説明

熱可塑性架橋ゴム組成物粉体

【課題】粉体流動性に優れている熱可塑性架橋ゴム組成物粉体の提供。
【解決手段】(A)架橋性ゴム状重合体と(B)オレフィン系樹脂とからなる架橋された、熱可塑性架橋ゴム組成物を、溶融状態で裁断されて得られた、平均直径が1〜1000μmであり、かつ平均のアスペクト比(長さ/直径)が1〜10である熱可塑性架橋ゴム組成物粉体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性架橋ゴム組成物粉体に関するものである。更に詳しくは、均一性が高いために、優れた粉体流動性を有する熱可塑性架橋ゴム組成物粉体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車内装部品等の表皮材は、エラストマー組成物を冷凍粉砕する等の機械的粉砕により得られた熱可塑性エラストマー粉体を、粉末成形することにより製造される。
しかしながら、従来の熱可塑性エラストマー粉体は、形状が複雑であるために粉体流動性が劣り、複雑な形状の成形体のエッジ部分にピンホールや欠肉が生じるという問題があった。
一方、特定の溶融特性及び特定の性状を有する熱可塑性エラストマー粉体を製造する方法として、溶剤処理法、ストランドカット法、ダイフェースカット法(水中カット法)(例えば、特許文献1〜3を参照)が知られているが、粉体の流動特性が不十分であるために、このような製造法により得られた熱可塑性エラストマー粉体は、必ずしも市場では満足されていない。
【特許文献1】特開平8−225654号公報
【特許文献2】特開平10−81793号公報
【特許文献3】特開2003−71833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち優れた粉体流動性を有する熱可塑性架橋ゴム組成物粉体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、粉体流動性に優れた熱可塑性架橋ゴム組成物粉体を鋭意検討した結果、特定のポリマーの組み合わせた特定の粉体形状であることにより、驚くべきことに粉体流動性が飛躍的に向上せしめることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、
1.(A)架橋性ゴム状重合体と(B)オレフィン系樹脂とからなる架橋された、熱可塑性架橋ゴム組成物を、溶融状態で裁断されて得られた、平均直径が1〜1000μmであり、かつ平均のアスペクト比(長さ/直径)が1〜10である熱可塑性架橋ゴム組成物粉体、
2.(A)がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有する、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)、または主鎖および側鎖に二重結合を有する単独重合体及び/または共重合体からなる不飽和ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加ゴム(A−2)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体である上記1に記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体、
3.(B)がプロピレン系樹脂である上記1〜2のいずれかに記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体、
4.(A)と(B)からなる組成物が、重合型オレフィン系架橋性ゴム組成物である上記1に記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体、
5.(C)架橋剤により架橋してなる上記1〜4のいずれかに記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体、
6.更に(E)100℃で溶融しない粉末状化合物が表面に付着した上記1〜5のいずれかに記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体、
7.溶融押出機で溶融後、水中カット法で製造することを特徴とする、上記1〜6のいずれかに記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体は、粉体流動性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明に関して具体的に説明する。
本発明の組成物は、特定の形状の、(A)架橋性ゴム状重合体と(B)オレフィン系樹脂とからなる架橋されたゴム組成物粉体である。
ここで、(A)と(B)が、熱可塑性を維持しつつ、架橋することが重要である。上記成分が架橋することにより、粉体に成形されたときにも付着性が減少し、優れた粉体流動性が発現する。
そして、上記組成物が溶融状態で裁断されて得られた粉体であり、その平均直径が1〜1000μmであり、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは10〜500μmである。またその平均のアスペクト比(長さ/直径)が1〜10であり、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である場合には極めて優れた粉体流動性が発現することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
(A)成分
本発明において、(A)架橋性ゴム状重合体は、例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び該ジエン系ゴムを水素添加した飽和重合体ゴム(水素添加共重合体ゴム)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等のエチレン・α−オレフィン共重合体等の架橋ゴムまたは非架橋ゴム、並びに上記ゴム成分を含有する熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
また(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましい。
そして、(A)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)(ISO 289−1985(E)準拠)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50〜120である。
【0008】
本発明において(A)架橋性ゴム状重合体の中で好ましい重合体の一つはエチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が更に好ましい。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。
【0009】
