説明

熱可塑性樹脂層により囲まれた炭素ナノチューブマイクロカプセルを含む伝導性高分子充填剤及びその製造方法

本発明は、伝導性プラスチック製造のための伝導性高分子充填剤及びその製造方法に関し、より詳しくは、炭素ナノチューブ(CNT;carbon nanotube)を含み、かつ熱可塑性樹脂層で炭素ナノチューブを囲んだマイクロカプセル形態の炭素ナノチューブを含む伝導性高分子充填剤及びその製造方法、上記伝導性高分子充填剤を含む伝導性熱可塑性樹脂に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性プラスチック製造のための伝導性高分子充填剤及びその製造方法に関し、より詳しくは、炭素ナノチューブ(CNT;carbon nanotube)を含み、かつ熱可塑性樹脂層で炭素ナノチューブを囲んだマイクロカプセル形態の炭素ナノチューブを含む伝導性高分子充填剤及びその製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は上記伝導性高分子充填剤を含む伝導性熱可塑性樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高分子は成形が容易であり、耐薬品性に優れ、また軽いので、自動車部品、電気電子部品、建築材料、及び舗装材料等、多様な分野に適用されている。しかしながら、絶縁性を有する基本特性によって摩擦などにより生じた静電気が発生した後に、放電、吸引、反撥力などにより問題が発生する。ここに、発生した静電気を除去したり中和させる静電気の分散または放射特性が必要となる。ESD(electrostatic discharge)高分子は多様な方法により高分子としての基本的な特性を維持しながら静電気放射特性を有する電気伝導性高分子素材である。ESD高分子は、104−10Ω/sq位の表面抵抗を有しているので、摩擦時に発生する静電気を放射する静電気分散特性を有している。
【0004】
一般に、高分子に静電気防止特性を与える方法には、
1.低分子量帯電防止剤を樹脂に添加したり、表面にコーティングして生産する方式;
2.炭素系、金属、粒子、及び静電分散高分子などの伝導性充填剤を高分子の内に分散させる方式;
3.材料の分子構造を伝導性高分子にする方式などがある。
【0005】
また、帯電防止及び静電分散のためには、最終の製品の表面抵抗値の要求水準に従って帯電防止だけでなく、静電分散機能まで遂行できるように、必要によって炭素系及び高分子型伝導性充填剤を使用する方式もある。
【0006】
以上の方式のうち、伝導性高分子を使用する方式は価格競争力が落ちて、樹脂の安全性の問題がある。
【0007】
帯電防止剤を樹脂に添加またはコーティングする方式の例には、次のようなものがある。大韓民国公開特許第1997−0006325号には、熱可塑性樹脂に帯電防止剤を樹脂表面に塗布した後、乾燥した後に製造する方法が提示されているが、時間が経つによって、添加剤が表面へ移動して製品に転移される問題点が発生し、強伸度等において、樹脂の物性の低下をもたらし、また帯電防止性及びその持続性の不充分などの欠点がある。大韓民国公開特許第1998−0068341号には芳香族ポリエーテルスルホン樹脂とポリカーボネート樹脂にカーボンファイバ(fiber)、タルク、ガラスファイバを含有させて、電気伝導性、寸法安定性、機械的強度、耐熱性、及び加工性を向上させた熱可塑性樹脂の製造方法が提示されているが、カーボンファイバとタルクなどを樹脂の30%以上使用して伝導性を表したが、充填剤の使用量が多くて、他の物性の低下が発生する問題点がある。
【0008】
伝導性充填剤を使用する方式と関連しては、伝導性を有する充填剤のうち、カーボンブラック、炭素繊維が最も広く用いられているが、性能面で満足できないという問題点がある。最近には伝導性の性能面で炭素ナノチューブ素材が充填材として脚光を浴びているが、分散技術に困難性があり、分散されたとしても炭素ナノチューブ粒子が互いに固まろうとする性質が強くて、樹脂の内での均一な分散性を維持することが非常に困難であるという問題点と、マトリックス樹脂と炭素ナノチューブとの間の付着力の不足によって静電特性の性能が十分に発現できないという問題点がある。
【0009】
このような問題点を解決するために、今まで炭素ナノチューブの化学的変形と分散に関する多い論文と特許が発表または公開されてきた。炭素ナノチューブの分散のために単純に物理的処理のために分散を高めることができるという研究論文だけでなく、超音波(ultrasonication)、界面活性剤を用いて炭素ナノチューブ分散液を製造する方法が提示されているが、1つの段階だけでは十分に分散されず、分散安定性もよくないという限界を露出した。特に、このような方法は他の添加剤が添加される場合、分散系が乱れて炭素ナノチューブが互いに固まる傾向があり、このようなものが樹脂との混合時、均一な分散性を表されなくて、電気的な特性及び物理的な特性を低下させる問題点を有している。
【0010】
一方、伝導性充填剤として炭素ナノチューブを使用した特許の例には、次のようなものがある。
【0011】
炭素ナノチューブを伝導性充填剤に使用した例として、大韓民国公開特許第2010−0058342号には熱可塑性樹脂100重量部に対し、表面改質された炭素ナノチューブ0.1〜5重量部及び上記熱可塑性樹脂100重量部に対し、炭素化合物1〜20重量部を含む伝導性樹脂組成物が提示されているが、前述したように、樹脂の内に均一な分散が難しくて、静電特性の性能が十分に発現できないという問題点がある。
【0012】
大韓民国公開特許公報第2002−0095273号では、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルピロリドン、N−メチルピロリドン、及び炭素ナノチューブからなる電磁波遮蔽用コーティング剤及びその製造方法を提示しているが、適用分野が限定されているという問題点があり、大韓民国公開特許第2005−0097711号では、カルボキシル基、シアン基、アミン基、ヒドロキシ基、窒酸基、チオシアン基、チオ硫酸基、及びビニル基からなる群から選択された1種以上の作用基を有する炭素ナノチューブを作って、水分散剤を製造する非常に複雑な方法を提示している。大韓民国公開特許第2008−0015532号では、炭素ナノチューブに分散剤及びPVAを添加して安定した炭素ナノチューブ分散液を製造し、上記分散液をコーティングする方法により伝導性高分子フィルムを製造している。
