説明

熱可塑性樹脂の金属粘着性を低減させる方法

【課題】難燃性を有するとともに、成形過程において成形機のスクリューやシリンダーなどの金属への樹脂の粘着を低減させることにより、長期の連続成形におけるヤケ異物の発生を抑制させる方法を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)離型剤(B成分)0.01〜5重量部を含有する樹脂組成物において、B成分としてジペンタエリスリトールと炭素数が13〜35である飽和脂肪族カルボン酸とのエステルを使用することにより金属粘着性を低減させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機のスクリューやシリンダーなどの金属への樹脂の粘着性を低減させる方法に関するものである。更に詳しくは、(A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)離型剤(B成分)0.01〜5重量部を含有する樹脂組成物において、B成分としてジペンタエリスリトールと炭素数が13〜35である飽和脂肪族カルボン酸とのエステルを使用することにより、成形機スクリューやシリンダーなどの金属への樹脂の粘着性を低減させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、特に芳香族ポリカーボネート樹脂、あるいは芳香族ポリカーボネート樹脂とABS樹脂で代表されるグラフト共重合体とのポリマーアロイは、優れた成形性と高い衝撃特性を有しており、事務機器、電気電子機器、自動車などの幅広い用途に使用されている。特にレーザービームプリンター、複写機、及びノートパソコンやプロジェクター装置などの事務機器や電気電子機器のハウジングにおいては、高衝撃性及び優れた成形性の要求が強く、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂とグラフト共重合体からなるポリマーアロイが主流となっている。しかしながら、これらの組成物は、溶融状態では金属に対する粘着性が高いため、成形過程でスクリューやシリンダーに樹脂が付着し易く、長期の連続成形においてヤケ異物が発生し易いという問題があった。これらの問題を解決する手法としては、樹脂中に離型剤などを添加する事が考えられる。文献1には、芳香族ポリカーボネート樹脂とビニル系単量体をグラフト重合して得られるグラフト重合体のアロイ材に特定の脂肪族エステルを添加した樹脂組成物が記載されており、該組成物は長期の連続成形においてもヤケ異物の発生が少なく、低金属粘着性を有することが開示されているが、ジペンタエリスリトールと飽和脂肪族カルボン酸とのエステルに関して述べられていない。
【0003】
文献2には、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とをベースとした難燃樹脂組成物において、ペンタエリスリトールと飽和脂肪族カルボン酸とのエステル化合物を離型剤として使用することが示されている。しかし、該組成物では、成形された樹脂組成物と金型との離型性は低減できるものの、シリンダー内などでの溶融状態における金属に対する粘着性を低減させるには不十分である。文献3には、スチレン系熱可塑性樹脂にエポキシ基を有するハロゲン化エポキシ系難燃剤、塩基性無機化合物を配合した樹脂組成物が開示されているが、ジペンタエリスリトールと飽和脂肪族カルボン酸とのエステルに関して述べられていない。文献4には、芳香族ポリカーボネート樹脂に有効離型量のペンタエリスリトールのエステル、及び離型性向上量のジペンタエリスリトールのエステルを含んだ組成物が記載されている。しかし、該組成物では、成形された樹脂組成物と金型との離型性は低減できるものの、シリンダー内などでの溶融状態における金属に対する粘着性を低減させるには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−259793号公報
【特許文献2】特許第3662420号公報
【特許文献3】特開平9−255842号公報
【特許文献4】特開平11−152403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、難燃性を有するとともに、成形過程において成形機のスクリューやシリンダーなどの金属への樹脂の粘着を低減させることにより、長期の連続成形におけるヤケ異物の発生を抑制させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討を行なった結果、熱可塑性樹脂、特に芳香族ポリカーボネート樹脂や芳香族ポリカーボネート樹脂とABS樹脂で代表されるグラフト共重合体にジペンタエリスリトールと炭素数が13〜35である飽和脂肪族カルボン酸とのエステルを配合することにより、成形過程において成形機のスクリューやシリンダーなどの金属への樹脂の粘着を低減させ、長期の連続成形におけるヤケ異物の発生を抑制できる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、(1)(A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)離型剤(B成分)0.01〜5重量部を含有する樹脂組成物において、B成分としてジペンタエリスリトールと炭素数が13〜35である飽和脂肪族カルボン酸とのエステルを使用することにより金属粘着性を低減させる方法が提供される。
【0008】
本発明の好適な態様の1つは、(2)熱可塑性樹脂(A成分)がポリカーボネート樹脂(A−1成分)、スチレン系樹脂(A−2成分)およびポリエステル系樹脂(A−3成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、A−1成分〜A−3成分の合計100重量%のうちA−1成分が50重量%以上である上記構成(1)の金属粘着性を低減させる方法である。
【0009】
本発明の好適な態様の1つは、(3)樹脂組成物が、A成分100重量部に対し、(C)難燃剤(C成分)0.01〜25重量部、(D)無機充填剤(D成分)1〜60重量部、および(E)含フッ素滴下防止剤(E成分)0〜2重量部を含有する上記構成(1)または(2)の金属粘着性を低減させる方法である。
