説明

熱可塑性樹脂発泡体

【課題】 本発明は、耐熱性、成形性、低透湿性に優れ、かつマテリアルリサイクル可能な環境適合性にも優れ、さらには建築資材用途に求められる難燃性に合致した、厚肉の熱可塑性樹脂発泡体であり、特に、熱溶融アスファルトに対する短時間耐熱性や、140℃での長時間耐熱性に優れる熱可塑性樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 N−アルキル置換マレイミド単位30〜50重量%、芳香族ビニル単位40〜60重量%およびシアン化ビニル単位10〜20重量%からなる(3単位の合計が100重量%)熱可塑性樹脂組成物を発泡させてなる熱可塑性樹脂発泡体であって、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、5%熱重量減少開始温度が270℃以上、かつ融点もしくは軟化点が150℃以上である臭素系難燃剤を3〜15重量部含有してなるものであり、発泡体の厚みが10〜150mmであることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用断熱材などに使用される耐熱性、難燃性に優れ、さらに熱可塑性を併せ持つ熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スチレン系樹脂発泡体や硬質ポリウレタン発泡体は施工性、断熱特性の好適性から建屋の断熱材として汎用されて来た。
【0003】
しかしながら、スチレン系樹脂発泡体はマテリアルリサイクルを考慮した環境適合性に優れた断熱材としては有用ではあるが、基材樹脂であるスチレンの耐熱温度が80℃近傍であり、200〜250℃に熱せられた熱溶融アスファルトに対する短時間耐熱性はないために、形状を保持できないほど発泡体の変形をきたす。
【0004】
一方、硬質ポリウレタン発泡体は、該スチレン系樹脂発泡体の如き変形を起こさず、熱溶融アスファルトに対する耐熱性は高いものの、吸湿性が高く、吸湿した状態では耐熱性が極端に悪化する、あるいは断熱性が低下するといった品質低下を招く恐れがある。また、硬質ポリウレタンが熱硬化性樹脂であるために、マテリアルリサイクル性に乏しく環境適合性に優れるとは言い難い。
【0005】
該2種類の発泡体には、それぞれに長所と短所があり双方の特徴を併せ持つことは困難であった。
【0006】
これに対して、マテリアルリサイクル性の如き環境適合性に優れ、かつ耐熱性を向上させたスチレン系樹脂発泡体の耐熱性改善の事例がいくつか開示されている。
【0007】
例えば、メタクリル酸等をスチレンに共重合することにより、耐熱性を向上させる取組み(特許文献1参照)が為されている。該取組みでは、一般的なスチレン系樹脂発泡体(ポリスチレン樹脂発泡体)に比して、ガラス転移温度(Tg)の上昇により、熱変形温度が上昇し、耐熱性が向上することは認められる。しかしながら、基材樹脂の主成分がスチレンからなるために、自ずと耐熱性にも限界があり、メタクリル酸成分を10%程度含有しても100℃程度の耐熱性しか得られず、耐熱用途として求められる熱溶融アスファルトに対する短時間耐熱性や、140℃での長時間耐熱性は得られない。
【0008】
また、マレイミド系化合物をスチレン系樹脂に含有させる、もしくは分子レベルで結合させることにより、耐熱性を向上させる取組みが為されている(特許文献2〜4参照)。射出成形分野では古くから、スチレン系樹脂にマレイミド系化合物を導入することにより耐熱性が向上するため、ABS樹脂の耐熱改良剤として、主に自動車分野で使用されてきた経緯がある。
【0009】
しかしながら、スチレン系樹脂にマレイミド系化合物が導入された樹脂組成物は、耐熱性が向上されるものの、溶融状態での流動性や伸びが低下する傾向にある。該樹脂組成物から発泡体を得る場合、発泡剤を含む溶融状態の樹脂組成物の流動性や伸びが低下するため、特に、厚肉の板状発泡成形体を成形する場合には、成形金型を用いて附形する発泡体を形成しようとしても、セル膜が伸張しがたく、成形時の表面性が悪化する傾向が大きくなる。さらに、ポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法のように成形金型を冷却しすぎると、冷却された発泡体の表面層と、セル流動が起こる程度の温度である内部層との温度差が大きくなりすぎるために、発泡体には内部から表面に向かって割れを生じる現象が発生し、板状に成形することができないという問題点を有していた。
【0010】
また、マレイミド系化合物を難燃化させる取組みが為されている(特許文献5〜7参照)。該取組みでは、マレイミド系化合物を用いた樹脂組成物に関し、特に射出成形体での難燃性付与を目的として取組みが為されているものの、該取組みでは板状発泡体に関して何ら記載されていない。特に、発泡体では、炎が着火した後の伝熱速度が射出成形体に比べて著しく速いこと、加えて、発泡体内に残存する発泡剤が可燃性ガスである場合には、発泡体燃焼時に発泡体から揮発する可燃性ガスへの着火あるいは燃焼を抑制することが必要となるため、特に建築資材用途に求められる難燃性、具体的にはJIS A9511に規定する条件、あるいは消防法で規定する酸素指数を満たすことは非常に困難であった。
【0011】
したがって、マレイミド系化合物を用いた樹脂組成物を使いこなし、厚肉の板状発泡成形体を作り、かつ、建築資材用途に要求される難燃性に合致させた品質を達成することは非常に困難であった。
【0012】
これらのことから、スチレン系樹脂発泡体や硬質ポリウレタン発泡体の長所を併せ持ち、耐熱性、成形性、低透湿性に優れ、かつマテリアルリサイクル可能な環境適合性にも優れ、さらには建築資材用途に求められる難燃性に合致した、厚肉の熱可塑性樹脂発泡体の開発が待ち望まれている。
【特許文献1】特開昭57−72830号公報
【特許文献2】特開昭61−78846号公報
【特許文献3】特開平2−184418号公報
【特許文献4】特開平4−25532号公報
【特許文献5】特開平7−53833号公報
【特許文献6】特開平10−168261号公報
【特許文献7】特開平10−182905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、耐熱性、成形性、低透湿性に優れ、かつマテリアルリサイクル可能な環境適合性にも優れ、さらには建築資材用途に求められる難燃性に合致した、厚肉の熱可塑性樹脂発泡体を提供することにある。なかでも、熱溶融アスファルトを塗布しても形状を維持する耐熱性を有した熱可塑性樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記従来技術に鑑みて鋭意研究を進めた結果、N−アルキル置換マレイミド単位を含有することによる耐熱性と、シアン化ビニル単位を含有することによる低透湿性を併せ持つ熱可塑性樹脂組成物に、特定の臭素系難燃剤、さらに必要に応じて難燃助剤としてアンチモン化合物を含有する発泡体が、上記目的を満足することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、
[1]N−アルキル置換マレイミド単位30〜50重量%、芳香族ビニル単位40〜60重量%およびシアン化ビニル単位10〜20重量%からなる(3単位の合計が100重量%)熱可塑性樹脂組成物を発泡させてなる熱可塑性樹脂発泡体であって、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、5%熱重量減少開始温度が270℃以上、かつ融点もしくは軟化点が150℃以上である臭素系難燃剤から選ばれる少なくとも1種の難燃剤を3〜15重量部含有してなるものであり、発泡体の厚みが10〜150mmであることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【0016】
さらに、本発明は、[2]芳香族ビニル単位がスチレン単位であることを特徴とする、前記[1]に記載の熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【0017】