また、(A)架橋性ゴム状重合体は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が挙げられる。とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
本発明において(A)の好ましい共重合体の一つであるエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体という。)は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
【0010】
一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
本発明において用いられる(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、α−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率は組成物の硬度、引張強度等の観点から60重量%以下が好ましく、一方、柔軟性、機械的強度の観点から1重量%以上が好ましい。
【0011】
(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.8〜0.9g/cmの範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、柔軟性に優れ硬度の低い本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
本発明にて用いられる(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体としては、米国特許明細書第5278272号明細書等に記載されている。
【0012】
また、(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、室温以上に熱天秤(DSC)の融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
また、本発明にて用いられる(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトインデックスは、0.01〜100g/10分(190℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の架橋性の観点から100g/10分以下が好ましく、また、流動性、加工性の観点から0.01g/10分以上が好ましい。
【0013】
本発明において、(A)のもう一つの好ましい共重合体である上記水素添加共重合体は、少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムであって、ランダム共重合体の全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加共重合体ゴムが好ましく、とりわけ主鎖および側鎖に二重結合を有する重合体及び/または共重合体からなる不飽和重合体ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加共重合体ゴムであることが好ましい。
上記水素添加共重合体ゴムにおいて、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエンと共重合可能な単量体(以下、共重合可能な単量体という。)を共重合することができる。
【0014】
上記共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
また、前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、0〜80重量%が好ましく、更に好ましくは0〜50重量%、最も好ましくは0〜30重量%である。
【0015】
(A)としての水素添加共重合体において、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増減あるいは減少してもよいし、また、ビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよい。そして、芳香族ビニル単量体および/または共重合可能な単量体を含む場合は、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体および/または共重合可能な単量体とはランダムに結合することが好ましいが、ブロック状の芳香族ビニル単量体および/またはブロック状の共重合可能な単量体を含んでもよい。ブロック状の芳香族ビニル重合体の含有率は、全芳香族ビニル単量体中の20重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以下である。
【0016】
上記水素添加共重合体ゴム中の全オレフィン性二重結合は、50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下である。このような水素添加共重合体ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴムを部分的または完全に水素添加したゴム状重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
このような水素添加共重合体ゴムは、上述のジエン系ゴムを公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp,et al,J.Amer.Chem.Soc.,83,4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、HungYu Chen,J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.,15,271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルト−有機アルミニウム系触媒あるいは有機ニッケル−有機アルミニウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。
【0017】
ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号の各公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
また、水素添加共重合体ゴムの25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、20〜300センチポイズ(cps)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は25〜150cpsである。
そして、水素添加共重合体ゴムは結晶性を有することが好ましく、その結晶性の指標である吸熱ピーク熱量の制御は、テトラヒドロフラン等の極性化合物の添加または重合温度の制御により行う。吸熱ピーク熱量の低下は、ゴム状重合体製造時に極性化合物を増量するか、または重合温度を低下させて、1,2−ビニル結合を増大させることにより達成される。
