説明

熱可塑性ポリエステルエラストマー及びその製造方法

【課題】 末端カルボキシル基濃度が低く、さらには、使用済みペットボトルから得られるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)に、ブタンジオール(BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)を加えて重縮合させることにより、成形性が良好で高品質の熱可塑性ポリエステルエラストマーを提供する。
【解決手段】 芳香族ジカルボン酸成分、分子量250未満のグリコール成分、及び数平均分子量400〜5000の高分子量グリコール成分からなる熱可塑性ポリエステルエラストマーであって、全グリコール成分中、エチレングリコール成分の含有量が1〜10モル%であり、末端カルボキシル基濃度が20eq/ton以下である。この場合において、出発原料としてビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性ポリエステルエラストマーとその製造方法に関するものである。詳しくはビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを出発原料とした熱可塑性ポリエステルエラストマーとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、以前よりポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)をはじめとする結晶性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリオキシアルキレングリコール類及び/又はポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)などのポリエステルをソフトセグメントとするものなどが知られ、実用化されている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平10−17657号公報
【特許文献2】特開2003−192778号公報
【0003】
例えばハードセグメントにPBT、ソフトセグメントにPTMGを用いた熱可塑性ポリエステルエラストマーは、通常、テレフタル酸(TPA)またはジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−ブタンジオール(BD)、さらにPTMGとを溶融状態で重合させて製造される。得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーは、末端カルボキシル基を有しており、これが多いと耐加水分解性が低下するという問題がある。
【0004】
一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、繊維、フィルム、ボトル等の用途に主として使用されている。特に、飲料容器を主たる用途とするポリエチレンテレフタレート製ボトル(ペットボトル)は、近年、その利便性を受けて膨大な量が使用されているが、その使い捨てが膨大な量の廃棄物を発生することから環境問題にまで発展している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の背景から、末端カルボキシル基濃度が低い熱可塑性ポリエステルエラストマーが望まれている。また一方で、使用済みペットボトルのリサイクルが望まれている。本発明は以上の背景に基づき、末端カルボキシル基濃度が低い熱可塑性ポリエステルエラストマーを提供することを課題とする。さらには、使用済みペットボトルをエチレングリコールにより解重合して得られるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を精製したものに、ブタンジオール(BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)を加えて重縮合させることにより、末端カルボキシル基濃度が低く、成形性が良好で高品質の熱可塑性ポリエステルエラストマーを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、芳香族ジカルボン酸成分、分子量250未満のグリコール成分、及び数平均分子量400〜5000の高分子量グリコール成分からなる熱可塑性ポリエステルエラストマーであって、全グリコール成分中、エチレングリコール成分の含有量が1〜10モル%であり、末端カルボキシル基濃度が20eq/ton以下である熱可塑性ポリエステルエラストマーである。
【0007】
この場合において、出発原料としてビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを用いることが好ましい。
【0008】
また本発明は、前記の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造する方法であって、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに、1,4−ブタンジオールと数平均分子量400〜5000の高分子量グリコールを加えて重縮合する熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法である。
【0009】
この場合において、高分子量グリコールがポリテトラメチレングリコールであることが好ましい。
【0010】
この場合において、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート1モルに対して、1.3〜2.5モルの1,4−ブタンジオールを加えて、エステル交換反応させることが好ましい。
【0011】
前記製造方法において、エステル交換反応触媒の存在下で、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートと、1,4−ブタンジオール、さらにポリテトラメチレングリコールを、1〜54kPaの圧力下、最終温度200〜230℃でエステル交換反応させ、次いで反応生成物を重縮合させることが好ましい。
【0012】
ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの純度は95重量%以上であることが好ましい。エステル交換反応は、0.5〜5℃/分の昇温速度で行うことが好ましい。重縮合は、温度230〜260℃、最終圧力1〜300Paで行うことが好ましい。ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートが、ポリエチレンテレフタレートを過剰のエチレングリコールで解重合し、解重合物を精製する処理で得られたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、TPAやDMTを出発原料として得られるハードセグメントがPBTである熱可塑性ポリエステルエラストマーと同等以上の品質のポリエステルエラストマーを製造することができる。また本発明によれば末端カルボキシル基濃度の低いポリエステルエラストマーを製造することができる。さらに、出発原料として使用済みPETをEGで解重合して精製処理に付して得られるBHETを使用することにより、使用済みPETのリサイクルにも繋がる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(熱可塑性ポリエステルエラストマー)
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーに使用できる芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などを挙げることができる。これらの中でも、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特に、テレフタル酸が好ましい。
【0015】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーに使用できる分子量250未満のグリコール成分は、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオ−ル、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、ビスフェノ−ルAのEO付加物などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールであり、特に好ましくは1,4−ブタンジオールである。
【0016】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーに使用できる数平均分子量400〜5000の高分子量グリコール成分は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体、ポリプロピレングリコールのエチレンオキシド付加重合体、ポリカーボネートジオール、ポリネオペンチルグリコール、ポリ3−メチルペンタンジーオール、ポリ1.5ペンタンジオール、ビスAエチレンオキサイド付加物、ビスAプロピレンオキサイド付加物、ビスSエチレンオキサイド付加物等とその誘導体が上げられ、具体的な誘導体として、例えばポリネオペンチルグリコールとポリエチレングリコールとの共重合体などが挙げられ、なかでもポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール、ポリプロプレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。特にポリテトラメチレングリコールが好ましい。
高分子量グリコール成分の数平均分子量は、相分離低減の点から、1000〜3000が好ましい。
【0017】
高分子量グリコール成分の含有量は全熱可塑性ポリエステルエラストマー中、5〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜30重量%である。高分子量グリコール成分が5重量%未満では柔軟性に劣り、50重量%を越えると得られるエラストマーの耐熱性が低下する。
【0018】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるエチレングリコール(EG)成分の含有量は、全グリコール成分中1〜10モル%、好ましくは1〜8モル%である。この範囲であれば、成形性が良好で高品質の熱可塑性ポリエステルエラストマーが得られる。一方、EG含有量がこれ以上になると、成形性が損なわれるだけでなく引張強度などの機械物性も低下してしまうため好ましくない。
EGの含有量を1〜10モル%にするためには、所定量のEGを原料として仕込んでも構わないが、出発原料としてBHETを用いる場合は、BHET中のEG成分を残す方法でも構わない。リサイクルの観点から、後者が好ましい。出発原料としてBHETを用い、EGの含有量を1〜10モル%にする方法については、(エステル交換反応)の項で説明する。
【0019】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーの末端カルボキシル基濃度は、20eq/ton以下であり、好ましくは18eq/ton以下、さらに好ましくは15eq/ton以下である。末端カルボキシル基濃度は、20eq/ton以下であることで、熱可塑性ポリエステルエラストマーの耐加水分解性が向上するので好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマーの末端カルボキシル基濃度を20eq/ton以下にする方法については、(エステル交換反応)の項で説明する。
【0020】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、発明の効果を損なわない範囲に限り、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸などをはじめとするヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成誘導体、または脂環族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸を共重合成分として用いてもよい。さらに、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどをはじめとする環状エステルを共重合成分として用いても良い。これらは樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸または全グリコール成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
【0021】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、発明の効果を損なわない範囲に限り、公知のリン系化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、たとえばフェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、(2−カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2−カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸、(2−メトキシカルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸メチル、(4−メトキシカルボニルフェニル)フェニルホスフィン酸メチル、[2−(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸のエチレングリコールエステル、(1,2−ジカルボキシエチル)ジメチルホスフィン酸オキサイド、9,10−ジヒドロ−10−オキサ−(2,3−カルボキシプロピル)−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーの難燃性などを向上させることが可能である。
