説明

熱可塑性樹脂発泡体

【課題】電飾看板や照明器具、ディスプレイなどのバックライトや照明ボックスの光反射板に好適な、高い反射率と良好な難燃性を兼ね備えた熱可塑性樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、ノンデカブロム系難燃剤(B)、難燃助剤(C)、熱可塑性樹脂(D)からなる樹脂シートを加圧不活性ガス雰囲気中に保持して不活性ガスを含有させる工程と、不活性ガスを含有させた樹脂シートを常圧下で熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱して発泡させる工程からなる製造方法により製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤および難燃助剤を含有し、内部に平均気泡径20μm以下の微細な孔を有する熱可塑性樹脂発泡体に関する。本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、高い光反射率を有するだけでなく、良好な難燃性を有するため、電飾看板や照明器具、ディスプレイなどのバックライトや照明ボックスの光反射板として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来、電飾看板や照明器具、ディスプレイなどのバックライトや照明ボックスに使用される光反射板として、光を反射する合成樹脂製のフィルムまたはシートを立体的な形状に加工した光反射板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
光を反射する合成樹脂製のフィルムまたはシートとしては、内部に微細な気泡または気孔を多数有する熱可塑性樹脂発泡体のフィルムまたはシート(例えば、特許文献2、3参照)や、フィラーを含有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートであって、フィラーを核として多数のボイドが形成されているフィルムまたはシート(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0004】
前者の微細な気泡または気孔を多数有する熱可塑性樹脂発泡体は、溶融状態または固体状態の熱可塑性樹脂に、加圧下で不活性ガスを接触させた後、除圧し、常圧下でその樹脂の軟化温度以上に加熱して発泡させることにより得られる。得られた熱可塑性樹脂発泡体のフィルムまたはシートは、平均気泡径が50μm以下と微細であるため、高い光反射率を有するとともに、厚さを200μm以上とすることが可能であるため、優れた形状保持性を有しており、熱可塑性樹脂発泡体のフィルムまたはシート単独で立体的な形状に加工が可能である。なお、熱可塑性樹脂発泡体のフィルムまたはシートの光反射率は、一般に単位体積あたりの気泡数が多いほど高い値を示す傾向がある。よって、気泡径を小さくすればするほど高い光反射率を達成でき、フィルムまたはシートを薄型化することも可能となるため、より微細な気泡または気孔を多数有する熱可塑性樹脂発泡体が求められている。
【0005】
一方、後者のフィラーを含有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートは、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどのフィラーを含有する未延伸フィルムまたはシートを成形し、この未延伸フィルムまたはシートを延伸することにより、フィラーを核として多数のボイドを形成させることにより得られる。しかしながら、延伸処理を施すため、得られたフィルムまたはシートの厚さが200μm未満と薄くなり、フィルムまたはシート単独では形状保持性を有さないとともに、フィルムまたはシートの背面へ漏洩する光も多くなる。よって、フィルムまたはシートの背面に十分な強度と遮光性を有する板を配置して用いられる。
【0006】
ところで、熱可塑性ポリエステル系樹脂に、エラストマーが混合されてなる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体が知られている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、特許文献5には、ポリエステル系樹脂にエラストマーを混合することで、耐衝撃性が向上する旨が記載されているにすぎず、得られる発泡体の気泡径については何ら記載も示唆もない。特許文献5に記載されている押出発泡法では、気泡の微細化および均一分散化を達成することは困難であり、実際に、ポリエステル系樹脂にエラストマーを混合し、押出発泡して作製したシートは、気泡径が大きく、この押出発泡シートで光反射板を作っても、光反射率が低いため、光反射板としての十分な機能を有していなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−122863号公報
【特許文献2】特開平6−344457号公報
【特許文献3】WO97/01117号公報
【特許文献4】特開平4−296819号公報
【特許文献5】特開平11−49883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、省電力化が求められており、より高い光反射率を有する樹脂のフィルムまたはシートが要求されている。特に、電飾看板やディスプレイの分野では、省スペース化のニーズが高まっており、光を反射する樹脂のフィルムまたはシートの薄型化や難燃化が要求されている。
【0009】