【0013】
その中で、本発明は樹脂の内に伝導性を有する炭素ナノチューブ単独または炭素ナノチューブとナノ化された金属粉末を分散させて製品に静電特性を与えるために、炭素ナノチューブを樹脂で囲んでマイクロカプセル化した形態に製造した後、マトリックスとなる熱可塑性樹脂と均質に混合できるようにした、新たな形態の炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤及びその製造方法を提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】大韓民国公開特許第1997−0006325号
【特許文献2】大韓民国公開特許第1998−0068341号
【特許文献3】大韓民国公開特許第2010−0058342号
【特許文献4】大韓民国公開特許第2002−0095273号
【特許文献5】大韓民国公開特許第2005−0097711号
【特許文献6】大韓民国公開特許第2008−0015532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、静電気分散特性を有する熱可塑性樹脂を製造するに当たって、炭素ナノチューブを伝導性高分子充填剤として使用しようとする試みの下もとで、炭素ナノチューブをマトリックスとなる熱可塑性樹脂の内で均質に混合できるように炭素ナノチューブを熱可塑性樹脂とよく混合できる樹脂で囲んだマイクロカプセル化した新たな炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤を提供することをその目的とする。
【0016】
ひいては、本発明はこのような炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤を含む伝導性の熱可塑性樹脂を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記の目的を解決するために、次のような構造の新たな炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤を提供する。
【0018】
本発明は炭素ナノチューブ及び上記炭素ナノチューブを囲んでいる熱可塑性樹脂層を含む炭素ナノチューブマイクロカプセルを含む伝導性高分子充填剤を提供する。
【0019】
上記伝導性高分子充填剤において、上記熱可塑性樹脂層は特別に制限されるものではなく、熱可塑性樹脂の内に混合及び分散がよくできる熱可塑性樹脂であれば充分であり、具体的には、付加重合できるエチレン基を含む単量体の重合により生成される熱可塑性の単独重合体または共重合体を含む。
【0020】
上記伝導性高分子充填剤はナノ金属粒子をさらに含むことができ、ナノ金属粒子は上記マイクロカプセルの内部の上記集合体に付着されるか、マイクロカプセルの外部の樹脂層の表面に付着されていることを特徴とする。
【0021】
上記伝導性高分子充填剤において、上記炭素ナノチューブマイクロカプセルは水溶性高分子をさらに含むこともでき、含む場合、炭素ナノチューブと合体されて炭素ナノチューブ−水溶性高分子集合体を形成したままに含まれることができ、水溶性高分子樹脂層に混合されていることもでき、一部は炭素ナノチューブと合体され、かつ残りが樹脂層に含まれていることもできる。
【0022】
本発明は、上記伝導性高分子充填剤を製造する方法として、
1)炭素ナノチューブ1重量部と0.1〜2重量部の水溶性高分子を乳化剤0.1〜20重量部と共に水50〜1000重量部に混合した後、超音波で分散させて炭素ナノチューブの水分散液を得る超音波分散ステップ;及び
2)炭素ナノチューブ1重量部に対し、付加重合できるエチレン基を含む1種類以上の単量体10〜1000重量部を重合反応させて、炭素ナノチューブを上記単量体から生成される熱可塑性樹脂層で囲んでマイクロカプセル化する重合ステップを含む炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤の製造方法を提供する。
【0023】
延いては、本発明は熱可塑性樹脂100重量部に対し、上記伝導性高分子充填剤0.1〜30重量部を含む伝導性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に従う炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤は、伝導性熱可塑性樹脂の内で均一に分散され、また炭素ナノチューブとマトリックス熱可塑性樹脂との間の付着力が低いという問題を解決することによって、少ない量の炭素ナノチューブを使用しても優れる静電特性を表すことができるようにする。炭素ナノチューブ自体が高価であるので、少ない量を使用して優れる静電気分散特性を表すことができれば、経済的に非常に有利である。
【0025】
本発明に従う炭素ナノチューブマイクロカプセルを含む伝導性高分子充填剤の製造方法は、水溶性高分子を使用することによって、樹脂層を形成する重合ステップで、分散された炭素ナノチューブがまた固まって沈殿しないように、分散状態をそのまま維持するようにすることで、炭素ナノチューブを樹脂で囲むマイクロカプセル化を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明は、炭素ナノチューブ及び上記炭素ナノチューブを囲んでいる熱可塑性樹脂層を含む炭素ナノチューブマイクロカプセルを含む伝導性高分子充填剤を提供する。
【0028】
本発明において、上記炭素ナノチューブマイクロカプセルとは、炭素ナノチューブを含有しながら炭素ナノチューブが樹脂層によりカプセル化されているマイクロ大きさ水準の粒子という意味として使われた用語である。本発明に従うマイクロカプセルのサイズは0.1〜1000μm範囲にあるが、平均的には1〜500μm範囲でおさまる。但し、そのサイズは製造時の条件によって流動的である。