【0010】
本発明の好適な態様の1つは、(4)C成分が有機リン酸エステル化合物である上記構成(3)の金属粘着性を低減させる方法である。
【0011】
本発明の好適な態様の1つは、(5)D成分が、(D−1)マイカ(D−1成分)、(D−2)タルク(D−2成分)、(D−3)ワラストナイト(D−3成分)、(D−4)ガラス繊維(D−4成分)、および(D−5)ガラスフレーク(D−5成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填剤である上記構成(3)または(4)の金属粘着性を低減させる方法である。
【0012】
本発明の好適な態様の1つは、(6)E成分がフィブリル形成能を有することを特徴とする上記構成(3)〜(5)の金属粘着性を低減させる方法である。
【0013】
以下、本発明の詳細について説明する。
(A成分:熱可塑性樹脂)
本発明においてA成分として使用される熱可塑性樹脂は、基本的に限定されるものではなく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、および環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、HIPS樹脂、MS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、MAS樹脂、水添ポリスチレン樹脂、およびSMA樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、PET樹脂、PBT樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリアリレート樹脂並びにスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、およびアクリル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。この中でより好ましいものとしては、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。特に好適なものとしては、ポリカーボネート樹脂(A−1成分)並びに、スチレン系樹脂(A−2成分)およびポリエステル系樹脂(A−3成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、かつA−1成分〜A−3成分の合計100重量%のうちA−1成分が50重量%以上である熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0014】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは1.3×10〜4.0×10、より好ましくは1.5×10〜3.8×10である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。かかるポリカーボネート樹脂の詳細については、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0015】
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0016】
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
【0017】
[スチレン系樹脂]
スチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、及びp−メチルスチレンなどのスチレン誘導体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。更にポリブタジエンなどのジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴム、及びポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム(以下IPN型ゴム)などに、スチレン及び/またはスチレン誘導体、またはスチレン及び/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものが挙げられる。かかるスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(水添SBS)、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(水添SIS)、衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)及びスチレン・IPN型ゴム共重合体などの樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
尚、かかるスチレン系熱可塑性樹脂はその製造時にメタロセン触媒などの触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレンなどの高い立体規則性を有するものであってもよい。更に場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合などの方法により得られる、分子量分布の狭い重合体及び共重合体、ブロック共重合体、及び立体規則性の高い重合体、共重合体を使用することも可能である。またポリカーボネート樹脂との相溶性改良などを目的として、かかるスチレン系樹脂に無水マレイン酸やN置換マレイミドといった官能基を持つ化合物を共重合することも可能である。
【0019】
これらの中でも、ポリカーボネート樹脂との親和性の観点から、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましい。また、スチレン系樹脂を2種以上混合して使用することも可能である。
【0020】