一方、特許文献2には、樹脂本来の特性を損なわない範囲で、樹脂に各種添加剤を配合してよい旨が記載されているが、添加剤の種類やその添加量によって、発泡特性が大きく変わるため、適切な添加剤を選定する必要がある。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、適切な添加剤を選定することにより、高い光反射率と形状保持性を兼ね備え、さらに優れた難燃性を有する熱可塑性樹脂発泡体を得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂(A)に、ノンデカブロム系難燃剤(B)、難燃助剤(C)、および、熱可塑性樹脂(A)に対して何らかの相互作用(極性を有する、水素結合する、あるいは反応するなどといった親和性)がある官能基を有する熱可塑性樹脂(D)を添加することで、熱可塑性樹脂(D)が熱可塑性樹脂(A)中に微分散し、結晶核生成の起点となったり、気泡核生成の起点となったりすることによって、気泡微細化が可能な性質を持つ熱可塑性樹脂組成物を得ることができ、この熱可塑性樹脂組成物を発泡させることにより、内部に平均気泡径20μm以下の微細な孔を有する熱可塑性樹脂発泡体が得られることを見出した。
【0012】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記(1)〜(7)の熱可塑性樹脂発泡体を提供する。
(1)熱可塑性樹脂(A)と、ノンデカブロム系難燃剤(B)と、難燃助剤(C)と、熱可塑性樹脂(A)と親和性を持つ官能基を有する熱可塑性樹脂(D)とを含有する熱可塑性樹脂シートであって、内部に複数の孔を有し、平均気泡径が20μm以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体。
(2)比重が0.7以下であることを特徴とする(1)の熱可塑性樹脂発泡体。
(3)熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、ノンデカブロム系難燃剤(B)2〜10質量部と、難燃助剤(C)0.8〜4質量部と、熱可塑性樹脂(D)0.1〜10質量部とが添加されていることを特徴とする(1)または(2)の熱可塑性樹脂発泡体。
(4)熱可塑性樹脂(D)が末端基に熱可塑性樹脂(A)と親和性をもつ官能基を有するスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体であることを特徴とする(1)〜(3)の熱可塑性樹脂発泡体。
(5)ノンデカブロム系難燃剤(B)がエチレンビスペンタブロモベンゼンであることを特徴とする(1)〜(4)の熱可塑性樹脂発泡体。
(6)難燃助剤(C)が三酸化アンチモンであることを特徴とする(1)〜(5)の熱可塑性樹脂発泡体。
(7)熱可塑性樹脂(A)と、ノンデカブロム系難燃剤(B)と、難燃助剤(C)と、熱可塑性樹脂(A)と親和性を持つ官能基を有する熱可塑性樹脂(D)とを含有する樹脂シートを加圧不活性ガス雰囲気中に保持して前記樹脂シートに不活性ガスを含有させる工程と、不活性ガスを含有させた前記樹脂シートを常圧下で加熱して発泡させる工程とからなる製造方法により製造されたことを特徴とする(1)〜(6)の熱可塑性樹脂発泡体。
【0013】
本発明においては、熱可塑性樹脂(D)が熱可塑性樹脂(A)と相互作用を持つ官能基を有していることにより、熱可塑性樹脂(D)が熱可塑性樹脂(A)中に均一に微分散する。特に、熱可塑性樹脂(A)がポリエステル系樹脂の場合、ポリエステル系樹脂はガス浸透過程で不活性ガスに誘起されて結晶化し、微分散した熱可塑性樹脂(D)が結晶核生成の起点となり微結晶が生成されたり、発泡過程で気泡核生成の起点となったり、熱可塑性樹脂(D)が微細発泡化したりするなどのいずれかの効果を有しているため、この樹脂シートを発泡させると、内部に平均気泡径20μm以下の微細な孔が均一に存在し、高い反射率を有する発泡体が得られる。他の樹脂に関しても、同様の機構により微細な孔が生成すると考えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱可塑性系樹脂発泡体は、平均気泡径が20μm以下と微細であるため、光の反射率が高く、シートの薄型化も可能であり、また良好な難燃性を示すため、光反射板として好適に用いることができる。さらに、本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、軽量で剛性があり、誘電特性も優れるため、スピーカー振動板や電波吸収材としても好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂(A)は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等から適宜選択することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明において用いられるノンデカブロム系難燃剤(B)としては、特に限定されないが、例えば、エチレンビスペンタブロモベンゼン、TBA−ビス[2,3−ジブロモプロピルエーテル]、ビス(3,5−ジブロモ−4−ジブロモプロピルオキシフェニル)スルホン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、1,1,2,2−テトラブロモエタン、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、ヘキサブロモベンゼン、2,4,6−トリブロモアニリン、2,4,6−トリブロモフェノール、2,4,6−トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラブロモ無水フタル酸等が挙げられ、中でもエチレンビスペンタブロモベンゼンは融点が350℃付近であり、熱可塑性樹脂との配合において分散性が良好であるため好ましい。
