説明

熱可塑性樹脂フィルムの成形方法、熱可塑性樹脂フィルム、位相差フィルム及び偏光板

【課題】 原料ペレットの乾燥を行わなくとも、気泡に由来する外観欠点や、ミクロボイドのない、外観に優れた熱可塑性樹脂フィルムの成形方法、該成形方法により得られる熱可塑性樹脂フィルム、該熱可塑性樹脂フィルムを用いた位相差フィルム、及び偏光板を提供することを目的とする。
【解決手段】 押出機に取り付けられたTダイから熱可塑性樹脂を溶融押出してフィルムを成形する際に、含水率が0.5%以下の樹脂を、飢餓率が5%以上である飢餓フィード状態にて押出機のシリンダーに通じるホッパーに投入することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの成形方法、該成形方法により得られる熱可塑性樹脂フィルム、該熱可塑性樹脂フィルムを用いた位相差フィルム及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
透明性の光学材料として、これまでのガラスに替り、生産性、軽量化、コスト等の点からプラスチックの光学フィルムが用いられるようになってきている。
このような光学フィルムの用途は極めて広範であるが、近年ではとりわけ、卓上電子計算機、電子時計、ワープロ、自動車や機械類の計器類等に用いられる液晶表示装置の偏光板に用いる偏光子保護フィルムや位相差フィルムとしての応用がなされている。
【0003】
偏光板は、通常、延伸配向したポリビニルアルコール樹脂にヨウ素又は二色性染料を吸着させた偏光子と、該偏光子の両面に接着された偏光子保護フィルムとからなる。この偏光子保護フィルムとして用いられる光学フィルムとしては、光透過性等の光学特性に優れること、収縮性の大きい偏光子の収縮を防止できるだけの力学的強度を有すること、製造工程においてかけられる高温に耐えうる耐熱性を有すること等が求められている。
【0004】
従来、偏光子保護フィルムとしては、セルローストリアセテート(以下、TACという)のフィルムが多用されてきた。しかし、TACフィルムを用いた偏光板の耐熱耐久試験を行うと、部分的に光抜け(コントラストの低下)が起こり、視認性などの表示特性が悪化するという問題があった。
【0005】
この耐熱耐久試験により光抜けが起こる理由は、TACフィルムの光弾性係数が大きいためであることが一般に知られている。
光弾性係数が大きいと、耐久試験中に偏光子の収縮に伴う応力で発生する複屈折が大きくなるため、光弾性係数は小さいほうがよいが、従来から用いられているTACフィルムは、光弾性係数が大きく複屈折が発生しやすいので、光弾性係数のより小さい材料が望まれていた。
【0006】
また、液晶ディスプレイ(以下、LCDという)には、液晶物質を通過する際の光の歪みを補償することを目的として位相差フィルムが用いられている。このような位相差フィルムとしては、ポリカーボネート樹脂やポリスルホン樹脂のように透明性、耐熱性に優れる樹脂が用いられていた。
この位相差フィルムは、溶液流延製膜法、カレンダー製膜法、溶融押出製膜法等により製膜されたフィルムを、縦方向若しくは横方向又は双方に延伸することにより作製され、偏光板に粘着剤でラミされた状態、又は偏光子に直接接着されて偏光板と一体化した状態で使用されている。このような位相差フィルムに対しても、偏光子保護フィルムと同様に、光弾性係数のより小さい材料が望まれていた。
【0007】
これらの問題を解決するために、例えば、環状オレフィン系樹脂のひとつである飽和ノルボルネン系樹脂からなる偏光子保護フィルムを用いた偏光板及び位相差フィルムが提案されている。この環状オレフィン系樹脂は、透明性、耐湿性、耐熱性に優れ、かつ光弾性係数が小さく、更には、低波長分散性等の優れた特徴を有するため、LCD用の偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの光学フィルムとして好ましい特性を有している。
【0008】
しかしながら、飽和ノルボルネン系樹脂からなるフィルムを押出成形により成形した場合、溶融樹脂中に気泡が発生し、ダイから引き落とされることで表面に目に見える程の大きな条痕となって現れたり、更に強度を低下させたりするという問題点があった。また、目に見える程の大きな条痕がなくとも、光学顕微鏡等を用いて詳細に観察してみると、目では見えない微細なボイドやクラック状の欠陥(以下、ミクロボイドという)が内部に発生することが多いという問題があった。これは、用いた樹脂に未反応モノマーや溶剤、水分などの揮発成分が混入していることが原因であることが分かっている。
【0009】
一般的に飽和ノルボルネン系樹脂は、耐熱性を上げるためにTgを高く設計すると脆くなり、フィルムにミクロボイドがある場合、ミクロボイドがクラックのきっかけとなるため、更に脆くなる傾向になる。
また、位相差フィルムを製造する際の延伸工程で、ミクロボイドが存在するフィルムを延伸すると、比較的高い温度でも破断が起きたり、ミクロボイドがクラックにまで成長するために、白化が起こったりする。これらの現象が起きない範囲で延伸を行うと、得られる位相差フィルムの位相差値も低くなる。
【0010】
