説明

熱可塑性樹脂の製造方法

【課題】 タンデム型反応押出機に於いて、反応効率を向上させると共に、押出変動を抑制して反応均一性を大幅に向上させる事が可能で、樹脂の熱劣化を抑えた熱可塑性樹脂の製造方法を提供する事を課題とする。
【解決手段】 第1押出機、第2押出機、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、及び、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構を有し、「第2押出機原料供給口と圧力制御機構の距離」が「第1押出機吐出口と圧力制御機構との距離」よりも短いことを特徴とするタンデム型押出機を用いて、第1押出機において主原料と副原料とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機において、第1押出機における反応生成物をさらに他の副原料と処理する第2段目反応、又は、脱揮を行う熱可塑性樹脂の製造方法であって、第1押出機に単軸押出機を用いることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデム型反応押出機による熱可塑性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機を用いて樹脂を加熱溶融し、溶融樹脂と反応剤とを連続的に反応させる反応押出法は、反応槽等で行うバッチ式法と比較して生産性に優れ、低コストで効率良く熱可塑性樹脂を製造出来るという特徴を有している。
【0003】
しかしながら、従来の熱可塑性樹脂を溶融させて反応させる製造方法は反応効率及び反応均一性が低いという問題点がある。
【0004】
これより、反応効率及び反応均一性を向上させる方法として、押出機を用いた変性熱可塑性樹脂の製造方法に関して、反応媒体として二酸化炭素を用いる事により、反応効率を向上させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、反応媒体を用いる為、設備が複雑化して高価になると共に、製造コストが高いという問題がある。
【0005】
これに対して、(メタ)アクリル酸エステルホモポリマー、或いは(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン、置換スチレン、無水マレイン酸、無水イタコン酸およびこれらの混合物から成る群から選択されたモノマーとコポリマーのイミド化方法に関して、キャビティートランスファーミキサーを用いて、ある圧力下でアミン又はアンモニアを反応させ、その後、連続して脱ガス押出機でガス抜きする方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、このような押出機と形状の異なる第1押出機と第2押出機を有するタンデム型反応押出機では、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内で樹脂と反応副生成物が分離し、第1押出機及び第2押出機の押出変動が大きくなり、反応が不均一になるといった問題があった。また、押出変動を小さくするために、第1押出機の樹脂吐出口直後に圧力制御装置を具備して、第1押出機と第2押出機原料供給口を接続する部品、及び、第2押出機の押出変動を小さくすることが考えられるが、この場合、接続する部品内で樹脂と反応副生成物が発泡したり、分離して押出が変動し、反応が不均一になっていた。
【0006】
また、一般的に反応押出を、混錬性/分散性の高い2軸押出機を用いて行い、2軸押出機の種々の混錬/分散機構を有したスクリュエレメントを用いて高い混錬/分散能力を持たせること、および/または、押出機L/Dを大きくすることで押出機内滞留時間を長くすること、によって反応を促進する方法がある。しかしながら、2軸押出機は構造上スクリュ/バレルに微小な滞留部分を多く有すること、また反応完了まで押出機スクリュにおいて混錬/分散させて反応を進行させるため、押出機内において樹脂が熱により変質し、樹脂成形物において異物となる可能性があった。
【特許文献1】特開2002−256042
【特許文献2】特開平7−214552
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、タンデム型反応押出機に於いて、反応効率を向上させると共に、押出変動を抑制して反応均一性を大幅に向上させる事が可能であると共に、押出機内における樹脂滞留による樹脂熱劣化を防ぐことが可能である熱可塑性樹脂の製造方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為、本発明者等は鋭意検討を行った。その結果、第1押出機、第2押出機、および第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、を有するタンデム型押出機を用い、第1押出機と第2押出機で異なる反応を行うことにより上記課題が解決出来る事を見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(i)第1押出機、第2押出機、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、及び、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構を有し、「第2押出機原料供給口と圧力制御機構の距離」が「第1押出機吐出口と圧力制御機構との距離」よりも短いことを特徴とするタンデム型押出機を用いて、第1押出機において主原料と副原料とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機において、第1押出機における反応生成物をさらに他の副原料と処理する第2段目反応を行う熱可塑性樹脂の製造方法であって、第1押出機に単軸押出機を用いることを特徴とする製造方法。
【0010】
(ii)第1押出機、第2押出機、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、及び、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構を有し、「第2押出機原料供給口と圧力制御機構の距離」が「第1押出機吐出口と圧力制御機構との距離」よりも短いことを特徴とするタンデム型押出機を用いて、第1押出機において主原料と副原料とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機において脱揮を行う熱可塑性樹脂の製造方法であって、第1押出機に単軸押出機を用いることを特徴とする製造方法。
【0011】
(iii)単軸押出機である第1押出機の、押出機長さLcmと直径Dcmの比であるL/Dが50以下であることを特徴とする、(i)または(ii)に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【0012】