本発明で使用するAS樹脂とは、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物を共重合した熱可塑性共重合体である。かかるシアン化ビニル化合物としては、前記記載のものを挙げることができ、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。また芳香族ビニル化合物としては、同様に前記記載のものが使用できるが、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく使用できる。AS樹脂中における各成分の割合としては、全体を100重量%とした場合、シアン化ビニル化合物が好ましくは5〜50重量%、より好ましくは15〜35重量%、芳香族ビニル化合物が好ましくは95〜50重量%、より好ましくは85〜65重量%である。更にこれらのビニル化合物に、前記記載の共重合可能な他のビニル系化合物を混合使用することもでき、これらの含有割合は、AS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。また反応で使用する開始剤、連鎖移動剤などは必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0021】
かかるAS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、好ましくは塊状重合によるものである。また共重合の方法も一段での共重合、または多段での共重合のいずれであってもよい。またかかるAS樹脂の還元粘度としては、好ましくは0.2〜1.0dl/gであり、より好ましくは0.3〜0.5dl/gである。還元粘度は、AS樹脂0.25gを精秤し、ジメチルホルムアミド50mlに2時間かけて溶解させた溶液を、ウベローデ粘度計を用いて30℃の環境で測定したものである。なお、粘度計は溶媒の流下時間が20〜100秒のものを用いる。還元粘度は溶媒の流下秒数(t)と溶液の流下秒数(t)から次式によって求める。
還元粘度(ηSP/C)={(t/t)−1}/0.5
還元粘度が0.2dl/gより小さいと衝撃が低下し、1.0dl/gを越えると流動性が悪くなることがあるため好ましくない。
【0022】
本発明で使用するABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体の混合物である。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びスチレン−ブタジエン共重合体などのガラス転移温度が−30℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5〜80重量%であるのが好ましく、より好ましくは8〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、前記記載のものを挙げることができ、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、同様に前記記載のものを使用できるが、特にスチレン及びα−メチルスチレンが好ましく使用できる。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、ABS樹脂成分100重量%中95〜20重量%が好ましく、特に好ましくは50〜90重量%である。更にかかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%であることが好ましい。更に上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部についてメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミドなどを混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。更に反応で使用する開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0023】
本発明のABS樹脂においては、ゴム粒子径は0.1〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0μm、特に好ましくは0.3〜1.5μmである。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
【0024】
またABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含有することは従来からよく知られているところであり、本発明のABS樹脂においてもかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有するものであってもよい。かかるフリーのシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物からなる共重合体の還元粘度は、先に記載の方法で求めた還元粘度(30℃)が好ましくは0.2〜1.0dl/g、より好ましくは0.3〜0.7dl/gであるものである。
【0025】
またグラフトされたシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の割合はジエン系ゴム成分に対して、グラフト率(重量%)で表して20〜200%が好ましく、より好ましくは20〜70%のものである。
【0026】
かかるABS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、特に塊状重合によるものが好ましい。塊状重合の場合には乳化剤などに由来するアルカリ金属塩などを実質的に含まないため、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性をより良好に保つことが可能となる。また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。また、かかる製造法により得られたABS樹脂に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。