これらの問題を解決するために、下記特許文献1には、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーの原料ペレットを、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)より低い高温条件下で成形前に予備乾燥するという方法が提案されている。しかしながら、この方法では、乾燥工程が必要であるため、生産性を低下させるという問題があった。
【0011】
【特許文献1】特許3183273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、原料ペレットの乾燥を行わなくとも、気泡に由来する外観欠点や、ミクロボイドのない、外観に優れた熱可塑性樹脂フィルムの成形方法、該成形方法により得られる熱可塑性樹脂フィルム、該熱可塑性樹脂フィルムを用いた位相差フィルム及び偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの成形方法は、押出機に取り付けられたTダイから熱可塑性樹脂を溶融押出してフィルムを成形する際に、含水率が0.5%以下の樹脂を、飢餓率が5%以上である飢餓フィード状態にて押出機のシリンダーに通じるホッパーに投入することを特徴とする。
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの成形方法は、押出機に取り付けられたTダイから熱可塑性樹脂を溶融押出して成形するのであるが、単軸押出機を用いることが好ましい。
一般に、ホッパーは、未溶融の樹脂が満杯の状態で満たされ、スクリューが回転するに伴って樹脂は重力の作用で自然にスクリューの供給部分に導入される(以下、ナチュラルフィードという)。このとき、樹脂に未反応モノマー、溶剤、水分などの揮発成分が混入していると、これらの揮発分はそのまま圧縮部、計量部を経てダイまで運ばれ、気泡に由来する外観欠点や、ミクロボイドとなる。
【0015】
そこで、本発明者は、ホッパーに直接樹脂を満たさず、別途フィーダーを用いて、いわゆる飢餓フィード状態にて押出機のシリンダーに通じるホッパーに含水率が0.5%以下の樹脂を投入することにより、これらの問題を解決するに至った。
上記飢餓フィード状態にすることにより、スクリューの供給部から圧縮部にかけて未充満部分ができ、揮発成分がフィード部に逆流しやすくなる。その結果、揮発成分がダイまで運ばれる可能性が低くなるので、気泡に由来する外観欠点や、ミクロボイドの発生が抑えられるのである。
上記フィーダーの種類としては、振動ホッパー、強制フィーダー付ホッパー、窒素置換ホッパー等様々な装置が本発明の目的を損なわない範囲で使用可能である。
【0016】
更に、本発明の成形方法においては、飢餓率が5%以上、好ましくは10%以上とすることにより、気泡に由来する外観欠点や、ミクロボイドの発生を効果的に抑えられることを見い出した。
本発明の熱可塑性樹脂の分子骨格中に極性基を有する場合は、飢餓率を必要に応じて高くすることにより、同じ効果を得ることができる。
【0017】
上記飢餓率は下記のように定義される。
あるスクリュー回転数の時、上記ナチュラルフィードで樹脂を供給した場合の流量をQnとする。なお、ここでいう流量とは単位時間あたりに供給される樹脂の重量を示し、単位は一般的にkg/hを用いる。スクリュー回転数を維持したまま、計量フィーダーを用いて、流量がQkとなるようにフィーダーに樹脂を供給したとき、飢餓率は以下の式で計算することができる。
飢餓率(%)={(Qn−Qk)/Qn}×100
なお、ナチュラルフィードの時はQn=Qkとなり、飢餓率は0%となる。
【0018】
位相差フィルム等の外観が極めて重視される製品の場合、樹脂の酸化劣化に由来するゲルの発生を抑えるため、一般に窒素等の不活性ガスでパージを行うが、本発明の熱可塑性樹脂を成形する際にも、同様に窒素等の不活性ガスでパージを行なうことが好ましい。
不活性ガスは一般にフィーダー部から成形機のシリンダー部に供給されるが、この際、樹脂が溶融していない範囲で、原料が投入されるホッパー連通部よりも押出スクリュー先端部寄りに位置するシリンダー部に不活性ガスを供給することにより、不活性ガスがスクリューからホッパーに流れる気流が自然にでき、揮発成分がダイ側に流れることを効果的に抑えることができる。このとき、不活性ガスは乾燥処理されている乾燥気体であることが好ましい。不活性ガスの乾燥処理は、不活性ガスに異物が入り込まない条件であれば、特に限定されず、例えば、塩化カルシウムやモレキュラーシーブを充填した充填塔を通すなどの適宜の手段が採用されればよい。
【0019】
また、上記フィーダー部には、逆流してきた揮発成分を含むガスが原料ペレットに再付着することを防ぐため、ドラフトのような局所排気装置を設けることが好ましい。
【0020】
本発明のフィルムの成形方法において、スクリュー形状や、原料樹脂の供給方法について、特に限定されないが、押出時のゲルの生成を抑制する観点から、スクリュー形状としては、圧縮比Crが2.5以下である低圧縮タイプのフルフライトスクリューが好ましい。
【0021】
上記スクリューは、一般に、未溶融の樹脂をホッパー下から前方に送る供給部分、樹脂を可塑化する圧縮部分、溶融した樹脂の圧力を一定にしてダイに送る計量部分からなっている。
本発明に用いられるスクリューは、メッキ又はセラミックコーティング処理が施されていることが、焼け焦げ付着防止の観点より好ましい。このようなメッキやコーティングの種類としては、クロムメッキ、チタンカーバイドコーティング、タングステンカーバイドコーティングなどを例示することができる。