さらに、本発明は、[3]N−アルキル置換マレイミド単位がN−フェニルマレイミド単位であることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【0018】
さらに、本発明は、[4]シアン化ビニル単位がアクリロニトリルであることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【0019】
さらに、本発明は、[5]発泡体の透湿係数が160ng/m・s・Pa以下であることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【0020】
さらに、本発明は、[6]5%熱重量減少開始温度が270℃以上、かつ、融点もしくは軟化点が150℃以上の臭臭素系難燃剤が、デカブロモジフェニルエーテル、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマーのトリブロモフェノール付加物、2,4,6ートリス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)1,3,5ートリアジンまたは、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートであることを特徴とする、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【0021】
さらに、本発明は、[7]さらに、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、難燃助剤としてアンチモン化合物を0.1〜5重量部含有することを特徴とする、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【0022】
さらに、本発明は、[8]アンチモン化合物が三酸化アンチモンであることを特徴とする、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、耐熱性、成形性、低透湿性に優れ、かつマテリアルリサイクル可能な環境適合性にも優れ、さらには建築資材用途に求められる難燃性に合致した、厚肉の熱可塑性樹脂発泡体が得られる。特に、スチレン系樹脂発泡体では満たすことのできない、熱溶融アスファルトに対する短時間耐熱性が要求される熱可塑性樹脂発泡体が得られる。
【0024】
また、本発明により、140℃雰囲気下のオーブンにおいて、24時間暴露後の発泡体の体積変化率が3%以下となる長時間耐熱性を有する熱可塑性樹脂発泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、N−アルキル置換マレイミド単位、芳香族ビニル単位およびシアン化ビニル単位からなる熱可塑性樹脂組成物である。芳香族ビニル単位としては、スチレン、α―メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンが挙げられる。これらのうち、重合の容易性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好適であり、さらに価格的に安価であるスチレンが最適である。また、N−アルキル置換マレイミド単位としては、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−4−ジフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−4−ブロモフェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミドが挙げられ、重合の容易性、安価の点から、N−フェニルマレイミドが最適である。さらに、シアン化ビニル単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α―クロロアクリロニトリルが挙げられ、重合の容易性、安価の点から、アクリロニトリルが好適である。
【0027】
本発明における樹脂組成物を構成するN−アルキル置換マレイミド単位、芳香族ビニル単位およびシアン化ビニル単位の組成比率は、全体を100重量%とした場合、N−アルキル置換マレイミド単位30〜50重量%、芳香族ビニル単位40〜60重量%およびシアン化ビニル単位10〜20重量%からなることが好ましい。N−アルキル置換マレイミド単位の組成比率を上記範囲とすることにより、耐熱性を向上させることができ、より好ましい範囲としては、30〜40重量%である。芳香族ビニル単位の組成比率を上記範囲とすることにより、本発明の耐熱性を維持しながら成形安定性に必要な流動性を得やすく、より好ましい範囲としては、50〜57重量%である。シアン化ビニル単位の組成比率を上記範囲とすることにより、本発明の耐熱性を保持しながら、ポリスチレン押出発泡板と同様に成形安定性が得られやすくなり、透湿性が低いことから生活環境下での吸湿/吸水による物性劣化を小さくすることができ、より好ましい範囲としては、10〜16重量%である。
【0028】
本発明におけるN−アルキル置換マレイミド単位、芳香族ビニル単位およびシアン化ビニル単位からなる熱可塑性樹脂組成物は、上記組成比率を満たすのであれば、N−アルキル置換マレイミド単位、芳香族ビニル単位およびシアン化ビニル単位からなる共重合体(A)を単独で用いてもよいし、また、共重合体(A)に対して、芳香族ビニル単位およびシアン化ビニル単位からなる共重合体(B)を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
なお、本発明の共重合体(B)における芳香族ビニル単位としては、上記記載のとおり、共重合体(A)との相溶性、重合の容易性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好適であり、さらに価格的に安価であるスチレンが最適である。また、シアン化ビニル単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α―クロロアクリロニトリルが挙げられ、共重合体(A)との相溶性、重合の容易性の点から、アクリロニトリルが好適である。共重合体(A)との相溶性、重合の容易性、価格的に安価であることなどから鑑み、本発明における共重合体(B)としては、スチレンとアクリロニトリルの共重合体が好ましい。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体を得るための発泡剤としては、上記構成単位からなる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、塩素原子が含有しない発泡剤を用いることができる。また、このような発泡剤としては、物理型発泡剤および化学型発泡剤からなる群から選ばれた1種を、または2種以上混合して使用することができる。塩素原子を含有しないことにより、環境への負荷が軽減されるので好ましいが、本発明の目的を達するためには、必ずしも塩素原子を含有しないことは必要でない。
【0031】
物理型発泡剤の具体例としては、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;1,1−ジフルオロエタン、1,2−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,2−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン等のフッ素化炭化水素;二酸化炭素、窒素、水、アルゴン、ヘリウム等の無機ガス;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化イソプロピル等の塩化アルキル類;蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステル等のカルボン酸エステル類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、エチル−n−プロピルケトン、エチル−n−ブチルケトン等のケトン類、等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0032】
