説明

熱可塑性ポリエステルエラストマー

【課題】弾性特性に加え優れた耐熱性を有するポリエステルエラストマーを提供する。
【解決手段】ハードセグメントはジカルボン酸成分と炭素数2〜10のグリコール成分とからなり、ジカルボン酸成分の5〜100モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分であり、ソフトセグメントは数平均分子量が500〜5000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分であって、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分の重量比が20/80〜80/20であるポリエステルエラストマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性特性に加え優れた耐熱性を有するポリエステルエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、従来よりポリブチレンテレフタレート(PBT)単位をハードセグメント、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)をソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマー(特許文献1,特許文献2)、PBT単位をハードセグメント、ポリカプロラクトン(PCL)単位をソフトセグメントとするポリエステルエステルエラストマー(特許文献3、特許文献4、特許文献5)、及びPBT単位をハードセグメント、二量体脂肪酸をソフトセグメントとするポリエステルエステルエラストマー(特許文献6)等が知られ実用化されている。しかしながら、ハードセグメントにPBTを用いる場合、PBTの融点が230℃以下なのでエラストマーとしての融点は230℃以上になることはない。
【0003】
近時、熱可塑性ポリエステルエラストマーの成形品を、例えば、自動車のエンジンルームのような極めて高温の雰囲気下で使用される部品に適用しようとする試みがなされている。よって、熱可塑性ポリエステルエラストマーの成形品には一層の耐熱性が要求されている。前記従来から提案されている熱可塑性エラストマーよりも更に高融点のハードセグメントの割合を増加することにより、融点が240℃を越える熱可塑性ポリエステルエラストマーを得ることは可能である。しかしながら、前記のように、ハードセグメントの割合を増加させると、エラスマー本来の弾性が得られにくくなってしまう。また、ある程度の弾性を示すものであっても、熱劣化による弾性の低下が大きく、その成形品は高温雰囲気下で適正な伸縮性を示さなくなり、使用を継続していると、成形品に亀裂が生ずるといった問題点を発生する。
【0004】
こうした点を改善する目的でポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどの高融点(290℃)を有するハードセグメントを使用することが特許文献7に記述されている。しかしこのエラストマーにおいてもハードセグメントが40wt%を入れても融点が220℃と低く、未だ耐熱性に問題があった。
【0005】
さらにこれらの熱可塑性ポリエステルエラストマーの成形品は、弾性回復率を良くするためにソフトセグメントであるポリアルキレングリコール成分を増やした場合、ポリマーの融点が低いために汎用成形機を用いて加工することが困難であった。従来のハードセグメントにPBTを用いて十分な強さの物理的架橋を形成させるには40wt%ものPBTが必要である。さらに柔軟性・ゴムらしさには劣る。かかるポリエステルエラストマーの問題点を解決する手段として、ハードセグメントの結晶性を高めることによって弾性特性を改善する方法が提案されている。
【0006】
特許文献7には、ハードセグメントを構成する酸成分としてナフタレンジカルボン酸又はビフェニルジカルボン酸を用い、ハードセグメントを構成するジオール成分として1,3−プロパンジオールを用いたポリエステルエラストマーが開示されている。しかしながら、このエラストマーでは大伸長時の弾性特性は大きく改善することはできない。
【0007】
特許文献8及び特許文献9には、ポリエステルエラストマーに結晶核剤を配合された組成物が開示されている。しかしながら、このように結晶化度が高められた該ポリマー組成物は弾性体として使用するには依然として弾性回復性が不十分である。
【0008】
【特許文献1】特公昭49−48195号公報
【特許文献2】特公昭49−31558号公報
【特許文献3】特公昭48−4116号公報
【特許文献4】特開昭59−12926号公報
【特許文献5】特開昭59−15117号公報
【特許文献6】特開昭54−127955号公報
【特許文献7】特開平5−202176号公報
【特許文献8】特開平4−370219号公報
【特許文献9】特開昭59−45349号公報
【特許文献10】特開昭59−45350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、良好な耐熱性、及び弾性に優れた性質を維持したポリエステルエラストマーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定のポリエステル成分をハードセグメントとするポリエステルエラストマーにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ハードセグメントはジカルボン酸成分と炭素数2〜10のグリコール成分とからなり、ジカルボン酸成分の5〜100モル%が下記式(1)
【化1】

