、尿素ホスファート、ジエチルN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスファート、N,N−ビス−(2−ヒドロキシアルキル)アミノメタンホスホン酸ジメチルエステル、トリエタノールアミノホスファート又はオキシトリアミド燐が適する。
【0071】
難燃剤(E)としては他のハロゲン不含の物質も適している。例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、膨張性又は膨張したグラファイトも適する。
【0072】
特に有利な難燃剤(E)はメラミンシアヌレートである。
【0073】
本発明に従って使用される熱可塑性ポリウレタンは難燃剤ではない助剤及び添加剤(H)として、TPUを基準として好ましくは最大20重量%までの通例の助剤及び添加剤を含有していてもよい。
【0074】
代表的な助剤及び添加剤には核形成剤、滑剤、例えば脂肪酸エステル、それの金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミド及びシリコーン化合物、ブロッキング防止剤、抑制剤、光保護剤、染料、顔料、無機及び/又は有機系充填剤、可塑剤、例えばアジペート、セバケート及びアルキルスルホン酸エステル、静真菌及び殺菌作用する物質並びに充填剤及びそれらの混合物及び補強剤、例えば繊維製物質がある。
【0075】
上記の助剤及び添加剤についての詳細な説明は専門文献、例えばJ.H. Saunders及びK.C. Frischの研究論文"High Polymers(高分子量ポリマー)"、 第XVI巻、Polyurethane(ポリウレタン)、第1及び2部、Interscience Publishers出版社、1962或いは1964;R. Gachter及びH. Mullerの合成樹脂添加剤のポケット版 (Hanser出版社、ミュンヘン、1990);又はドイツ特許出願公開第2,901,774A1号明細書から知ることができる。別の添加物としては(TPUを基準として)20重量%より少ない含有量のポリマーを併用することができる。例には熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー又はコポリマーがある。合成エラストマー、例えば水素化スチレン−ジエンコポリマー又は非溶融性ポリマー、例えばEVA−分散物粉末又は衝撃改質剤(例えばPAN又はPMMAよりなる殻を持つアクリレートエラストマー粒子)も使用することができる。ポリマー主鎖にエステル基又はアミド基を持つ、加水分解も過敏でないポリマー添加物(例えば熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー又はポリアミド)を併用するのが有利である。
【0076】
本発明の支持体フィルムは好ましくは揮発性可塑剤、例えばDOP又はDINPを実質的に含まず、そしてそれ故に燃焼挙動が良好でそして放出物(可塑剤蒸気、フォギング物質)が少ない。フォギング値は好ましくは90%以上である。このフィルムは好ましくは5phrまでしか燐不含可塑剤を含有しておらず、
更に好ましくは燐不含可塑剤を全く含有していない。
【0077】
非常に高いフォギング値が必要な場合には、混入されそしてその少なくとも300、好ましくは少なくとも400ダルトンの分子量のためにあまり揮発しないリン酸及びホスホン酸化合物が特に有利である。すなわち、300ダルトン又はそれより少ないか又は好ましくは400ダルトン又はそれより少ない分子量のホスファート可塑剤は避けるべきである。
【0078】
本発明に従って使用されるフィルムは好ましくは酸化防止剤(F)を含有している。その量は好ましくは少なくとも1phr,特に好ましくは少なくとも2phrである(phrの表示はフィルムの全ポリマー成分100重量部を基準とする該当成分の重量部数を意味する。)。例にはフェノール系又はアミン系ベースの酸化防止剤及び硫黄又は燐ベースの第二の酸化防止剤がある。本発明の巻きテープは好ましくは第一及び第二酸化防止剤の組合せを含有している。ただし第一及び第二酸化防止剤の機能は異なる分子に存在しているか又は一つの分子中で一体化されていてもよい。記載した量表示においては、任意の酸化防止剤、例えば金属不活性化剤又は光保護剤は含まれていない。
【0079】
第二酸化防止剤の量は好ましくは少なくとも0.5phr、特に好ましくは少なくとも1phrである。
【0080】
PVC−生成物の安定剤はTPUに転用することはできない。第二酸化防止剤は過酸化物を崩壊させ、それ故に老化防止剤パッケージの一部としてジエン系エラストマーの場合に使用される。驚くべきことに、第一酸化防止剤(例えば立体障害フェノール類又はCAS 181314−48−7の如きC−ラジカルスカベンジャー)と第二酸化防止剤(例えば硫黄化合物、ホスフィット又は立体障害アミン類)との組合せ物(両方の機能が一つの分子中に一体化されていてもよい)が規定のTPUの場合にも所期の課題を解決することを見出した。中でも、第一酸化防止剤、好ましくは500g/molよりも大きい、殊に700g/molより大きい分子量の立体障害フェノール類とホスフィット系第二酸化防止剤、好ましくは600g/molより大きい分子量のそれとの組合せが特に有利である。
【0081】
特に揮発性の低い第一のフェノール系酸化防止剤と硫黄化合物の種類(好ましくは400g/molより大きい,特に好ましくは500g/molより大きいもの)及びホスフィットの種類からの第二酸化防止剤との組合せが適している。その際、フェノール、硫黄及びホスフィットの機能は異なる分子に存在している必要がなく、一つの分子に1つより多い機能が一体化されていてもよい。
【0082】
[実施例]
フェノール系機能:
CAS 6683-19-8、2082-79-3、1709-70-2、36443-68-2、1709-70-2、34137-09-2、27676-62-6、40601-76-1、31851-03-3、991-84-4。
硫黄含有機能:
CAS 693-36-7、123-28-4、16545-54-3、2500-88-1、16545-34-3、29598-76-3。
ホスフィット系機能:
CAS 31570-04-4、26741-53-7、80693-00-1、140221-14-3、119345-01-6、3806-34-6、80410-33-9、14650-60-8、161717-32-4。
フェノール系及び硫黄含有機能:
CAS 41484-35-9、90-66-4、110553-27-0、96-96-5、41484。
フェノル系及びアミン系機能:
CAS 991-84-4、633843-89-0。
アミン系機能:
CAS 52829-07-9,411556-26-7,129757-67-1,71878-19-8,65447-77-0.