【0018】
本発明にて用いられる(A)架橋性ゴム状重合体は、複数の種類のものを混合して用いても良い。そのような場合には、加工性のさらなる向上を図ることが可能となる。
本発明において、(A)架橋性ゴム状重合体中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合が30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下、極めて好ましくは10%以下である。上記割合が30%以下の場合には架橋性が著しく高まり、機械的強度、外観、感触、耐磨耗性及び耐油性が向上する。
本発明において(A)架橋性ゴム状重合体中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合を制御する方法として、分子量が15万以下の部分が30%以下になるように全体の分子量を高める方法、または分子量15万以下の部分を抽出等の操作で除去する方法、あるいは重合触媒等により選択的に分子量15万以下が生成しない重合方法等が挙げられる。
【0019】
(B)成分
本発明において、(B)オレフィン系樹脂は、エチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂であり、特にプロピレン系樹脂が好ましい。
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む。)等が挙げられる。
本発明において、(B)成分の中でも、(B−1)架橋型オレフィン系樹脂であるエチレンとプロピレンとのランダム共重合樹脂等のプロピレン系ランダム共重合樹脂単独または、(B−1)と(B−2)分解型オレフィン系樹脂であるプロピレン系ブロック共重合体樹脂またはホモポリプロピレン系樹脂との組み合わせが好ましい。このような架橋型オレフィン系樹脂と分解型オレフィン系樹脂の二種のオレフィン系樹脂を組み合わせることにより、外観と機械的強度が更に向上する。
【0020】
(B−1)として、例えばエチレンとプロピレンのランダム共重合樹脂を挙げることができ、エチレン成分がポリマー主鎖中に存在する場合は、それが架橋反応の架橋点となり、架橋型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(B−2)はα−オレフィンが主成分であり、ポリマー主鎖中にエチレン単位を含まないことが好ましい。但し、プロピレン系ブロック共重合樹脂のようにエチレン−αオレフィン共重合体が分散相として存在する場合は、分解型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(B)は複数個の(B−1)、(B−2)成分の組み合わせでも良い。
(C−1)の中で最も好ましいプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてZiegler-Natta触媒、シングルサイト、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
【0021】
ランダム共重合樹脂の具体的製造法は、欧州特許0969043A1または米国特許5198401に開示されており、液状プロピレンを攪拌機付き反応器に導入した後に、触媒をノズルから気相または液相に添加する。次いで、エチレンガスまたはα−オレフィンを反応器の気相または液相に導入し、反応温度、反応圧力をプロピレンが還流する条件に制御する。重合速度は触媒濃度、反応温度で制御し、共重合組成はエチレンまたはα−オレフィンの添加量により制御する。
また、本発明にて好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、0.1〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、機械的強度の観点から100g/10分以下であることが好ましく、また、流動性、成形加工性の観点から0.1g/10分以上が好ましい。
【0022】
本発明において、(A)と(B)からなる組成物100重量部中の各成分は、(A)が1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは20〜70重量%であり、(B)が99〜1重量%が好ましく、更に好ましくは90〜20重量%、最も好ましくは80〜30重量%である。上記範囲内では、粉体流動性と機械的強度のバランスが向上する。
本発明の樹脂成分において、(B)成分に加えて、その他の熱可塑性樹脂を配合することができ、(A)と(B)と分散し得るものであればとくに制限はない。たとえば、ポリスチレン系、ポリフェニレンエーテル系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の単独もしくは二種以上を混合したものを使用することができる。
【0023】
本発明において、(A)と(B)とからなる組成物100重量部に対して、その他の熱可塑性樹脂は、1〜99重量部が好ましく、更に好ましくは10〜90重量部、最も好ましくは20〜80重量部である。
本発明において、(A)と(B)からなる該ゴム組成物は、別個の(A)と(B)を押出機で溶融混合したものであっても良いし,また(A)と(B)を重合時に製造した重合型オレフィン系架橋性ゴム組成物であっても良い。このような重合型オレフィン系架橋性ゴム組成物は、オレフィン系ゴムの分散相とオレフィン系樹脂の連続相からなる重合法によって製造された熱可塑性エラストマーである。通常は多段重合法により製造される。
【0024】
本発明において、多段重合法とは、重合が1回で終了するのではなく、2段階以上の多段重合を行うことにより、複数の種類のポリマーを連続して製造することができる重合法を意味し、機械的な手法を用いて異種類のポリマーからなる混合樹脂を得るところの通常のポリマーブレンド法とは異なる手法である。
多段重合法によって得られるオレフィン系架橋性ゴム組成物は、反応器中で(1)ハードセグメントと、(2)ソフトセグメントとが二段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(1)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロックや、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばプロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。また(2)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロックおよびエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばエチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。