【0029】
上記伝導性高分子充填剤において、上記熱可塑性樹脂層は特別に制限されるものではなく、熱可塑性樹脂の内に混合及び分散がよくできる樹脂であれば充分であり、好ましくは、付加重合できるエチレン基を含む単量体の重合により生成される熱可塑性の単独重合体または共重合体を含む。
【0030】
上記伝導性高分子充填剤はナノ金属粒子をさらに含むことができ、ナノ金属粒子は上記マイクロカプセルの内部の上記集合体に付着されるか、マイクロカプセルの外部の樹脂層の表面に付着されていることを特徴とする。
【0031】
上記伝導性高分子充填剤において、上記炭素ナノチューブマイクロカプセルは水溶性高分子をさらに含むこともでき、含む場合、炭素ナノチューブと合体されて炭素ナノチューブ−水溶性高分子集合体を形成したまま含まれることができ、水溶性高分子樹脂層に混合されていることもでき、一部は炭素ナノチューブと合体されており、かつ残りが樹脂層に含まれていることもできる。
【0032】
以下、上記伝導性高分子充填剤の構成成分を詳細に説明する。
【0033】
1.炭素ナノチューブ
上記炭素ナノチューブは全ての形態の炭素ナノチューブを含むが、単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT;single−walled carbon nanotube)、二重壁炭素ナノチューブ(DWCNT;double−walled carbon nanotube)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT;multi−walled carbon nanotube)、またはロープ型炭素ナノチューブ(roped carbon nonotube)を全て含む。本発明に従う炭素ナノチューブは、上記各類型の炭素ナノチューブが2種以上混合されたものも含む。本発明に従う具体的な実施形態では、多重壁炭素ナノチューブを含んでいるが、これに制限されるものでなく、知られた全ての種類の炭素ナノチューブを使用することができる。
【0034】
2.熱可塑性樹脂層
本発明に従う熱可塑性樹脂層は、炭素ナノチューブを囲むことによって、炭素ナノチューブをマイクロカプセル化する。本発明に従う樹脂層は、伝導性熱可塑性樹脂を製造するに当たって、マトリックスとなる熱可塑性樹脂の内によく分散できる同じ種類の熱可塑性樹脂からなるものであれば、いずれも使用可能である。
【0035】
熱可塑性樹脂であれば可能であるが、好ましくは、付加重合できるビニル基を含む単量体の付加重合により生成される熱可塑性の単独重合体または共重合体を含む。本発明に従う具体的な一例として、上記樹脂層は、エチレン系、ビニル系、アクリル系、及びメタクリル系から選択される1種類以上の単量体から重合反応により形成される単独重合体または共重合体を含む。上記共重合体は、交互、不規則、ブロック、グラフト共重合体などのように、全ての形態の共重合体を含む。
【0036】
上記伝導性高分子充填剤の内で上記熱可塑性樹脂層は炭素ナノチューブを囲んでマイクロカプセルを形成する程度の重量割合を占めるが、単に本発明の具体的な実施形態によれば、マイクロカプセル集合体において、平均的に炭素ナノチューブ1重量部に対し、10〜1000重量部の割合で含まれる。
【0037】
10重量部未満となる場合、炭素ナノチューブを囲んだ樹脂層が足りなくて手マイクロカプセル状態が不完全になって、伝導性熱可塑性樹脂の製造時に均質な分散がよくなされないようになり、1000重量部以上では伝導性高分子充填剤において、炭素ナノチューブの含量があまり少なくなって、伝導性熱可塑性樹脂の製造時にあまり多い充填剤が要求されるところ、混合も困難であるだけでなく、所望の熱可塑性樹脂の物性を合せることも困難になる問題点がある。また、樹脂層を重合反応のような過程を通じて製造する時には、1000重量部を超過して樹脂層を形成させることも製造工程上、困難性がある。
【0038】
上記エチレン系単量体は、エチレン、プロピレン、1,3−ブタジエン、イソブチレン(isobutylene)、イソプレン(isoprene)、スチレン(styrene)、α−メチルスチレン(α−methyl styrene)などを含み、上記ビニル系単量体には、ビニルクロライド(vinyl chloride)、ビニリデンクロライド(vinylidene chloride)、テトラフルオロエチレンなどのハロゲン化ビニル、ビニルアセテート(vinyl acetate)を含むビニルC〜C10アルキレート(CHCH−OC(O)R、RはC〜C10アルキル)、またはビニルC〜C10アルキルエーテル(CH2CH−OR、RはC〜C10アルキル)、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールなどがある。
【0039】
上記アクリル系単量体の具体的な例には、アクリル酸(acrylic acid)、アクリロニトリル(acrylonitrile)、アクリルアミド(acryl amide)、またはC〜C10アルキルアクリレート(C〜C10alkyl acrylate)などがある。
【0040】
上記メタクリル系単量体の具体的な例には、メタクリル酸(methacrylic acid)、メタクリロニトリル(methacrylonitrile)、メタクリルアミド(methacryl amide)、またはC〜C10アルキルメタクリレート(C〜C10alkyl methacrylate)などがある。
【0041】
上記C〜C10アルキルには、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、または2−エチルヘキシルなどがある。
【0042】
3.ナノ金属粒子
本発明に従う伝導性高分子充填剤は、炭素ナノチューブ100重量部に対し、ナノ金属粒子を0.001〜10重量部、好ましくは、0.005〜1重量部を含むことができる。ナノ金属粒子のサイズはナノサイズの範囲であれば充分であり、具体的な一例には、10〜250nm範囲が挙げられる。上記ナノ金属粒子は、炭素ナノチューブマイクロカプセルの内にどこでも位置することができ、具体的に例を挙げれば、樹脂層の内部や樹脂層の外部の表面に主に位置する。ナノ金属粒子は静電気分散特性を向上させるために、補助的または選択的に含まれる。したがって、その含量が特別に制限されるものではないが、製造過程上の限界によって0.001〜10重量部が含まれるようにすることが好ましい。