CAS 6683−19−8(例えばIrganox 1010)とチオプロピオン酸エステルCAS 693−36−7(Irganox PS 802)との組合せ又は123−28−4(Irganox PS 800)とCAS 31570−04−4(Irgafos 168)との組合せが特に有利である。更に第二酸化防止剤の割合が第一酸化防止剤のそれよりも多い組み合わせ物が特に有利である。追加的に、エージングを触媒的に促進させ得る痕跡量の重金属を錯塩化するための金属不活性化剤も添加してもよい。例にはCAS 32687-78-8、70331-94-1、6629-10-3、エチレンジアミン四酢酸、N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン、3−(N−サリチロール)−アミノ−1,2,4−トリアゾール(Palmarole ADK STAB CDA-1)、N,N’−ビス[3−(3’,5’−ジ−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジド(Palmarole MDA.P.10)又は2,2’−オキサミド−ビス−[エチル−3−(第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](Palmarole MDA.P.11.)がある。
【0083】
上記の老化防止剤の選択は、フェノール系酸化防止剤だけ又はそれと硫黄含有共安定剤との組み合わせは必ずしも、実際において適合する生成物をもたらすことができないので、本発明の巻きテープにとって特に重要である。ロール上に酸素が比較的に長時間に亙って入り込むのを避けられないカレンダー加工法の場合には、ホスフィット安定剤を併用することが生成物の十分な熱老化防止性のためには特に適していることが分かっている。押出成形加工の場合にも、生成物のエージング試験のときにホスフィットを添加するのがなおプラスに作用することが分かっている。ホスフィット安定剤については少なくとも0.1phr、好ましくは少なくとも0.3phrの量が有利である。
【0084】
本発明に従って使用されるフィルムは加水分解防止剤(G)を含有するのが有利である。これには例えばモノマー又はポリマーのカルボジイミド、オキサゾリン又は反応性ポリ尿素を使用することができる。芳香族イソシアネートをベースとするポリマーのカルボジイミドが特に有利である。この種のカルボジイミドの製造及び構造については、米国特許第2,941,956A号明細書、特開平4−733,279A公報、J. Org. Chem., 28, 2069〜2075 (1963)、Chemical Review, 第81巻, No. 4, pp. 619 〜 621 (1981)参照。量は少なくとも0.5、特に少なくとも2phrであるのが有利である。
【0085】
酸化防止剤(F)と加水分解防止剤(G)との組み合わせを使用するのが特に有利である。
【0086】
TPU中に混入できる別の添加物には熱可塑性樹脂、例えばポリカルボナート及びアクリルニトリル/ブタジエン/スチレン−ターポリマーがある。他のエラストマー、例えばゴム、エチレン/酢酸ビニル−コポリマー、スチレン/ブタジエン−コポリマー並びに難燃剤が混入されていない熱可塑性ポリウレタンを使用することができる。溶融できないポリマー、例えばEVA−分散粉末又は衝撃変性剤(例えばPAN又はPMMAよりなる殻を持つアクリレートエラストマー粒子)も使用できる。
【0087】
適する本発明の触媒(D)は従来技術で知られる通例の第三アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタン及び類似物並びに特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物または錫化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジラウレート又は脂肪族カルボン酸の錫ジアルキル塩、例えばジブチル錫ジアセテート又はジブチル錫ジラウレート又はそれらの類似物がある。
【0088】
特に有利な触媒は有機金属化合物、特にチタン酸エステル、鉄化合物及び錫化合物である。本発明のTPU中の触媒の総量はTPUの総量を基準として一般に約0〜5重量%、特に0〜2重量%である。
【0089】
本発明に従って使用されるTPUは連続的に又は不連続的に製造することができる。最も知られる製造方法はベルト法(英国特許出願公開第1,057,018号明細書)及び押出成形法(ドイツ特許出願公開第1,964,834A1号明細書)である。TPUの合成は段階的方法(プレポリマー計量供給法:成分(A)及び(B)を反応させそしてその後に(C)と反応させるか又は成分(A)、(B)及び(C)の全ての成分を同時に一段階で(ワンショット軽量供給法)で実施することができる。好ましくは、プレポリマー法を利用するのが有利である。
【0090】
難燃剤(E)、酸化防止剤(F)、加水分解防止剤(G)及び/又は助剤(H)の添加はポリウレタン反応の前、間又は後で行うことができる。少なくとも1種類の難燃剤、特にメラミンシアヌレートを、熱可塑性ポリウレタンの製造工程の間に既に添加するのが有利である。従って、ポリウレタンの大部分を別の配合段階で熱加工しなければならないことが回避される。このことは費用の増加させないだけでなく、熱負荷を避けることができることによって分解及び老化による劣化が回避される。
【0091】
本発明の主要な目的は比較的に高い難燃性、引っ張り強度及び柔軟性のもとでハロゲンを含まないことである。前述の通り、用途において熱的要求が高まっており、その結果慣用のPVC−巻きテープ又は開発段階にあるポリオレフィンをベースとするPVC−不含のフィルム巻きテープに比べて、追加的に高められた安定性を達成することを意図している。この目的のためには、任意の熱可塑性ポリウレタンは使用できず、特別に本発明に従う組成を有するものが使用される。それ故に本発明の特徴を以下に更に詳細に説明する。
【0092】