【0022】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいては、少量に限って三官能以上のポリカルボン酸やポリオール成分を含むこともできる。例えば無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、無水ピロメリット酸などを3モル%以下使用できる。三官能以上のポリカルボン酸やポリオール成分は合計量で、熱可塑性ポリエステルエラストマーの全ポリカルボン酸成分およびポリオール成分の合計を100モル%とすると5モル%以下、好ましくは3モル%以下である。
【0023】
((2−ヒドロキシエチル)テレフタレート)
本発明におけるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を過剰のエチレングリコール(EG)で解重合し、解重合物を精製する処理で得られたもの、テレフタル酸とEGの直接エステル化反応により得られたもの、ジメチルテレフタレートとEGのエステル交換反応により得られたものを始めとして、如何なる方法により製造されたものでも良い。その純度は95重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは98重量%以上である。ここで純度とは、BHETの占める割合であり、他の成分は実質的にBHETの低縮合物(例えば、重合度2〜10の低縮合物)よりなる。これらの中、PETを過剰のEGで解重合し、解重合物を精製する処理で得られたものが好ましい。
【0024】
前記PETとしては、未加工のPET樹脂、使用済みPET成形品(例えば、ペットボトル、繊維、フィルム等)、またはPET製造工程から発生するPET屑等が挙げられる。これらの内、リサイクルという観点からみると、使用済みPET成形品を用いることが最も好ましい。
【0025】
前記PETからBHETを製造する方法としては、前述したように、該PETをEGによる解重合処理に付して解重合溶液とし、次いで解重合溶液を精製処理に付してBHETを得る方法が好ましく挙げられる。解重合処理では、PETをBHETおよび/またはそのオリゴマーを用いて予備解重合し、さらに予備解重合物をEGで解重合して解重合溶液とすることが好ましい。精製処理では、ろ過処理、吸着処理、イオン交換処理、晶析処理、蒸留処理またはこれらの組合せによって、解重合溶液中に含まれる不純物を除去することが好ましい。
【0026】
前記予備解重合は、溶融したPETをBHETおよび/またはそのオリゴマー(重合度2〜10)と200〜300℃、さらには230〜280℃の温度で混練することで行うのが好ましい。その際、PETに対するBHETおよび/またはそのオリゴマー(重合度2〜10)の量は、PET1重量部当り、0.1〜1.0重量倍、さらには0.2〜0.8重量倍であることが好ましい。予備解重合物の分子量は、重合度で2〜20、さらには3〜10であることが好ましい。
【0027】
次いで、予備解重合物はPETの構成成分であるEGを用いて解重合触媒(例えば、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート等)の存在下160〜260℃、好ましくは180〜230℃の温度で解重合するのが好ましい。その際、EGの量は、予備解重合物1重量部当り、2〜10重量倍、さらには3〜7重量倍であることが好ましい。得られる解重合溶液(EG溶液)の固形分は主としてBHETからなり、そのオリゴマーの割合が1〜30重量%、さらには2〜20重量%に低減されたものである。この固形分の濃度は10〜30重量%、さらには15〜25重量%であることが好ましい。
【0028】
解重合処理で得られた解重合溶液(EG溶液)は、通常、不溶物粒子を含んでいるが、これらのうち比較的大きい粒子はろ過処理で除去し、そしてろ過しきれなかった顔料などの微粒子は活性炭での吸着処理で除去し、さらに触媒残渣等のイオン性物質はイオン交換処理で除去して精製する。こうして精製された解重合溶液は晶析処理でさらに精製し、次いで得られた晶析物(主としてBHETからなる晶析物)は蒸留処理することにより、或はイソプロピルアルコールなどの有機溶媒を用いた再結晶精製処理を繰り返すことにより、高純度のBHETとすることができる。
【0029】
ろ過処理としては、解重合溶液を60〜90℃、好ましくは70〜85℃に降温して、解重合反応で分解されなかった不溶物粒子などの比較的大きい粒子固形異物、例えば平均粒径が1〜500μm程度の固形異物をろ過する処理であることが好ましい。例えば、解重合溶液を、3〜20dtexの繊維(ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等)からなる濾材を空隙率70〜98%で充填したろ過装置に通すことでろ過することが好ましい。
【0030】
吸着処理としては、解重合溶液を60〜90℃、好ましくは70〜85℃の温度に維持し、活性炭を充填した吸着塔に空間速度0.1〜2.0hr−1で通液する処理(活性炭処理)であることが好ましい。この吸着処理は顔料等の着色剤を除去するものでもあり、脱色処理と云えるものである。この活性炭としては、例えば三菱化学(株)製「ダイアホープ008」等を挙げることができる。
【0031】
イオン交換処理としては、カチオン交換処理とアニオン交換処理を組み合わせて行うことが好ましい。例えば、解重合溶液を60〜90℃、好ましくは70〜85℃の温度に維持し、カチオン交換体を充填した脱カチオン塔に空間速度1〜12hr−1で通液してカチオン交換処理し、その後連結配管内を3秒〜10分で通過させてからアニオン交換体を充填した脱アニオン塔に空間速度0.5〜10hr−1で通液してアニオン交換処理するのが好ましい。前記カチオン交換体としては、例えばロームアンドハース社製カチオン交換樹脂「アンバーライトIR−120B」等を好ましく挙げることができる。また、前記アニオン交換体としては、例えばロームアンドハース社製アニオン交換樹脂「アンバーライトIRA96SB」とカチオン交換樹脂「アンバーライトIR−120B」の混合物等を好ましく挙げることができる。このアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合割合(容量比)は1:3〜5:1であることが好ましい。イオン交換処理によって、PETの製造に使われた触媒等のイオン性物質を除去することができる。
