説明

熱可塑性樹脂フィルム

【課題】帯電防止性に優れ、特に、その経時的持続性が改善された単層及び多層の熱可塑性フィルムを提供する。このフイルムは、食品、医薬品、繊維製品等の広範な物品の包装に好適に用いることができ、特に、半導体素子等の精密電子部品の包装材料、袋材、容器材、とりわけ、ICチップ等を収納するキャリアテープのカバーテープ材料として有用である。
【解決手段】帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂の単層フィルムまたは該樹脂層を有する多層フィルムにおいて、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の少なくとも片面に極性基付与処理が施されていることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性能、特に、その安定持続性に優れた熱可塑性樹脂フィルムに関し、より詳細には、粉末食品その他の食品包装用材、医薬品包装用材、繊維製品包装用材、静電気シールドを目的とした半導体素子等の精密電子部品の包装材、容器材等に好適に用いられ、帯電防止性能、特に、その安定持続性に優れた単層又は多層の熱可塑性樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の包装用、収納袋用、容器用等の用途に供される樹脂フィルムには程度の差はあれ帯電防止性が求められる場合が多く、例えば、厳密な静電シールド性が強く求められる半導体素子等の精密電子部品の包装材料、袋材、容器材等に用いる熱可塑性樹脂フィルムは勿論、粉末食品その他の食品包装、医薬品包装、繊維製品包装等の用途に用いる熱可塑性樹脂フィルムにもそれぞれ、その用途に応じた帯電防止性が求められる。
【0003】
従来から、このような要求に応ずる帯電防止性フィルムの発明も既に多数提案され、例えば、特許文献1には、非金属支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムとアクリル系又はポリカーボネート系の結合剤樹脂に電解銅粉等の導電性粉末を分散させた導電層(塗膜層)との間に塩化ビニリデン樹脂層を介在させてなり、帯電防止を目的とした粉末食品包装用、医薬品包装用、繊維製品包装用等の用途の他、静電シールドを目的としたIC部品の包装、保管、流通用等の用途にも用いることのできる導電性フィルムの発明が開示されている。
【0004】
又、特許文献2には、精密電子部品の包装用材として、外層フィルム層、補強フィルム層、接着強化層及び熱接着剤層からなり、該熱接着剤層がポリアクリレート系のベース樹脂に帯電防止剤としてテトラアルキルアンモニウムクロライドを練込み配合した樹脂組成物からなるポリスチレン製エンボスキャリアテープ用のカバーテープの発明が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明のように帯電防止塗布層に重金属粉末を配合した包装材は、該塗膜層がやや脆く剥離しやすい欠点があり、重金属粉が医薬や食品等と直接接触した場合の触媒的作用による変質促進の危険性や太陽光暴露等の場合の光増感作用による内容物変質の危険性等の観点から、そのような影響を受けやすい医薬、食品と接する用途、或いは、重金属の存在を極端に嫌うICチップ等の精密電子部品と接する用途等への使用は決して好ましいものではく、この点から使用が制限される場合も生じる。
【0006】
又、特許文献2の発明のように、熱接着剤層(ヒートシール層)に帯電防止剤を混入又は塗布したキャリアテープ用カバーテープ等のフィルム材の場合は、その製作日時からそれほど時間が経過しない初期には充分な帯電防止性能を有するが、製造後に長期間放置したものを使用した場合や、製造後すぐにキャリアテープに装着して包装体としたものでも、該包装体の状態で長期間貯蔵したもの等は、その帯電防止性能が徐々に低下し、それを開封した際、剥離により生じる静電気で塵埃等が付着する不都合を完全に阻止できない場合も生じ、このような帯電防止性能の経時的劣化が従来から問題となってる。
特に、近年、IC、LSI等の高度集積化やその他の電子部品の細密化が進行するにつれてその改善が当業界で強く求められるようになって来ている。
【特許文献1】特開2000−353427号公報
【特許文献2】特許第3731092号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、帯電防止に金属粉含有層等を用いることなく、然も、帯電防止性能の経時的劣化が無く、その持続性に優れた帯電防止フィルムを開発すべく鋭意研究を重ねた。
その結果、非金属系の帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂の単層フィルムまたは該帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層を有する多層フィルムにおいて、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の少なくとも片面に極性基付与処理を施したものが帯電防止性、特に、その経時的持続性に優れることを見出しこの知見に基づき本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明の目的は、帯電防止性に優れ、特に、その経時的持続性が改善された熱可塑性樹脂フィルム及び低温度での熱接着が可能であると共にフ゜ラスティックや紙等に対する熱接着強度が適度で、且つ、該熱可塑性樹脂同士の熱接着は充分な強度を有し、食品、医薬品、繊維製品等の包装用の他、精密電子部品の包装材料等にも好適に用いられる熱可塑性樹脂の単層又は多層フィルムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂の単層フィルムまたは帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層を有する多層フィルムにおいて、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の少なくとも片面に極性基付与処理が施されていることを特徴とする熱可塑性樹脂の単層又は多層フィルムが提供される。