(iv)第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力が20MPa以上、100MPa以下である事を特徴とする、(i)〜(iii)いずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【0013】
(v)第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品の部品内容積をVcm、第1押出機への1分当たりの樹脂供給量をQcmとしたときに、部品内容積を任意に変えることで接続部品内滞留時間V/Qを1分以上15分以下とすることを特徴とした(i)〜(iv)いずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【0014】
(vi)第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内に樹脂分散機構を設けることを特徴とする(i)〜(v)いずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【0015】
(vii)第1押出機においてアクリル系樹脂とイミド化剤とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機において第1押出機における反応生成物をさらにエステル化剤と処理する第2段目反応を行うことを特徴とする、(i)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)の何れかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【0016】
(viii)熱可塑性樹脂が下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位及び/又は下記一般式(3)で表される単位とを有するイミド樹脂である事を特徴とする、(i)〜(vii)の何れかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【0017】
【化4】

(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0018】
【化5】

(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0019】
【化6】

(但し、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、単軸押出機である第1押出機、第2押出機、および第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、を有するタンデム型押出機を用い、第1押出機と第2押出機で異なる反応を行うことにより、押出変動を抑制して反応均一性を大幅に向上させる事、また押出機内樹脂滞留による樹脂劣化を防ぐ事が可能になり、且、低コストで容易に効率良く熱可塑性樹脂を製造する事が出来る製造方法を提供出来る。
【0021】
また、本発明によれば、光学材料や耐熱性材料として有用な熱可塑性樹脂、特にイミド樹脂を、タンデム型押出反応機を用いることにより安価な設備費で、高い生産性での製造が可能となる。
【0022】
さらに、本発明によれば、圧力変動を抑制することにより、特性バラツキが非常に小さく、且、樹脂内における樹脂劣化異物が少ない熱可塑性樹脂、特にイミド樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、第1押出機、第2押出機、および第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、を有するタンデム型押出機を用い、第1押出機と第2押出機で異なる反応を行う反応押出法であって、第1押出機に単軸押出機を用いることを特徴とする。
【0024】
本発明のタンデム型押出機とは、例えば、第1押出機、第2押出機の2台を、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品(以下、単に接続部品と略記することもある)で接続したものがあげられる。必要に応じてさらに、第3押出機を接続部品で接続したものであってもよい。少なくとも2基以上であれば、接続台数は適宜設定できる。
【0025】
更に、前記タンデム型押出機は、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力の制御機構(単に圧力制御機構とも略記することもある)を「第2押出機原料供給口と圧力制御機構の距離」が「第1押出機吐出口と圧力制御機構の距離」よりも短い位置に有する。さらに、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力は、20MPa以上、100MPa以下である事が好ましい。具体的には、第1押出機の樹脂吐出口と、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品にそれぞれ圧力計を設置し、両方の値が上記値を指せばよい。下限として特に好ましくは、25MPa以上であり、さらに好ましくは、30MPa以上である。上限として、特に好ましくは、90MPa以下であり、更に好ましくは、80MPa以下である。
【0026】
第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力が20MPa未満の場合、第1押出機に於ける反応効率が低くなるため好ましくない。さらに部品内圧力が5MPa未満になると、第1押出機に於ける反応効率が低くなると共に、接続部品内で樹脂と反応副生成物が発泡、分離し、押出変動が大きくなり、反応が不均一になる為、好ましくない。
【0027】
又、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力が100MPaより高い場合、特に、押出機減速機の耐圧仕様を超える場合などは押出機が破損する事もあり、好ましくない。
【0028】
図1に、本発明によるタンデム型反応押出機の一例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。同図に示すように、第1押出機(1)と第2押出機(2)がタンデム型に配置されている。タンデム型とは、図1のような並列配列でも、第1押出機(1)と第2押出機(2)が直角に配列される直交配列のどちらでも構わない。第1押出機(1)の吐出口(6)は、接続部品(3)を介して、第2押出機(2)の原料供給口(7)に接続されている。
【0029】
本発明における、第1押出機には単軸押出機を用いる。単軸押出機は2軸押出機等多軸押出機に比べ、耐圧が大きいため、押出機内圧力を高くすることができ、第1段目反応効率を大幅に上げることが可能となること、さらに押出機内における樹脂滞留部分が少ないため反応押出中における樹脂の熱劣化を防ぐことが可能となること、また設備費が安価であるため好ましい。
【0030】
本発明における、第2押出機として、単軸押出機、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機、多軸押出機等各種押出機が適用出来る。その中でも、特に、混錬/分散能力が高い点で各種二軸押出機を適用するのが好ましく、混錬/分散能力、生産性が高い事から同方向噛合型二軸押出機が更に好ましい。
