説明

熱可塑性合成樹脂で形成されたウエブを伸長するための装置

【課題】熱可塑性合成樹脂で形成されたウエブを幅全体にわたって伸長することが容易な装置の提供。
【解決手段】熱可塑性合成樹脂で形成されたウエブ1を伸長するための装置2が機械方向Mへ回転するドラム6の周面に周方向へ並ぶ複数の第1伸長用部材Lを有する。ドラム6の回転軸8にはドラム6に同期してドラム6と同方向に回転する回転体7が設けられる。回転体7には、第1伸長用部材Lのそれぞれに対応する複数の第2伸長用部材Uが設けられる。互いに対応する第1伸長用部材Lと第2伸長用部材Uとは、ドラム6の径方向において対向する部位が、軸8と平行に延びかつドラム6の周方向へ交互に並ぶ凸部31,41と凹部32,42とによって形成されていてドラム6の径方向において離脱可能に噛み合う相補的形状を成している。第1伸長用部材Lと第2伸長用部材Uとのうちの少なくとも一方が、ドラム6の径方向へ移動可能に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱可塑性合成樹脂で形成された繊維集合体、熱可塑性合成樹脂で形成されたフィルム等のウエブを伸長するのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性合成樹脂で形成された繊維やフィルムのウエブを機械方向へ走行させ、その走行過程においてウエブを機械方向へ伸長するための方法や装置は、よく知られている。
【0003】
例えば、特公昭60−26859号公報(特許文献1)には、熱可塑性合成繊維で形成されたウエブである不織布の連続体を伸長するための装置が開示されている。この装置では、ローラの軸に平行な溝を有する第1の噛み合いローラ対とその軸に垂直な溝を有する第2の噛み合いローラ対とを使用して、不織布を機械方向と、この方向に対する交差方向とに伸長する。ローラ対の各ローラにおける周面は、溝を横断する方向の断面において正弦波形状を呈している。
【0004】
また、特表2002−513723号(P2002−513723A)公報(特許文献2)には、移動ウエブを作動する方法および装置が開示されている。この装置は、ウエブの移動方向に向かって回転する中央ディスクと外側ディスクとを有する。中央ディスクは、周面と一対の対応する端面とを有し、端面の少なくとも一つが作動ツールを備えており、その作動ツールに対して、外側ディスクは相補形の作動ツールを備えている。作動ツールと相補形のツールとは、互いに噛み合う波形の歯を有している。ウエブは、ウエブの幅方向の中央部が中央ディスクの周面に当てられる一方、ウエブの両側部それぞれが中央ディスクの両端面それぞれに向かって折り曲げられる。折り曲げられた側部は、作動ツールと相補形の作動ツールとによって挟まれることで伸長される。
【特許文献1】特公昭60−26859号公報
【特許文献2】特表2002−513723号(P2002−513723A)公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の装置では、対を成すローラそれぞれの周面に正弦波形状の溝が形成されている。不織布を機械方向へ伸長するための第1の噛み合いローラ対のローラでは、軸心に平行な溝が形成されている。このローラ対で不織布の伸長率を高めるには、溝の深さを深くすればよく、換言すると正弦波の山の高さを高くすればよいが、そのようにするときには、対を成すローラが回転するときにローラとローラの山どうしが干渉することのないように、例えばローラそれぞれの径を大きくすることが必要になる。しかし、ローラの径を大きくすればするほど、ローラの製作費がかさむようになる。また、この装置では、対を成すローラどうしの接触時間が短いから、ウエブの伸長速度を遅くして、ウエブをゆっくりと伸長するということが難しい。
【0006】
また、特許文献2に開示の装置では、作動ツールと相補形の作動ツールとを中央ディスクの軸方向において接近・離間させるので、これら両ツールの互いに噛み合う速度を遅くしてウエブをゆっくりと伸長することができる。しかし、この装置では、ウエブの側部を中央ディスクの端面に向かって折り曲げて、その端面においてウエブを伸長するから、ウエブの幅方向における中央部寄りの部分と縁寄りの部分とを同じ伸長率で伸長することが難しい。即ち、ウエブを幅全体にわたって同じ伸長率で伸長することが難しい。
【0007】
そこで、この発明では、ウエブを幅全体にわたって同じ伸長率で伸長することが容易な装置の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題解決のためにこの発明が対象とするのは、熱可塑性合成樹脂で形成されたウエブを機械方向へ回転するドラムの周面上において前記機械方向へ伸長するための装置である。
【0009】