【0032】
晶析処理としては、イオン交換処理を行った後の溶液(脱イオン処理溶液)を晶析槽において飽和溶解度以上の温度から15〜30℃の範囲の温度まで冷却し、この範囲の温度に1〜12時間維持して、析出物(晶析物)の平均粒子径が40〜200μm(島津製作所製SALD−200V ERを用いて、EGで10倍希釈して測定)になるようにBHETを析出させるのが好ましい。この脱イオン処理溶液を飽和溶解度以上の温度から冷却する場合、例えば0.1〜0.5℃/分の速度でゆっくりと冷却するのが好ましい。
【0033】
得られた晶析物は固液分離により固形分を分離する。固液分離は、晶析処理時の温度、すなわち15〜30℃の範囲の温度を維持しながら行うのが好ましい。さらには、析出物を通気度が3〜30cm3/min・cm2のろ布を用いたフィルタープレスでろ別するのが好ましい。晶析処理によりイオン交換処理では除去しきれない有機性の着色物質、グリコール可溶性不純物、副反応物等を除去することができる。
【0034】
蒸留処理としては、晶析処理で得られたろ過ケークを70〜120℃で融解し、融解液を第一蒸発装置に導入し、温度130〜170℃、圧力300〜1000Paの条件で低沸点成分を蒸発(第一蒸発)させ、次いで第一蒸発を経た融解液を第二蒸発装置に導入し、温度130〜170℃、圧力50〜250Paの条件で、低沸点成分を蒸発(第二蒸発)させるのが好ましい。次いで、第二蒸発を経た融解液を流下薄膜式分子蒸留装置に導入し、温度180〜220℃、圧力25Pa以下の条件で蒸留(分子蒸留)するのが好ましい。蒸留処理により、晶析分離では除去しきれない残存低沸点物やオリゴマー等の高沸点不純物を除去することができる。解重合溶液を上述の操作により精製することにより、効率良く高品質なBHETを得ることができる。上記工程により製造された精製BHETの純度は、95重量%以上、好ましくは98重量%以上である。さらに、このBHETは光学密度で0.000〜0.006、さらには0.000〜0.005、特に0.000〜0.004の特性を有することが好ましい。
【0035】
(エステル交換反応)
本発明においては、純度95重量%以上、好ましくは98重量%以上のBHETと、BD、PTMGを、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換させることが好ましい。該BHETとBDとの量比は、モル比で1:1.3〜1:2.5、好ましくは1:1.3〜1:2.0である。この範囲であれば低コストで製造でき、また全グリコール成分中のEG成分の含有量を1〜10モル%にすることが可能である。BHETに対してBDのモル比が小さすぎると反応が進みにくく、他方、大きすぎるとEG成分の含有量が1モル%未満になり、またBDがテトラヒドロフラン(THF)に転化する割合が増大するため好ましくなく、さらにコストが上がるという観点から見ても好ましくない。
【0036】
本発明におけるエステル交換反応触媒としては、公知のエステル交換反応触媒を用いることができ、殊にチタン化合物、スズ化合物等を好ましく用いることができる。チタン化合物としては、例えばテトラメチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラオクチルチタネート等を挙げることができ、スズ化合物としては、例えばジブチルスズ、テトラエチルスズ、ジブチルスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイト等を挙げることができる。これらは一種を使用することができ、また、数種を併用することもできる。このエステル交換反応触媒の添加量は、反応条件、使用触媒によっても異なるが、チタン化合物、スズ化合物については、得られる熱可塑性ポリエステルエラストマーに対してチタン金属および/またはスズ金属換算で0.001〜0.1重量%であることが好ましい。
【0037】
本発明におけるエステル交換反応は、圧力1〜54kPa、好ましくは1〜30kPaで行う。この圧力下で反応を行うことで、BDとエステル交換されたEGを系外に素早く留出させて反応平衡をビス(4−ヒドロキシブチル)テレフタレート(BHBT)側にずらす効果と、エステル交換反応温度を低くして副反応を抑える効果を奏することができる。またエステル交換反応は、最終温度が200〜230℃、さらには205〜225℃となる温度で、EG等グリコール類の留出が実質的に止まるまで行い、反応生成物であるBHBTおよび/またはその低縮合物を得ることが好ましい。反応温度が低すぎると反応が遅くなることから副反応を引き起こし、他方、高すぎると生成物の熱劣化や副反応が生じるため好ましくない。
【0038】
このエステル交換反応は、前述のように所定の圧力に調整し、通常、約165〜190℃に加熱することで進行してEGが遊離し始めるが、さらに昇温しながら行うのが好ましい。このエステル交換反応の昇温は0.5〜5℃/分が好ましく、さらには1.0〜3.5℃/分の速度であることがより好ましい。この範囲内の速度で昇温することにより、効果的なエステル交換反応を行うことができる。
このようにエステル交換反応の圧力と温度を制御することにより、エステル交換反応段階での低縮合物のカルボキシル基濃度を低く抑えることができ、その後の重縮合反応を経た熱可塑性ポリエステルエラストマーの末端カルボキシル基濃度を20eq/ton以下にすることができる。
【0039】
(重縮合)
次いで、本発明においては、前記エステル交換反応により得られたBHBTおよび/またはその低縮合物を、重縮合させて所望の分子量のポリマーとするが、この重縮合はオリゴマー化の初期縮合反応と、得られるオリゴマーを所望の分子量とする重縮合(高分子量化)反応の工程で行うのが好ましい。初期縮合反応は過剰のBD、EG等のグリコール類およびBDより転化して生じたテトラヒドロフラン(THF)、水等の副生物を留出させながらの反応であるが、従来公知の方法で行うことができる。この初期縮合は、前記エステル交換反応の最終温度から連続的または間歇的に、好ましくは0.1〜3℃/分、さらに好ましくは0.2〜1.5℃/分で昇温し、好ましくは230〜260℃、さらに好ましくは230〜255℃の温度で行う。また圧力は、前記エステル交換反応で調整した圧力から徐々に減圧していくが、最終圧力を0.5〜5kPa、さらには0.5〜3.5kPaとすることが好ましい。これらの条件でBHBTおよび/またはその低縮合物を初期縮合させることで、本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマー製造のための好適な重合度のオリゴマーが得られる。該オリゴマーの平均重合度は2〜10、さらには2〜6が好ましい。
【0040】