本発明の生成物は、原料のハロゲン含有量が難燃性に役立たない程に僅かであるという意味でのハロゲン不含状態にある。不純物、加工用添加物(フッ素系エラストマー)又は触媒残さによって発生し得る痕跡量のハロゲンは無視される。
【0093】
ハロゲンを捨てたことは容易に燃焼するという性質を一般に伴う。このことは、家電製品、ビルディング又は自動車の様な電気製品における安全要求に適合していない。本発明の巻きテープは自己消火性を有しており、該巻きテープの特に有利な実施態様はFMVSS 302(水平試験)及び/又はASTM D 568(垂直試験)による燃焼試験に記載の試験条件で自己消火性であるころである。
【0094】
本発明のフィルムの厚さは好ましくは30〜180μm、特に好ましくは50〜150μm、中でも55〜100μmの範囲内である。従って、巻き付けるときの十分な適合性、効果的な手での引裂性及び許容し得るコストが達成される。本発明の巻きテープは、場合によっては存在する接着剤層の厚みだけ相応して厚みを増している。表面は構造化されていても又は平らでもよい。好ましくは表面は僅かに艶消しに調整されている。これは十分に大きい粒度の充填剤の使用によって又はロール(例えばカレンダー装置におけるエンボスロール又は艶消し冷却ロール又は押出成形の場合のエンボスロール)によって達成することができる。
【0095】
本発明に従って使用される巻きテープは好ましくは着色されており(黒色、白色又は有色)、その色彩は支持体フィルム及び/又は別の層、例えば接着剤が彩色されている。使用される顔料は好ましくは毒性の重金属、例えば鉛、カドミウム又はクロムをベースとするものを含んでいない。
【0096】
本発明に従う巻きテープは長手方向(機械方向)に10%の伸び率のとき2〜20N/cm,好ましくは4〜11N/cmの力を、及び50%の伸び率のとき3〜25N/cm、好ましくは6〜17N/cmの力を有している。
【0097】
10%での力はフィルムの剛性の目安でありそして50%での力は高い巻き付け応力によって著しく変形するときの巻き付け時の適合性の目安である。しかしながら50%での力は低過ぎるべきでない。何故ならば、さまもないと一般に引張り強度が低過ぎるからである。
【0098】
支持体フィルムの引張り力(破断荷重)は少なくとも10N/cm、好ましくは少なくとも20N/cmである。
【0099】
TPUは非常に強靱であり得るので、場合によっては巻きテープの手での引裂性を向上させるための手段、例えば充填剤、相容性のない熱可塑性樹脂又は非溶融性ポリマーの混入、後で明らかに引裂伝播を有利に促進させるひび割れが顕微鏡で見てフィルムに形成されている側縁部の粗切り、又は例えば部分的なパンチングによって後からノッチがつけられた側縁部が必要である。側縁部の粗切りは特に俵状の製品(巨大ロール、長いロール)の上に回転する尖っていないナイフ又は規定の鋸刃の押し付けでカットすることによって又は固定刃又は回転刃を長い形状の製品(製造幅及び慣用の販売品長さ)を切断分割することによって製造することができる。破断伸びは適当なブレード又はナイフによって調整することができる。特に鈍い固定刃を用いる部分カットで長い製品を製造する態様が有利である。カット操作の前に長いロールを顕著に冷却することによってカット操作の間のひび割れ形成を更に改善することが可能である。
【0100】
十分な熱安定性及び短期間耐熱性の要求はTPUの十分な結晶子融点(好ましくは少なくとも158℃、特に好ましくは少なくとも170℃)並びに分解に起因する老化に対する耐久性は酸化防止剤成分及び/又は加水分解防止剤によって確実に満足され得る。
【0101】
本発明に従う巻きテープは高い耐熱性を有しており、特に有利な実施態様においては140℃で312時間貯蔵後に少なくとも100%の破断伸び率を示し(耐熱性試験)及び/又は170℃での短時間熱負荷安定性を示す(30分後にひび割れ又は溶融箇所がない)。
【0102】
この力値及び熱安定性を達成するために、巻きテープのフィルムは十分に多い硬質ブロック割合を有するTPUを含有しており、それ故にTPU原料のショアーD硬度は好ましくは少なくとも35、特に好ましくは少なくとも50である。これはほぼ、少なくとも85のショアーA硬度、特に好ましくは少なくとも100のショアーA硬度に相当する。従来技術に記載の難燃性接着テープは、ここで対象とする、難燃剤を混入した難燃性接着テープよりも著しく軟質のTPU(ショアーA硬度70〜80)を使用している。この様な軟質のTPUよりなる接着テープに更に可塑剤又は難燃剤としてのリン酸エステルを添加した場合には、これは更に著しく軟質化する。すなわちショアーA硬度が70〜80のTPUは接着テープとして不適当である。
【0103】
フィルムの製造はカレンダー法又は押出成形法、例えばブロー成形法又は注型法で行う。これらの方法は例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、Wiley-VCH 2002に記載されている。TPUのために固体又は液体添加物を併用する場合には、主成分又は全ての成分よりなる配合物をニーダー(例えばプランジャーニーダ)又は押出機(例えば二軸スクリュー式又は遊星ローラー押出機)の様な配合装置で製造されそして次に固体状態(例えば顆粒)に変換される。このものは次いでフィルム押出成形装置又は押出機、ニーダー又はカレンダー装置のローラーで更に加工される。
【0104】
第一の特に有利な実施態様においては、最初に支持体フィルムの片面に接着剤、特に粘着剤を塗布する。
【0105】
有利に存在する接着層の量は10〜40g/cm2、特に18〜28g/cm2である(これは水又は溶剤の場合によって必要な除去処理後の量であり、該数値はほぼ1μmの厚さに相当する)。接着層を有する場合には、巻きテープのTPU含有層に専ら関する厚さに左右される機械的性質のため示した数値は、接着層又は接着層に関連する有益な他の層を考慮に入れていない。被覆物は全面に亙っている必要がなく、一部の面に塗布してあってもよい。例としては巻きテープの各側縁部の近辺にそれぞれに粘着剤ストライプがあるものが挙げられる。このテープは、接着剤ストライプがケーブル束に貼り付きそして次に他の接着剤ストライプが巻きテープの裏側と接合できるほぼ長方形シート状を形成する様に切り離すことができる。スリーブ状包装物の様なこのホース状のエンベロープは、ケーブルルーム(loom)の柔軟性をこの包装によって実質的に悪化させることがないという長所を有している。