化学型発泡剤の具体例としては、例えば、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビス−ベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド、炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド、テレフタルアジド、5−フェニルテトラゾール、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0033】
前述された発泡剤のうち、オゾン層保護の観点から、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、二酸化炭素、窒素、水、アルゴン、ヘリウムなどの無機ガス類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類が好ましい。
【0034】
また、前述された発泡剤のうち、発泡剤としては、発泡体の軽量化、押出発泡の安定性を考慮すると、発泡剤としては、主として、(a)エーテルおよび塩化アルキルよりなる群から選ばれた1種以上を0.5〜10重量部、および(b)炭化水素を0〜6重量部を含有するものが好ましい。
【0035】
本発明の発泡剤におけるエーテルとしては、前述されたエーテル類が挙げられるが、これらのうち、ジメチルエーテルが、押出発泡の際の押出圧力が低減され、安定して押出発泡体が製造される点で好ましい。エーテルの使用量としては、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.5重量部〜10重量部が好ましく、1.5重量部〜6重量部がより好ましく、3重量部〜5重量部が特に好ましい。エーテルの使用量が0.5重量部〜10重量部の範囲内であれば、発泡性と発泡体へのガス分散性が良く、発泡性が良い。
【0036】
本発明の発泡剤における塩化アルキルとしては、前述された塩化アルキル類が挙げられるが、これらのうち、塩化メチルおよび塩化エチルが押出発泡の際の押出圧力が低減され、安定して押出発泡体が製造される点で好ましい。塩化アルキルの使用量としては、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.5重量部〜10重量部が好ましく、1.5重量部〜6重量部がより好ましく、3重量部〜5重量部が特に好ましい。塩化アルキルの使用量が0.5重量部〜10重量部の範囲であれば、発泡性と発泡体へのガス分散性が良く、発泡性が良い。
【0037】
本発明の発泡剤における炭化水素としては、前述された炭化水素が挙げられるが、沸点が低すぎると、蒸気圧が高くなり、取り扱いに際しては高圧が必要になり、製造上問題となる傾向にあり、沸点が高すぎると、発泡剤が発泡体の気泡中に液状として残留し、発泡体の耐熱温度を低下させる傾向にある。したがって、−50℃〜85℃の範囲に沸点を有する飽和炭化水素が好ましい。−50℃〜85℃の範囲に沸点を有する飽和炭化水素としては、例えば、プロパン、シクロプロパン、n−ブタン、i−ブタン、シクロブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、1,2−ジメチルブタン、シクロヘキサン等があげられる。これらのうち製造安定性の点から、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンが好ましい。炭化水素の使用量としては、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0重量部〜6重量部が好ましく、2重量部〜5重量部の範囲内であれば、発泡体へのガス分散性が良く、発泡性が良い。
【0038】
本発明で用いられる臭素系難燃剤としては、5%熱重量減少開始温度が270℃以上、かつ、融点もしくは軟化点が150℃以上であることが好ましい。
【0039】
臭素系難燃剤の5%熱重量減少開始温度としては、275℃以上がより好ましく、280℃以上がさらに好ましい。臭素系難燃剤の5%熱重量減少開始温度が270℃以上の範囲であれば、押出機内での難燃剤の分解に起因する熱安定性の低下や、得られた発泡体の耐熱性の低下といった悪影響を及ぼさないことから、好ましい。一方で、難燃性能発現のためには、臭素系難燃剤の5%熱重量減少開始温度は400℃以下であることが好ましい。
【0040】
また、臭素系難燃剤の融点もしくは軟化点としては、160℃以上がより好ましく、170℃以上がさらに好ましい。臭素系難燃剤の融点もしくは軟化点が150℃以上の範囲であれば、臭素系難燃剤の融解もしくは軟化に起因する押出不安定、得られた発泡体の耐熱性低下といった悪影響を及ぼさないことから、好ましい。
【0041】
なお、本発明における臭素系難燃剤の軟化点とは、 JIS K7234(エポキシ樹脂の軟化点試験方法)に準じて測定された値である。後述する臭素系難燃剤の内、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマーのトリブロモフェノール付加物といったエポキシ系高分子難燃剤については明解な融点を持たないため、固体物質が軟化する軟化点で代用した。
【0042】
本発明で用いられる5%熱重量減少開始温度が270℃以上、かつ、融点もしくは軟化点が150℃以上の臭素系難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、ペンタブロモベンジルアクリレートポリマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマーのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、エチレンビステトラブロモフタルイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0043】
前記臭素系難燃剤の中で、前記熱可塑性樹脂組成物との分散性が良好で、かつ難燃効果の高い点から、デカブロモジフェニルエーテル、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマーのトリブロモフェノール付加物、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートが好ましい。
【0044】
本発明における臭素系難燃剤の含有量は、JIS A9511燃焼性を満足し、かつ発泡体の酸素指数が26%以上になるように適宜調整されるが、概ね前記熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、3〜15重量部の範囲が好ましく、より好ましくは4〜13重量部、さらに好ましくは5〜10重量部である。
【0045】
臭素系難燃剤の含有量が前記範囲であれば、熱安定性の低下、耐熱性の低下といった物性低下、さらに押出安定性の低下、発泡成形性の低下といった不具合を生じることがなく、本発明が目的とする難燃性を満足することから、好ましい。
【0046】
なお、前記JIS A9511とは、発泡プラスチック保温材に適用される日本工業規格に該当する。前記JIS A9511で規定される燃焼性には、測定方法A〜Cの3つの測定方法があるが、本試験では前記発泡プラスチック保温材のうち、ビーズ法ポリスチレンフォーム保温材、押出法ポリスチレンフォーム保温材に適用されている測定方法Aに準拠した。
【0047】
その測定方法は、以下のとおりである。45°に傾斜させた試験片(厚さ10mm、長さ200mm、幅25mm)に、火源用ろうそくの炎を約5秒間かけて等速にて着火限界指示線まで水平に移動させる。着火限界指示線に達した後、炎を手早く後退させ、その瞬間から炎が消えるまでの時間、および燃焼停止位置を確認する。