【0025】
(C)成分
本発明の組成物は、(C)架橋剤で架橋されることが好ましい。
(C)架橋剤は、(C−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(C−2)多官能単量体、(C−3)単官能単量体を含有する。上記(C)架橋剤は、(A)と(B)の合計100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜3重量部の量で用いられる。上記範囲内では架橋のレベルが高まり、組成物の粉体流動性と機械的強度のバランスが向上する。
【0026】
ここで、(C−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられ、その具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル 4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、n−ブチル 4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(2−t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
【0027】
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
上記(C−1)は、(C)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0028】
本発明において、(C)架橋剤に必要に応じて含まれる(C−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基が好ましい。官能基の数は2以上であるが、(C−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
【0029】
上記(C−2)は、(C)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
本発明において用いられる前記(C−3)は、架橋反応速度を制御するために加えるビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等を挙げることができる。
【0030】
上記(C−3)は、(C)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%が好ましい。
本発明において、最も好ましい(C)架橋剤の組み合わせについては、架橋開始剤として、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名パーヘキサ25B(登録商標))または日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3と、多官能単量体として、日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)との組み合わせが、機械的強度、後述の軟化剤が存在するときの軟化剤の保持性が優れている。
【0031】
(D)成分
本発明において、必要に応じて(D)軟化剤、ポリオルガノシロキサン、結晶性向上剤から選ばれる剤を含有することができる。
上記軟化剤は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
【0032】
これらの軟化剤は組成物の硬度、柔軟性の調整用に、(A)と(B)の合計100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜150重量部用いる。上記範囲内では柔軟性と耐ブリード性のバランスが優れる。
本発明において、必要に応じて添加可能な(D)ポリオルガノシロキサンは、耐磨耗性を向上させる成分であり、JIS K2410規定の25℃における動粘度が5000センチストークス(5×10−3/sec)以上であることが好ましい。
上記ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば特に制約されない。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
【0033】
本発明に用いられるポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5000センチストークス(5×10−3/sec)以上であり、更に好ましくは、1万センチストークス(1×10−2/sec)以上1000万センチストークス(10m/sec)未満、最も好ましくは5万センチストークス(0.05m/sec)以上200万センチストークス(2m/sec)未満である。
本発明において、ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
本発明において、必要に応じて添加可能な(D)結晶性向上剤は、高温の圧縮永久歪または機械的強度等の高温ゴム特性を向上させるための成分であり、リン酸エステル塩系、ソルビトール系、カルボン酸塩系で分類される結晶核剤、または無機フィラーが代表的である。
【0034】
上記結晶核剤の具体例として、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール等を挙げることができる。 また上記無機フィラーの具体例として、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の単体または、それらの複合体(合金)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズの水和物等の無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、クレー、マイカ、タルク等を挙げることができ、中でも板状フィラーが好ましく、タルク、マイカ、カオリンが特に好ましい。
上記結晶性向上剤の量は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、0.01〜200重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜150重量部、最も好ましくは0.1〜100重量部、極めて好ましくは0.1〜50重量部である。
【0035】
(E)成分
本発明において、粉体流動性を更に向上させるためには、(E)100℃で溶融しない粉末状化合物を熱可塑性架橋ゴム組成物粉体の表面に付着することが好ましい。例えば、金属石鹸等の有機酸金属塩類、シリカ等の金属酸化物類、炭酸カルシウム等の無機塩類、ワックス類、タルク、珪藻土等の鉱物類、鉄、アルミナ等の金属類、綿、パルプ等の繊維類、粉末状熱可塑性樹脂、安定剤等であり、これらの一種または二種以上を用いることができる。中でも粉末状熱可塑性樹脂、金属酸化物、無機塩類が好ましい。また粉末状化合物の平均粒子径は0.001〜300μmが好ましく、更には0.01〜100μmが好ましい。