【0106】
接着剤としてはあらゆる慣用の種類が適しており、中でもゴムをベースとするものが有利である。このようなゴムは例えばイソブテン、l−ブテン、酢酸ビニル、エチレン、アクリル酸エステル、ブタジエン又はイソプレンのホモ−又はコポリマーがある。特にアクリル酸エステル、酢酸ビニル又はイソプレンをベースとするポリマーを基本とする処方が適している。
【0107】
性質を最適化するために、使用する粘着剤に1種類以上の添加物、例えば粘着性付与剤(樹脂)、可塑剤、充填剤、難燃剤、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、光開始剤、架橋剤又は架橋促進剤を混入してもよい。粘着性付与剤には例えば炭化水素樹脂(例えば不飽和のC5〜C9−モノマーをベースとするポリマー)、テルペンフェノール樹脂、ポリテルペン樹脂、例えばα−又はβ−ピネンのような原料よりなるポリテルペン樹脂、芳香族樹脂、例えばクマロン−インデン樹脂又はスチレン又はα−メチルスチレンをベースとする樹脂、例えばコロホニウム又はそれの誘導体、例えば不均化、二量体化又はエステル化樹脂、例えば若干の名称を挙げれば、グリコール、グリセリン又はペンタエリスリットとの反応生成物並びに他の樹脂(例えばUllmanns Enzyklopadie der technischen Chemie, Band 12, Seiten 525 bis 555 (第4版), ワインハイムに記載されているもの)が挙げられる。容易に酸化可能な二重結合を有していない樹脂、例えばテルペンフェノール樹脂、芳香族樹脂が有利であり、特に加水分解によって製造される樹脂、例えば水素化芳香族樹脂、水素化ポリシクロペンタジエン樹脂、水素化コロホニウム誘導体又は水素化テルペン樹脂を使用するのが有利である。
【0108】
適する充填剤及び顔料は例えばカーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、珪酸塩又は珪酸がある。混入可能な、適する可塑剤には例えば脂肪族、脂環式及び芳香族鉱油;フタル酸、トリメリット酸又はアジピン酸のジ又はポリエステル;液状ゴム(例えば低分子量ニトリル−又はポリイソプレンゴム);ブテン及び/又はイソブテン、アクリル酸エステル、ポリビニルエーテルよりなる液状ポリマー;粘着性樹脂の原料をベースとする液状及び軟質樹脂;ラノリン及び他のワックス又は液状シリコーンがある。架橋剤は例えばイソシアナート、フェノール樹脂又はハロゲン化フェノール樹脂、メラミン樹脂及びホルムアルデヒド樹脂がある。適する架橋促進剤には例えばメラミンイミド、アリルエステル、例えばトリアリルシアヌレート、アクリル酸及びメタクリル酸の多官能エステルがある。老化防止剤には例えば立体障害フェノール類、例えば登録商標名IrganoxTMで知られるものがある。
【0109】
架橋反応は、剪断強度(例えば保持力とも表示される)を高めそしてそれ故に保存のときにロールの変形傾向(望遠鏡状変形又は隙間とも称される空洞の形成)を低減するので有利である。粘着剤の滲み出しも低減される。これはロールの粘つかない側縁部及び螺旋状ケーブル或いはケーブルルームを巻いた巻きテープの場合の粘つかない縁部で確認される。保持力は好ましくは150分以上であるのが有利である。
【0110】
スチールへの接着強度は1.5〜3N/cmの範囲内にあるべきである。
【0111】
本発明の巻きテープは300mm/分の巻き解き速度で1.2〜6.0N/cm、特に1.6〜4.0N/cm、中でも1.8〜2.5N/cmの巻き解き力を有するのが有利である。
【0112】
総括すれば、特に有利な実施態様は、同時押出、溶融又は分散物塗布によって、得られる溶剤不含の粘着剤を片面に有する。特にポリアクリレートをベースとする分散物又はホットメルト型の接着剤が特に有利である。
【0113】
支持体フィルムと接着剤との間に、フィルムへの接着剤の付着を改善するためにプライマー層を使用しそしてそれによってロールを巻き解く間にフィルム裏側へ接着剤が移るのを防止するのが有利である。
【0114】
プライマーとしては公知の分散物及び溶剤系、例えばイソプレン又はブタジエン含有のゴム及び/又はシクロゴム(cyclo rubber)をベースとするものが使用できる。添加剤としてのイソシアネート又はエポキシ樹脂は接着性を改善しそして一部は粘着剤の剪断強度を高める。物理的表面処理、例えば火炎処理、コロナ又はプラズマ処理又は同時押出成形層も同様に適しており、付着性を改善する。このような方法は溶剤不含の接着層、特にアクリレートベースのもに使用するのが特に有利である。
【0115】
裏側の被覆は公知の剥離剤(場合によっては他のポリマーと混合されたもの)によって行うことができる。例にはステアリル化合物(例えばポリビニルステアリルカルバマート、Cr又はZrのような遷移金属のステアリル化合物)、ポリエチレンイミン及びステアリルイソシアナートから形成される尿素類、ポリシロキサン(例えばポリウレタンとの共重合体又はポリオレフィンにグラフトしたグラフトポリマー)、熱可塑性フッ素系ポリマーがある。ステアリルとは少なくとも10の炭素数を有する直鎖状の又は分岐したあらゆるアルキル又はアルケニル例えばオクタデシルと同義語である。
【0116】
通例の接着剤並びに裏側層及びプライマーの説明は例えば“Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology(粘着剤技術のハンドブック)”、D. Satas、 (第3版)に記載されている。
【0117】
巻き解き力の増加又はフィルムの応力緩和のために長い製品を、切断する前に加熱状態で貯蔵してもよい。織物製、フリース製及びフィルム製支持体(例えばPVC製)を持つ巻きテープの切断は,(2つの回転式ナイフの間での)剪断、(固定又は回転式ナイフが製品の回転する長いロールに押し付けられる)分割、(ウエブが鋭いブレードを通過する過程で分割される)刃での切断又は回転するナイフとローラーとの間での)押し切りによって行われる。