(Rは炭素数2から10のアルキレン基)
で表されるポリエステル成分であり、ソフトセグメントは数平均分子量が500〜5000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分であって、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分の重量比が20/80〜80/20であるポリエステルエラストマーである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリエステルエラストマーは、弾性特性に加え優れた耐熱性を有する。本発明のポリエステルエラストマーにおいて、弾性回復率を上げる目的でポリテトラメチレングリコール等のソフトセグメント成分の量を多く用いても実用的な融点を有し、弾性回復性に優れ、かつ、加工性、さらには加工時の操業性に優れたポリエステルエラストマーが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ハードセグメントはジカルボン酸成分と炭素数2〜10のグリコール成分からなり、ジカルボン酸成分の5〜100モル%が下記式(1)
【化2】

(Rは炭素数2から10のアルキレン基)
で表されることを特徴とするポリエステル成分であり、ソフトセグメントは数平均分子量が500〜5000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分であって、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分の重量比が20/80〜80/20であるポリエステルエラストマーである。
【0013】
上記式(1)で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分において、Rで表されるアルキレン基は直鎖の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、さらにはメチレン基の数は偶数であることが好ましい。より好ましくは、下記式(1)-1
【化3】

(nは1〜3)
で表される。さらに具体的には下記式(1)−2
【化4】

で表される6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分である事が好ましい。
【0014】
ハードセグメントを構成するポリエステルは、260〜300℃の融点を有することが好ましい。このような高融点のポリエステルを用いると弾性回復率を上げる目的でポリテトラメチレングリコール等のソフトセグメント成分の量を多く用いても実用的な融点を有し、弾性回復性に優れ、かつ、加工性に優れたポリエステルエラストマーが得られるのである。特に6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸とエチレングリコールから重合されるポリ{エチレン6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトート}は融点が300℃であり、結晶性が良好でハードセグメントとして好適に用いる事ができる。
【0015】
一方、ハードセグメントに融点が300℃を超えるポリエステルを用いた場合、重合反応温度が高くなるため、ソフトセグメント成分のポリテトラメチレングリコールが反応中に熱分解するため好ましくない。
【0016】
本発明におけるハードセグメントを構成するポリエステルには上記式(1)で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分に加え芳香族ジカルボン酸、脂環族カルボン酸、脂肪族カルボン酸またはジオ−ルを主たる構成成分を、本発明の目的を損なわない範囲で共重合する事が可能である。
【0017】
上記式(1)で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分はジカルボン酸成分の5〜100モル%であるが、好ましくは30〜100モル%であり、さらに好ましくは50〜100モル%である。
【0018】
ポリエステル成分を構成する6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分以外のジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸成分として例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、3、3´−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエ−テルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、ヘキサヒドロテレフタル酸、1、3−アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0019】
またポリエステル成分を構成する炭素数が2〜10のグリコール成分としては、例えば、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4、4´−ジヒドロキシビフェニル、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4、4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、pーキシレングリコールなどの芳香族ジオール、エチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、1,2−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ポリアルキレングリコ−ル、2,2'−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ジエチレングリコ−ルを用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコ−ル等を用いることができる。これらのジオ−ル成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、本発明のポリエステルにはトリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロ−ル、ペンタエリスリト−ル、2,4−ジオキシ安息香酸、ラウリルアルコ−ル、イソシアン酸フェニル等の多単官能化合物等の他化合物を、ポリマ−が実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。グリコール成分以外に、pーヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2、6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の目的を損なわない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0020】