【0036】
上記(E)の一つの粉末状化合物としての有機酸金属塩は、例えば酪酸、カプロン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の直鎖飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の直鎖不飽和脂肪酸;イソステアリン酸等の分岐脂肪酸;リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシル基含有脂肪酸;安息香酸;ナフテン酸;アビエチン酸;デキストロピマル酸等のロジン酸を代表とする有機カルボン酸類のリチウム塩、銅塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、カドミウム塩、アルミニウム塩、セリウム塩、チタン塩、ジルコニウム塩、鉛塩、クロム塩、マンガン塩、コバルト塩、ニッケル塩等を挙げることができる。
【0037】
前記(E)の一つの粉末状化合物としての金属酸化物類は、例えば酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、ケイ酸アルミニウム、シリカ(酸化ケイ素)、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化バリウム、二酸化マンガン、酸化マグネシウム等を挙げることができ、特にアルミナ、鉱物類としても挙げられているシリカが好ましく、乾式法のナノ粒子シリカが更に好ましい。
(E)の中の上記金属酸化物の中でも、疎水化変性した、疎水性シリカまたは疎水性アルミナ等の疎水化金属酸化物が更に好ましい。その製造方法としては、金属酸化物の表面を化学的あるいは物理的に不活性化すればよく、例えばアルキルアルコキシシラン、アルキルハロゲン化シラン等のシランカップリング剤を用いる方法、ジメチルシロキサン等のポリシロキサンを用いる方法、合成ワックスや天然ワックスを用いる方法、カルシウム等により金属表面処理する方法等を挙げることができる。
(E)の添加量は、(A)と(B)からなる組成物100重量部に対して、好ましくは0.05〜300重量部、更に好ましくは、0.1〜100重量部、最も好ましくは、0.2〜50重量部である。
【0038】
また、本発明の組成物には、その特徴を損ねない程度にその他の無機フィラー、可塑剤、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤を含有することが可能である。
本発明の熱可塑性架橋ゴム組成物の製造には、通常の樹脂組成物、ゴム組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機、等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、(A)と(B)とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめ、本発明の組成物を連続的に製造するのに、より適している。
【0039】
本発明のゴム組成物は、好適な具体例として、次のような加工工程を経由して製造することができる。すなわち、(A)と(B)とをよく混合し、押出機のホッパーに投入する。(C)を、(A)と(B)とともに当初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。また軟化剤を押出機の途中から添加してもよいし、当初と途中とに分けて添加してもよい。(A)と(B)の一部を押出機の途中から添加してもよい。押出機内で加熱溶融し混練される際に、前記(A)と(C)とが架橋反応し、さらに軟化剤を添加して溶融混練することにより架橋反応と混練分散とを充分させたのち押出機から取り出すことにより、本発明の組成物のペレットを得ることができる。
【0040】
また特に好ましい溶融押出法としては、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィード部とサイドフィード部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニーディング部分を有し、上記ニーディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリューの噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いづれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリューが好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリューが好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリューが好ましい。
【0041】
本発明の組成物の最も好ましい製造法は、(A)と(B)とを溶融混合後、(C)により架橋する方法である。
本発明の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体の製造法は、該ゴム組成物をそのガラス転移温度以下の温度で粉砕し、次いで溶剤処理して球状化する溶剤処理法、押出機等を用いて溶融した該ゴム組成物を複数の孔を有するダイスから押出してストランドとし、次いでこれを引き取り、あるいは引き伸ばしながら引き取り、冷却後に切断するストランドカット法、上記と同様に複数の孔を有するダイスを通して水中に押出した後、ダイス面に沿って回転するカッターにより切断する水中カット法等が知られている。粉体の生産性、粉体流動性の観点から特に水中カット法が好ましい。
【0042】
本願の粉体の形状は、ダイスの孔径と孔数及びダイス面に沿って回転するカッターの回転数により制御することができる。平均直径を小さくする場合は、孔数を増やし、かつ孔径を小さくし、アスペクト比を小さくする場合は、カッターの回転数を増大することにより達成することができる。
こうして得られた熱可塑性架橋ゴム組成物粉体は任意の成形方法で各種成型品の製造が可能である。特に粉体成形等が好ましく用いられる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
(1)引張破断強度[MPa]
Tダイ押出シートから、JIS K6251に準じ、23℃にて評価した。
(2)外観
粉体成形体肌から以下の基準で外観評価を行った。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、ややピンホールと欠肉がある
× 全体的にピンホール、欠肉が多く、ざらつく。
(3)熱可塑性架橋ゴム組成物粉体の平均直径アスペクト比
電子顕微鏡により粉体の数平均粒子直径と長さを求め、長さ/直径の比からアスペクト比を算出する。すなわち、各粉体の断面を円と仮定し、長径と短径の算術平均を各粉体の平均直径とする。そして、100個の粉体の平均直径の算術平均により数平均粒子直径を求める。上記粉体の平均長さも数平均長さとして同様に求める。