【0022】
上記押出機のシリンダー温度は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂のTg+120〜150℃の範囲であって、黄変や焼け焦げが発生しない値に設定することが好ましい。
また、原料ペレット中の揮発分を速やかに分離するために、ペレットのブロッキングが起こらない範囲で、スクリューの根本から温度を高くすることが好ましい。
【0023】
本発明による熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、飽和ノルボルネン系樹脂が好適に用いられる。この飽和ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンなどに代表されるノルボルネン系モノマーを付加重合や開環重合することで得ることができる。
【0024】
上記飽和ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体が好ましく用いられ、これが付加重合により得られる場合、ノルボルネン系モノマーとはその構造内にノルボルネンやテトラシクロドデセンなどに代表されるノルボルネン環構造を有する不飽和化合物を表し、オレフィン系モノマーとはエチレン、プロピレン等の直鎖状オレフィン、シクロヘキセンなどの環状オレフィンに代表されるノルボルネン環を有さない炭素と水素からなる不飽和炭化水素化合物を表す。
【0025】
上記ノルボルネン系モノマーとしては特に限定されず、例えば、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられ、なかでもノルボルネン、テトラシクロドデセンが好ましい。
【0026】
上記オレフィン系モノマーとしては特に限定されず、例えば、エチレンやα−オレフィン等の直鎖状オレフィン系モノマーや、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の環状オレフィン系モノマー等が挙げられ、なかでもエチレンが好ましい。
【0027】
上記ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体の共重合比は、例えば、上記ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとを共重合させる際の仕込量、反応条件、重合触媒等を選択することにより制御することができる。
【0028】
上記ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体におけるシーケンスとしては特に限定されないが、ブロック性が高い構造を有する方が脆さや位相差の発現性の点から好ましい。このブロック性は用いる触媒によって制御される。
【0029】
また、上記ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体のなかで市販されているものとしては、例えば、三井化学社製「APL」、チコナ社製「Topas」等が挙げられる。
【0030】
本発明による飽和ノルボルネン系樹脂は、開環重合により得られる開環重合体であってもよく、上記ノルボルネン系モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される、構成元素が炭素と水素又はそれ以外の元素とからなるテトラシクロドデセン誘導体のノルボルネン系モノマー等が挙げられる。
【化1】

(式中、A、Bは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、単環又は多環を有していてもよいし、A、Bで結合する単環又は多環を有していてもよい。X、Yは、水素原子又は極性基が置換した炭素数1〜20の炭化水素基、mは、1又は2を示す)
【0031】
上記一般式(1)で示されるノルボルネン系モノマーのうち、極性を持たないノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0032】
また、上記一般式(1)で示されるノルボルネン系モノマーのうち、極性基を有するノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソプロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−ブチルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−プロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−イソプロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−ブチルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン等が挙げられる。
【0033】