かかる装置において、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記ドラムでは、前記周面が、前記ドラムの周方向へ並ぶ複数の第1伸長用部材によって形成されており、前記ドラムの回転軸には前記ドラムに同期して前記ドラムと同方向に回転する回転体が設けられる。前記回転体には、前記第1伸長用部材のそれぞれに対応する複数の第2伸長用部材が設けられており、互いに対応する前記第1伸長用部材と前記第2伸長用部材とは、前記ドラムの径方向において対向する部位が、前記軸と平行に延びかつ前記ドラムの周方向へ交互に並ぶ凸部と凹部とによって形成されていて前記径方向において互いに離脱可能に噛み合う相補的形状を成しているものである。前記第1伸長用部材と前記第2伸長用部材とのうちの少なくとも一方は、これら両部材の間に前記ウエブを介在させた状態でのこれら両部材の噛み合いを可能とするように、前記径方向において移動可能に形成されている。
【0010】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記機械方向における前記ドラムの上流側には、前記ウエブを前記第1伸長用部材と前記第2伸長用部材との間に導き入れることが可能な導入用ニップロールが設けられ、前記ドラムの下流側には、前記ウエブを前記第1伸長用部材と前記第2伸長用部材との間から前記機械方向へ導き出すことが可能な導出用ニップロールが設けられており、前記導入用ニップロール、前記ドラム、前記導出用ニップロールの順にこれらロールとドラムとの周速を高くすることが可能である。
【0011】
この発明の実施の態様の他の一つにおいて、前記第1,第2伸長用部材は、互いに平行な状態で噛み合うことのできる平板状のものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る装置では、機械方向に向かって回転するドラムの周面に複数の第1伸長用部材が並べられ、そのドラムに同期して回転する回転体には第1伸長用部材のそれぞれに対応する第2伸長用部材が設けられており、第1伸長用部材と第2伸長用部材とは、ドラムの径方向において対向する部位がその径方向において互いに噛み合うことが可能に形成されている。それに加えて、第1伸長用部材と第2伸長用部材とのうちの少なくとも一方の部材はドラムの径方向において移動可能に形成されているから、第1伸長用部材と第2伸長用部材との間に機械方向へ進行するウエブが導入されて、回転軸方向の寸法がウエブの幅よりも大きく作られているこれら第1、第2伸長用部材が噛み合うと、ウエブの幅方向における各部位が機械方向へ一様に伸長される。
【0013】
ウエブが導入用ニップロールと導出用ニップロールとに導かれて機械方向へ走行する態様のこの発明では、ドラムの周速を導入用ニップロールの周速よりも高くすれば、ウエブを機械方向へ伸長した状態で第1伸長用部材と第2伸長用部材との間に導くことができる。また、導出用ニップロールの周速をドラムの周速よりも高くすれば、第1、第2伸長用部材による伸長で機械方向の寸法が長くなったウエブを弛ませることなく機械方向へ走行させることができる。
【0014】
第1、第2伸長用部材が平板状のものである態様のこの発明では、これらの部材に凸部と凹部とを形成することが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付の図面を参照して、この発明に係る熱可塑性合成樹脂で形成されたウエブを伸長するための装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0016】
図1,2は、仮想線で示された繊維ウエブ1を伸長するための装置2の全体斜視図と、部分斜視図である。装置2は、水平な基盤3と、基盤3から垂直に起立する一対の支持体4a,4bとを有し、両支持体4a,4bにはドラム6とプレート集合体7とが軸8を介して支持されている。ただし、図2では、支持体の一方4aが基盤3から外された状態で示されている。装置2の機械方向は矢印Mで示されており、ドラム6とプレート集合体7とは、繊維ウエブ1を伸長するときに、両支持体4a,4bに支えられた軸8の周りを、または軸8とともに機械方向Mへ同じ周速で回転する回転体である。ドラム6の周面は、この発明における第1伸長用部材である複数の下側歯型プレートLによって形成されている。プレート集合体7は、複数の下側歯型プレートLのそれぞれに対応する複数の上側歯型プレートUを有しており、この上側歯型プレートUがこの発明における第2伸長用部材を形成している。上側歯型プレートUは、機械方向Mへ回転しながら下側歯型プレートLに対しての接近と離間とを反復するもので、一対の導入用ニップロール13に導かれたウエブ1が密着している下側歯型プレートLに対して、両プレートL,Uの歯型(図6参照)が噛み合うように接近してウエブ1を伸長する。ウエブ1の伸長後に上側歯型プレートUが下側歯型プレートLから離間すると、ウエブ1は、一対の導出用ニップロール16に導かれて下側歯型プレートLから離脱し、機械方向へ走行する。ウエブ1は、このように、それが機械方向Mへ走行する間に、装置2において機械方向Mへ伸長される。ウエブ1が弾性的に伸長可能なものである場合には、装置2における伸長後のウエブ1は元の寸法にまで復帰する傾向を示し、ウエブ1が非弾性的に伸長可能なものである場合には、装置2における伸長後のウエブ1は元の寸法よりも長いものになっている。