【0010】
本発明では、前記極性基付与処理はコロナ放電処理であることが好ましい。
【0011】
又、前記本発明の熱可塑性樹脂フィルムが多層フィルムである場合に於いて、該多層フィルムは、外層フィルム層を有し、且つ、前記帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層は、その外層フィルム側と反対側の面に極性基付与処理が施されていることを特徴とする。
【0012】
更に、前記多層フィルムが外層フィルム層と帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層との間に中間層を更に有し、前記帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の中間層と接する側の反対側の面に極性基付与処理が施されている態様が特に好ましい。
【0013】
又、前記帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層は熱接着性樹脂層であって、特に、該層が帯電防止剤を含有するエチレン・酢酸ビニル共重合体組成物からなる層であることが好ましい。
【0014】
又、前記外層フィルム層はポリエステル樹脂からなることが好ましい。
【0015】
更に、前記中間層は、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒重合ポリエチレンから選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。
【0016】
更に、本発明の単層又は多層フィルムは物品の包装用材料として好適に用いられ、特に、前記帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層のキャリアテープと接する面に極性基付与処理が施されている態様のキャリアテープ用カバーテープとして好適に用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂の単層フィルムまたは帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層を有する多層フィルムは、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の少なくとも片面に極性基付与処理が施されていることに起因して、帯電防止性に優れ、特に、その(帯電防止性の)経時的な安定持続性に顕著に優れる。
従って、例えば、粉末食品その他の食品包装、医薬品包装、繊維製品包装等の広範な包装用途に好適に用いることができるだけでなく、厳密な静電シールド性が強く求められる半導体素子等の精密電子部品の包装材料、袋材、容器材等にも好適で、特に、ポリエステル樹脂フィルム等からなる外層フィルム層とポリエチレンやエチレン系共重合体又はそれらを含む樹脂組成物からなる中間層と帯電防止剤含有エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂組成物等からなる帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層とが積層されてなり、且つ、キャリアテープと接する側の帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層面に極性基付与処理が施される態様の多層フィルムはキャリアテープ用カバーテープとして、低温度での熱接着が可能であると共にカバーテープとキャリアテープとの接着強度が、その剥離開封時にスムーズな剥離が達成できる程度の適度でバラツキの無い強度を有し、然も帯電防止性に優れ、特に、その経時的な安定持続性に顕著に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の好適実施形態について、詳細且つ具体的に説明する。
既に述べたとおり、本発明は、少なくともその片面に極性基付与処理が施されている帯電防止剤含有熱可塑性樹脂の単層フィルム、及び、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層を有する多層フィルムであって、該帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の少なくとも片面に極性基付与処理が施されているものからなる。
【0019】
まず、本発明の単層フィルムについて述べる。
本発明に於いて、前記単層フィルムを構成する熱可塑性樹脂(ベース樹脂)としては、帯電防止剤の練込、混和が可能で、且つ、所定の柔軟性と強度を有しフィルム成形が可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されること無く使用できるが、本発明のフィルムが帯電防止性を求める物品の包装や収納に用いることを主目的とすることから、ポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体系樹脂等のエチレン系共重合体樹脂を含むポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルポリウレタン系樹脂、スチレン系樹脂等、又はこれらの二種以上の混合物を用いることが好ましい。
本発明の単層フィルムは、その用途からそれ自体を単独で使用する場合よりは、むしろ他材料に貼付けたり、粘着させたり、ヒートシール接合したりする使用態様が圧倒的に多く、この観点から該樹脂層には上記の樹脂の内でも熱接着性に優れた樹脂、特にヒートシール性樹脂を使用することが好ましく、この観点から、上記の内でも、エチレン共重合体樹脂、特に{酢酸ビニル含量3〜15重量%の}エチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂が特に好ましい。
又、透明で低温ヒートシール性に優れたCMPS(商品名:三井・デュポンポリケミカル社製多目的シール樹脂)等の市販品シール樹脂を用いることもできる。