前記初期縮合により得られたオリゴマーはさらに重縮合を進めて、ポリマーとする。この重縮合反応は、通常の熱可塑性ポリエステルエラストマー製造に用いられる重縮合反応の条件をそのまま適用することができるが、好ましくは温度230〜260℃、さらには235〜255℃で行い、また、最終圧力を1〜300Pa、さらには1〜200Paとすることが好ましい。
【0041】
(添加剤)
さらに本発明熱可塑性ポリエステルエラストマーには、目的に応じて種々の添加剤を配合して組成物を得ることができる。添加剤としては、公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、アミン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系等の光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物等の分子調整剤、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物等の反応基を有する化合物、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機及び無機系の顔料などを添加することができる。
【0042】
本発明において配合できるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−トルエン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6’−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシーベンジルーモノエチル−フォスフェート)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンテリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸〕グリコールエステル、トリフェノール、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2,2’−オキサミドビス〔エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミックアヒドトリエステルウイズ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)などを挙げることができる。
【0043】
本発明において配合できる硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジウロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオクタデシルサルファイド、ペンタエリストリール−テトラ(β−ラウリル−チオプロピオネート)エステル等を挙げることができる。
【0044】
本発明において配合できる燐系酸化防止剤としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノリルフェニル)フォスファイト、トリス(2,3−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルージートリデシル)フォスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールージーフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンフォスファナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールージーフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、トリドデシルトリチオホスファイト等を挙げることができる。
【0045】
本発明に配合できるアミン系酸化防止剤としては、N,N−ジフェニルエチレンジアミン、N,N−ジフェニルアセトアミジン、N,N−ジフェニルフルムアミジン、N−フェニルピペリジン、ジベンジルエチレンジアミン、トリエタノールアミン、フェノチアジン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、P,P’−ジオクチル−ジフェニルアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチル−ペンチル)−p−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β− ナフチルアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチル−ベンジル)ジフェニルアミン等のアミン類及びその誘導体やアミンとアルデヒドの反応生成物、アミンとケトンの反応生成物から挙げることができる。
【0046】
本発明において配合できるヒンダードアミン系光安定剤としては、琥珀酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミル〕〕、2−n−ブチルマロン酸のビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)エステル、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの重縮合物、ポリ〔(N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン)−(4−モノホリノ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラミチルピペラジノン)〕、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ドデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ドデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,6,11−トリス〔{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ}ウンデカン、1−〔2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトロメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などを挙げることができる。
【0047】