【0017】
図3,4は、ドラム6とプレート集合体7との動きを模式的に示す図であって、図3はドラム6とプレート集合体7とを軸方向から見たときの要部を示しており、図4は、図3のIV−IV線切断面におけるドラム6とプレート集合体7の状態を示している。図4において、プレート集合体7は、軸8の径方向へ延びる回転ロッド21の先端に上側歯型プレートUが取り付けられている。回転ロッド21は、軸8の周りに形成された機構部22に納められたカム機構(図示せず)を使用することによってドラム6の径方向における移動速度を制御することができるものであるから、その回転ロッド21に取り付けられている上側歯型プレートUは、下側歯形プレートLに対しての所要速度での接近・離間を反復することができる。上側歯型プレートUはまた、軸23を中心に双頭矢印A方向へ旋回することができる。上側歯型プレートUにおけるこれらの接近・離間と旋回との態様は、ドラム6の回転に同期している。例えば、図4の上方における上側歯型プレートUは、下側歯型プレートLと平行な状態で対向する位置にまで旋回しており、これら両プレートU,Lの間にはウエブ1が介在している。図の下方における上側歯型プレートUは、下側歯型プレートLから大きく離間する位置にまで旋回している。図の上方における上側歯型プレートUは、ウエブ1を押圧しながら下側歯型プレートLと噛み合う位置にまで矢印Cで示されるドラム6の径方向内側に向かって直線的に移動する。その移動は、回転ロッド21によって行われる。
【0018】
図3は、上側歯型プレートUが下側歯型プレートLに対して接近してから離間するまでの間に下側歯型プレートLと噛み合うことによって、両プレートL,U間に介在するウエブ1が伸長される過程を示している。ドラム6の周面は、その周方向において、12個のセクションS−S12に等分割されている。セクションS−S12のそれぞれは、軸8から径方向へ放射状に延びる支軸R−R12それぞれに対応した位置にあって、平板状の下側歯型プレートLによって総称されるそれぞれのプレートL−L12を有している。下側歯型プレートL−L12は、平板状のものであって、互いに接し合うようにドラム6の周方向へ並んでおり、軸8の中心Oと下側歯型プレートL−L12それぞれの周方向における両端を結ぶ線の開角αは約30°であり、隣り合う支軸Rの開角は30°である。上側歯型プレートUもまた平板状のものであって、下側歯型プレートL−L12のそれぞれに対応する上側歯型プレートU−U12で構成されている。ただし、図3には、下側歯型プレートL−Lに対して平行な位置にある上側歯型プレートU、すなわち上側歯型プレートU−Uのみが示されている。その他の上側歯型プレートU−U12は、対応の下側歯型プレートL−L12から離間するように旋回している(図2参照)。
【0019】
図5は、図3におけるセクションS−Sを部分的に拡大して、上側歯型プレートUの動きを示す図である。上側歯型プレートUのそれぞれは、ドラム6の軸方向へ延びていて周方向において交互に並ぶ上側凸部31と上側凹部32とによって形成された歯型の表面33を有する。下側歯型プレートLのそれぞれは、ドラム6の軸方向へ延びていて周方向において交互に並ぶ下側凸部41と下側凹部42とによって形成された歯型の表面43を有する。装置2において、上側歯型プレートUと下側歯型プレートLとは、図3−図5に示されているように平行に並び得るものであり、これらプレートU,Lに形成された両表面33,43は、ドラム6の径方向において互いに接近したときに、互いの凸部と凹部とが噛み合うように形成された相補的形状を有するものであって、両表面33,43間には機械方向Mにおいて緊張状態にあるウエブ1が介在している。両表面33,43は、同じ周速で機械方向Mである周方向へ回転している間に、互いに平行な位置関係になる工程P、噛み合いを開始する工程P、噛み合いがさらに進む工程P、噛み合い量が最大となる工程P、両表面33,43の離間が進む工程P、および噛み合いが解ける工程Pを経てウエブ1を伸長する。図5において、セクションSは、工程Pにあって、上側歯型プレートUと下側歯型プレートLとが互いに離間してはいるが平行な状態にある。セクションSは、工程Pの状態からドラム6とプレート集合体7とが軸8を中心に機械方向Mへ30°回転した工程Pの状態にあり、プレートUがプレートLに向かって移動して、緊張状態にあるウエブ1に接している。