【0031】
接続部品とは、例えば、樹脂流路形状が円管、L型管のようなものがあげられる。本発明に係る接続部品は、緩やかな樹脂流路の容積変化を有したものが好ましい。特に好ましくは、容積変化の無い樹脂流路を有した接続部品である。急激に容積が変化した樹脂流路を持つ接続部品では、樹脂と反応副生成物が発泡、分離して押出が変動し、反応が不均一になる為、好ましくない。接続部品内における樹脂滞留時間は、第1押出機への時間当たりの樹脂供給量Qに対し接続部品容積Vを変えることにより、滞留時間V/Qを適当に設定することができる。接続部品容積Vは、接続部品断面積および/または接続部品長を変えることで適当に設定できるが、接続部品断面積を変えると流路内樹脂流動性に影響を与えるため、接続部品長を変えることで接続部品容積を設定することが好ましい。接続部品内における樹脂滞留時間V/Qは1分以上15分以下が好ましい。特に好ましくは、2分以上13分以下、さらに好ましくは3分以上10分以下である。
【0032】
接続部品内における樹脂滞留時間が1分未満の場合は、反応が十分に進行していないにも関わらず、樹脂が第2押出機の原料供給口に到達してしまうため、好ましくない。
【0033】
接続部品内における樹脂滞留時間が15分以上の場合は、反応が十分に進行しているにも関わらず樹脂が接続管内に滞留している状態となり、樹脂熱劣化の可能性があるに加え、生産効率が悪くなるため好ましくない。
【0034】
本発明のタンデム型押出機は、接続部品に圧力制御機構(4)を具備することにより、押出変動を抑制することができるようになり、第1押出機(1)−第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品(3)内圧力を制御できる。圧力制御機構とは、樹脂流路容積を変化させ、圧力損失を制御可能な装置である。本発明に係る好ましい圧力制御機構は、定流圧力弁、ギアポンプ、オリフィス等を例示することができる。圧力制御機構に於ける樹脂流路の容積を急激に変化させると、樹脂と反応副生成物が発泡や分離を起こす可能性があり、その結果押出が変動することあり、反応が不均一になる為、定流圧力弁、オリフィス等が特に好ましい。
【0035】
また、本発明のタンデム型押出機は、接続部品内においても効率良く反応を進めることを可能にするため、接続部品内に樹脂分散機構を具備することが好ましい。接続部品内に具備する樹脂分散機構として、例えば、スタティックミキサー、部品内に流れ方向に垂直にランダムな位置にピンを複数配置すること等が挙げられる。
【0036】
このように接続管内において十分な樹脂滞留時間を与え、好ましくは接続部品内に樹脂分散機構を具備させることと、第1押出機内および接続管内圧力を十分に上げ反応効率を大幅に向上させることにより、第1押出機の長さを短くすることで、設備費を安価に抑えることが可能となる。第1押出機長さLと直径Dの比はL/D50以下が好ましく、特に好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である。
また、本発明においては、圧力制御機構を取り付ける位置を適切にすることにより、押出変動の抑制をより高精度に行うことが可能となる。本発明に係る圧力制御機構を取り付ける位置は、「第2押出機原料供給口と圧力制御機構との距離」が「第1押出機吐出口と圧力制御機構との距離」よりも短ければ特に制限されないが、「第2押出機原料供給口と圧力制御機構との距離」が短ければ短いほど好ましく、第2押出機原料供給口に直結している場合が最も好ましい。圧力制御機構を「第2押出機原料供給口と圧力制御機構との距離」と「第1押出機吐出口と圧力制御機構との距離」が等しい場合または「第2押出機原料供給口と圧力制御機構との距離」よりも「第1押出機吐出口と圧力制御機構との距離」が短い場合及び第1押出機吐出口と圧力制御機構が直結している場合、圧力制御機構後の接続部品内で樹脂と反応副生成物が発泡したり、分離して押出が変動し、反応が不均一になる為、好ましくない。また、圧力制御機構の種類によっては、圧力制御機構と、接続部品または第2押出機原料供給口(第2押出機で混練が開始される位置)が一体となっている場合などは、実体として圧力差が生じる部分を圧力制御機構の位置と称することもある。
【0037】
本発明における押出変動とは、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力変動である。具体的には、第1押出機の樹脂吐出口と、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品にそれぞれ圧力計を設置した場合、それぞれの圧力計における圧力の振れ幅のことであり、より具体的には、単位時間(1分)当たりの圧力の最大値と最小値の差のことである。好ましくは、この押出変動が1MPa以内である。
【0038】
本発明においては、原料は、固体状態の樹脂を用いることができ、単軸押出機である第1押出機(1)の原料供給口(5)に、ホッパーより供給され、押出機内で加熱溶融される。押出機内で樹脂が溶融された後の部分に設けられた第1段目反応の副原料供給口(8)から、ポンプ等などの供給装置を用いて、固体、液体又は気体状態の副原料を供給し、樹脂と副原料の第1段目反応を行う。
【0039】
第1押出機における第1段目反応生成物は樹脂吐出口から単離されることなく、樹脂吐出口に接続した接続部品を経由して第2押出機原料供給口へ導かれ、第2押出機へ投入される。
【0040】
次いで、第2押出機(2)原料供給口(7)後に設けられたベント口(9)で、第1押出機から供給された第1押出機における反応生成物中の第1段目反応の未反応副原料、反応副生成物、分解物などを除去する。ベント口の圧力は大気圧下、または真空下等が挙げられ、好ましくは真空下である。又、ベント口は必要に応じて複数個設ける事も可能である。
【0041】
第2押出機(2)への第2段目反応における固体、液体又は気体状態の副原料の供給は、第2段目反応の副原料供給口(10)から、ポンプ等を用いて供給し、第1押出機における反応生成物と副原料等による第2段目反応を行う。
【0042】
次いで、第2押出機(2)の副原料供給口(10)より下流側にベント口(11)が設けられ、第2段目反応生成物中の未反応副原料、反応副生成物、分解物などを除去する。ベント口までの距離は、実施する反応の反応率などから適宜設定してやればよい。ベント口の圧力は大気圧下、または真空下等が挙げられ、好ましくは真空下である。又、ベント口は必要に応じて複数個設ける事も可能である。
【0043】
更に、第2押出機(2)に於いては、第1段目反応生成物と第2段目副原料の第2段目反応を行わず、必要に応じて複数個のベントで第1段目反応の未反応副原料、反応副生成物、分解物などの脱揮、および加熱処理を行う事も可能である。