ポリエステルの構成成分には、エチレンテレフタレート単位を主成分とするポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート、エチレンナフタレート単位を主成分とするポリエステル、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルをブレンドしても良い。この場合6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合については特に制限は無いが、全ジカルボン酸成分に対する6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合は5〜100モル%、好ましくは30〜100モル%であり、さらに好ましくは50〜100モル%である。
【0021】
このようにハードセグメントを構成するポリエステルについて、各種の共重合成分を導入したり他のポリエステルとのブレンドとすることにより、多種多様な耐熱温度を有したエラストマー製造が可能になる。上記ポリエステルエラストマーのハードセグメントを構成する芳香族ポリエステル成分は、主として上記式(1)で表されるジカルボン酸成分とグリコール成分から構成されるが、他の繰り返し単位を50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらにより好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の割合で含んでいてもよい。
【0022】
ソフトセグメントとして用いるポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分は平均分子量が500〜5,000のものとすることが必要であり、特に1,000〜3,000のものが好ましい。分子量が500未満のものでは十分な弾性特性が得られず、逆に5,000を超えるとハードセグメントとの相溶性が悪くなり弾性回復率が低下する。ハードセグメントとソフトセグメントの割合は、優れた弾性回復率と物性を保つためには、ハードセグメント/ソフトセグメントの重量比を20/80〜80/20の範囲にするのが好ましい。ソフトセグメントの量が20重量%未満では弾性性能や弾性回復率が低くなって好ましくなく、ソフトセグメントの量が80重量%を超えると融点が低くなりすぎるため、汎用成形機を用いて加工する際の操業性を悪化させるため好ましくない。該ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分の好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのポリ(アルキレンオキシド)グリコールを挙げることができる。さらに、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分は、上記成分の単独重合体のみならず、上記のうち2種以上の成分からなるランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよく、さらには単独重合体または該共重合体の2種以上が混合された混合重合体でもよい。
【0023】
本発明に用いられるポリエステルエラストマーは、上記数平均分子量500〜5000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分以外の成分、例えば脂肪族ポリエステル成分を、ソフトセグメントとして20重量%以下、好ましくは10重量%以下の割合で含んでいてもよい。
【0024】
本発明のポリエステルエラストマーは、融点の測定、元素分析、赤外吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)分析等によって同定することができる。
【0025】
本発明のポリエステルエラストマーの固有粘度(IV)(測定溶媒:P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=4/6(重量比)、測定温度:35℃)は、1.0〜3.5であることが、優れた機械的特性(例えば強度、弾性回復率)を保持する上で好ましい。特に1.5〜3.0のものが好ましい。
【0026】
本発明のポリエステルエラストマーの製造方法としては、例えばハードセグメントを構成するポリエステル成分である芳香族ジカルボン酸エステル、または芳香族ジカルボンエステルのジオール誘導体と、ソフトセグメントを構成するための成分であるポリ(アルキレンオキシド)グリコールとを用いて、従来公知の溶融重合法により重合反応させる方法を好ましく採用することができる。また、ハードセグメントを構成するポリエステル成分は芳香族ジカルボン酸エステルのジオール誘導体と芳香族ジカルボンエステルのジオール誘導体とのエステル交換反応も採用することができる。
【0027】
さらに具体的には、上記の各原料を反応容器に入れ、触媒の存在下または不存在下でエステル交換反応あるいはエステル化反応を行い、さらに触媒の存在下高真空で重縮合を行って所望の重合度まで上げる方法を用いることができる。触媒としては、従来公知のエステル交換触媒や重縮合触媒を用いることができる。好ましくはチタン化合物、アンチモン化合物、スズ化合物、カルシウム化合物、マンガン化合物、ゲルマニウム化合物が使用され、これらの中で特に好ましいものはチタン化合物、アンチモン化合物である。また、その他各種安定剤、顔料等を必要に応じ任意に使用できる。
【0028】
以上に説明したポリエステルエラストマーは、常法により溶融紡糸及び溶融成型加工できる。この際、一般の熱可塑性重合体の溶融紡糸法及び溶融成型加工法に準じて繊維、フィルム、その他の形状の成形品にすることができる。また、通常のポリエステルと同様に、成型加工条件を任意に設定できる。すなわち、上記ポリエステルエラストマーは、繊維、フィルム、成型品などに容易に加工、成形ができるため、種々の形状での利用が可能であり、その工業的意義は極めて大きい。
【0029】
本発明に用いられるポリエステルエラストマーには、必要に応じて、適宜他の熱可塑性ポリマー、熱安定剤、光安定剤、艶消剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、核剤、充填剤、伸度向上剤、鎖延長剤等を添加することができる。
特に熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系、アミン系、イオウ系、リン系、カルボジイミド系、イミド系、アミド等系が挙げられ、ヒンダードフェノール系、アミン系、イオウ系が好ましく用いられる。熱安定剤の添加量は、ポリエステルエラストマーに対し、5重量%以下、好ましくは0.01〜5重量%である。
【0030】
また、上記ポリエステルエラストマーには、ポリエステル等の他の熱可塑性ポリマーを改質剤として少量、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下の割合で、混合して用いることができる。他の熱可塑性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレンを例示することができる。
【0031】
本発明のポリエステルエラストマーの成形法としては、通常の射出成形法、溶融押出成形法、溶融紡糸法を採用することが可能である。
【0032】
本発明のポリエステルエラストマーは、ハードセグメントに高融点の結晶性ポリエステルを用いているため、ソフトセグメントのポリテトラメチレングリコールを多量に共重合しても、ポリエステルエラストマーとしての融点が高いため汎用成形機で十分加工できる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