セクションSは、工程Pの状態にあり、プレートUがプレートUよりもさらに下方へ移動して両プレートUとLとの噛み合いが始まり、プレートUの凸部31とプレートLの凸部41とがウエブ1を押圧して、隣り合う凸部31どうしの間、および隣り合う凸部41どうしの間において、ウエブ1を伸長している。セクションSは、工程Pの状態にあり、プレートUとLとが最も深く噛み合っている。セクションSは、工程Pの状態にあり、プレートUがプレートLから離間するように上昇を開始している。セクションSは、工程Pの状態にあり、プレートUとプレートLとの噛み合いが解けている。これらの工程P−Pを経て伸長されたウエブ1は、導出用ニップロール16によって機械方向Mへ引張られているので、両プレートUとLから解放されても弛むことがなく、凸部41に接している。工程PにあるセクションSでは、プレートUがプレートUよりもさらに上昇して、下側歯型プレートLから離間するように旋回を開始する直前の状態にある。工程PからP12にあるセクションS−S12では、上側歯型プレートU−U12が、下側歯型プレートL−L12から離間するように旋回した状態にある(図2参照)。
【0020】
図6は、図5の工程Pにおいて、上側歯型プレートUの周方向における端部と下側歯型プレートLの周方向における端部とが噛み合う状態を示す、これらプレートU,Lの部分図である。図6にはまた、工程PにあるセクションSの下側歯型プレートLと噛み合っている上側歯型プレートUが仮想線で示されている。上側歯型プレートUは、ドラム6が機械方向Mへ回転する間に、僅かな時間だけ上側歯型プレートUと仮想線の如くに隣り合った後に下側歯型プレートLから離間して図5における工程Pの状態になる。
【0021】
図7は、工程P−Pの間において、上側歯型プレートUが下側歯型プレートLに対して接近および離間するときのドラム6の径方向における上側歯型プレートUの移動速度の一例を示す図である。上側歯型プレートUは、回転ロッド21に付属する機構部22を使用してこの速度を調整することができるもので、図の縦軸は、軸8の径方向における上側歯型プレートUの速度(m/min)を示している。横軸は、時間軸であるが、時間に代えて工程P−Pが等間隔で示され、併せて図3においてそれぞれの工程P−Pにあるドラム6のセクションS−Sが示されている。なお、横軸における待機点(1)と待機点(2)とは、図4の上側歯型プレートUが下側歯型プレートLに接近する方向の旋回を終了する時点と、下側歯型プレートLから離れる方向の旋回を開始する時点とを意味している。図において工程Pから工程Pまでは、ウエブ1を伸長する工程であって、上側歯型プレートUが移動する速度は一定である。
【0022】
図8は、上側歯型プレートUについての図7とは異なる態様の移動速度を例示する図である。上側歯型プレートUは、図7の態様に比べると、噛み合いが始まってから最大の噛み合い量に到達するまでの間のウエブ1を伸長する工程においての移動速度が特に遅くなるように設定されている。移動速度についてのこのような態様は、ウエブ1の伸長時の強度が低くて、伸長の途中で破断するおそれのあるような場合に、その破断を避けるうえにおいて効果的である。
【0023】
図9は、図5とは異なる態様の上側歯型プレートUと下側歯型プレートLとの一例を示す図である。それぞれのプレートU,Lは、ベースプレート45,46と、それぞれのベースプレート45,46から垂直に延びていて矩形の断面を有する複数の板状体47,48とを有する。板状体47,48のそれぞれは等間隔で並んでいて、凸部31,41を形成するとともに、隣り合う板状体47どうしの間に凹部32を形成し、隣り合う板状体48どうしの間に凹部42を形成している。ウエブ1は、図示の如くそれに圧接する凸部31と41とによって伸長される。この発明は、このような態様の上側歯型プレートUと下側歯型プレートLとを使用して実施することも可能である。
【0024】
図10は、図6とは異なる態様の下側歯型プレートLの一例を示す図である。図示例の下側歯型プレートLとLとの間には、ドラム6に凸部を追加するためのプレート部材51が挿入されている。プレート部材51は、下側歯型プレートLと下側歯型プレートLとに噛み合っている上側歯型プレートUと上側歯型プレートUそれぞれの端部における凸部31aと凸部31bとの間に進入して、プレートUの凸部31aとプレートUの凸部31bとの間でのウエブ1の伸長を可能にしている。
【0025】
装置2において、上側歯型プレートUと下側歯型プレートLとは、回転軸8の軸方向の寸法がウエブ1の幅よりも長く形成されることによって、ウエブ1の幅全体を一様な伸長率で伸長することができる。
【0026】