【0048】
その難燃性の判断基準としては、(1)試験体5個の消炎時間の平均が3秒以内であること、(2)残じんがないこと、(3)各試験体が燃焼限界指示線(着火限界指示線から20mm)を超えて燃焼しないこと、が求められる。
【0049】
本発明においては、前記臭素系難燃剤に対して、必要に応じて、難燃助剤としてアンチモン化合物を併用することにより、臭素系難燃剤の使用量を低減でき、押出機内での熱履歴に伴う樹脂劣化を抑制することができる。
【0050】
本発明におけるアンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、リン酸アンチモンなどが挙げられる。難燃性に関し、前記臭素系難燃剤との相乗効果が高い点から、三酸化アンチモンが好ましい。
【0051】
本発明におけるアンチモン化合物の含有量は、JIS A9511燃焼性を満足し、かつ発泡体の酸素指数が26%以上になるように適宜調整されるが、概ね前記熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜4.5重量部、さらに好ましくは1〜4重量部である。
【0052】
アンチモン化合物の含有量が前記範囲であれば、熱安定性の低下、耐熱性の低下といった物性低下、さらに押出安定性の低下、発泡成形性の低下といった不具合を生じることなく、臭素系難燃剤との相乗効果を効果的に発現し、本発明が目的とする難燃性を満足することから好ましい。
【0053】
なお、本発明においては、前記樹脂組成物に、必要に応じて、本発明の効果を想定する範囲内で各種添加剤として、造核剤、安定剤、滑剤、帯電防止剤、可塑剤、吸水剤、輻射抑制剤等の添加剤を配合してもよい。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は板状発泡体であるとの特徴を有していることから、本発明の熱可塑性樹脂発泡体の厚みは10〜150mmが好ましく、20〜100mmがより好ましい。例えば、建材などの用途に使用される断熱材の場合、好ましい断熱性を付与せしめるためには、発泡体の厚みが10mm未満のシート状発泡体では得られにくい傾向にある。発泡体の厚みが150mmを超えても実験機のような小スケールでは製法上可能であるが、厚みが厚くなる分、発泡体表面層と内部層との温度差がつくために、内部蓄熱の影響により独立気泡率の低下する傾向にあり、結果として、断熱特性、寸法安定性、強度などが低下する場合がある。
【0055】
本発明における熱可塑性樹脂発泡体の密度は、20〜100kg/mの範囲であることが好ましく、25〜50kg/mの範囲であることがより好ましい。発泡体密度が上記範囲内にあれば、平面圧縮強度に代表される面圧縮強度の発現の視点から好ましい。
【0056】
本発明における熱可塑性樹脂発泡体を形成する気泡構造としては、均一気泡構造や、大小気泡が混在した複合気泡構造などが挙げられるが、気泡構造を特に制限するものではない。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体における気泡の平均径は、主として0.05〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがより好ましい。なお、気泡径は、例えば、押出発泡体の断面の一部をサンプリングし、それを走査型電子顕微鏡にて拡大撮影して得られる写真から、平均気泡径をASTM D−3576に準じて測定することができる。気泡径は、必ずしも全てが上記範囲内である必要はなく、少なくとも気泡径の平均値が上記範囲内であればよい。気泡径が上記範囲未満であれば、成形性が大きく低下し、安定生産が困難になる傾向がある。気泡径が上記範囲を超えた場合、製品表面の外観が悪化する傾向がある。
【0058】
本発明における熱可塑性樹脂発泡体の透湿係数は、160ng/m・s・Pa以下であることが好ましく、145ng/m・s・Pa以下がより好ましい。透過係数が160ng/m・s・Paを超えると、耐熱性および断熱性が悪化する傾向にある。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、上記樹脂組成物を用いて公知の方法により得ることができる。例えば、上記熱可塑性樹脂組成物を、押出機などの公知の加熱溶融混練装置に供給して加熱溶融して、高圧条件下で、発泡剤を添加する工程、発泡可能なゲル状物質を形成させる工程、次いで、該ゲル状物質を冷却する工程、さらに、高圧領域からスリットダイなどのダイを通じて、該ゲル状物質を低圧領域に押出発泡する工程、ダイと密着または接して設置した成形金型を用いて附形する発泡体を形成する工程を経ることにより、厚肉の板状熱可塑性樹脂発泡体を得ることができる。
【0060】
発泡剤を添加する前に、前記樹脂組成物は、そのガラス転移温度または融点、あるいは、それ以上の温度に加熱される。発泡剤の添加は、加熱溶融樹脂に分散できるような方法で行えば良い。すなわち、発泡体の製造および/または開発に関わる分野で公知の手段、例えば、押出機、混合機などにより、溶融された前記樹脂組成物に混合、圧入または配合することができる。また、各々の発泡剤成分は、個別または同時に押出機に投入することができる。さらに、各々の発泡体成分は、液体、気体のいずれの状態で配合しても良い。
【0061】
熱可塑性樹脂組成物に難燃剤などの各種添加物を添加する手順としては、例えば、(1)熱可塑性樹脂組成物に対して難燃剤などの各種添加物を添加して混合した後、押出機などの溶融混練装置に供給して加熱溶融し、さらに発泡剤を添加して混合する手順、(2)熱可塑性樹脂組成物を押出機などの溶融混練装置に供給して加熱溶融した後、難燃剤などの各種添加物を添加して混合し、さらに発泡剤を添加して混合する手順、(3)予め熱可塑性樹脂組成物に対して難燃剤などの各種添加物を添加して溶融混練して得られた樹脂組成物を、改めて押出機に供給して加熱溶融した後、さらに発泡剤を添加して混合する手順等が挙げられるが、各種添加剤を熱可塑性樹脂組成物に添加するタイミングは、特に限定されない。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体を製造する場合において、熱可塑性樹脂組成物、発泡剤、必要に応じて添加される各種添加剤を加熱溶融混練する際の、加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については、特に制限されない。
【0063】
加熱温度は、熱可塑性樹脂組成物が溶融する温度(ガラス転移温度または融点)以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分解・劣化ができる限り抑制される温度が好ましい。
【0064】
溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練装置の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、熱可塑性樹脂組成物と発泡剤や添加剤とが均一に分散混合するのに要する時間として適宜設定される。
【0065】
溶融混練手段としては、例えば、単軸スクリュー、二軸スクリュー等のスクリュー型の押出機などがあげられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば、特に制約はない。ただし、発泡体の分散性を必要とする場合には、押出機としては二軸スクリュー型が好ましい。また、樹脂の分解劣化をできる限り抑えるためには、押出機のスクリュー形状を低剪断タイプのものとすることが好ましい。
【0066】
本発明における押出条件として、発泡剤が押出機や金型内で気化しないように、また、樹脂に充分溶解するように、押出系内圧力を高圧に保持することが好ましい。
【0067】