【0017】
本発明において、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対する、ノンデカブロム系難燃剤(B)の添加量は特に限定されないが、2〜10質量部であることが好ましい。より好ましくは2〜8質量部である。ノンデカブロム系難燃剤(B)の添加量が2質量部より少ないと、難燃性が低下する傾向があり、一方、ノンデカブロム系難燃剤(B)の添加量が10質量部より多いと、伸び率低下や割れ発生などシートの機械的強度が低下する傾向がある。
【0018】
本発明において用いられる難燃助剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、アンチモンやスズなどの化合物が挙げられ、中でも三酸化アンチモンが供給が安定しており安価であるため好ましい。
【0019】
本発明において、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対する、難燃助剤(C)の添加量は特に限定されないが、0.8〜4質量部であることが好ましい。より好ましくは0.8〜3.6質量部である。難燃助剤(C)の添加量が0.8質量部より少ないと、難燃性が低下する傾向があり、一方、難燃助剤(C)の添加量が4質量部より多いと、コストの面で不利になったり、シートの機械的強度が低下したりする傾向がある。
【0020】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂(D)が有する熱可塑性樹脂(A)と親和性を持つ官能基としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、グリシジル基、カルボキシル基(酸無水物、金属塩となっているカルボキシル基も含む)、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、スルホ基、ニトロ基、ハロゲン基、オキサゾリン基、イソシアネート基、チオール基等が挙げられ、中でも熱可塑性樹脂(A)がポリエステルの場合は、アミノ基、グリシジル基、カルボキシル基がポリエステルとの反応性が良好であるため好ましい。
【0021】
熱可塑性樹脂(A)に反応する上記官能基を有する熱可塑性樹脂(D)としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニル、ポリビニルアルコール等の汎用樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、超高分子量ポリエチレン、ポリサルフオン、ポリエーテルサルフオン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、フッ素樹脂等のエンジニアリングプラスチック、またはこれらの共重合体もしくは混合物などが挙げられる。これらのベース樹脂に、例えばグラフト、多官能基の導入などにより前記官能基を付与させたものを熱可塑性樹脂(D)として使用することができる。これらのベース樹脂の中でも、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィンが気泡をより微細化できるため好ましい。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、ポリスチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等が挙げられるが、ポリスチレン系エラストマーがより好ましい。ポリスチレン系エラストマーとしては、スチレンを含有するエラストマー、例えば、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー)、SEBS(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンコポリマー)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー)、SEP(スチレン−エチレン・プロピレンコポリマー)、SEBC(スチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体)、HSBR(水添スチレン・ブタジエンゴム)等が挙げられ、中でもSEBS(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンコポリマー)、SEBC(スチレン−エチレン・ブチレン−エチレンブロック共重合体)が好ましい。
【0023】
本発明において、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対する、官能基を有する熱可塑性樹脂(D)の添加量は特に限定されないが、0.1〜10質量部であることが好ましい。より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。熱可塑性樹脂(D)の添加量が0.1質量部より少ないと、得られる発泡体の気泡径が大きくなる傾向があり、気泡の分散も不均一となる傾向にある。一方、熱可塑性樹脂(D)の添加量が10質量部を超えると、コストの面で不利である。
【0024】
本発明において、発泡体の比重が大きくなる、つまり発泡倍率が小さくなると、結果として気泡率の低下による光反射率の低下や成形性の低下、軽量化効果の減少につながるので、得られた熱可塑性樹脂発泡体の比重は0.7以下であることが好ましい。より好ましくは、0.65以下、さらに好ましくは0.5以下である。なお、光反射板の比重は0.05以上であることが好ましい。
【0025】