【0043】
金属ナノ粒子は、パウダーまたはペーストとして用意する。
【0044】
金属には、銀、ニッケル、またはタングステンなどの電気伝導性に優れるいずれか1つまたは2つ以上を使用することができる。
【0045】
ナノ金属粒子は、製造過程において、添加時点によってマイクロカプセルの樹脂層の内部の炭素ナノチューブと水溶性ブロック共重合体との結合体に付着されていることもでき、または樹脂層の外郭の表面に付着されていることもできる。
【0046】
即ち、樹脂層の重合ステップの以前に添加される場合には、樹脂層の内部で、重合ステップの以後に添加される場合には、樹脂層の外郭の表面に付着されていることもできる。これについては製造方法に対する説明で後述する。
【0047】
4.水溶性高分子
上記水溶性高分子は水溶性であれば足りる。水溶性高分子の役割及び存在の理由については、製造方法に対する説明で後述する。
【0048】
水溶性高分子は、炭素ナノチューブマイクロカプセルに含まれる。これは、個々の炭素ナノチューブマイクロカプセルは、水溶性高分子を含むことも、含まないこともできるが、炭素ナノチューブマイクロカプセルの集合体は平均的に水溶性高分子を含むようになる。
【0049】
上記炭素ナノチューブマイクロカプセルの集合体で構成された伝導性高分子充填剤の内で上記水溶性ブロック共重合体の重量比は特別に制限されるものではないが、本発明の具体的な実施形態によれば、炭素ナノチューブ1重量部に対し、0.1〜2重量部の割合で含まれる。本数値範囲の意味については後述する。
【0050】
水溶性高分子は水に溶けることができる高分子を意味し、上記水溶性高分子は親水性鎖の単独重合体または共重合体であり、親水性鎖と疏水性鎖を共に含む両親性の共重合体でありうる。
【0051】
上記水溶性高分子は、親水性鎖の反復単位が、カルボキシル、カルボキシル塩、アミン、アミン塩、燐酸、燐酸塩、硫酸、硫酸塩、アルコール、チオール、エステル、アマイド、エーテル、ケトン、アルデヒドの官能基を含む。
【0052】
本発明に従う上記水溶性高分子は、親水性鎖の反復単位が、好ましくは、カルボキシル、カルボキシル酸の金属塩、エーテル基から選択される官能基を含む。本発明に従う上記水溶性高分子は、上記官能基を有する共重合体の内で疏水性鎖部分を含むことができる。即ち、上記官能基を含む反復単位の親水性鎖と疏水性鎖を共に有する共重合体でありうる。上記共重合体は、交互、不規則、ブロック、グラフト共重合体を全て含むが、好ましくは、ブロック共重合体を含む。本発明に従う上記疏水性鎖部分は共重合体をなす親水性鎖部分に対して相対的に疏水性であれば足りる。したがって、PE(polyethylene)、PP(polypropylene)、PS(polystyrene)、PVC(polyvinyl chloride)、PA(Poly acrylate)、PMA(Poly methacrylate)などの完全疏水性重合体だけでなく、PPO(polypropylene oxide)、ポリアクリレートまたはその誘導体、ポリメタクリレートまたはその誘導体、ポリビニルアセテートなども含むことができる。
【0053】
具体的に例を挙げれば、親水性官能基を含む反復単位体の単独重合体として、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、PEO(polyethylene oxide)、PPO(polypropylene oxide)、PAA(polyacrylic acid)、またはその塩などを含む。また、親水性官能基を含む反復単位体の共重合体として、poly(ethylene oxide−b−propylene oxide)(PEO−b−PPO)を含む。poly(ethylene oxide−b−propylene oxide)(PEO−b−PPO)において、PPOはPEOに対して相対的に疏水性であって、疏水性鎖としての役割を遂行する。一方、親水性官能基を含む反復単位体の親水性鎖と疏水性鎖の共重合体の例としては、polystyrene−b−polyacrylic acid(PS−b−PAA)などを含む。poly(ethylene oxide−b−propylene oxide)の場合、EOとPOとの割合が0.15:1、0.33:1、0.8:1などの多様な割合で製造された商業的な共重合体を使用することができる。両親性共重合体において、親水性鎖と疏水性鎖との割合は特別に制限されるものではないが、具体的な例を挙げれば、親水性:疏水性の割合が0.5:1〜10:1の割合を使用することができる。
【0054】
親水性鎖と疏水性鎖を重合体分子の内に共に含む両親性のブロック共重合体からなる水溶性高分子を使用する場合には、分散安定性がより向上できる長所がありうる。即ち、疏水性鎖が炭素ナノチューブで、親水性鎖が水に向かって露出する一種のマイセルと類似の構造を形成することができる。
【0055】
上記水溶性高分子は、分子量が1000〜200000、好ましくは1000〜100000の間のものが適当である。
【0056】
以下、本発明に従う炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤の製造方法を詳細に説明する。
本発明に従う炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤は、
1)炭素ナノチューブ1重量部と0.1〜2重量部の水溶性高分子を乳化剤0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部と共に水、好ましくは精製水や純水50〜1000重量部に混合した後、超音波(sonicater)で分散させて炭素ナノチューブと水溶性ブロック共重合体が結合された炭素ナノチューブ−水溶性ブロック共重合体結合体の分散溶液を得る超音波分散ステップ;