本発明で配合できるベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアゾール系、ニッケル系、サリチル系光安定剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス(α,α−ジメチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンアゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾチリアゾール、2,5−ビス−〔5’−t−ブチルベンゾキサゾリル−(2)〕−チオフェン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル燐酸モノエチルエステル)ニッケル塩、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリックアシッドービスーアニリド85〜90%と2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチル−4’−t−ブチルオキサリックアシッドービスーアニリド10〜15%の混合物、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−エトキシ−2’−エチルオキサザリックアシッドビスアニリド、2−〔2’−ヒドロオキシ−5’−メチル−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミド−メチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−i−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル等の光安定剤を挙げることができる。
【0048】
本発明において配合できる滑剤として炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸系、天然ワックス系、シリコーン系、フッ素系化合物が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、合成パラフィン、合成硬質パラフィン、合成イソパラフィン石油炭化水素、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレン、フルオロカルボン油、炭素数12以上のラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸化合物、ヘキシルアミド、オクチルアミド、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、エチレンビスステアリルアミド、ラウリルアミド、ベヘニルアミド、メチレンビスステアリルアミド、リシノールアミド等の炭素数3〜30の飽和或いは不飽和脂肪族アミド及びその誘導体、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステルであるブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、分子量200ないし10000以上のポリエチレングリコール、ポリグリセロール、カルナウバロウ、カンデリラロウ、モンタンロウ、ジメチルシリコーン、シリコンガム、四フッ化エチレンなどの滑剤が挙げられる。また、直鎖飽和脂肪酸、側鎖酸、シノール酸を有する化合物からなる金属塩で金属が(Li,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Al,Sn,Pb)から選ばれた金属石鹸も挙げることができる。
【0049】
本発明において配合できる充填剤としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、酸化クロム(三価)、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ、珪藻土、アルミナ繊維、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルーン等の酸化物や水酸化マウネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の塩基性物又は水酸化物又は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩又は、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム等の(亜)硫酸塩又は、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、モンモリナイト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ペントナイト等の珪酸塩又は、カオリン(陶土)、パーライト、鉄粉、銅粉、鉛粉、アルミニウム粉、タングステン粉、硫化モリブデン、カーボンブラック、ボロン繊維、炭化珪素繊維、黄銅繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、メタ硼酸バリウム、硼酸カルシウム、硼酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0050】
本発明で配合できるエポキシ基を有する化合物としては、ソルビオールーポリグリシジルーエーテル、ポリグリセロールーポリグリシジルーエーテル、トリグリシジル−トリス(2−ハイドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリエポキシ化合物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロオフタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合物等のジエポキシ化合物、高級アルコールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ化合物等が挙げられる。
【0051】
本発明で配合できるハロゲン置換されたフェニル基を有する化合物としては、テトラブロムビスフェノールA(TBA)、テトラブロムビスフェノールS(TBS)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールAエーテル、TBAエポキシ、TBAエチルエーテルオリゴマー、TBAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、TBA(アリルエーテル)、TBAビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、TBAカーボネートオリゴマー、TBSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモ無水フタル酸、デカブロモジフェニンオキサイド、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、ブロム化フェノキシ、エチレンビス(テトラブロモフタル)イミド、臭素化ジフェニルオキサイド、ブロム化ポリスチレン等が挙げられる。