本発明においては、発泡体の特性に影響を及ぼさない範囲で、発泡前の熱可塑性樹脂に、結晶化核剤、結晶化促進剤、気泡化核剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑剤、強化剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤などの各種添加剤を配合してもよい。また、得られた熱可塑性樹脂発泡体に上記添加剤を含有する樹脂を積層してもよいし、上記添加剤を含有する塗料をコーティングしてもよい。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法は特に限定されないが、量産性を考慮すると、例えば以下のような方法を用いることが好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂(A)と、ノンデカブロム系難燃剤(B)と、難燃助剤(C)と、熱可塑性樹脂(A)と親和性を持つ官能基を有する熱可塑性樹脂(D)とからなる樹脂シートを作製し、この樹脂シートとセパレータとを重ねて巻くことによりロールを形成し、このロールをゲージ圧力を3MPa以上に加圧した不活性ガス雰囲気中に保持して樹脂シートに不活性ガスを含有させ、さらに不活性ガスを含有させた樹脂シートを常圧下で熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱して発泡させる、という方法である。
【0027】
上記不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、アルゴン等が挙げられる。樹脂シートが飽和状態になるまでの不活性ガス浸透時間および不活性ガス浸透量は、発泡させる樹脂の種類、不活性ガスの種類、浸透圧力およびシートの厚さによって異なる。樹脂へのガス浸透性(速度、溶解度)を考慮すると、二酸化炭素が特に好ましい。
【0028】
なお、上記方法では、樹脂シートとセパレータとからなるロールを、加圧不活性ガス雰囲気中に保持して樹脂シートに不活性ガスを含有させる前に、樹脂シートに有機溶剤を含有させてもよい。有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、ギ酸エチル、アセトン、酢酸、ジオキサン、m−クレゾール、アニリン、アクリロニトリル、フタル酸ジメチル、ニトロエタン、ニトロメタン、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらのうち、取り扱い性および経済性の観点からアセトンがより好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでない。まず、実施例、比較例における測定項目および評価項目について説明する。
(形状保持性)
得られた熱可塑性樹脂発泡体を用い、真空成形機により図1に示すような開口部の直径100mm、深さ70mmの半球状の光反射板を熱成形加工した。得られた光反射板を手で持って力を加えて変形の有無を観察し、形状保持性を評価した。
(発泡倍率)
発泡体シートの比重(ρf)を水中置換法により測定し、発泡前の樹脂の比重(ρs)との比ρs/ρfとして算出した。
(平均気泡径)
ASTM D3576−77に準じて求めた。すなわち、シート断面のSEM写真を撮影し、SEM写真上に水平方向と垂直方向に直線を引き、直線が横切る気泡の弦の長さtを平均した。写真の倍率をMとして、下記式に代入して平均気泡径dを求めた。
d=t/(0.616×M)
(全反射率)
分光光度計(U−4100:日立ハイテク製)を用いて、550nmの波長における全反射率を測定した。なお、表1においては、酸化アルミニウムの微粉末を固めた白板の全反射率を100%として、各々の熱可塑性樹脂発泡体の全反射率を相対値で示している。
(難燃性)
UL94規格に準じて、UL94HB(水平燃焼試験)の評価を行った。燃焼性判定基準は、(HF1)>(HF2)>HBF>不合格、の順である。
(伸び)
機械特性については、厚み1.0mmのシートを用い、長さ×幅×厚み=100mm×5mm×1.0mmのサンプルを切り出し、チャック間距離20mm、引張速度50mm/分で引張伸び試験を行った。
【0030】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(グレード:RP560、東洋紡製)100質量部に、エチレンビスペンタブロモベンゼン(グレード:FCP−801、鈴裕化学製)を3.8質量部、三酸化アンチモンを1.3質量部、官能基を有するSEBS(ダイナロン8630P、JSR製)を1質量部添加して混練した後、0.6mm厚×430mm幅×180m長さのシートに成形した。この樹脂シートと、280μm厚×420mm幅×180m長さ、目付量50g/mのオレフィン系不織布のセパレータ(グレード:FTC−50、日本バイリーン製)とを重ねて、樹脂シートの表面同士が接触する部分がないように巻いてロール状にした。
【0031】
その後、上記ロールを圧力容器に入れ、炭酸ガスで5MPaに加圧し、樹脂シートに炭酸ガスを浸透させた。樹脂シートへの炭酸ガスの浸透時間は48時間とした。
【0032】
次に、圧力容器からロールを取り出し、セパレータを取り除きながら、樹脂シートだけを220℃近辺に設定した熱風循環式発泡炉に発泡時間が1分となるように連続的に供給して発泡させた。
【0033】
得られた発泡体は均一に発泡しており、平均気泡径が10μmと非常に微細であった。発泡体シートの全反射率は99.8%と高い値を示した。また、得られた発泡体の難燃性はHBFと良好であり、伸びは117%と非常に高い値を示した。形状保持性は良好であった。