【0020】
上記ベース樹脂に通常配合される練込形の帯電防止剤としては、アルキルサルフェート、アルキルアリールサルフェート等のアニオン系界面活性剤、テトラアルキルアンモニウムクロライドに代表される第四級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、グリセリンモノステアレート等の非イオン系界面活性剤、ジメチルアルキルベタイン等の両性界面活性剤、三級アルキルアミン等が例示され、更に酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラックなども用途によっては用いることができる。
これらの内で練込型の帯電防止剤としてはグリセリンモノステアレート等の非イオン系界面活性剤が好ましい。
その配合量は用いる帯電防止剤の種類、ベース樹脂種、用途等により適宜定められるが、通常ベース樹脂100重量部に対し0.1〜5重量部程度である。
【0021】
更に、上記熱可塑性樹脂に、粘着性付与樹脂を配合しても良く、粘着性付与樹脂としては、所謂タッキファイヤーと呼ばれるポリエチレン系樹脂、キシレン樹脂、水添石油樹脂、エステルガム、クマロン樹脂等が例示出来、その配合量は適宜である。
また前記フィルムの厚さは、内容物、用途等によって適宜設定されるが、通常5〜200μm、好ましくは20〜50μmである。
【0022】
前記単層フィルムの製造方法としては、前記帯電防止剤の所定量を練込んだベース樹脂を、それぞれのベース樹脂に適した通常の製膜方法、例えば、インフレーション製膜法、Tダイ押出製膜法、カレンダリング製膜法等それ自体公知の方法を適宜用いて製造することができる。
【0023】
本発明ではこのようにして得られた帯電防止剤含有熱可塑性樹脂単層フィルムの片面又は両面に極性基付与処理を施す。
本発明で極性基付与処理とは前記処理面に、例えばカルボキシル基、カルボニル基等の極性基を付与(導入)する表面処理のことを言い、極性基を付与する処理の具体例としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等の表面処理方法が挙げられる。
この中で本発明ではコロナ放電処理が好ましい。
該コロナ放電処理に於ける放電密度は、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂の種類、厚み、その他の諸条件により変化し適宜設定されるが、一般に5〜150w・分/m程度、より好ましくは10〜100w・分/mである。
【0024】
次に、本発明の多層フィルムについて述べる。
本発明の多層フィルムに於いて、最も単純な層構成は外層フィルム層と帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の2層からなり、該帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の少なくとも1面に極性基付与処理が施された態様の積層フィルムであるが、本発明では、前記外層フィルム層と帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層との間にエチレン系重合体樹脂からなる中間層を介在させた少なくとも3層からなる多層フィルムがより好ましい。
【0025】
又、多層フィルムに於いては、前記帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層は、その外層フィルム側と反対側の面に極性基付与処理が施されていることを特徴とする。
この場合に於いて、前記中間層が外層フィルム層と帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層との間に積層されている態様のものでは、前記極性基付与処理が中間層に接着した面と反対側の面に施される。
【0026】
本発明に於いて、外層フィルム層の材質としては、それ自体公知の熱可塑性樹脂フィルムを使用でき、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂フィルム、ナイロン等のポリアミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム等を例示することができる。
これらの内ではポリエステル樹脂フィルムが好ましく、特に、強度、耐熱性に優れ、比較的剛性が高く容易に透明品が得られるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
これらフィルムは延伸、未延伸の何れも使用できるが、二軸延伸フィルムが好ましい。
【0027】
又、これらフィルムには帯電防止処理が施されることが好ましく、例えば、帯電防止剤が練り込まれたものや外表面を帯電防止コート処理したもの等が好適である。
【0028】
又、中間層を設ける態様の多層フィルムに於いては、該層との間の接着強度を一層強化安定させるために、外層フィルムの中間層と接する面にサンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線処理、アンカーコート処理等の表面処理を施しても良く、更に、必要に応じて、層中に慣用の添加剤、例えば、酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、軟化剤、防錆剤等を添加しても良い。
【0029】
前記外層フィルム層の厚さは、内容物、用途によって適宜設定されるが、通常5〜50μm、好ましくは9〜30μmである。
【0030】
既に述べたとおり、本発明の多層フィルムには、前記外層フィルム層と帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層の間に中間層を介在させることが好ましい。
本発明に於いて中間層は、外層フィルム層と帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層(熱接着性樹脂からなることがより好ましい)との間に介在し、この中間層を介して該外層と帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層間の接着を強固にし、かつ安定化する機能を有する。