2)炭素ナノチューブ1重量部に対し、熱可塑性樹脂単量体10〜1000重量部を重合反応させて上記炭素ナノチューブを上記単量体から生成される熱可塑性樹脂層で囲んでマイクロカプセル化する重合ステップを含む製造方法により製造できる。
【0057】
延いては、上記製造方法は、上記重合ステップに続いて、
生成されたマイクロカプセルを凝集させてフロック(flock)を形成する凝集ステップをさらに含むことができる。
【0058】
延いては、上記製造方法は上記凝集ステップに続いて、
上記フロックを重合反応により生成された樹脂のガラス転移点(glass transition temperature;Tg)以上に加熱した後、冷却して粉砕する粉砕ステップをさらに含むことができる。
【0059】
以下、上記の製造方法を詳細に説明する。
【0060】
1.超音波分散ステップ
超音波分散ステップで使われる水溶性高分子の役割は、次の通りである。
【0061】
本発明は、炭素ナノチューブが分散された状態で重合反応により炭素ナノチューブを樹脂層で囲んで炭素ナノチューブマイクロカプセルを作る製造方法を提示しようとする。一方、炭素ナノチューブを溶媒の内に分散させる方法と関連しては超音波分散法が既に知られている。しかしながら、乳化剤と一緒に混合して超音波分散された炭素ナノチューブは、また凝集しようとする性向が強い。
【0062】
したがって、乳化剤だけで炭素ナノチューブを超音波分散させた後、乳化重合反応を通じて炭素ナノチューブを熱可塑性樹脂層で囲もうと試みる場合、炭素ナノチューブの再凝集及び沈殿によって所望の炭素ナノチューブのマイクロカプセルを得ることができない。
【0063】
したがって、このような炭素ナノチューブの再凝集を通じた沈殿を防ぎ、続く重合ステップを通じて炭素ナノチューブを樹脂層で囲んだ炭素ナノチューブマイクロカプセルを製造するためには、分散された炭素ナノチューブの分散状態を持続的に維持させることが必要である。
【0064】
本発明に従う炭素ナノチューブマイクロカプセルを製造するに当たって、1つの方法により乳化重合反応を通じて炭素ナノチューブを熱可塑性樹脂層で囲むことができるが、そのためには炭素ナノチューブの分散状態を維持させることができるように水溶性高分子が炭素ナノチューブの間で凝集されることを防ぐ必要がある。
【0065】
一方、水溶性高分子として疏水性鎖部分を含む両親性の水溶性高分子を使用する場合に、疏水性部分は炭素ナノチューブに、親水性部分は水上に位置して一種のマイセルを形成するようになって分散状態をよりよく維持できるようにする。
【0066】
上記製造方法において、超音波分散ステップで、ナノ金属粒子を共に添加して超音波分散を実施することができる。このようにすることで、ナノ金属粒子が重合ステップを通じて生成されるマイクロカプセルの樹脂層の内部に存在するようになる。勿論、重合過程で樹脂層の中に位置することもできる。ナノ金属粒子は、炭素ナノチューブ100重量部に対し、10nm〜250nmサイズで0.01〜10重量部を添加することが好ましい。金属には、銀、ニッケル、またはタングステンのように、電気伝導性に優れるいずれか1つまたは2つ以上を使用することができる。
【0067】
2.重合ステップ
上記製造方法において、上記重合反応は、懸濁重合(suspension polymerizarion)または乳化重合(emulsion polymerization)などの公知の重合方法により進行させることができる。好ましくは、乳化重合反応条件で実施することができる。
【0068】
重合反応は公知の反応条件で当業者が適切に設計して実施することができる。
【0069】
但し、本発明に従う製造方法の具体的な実施形態によると、次のような条件下で実施することができる。
【0070】
上記重合反応は乳化重合反応のものが好ましく、重合温度は0℃乃至280℃のものが好ましく、40乃至120℃のものがより好ましい。乳化重合を遂行するために、これらの重合に使用できる乳化剤は、特別に限定されるものではなく、従来から知られた各種の乳化剤を使用することができる。例として、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンジンスルホン酸塩、アルキル燐酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩などの音イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩などの陽イオン性界面活性剤;両親性界面活性剤を使用することができる。但し、乳化剤は水分散ステップで使用した乳化剤をそのまま使用し、追加に単量体を供給するための分散液に含めて反応に投入させることができる。
【0071】
具体的な乳化剤の例には、sodium dodecyl sulfate、sodium dodecyl benzene sulfate、polyoxyethylene alkyl ether(alkyl alcohol ethoxylates)、sodium dioctyl sulfosuccinate、polyoxyethylene alkylether sulfate塩、Tweenシリーズ乳化剤であるpolysorbate 20または80、Triton X−100のような乳化剤などがある。勿論、これは商業的な乳化剤の例であり、知られた全ての乳化剤が特別に制限無しで使われることができる。
【0072】
重合反応ステップの前に、超音波で分散された水分散液を必要によって水をさらに添加した後、反応器に移す。反応器の溶液は持続的に撹拌してくれる。
【0073】
重合反応のための単量体の供給は、水に乳化剤と一緒に均質に分散させて反応器に供給する。単量体分散のための乳化剤は、超音波分散ステップで使用した乳化剤と同一な乳化剤を使用することが好ましい。
【0074】
単量体100重量部を水50〜300重量部に乳化剤1〜20重量部に混合後、撹拌させた単量体分散液を反応器に徐々に点滴する。
【0075】
重合反応のためには単量体の添加の後に、重合開始剤を添加して重合反応を開始させるようになる。
【0076】