【0027】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体と、ジオール、またはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
【0028】
ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸が好適に用いられ、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく使用できる。
【0029】
芳香族ジカルボン酸は二種以上を混合して使用してもよい。なお少量であれば、該ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を一種以上混合使用することも可能である。
【0030】
また本発明の芳香族ポリエステルの成分であるジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等、2,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香環を含有するジオール等及びそれらの混合物等が挙げられる。更に少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
【0031】
また本発明の芳香族ポリエステルは少量の分岐剤を導入することにより分岐させることができる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0032】
具体的な芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、等の他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、等の共重合ポリエステルが挙げられる。これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびこれらの混合物が好ましく使用できる。
【0033】
また得られた芳香族ポリエステル樹脂の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0034】
かかる芳香族ポリエステル樹脂の製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。
【0035】
また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、及びエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。
【0036】
また芳香族ポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、o−クロロフェノールを溶媒として25℃で測定した固有粘度が0.4〜1.2、好ましくは0.65〜1.15である。
【0037】
(B成分:ジペンタエリスリトールと炭素数が13〜35である飽和脂肪族カルボン酸とのエステル)
本発明におけるB成分はジペンタエリスリトールと炭素数が13〜35である飽和脂肪族カルボン酸とのエステルである。
【0038】
上記の特定のエステル化合物の製造方法は、特に限定されるものではなく、ジペンタエリスリトールと炭素数が13〜35の飽和脂肪族カルボン酸とを従来公知の各種方法を利用して製造することができる。また本発明の特定の条件を満足するためには、理論当量の脂肪族多価アルコールと飽和脂肪族カルボン酸とを十分な時間をかけて反応を完全に完結するよりも、やや過剰の飽和脂肪族カルボン酸とを反応させ、比較的早い段階で反応を終了することが好ましい。
【0039】
反応触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、並びに2−エチルヘキシル錫などの有機錫化合物が挙げられる。
【0040】
(飽和脂肪族カルボン酸)
炭素数13〜35の飽和脂肪族カルボン酸としては、例えばアジピン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸などを挙げることができる。飽和脂肪族カルボン酸の炭素数は14〜32、より好ましくは15〜30であることが好ましい。炭素数が13より小さい場合、金属との粘着性を低減させる効果が殆ど発揮されない。また、炭素数が35より大きい場合、ジペンタエリスリトールとのエステル重合が困難であり、離型剤の精製が難しい。仮に重合できた場合でも、金属との粘着性を低減させる効果が過度に大きく、成形や押出工程におけるスクリューへの樹脂の噛みこみが悪くなるという問題が発生する。なお、複数の飽和脂肪族カルボン酸が使用される場合、その炭素数はそれらの加重平均値を用いる。特にステアリン酸およびアジピン酸が好ましい。
【0041】
ステアリン酸やパルミチン酸などの飽和脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)、鉱物油(褐炭)などの天然油脂類から製造される。従って、ここで言う飽和脂肪族カルボン酸は天然物であるため、通常炭素数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物で工業的に供給される。本発明のエステル化合物の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなり、例えば、ステアリン酸の場合は一般的にはステアリン酸とパルミチン酸との混合物である。
【0042】
エステル化合物(B成分)の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部、より好ましくは0.08〜3重量部である。エステル化合物が上記範囲を超えて少なすぎる場合には成形機スクリューやシリンダーなどの金属への樹脂の粘着性が低減されない。一方、エステル化合物が上記範囲を超えて多すぎる場合には、熱安定性の悪化や難燃性の低下などが発生する。
【0043】
(C成分:難燃剤)
本発明の樹脂組成物は、C成分として難燃剤を含有することができる。かかる難燃剤(C成分)としては、有機ハロゲン系難燃剤や有機リン酸エステル化合物が好ましく、有機リン酸エステル化合物がより好ましい。