【0031】
本発明では、前記中間層の構成材として、エチレン系重合体又はそれらを含む樹脂組成物を用いる。
エチレン系重合体としてはエチレンの単独重合体、またはエチレン共重合体いずれも使用できるが、ポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選ばれた少なくとも1種の重合体、共重合体、それらの樹脂組成物が好適に用いられる。
【0032】
更に具体的には、エチレンホモポリマー又はエチレンと少量の炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体、たとえば高圧法低密度ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン触媒重合ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等の所謂ポリエチレン類、エチレンと、例えば、プロピレン、1−ブテン、1ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類との共重合体、所謂エチレン・α−オレフィン共重合体類、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体等のビニルエステル共重合体類、エチレンと、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸等不飽和カルボン酸類との共重合体、所謂エチレン・不飽和カルボン酸共重合体類、又は、そのNa、Li、ZnもしくはMgなどのアイオノマー類、エチレンと、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル類との共重合体、所謂エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体類、エチレンと上記のような不飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸エステルの共重合体、所謂エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体類又はそのNa、Li、ZnもしくはMgなどのアイオノマー類、エチレンと一酸化炭素と任意に不飽和カルボン酸エステルや酢酸ビニルとの共重合体等、エチレンと極性モノマーとの共重合体やこれらの2種以上の混合物などを好適例として挙げることができる。
【0033】
こら等の内では、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒重合ポリエチレンやそれらの混合物が好ましい。
【0034】
本発明の中間層に用いる前記素材樹脂は、その加工性や層強度の点からそのメルトフローレート(MFR: JISK 7210−1999に準拠、190℃、2160g荷重 )は1〜50g/10分、より好ましくは3〜20g/10分程度のものが好ましい。
又、前記中間層の厚さは、内容物、用途によって適宜設定されるが、通常5〜50μm、好ましくは7〜20μmである。
【0035】
更に、前記中間層は、その外層フィルム層及び/又は帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層との間にアンカーコート剤を施用し、これを介して外層フィルム層や帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層を積層しても良く、これにより中間層と外層フィルム層や帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層との間の接着をより強化にできる。
本発明で使用するこのようなアンカーコート剤の好適例として、ポリエステル系樹脂とイソシアネート樹脂硬化剤との二液反応型アンカーコート剤、ポリウレタン系樹脂とイソシアネート系硬化剤との二液型アンカーコート剤、ポリイソシアネート系樹脂とアミン樹脂とのアンカーコート剤、ポリエチレンイミン系樹脂からなる一液型アンカーコート剤等の他、エポキシ系やオキサザリン系アンカーコート剤等を挙げることができる。
【0036】
前記アンカーコート剤の施用量は、内容物、用途によって適宜設定されるが、固形分濃度として通常0.01〜5g/m、好ましくは0.01〜0.5g/mである。
【0037】
前記多層フィルムの場合は、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層に熱接着性樹脂、特に、ヒートシール性樹脂を選択し、これをベース樹脂として、練込形帯電防止剤や必要に応じて粘着性付与樹脂等を配合して組成物としたものから該層を構成することが特に好ましい。
好適に用いることのできるベース樹脂として、ポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂等、既に述べた単層フィルムの構成樹脂と同じものを例示することができる。
これらの内では、単層フィルムの場合と同様、エチレン共重合体樹脂、特に{酢酸ビニル含量3〜15重量%の}エチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂が好ましい。
又、CMPS等の市販品シール樹脂も用いることができる。
【0038】
又、上記ベース樹脂に配合される練込形の帯電防止剤としては、これも既に単層フィルムで挙げたのと同じアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、アルキルアミン等を例示することができる。
これらの内で、押出しラミネート法による練込型の帯電防止剤としてはグリセリンモノステアレート等の非イオン系界面活性剤が好ましい。
その配合量は用いる帯電防止剤の種類、ベース樹脂種、用途等により適宜定められるが、通常ベース樹脂100重量部に対し0.1〜5重量部程度である。
【0039】