また、上記一般式(1)で示される以外のノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン5−フェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−メチル−5−フェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(2,4,6−トリメチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(エチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(イソプロピルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(ビフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(β−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(α−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(アントラセニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジフェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加体、2分子のシクロペンタジエンと1分子のアセナフチレン付加体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(2,4,6−トリメチルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(エチルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(イソプロピルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジフェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(β−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(α−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(アントラセニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、11−フェニル−ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、14、15−ベンゾ−ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン等が挙げられる。
【0034】
これらのノルボルネン系モノマーは単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。また、2種類以上の開環重合可能なノルボルネン系モノマーを用いて開環共重合反応を行ってもよく、上記一般式(1)で示されるノルボルネン系モノマーに、一般式(1)で示される以外のノルボルネン系モノマーを共重合又は付加重合することもできる。
【0035】
上記ノルボルネン系モノマーの重合方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーと共重合したり、水素添加によりノルボルネン系重合体水素添加物としたりしてもよい。
【0036】
本発明による飽和ノルボルネン系樹脂の数平均分子量の好ましい下限は5000、上限は50000である。この範囲内であると、得られる成形品、とりわけ光学フィルム等の力学強度と成形性とのバランスが非常によくなる。より好ましい下限は7000、上限は35000、更に好ましい下限は8000、上限は30000である。
なお、この数平均分子量は、クロロホルムに溶解した試料を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて、40℃にて測定し、標準ポリスチレンに換算したものである。
【0037】
また、上記飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度の好ましい下限は120℃、上限は190℃である。120℃未満であると、耐熱性が低下することがあり、一方、190℃を超えると、溶融成形時に分解が生じることがある。より好ましい下限は130℃、上限は170℃である。
【0038】
上記飽和ノルボルネン系樹脂の開環重合体のなかで市販されているものとしては、例えば、日本ゼオン社製「ゼオノア」、「ゼオネックス」、JSR社製「アートン」等が挙げられる。
【0039】
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性、耐紫外線性、平滑性及び成形性等を向上させるために、上記樹脂にフェノール系、リン系等の老化防止剤、フェノール系等の熱劣化防止剤、アミン系等の帯電防止剤、脂肪族アルコールのエステル、多価アルコールの部分エステルや高級脂肪酸、又はこれらのアミド等の滑剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤等が当該フィルムとしての機能を損なわない範囲で添加されてもよい。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを成形するにあたり、成形助剤として極性滑剤を用いることなどの表面性を向上させる手段を行ってもよい。この滑剤としては、エチレンビスステアリルアミドのようなアミド系のものや他にエステル系の滑剤を好適に用いることが可能である。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、各種の液晶ディスプレイに使用されている位相差フィルムにも好適に用いることができる。