【0044】
(4)粉体流動性
10gの粉体を容器に入れ、10cmの高さから落下させて、粉体の広がりを観察する。落下した粉体の広がりを円と仮定して、長径と短径の算術平均を平均広がり直径とし、粉体流動性の指標とする。
粉体流動性は以下の基準で評価を行なう。
◎広がりの範囲は広く、極めて均一である。
○ 均一に広がっている。
△ 全体として均一であるが、不均一な部分も存在している。
× 広がりはなく、不均一である。
【0045】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(A)架橋性ゴム状重合体
1)エチレン・α−オレフィン共重合体
a)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−1)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPE−1と称する)
b)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−2)
通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は105である。(TPE−2と称する)
c)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−3)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPE−3と称する)
【0046】
2)水素添加共役ジエン系ゴム
a)水素添加ブタジエン重合体
WO01/48079号公報に記載の方法に基づき、ブタジエン重合体を水素添加することにより製造する。ムーニー粘度は100である。(H−BRと称する)
b)水素添加スチレン・ブタジエン共重合体
WO01/48079号公報に記載の方法に基づき、スチレン・ブタジエン共重合体を水素添加することにより製造する。前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、70/30(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(H−SBRと称する)
3)重合型オレフィン系架橋性ゴム組成物
特開平4−224809号公報に記載の多段重合法によりエチレン−プロピレン共重合体を製造する。メルトフローレート(JIS K6758)0.7g/10分、曲げ弾性率(JIS K6758)280MPa(R−TPOと称する)
【0047】
(B)オレフィン系樹脂
アイソタクチックホモポリプロピレン(PPと称する)曲げ弾性率:1800MPa
(C)架橋剤
1)架橋開始剤(C−1)
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(POXと称する)
2)多官能単量体(C−2)
トリアリルイソシアヌレート(TAICと称する)
(D)軟化剤
パラフィン系オイル(MOと称する)
(E)粉末状化合物
市販の乾式法シリカ(フュームドシリカ)平均粒子直径10nm(SIと称する)
【0048】
[実施例1〜14および比較例1〜3]
押出機として、バレル中央部に注入口を有した2軸押出機を用いる。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いる。
表1に記載の組成の混合物を、まずMO以外の成分を2軸押出機に導入し、引き続き、押出機の中央部にある注入口よりMOをポンプにより注入し、160℃で溶融押出を行ない、孔径0.5mmのダイスを通して、水温20℃の水中に押出した後にダイス面に沿って回転するカッターにより粉体に切断する。粉体の形状については、ダイスの孔径と孔数及びダイス面に沿って回転するカッターの回転数により制御することができる。上記条件を基準に、平均直径を小さくする場合は、孔数を増やし、かつ孔径を小さくし、アスペクト比を小さくする場合は、カッターの回転数を増大する。
このようにして得られた粉体を200℃に加熱された金属の金型に投入して2mm厚のシートを作成し、各種評価を行う。
その結果を表1に示した。
表1によると、(A)と(B)が、熱可塑性を維持しつつ、架橋することが重要であり、かつ本願の要件の粉体形状を有する場合は、極めて優れた粉体流動性を示し、粉体成形によるシートの外観と機械的強度(引張強度)が向上することが分かる。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋性ゴム状重合体と(B)オレフィン系樹脂とからなる架橋された、熱可塑性架橋ゴム組成物を、溶融状態で裁断されて得られた、平均直径が1〜1000μmであり、かつ平均のアスペクト比(長さ/直径)が1〜10である熱可塑性架橋ゴム組成物粉体。
【請求項2】
(A)がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有する、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)、または主鎖および側鎖に二重結合を有する単独重合体及び/または共重合体からなる不飽和ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加ゴム(A−2)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体である請求項1に記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体。
【請求項3】
(B)がプロピレン系樹脂である請求項1〜2のいずれかに記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体。
【請求項4】
(A)と(B)からなる組成物が、重合型オレフィン系架橋性ゴム組成物である請求項1に記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体。
【請求項5】
(C)架橋剤により架橋してなる請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体。
【請求項6】
更に(E)100℃で溶融しない粉末状化合物が表面に付着した請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体。
【請求項7】
溶融押出機で溶融後、水中カット法で製造することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性架橋ゴム組成物粉体の製造方法。

【公開番号】特開2006−89563(P2006−89563A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275251(P2004−275251)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】