【0034】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート(同前)100質量部に対するエチレンビスペンタブロモベンゼンの添加量を7.5質量部、三酸化アンチモンの添加量を2.5質量部としたこと以外は、実施例1と同じとした。
【0035】
得られた発泡体は均一に発泡しており、平均気泡径が15μmと微細であった。発泡体シートの全反射率は99.6%と高い値を示した。また、得られた発泡体の難燃性はHF−1と良好であり、伸びは84%と高い値を示した。形状保持性は良好であった。
【0036】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート(同前)100質量部に対するエチレンビスペンタブロモベンゼンの添加量を11.3質量部、三酸化アンチモンの添加量を3.8質量部としたこと以外は、実施例1と同じとした。
【0037】
得られた発泡体はわずかに気泡が不均一であったが、平均気泡径が18μmと微細であった。発泡体シートの全反射率は99.0%となった。また、得られた発泡体の難燃性はHF−1と良好であったが、伸びは56%と低い値を示した。形状保持性は良好であった。
【0038】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレート(同前)100質量部に対するエチレンビスペンタブロモベンゼンの添加量を7質量部とし、熱可塑性樹脂(D)として変性PE(三菱化学製)を3質量部添加したこと以外は、実施例1と同じとした。
【0039】
得られた発泡体はわずかに気泡が不均一であり、平均気泡径は20μmであった。発泡体シートの全反射率は98.0%となった。また、得られた発泡体の難燃性はHF−1と良好であったが、伸びは40%と低い値を示した。形状保持性は良好であった。
【0040】
(比較例2)
ポリエチレンテレフタレート(同前)に、エチレンビスペンタブロモベン、難燃助剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同じとした。
【0041】
得られた発泡体は非常に均一に発泡しており、平均気泡径も3μmと非常に微細であった。発泡体シートの全反射率は100.3%と非常に高い値を示した。しかしながら、難燃性は不合格と悪かった。伸びは150%と非常に高い値を示した。形状保持性は良好であった。
【0042】
(比較例3)
ポリエチレンテレフタレート(同前)100質量部に対するエチレンビスペンタブロモベンゼンの添加量を1.5質量部、三酸化アンチモンの添加量を0.5質量部としたこと以外は、実施例1と同じとした。
【0043】
得られた発泡体は均一に発泡しており、平均気泡径が5μmと非常に微細であった。発泡体シートの全反射率は100.2%と高い値を示した。しかしながら、難燃性は不合格であった。伸びは140%と非常に高い値を示した。形状保持性は良好であった。
【0044】
以上の結果を表1に示す。判定は、気泡径が20μm以下、比重が0.7以下、反射率が99%以上、伸びが40%以上、難燃性がHBF以上、形状保持性が良好なのを全て満たすものを○、ひとつでも満たさないものを×とした。
【0045】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例において作製した光反射板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ポリカーボネート発泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、ノンデカブロム系難燃剤(B)と、難燃助剤(C)と、熱可塑性樹脂(A)と親和性を持つ官能基を有する熱可塑性樹脂(D)とを含有する熱可塑性樹脂シートであって、内部に複数の孔を有し、平均気泡径が20μm以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項2】
比重が0.7以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、ノンデカブロム系難燃剤(B)2〜10質量部と、難燃助剤(C)0.8〜4質量部と、熱可塑性樹脂(D)0.1〜10質量部とが添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(D)が末端基に熱可塑性樹脂(A)と親和性をもつ官能基を有するスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項5】
ノンデカブロム系難燃剤(B)がエチレンビスペンタブロモベンゼンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項6】
難燃助剤(C)が三酸化アンチモンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項7】
熱可塑性樹脂(A)と、ノンデカブロム系難燃剤(B)と、難燃助剤(C)と、熱可塑性樹脂(A)と親和性を持つ官能基を有する熱可塑性樹脂(D)とを含有する樹脂シートを加圧不活性ガス雰囲気中に保持して前記樹脂シートに不活性ガスを含有させる工程と、不活性ガスを含有させた前記樹脂シートを常圧下で加熱して発泡させる工程とからなる製造方法により製造されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−235312(P2009−235312A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85937(P2008−85937)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】