触媒、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤等各種添加剤は、第1押出機(1)原料供給口(5)から原料樹脂と共に供給出来る。又、各種添加剤は必要に応じて、例えば、第2押出機(2)の添加剤供給口(12)からも供給出来る。添加剤供給口(12)からの各種添加剤の供給方法としては、サイドフィード法、押出機上部から添加する個別フィード法等が挙げられる。
【0044】
本発明においては、前記タンデム型押出機を用いて第1押出機と第2押出機で異なる反応を行うことができる。
【0045】
具体的には、第1押出機において主原料と副原料とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機において第1押出機における反応生成物をさらに他の副原料と処理する第2段目反応を行うことができる。
【0046】
一例として、第1押出機でアクリル系樹脂とイミド化剤とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機で第1押出機における反応生成物をさらにエステル化剤と処理する第2段目反応を行い、熱可塑性樹脂としてイミド樹脂を得る反応をあげることができる。
【0047】
上記タンデム型反応押出機の第1押出機に於いて、先ずアクリル系樹脂を原料樹脂(主原料)として用い、これにアンモニア又は置換アミン等の第1段目反応の副原料(以下、イミド化剤と呼ぶ事がある)を処理した樹脂(以下、イミド樹脂中間体1と呼ぶ事がある)を得る事が出来る。
【0048】
このイミド樹脂中間体1は、上記タンデム型反応押出機の第2押出機に於いて、第2段目反応の副原料(以下、エステル化剤と呼ぶ事がある)で処理し、必要により加熱処理等を行うことで、樹脂中に残存する酸成分(カルボキシ基及び酸無水物由来のもの)の割合を制御する(以下、イミド樹脂中間体2と呼ぶ事がある)事が出来る。この際、エステル化剤によって処理する事無く、加熱処理等のみを行う事も出来る。第2押出機において、加熱処理(押出機内での溶融樹脂の混錬/分散)のみを行った場合、イミド樹脂中間体1におけるカルボキシル基同士の脱水反応および/またはカルボキシル基とアルキルエステル基の脱アルコール反応、等によりカルボキシル基の一部または全部を酸無水物基とする事が出来る。加熱処理温度は過剰な熱履歴による樹脂の分解、着色等を抑制する為に、反応温度は150〜400℃の範囲で行う。180〜320℃が好ましく、更には200〜280℃が好ましい。
【0049】
更に、イミド樹脂中間体2を減圧脱揮等により、樹脂中に含まれるエステル化剤を除去し、本発明のイミド樹脂を得る事が出来る。
【0050】
本発明のイミド樹脂中間体1及びイミド樹脂中間体2を得るには、イミド化或いは酸成分制御を進行させ、且つ、過剰な熱履歴による樹脂の分解、着色等を抑制する為に、反応温度は150〜400℃の範囲で行う。180〜320℃が好ましく、更には200〜280℃が好ましい。
【0051】
前述のような製造方法以外でも、本発明のタンデム型反応押出機でイミド樹脂が得られる方法であれば、特に製造方法に制限はない。
【0052】
この場合、主原料となるアクリル系樹脂としては、無水マレイン酸等の酸無水物又はそれらと炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をあげることができる。また、下記一般式(2)で示される繰り返し単位と、下記一般式(3)で示される繰り返し単位からなるメタクリル酸メチル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、又は一般式(2)で示される繰り返し単位からなるメタクリル酸メチル重合体等の(メタ)アクリル酸エステル重合体等があげられる。
【0053】
【化7】

(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0054】
【化8】

(但し、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
本発明のイミド樹脂を製造する際に、先ずメチルメタクリレート−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、又はメタクリル酸メチル重合体等の(メタ)アクリル酸エステル重合体を重合し、これをイミド樹脂化する場合、本発明で用いる事ができる(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、イミド化反応が可能であれば、リニアー(線状)ポリマーであっても、またブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、架橋ポリマーであっても構わない。ブロックポリマーはA−B型、A−B−C型、A−B−A型、又はこれら以外のいずれのタイプのブロックポリマーであっても構わない。コアシェルポリマーはただ一層のコア及びただ一層のシェルのみからなるものであっても、それぞれが多層になっていても構わない。
【0055】
副原料としては、イミド化剤をあげることができる。イミド化剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式炭化水素基含有アミン、アンモニアなどが挙げられる。又、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素の如き、加熱によりこれらのアミンを発生する尿素系化合物を用いる事も出来る。これらのイミド化剤の内、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンが好ましく、中でも、メチルアミンが特に好ましい。
【0056】
イミド化剤の添加量は必要な物性を発現する為のイミド化率によって適宜決定してやればよい。好ましくは、主原料の100重量部に対して、1〜100重量部である。
【0057】
エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2−ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル−t−ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ−N−ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0058】
エステル化剤の添加量は、必要な物性を発現する為の樹脂中に於ける酸成分の割合によって決定される。好ましくは、イミド樹脂中間体1の100重量部に対して、1〜100重量部である。
【0059】
イミド樹脂中間体1をエステル化剤で処理、及び/又は加熱処理する際、又はイミド樹脂中間体2に対して、一般に用いられる触媒、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤などを本発明の目的が損なわれない範囲で添加しても良い。
【0060】
このように、本発明を有効に適応して合成する事の出来る熱可塑性樹脂としては、イミド樹脂などがあげられる。
【0061】
イミド樹脂としては、たとえば、前述の方法で主原料及び副原料の種類や量を適宜設定することで種々のものを製造することができるが、具体的には下記一般式(1)で表される単位と、前記一般式(2)で表される単位及び/又は前記一般式(3)で表される単位とを有するものがあげられる。