更に、該層には、粘着性付与樹脂を配合しても良く、粘着性付与樹脂としては、所謂タッキファイヤーと呼ばれるポリエチレン系樹脂、キシレン樹脂、水添石油樹脂、エステルガム、クマロン樹脂等が例示出来、その配合量は適宜である。
【0040】
前記層の厚さは、内容物、用途等によって適宜設定されるが、通常5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。
この層に施される極性基付与処理は、既に述べた単層フィルムの場合とほぼ同様に行われ、好適な処理方法であるコロナ放電処理の場合、その放電密度は、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂の種類、厚み、その他の諸条件により変化して設定されるが、一般に5〜150w・分/m程度、より好ましくは10〜100w・分/mである。
【0041】
本発明の多層フィルムは、上記各層を、それ自体公知の方法により積層して得られる。
その製作法の一例を挙げると、まず、外層フィルム層として予め外面に帯電防止コートを施した二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを用意し、別に、中間層としてのポリエチレンと帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層(ヒートシール層)としての帯電防止剤入りエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂組成物(EVA樹脂組成物)とをそれぞれ用意し、これらを、例えば、押出ラミネーターにより積層する。
即ち、押出機から前記ポリエチレンを二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム上に押出し、更にその上にEVA樹脂組成物(帯電防止剤含有熱可塑性樹脂)を順次押出してラミネートフィルム(多層フィルム)が作製される。
ポリエステル樹脂フィルムには、その中間層(ポリエチレン層)を積層する面にアンカーコート剤(AC剤)を塗布したものを用いることが好ましい。
【0042】
ラミネート方法としては、シングルラミネーターやタンデムラミネーターを用いて、ポリエチレン(中間層)とEVA樹脂組成物(帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層)を順次押出しラミネートする方法、或は、中間層と帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層を共押出する方法などがある。
次いで、得られた積層フィルムのEVA樹脂組成物層(帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層)の二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム層(外層フィルム層)側と反対側の面をコロナ処理して本発明の多層フィルムを得ることができる。
【0043】
既に述べたとおり、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の少なくとも片面に極性基付与処理が施されている本発明の単層、多層フィルムは帯電防止性能及びその安定持続性に優れ、食品包装、医薬品包装、繊維製品包装等広範な物品の包装に好適に用いることができるが、特に、厳密な静電シールド性が求められる半導体素子等の精密電子部品の包装材料、袋材、容器材、とりわけ、ICチップ等を収納するキャリアテープのカバーテープ材料として有用である。
特に、ポリエステル樹脂フィルム等からなる外層フィルム層とポリエチレンやエチレン系共重合体又はそれらを含む樹脂組成物からなる中間層と帯電防止剤含有エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂組成物等からなる帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層とが積層されてなり、且つ、キャリアテープと接する帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層にコロナ処理等の極性基付与処理が施された態様の多層フィルムは、低温度での熱接着が可能であると共にカバーテープとキャリアテープとの接着強度が、その剥離開封時にスムーズな剥離が達成できる程度の適度でバラツキの無い強度を有し、然も帯電防止性に優れ、特に、その経時的な安定持続性に顕著に優れる。
【実施例】
【0044】
本発明を次の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0045】
「多層フィルム試料の作製」
外層フィルム材として、外面側に帯電防止コートを施した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ASコートPET:厚さ25μm)を用意し、別に、中間層用材として、低密度ポリエチレン(PE:ミラソン16P:密度923kg/m、MFR3.7g/10分)と帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層用材として、エチレン・酢酸ビニル共重合体100重量部にグリセリン脂肪酸エステル系帯電防止剤を0.5重量部、及び粘着付与剤(荒川化学工業株式会社 アルコンAM1)を10重量部混合してなるエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂組成物(帯電防止剤入りEVA系樹脂)を用い、これらを押出機(65mmφ、L/D=28)、スクリュー(3ステージ型、溝深さ比=4.78)、ダイ(900mm幅、インナーディケル型)を用いて、加工速度80m/分、樹脂温度(PE:320℃、EVA系樹脂:220℃)、加工幅500mmの条件下で三層のラミネートフィルムを作製した。
【0046】
上記に並行して、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの内面側にアンカーコート剤(AC剤:大日精化製;セイカダイン2710A/C;2液反応型)を塗布し、乾燥させた。