【0118】
本発明の巻きテープは自動車の界磁コイル又はケーブルハーネスのような長く伸びた製品に巻き付けるのに優れて適している。柔軟性は、ワイヤー及びケーブルに用いるときに螺旋状に動かして巻きテープを巻き付けても、分岐した場所、差込み又は止めクリップの所で皺なく柔軟に曲げた状態で巻き付けなければならない。更に巻きテープがケーブル撚り線と一緒に弾力的に引っ張れることが望ましい。本発明の巻きテープは、他の用途、例えば高い柔軟性がリベット、溝及び折り曲げた部分に良好に適合するので、エアコン装置の排気パイプのシーリングにも同様に適する。これらの機械的性質は柔らかく柔軟性のある巻きテープによって初めて達成できる。多量の難燃剤を添加することを回避することによって必要な柔軟性を達成するという課題は、本発明によって解決されるのである。
【0119】
今日の労働衛生及び環境衛生的要求は、ハロゲン含有の原料を使用しないことによって対応される。ハロゲンを含まないことは、このような巻きテープを含む廃棄物から熱を回収するために極めて重要(例えば自動車リサイクルからの合成樹脂分の焼却)であるが、毒性のある排ガスを生じないケーブル火災又は建物火災のときにも重要である。
【0120】
電子工学製品の複雑さが増す過程で及び自動車分野での電気消費装置の数が増加する過程で、導体等のセットも常により複雑になっている。ケーブルルームの断面積の減少にともなって誘導加温がますます増加し、一方、熱の消散量が減少している。これによって使用される材料の耐熱性への要求が増している。巻き接着テープのために標準的に使用されるPVC−材料はそれの能力限界に達している。この問題も現在解決すべきものと見なされている。
【0121】
本発明の巻きテープのためのフィルムはできるだけ高い耐熱性、すなわち、170℃での短時間耐熱性及び140℃での耐熱性を有している。それ故にポリアミドフィルムの変性(可塑性化)のための特開2005−264112A1号公報に記載のTPUよりも著しく高い軟化点を持つTPUが必要とされている。この新規の本発明の巻きテープはブタンジオール−(1,4)及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートよりなる高融点の硬質ブロックを持ちそして硬質ブロックの大きさ次第で結晶子融点が本発明に従って155〜197℃の間にあるTPUを含有している。これは前記特開公報に示されたTPUの60〜120℃より明らかに高い。そこでは耐溶融性の機能はポリアミドによってもたらされており、PU成分は可塑剤として機能している。本発明の場合には、本発明のポリウレタンが両方の機能をもたらしている。所望の強度及びモジュール(従って同時にこれらのために必要な高いショアー硬度)のためにも、本発明の巻きテープは比較的に高融点の硬質ブロック成分を持つTPU原料を使用しており、それから200℃以上の加工温度を得ている。特開2005−264112A1号公報に記載のポリアミドフィルムについては、180℃以上ではもはや加工できないことが言及されている。特開2005−264112A1号公報における特に有利なショアーA硬度は70〜80(実施例475)であり、それに反して本発明のショアーA硬度は87〜100以上である(100以上は測定できないので、ここでは硬度をショアーDの基準で記載する。)。前記公報には粘着剤の種類について記載されておらず、実施例だけがアクリレートポリマーを指摘している。ポリウレタン接着テープについての従来技術によれば、それが溶剤系アクリレート組成物であると仮定せざるを得ない。本発明はあらゆる鑑定において環境に優しい製品を目指しており、それ故に特別な溶剤不含粘着剤、例えば分散物又はホットメルト系が使用される。次に該公報は、接着テープが有色でもよいことい言及しておらず、これに対して本発明の巻きテープは有色の巻きテープを重点的に目的としている。
【0122】
<試験法>
測定は23±1℃及び50± 5%の相対湿度の試験環境で実施する。
【0123】
結晶子融点(Tcr)はISO 3146に従いDSCで測定する。新たに加工したTPUは極めて広い融点幅を有しているので、結晶の熱力学的最終状態では測定できなから、試料を結晶子融点を測定する前に140℃で24時間状態調整する。
【0124】
ショアーA硬度及びショアーD硬度はISO 868に従って測定する。
【0125】
加水分解防止性は試料を温かい蒸留水中に保存することによって測定する。80℃で1000時間後に試料を80℃で減圧状態で乾燥し、次いで新鮮な状態に比較しての引張り強度の低下量を測定する。引張り強度が50%より少なくしか低下しないときに試験は合格であり、少なくとも50%低下したときに試験は不合格である。
【0126】
巻きテープの伸び挙動2種類の試験体(長さ150mmでできる限り幅15mmの長方形の試験体)について300mm/分の試験速度、100mmのクランプ留め長さ及び0.3N/cmの前引張り力で測定する。粗い切断縁部を持つ試験体の場合には、該縁部を引っ張り試験の前に鋭い刃を用いて綺麗にする。引張り伸び挙動は、他に指摘がない限り、機械方向(長手方向、MD)について試験する。その力はN/(ストリップ幅)で表しそして破断伸びは%で表す。試験結果、特に破断伸び(破断点伸び率)は十分な回数の測定によって統計的に決めた。
【0127】
接着力はAFERA 4001に従って(できる限り)15mmの幅の試験用ストリップについて180°の剥離角度で測定する。この場合には、AFERA基準に従うスチール製板を、他の接着用基体が記載されていない限り、試験用基体として使用する。
【0128】
フィルムの厚さはDIN 53370に従って測定する(いかなる粘着剤層も測定した全厚さから引かれている)。
【0129】
保持力はPSTC 107(10/2001)に従って測定する。ただし重りは20Nでありそして接着面積の寸法は高さ20mmで幅13mmである。
【0130】
巻き解き力はDIN EN 1944に従って300mm/分で測定する。
【0131】