【0062】
【化9】

(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
本発明のイミド樹脂を構成する、第一の構成単位は、前記一般式(1)で表されるものであり、一般的にグルタルイミド単位と呼ばれる事が多い(以下、一般式(1)をグルタルイミド単位と省略して示す事がある。)。
【0063】
好ましいグルタルイミド単位としては、R、Rが水素又はメチル基であり、Rが水素、メチル基、ブチル基、又はシクロヘキシル基である。Rがメチル基であり、Rが水素であり、Rがメチル基である場合が、特に好ましい。
【0064】
該グルタルイミド単位は、単一の種類でもよく、R、R、Rが異なる複数の種類を含んでいても構わない。
【0065】
尚、グルタルイミド単位は、上述したイミド樹脂を製造する方法において説明した主原料をイミド化する事により形成する事が可能である。
【0066】
イミド樹脂を構成する、第二の構成単位は、前記一般式(2)で表されるものであり、一般的には(メタ)アクリル酸エステル単位と呼ばれる事が多い(ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを示す。以下、一般式(2)を(メタ)アクリル酸エステル単位と省略して示す事がある。)。
【0067】
イミド樹脂を製造する際に、先ず(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体を重合し、これを後イミド化して形成する場合、具体的に(メタ)アクリル酸エステル単位を残基として与える原料としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中で、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0068】
これら第二の構成単位は、単一の種類でもよく、R、R、Rが異なる複数の種類を含んでいても構わない。同様に、前記(メタ)アクリル酸エステル単位を残基として与える原料も複数の種類を混合して用いても構わない。
【0069】
本発明のイミド樹脂に必要に応じて含有させる第三の構成単位は、前記一般式(3)で表されるものであり、一般的には芳香族ビニル単位と呼ばれる事が多い(以下、一般式(3)を芳香族ビニル単位と省略して示す事がある。)
好ましい芳香族ビニル構成単位としては、Rが水素及びRがフェニル基であるスチレン、Rがメチル基及びRがフェニル基であるα−メチルスチレン等が挙げられる。これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0070】
これら第三の構成単位は、単一の種類でもよく、R、Rが異なる複数の種類を含んでいても構わない。
【0071】
イミド樹脂中の、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、例えばRの構造にも依存するが、イミド樹脂の20重量%以上が好ましい。グルタルイミド単位の、好ましい含有量は、20重量%から95重量%であり、より好ましくは40〜90重量%、更に好ましくは、50〜80重量%である。グルタルイミド単位の割合がこの範囲より小さい場合、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれる事がある。また、この範囲を超えると不必要に耐熱性、溶融粘度が上がり、成形加工性が悪くなる他、得られるフィルムの機械的強度は極端に脆くなり、又、透明性が損なわれる事がある。
【0072】
イミド樹脂の、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、イミド樹脂の総繰り返し単位を基準として、1重量%以上が好ましい。芳香族ビニル単位の、好ましい含有量は、1重量%から40重量%であり、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは、1〜25重量%である。芳香族ビニル単位がこの範囲より大きい場合、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足する。この範囲より小さい場合、得られるフィルムの機械的強度が低下することがある。
【0073】
主原料である、一般式(2)、(3)及び、副原料であるイミド化剤の割合を調整することで、一般式(1)で表される単位と、一般式(2)で表される単位及び/又は一般式(3)で表される単位とを任意の割合で含有するイミド樹脂を得ることができ、一般式(1)、(2)、(3)の割合を調整することで、各種要求される物性に調整する事が可能である。例えば、本発明のイミド樹脂を、先ずメチルメタクリレート−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を重合した後にイミド化して形成する場合、例えば(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルの重合割合を調整することで一般式(3)の割合を決め(一般式(3)の割合を0とする事も可能)、更にイミド化時のイミド化剤の添加割合を調整する事で、更に一般式(1)、(2)の割合を調整する事ができる。
【0074】
イミド樹脂には、必要に応じ、更に、第四の構成単位が共重合されていてもかまわない。第四の構成単位として、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を用いる事ができる。これらは熱可塑性樹脂中に、直接共重合してあっても良く、グラフト共重合してあっても構わない。第四の構成単位は、主原料中に含まれている事が好ましい。
【0075】
本発明の製造法において得られるイミド樹脂中で、一般式(3)を含有するタイプは、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体中の各構成単位量及びグルタルイミド単位の含有量を調節する事で実質的に配向複屈折を有さない特徴を付与する事も可能である。配向複屈折とは所定の温度、所定の延伸倍率で延伸した場合に発現する複屈折の事をいう。本明細書中では、特にことわりのない限り、イミド樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度で、100%延伸した場合に発現する複屈折の事をいうものとする。
【0076】
ここで配向複屈折は、ポリマー構造由来の固有複屈折と分子配向状態に由来する配向分布関数の積であり、延伸軸方向の屈折率(nx)と、それと直行する軸方向の屈折率(ny)から、次式
△nor=nx−ny
で定義され、位相差計により測定される位相差Re(nm)を厚みd(μm)で割った値である。
配向複屈折△nor=Re/d
配向複屈折は上記したように、延伸軸方向の屈折率(nx)とそれと直行する軸方向の屈折率(ny)の差であるので、nxがnyより大きい場合は正の値を示し、逆にnxがnyより小さい場合は負の値を示す。
【0077】