その一手段として、スリットダイにおける圧力(以降、「スリット圧力」と称する場合がある)は、3MPa以上であることが好ましく、4MPa以上であることがより好ましい。スリットダイにおける圧力が3MPa以上であると、ガスの吹き出し、発泡体中の気孔(ボイド)発生、押出機系内の圧力変動、それに伴う発泡体断面プロファイルの変動といった現象が生じにくいため、好ましい。
【0068】
該ゲル状物質を冷却する工程の出口での該ゲル状物質の樹脂温度は、該熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度に対して20〜70℃高い温度であることが好ましく、ガラス転移温度に対して30〜60℃高い温度であることがより好ましい。該ゲル状物質を発泡に適する温度に冷却する工程出口での樹脂温度を上記範囲とすることにより、ダイのスリット圧力のあがりすぎや温度ムラがほとんどない状態にて該ゲル物質をダイ内に導入することができ、良好な押出成形性および表面性を得ることができる。
【0069】
ダイの設定温度は、上記樹脂温度に対して5〜50℃低い温度に制御することが好ましく、10〜40℃低い温度に制御することがより好ましい。ダイの設定温度を上記範囲とすることにより、ダイのスリット圧力を維持できると共に、表面性が良好な発泡体を得ることができる。
【0070】
発泡成形方法に関しては、特に制限はないが、例えば、押出成形用に使用されるスリット形状を有するスリットダイ等のダイを通じて、発泡性ゲル状物質を高圧領域から低圧領域へ圧力開放して得られた熱可塑性樹脂押出発泡体を、スリットダイと密着または接して設置した成形金型および該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロールなどを用いて附形する押出発泡方法であれば、厚肉であり、さらに断面積の大きい板状発泡体を得ることができる。
【0071】
スリットダイスの形状としては、矩形状、コートハンガー状、フィッシュテール状、ティー状などがあげられるが、幅広の板状発泡体を得ようとする場合には、コートハンガー状、フィッシュテール状、ティー状のスリットダイが好ましい。
【0072】
さらに、厚み10〜150mmの板状発泡体を得ようとする場合には、スリットダイ出口形状に対する成形金型形状の厚み方向での寸法拡大率や幅方向での寸法拡大率を抑制する観点から、スリットダイ出口が平板状に拡大されたスリットダイを用いて所望の発泡体幅に成形する方法が有利である。特に、本発明における熱可塑性樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂に対して脆性傾向であることから、できるだけ幅方向での拡大率を抑えた成形方法を選択することが好ましい。
【0073】
また、該樹脂組成物を用いた場合、その樹脂特性からポリスチレン系樹脂のような樹脂の伸びが期待できないために、得られる押出発泡体の表面性を確保するには、押出発泡体表面と成形金型との抵抗を低減させることが重要である。
【0074】
押出発泡体と成型金型との抵抗を下げる手段としては、例えば、(1)蒸気、油、電気ヒーター等を用いることにより成形金型を加熱すること、(2)ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素樹脂からなるシート等の表面抵抗の少ない素材を、押出発泡体表面と成形金型との界面に設置すること、等が考えられる。
【0075】
さらには、スリットダイから押出発泡させた発泡体を徐冷することも、得られる熱可塑性樹脂発泡体の表面性および物性を確保するには重要である。すなわち、発泡体の表面が冷却固化された状態でも、発泡体の内部がまだ流動的で発泡する力を有している状態では、内部の発泡する力に表面部分が耐えることができないために、発泡体の表面が割れ等の不良を生じる場合がある。また、前述したように、得られる発泡体の独立気泡率も低下する傾向にあり、結果として、断熱特性、寸法安定性、強度などが低下する場合がある。徐冷条件に関しては、発泡時の樹脂温度にも影響されるため、適宜調整すればよいが、成形金型の長さ、成形金型に対する加熱温度、表面抵抗の少ない素材の設置距離、等により調整することができる。
【0076】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、従来のスチレン系押出発泡体と比較して、耐熱性および耐薬品性に優れるため、例えば、日光による直接熱を受けやすい屋上断熱部位、施工時にアスファルトなどの熱溶融した溶融物質が接する屋上防水断熱部位、施工時に接着剤に接する防水断熱部位等の建築資材用途に好適に用いられるほか、高温と低温の温度差が大きい過酷な環境に置かれる産業資材用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の耐熱性、難燃性および熱可塑性を併せ持つ樹脂発泡体を具体的な実施例により詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
【0078】
本実施例で使用した共重合体および臭素系難燃剤は、以下のとおりである。
共重合体(A):(株)日本触媒製、ポリイミレックスPAS1460
共重合体(B):(株)東洋スチレン製、トーヨーAS
共重合体(C):(株)日本触媒製、ポリイミレックスPSX0371
PS樹脂: ポリスチレン樹脂(PSジャパン(株)製、商品名:G9401、200℃×5kg条件でのMFR=0.2g/min)
臭素系難燃剤(1):デカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、SAYTEX102E、5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)
臭素系難燃剤(2): エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール製、SAYTEX8010、5%熱重量減少開始温度:344℃、融点:350℃)
臭素系難燃剤(3):ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン(Great Lakes製、FF680、5%熱重量減少開始温度:276℃、融点:225℃)
臭素系難燃剤(4):テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマー(阪本薬品工業製、SR−T5000、5%熱重量減少開始温度:360℃、軟化点:190℃)
臭素系難燃剤(5):テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマーのトリブロモフェノール付加物(阪本薬品工業製、SR−T3040、5%熱重量減少開始温度:360℃、軟化点:170℃)
臭素系難燃剤(6):2,4,6ートリス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)1,3,5ートリアジン(ICL industrial製、FR−245、5%熱重量減少開始温度:385℃、融点:230℃)
臭素系難燃剤(7):トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学工業製、CR900、5%熱重量減少開始温度:310℃、融点:180℃)
臭素系難燃剤(8):テトラブロモビスフェノールAビス(2.3−ジブロモプロピルエーテル)(アルベマール製、SAYTEX HP800A、5%熱重量減少開始温度:312℃、融点:110℃)
臭素系難燃剤(9):テトラブロモシクロオクタン(アルベマール製、SAYTEX BC48、5%熱重量減少開始温度:167℃、融点:103℃)
【0079】
以下に示す実施例1〜19、参考例1〜5、比較例1〜5で得られた発泡体の特性については、発泡体密度、平均セル径、JIS A9511燃焼性、発泡体酸素指数、140℃耐熱性、熱溶融アスファルト塗布耐熱性、透湿性、表面性を、下記の方法に従って測定した。
【0080】
(1)発泡体密度(kg/m
発泡体密度は、次の式に基づいて求め、単位をkg/mに換算して示した。
発泡体密度(g/cm)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm
【0081】
(2)平均セル径(mm)
得られた発泡体の押出方向、巾方向および厚み方向の各方向のセル径を、ASTM D−3576に準じて測定した。
すなわち、発泡体の巾方向の断面を50〜100倍に拡大投影し、厚み方向のセル径(HD)と巾方向のセル径(TD)を測定する。次に、押出方向の断面を拡大投影し、押し出し方向のセル径(MD)を測定した。
平均セル径は各方向のセル径の積を3乗根した値を以下の式より算出した。
平均セル径=(HD×TD×MD)1/3
【0082】
(3)JIS A9511燃焼性
作製後7日経過した発泡体について、JIS A9511に準じて、厚み10mm×長さ200mm×幅25mmの試験片を用い、n数5で燃焼試験を行い、以下の基準により判断した。
<燃焼時間>
◎:消炎時間が5本すべて3秒以内となる。
○:消炎時間が5本の内、少なくとも1本が3秒を超えるが、5本の平均消炎時間が3秒以内となる。
×:5本の平均消炎時間が3秒を超える。
<燃焼状況>
◎:燃焼限界指示線以内で燃焼が停止し、発泡剤の燃焼が全く見られない。
○:燃焼限界指示線以内で燃焼は停止するが、発泡剤の燃焼が若干見られる。
×:燃焼限界指示線を越えて燃焼が継続する。
【0083】
(4)発泡体酸素指数
製造後7日経過した発泡体について、JIS K7201に準じ、厚み10mm×長さ150mm×幅10mmの試験片を用いて測定した。
【0084】
(5)140℃耐熱性(発泡体の体積変化率)
発泡体作成後、23℃、湿度55%の恒温室に10日間状態調整したのち、厚み25mm×長さ100mm×幅100mmに切り出し、140℃±2℃に設定した熱風乾燥機内にて24時間加熱し、加熱前と加熱後の体積変化率(%)を算出し、以下の基準により耐熱性の有無を判断した。
○:発泡体の体積変化率が3%以下である。
△:発泡体の体積変化率が3%を超え5%以下である。
×:発泡体の体積変化率が5%を超える。
【0085】
(6)熱溶融アスファルト塗布耐熱性(加熱後の発泡体断面の形状保持率)
発泡体作成後、23℃、湿度55%の恒温室に10日間状態調整した後、厚み25mm×長さ300mm×幅100mmの試験片を切り出し、200℃に加熱した熱溶融アスファルトを万遍なく塗布し、30分間冷却した後、厚み方向×長さ方向の発泡体断面を切取り、断面積を求め、以下の基準により耐熱性の有無を判断した。
○:発泡体断面の断面積が、もとの断面積の90%以上である。
△:発泡体断面の断面積が、もとの断面積の80%以上90%未満である。
×:発泡体断面の断面積が、もとの断面積の80%未満である。
【0086】
(7)透湿性
JIS A9511の参考試験に準じて、透湿度を測定した。測定は、発泡体作成後、23℃±2℃、湿度50%±5%の恒温室に7日間状態調整した後、規定の大きさ(直径70mm×厚み25mmの円板)に切り出したものを用いた。
透湿度より求めた透湿係数から、以下の基準により透湿性の有無を判断した。
◎:透湿係数が、145ng/m・s・Pa以下である。
○:透湿係数が、145ng/m・s・Pa超160ng/m・s・Pa以下である。
△:透湿係数が、160ng/m・s・Pa超180ng/m・s・Pa以下である。
×:透湿係数が、180ng/m・s・Paを超える。
【0087】
(8)表面性
得られた発泡体の表面性を目視により以下の基準により判断した。
良好:発泡体表面の押出流れ方向1m当たりに、割れ、クラック、窪み、ボイド(気孔)が3個以下である、美麗なスキン層を形成した発泡体である。
不良:発泡体表面押出流れ方向1m当たりに、割れ、クラック、窪み、ボイド(気孔)が3個超である、粗悪なスキン層しか形成できない発泡体である。
【0088】
(実施例1)
基材樹脂として、共重合体(A)[(株)日本触媒製、商品名:ポリイミレックスPAS(265℃×10kg荷重条件でのメルトフローレイト(以下、MFR)=2.2g/min、成分比率はN−フェニルマレイミド/スチレン/アクリロニトリル=40%/50%/10%)]を使用した。
上記樹脂組成物100部に対して、臭素系難燃剤としてデカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、商品名:SAYTEX 102E;5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)10.0部、造核剤としてタルク(林化成(株)製、商品名:タルカンパウダー)0.3部、その他添加剤としてステアリン酸カルシウム(堺化学(株)製、商品名:SCP)0.3部をドライブレンドし、得られた樹脂組成物を、口径65mmの一段目押出機と口径90mmの二段目押出機とを直列に連結した二段連結型押出機へ50kg/時間の割合で供給した。一段目押出機に供給した樹脂組成物を、約270℃に加熱して溶融混練した後、一段目押出機の先端付近(第二押出機に接続される側)において、発泡剤としてジメチルエーテル5.0部を溶融された熱可塑性樹脂組成物に圧入した。その後、一段目押出機に連結された二段目押出機において、混練冷却しながら二段目押出機出口(冷却工程出口)での樹脂温度が200℃となるように冷却し、二段目押出機の先端に設けられた矩形状スリットダイのダイリップより、熱可塑性樹脂組成物を大気中へ押出し、成形金型温度を170℃に温度設定した成形金型(表面材質:ポリテトラフルオロエチレン樹脂で表面処理した鉄、高さ25mm×幅120mm)および成形ロールにより、厚さ約30mm×幅約100mmである断面形状の押出発泡板を得た。ダイリップは、185℃に温度設定し、厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙とした。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0089】
(実施例2)
臭素系難燃剤をデカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、商品名:SAYTEX 102E;5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)6.0部、難燃助剤として三酸化アンチモン(鈴裕化学製、商品名:FIRE CUT AT−3)2.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0090】
(実施例3)
臭素系難燃剤をエチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール製、商品名:SAYTEX 8010;5%熱重量減少開始温度:344℃、融点:350℃)6.0部、難燃助剤として三酸化アンチモン(鈴裕化学製、商品名:FIRE CUT AT−3)2.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0091】
(実施例4)
臭素系難燃剤をビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン(Great Lakes製、商品名:FF680;5%熱重量減少開始温度:276℃、融点:225℃)8.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0092】
(実施例5)
臭素系難燃剤をテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマー(阪本薬品工業製、商品名:SR−T5000;5%熱重量減少開始温度:360℃、軟化点:190℃)8.0部、難燃助剤として三酸化アンチモン(鈴裕化学製、商品名:FIRE CUT AT−3)2.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0093】
(実施例6)