手での引裂性は、破断力、破断伸び及び衝撃強度(全て長手方向で測定)が重要な影響を及ぼすけれども数値で表すことができない。
【0132】
評価:
・ +++ = 非常に容易
・ ++ = 良好
・ + = 未だ加工可能
・ = 加工困難
・ -- = 強い力を使ってしか引裂できず、その端が乱れている。
・ --- = 加工できない。
【0133】
燃焼挙動はEMVSS 302(試料を水平に配置)及びSATM D 568(試料を垂直に配置)に従って測定する。EMVSS 302の場合には、粘着剤被覆は上側にある。これらの方法は燃焼可能な試料の燃焼速度を測定することを可能とする。試料が2つ目のマーク(末端のマーク)に達するまで(通過してない)燃焼させるか又は通過する以前に自己消火するかだけを評価する。MVSS 302(米国自動車安全基準)はISO基準にまで発展した。
【0134】
耐熱性は2つの方法で測定する。巻きテープを、シルコーン処理したポリエステルフィルムに最初に貼り付け、そして熱い状態で保存する。試験時間の経過後に試験体を23℃で30分冷却する。耐熱性試験の場合には、140℃で312時間保存した後に、破断伸びが未だ少なくとも100%であるかどうかをチェックする。短時間の耐熱性試験は試料を170℃で30分保存することによって行い、次いで10mmの直径のマンドレルの回りに少なくとも3巻き50%オーバラップさせて巻き、次いで試験体が損傷(例えばひび割れ、溶融箇所)を有しているかどうかをチェックする。
【0135】
低温試験の場合には、前記の試験体がISO/DIS 6722に基づく方法で−40℃で冷却しそして試料を5mmの直径のマンドレルに手で巻き付ける。試験体について、接着テープの欠陥(ひび割れ)を視覚的に確かめる。
【0136】
破壊電圧はASTM D 1000に従って測定する。試験体がこの電圧のもとで1分間耐えられる最大値を数値として取る。この数値を、100μmの試験体厚さに換算する。
【0137】
[実施例]
200μmの厚さの試料は1分後に、6kVの最大電圧に耐える。算出される破壊電圧は3kV/100μmである。
【0138】
フォギング値(fogging value )はDIN 75201 Aに従って測定する。
【0139】
以下の実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0140】
[実施例で使用したPU原料の説明:]
TerathaneTM 1000: 分子量Mn =1000ダルトンを有するテトラヒドロフランをベースとするポリエーテルジオール(製造元:DuPont)。
TerathaneTM 650: 分子量Mn =650ダルトンを有するテトラヒドロフランをベースとするポリエーテルジオール(製造元:DuPont)。
BesterTM 101:分子量Mn =1000ダルトンを有するポリエステルジオール(製造元:Rohm&Haas)。
VoranolTM P 1010: 1000ダルトンを有するポリプロピレングリコールジオール(製造元:Dow Chemical)。
MDI: 4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート。
ExolitTM OP 560:ツェレビチノフ(Zerewitinoff)活性水素原子を有するジオールホスホナートをベースとする難燃剤(製造元:Clariant)。
NORD-MINTM MC-25J: メラミンシアヌレート(製造元:Nordmann-Rassmann)
FyrolflexTM RDP: 下記式のレゾルシノホスファートオリゴマー(製造元:Akzonobel):
【0141】
【化4】

【0142】
BDO: 1,4−ブタンジオール
IrganoxTM 1010: テトラキス(メチレン−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシシナマート))メタン(製造元:Ciba Specialty Chemicals)
IrganoxTM PS 800: ジアリールチオジプロピオナート(製造元:Ciba Specialty Chemicals)
ElastollanTM Konz 952: TPU (製造元:Elastogran)中のスターバッチIrganoxTM 1010
LicowaxTM C: 離型剤 (製造元:Clariant Wurtz)
StabaxolTM KE 9463: 芳香族カルボジイミドをベースとする加水分解防止剤(製造元:Rheinchemie)
CarbodiliteTM V-04B:カルボジイミドをベースとする加水分解防止剤(製造元:
Nisshinbo Industries)。
【実施例1】
【0143】
1045kgのTerathaneTM1000、6.3kgのIrganoxTM 1010、1000kgのNORD-MINTM MC-25J及び10kgのLicowaxTM Cよりなる混合物を、羽根付き攪拌機を用いて500回転/分で攪拌しながら160℃に加熱し、その後に713kgのMDIを添加する。最大反応温度に達した後に30秒間後攪拌し、その後に125kgBDO及び100kgのExolitTM OP 560 を添加する。次いで、100秒間攪拌し、その後にこのTPUを注型する。最後にこの材料を80℃で30分、後処理する。
【0144】
完成TPUを切断し、粉砕しそして5重量%の黒色マスターバッチの添加下に配合装置に乾燥状態で供給する。この配合物を“逆L字”型のカレンダー装置のニップに供給する。加工温度は220℃である。カレンダーロールによって80μmの厚さで滑らかな表面のフィルムに成形する。
【0145】
このフィルムを1週間保存し、平面を改善するために、ロールを持つ被覆装置で60℃で平滑化しそしてコロナ処理の後に一方の側に剥離層を設けそしてもう一方の側に水性アクリレート接着剤(Rohm &Haas社のPrimal PS 83 D)を塗工ナイフで24g/m2 の塗布量で塗布する。この完成巻きテープを1インチのコア(25mm)に巻きつけて33mの長さのロールにする。それの切断を、全く鋭くはない角度(直線的なナイフ)を持つ固定刃を用いて行い、該長いロールを分割して29mm幅のロールにする。