配向複屈折の値としては、−0.1×10−3〜0.1×10−3である事が好ましく、−0.01×10−3〜0.01×10−3である事がより好ましい。配向複屈折が上記の範囲外の場合、環境の変化に対して、成形加工時に複屈折を生じ易く、安定した光学的特性を得る事が難しくなる。
【0078】
実質的に配向複屈折を有さないイミド樹脂を得る為には、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体中の各構成単位量を調節、更にイミド化の程度を調製する必要があり、一般式(1)で示される繰り返し単位と、一般式(3)で示される繰り返し単位が、重量比で2.0:1.0〜4.0:1.0の範囲にあることが好ましく、2.5:1.0〜4.0:1.0の範囲がより好ましく、3.0:1.0〜3.5:1.0の範囲が更に好ましい。
【0079】
又、本発明のイミド樹脂は、1×10ないし5×10の重量平均分子量を有する事が好ましい。熱可塑性樹脂の製造過程で、樹脂に対して過剰な熱履歴を与えると熱分解が生じ、重量平均分子量が1×10を下回る。更には、架橋が生じ、重量平均分子量が5×10を上回る場合もある。本発明に於ける熱可塑性樹脂の製造方法を適用すれば、熱可塑性樹脂の製造過程で、樹脂に対する熱履歴が低減でき、上記重量平均分子量の範囲を達成できる。重量平均分子量が1×10を下回る場合には、フィルムにした場合の機械的強度が不足し、5×10を上回る場合には、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する事がある。
【0080】
本発明のイミド樹脂に於けるガラス転移温度は110℃以上である事が好ましく、120℃以上である事がより好ましい。ガラス転移温度が上記の値を下回ると、耐熱性が要求される用途においては適用範囲が制限される。
【0081】
本発明のイミド樹脂には、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂を添加する事が出来る。成形加工の際には、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤等を本発明の目的が損なわれない範囲で添加しても良い。
本発明のイミド樹脂から得られる成形品は、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等の映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズ等のレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤー等の光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルム等の液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルム等の情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクター等の光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフ等の車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品等の医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジング等の建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具、等に使用可能である。
【実施例】
【0082】
本発明を実施例に基づき、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で測定した物性の各測定方法は次の通りである。
(1)イミド化率の測定
生成物のペレット1gをジクロロメタン5ccに溶解し、SensIR Tecnologies社製TravelIRを用いて、室温にてIRスペクトルを測定した。得られたスペクトルより、1720cm−1のエステルカルボニル基に帰属される吸収強度(Absester)と、1660cm−1のイミドカルボニル基に帰属される吸収強度(Absimide)の比からイミド化率を求めた。ここで、イミド化率とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
(2)樹脂中に残存する酸成分の割合の測定
ジクロロメタン37.5mlに生成物のペレット0.3gを溶解させ、メタノール37.5mlを添加した。この溶液に1wt%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加して1時間攪拌した。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Aml)を測定した。
【0083】
次に、ジクロロメタン37.5mlとメタノール37.5mlの混合液に1wt%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加した。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加して1時間攪拌した。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Bml)を測定した。
【0084】
樹脂中に残存する酸成分(カルボキシル基及び酸無水物由来のもの)の割合をCmmol/gとし、次式で求めた。
【0085】
C=0.1×((5−A−B)/0.3)
(3)バラツキ
本実施例、比較例においては、製造開始1時間後から1分毎に30分間ペレットを採取し、上記方法でイミド化率及び酸成分の割合を測定した。得られた測定値の最大値と最小値の差をそれぞれイミド化率のバラツキ、及び、酸成分のバラツキとした。
【0086】
(4)樹脂劣化異物数の評価
A4サイズ1枚フィルム中に存在する長手方向長が20μm以上50μm未満の大きさの異物をキーエンス社製デジタルマイクロスコープを用いて倍率400倍にて観察し、SPECTRA−TECH社製顕微赤外分光分析装置を用いてフィルム異物中の樹脂劣化異物とその他の外来異物を分類し、樹脂劣化異物数を数えた。
【0087】
(実施例1)