臭素系難燃剤をテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマーのトリブロモフェノール付加物(阪本薬品工業製、商品名:SR−T3040;5%熱重量減少開始温度:360℃、軟化点:170℃)8.0部、難燃助剤として三酸化アンチモン(鈴裕化学製、商品名:FIRE CUT AT−3)2.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0094】
(実施例7)
臭素系難燃剤を2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン(ICL製、商品名:FR245;5%熱重量減少開始温度:385℃、融点:230℃)6.0部、難燃助剤として三酸化アンチモン(鈴裕化学製、商品名:FIRE CUT AT−3)2.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0095】
(実施例8)
臭素系難燃剤をトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学製、商品名:CR900;5%熱重量減少開始温度:310℃、融点:180℃)6.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0096】
(実施例9)
臭素系難燃剤をデカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、商品名:SAYTEX 102E;5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)4.0部、及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学製、商品名:CR900;5%熱重量減少開始温度:310℃、融点:180℃)2.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0097】
(実施例10)
樹脂組成物中の組成比率をN−フェニルマレイミド/スチレン/アクリロニトリル=30%/55.5%/14.5%とするために、共重合体(A)として(株)日本触媒製、商品名:ポリイミレックスPAS[265℃×10kg荷重条件でのメルトフローレイト(以下、MFR)=2.2g/min、成分比率はN−フェニルマレイミド/スチレン/アクリロニトリル=40%/50%/10%]、共重合体(B)として東洋スチレン(株)製、商品名:トーヨーAS[220℃×10kg条件でのMFR=1.8g/min]を使用し、共重合体(A)/共重合体(B)を75%/25%の比率にて混合し、一段目押出機における加熱温度を約255℃、二段目押出機出口(冷却工程出口)での樹脂温度を約190℃まで冷却し、ダイリップの温度を175℃、成形金型の温度を160℃に温度設定した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0098】
(実施例11)
臭素系難燃剤をデカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、商品名:SAYTEX 102E;5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)4.0部、及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学製、商品名:CR900;5%熱重量減少開始温度:310℃、融点:180℃)2.0部使用した以外は、実施例10と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0099】
(実施例12)
発泡剤種をジメチルエーテル3.0部、ノルマルブタン3.5部に変更し、造核剤であるタルクを0.1部使用した以外は、実施例2と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0100】
(実施例13)
発泡剤種をジメチルエーテル3.0部、イソブタン1.0部、ノルマルブタン2.5部に変更し、造核剤であるタルクを0.1部使用した以外は、実施例2と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0101】
(実施例14)
発泡剤種をジメチルエーテル3.0部、イソブタン1.0部、ノルマルブタン2.5部、水0.5部に変更し、臭素系難燃剤をデカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、商品名:SAYTEX 102E;5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)8.0部、難燃助剤として三酸化アンチモン(鈴裕化学製、商品名:FIRE CUT AT−3)2.0部使用し、造核剤であるタルクを0.1部、吸水剤であるベントナイトを1.0部使用した以外は、実施例1と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0102】
(実施例15)
臭素系難燃剤をデカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、商品名:SAYTEX 102E;5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)6.0部使用した以外は、実施例14と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0103】
(実施例16)
臭素系難燃剤をデカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、商品名:SAYTEX 102E;5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)4.0部、及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学製、商品名:CR900;5%熱重量減少開始温度:310℃、融点:180℃)4.0部使用した以外は、実施例14と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0104】
(実施例17)
臭素系難燃剤をデカブロモジフェニルエーテル(アルベマール製、商品名:SAYTEX 102E;5%熱重量減少開始温度:326℃、融点:304℃)5.0部、及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学製、商品名:CR900;5%熱重量減少開始温度:310℃、融点:180℃)5.0部使用した以外は、実施例14と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0105】
(実施例18)
発泡剤種をジメチルエーテル3.0部、イソブタン1.0部、ノルマルブタン2.5部、エタノール1.0部に変更した以外は、実施例17と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0106】
(実施例19)
発泡剤種をジメチルエーテル3.0部、イソブタン1.0部、ノルマルブタン2.5部、水0.5部、エタノール0.5部に変更した以外は、実施例17と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表1に示す。下記の比較例1〜5と比較し、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られた。
【0107】
【表1】

【0108】
(比較例1)
臭素系難燃剤をトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学製、商品名:CR900;5%熱重量減少開始温度:310℃、融点:180℃)2.0部使用した以外は、実施例19と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表2に示す。実施例1〜19と比較して、耐熱性は満足するものの、難燃性を満足することができない。