重合開始剤は水溶性開始剤または油溶性開始剤の単独系またはレドックス系のものを全て使用することができる。水溶性開始剤の具体的な例には、過硫酸塩などの無機開始剤を挙げることができ、油溶性開始剤の具体的な例には、ベンゾイルパーオキサイド、o−クロロ過酸化ベンゾイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、メチルエチルケトパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、またはジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;アゾ系ニトリル化合物、アゾ系非環状アミジン化合物、アゾ系環状アミジン化合物、アゾ系アミド化合物、アゾ系アルキル化合物、またはアゾ系エステル化合物などを挙げることができ、これらのうち、いずれか1種類以上を使用することができる。
【0077】
上記重合開始剤は、単量体100重量部に対し、0.001〜10重量部の割合で使用することが好ましく、0.001〜1重量部の割合で使用することがより好ましい。
【0078】
重合ステップで形成されたマイクロカプセルを凝集させる凝集ステップについて詳細に説明する。
【0079】
凝集ステップでは形成されたマイクロカプセルを公知の濾過、透析、または塩析などの方法を用いて凝集させることができ、好ましくは塩析の方法を用いる。
【0080】
上記塩析方法では凝集剤を添加してフロックを形成するようになるが、上記凝集剤には、1価乃至3価の金属塩または硫酸やアセト酸などの酸を使用する。上記金属塩は、具体的に、CaCl、MgSO、またはAl(SOなどが主に使われる。凝集が起きたマイクロカプセルは遠心分離して収得する。一方、凝集ステップを経て得たマイクロカプセルのフロックは乾燥により水分を除去することが好ましい。
【0081】
一方、また上記の凝集剤の添加時、ナノ金属粒子を共に添加することができる。このようにすることで、マイクロカプセルの樹脂層の外郭の表面にナノ金属粒子が付着できる。
【0082】
ナノ金属粒子については、先の超音波分散ステップで説明した通りである。
【0083】
即ち、ナノ金属粒子を超音波分散ステップで予め添加したり、凝集剤を添加して凝集するステップで添加して、ナノ金属粒子がさらに含まれた本発明に従う炭素ナノチューブ含有伝導性高分子充填剤を製造することができる。
【0084】
凝集して水分を除去したマイクロカプセルが凝集されたフロックは、加熱して粉砕するステップを経て所望のサイズに製品化することが可能である。
【0085】
上記粉砕ステップは、公知の粉砕工程を利用することができ、ナイフカッティング(knife cutting)またはミーリングなどの方法を使用することができる。上記粉砕ステップで得られる製品の平均粒径は0.05〜2.00mmになるように調節することが好ましく、0.10〜1.00mmのものがより好ましい。
【0086】
このような製造方法により得られる伝導性高分子充填剤は、必要によってその量を異にして熱可塑性樹脂に含めて押出して伝導性熱可塑性樹脂の生産に使用することができる。
【0087】
本発明に従う伝導性高分子充填剤の他の難燃性添加剤のようなその他の特性を得るための添加剤と一緒に添加されて使用できることは自明である。
【0088】
熱可塑性樹脂100重量部に本発明に従う伝導性高分子充填剤0.1乃至30重量部を混ぜた伝導性熱可塑性樹脂組成物に、その他の押出工程のための添加剤を混ぜた後、公知の押出工程により伝導性熱可塑性樹脂を製造することができる。本発明に従う伝導性高分子充填剤を熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5〜2重量部を使用する場合、充分な表面抵抗値を得ることができ、10〜30重量部の使用時はマスターバッチ(master batch)概念として使用することもできる。
【0089】
上記熱可塑性樹脂は、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリオキサジアゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンジミダゾール樹脂、ポリピリジン樹脂、ポリトリアゾール樹脂、ポリピロリジン樹脂、ポリジベンゾフラン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリホスファゼン樹脂、及び液晶重合体樹脂からなる群から選択された1つ以上の樹脂または樹脂混合物、または該当樹脂単量体の共重合を通じて得た共重合体を含む。
【0090】
本発明は、上記の伝導性プラスチック添加組成物の製造方法により製造された伝導性プラスチック添加組成物を提供する。
【0091】
以下、本発明を実施形態により説明する。本実施形態は、本発明の理解のために提示するものであり、本実施形態により本発明の範囲が縮小解釈されてはならない。
【0092】
[実施形態1]
純水100gに水溶性ブロック共重合体としてエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドから共重合された[poly(ethylene oxide−b−propylene oxide)ratio 0.15:1]1gをビーカーに入れた後、ホモジナイザーで約10分撹拌し、この溶液に購入した多重壁炭素ナノチューブ(韓化ナノテックの商業用製品であるTM−100)1gと4gの乳化剤(sodium dodecyl benzene sulfate;東南合成のEU−SA210L)を入れて、超音波分散を約2時間実施する。
【0093】