ポリエステルエラストマーの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比4/6)を用い、濃度12mg/ml、温度35℃で測定した。
融点は窒素下でDSCを用い、20℃/分の昇温速度で測定した。
【0034】
[参考例1]
10Lオートクレーブに6,6‘−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸400重量部、エチレングリコール6169重量部、テトラブトキシチタン0.067重量部を仕込み、窒素圧0.3MPaをかけ温度230℃で6h反応を行った。反応温度を室温まで低下させた後、反応物を取り出しろ過した。その後ろ過物にメタノール2375重量部を加え洗浄・ろ過した。この操作を3回繰り返し120℃の真空乾燥機で乾燥させた。融点240℃の白色固体ビス(β―ヒドロキシエチル)6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を得た。
【0035】
[実施例1]
反応器に参考例1で得られたビス(β―ヒドロキシエチル)6,6‘−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸150重量部及びポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学製、平均分子量2000)237重量部を仕込み、テトラブチルチタネート0.05重量部を触媒として加え、常圧下、280℃で1時間エステル交換反応を行った。得られた反応物を重合缶に移送し、320℃の温度で一旦完全に溶融させ、その後280℃まで温度を低下させ1.33×10−4MPa以下の減圧下で重縮合反応を行った。約1時間重縮合反応を行って、酸化防止剤としてSumilizer GA−80(住友化学製)0.6重量部、Sumilizer TP−D(住友化学製)1.4重量部を加え10分攪拌混合しポリエステルエラストマーを得た。得られたポリマーは極限粘度1.6、融点237℃であった。この樹脂を120℃で乾燥した。日精株式会社製(model:PS−20)にて成形温度230℃、金型温度40℃で成形体を得た。ポリマー物性の測定結果を表1に示す。
【0036】
[実施例2]
ビス(β―ヒドロキシエチル)6,6‘−(エチレンジオキシ)ジー2−ナフトエ酸およびポリテトラメチレングリコールの仕込み比を表1のように変えた他は実施例1と同様にポリエステルエラストマーを得た。その結果を表1に示す。
ビス(β―ヒドロキシエチル)6,6‘−(エチレンジオキシ)ジー2−ナフトエ酸を150重量部とし、ポリテトラメチレングリコールを68重量部とした他は実施例1と同様にポリエステルエラストマーを得た。その結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
触媒をテトラブチルチタネート0.05重量部から酸化アンチモン0.042重量部に変えた他は実施例1と同様にポリエステルエラストマーを得た。その結果を表1に示す。
【0038】
[実施例4]
参考例1で得られたビス(β―ヒドロキシエチル)6,6‘−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を150重量部とし、ポリテトラメチレングリコールを102重量部とし、触媒をテトラブチルチタネート0.05重量部から酸化アンチモン0.042重量部に変えた他は実施例1と同様にポリエステルエラストマーを得た。その結果を表1に示す。
【0039】
[実施例5]
参考例1で得られたビス(β―ヒドロキシエチル)6,6‘−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を150重量部とジメチルテレフタル酸22重量部、1,4−ブタンジオールを21重量部、ポリテトラメチレングリコールを127重量部、酸化アンチモン0.042重量部として実施例1と同様にポリエステルエラストマーを得た。その結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
反応器にテレフタル酸ジメチル200重量部、1,4−ブタンジオール186重量部、及びポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学製、平均分子量2000)340重量部を仕込み、テトラブチルチタネート0.08重量部を触媒として加え、常圧下、210℃でエステル交換反応を行いメタノールを留出させた。所定量のメタノールが留出したのを確認後、240℃まで上昇させ1.33×10−4MPa以下の減圧下で重縮合反応を行った。約2時間重縮合反応を行って酸化防止剤としてSumilizer GA−80(住友化学製)1.14重量部、Sumilizer TP−D(住友化学製)2.27重量部を加え10分攪拌混合しポリエステルエラストマーを得た。得られたポリマーは極限粘度1.50、融点194℃であった。この樹脂を120℃で乾燥した。日精株式会社製(model:PS−20)にて成形温度230℃、金型温度40℃で成形体を得た。
ポリマー物性の測定結果を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
テレフタル酸ジメチル100重量部、1,4−ブタンジオール97重量部、及びポリテトラメチレングリコール170重量部とした他は比較例1と同様にポリエステルエラストマーを得た。ポリマー物性の測定結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

PTMG:ポリテトラメチレングリコール成分
PBT:ポリブチレンテレフタレート成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードセグメントはジカルボン酸成分と炭素数2〜10のグリコール成分とからなり、ジカルボン酸成分の5〜100モル%が下記式(1)
【化1】

(Rは炭素数2から10のアルキレン基)
で表されるポリエステル成分であり、ソフトセグメントは数平均分子量が500〜5000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分であって、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分の重量比が20/80〜80/20であるポリエステルエラストマー。
【請求項2】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分がポリテトラメチレングリコールである事を特徴とする請求項1のポリエステルエラストマー。
【請求項3】
200℃〜300℃の融点を有する事を特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。
【請求項4】
上記式(1)で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分がジカルボン酸成分の50〜100モル%である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルエラストマー。

【公開番号】特開2009−298923(P2009−298923A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155159(P2008−155159)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】