そして、ポリエチレン側面(中間層側面)と前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのアンカーコート剤塗布面(内面側)とをラミネーターのラミネーション部で貼合せ、下記層構成の多層フィルム試料を得た。
多層フィルム試料の層構成:ASコートPET(25μm)/AC剤・PE(13μm)/帯電防止剤入りEVA系イージーピール樹脂(17μm)。
【0047】
この試料フィルムを、その製作の4時間後に、該フィルムの帯電防止剤含有熱可塑性樹脂面(帯電防止剤入りEVA樹脂層面)に35w・分/mの放電処理密度でコロナ放電処理を施した。
更に、処理密度70w・分/mで同様にコロナ放電処理した試料フィルムも作製した。
【0048】
「多層フィルム試料の耐電防止性能評価」
フィルム試料を、23℃、相対湿度(RH)50%(条件−1)、及び、40℃、オーブン中(但し、測定はオーブンから取出した試料を条件−1の雰囲気に24時間放置後に行った。)(条件−2)の各条件下に保管し、それぞれの試料について、測定器(ハイレスターUP(三菱化学製))により、表面固有抵抗値の経時変化を測定した。
【0049】
[実施例1]
上記層構成(ASコートPET(25μm)/AC剤・PE(13μm)/帯電防止剤入りEVA系樹脂(17μm))の35w・分/mコロナ放電処理材に於ける23℃(条件−1)、40℃(条件−2)各保管品試料についてその帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層面の表面固有抵抗値を経時的に測定した。
両保管品試料共に良好な実用レベルの値が得られた。
結果を表1に示す。
【0050】
[実施例2]
測定試料として、70w・分/mコロナ放電処理試料を用いた以外は実施例1と同様に帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層面の表面固有抵抗値を測定した。
実施例1と同様、両保管品試料共に良好な実用レベルの値が得られた。
結果を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層面にコロナ放電処理を施さなかった以外は実施例1と同じ層構成に作製し、同様に保管した試料フィルムについて、その熱接着剤層面の表面固有抵抗値を測定した。
23℃(条件−1)品の初期と40℃(条件−2)品の7日後以降は表面固有抵抗値が高すぎて測定できなかった。
結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から、本発明の多層フィルムは、比較例品に比べ、帯電防止性、特に、その経時持続性に顕著に優れることが判る。
{帯電防止剤含有熱可塑性樹脂層の少なくとも一面にコロナ処理を施した本願発明のフィルムが、従来品に比べて帯電防止性の経時的安定性に顕著に優れる理由は未だ解明されたわけではないが、コロナ処理により、該層中に練込まれた帯電防止剤が経時的に滲出拡散し熱接着剤層のキャリアテープと接する面からブリードアウトして散失するのが抑制されるためではないかと推定される。}

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂の単層フィルムまたは帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層を有する多層フィルムにおいて、帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の少なくとも片面に極性基付与処理が施されていることを特徴とする熱可塑性樹脂の単層又は多層フィルム。
【請求項2】
極性基付与処理がコロナ放電処理である請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
多層フィルムが外層フィルム層を有し、且つ、前記帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層は、その外層フィルム側と反対側の面に極性基付与処理が施されている請求項1又は2記載のフィルム。
【請求項4】
多層フィルムが外層フィルム層と帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層との間に中間層を更に有し、前記帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層の中間層と接する側の反対側の面に極性基付与処理が施されている請求項3記載のフィルム。
【請求項5】
帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層が熱接着性樹脂層である請求項1〜4記載のフィルム。
【請求項6】
帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層が帯電防止剤を含有するエチレン・酢酸ビニル共重合体組成物からなる層である請求項1〜5の何れかに記載のフィルム。
【請求項7】
外層フィルム層がポリエステル樹脂からなる請求項3〜6の何れかに記載のフィルム。
【請求項8】
中間層がエチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒重合ポリエチレンから選ばれた少なくとも1種からなる請求項4〜7の何れかに記載のフィルム。
【請求項9】
包装用材料として用いられる請求項1〜8の何れかに記載のフィルム。
【請求項10】
キャリアテープ用カバーテープとして用いられ、前記帯電防止剤を含有する熱可塑性樹脂層のキャリアテープと接する面に極性基付与処理が施されている請求項1〜8の何れかに記載のフィルム。

【公開番号】特開2009−19063(P2009−19063A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174300(P2007−174300)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】