超音波を用いて分散を実施した分散溶液を重合反応のための反応器に入れて、純水400gを追加に入れた後、撹拌させる。この際、温度は55℃、撹拌速度は300rpmに固定させた。以後,スチレン、アクリロニトリル単量体を各々80g及び20g、乳化剤(sodium dodecyl benzene sulfate)8g、純水100gの混合溶液をホモジナイザーで約10分撹拌後、炭素ナノチューブを含む分散溶液が入っている反応器に徐々に点滴して投入する。約30〜60分撹拌後、上記反応器に重合開始剤であるベンゾイルパーオキサイド1gを純水40gに希薄させて投入することによって、重合反応を開始させる。この際、反応温度を70℃に設定し、重合反応を開始する。スチレン及びアクリロニトリル単量体が水溶性ブロック共重合体によって分散された炭素ナノチューブ粒子を囲んで重合反応が起こって、マイクロカプセルを形成する。上記マイクロカプセルが形成されたエマルジョン液に硫酸マグネシウム(MgSO)を加えて凝集させた後、反応温度を100℃に上昇させながら高速回転により凝集された粒がある程度の強度を維持するように形成させる。以後、冷却し、純水で数回洗浄した後、乾燥してマイクロカプセル形態の伝導性高分子充填剤が凝集されて形成された伝導性高分子充填剤のフロックを得る。フロック100gをポリカーボネート(Polycarbonate)樹脂1000gとコンパウンディングして押出器を用いて伝導性熱可塑性樹脂を製造した。
【0094】
[実施形態2]
実施形態1において、炭素ナノチューブの分散時、炭素ナノチューブ1gに対し、平均粒子サイズ20nmの銀(Ag)パウダー0.01gを入れて超音波分散を実施することを除いては、実施形態1と同一な方法により伝導性熱可塑性樹脂を製造した。乳化剤には、SDS(sodium dodecyl sulfate)を使用した。
【0095】
[実施形態3]
実施形態1において、スチレン及びアクリロニトリル単量体の代わりにメチルメタクリレート100g、ブチルメタクリレート50gを混合して重合することを除いては、実施形態1と同一な方法により伝導性熱可塑性樹脂を製造した。乳化剤には、triton X−100を使用した。
【0096】
[実施形態4]
実施形態1において、重合完了後、マイクロカプセルが形成されたエマルジョン液に凝集剤である硫酸マグネシウム(MgSO)を加えて、凝集時、平均粒子サイズ20nmの銀(Ag)パウダー0.01gを凝集剤に含めて凝集することを除いては、実施形態1と同一な方法により伝導性熱可塑性樹脂を製造した。乳化剤には、M−LE1050(lauryl alcohol ethoylate;サムヨル物産製品)を使用した。
【0097】
[実施形態5]
実施形態1において、スチレン及びアクリロニトリルを各々40g、10g使用することを除いては、実施形態1と同一な方法により伝導性熱可塑性樹脂を製造した。乳化剤には、EU−D0113(sodium dioctyl sulfosuccinate;東南合成製品)を使用した。
【0098】
[実施形態6]
実施形態1において、水溶性高分子としてPEO(polyethylene oxide)を使用することを除いては、実施形態1と同一な方法により伝導性熱可塑性樹脂を製造した。乳化剤には、EU−S75D(polyoxyethylene alkyl ether sulate塩;東南合成製品)を使用した。
【0099】
[実施形態7]
実施形態1において、水溶性高分子としてPAA(polyacrylic acid)を使用することを除いては、実施形態1と同一な方法により伝導性熱可塑性樹脂を製造した。
【0100】
[実施形態8]
実施形態1において、水溶性高分子としてPS−b−PAA(poly(styrene−b−acrylic acid))を使用することを除いては、実施形態1と同一な方法により伝導性熱可塑性樹脂を製造した。乳化剤には、tween20を使用した。
【0101】
[実施形態9]
実施形態3において、メチルメタクリレート300g、ブチルメタクリレート150gを使用することを除いては、実施形態3と同一な方法により伝導性熱可塑性樹脂を製造した。乳化剤には、tween80を使用した。
【0102】
[比較例1]
上記実施形態1で、全ての過程は同じように進行し、かつ水溶性ブロック共重合体を使用せず、伝導性熱可塑性樹脂を製造しようとした。しかしながら、重合ステップで炭素ナノチューブの分散が維持されず、炭素ナノチューブ同士が固まって沈殿を形成し、炭素ナノチューブを含むマイクロカプセルを得ることに失敗した。結果として、伝導性熱可塑性樹脂が製造できなかった。
【0103】
[比較例2]
ポリカーボネート樹脂1000gに炭素ナノチューブ10gを混合した組成物を押出して伝導性熱可塑性樹脂を製造した。
【0104】
実験例1.炭素ナノチューブマイクロカプセルのSEM写真
実施形態1で製造した炭素ナノチューブマイクロカプセルを分離して乾燥した後、SEM写真を撮影した。
【0105】
SEM写真撮影の結果、マイクロカプセルは球状の粒子として約20μmの平均サイズを有することと確認された。
【0106】
実験例2.伝導性熱可塑性樹脂の表面抵抗測定
上記の実施形態と比較例で得られた伝導性熱可塑性樹脂を直径100mm、厚さ3mmディスク板で射出成形した後、表面抵抗を測定した。
【0107】
その結果は以下の表1の通りである。
伝導性熱可塑性樹脂の製造時の組成割合及び表面抵抗測定値
【0108】
【表1】

【0109】
比較例1の場合には目的した炭素ナノチューブを樹脂で囲んだ形態の炭素ナノチューブ含有のマイクロカプセルが得られなかったので、結果的に、伝導性熱可塑性樹脂が製造できなかったし、したがって、表面抵抗の測定値も得られなかった。
【0110】
実施形態1乃至4の場合には、伝導性熱可塑性樹脂1000gに含まれる炭素ナノチューブの正確な値は分からなかったが、1g未満になることは明らかであった。炭素ナノチューブ1gを同一に使用して100g以上の充填剤を得たためである。
【0111】
したがって、実施形態の場合、炭素ナノチューブを1/10未満に使用しながらも、比較例2に比べて表面抵抗は約10倍(10000倍)向上させる結果が得られた。
【0112】
併せて、ナノ金属粒子を一緒に使用する場合には、約5×10倍向上させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素ナノチューブ及び前記炭素ナノチューブを囲んでいる熱可塑性樹脂層を含む炭素ナノチューブマイクロカプセルを含み、かつ前記マイクロカプセルが凝集されたフロックにより得られたことを特徴とする、伝導性高分子充填剤。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層は、炭素ナノチューブ1重量部に対し、10〜1000重量部の割合で含まれ、付加重合できるエチレン基を含む1種類以上の単量体の重合により生成される熱可塑性の単独重合体または共重合体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子充填剤。