【0044】
かかる有機ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲン化カーボネートオリゴマー、ハロゲン化エポキシ化合物、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化トリアジン化合物、ハロゲン化ジフェニルアルカン系化合物、ハロゲン化インダン系化合物、およびハロゲン化芳香族フタルイミド系化合物などが挙げられ、中でもポリカーボネートとの相溶性に優れ、その耐熱性および熱安定性が良好であることからハロゲン化カーボネートオリゴマー、ハロゲン化エポキシ化合物が好ましい。
【0045】
一方、有機リン酸エステル化合物としては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、およびホスファゼンオリゴマーなどが好適に例示される。更にリン酸エステルとしては、下記式(I)で示される化合物が好適である。
【0046】
【化1】

[式中、Xは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基である。nは0〜5の整数であり、n数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0〜5の平均値である。R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp−クミルフェノールからなる群より選ばれる化合物より誘導される一価の基である。]
【0047】
更に好ましいものとしては、上記式中のXが、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基であり、R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくはより好適には置換していないフェノール、クレゾール、およびキシレノールからなる群より選ばれる化合物から誘導される一価の基であり、nが1〜3の整数である成分を主成分として含む化合物が挙げられる。
【0048】
また、C成分の別の好適な例として、金属塩系難燃剤も挙げられる。かかる金属塩系難燃剤としては有機スルホン酸アルカリまたはアルカリ土類金属塩が挙げられる。
この難燃剤(C成分)の含有量はA成分100重量部に対し、好ましくは0.01〜25重量部であり、より好ましくは1〜22重量部であり、2〜20重量部がより好ましく、3〜18重量部が最も好ましい。
難燃剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には良好な難燃性が得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合には、組成物の耐熱性および物性低下を起こす場合がある。
【0049】
(D成分:無機充填剤)
本発明の樹脂組成物は、D成分として無機充填剤を含有することができる。D成分の無機充填剤には、難燃性樹脂組成物の剛性や強度の向上などを目的として配合される強化フィラー並びに熱可塑性樹脂組成物の着色などを目的として配合される無機顔料などが代表的に例示される。強化フィラーとしてはガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭素繊維、カーボンフレーク、カーボンビーズ、タルク、クレイ、カオリン、ワラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム、各種無機のウイスカー、金属繊維、金属フレーク、金属コートガラス繊維、金属コートガラスフレーク、および金属コート炭素繊維などを挙げることができる。中でもマイカ、タルク、カオリン、ワラストナイト、ガラス繊維およびガラスフレークから選択される少なくとも1種が好ましく、寸法精度の観点から板状形状のマイカ、タルク、カオリンおよびガラスフレークから選択される少なくとも1種がより好ましい。更にマイカ、タルクは特に好適である。一方、着色剤として配合される無機充填剤の代表例としては二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、および酸化鉄などが例示され、二酸化チタンは最も好適に使用される。
【0050】
更に、D成分はマイカ(D−1成分)、タルク(D−2成分)、ワラストナイト(D−3成分)、ガラス繊維(D−4成分)、ガラスフレーク(D−5成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填剤であることが好ましい。さらに、D−1成分の添加量をD1重量部、D−2成分の添加量をD2重量部、D−3成分の添加量をD3重量部、D−4成分の添加量をD4重量部、D−5成分の添加量をD5重量部とし、該樹脂組成物より成形される成形品の流れ方向の成形収縮率をα%、垂直方向の成形収縮率をβ%、流れ方向の線膨張係数をγ(×10−5/℃)、垂直方向の線膨張係数をδ(×10−5/℃)とするとき、下記式(1)〜(5)の条件を満足することが好ましい。
D1 + D2 + D5 > D3 +D4 (1)
α/β > 0.65 (2)
γ/δ > 0.70 (3)
0.4 < α+β < 1 (4)
3.0 < γ+δ <10 (5)
【0051】
また、上記(1)〜(5)式のうち、(2)〜(5)式が
α/β > 0.70 (2’)
γ/δ > 0.75 (3’)
0.55 < α+β < 0.85 (4’)
6.0 < γ+δ < 10 (5’)
を満足することがより好ましく、これらの範囲とすることで、そりが少なく寸法精度に優れた樹脂組成物が得られる。
【0052】
無機充填剤(D成分)の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは1〜60重量部、より好ましくは2〜50重量部、さらに好ましくは5〜40重量部である。無機充填剤が上記範囲を超えて少なすぎる場合には機構部品として求められる機械的強度、寸法精度が得られない場合がある。一方、無機充填剤が上記範囲を超えて多すぎる場合には成形性が著しく損なわれる場合がある。