【0042】
上記位相差フィルムの製造法としては、従来知られている方法が使用でき、例えば、本発明の熱可塑性樹脂フィルムを一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸等の延伸処理を行うことにより製造することができる。
【0043】
上記延伸処理を行う場合の温度としては特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度±0℃〜+20℃であることが好ましい。この範囲外であると、低温側ではフィルムが破断してしまったり、高温側では所望の位相差値が得られなかったりすることがある。より好ましくはガラス転移温度+1℃〜+10℃である。
【0044】
上記延伸処理を行う場合の延伸倍率としては特に限定されないが、フィルムの溶融押出の方向に延伸する場合には、好ましい下限は1.05倍、好ましい上限は5.0倍である。1.05倍未満であると、変形量が少なすぎて充分なレタデーションが得られないことがあり、5.0倍を超えると、フィルムが破断してしまうことがある。より好ましい下限は1.1倍、より好ましい上限は2.5倍である。また、フィルムの溶融押出の方向とは直交する方向に延伸する場合には、好ましい下限は1.2倍、好ましい上限は3.0倍であり、より好ましい下限は1.5倍、より好ましい上限は2.5倍である。
【0045】
このように得られた位相差フィルムは通常、粘着剤によって偏光板に積層されるが、本発明の熱可塑性樹脂フィルムを用いた位相差フィルムは、偏光子の保護フィルムとしての機能も持ち合わせているため、上記保護フィルムと同様にして、偏光子に直接貼り合わせることにより、位相差フィルムの機能を兼ね備えた保護フィルムとしても用いることができる。このように、位相差フィルムをそのまま保護フィルムとして用いることは部材の削減や工程の削減につながり、液晶パネルの製造コストに対して非常に有効な手段である。
【0046】
上記位相差フィルムにおいては、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが、液晶パネルとして用いた際の耐熱性を有することが可能となるために好ましい。即ち、Tgが100℃を下回る位相差フィルムを液晶パネルの基材として用いると、耐熱性が低いためにフィルム自身が変形し光学異方性を生じ、その結果パネルの性能を低下させてしまうことがある。また、耐久試験の最中で、位相差値が低下することにもつながることがある。
ここで、このTgは、当該フィルムに0.01%の変形を周波数10Hzで与え、温度を25〜250℃まで昇温して、動的粘弾性測定装置(RSA)を用いて得られた引張損失弾性率E”のピークトップに対応する温度を意味する。
【0047】
また、本発明による偏光板は、本発明で得られた位相差フィルムを偏光子の少なくとも片面に直接貼合してなるものである。
【発明の効果】
【0048】
本発明による熱可塑性樹脂フィルムの成形方法は、上述の通りの構成であるので、原料ペレットの乾燥を行わなくとも、気泡に由来する外観欠点や、ミクロボイドのない、外観に優れた熱可塑性樹脂フィルムを提供することができ、また、該フィルムを用いた位相差フィルム、偏光板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体としてチコナ社製「Topas6013」を用い、圧縮比2.0のフルフライトスクリューを具備した内径30mmの一軸溶融押出機により、シリンダーの温度を250℃に設定して押出成形を行い平均厚さ100μmのフィルムを得た。ここで、スクリューの回転数を24rpmに設定したときのナチュラルフィードにおける流量は20kg/hであったため、原料ペレットを未乾燥の状態で、定量フィーダーを用いて押出機のフィード部に18kg/h(飢餓率10%)になるように供給した。また、シリンダーの樹脂供給部から20cmの部位から、乾燥処理した窒素ガスを供給した。
【0051】
(実施例2)
ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体として三井化学社製「APL6015T」を用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚さ100μmのフィルムを得た。
【0052】
(実施例3)
ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体の代りに、ノルボルネン系モノマーの開環重合体として日本ゼオン社製「ゼオノア1420R」を用いたこと以外は実施例1と同様にして、平均厚さ100μmのフィルムを得た。
【0053】
(実施例4)