【請求項3】
前記伝導性高分子充填剤は、ナノ金属粒子を炭素ナノチューブ1重量部に対し、0.001〜10重量部の割合でさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子充填剤。
【請求項4】
前記炭素ナノチューブは、単一壁(single−walled)、二重壁(double−walled)、多重壁(multi−walled)、及び多発型(roped)からなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子充填剤。
【請求項5】
前記エチレン基を含む1種類以上の単量体は、エチレン系単量体、ビニル系単量体、アクリル系単量体、及びメタクリル系単量体を含む群から選択される1種類以上の単量体を含み、前記エチレン系単量体は、エチレン、プロピレン、1,3−ブタジエン、イソブチレン(isobutylene)、イソプレン(isoprene)、スチレン(styrene)、及びαーメチルスチレン(α−methyl styrene)からなる群から選択される1つ以上を含み、前記ビニル系単量体は、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、テトラフルオロエチレン、ビニルC〜C10アルキレート(CH2CH−OC(O)R、RはC〜C10アルキル)、ビニルC〜C10アルキルエーテル(CHCH−OR、RはC〜C10アルキル)、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールからなる群から選択される1つ以上を含み、前記アクリル系単量体は、アクリル酸(acrylic acid)、アクリロニトリル(acrylonitrile)、アクリルアミド(acrylamide)、及びC〜C10アルキルアクリレート(C〜C10alkyl acrylate)からなる群から選択される1つ以上を含み、前記メタクリル系単量体は、メタクリル酸(methacrylic acid)、メタクリロニトリル(methacrylonitrile)、メタクリルアミド(methacryl amide)、及びC〜C10アルキルメタクリレート(C〜C10alkyl methacrylate)からなる群から選択される1つ以上を含むことを特徴とする、請求項2に記載の伝導性高分子充填剤。
【請求項6】
前記金属は、銀、ニッケル、及びタングステンからなる群から選択される1つ以上を含むことを特徴とする、請求項3に記載の伝導性高分子充填剤。
【請求項7】
前記伝導性高分子充填剤は、水溶性高分子を炭素ナノチューブ1重量部に対し、0.1〜2重量部さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子充填剤。
【請求項8】
熱可塑性樹脂100重量部に対し、請求項1の伝導性高分子充填剤0.1〜30重量部を含むことを特徴とする、伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂は、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリベンゾキサゾール樹脂、ポリオキサジアゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンジミダゾール樹脂、ポリピリジン樹脂、ポリトリアゾール樹脂、ポリピロリジン樹脂、ポリジベンゾフラン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリホスファゼン樹脂、及び液晶重合体樹脂からなる群から選択された1つ以上の樹脂または樹脂混合物、または該当樹脂単量体の共重合を通じて得た共重合体であることを特徴とする、請求項8に記載の伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
1)炭素ナノチューブ1重量部と0.1〜2重量部の水溶性高分子を乳化剤0.1〜20重量部と一緒に水50〜1000重量部に混合した後、超音波で分散させて炭素ナノチューブの水分散液を得る超音波分散ステップと、
2)炭素ナノチューブ1重量部に対し、付加重合できるエチレン基を含む1種類以上の単量体10〜1000重量部を重合反応させて炭素ナノチューブを前記単量体から生成される熱可塑性樹脂層で囲んでマイクロカプセル化する重合ステップと、
3)生成されたマイクロカプセルを凝集させてフロック(flock)を形成する凝集ステップと、
を含む、請求項1に記載の伝導性高分子充填剤の製造方法。
【請求項11】
前記凝集ステップに続いて、
前記フロックを重合反応により生成された樹脂のガラス転移点(glass transition temperature;Tg)以上に加熱した後、冷却して粉砕する粉砕ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の伝導性高分子充填剤の製造方法。
【請求項12】
前記重合反応は乳化重合反応であることを特徴とする、請求項10に記載伝導性高分子充填剤の製造方法。

【公表番号】特表2013−518176(P2013−518176A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553828(P2012−553828)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【国際出願番号】PCT/KR2011/009606
【国際公開番号】WO2012/099334
【国際公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(512133719)ハンナノテク カンパニー,リミテッド (1)
【Fターム(参考)】