【0053】
(E成分:含フッ素滴下防止剤)
本発明の樹脂組成物は、含フッ素滴下防止剤(E成分)を含有していることが好ましい。この含フッ素滴下防止剤(E成分)の含有により、成形品の物性を損なうことなく、良好な難燃性を達成することができる。
【0054】
E成分の含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーが好ましく、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0055】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1000万、より好ましく200万〜900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0056】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン工業(株)のポリフロンMPAFA500およびF−201Lなどを挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業(株)製のフルオンD−1およびD−2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
【0057】
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、さらに該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これら混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタメタブレンA3800」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などを挙げることができる。
【0058】
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。なお、上記E成分の割合は正味の含フッ素滴下防止剤の量を示し、混合形態のPTFEの場合には、正味のPTFE量を示す。
【0059】
含フッ素滴下防止剤(E成分)の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0〜2重量部、より好ましくは0.05〜1.5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部である。含フッ滴下防止剤が上記範囲を超えて少なすぎる場合には難燃性が不十分となる場合がある。一方、含フッ素滴下防止剤が上記範囲を超えて多すぎる場合にはPTFEが成形品表面に析出し外観不良となる場合があるばかりでなく、樹脂組成物のコストアップに繋がり好ましくない。
【0060】
(その他の成分について)
本発明の難燃性樹脂組成物には本発明の効果を発揮する範囲において、他に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、B成分以外の離型剤、発泡剤、染顔料等を配合することも出来る。
【0061】
熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等のリン系の熱安定剤が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル化合物、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等のリン酸エステル化合物、更にその他のリン系熱安定剤として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル化合物等を挙げることができる。これらのうち、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンホスホナイトが好ましい。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.002〜0.3重量部が更に好ましい。
【0062】
酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の配合量は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる酸化防止剤の配合量は、A成分100重量部に対し、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.002〜0.3重量部が更に好ましい。
【0063】
紫外線吸収剤としては、例えば2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、および例えば2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が例示される。更にビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等に代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も使用することが可能である。かかる紫外線吸収剤、光安定剤の配合量は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる紫外線吸収剤、光安定剤の配合量は、A成分100重量部に対し、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.002〜0.3重量部が更に好ましい。
【0064】
帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライド等が挙げられる。かかる帯電防止剤の配合量は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる帯電防止剤の配合量は、A成分100重量部に対し、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.002〜0.3重量部が更に好ましい。