【実施例2】
【0146】
実施例1と同様にMDI及びTerathaneTM1000から2.5:1のモル比でプレポリマーをIrganoxTM 1010、NORD-MINTM MC-25J及びFyrolflexTM RDP の存在下に製造して、1当量のBDOの95モル%と反応させる。添加物の含有量は(100phrのTPUポリマーを基準として)0.3phrのIrganoxTM 1010、23phrのNORD-MINTM MC-25J及び4phrのFyrolflexTM RDPである。
【0147】
完成TPUを切断し、粉砕しそして5重量%の白色マスターバッチ及び5%のStabaxolTM KE 9463の添加下に180〜200℃の温度で100μmのブロー成形フィルムに加工する。
【0148】
この支持体フィルムの片側を火炎前処理に付しそして10日間保存した後にAcronal DS 3458をこれにロール塗装装置によって50m/分で被覆する。支持体への温度負荷は冷却された裏当てロールで低減する。塗布量は約35g/m2である。適当な架橋を、巻く前にインラインで、6個の中圧Hgランプ(各120W/cm)を備えた紫外線装置で照射して達成した。照射されたウエブを、1 1/4インチのコア(31mm)に巻いて33mmの長いロールにする。切断を、固定刃(直線的なナイフ)を用いて長いロールの分割を行い、25mm幅のロールにする。
【実施例3】
【0149】
実施例1と同様にMDI及びTerathaneTM650から2.2:1のモル比でプレポリマーをIrganoxTM 1010及びメラミンポリホスファート(Dayang Chemicals)の存在下に製造して、1当量のBDOの95モル%と反応させる。反応の終わりにCarbodiliteTM V-04B を添加する。添加物の含有量は(100phrのTPUポリマーを基準として)0.1phrのIrganoxTM 1010、27phrのメラミンポリホスファート及び2phrのCarbodiliteTM V-04B である。
【0150】
完成TPUを切断し、粉砕しそして5重量%の黒色マスターバッチ及び5%の加水分解防止剤マスターバッチ(Rhein-Chemie社のKE 9463=TPU中20%のStabaxolTM P200 )の添加下に注型法(冷却ロールを備えた平らなノズル)で70μmの厚さのフィルムを形成する。
【0151】
一方の面に5部のMDI、45部の天然ゴム及び50部のシクロゴムよりなるプライマーで0.6g/m2 被覆しそして乾燥する。接着剤被覆は粘着剤層の上に18g/m2 (乾燥物質を基準とする)の塗布量で直接的に塗布する。接着剤は天然ゴム接着剤をn−ヘキサンに溶解した30重量%の固形分含有量の溶液よりなる。このものは50部の天然ゴム、10部の酸化亜鉛、3部のコロホニウム樹脂、6部のアルキルフェノール樹脂、17部のテルペンフェノール樹脂、12部のポリ−β−ピネン樹脂、1部の酸化防止剤(Irganox 1076 )及び2部の鉱油よりなる。塗布後の乾燥は100℃の乾燥トンネルで行った。直ぐ下流でこのフィルムを標準接着テープコア(3インチ)に巻き付けたロール状態で19mmの間隔で鋭い刃を持つナイフバーを用いて自動的に切断分割する。
【0152】
[比較例1]
実施例1と同様に製造するが、ただしTerathaneTM 1000 を同じ量のBesterTM 101 に交換した。
【0153】
[比較例2]
実施例2と同様に製造するが、ただしTerathaneTM 1000 を同じ量のVoranolTM P 1010 に交換した。
【0154】
[比較例3]
実施例2と同様に製造するが、ただしMDIを等しいモル量のヘキサメチレンジイシシアネートに交換しそしてBDOを等しいモル量のヘキサンジオール−(1,6)に交換した。
【0155】
[比較例4]
被覆するために、F2104Sの名称でSingapore Plastic Products Pte.社の絶縁テープ用の慣用のフィルムを使用する。このフィルムは製造元仕様書によれば、63〜65のK−値を持つ100phr(100の樹脂に対する部数)の懸濁物PVC、43部のDOP(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)、5phrの三塩基性硫酸鉛(TLB、安定剤)、25phrの粉砕チョーク(脂肪酸被覆を持つBukit Batu Murah Malaysia)、1phrのファーネスブラック及び0.3phrのステアリン酸(滑剤)を含有している。公称の厚みは100μmでありそして表面は滑らかであるが艶消しである。
【0156】
片面にFour Pillars Enterprise/Taiwan のプライマーY01(分析によると、アクリレート変性されたSBRゴムをトルエン中に入れたもの)を塗布し、その上にFour Pillars Enterprise/Taiwanの23g/m2 の接着剤IV9(分析により測定された主成分のSBR及び天然ゴム、テルペン樹脂及びアルキルフェノール樹脂をトルエン中に入れたものである)を塗布する。このフィルムを乾燥機の直ぐ後で、鋭い刃の付いたナイフバーで自動的に25mmの間隔で切断分割してロール状物とする。
【0157】
【表1】

【0158】
<結果の総括>
比較例1はポリエステルポリオールをベースとするTPUの加水分解性を示している(140℃でのエージングを含む)
比較例2はポリプロピレングリコールをベースとするTPUの酸化過敏性を示している。
【0159】
比較例3は、本発明よりも低い軟化点を持つ硬質ブロックの場合には熱安定性が低いことを示している。結晶子融点は139℃と測定されるので、この試料はエージング試験でも溶融する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンよりなるフィルムを持つ高熱負荷可能なハロゲン不含の難燃性巻きテープにおいて、該フィルムがテトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びブタンジオール(1,4)よりなる熱可塑性ポリウレタンでありそして少なくとも1種類のハロゲン不含難燃剤を含有していることを特徴とする、前記巻きテープ。