【0052】
本発明で配合できる難燃助剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ、二酸化錫、メタ硼酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、赤燐系化合物、ポリリン酸アンモニウム塩、メラミンシアヌレート、四フッ化エチレン等が挙げられる。
【0053】
本発明で配合できるトリアジン基を有する化合物及び/又はその誘導体としては、メラミン、メラミンシアヌレート、燐酸メラメン、スルファミン酸グアニジン等が挙げられる。
【0054】
本発明で配合できる燐化合物の無機系燐化合物としては、赤燐系化合物、ポリリン酸アンモニウム塩等が挙げられる。赤燐系化合物としては、赤燐に樹脂をコートしたもの、アルミニウムとの複合化合物等が挙げられる。有機系燐化合物としては、燐酸エステル、燐酸メラミン等が挙げられる。燐酸エステルとしては、ホスフェート類、ホスホネート類、ホスフィネート類のトリメチルホスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルホスフェート、トリオクチルフォスフィート、トリブトキシエチルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリス・イソプロピルフェニルフォスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、ビス(1,3−フェニレンジフェニル)フォスフェート、芳香族縮合燐酸エステルの1,3−〔ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)ホスフェニルオキシ〕ベンゼン、1,4−〔ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)ホスフェニルオキシ〕ベンゼン等が耐加水分解や熱安定性、難燃性から好ましい。
【0055】
これらの添加物の配合方法としては、加熱ロール、押出機、バンバリミキサー等の混練機を用いて配合することができる。また、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を製造する際のエステル交換反応の前又は重縮合反応前のオリゴマー中に、添加及び混合することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、これら実施例において各測定項目は、以下の方法に従った。
【0057】
(1)組成分析
熱可塑性ポリエステルエラストマーの組成は、重クロロホルム溶媒中でヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、H−NMR分析を行なってその積分比より決定した。
(2)還元粘度
熱可塑性ポリエステルエラストマー0.05gを25mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40重量比)に溶かし、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0058】
(3)末端カルボキシル基濃度
熱可塑性ポリエステルエラストマー0.5gを100mlの混合溶媒(ベンジルアルコール/クロロホルム=50/50重量比)に溶かし、0.02N−KOH/エタノール溶液で滴定した。指示薬はフェノールレッドを用いた。
(4)融点
50℃で15時間減圧乾燥した熱可塑性ポリエステルエラストマーを、示差走査熱量計DSC−50(島津製作所製)を用いて室温から20℃/分で昇温し測定し、融解による吸熱のピーク温度を融点とした。
なお、測定試料は、アルミニウム製パン(TA Instruments社製、品番900793.901)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製、品番900794.901)で密封状態にして、アルゴン雰囲気で測定した。
【0059】
(5)引張強度および伸度
熱可塑性ポリエステルエラストマーの切断時の引張強度および伸びをJIS K 6251に準拠して測定した。テストピースは、射出成形機(山城精機社製、model SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で、100mm×100mm×2mmの平板に射出成形した後、ダンベル状3号形の試験片を平板から打ち抜いた。
(6)成形性
熱可塑性ポリエステルエラストマーの射出成形性を、射出成形機(山城精機社製、model SAV)を用いて、シリンダー温度(Tm+20℃)、金型温度30℃で、100mm×100mm×2mmの平板に射出成形し、下記基準で判定した。
○:冷却時間が20秒未満で成形可能。
×:冷却時間が20秒以上必要。
【0060】
(7)環境考慮性
熱可塑性ポリエステルエラストマーの環境考慮性を下記基準で判定した。
○:出発原料にリサイクル原料が含まれている。
×:出発原料にリサイクル原料が含まれていない。
(8)低コスト性
熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造時における低コスト性を下記基準で判定した。
○:製造時のBD/BHETが2.5以下(モル比)。
×:製造時のBD/BHETが2.5超(モル比)。
【0061】
(実施例1)
(ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造)
着色ペットボトル及びガスバリア性ペットボトルを含む使用済みペットボトルの粉砕フレーク100重量部を、オートクレープに50重量部のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)と共に供給し、窒素雰囲気下265℃で30分間攪拌しながら保持して予備解重合を行った。次いで、予備解重合物に触媒溶液9重量部(水酸化ナトリウム5重量%のエチレングリコール溶液)を加え、さらに加温したエチレングリコール(EG)775重量部を加えて窒素雰囲気下200℃で本解重合を行い、BHETを主成分とする固形分濃度20重量%の解重合溶液912重量部を得た。
【0062】
該解重合溶液を80℃まで降温してからポリプロピレン繊維からなるフィルターに通液することで加圧ろ過し、不溶性の異物を除去した。続いて85℃で活性炭に通して顔料等の微粒子を除去し、再度ポリプロピレン繊維からなるフィルターで加圧ろ過して浮遊している活性炭粒子を除去した。その後、80℃でカチオン交換体、続いてアニオン交換体に通液してイオン性不純物を除去した。上記処理後の解重合溶液は25℃にまで降温して60分保持し、BHETの結晶を析出させた。この結晶を含むEG溶液を25℃でフィルタープレスにてろ過し、BHETを主成分とする白色の、EGで湿潤された結晶ケーク278重量部を得た。