【0065】
B成分以外の離型剤としては、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、パラフィンワックス、蜜蝋などが挙げられる。かかる離型剤の配合量は、A成分100重量部に対し、0.005〜2重量部が好ましい。
【0066】
<金属への粘着性を低減させる方法>
本発明の方法における各成分の混合方法としては、上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合させる方法が挙げられる。好ましくは2軸押出機による溶融混練が好ましく、更にその際、D成分はサイドフィーダー等により第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。
【0067】
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
【0068】
本発明の方法で調製された組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、または回転成形等の既知の方法で容易に成形することができ、特に射出成形が好ましい。
かかる射出成形においては、製品に求められる特性を満たすために、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【発明の効果】
【0069】
本発明の金属への樹脂の粘着性を低減させる方法を用いることにより、良好な難燃性を有するとともに、成形過程において成形機のスクリューやシリンダーへの樹脂の粘着が抑制されることで、長期の連続成形においてもヤケ異物の発生が少なく、量産時の歩留まりが向上するため、OA用途、その他の各種分野において幅広く有用である。したがって本発明の奏する産業上の効果は極めて大である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。なお、特に説明が無い限り実施例中の部は重量部、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によって実施した。
【0072】
(評価)
(i)難燃性
下記方法で作成した試験片を用い、UL規格94に従い、厚み1.5mm、1.6mmおよび2.0mmで燃焼試験を実施した。なお、難燃性のランクは、厚み1.5mm、1.6mmではV−0、2.0mmでは5VBクラスに合格することが好ましい。
【0073】
(ii)スクリューへの樹脂の粘着性
ナカタニ機械(株)製単軸押出機VSK30を用いて、シリンダ温度250℃、スクリュー回転数120rpmの条件下において検討材料を3kg押出した。その後、ポリエチレンを200g押出し、スクリューアウトを行ない、スクリューへの樹脂の粘着量を目視にて評価した。
○ : 粘着量が少ない
△ : 粘着量がやや多い
× : 粘着量が多い
【0074】
(iii)長期の連続成形性
幅150mm×長さ150mm×厚み3mmの角板を射出成形により成形した。評価は、500ショットを捨てショットとした後、連続100ショットを成形し、ヤケ異物が観察された角板の数で実施した。なお、上記角板は、幅30mmおよび厚み2mmのファンゲートを有する金型キャビティを用いて成形されたものであり、角板の成形条件は次のとおりである。すなわち、射出成形機:東芝機械工業(株)製EC−160Nii、シリンダ温度:250℃、金型温度:70℃、充填時間:0.8秒、保圧:80MPa、保圧時間:10秒、および冷却時間:30秒であった。
連続100ショット中ヤケ異物発生枚数
○ : 0〜5枚
△ : 6〜10枚
× : 11枚以上
【0075】
(iv)熱安定性
評価を、500ショットを捨てショットとした後、連続100ショットを成形し、シルバーが観察された角板の数により実施した以外は(iii)長期の熱安定性と同様の方法で評価を実施した。
連続100ショット中シルバー発生枚数
○ : 5ショット未満
△ : 5〜10ショット
× : 10ショット超
【0076】
[実施例1〜12、比較例1〜9]
表1および2に記載成分のうち、難燃剤(C成分)および無機充填剤(D成分)を除いた成分であるA、B成分、E成分およびその他の成分をV型ブレンダーにて混合して混合物を作成した。スクリュー径30mmのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所TEX−30XSST]を用いて、V型ブレンダーにて混合した混合物を最後部の第1投入口より、また無機充填剤(D成分)をシリンダー途中の第2供給口よりサイドフィーダーを用いて、計量器にて所定の割合となるように供給すると伴に、難燃剤(C成分)を80℃に加熱した状態で液注装置(富士テクノ工業(株)製HYM−JS−08)を用いてシリンダー途中(第1供給口と第2供給口との間)から所定の割合になるように押出機に供給し、真空ポンプを使用し3kPaの真空下において、シリンダー温度270℃にて溶融押出してペレット化した。得られたペレットを100℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、上記評価項目の説明において特に記載がない限りは、射出成形機[東芝機械工業(株)製EC160Nii]によりシリンダー温度260℃、金型温度70℃で評価用の試験片を作成し、上記の評価方法で評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0077】
なお、原料としては以下のものを用いた。
(A成分)熱可塑性樹脂
A−1:芳香族ポリカーボネート樹脂[ビスフェノールAとホスゲンから常法によって作られた粘度平均分子量21,300の芳香族ポリカーボネート樹脂粉末、帝人化成(株)製「パンライトL−1225WS」(商品名)
A−2−1:ABS樹脂[日本A&L(株)製 「クララスチックSXH−330」(商品名)]、GPC測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量:90000、ブタジエン含有量:17.5重量%]