これまでの説明によって明らかなように、この発明に係る装置2では、ドラム6の周面上における周方向に複数の平板状の下側歯型プレートLを取り付け、このプレートLに対してドラム6の径方向から平板状の上側歯型プレートUを噛み合わせるから、ウエブ1の幅全体の一様な伸長が容易であるばかりでなく、平板状のプレートL,Uは任意の高さの歯型を作ることが容易であるから、高さの高い歯型を使ってウエブ1を高い伸長率にまで伸長することも容易である。このような発明は、図示例に代えて、下側歯型プレートLをドラム6の径方向へ移動させ、上側歯型プレートUを固定しておく態様で実施することも可能である。
【0027】
この発明に係る装置2での処理対象になるウエブ1について格別の制約はないが、ウエブ1がポリエチレンやポリプロピレン、ポリエステル繊維等の実質的に非弾性的に伸長可能な繊維で形成されているときには、そのウエブ1をこの発明に係る装置2で処理することによって、ウエブ1に対して機械方向Mにおける永久的な歪みをもたせることができる。そのようにして得られるウエブ1は、元の長さよりも長いものになる。また、ウエブ1がウレタン等の弾性的に伸長可能な繊維とポリエステル等の非弾性的に伸長可能な繊維との混合物である場合には、この装置2によってそのウレタン繊維を弾性的に伸長しながらポリエステル繊維を非弾性的に伸長すると、この装置2を通過した後のウエブ1では、ウレタン繊維が弾性的に収縮すると同時に、その収縮によって、既に永久的に伸長しているポリエステル繊維に多数のひだが生じるので、ウエブ1が、伸長前に比べて嵩高なものになる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明によれば、熱可塑性合成樹脂で形成されたウエブの幅全体を同じような伸長率で伸長することができる装置の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】装置の斜視図。
【図2】装置の部分分解斜視図。
【図3】ドラムの正面図。
【図4】ドラムと回転体の側面図。
【図5】上側歯型プレートの動きを示す図。
【図6】上側歯型プレートと下側歯型プレートとの部分拡大図。
【図7】上側歯型プレートの移動速度の一例を示す図。
【図8】上側歯型プレートの移動速度の他の一例を示す図。
【図9】上側歯型プレートと下側歯型プレートとの一例を示す図。
【図10】下側歯型プレートの一例を示す図。
【符号の説明】
【0030】
1 ウエブ
2 装置
6 ドラム
7 回転体(プレート集合体)
8 回転軸
13 導入用ニップロール
16 導出用ニップロール
31 凸部
32 凹部
41 凸部
42 凹部
L,L−L12 第1伸長用部材(下側歯型プレート)
M 機械方向
U,U−U12 第2伸長用部材(上側歯型プレート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂から形成されたウエブを機械方向へ回転するドラムの周面上において前記機械方向へ伸長するための装置であって、
前記周面は、前記ドラムの周方向へ並ぶ複数の第1伸長用部材によって形成されており、
前記ドラムの回転軸には前記ドラムに同期して前記ドラムと同方向に回転する回転体が設けられ、前記回転体には前記第1伸長用部材のそれぞれに対応する複数の第2伸長用部材が設けられており、
互いに対応する前記第1伸長用部材と前記第2伸長用部材とは、前記ドラムの径方向において対向する部位が、前記軸と平行に延びかつ前記ドラムの周方向へ交互に並ぶ凸部と凹部とによって形成されていて前記径方向において互いに離脱可能に噛み合う相補的形状を成しているものであり、
前記第1伸長用部材と前記第2伸長用部材とのうちの少なくとも一方が、これら両部材の間に前記ウエブを介在させた状態でのこれら両部材の噛み合いを可能とするように、前記径方向において移動可能に形成されていることを特徴とする前記装置。
【請求項2】
前記機械方向における前記ドラムの上流側には、前記ウエブを前記第1伸長用部材と前記第2伸長用部材との間に導き入れることが可能な導入用ニップロールが設けられ、前記ドラムの下流側には、前記ウエブを前記第1伸長用部材と前記第2伸長用部材との間から前記機械方向へ導き出すことが可能な導出用ニップロールが設けられており、前記導入用ニップロール、前記ドラム、前記導出用ニップロールの順にこれらロールとドラムとの周速を高くすることが可能である請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1,第2伸長用部材が互いに平行な状態で噛み合うことのできる平板状のものである請求項1または2記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−25039(P2008−25039A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195825(P2006−195825)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】