【0063】
該結晶ケークを窒素雰囲気下100℃で溶融してから流下薄膜式蒸発器に送り、温度150℃、500Paの減圧下でEGを主体とする低沸点物を留去した後、さらに流下薄膜式蒸発器により温度150℃、80Paの減圧下で低沸点物を留去してBHETを主成分とする固形分濃度が99.7重量%の濃縮物を得、その後、内部コンデンサーを有する流下薄膜分子蒸留器に供給し、温度200℃、圧力13Paの条件下でBHETを蒸発させ、内部コンデンサーの温度118℃の条件下でBHETを凝縮させ、107重量部の高純度BHETを得た。
【0064】
(エステル交換反応)
得られた高純度BHET254.2重量部と、1,4−ブタンジオール(BD)119.7重量部、数平均分子量が約1000であるポリテトラメチレングリコール(PTMG)70重量部(モル比、BHET:BD:PTMG=1:1.33:0.07)、および反応触媒としてテトラブチルチタネート(TBT)0.08重量部、酸化防止剤としてイルガノックス−1330 0.2重量部をエステル交換反応器に仕込み、窒素置換後、器内の圧力を26.6kPaに調整し、撹拌しながらこの圧力を保持して昇温した。内温180℃付近でグリコール類の留出が始まり、1℃/分で昇温し続けて218℃に到達したら、この温度に維持し、グリコール類の留出が止まるまでエステル交換反応を続けた。
【0065】
(初期重合)
エステル交換反応終了後、反応生成物を、窒素置換した後に器内の圧力26.6kPa、温度218℃に調整した初期縮合反応器に仕込み、系内を245℃まで0.8℃/分で昇温しつつ、内圧を徐々に減圧(真空)にし、圧力2.7kPaに到達したら、この圧力を維持しながら初期縮合を行い、グリコール類を留出させた。この真空度で20分間保持して初期縮合を終了とした。
【0066】
(重縮合)
得られた初期縮合物を、窒素置換した後に圧力2.7kPa、温度245℃に調整した重合反応器に仕込み、撹拌しながら内圧を徐々に真空にし、圧力106Paに到達したらこの圧力でさらに重縮合反応を進めて本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーを得た。
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーの物性を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
1,4−ブタンジオール(BD)173.7重量部とし、モル比でBHET:BD:PTMG=1:1.93:0.07となるような配合量にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーの物性を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
1,4−ブタンジオール(BD)263.7重量部とし、モル比でBHET:BD:PTMG=1:2.93:0.07となるような配合量にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーの物性を表1に示す。
【0069】
(比較例2)
1,4−ブタンジオール(BD)を添加せず、モル比でBHET:PTMG=1:0.07となるような配合量にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーの物性を表1に示す。
【0070】
(比較例3)
高純度BHETのかわりにジメチルテレフタレート(DMT)194.2重量部とし、モル比でDMT:BD:PTMG=1:1.33:0.07となるような配合量にして、エステル交換反応を常圧で行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーの物性を表1に示す。
【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明により、TPAやDMTを出発原料として得られるハードセグメントがPBTである熱可塑性ポリエステルエラストマーと同等以上の品質のポリエステルエラストマーを製造することができる。また本発明によれば、末端カルボキシル基濃度の低い、耐加水分解性に優れたポリエステルエラストマーを製造することができる。さらに、出発原料として使用済みPETをEGで解重合して精製処理に付して得られるBHETを使用することにより、使用済みPETのリサイクルにも繋がる利点を有し、また、BHETに対するBDの使用量も低く抑えられるので、低コストで製造することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸成分、分子量250未満のグリコール成分、及び数平均分子量400〜5000の高分子量グリコール成分からなる熱可塑性ポリエステルエラストマーであって、全グリコール成分中、エチレングリコール成分の含有量が1〜10モル%であり、末端カルボキシル基濃度が20eq/ton以下であることを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー。
【請求項2】
出発原料としてビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを用いることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーを製造する方法であって、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに、1,4−ブタンジオールと数平均分子量400〜5000の高分子量グリコールを加えて重縮合することを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法。
【請求項4】
高分子量グリコールがポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法。
【請求項5】
ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート1モルに対して、1.3〜2.5モルの1,4−ブタンジオールを加えることを特徴とする請求項3または4に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマーの製造方法。

【公開番号】特開2010−150370(P2010−150370A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329578(P2008−329578)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】