A−2−2:ABS樹脂[第一毛織(株)製「CHT」(商品名)、GPC測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量:60000、ブタジエン含有量:58重量%]
A−2−3:アクリロニトリル−スチレン共重合体[第一毛織(株)製「HF5670」(商品名)、GPC測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量:95000、アクリロニトリル含有量:28.5重量%、スチレン含有量:71.5重量%]
B−1:アジピン酸ジペンタエリスリトールフルステアレート[理研ビタミン(株)社製「EW−100」(商品名)](飽和脂肪族カルボン酸の炭素数:17)
B−2:アジピン酸ジペンタエリスチトールフルモンタレート(飽和脂肪族カルボン酸の炭素数:32)
B−3(比較用):ぺンタエリスリトールと飽和脂肪族カルボン酸(ステアリン酸を主成分)とのエステル化合物[理研ビタミン(株)社製「EW−400」(商品名)](飽和脂肪族カルボン酸の炭素数:17)
B−4(比較用):グリセリンと飽和脂肪族カルボン酸(ステアリン酸を主成分)とのエステル化合物を主成分とするエステル化合物[理研ビタミン(株)社製「SL−900」(商
品名)](飽和脂肪族カルボン酸の炭素数:17)
B−5(比較用):アジピン酸ジペンタエリスリトールラウリレート(飽和脂肪族カルボン酸の炭素数:11)
C−1 : ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル(大八化学工業(株)製:CR−741(商品名))
(D成分)無機充填剤
D−1−1 : 乾式粉砕法にて粉砕した平均粒子径約35μmのマスコバイトマイカ(キンセイマテック(株)製:KDM200(商品名))
D−1−2 : 乾式粉砕法にて粉砕した平均粒子径約250μmのマスコバイトマイカ(林化成(株)製:MC40(商品名))
D−2 : タルク(林化成(株)製;HST0.8(商品名))
D−3 : 繊維径5μmのワラストナイト(清水工業製(株)製、H−1250F(商品名))
D−4−1 : 繊維径:13μm、カット長:3mm、アミノシラン処理−エポキシ/ウレタン系集束ガラス繊維、処理剤付着量:約1.0%、かさ密度:0.80g/cmのガラス繊維(日東紡績(株)製:3PE937(商品名))
D−4−2 : 繊維径:13μm、カット長:40μm、アミノシラン処理表面処理およびエポキシ/ウレタン系集束剤(日東紡績(株)製:PFE−301(商品名))
(E成分) PTFE
E−1 : フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製:ポリフロンMPAFA500(商品名))
E−2 : ポリテトラフルオロエチレン系混合体。乳化重合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン及びアクリル系共重合体からなる混合物(ポリテトラフルオロエチレン含有量50重量%、カリウム金属イオン16ppm以上)(ダイキン工業(株)製:A3700(商品名))
(その他の成分)
F−1: カーボンブラックマスター(越谷化成(株)製 ROYALBLACK904S(商品名) カーボンブラック40重量%、PS樹脂60重量%)
F−2: α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合によるオレフィン系ワックス
(三菱化学(株)製;ダイヤカルナ30M(商品名))
F−3: フェノール系熱安定剤(Ciba Specialty Chemicals K.K.製;IRGANOX1076(商品名))
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
上記表から明らかなように、本発明の方法の如く特定のエステル化合物を特定割合で含有することにより成形機スクリューへの樹脂の粘着性が低減され、長期の連続成形におけるヤケ異物の発生が抑制された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)離型剤(B成分)0.01〜5重量部を含有する樹脂組成物において、B成分としてジペンタエリスリトールと炭素数が13〜35である飽和脂肪族カルボン酸とのエステルを使用することにより金属粘着性を低減させる方法。
【請求項2】
A成分が(A−1)ポリカーボネート樹脂(A−1成分)、(A−2)スチレン系樹脂(A−2成分)および(A−3)ポリエステル系樹脂(A−3成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、かつA−1成分〜A−3成分の合計100重量%のうちA−1成分が50重量%以上である請求項1に記載の金属粘着性を低減させる方法。
【請求項3】
樹脂組成物が、A成分100重量部に対し、(C)難燃剤(C成分)0.01〜25重量部、(D)無機充填剤(D成分)1〜60重量部、および(E)含フッ素滴下防止剤(F成分)0〜2重量部を含有する請求項1または2に記載の金属粘着性を低減させる方法。
【請求項4】
C成分が有機リン酸エステル化合物である請求項3に記載の金属粘着性を低減させる方法。
【請求項5】
D成分が、(D−1)マイカ(D−1成分)、(D−2)タルク(D−2成分)、(D−3)ワラストナイト(D−3成分)、(D−4)ガラス繊維(D−4成分)、および(D−5)ガラスフレーク(D−5成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填剤である請求項3または4に記載の金属粘着性を低減させる方法。
【請求項6】
E成分がフィブリル形成能を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の金属粘着性を低減させる方法。

【公開番号】特開2012−136558(P2012−136558A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287724(P2010−287724)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】