【0109】
(比較例2)
臭素系難燃剤をトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(大八化学製、商品名:CR900;5%熱重量減少開始温度:310℃、融点:180℃)20部使用した以外は、実施例19と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表2に示す。実施例1〜19と比較して、難燃性は満足するものの、耐熱性を満足することができない。加えて臭素系難燃剤添加量増大に伴い、押出変動に起因する成形不良が生じた。
【0110】
(比較例3)
臭素系難燃剤をテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(アルベマール製、商品名:SAYTEX HP800A;5%熱重量減少開始温度:312℃、融点:110℃)10部使用した以外は、実施例19と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表2に示す。実施例1〜19と比較して、難燃性は満足するものの、耐熱性を満足することができない。加えて臭素系難燃剤の融点が低いことに伴い、樹脂送り不良に起因する成形不良が生じた。
【0111】
(比較例4)
臭素系難燃剤をテトラブロモシクロオクタン(アルベマール製、商品名:SAYTEX BC48;5%熱重量減少開始温度:167℃、融点:103℃)10部使用した以外は、実施例19と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を、表2に示す。実施例1〜19と比較して、難燃性は満足するものの、耐熱性を満足することができない。加えて臭素系難燃剤の融点が低いことに伴う樹脂送り不良、及び難燃剤分解に伴う樹脂劣化に起因する成形不良が生じた。
【0112】
(比較例5)
基材樹脂として、ポリスチレン樹脂(PSジャパン(株)製、商品名:G9401、200℃×5kg条件でのMFR=0.2g/min)に変更し、一段目押出機における加熱温度を約230℃、二段目押出機出口(冷却工程出口)での樹脂温度を約130℃まで冷却し、ダイリップの温度を100℃、成形金型の温度を80℃に温度設定した以外は、実施例19と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を、表2に示す。実施例1〜19と比較して、難燃性は満足するものの、耐熱性を満足することができない。
【0113】
(参考例1)
二段目押出機出口(冷却工程出口)での樹脂温度が240℃となるように冷却し、ダイリップ温度を210℃に変更した以外は、実施例9と同様の条件で押出を行った。しかし、樹脂温度が高いことため、ガス噴出やダイ内発泡によりスリット圧力が低下して、押出成形性が悪化し、粗悪な形状/表面しか得られず、満足な発泡体を得ることができなかった。
【0114】
(参考例2)
二段目押出機出口(冷却工程出口)での樹脂温度が200℃となるように冷却し、成形金型中に水を通過させることにより成形金型温度を30℃に温度設定した以外は、実施例9と同様の条件で押出を行った。しかし、成形金型温度が低いために発泡体内部から膨れが発生することによる表面での割れ等が極めて大きくなり、粗悪な形状/表面しか得られず、満足な発泡体を得ることができなかった。
【0115】
(参考例3)
二段目押出機出口(冷却工程出口)での樹脂温度が240℃となるように冷却し、ダイリップ温度を210℃に変更した以外は、実施例19と同様の条件で押出を行った。しかし、樹脂温度が高いことため、ガス噴出やダイ内発泡によりスリット圧力が低下して、押出成形性が悪化し、粗悪な形状/表面しか得られず、満足な発泡体を得ることができなかった。
【0116】
(参考例4)
二段目押出機出口(冷却工程出口)での樹脂温度が200℃となるように冷却し、成形金型中に水を通過させることにより成形金型温度を30℃に温度設定した以外は、実施例19と同様の条件で押出を行った。しかし、成形金型温度が低いために発泡体内部から膨れが発生することによる表面での割れ等が極めて大きくなり、粗悪な形状/表面しか得られず、満足な発泡体を得ることができなかった。
【0117】
(参考例5)
基材樹脂として、共重合体(B)と、共重合体(C)[(株)日本触媒製、商品名:ポリイミレックスPSX(265℃×10kg荷重条件でのメルトフローレイト(以下、MFR)=0.3g/min、成分比率はN−フェニルマレイミド/スチレン/無水マレイン酸=49%/50%/1%)]とを、実施例9と同等のガラス転移温度になるように調整した樹脂組成物に変更した以外は、実施例9と同様の条件にて押出発泡体を得た。
得られた発泡体の特性を表2に示す。実施例1〜19と同様に、耐熱性、かつ難燃性の優れた発泡体が得られたが、基材樹脂に無水マレイン酸単位を有するために、透湿係数が若干高くなる傾向を示した。
【0118】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アルキル置換マレイミド単位30〜50重量%、芳香族ビニル単位40〜60重量%およびシアン化ビニル単位10〜20重量%からなる(3単位の合計が100重量%)熱可塑性樹脂組成物を発泡させてなる熱可塑性樹脂発泡体であって、
熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、5%熱重量減少開始温度が270℃以上、かつ融点もしくは軟化点が150℃以上である臭素系難燃剤から選ばれる少なくとも1種の難燃剤を3〜15重量部含有してなるものであり、発泡体の厚みが10〜150mmであることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項2】
芳香族ビニル単位がスチレン単位であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項3】
N−アルキル置換マレイミド単位がN−フェニルマレイミド単位であることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項4】
シアン化ビニル単位がアクリロニトリルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項5】
発泡体の透湿係数が160ng/m・s・Pa以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項6】
5%熱重量減少開始温度が270℃以上、かつ、融点もしくは軟化点が150℃以上の臭臭素系難燃剤が、デカブロモジフェニルエーテル、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルコポリマーのトリブロモフェノール付加物、2,4,6ートリス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)1,3,5ートリアジンまたは、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項7】
さらに、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、難燃助剤としてアンチモン化合物を0.1〜5重量部含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項8】
アンチモン化合物が三酸化アンチモンであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡体。

【公開番号】特開2009−263443(P2009−263443A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112299(P2008−112299)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】