装置としては、図1に示すものと同等なものを使用した。タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機(1)に直径15mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)30の単軸押出機、第2押出機(2)に直径15mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が60の同方向噛合型二軸押出機を使用し第1押出機原料供給口にホッパーから原料樹脂を供給した。1時間あたりの原料樹脂供給量は5kgとした。第1段目反応副原料(イミド化剤)、第2段目反応副原料(エステル化剤)の供給位置は図1に示すものと同等とした。又、第1押出機、第2押出機に於けるベントの位置も図1に示すものと同等とし、各ベントの減圧度は−0.095MPaとした。更に、直径20mm、長さ2.0mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し(接続部品(3))、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力制御機構(4)には定流圧力弁を用いた。イミド化された樹脂の比重1.1g/cmを加味すると、この時の接続管内滞留時間はおよそ9分となる。第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、水槽で冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂の吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極める為に、第1押出機出口、第1押出機と第2押出機接続部品中央部、第2押出機出口に樹脂圧力計を設けた。
【0088】
第1押出機に関して、原料樹脂として、市販のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(新日鐵化学(株)製MS−800)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機各バレル温度を250℃、スクリュ回転数は150rpm、原料樹脂供給量は5kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して20部とした。又、定流圧力弁は第2押出機原料供給口直前に設置し、第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続部品中央部圧力(接続部品内圧力)を40MPaになるように調整した。
【0089】
第2押出機に関して、エステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合溶液を用いてイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機各バレル温度を250℃、スクリュ回転数は150rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して8部、トリエチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2部とした。更に、ベントでエステル化剤を除去し、イミド樹脂を得た。
【0090】
得られたイミド樹脂を100℃で5時間乾燥した後、直径40mm、押出機長さLと直径の比(L/D)が35の単軸押出機と400mm幅のTダイを用いて、280℃で押出し、厚み150μmのフィルムを作成し、A4サイズ1枚のフィルムを観察し、フィルム中における樹脂劣化異物数を確認した。
【0091】
上記条件で約2時間の製造を行い、得られたイミド樹脂は、イミド化率75%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり0個であった。
【0092】
(実施例2)
原料樹脂として、市販のポリメタクリル酸メチル(住友化学(株)製スミペックスMG)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造した。
【0093】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率75%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり0個であった。
【0094】
(実施例3)
1時間あたりの原料樹脂供給量を3kgとした以外は、実施例1と同様の方法でイミド化樹脂を製造した。
【0095】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率75%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり0個であった。
【0096】
(実施例4)
1時間あたりの原料樹脂供給量を3kgとした以外は、実施例2と同様の方法でイミド化樹脂を製造した。
【0097】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率75%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり0個であった。
【0098】
(比較例1)
第1押出機に直径15mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が60の同方向噛合型二軸押出機を使用し、接続部品内圧力を3MPaとした以外は、実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造した。
【0099】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率60%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり15個であった。
【0100】
(比較例2)
第1押出機に直径15mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が60の同方向噛合型二軸押出機を使用し、接続部品内圧力を3MPaとした以外は、実施例2と同様の方法でイミド樹脂を製造した。
【0101】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率60%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり15個であった。
【0102】
(比較例3)
接続部品直径を10mm、接続部品長を0.5mとし、接続部品内滞留時間をおよそ0.5分とした以外は、実施例1と同様の条件で行った。
【0103】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率60%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり0個であった。
【0104】
(比較例4)
接続部品直径を10mm、接続部品長を0.5mとし、接続部品内滞留時間をおよそ0.5分とした以外は、実施例2と同様の条件で行った。
【0105】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率60%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり0個であった。
【0106】
(比較例5)
接続管直径を20mm、接続管長を5.0mとし、接続部品内滞留時間をおよそ20分とした以外は、実施例1と同様の条件で行った。
【0107】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率75%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり10個であった。