ノルボルネン系モノマーの開環重合体としてJSR社製の「アートンG6810」(分子骨格に極性基を有しているため、ペレット中に水分が0.3%存在する)を用い、圧縮比2.0のフルフライトスクリューを具備した内径30mmの一軸溶融押出機により、シリンダーの温度を260℃に設定して押出成形を行い平均厚さ100μmのフィルムを得た。ここで、スクリューの回転数を26rpmに設定したときのナチュラルフィードにおける流量は21.2kg/hであったため、原料ペレットを未乾燥の状態で、定量フィーダーを用いて押出機のフィード部に18kg/h(飢餓率15%)になるように供給した。また、シリンダーの樹脂供給部から20cmの部位から、乾燥処理した窒素ガスを供給した。
【0054】
(比較例1)
スクリューの回転数を22rpmに設定し、ナチュラルフィード(飢餓率は0%)で原料ペレットを未乾燥の状態で供給し(このときの流量は18kg/hであった)、また、シリンダーの樹脂供給部から窒素ガスを供給したこと以外は実施例1と同様にして、平均厚さ100μmのフィルムを得た。
しかし、押出時に気泡が発生し、ドローダウン時に引き延ばされ、フィルムにスジ状の気泡が観察された。
【0055】
(比較例2)
スクリューの回転数を23rpmに設定したときのナチュラルフィードにおける流量が18.5kg/hであり、原料ペレットを未乾燥の状態で、定量フィーダーを用いて押出機のフィード部に18kg/h(飢餓率3%)になるように供給し、また、シリンダーの樹脂供給部から、窒素ガスを供給したこと以外は実施例1と同様にして、平均厚さ100μmのフィルムを得た。
【0056】
(比較例3)
原料ペレットを120℃で4時間乾燥したこと以外は比較例1と同様にして、平均厚さ100μmのフィルムを得た。
【0057】
(性能評価)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーフィルムの性能について、以下の方法により評価を行った。その結果は表1に示す通りであった。
【0058】
1)成形後の外観
押出後のフィルムについて、気泡の発生に由来するスジ状の欠点の有無を観察した。
また、400倍の光学顕微鏡で10視野観察し、大きさ5μm以上のミクロボイドの有無を観察した。
【0059】
2)ガラス転移温度(Tg)
フィルムを5mm×100mmに切り出してサンプルを作製し、引張動的粘弾性測定装置(レオメトリック社製、RSA II)を用いて、0.01%の変形を周波数10Hzで与え、温度を25℃から250℃まで昇温し、各サンプルの動的粘弾性の温度依存性を測定した。これによって得られた引張損失弾性率E”のピークトップに対応する温度をポリマーのTg(℃)として評価した。
【0060】
3)延伸後ヘイズ
TENSILON(オリエンテック社製)を用いて、下記の条件にて延伸サンプルを作製した。
・引張温度:Tg±0℃(上記2)で測定)
・延伸方向:TD方向
・チャック間距離:100mm
・引張伸度:100mm(延伸倍率2倍)
・フィルム幅:25mm
・引張速度:100mm/分
このようにして得られた延伸フィルムについて、ヘイズメーター(東京電色社製、TC−H III DKP)を用い、JIS K 7105に準拠してヘイズの測定を行った。
ここで、比較例2のフィルムは、延伸を終了するまでに破断が起こったため評価できなかった。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、未乾燥のペレットを、飢餓率が5%以上である飢餓フィード状態にてホッパーに投入することにより、樹脂を乾燥することと同等の効果を得ることができ、更に予備乾燥の工程が不要であるため、生産性の向上が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機に取り付けられたTダイから熱可塑性樹脂を溶融押出してフィルムを成形する際に、含水率が0.5%以下の樹脂を、飢餓率が5%以上である飢餓フィード状態にて押出機のシリンダーに通じるホッパーに投入することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの成形方法。
【請求項2】
前記ホッパー連通部よりも押出スクリュー先端部寄りに位置するシリンダー部に不活性乾燥気体を供給することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂フィルムの成形方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が飽和ノルボルネン系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂フィルムの成形方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の成形方法により得られる熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなる位相差フィルム。
【請求項6】
請求項5記載の位相差フィルムを偏光子の少なくとも片面に貼合してなる偏光板。




【公開番号】特開2006−142773(P2006−142773A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339310(P2004−339310)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】