【請求項2】
ポリウレタンが
(A)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び
(B)テトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物及び
(C)ブタンジオール(1,4)及び
(E)ハロゲン不含で、非反応性の又は組み入れ可能な少なくとも1種類の難燃剤
から、好ましくは
(F)酸化防止剤及び/又は
(G)加水分解防止剤
の如き安定剤の使用下に、場合によっては
(G)触媒及び/又は
(H)別の助剤又は添加物
の使用下に好ましくはプレポリマー法で製造する、請求項1に記載の巻きテープ。
【請求項3】
巻きテープが有色である、請求項1又は2に記載の巻きテープ。
【請求項4】
接着剤が、同時押出成形、溶融被覆又は分散物被覆によって適用される溶剤不含粘着剤であり、該粘着剤は好ましくはポリアクリレートをベースとするホットメルト接着剤又は分散物粘着物をベースとする粘着剤である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項5】
追加的なジイソシアネート、長鎖ポリオール及び/又は鎖延長剤を含有していない、請求項1〜4のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項6】
テトラヒドロフランの水酸基含有重合生成物の分子量Mが450〜6000ダルトン、特に600〜1500ダルトンである、請求項1〜5のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項7】
助剤及び添加物の量が100部のポリウレタンを基準として20部以下である、請求項1〜6のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項8】
ポリウレタンフィルムが好ましくは少なくとも0.5phr、特に好ましくは少なくとも1phrの少なくとも1種類の酸化防止剤及び/又は少なくとも1種類の第一の酸化防止剤と少なくとも1種類の第二の酸化防止剤との組合せを含有し及び/又は
好ましくは少なくとも0.5phr、特に好ましくは2phrの加水分解防止剤及び/又は加水分解防止剤としての芳香族カルボジイミドポリマーを含有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項9】
破断伸びが140℃で312時間貯蔵後に少なくとも100%であり及び/又は170℃で30分貯蔵後に10mmの直径のマンドレルの回りに50%オーバラップさせて少なくとも3巻き巻いたときに損傷が認められない、請求項1〜8のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項10】
ポリウレタンのショアーD硬度が少なくとも35、好ましくは少なくとも50であり及び/又はポリウレタンの結晶子融点が少なくとも158℃、好ましくは少なくとも170℃である、請求項1〜9のいずれか一つに記載の巻きテープ
【請求項11】
FMVSS 302又はASTM D 568に規定された試験条件のもとで自然消火し及び/又は少なくとも4kVの絶縁破壊電圧を有する、請求項1〜10のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項12】
フィルムの厚みが30〜180μm,好ましくは50〜150μm,特に好ましくは55〜100μmであり、
機械方向に10%延伸するときの力が2〜20N/cm、好ましくは4〜11N/cmの値であり、
50%延伸するときの力が3〜25N/cm、好ましくは6〜17N/cmの値であり、
引裂力が10N/cmより大きく、好ましくは20N/cmより大きい値である、
請求項1〜11のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項13】
接着剤層の量が10〜40g/m2、好ましくは18〜28g/m2であり、
巻きテープのスチールへの接着力が1.5〜3N/cmであり、
巻きテープの巻き解き力が300mm/分の巻き解き速度で1.2〜6.0N/cm、好ましくは1.6〜4.0N/cm、特に好ましくは1.8〜2.5N/cmであり及び/又は
巻きテープの保持力が150分より大きい、
請求項1〜12のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項14】
手での引裂性がフィルム中の添加物によって又はフィルムの側縁部に機械的に傷つけることによって高められている、請求項1〜13のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項15】
難燃剤がリン酸エステル又はホスホン酸エステル、好ましくはヒドロカルビル(ジヒドロカルビルホスファート)であり、
及び/又は燐含有難燃剤が加水分解のときにフェノールもクレゾールも放出せず、
及び/又は
難燃剤が好ましくはポリウレタンの製造過程の間に添加されるメラミンシアヌレートである、請求項1〜14のいずれか一つに記載の巻きテープ。
【請求項16】
排気管、ワイヤー又はケーブルの結束、保護、マーキング、絶縁又はシーリング、自動車のケーブルハーネス又は受像管の界磁コイルの被覆に、請求項1〜15のいずれか一つに記載の巻きテープの使用方法。

【公表番号】特表2009−519367(P2009−519367A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544942(P2008−544942)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069115
【国際公開番号】WO2007/068599
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507249591)テーザ・アクチエンゲゼルシャフト (52)
【Fターム(参考)】