【0108】
(比較例6)
接続管直径を20mm、接続管長を5.0mとし、接続部品内滞留時間をおよそ20分とした以外は、実施例2と同様の条件で行った。
【0109】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率75%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり10個であった。
【0110】
(比較例7)
第1押出機に直径15mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が60の同方向噛合型二軸押出機を使用し、接続部品内圧力を3MPaとした以外は、実施例3と同様の方法でイミド樹脂を製造した。
【0111】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率65%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり10個であった。
【0112】
(比較例8)
第1押出機に直径15mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が60の同方向噛合型二軸押出機を使用し、接続部品内圧力を3MPaとした以外は、実施例4と同様の方法でイミド樹脂を製造した。
【0113】
結果、得られたイミド樹脂は、イミド化率65%に対してバラツキは1%、樹脂中に残存する酸成分の割合0.10mmol/gに対してバラツキは0.01mmol/gであった。第1押出機出口圧力、第1押出機と第2押出機接続配管中央部圧力のバラツキは0.1MPaであった。フィルム中の樹脂劣化異物数はA4サイズ1枚当たり10個であった。
【0114】
実施例比較例の結果を下記表にまとめた。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明によるタンデム型反応押出機の構成図である。
【符号の説明】
【0118】
1 第1押出機
2 第2押出機
3 接続部品
4 第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力制御機構
5 第1押出機原料供給口
6 第1押出機吐出口
7 第2押出機原料供給口
8 第1段目反応の副原料供給口
9 第2押出機ベント口
10 第2段目反応の副原料供給口
11 第2押出機ベント口
12 各種添加剤供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1押出機、第2押出機、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、及び、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構を有し、「第2押出機原料供給口と圧力制御機構の距離」が「第1押出機吐出口と圧力制御機構との距離」よりも短いことを特徴とするタンデム型押出機を用いて、第1押出機において主原料と副原料とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機において、第1押出機における反応生成物をさらに他の副原料と処理する第2段目反応を行う熱可塑性樹脂の製造方法であって、第1押出機に単軸押出機を用いることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
第1押出機、第2押出機、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、及び、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構を有し、「第2押出機原料供給口と圧力制御機構の距離」が「第1押出機吐出口と圧力制御機構との距離」よりも短いことを特徴とするタンデム型押出機を用いて、第1押出機において主原料と副原料とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機において脱揮を行う熱可塑性樹脂の製造方法であって、第1押出機に単軸押出機を用いることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
単軸押出機である第1押出機の、押出機長さLcmと直径Dcmの比であるL/Dが50以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項4】
第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力が20MPa以上、100MPa以下である事を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項5】
第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品の部品内容積をVcm、第1押出機への1分当たりの樹脂供給量をQcmとしたときに、部品内容積を任意に変えることで接続部品内滞留時間V/Qを1分以上15分以下とすることを特徴とした請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項6】
第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内に樹脂分散機構を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項7】
第1押出機においてアクリル系樹脂とイミド化剤とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機において第1押出機における反応生成物をさらにエステル化剤と処理する第2段目反応を行うことを特徴とする、請求項1、3、4、5または6の何れかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位及び/又は下記一般式(3)で表される単位とを有するイミド樹脂である事を特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【化1】

(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【化2】

(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【化3】

(但し、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)

【図1】
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【公開番号】特開2008−274186(P2008−274186A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122551(P2007−122551)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】