説明

熱可塑性樹脂発泡成形体及びその製造方法

【課題】外観に優れ、セル構造を均一にし、発泡セルの微細性に優れた熱可塑性樹脂発泡成形体を提供する。
【解決手段】プロピレン系重合体(A)40〜99質量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)1〜60質量%(ただし、プロピレン系重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計を100質量%とする)と、前記プロピレン系重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)以外の重合体であって、下記の要件(1)〜(5)を全て満たすプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(C)5〜20重量部と、有機ポリマービーズ(D)0.1〜20質量部と、を含むプロピレン系樹脂組成物を溶融し、この溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に物理発泡剤として二酸化炭素を溶解して発泡成形して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡成形体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性等に優れ、経済性とのバランスにおいて極めて有用なため各成形分野に広く用いられている。
ポリプロピレンの発泡成形体が得られる組成物又はポリプロピレン成形発泡体を得る手段として、例えば、メタロセン担持型触媒を用いて製造された、プロピレン及びα,ω−ジエンからなる共重合体、該共重合体に発泡剤が含有されたポリプロピレン系樹脂組成物、該組成物を加熱、溶融、混練、発泡成形した発泡体、ならびに、該発泡体を成形した発泡成形体が開示されている(特許文献1参照)。
さらには、熱可塑性樹脂に、発泡剤として不活性ガスを、発泡核剤としてポリカルボン酸と炭酸水素塩を含有する組成物を射出発泡成形する方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−316510号公報
【特許文献2】特開2002−264164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたポリプロピレン系樹脂組成物は、必ずしも発泡
性が充分ではなく、高発泡倍率の発泡体、あるいは、緻密な発泡セル構造を有する発泡体
を得ることは困難である。また、特許文献2に開示された方法によって得られた成形品では成形品表面にシルバーストリークが発生してしまう可能性があり、外観を満足させるものではなかった。
【0005】
以上の課題に鑑み、本発明は外観に優れ、セル構造を均一にし、発泡セルの微細性に優れた熱可塑性樹脂発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下の構成を採用することにより上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、プロピレン系重合体(A)40〜99質量%と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)1〜60質量%(ただし、プロピレン系重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計を100質量%とする)と、前記プロピレン系重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して、
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)以外の重合体であって、下記の要件(1)〜(5)を全て満たすプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(C)5〜20重量部と、有機ポリマービーズ(D)0.1〜20質量部と、を含むプロピレン系樹脂組成物を溶融し、この溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に発泡剤として二酸化炭素を溶解して発泡成形して得られることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体及びその製造方法を提供するものである。
要件(1):α−オレフィンの炭素数が4〜20
要件(2):分子量分布が1〜4
要件(3):極限粘度が0.5〜10dl/g
要件(4):融解熱量が30J/g以下
要件(5):エチレン含有量が60モル%以下
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外観に優れ、セル構造を均一にし、発泡セルの微細性に優れた熱可塑性樹脂発泡成形体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例で用いた熱可塑性樹脂発泡成形体の斜視図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る熱可塑性樹脂発泡成形体(以下、発泡体とする)はプロピレン系重合体(A)と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)と、所定のプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(C)と、有機ポリマービーズ(D)と、を含有するプロピレン系樹脂組成物に物理発泡剤を溶解して発泡成形させて得られるものである。
〔プロピレン系重合体(A)〕
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体(A−1)及びプロピレン−エチレン共重合体(A−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
プロピレン−エチレン共重合体(A−2)としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A−2−1)又は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)が挙げられる。ここで、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分とからなる共重合体をいう。
上記(A−1)及び(A−2)の中で、発泡体の剛性、耐熱性又は硬度を高めるという観点から、プロピレン系重合体(A)として、プロピレン単独重合体(A−1)又は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)を用いることが好ましい。
【0011】
プロピレン単独重合体(A−1)の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)中のプロピレン単独重合体成分の、13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
【0012】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、プロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。アイソタクチック・ペンタッド分率の測定方法は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定される方法である。(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて決定した)。
【0013】
具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。この方法によって測定された英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.944であった。
【0014】
上記プロピレン単独重合体(A−1)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η])、ブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η])、ランダム共重合体(A−2−1)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η])は、0.7〜5dl/gであり、好ましくは0.8〜4dl/gである。
【0015】
また、プロピレン単独重合体(A−1)、ブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分、ランダム共重合体(A−2−1)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Q値、Mw/Mn)として、好ましくは3以上7以下である。
【0016】
上記ブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分に含有されるエチレン含有量は20〜65質量%、好ましくは25〜50質量%である(ただし、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の全量を100質量%とする)。
【0017】
上記ブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される極限粘度([η]EP)は、1.5〜12dl/gであり、好ましくは2〜8dl/gであり、さらに好ましくは3〜8dl/gである。
【0018】
上記ブロック共重合体(A−2−2)を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の含有量は、10〜60質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。
【0019】
上記プロピレン単独重合体(A−1)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜400g/10分であり、好ましくは1〜300g/10分である。但し、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。
【0020】
上記プロピレン−エチレン共重合体(A−2)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜200g/10分であり、好ましくは5〜150g/10分である。但し、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。
【0021】
上記プロピレン系重合体(A)の製造方法としては、例えば、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
上記プロピレン系重合体(A)の製造方法で用いられる公知の重合触媒としては、例えば、(1)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と、(2)有機アルミニウム化合物と(3)電子供与体成分からなる触媒系が挙げられる。この触媒の製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報や特開平10−212319号公報に記載されている製造方法が挙げられる。
【0022】
上記の製造方法で用いられる重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも良く、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)の製造方法として、好ましくは、前記の固体触媒成分(1)と、有機アルミニウム化合物(2)と電子供与体成分(3)からなる触媒系の存在下に少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、上記プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体成分を製造した後、製造された前記成分を次の重合槽に移し、その重合槽でプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を連続して製造して、プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する方法である。
上記の製造方法で用いられる固体触媒成分(1)、有機アルミニウム化合物(2)及び電子供与体成分(3)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、適宜、決めればよい。
【0024】
重合温度は、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いてもよい。
【0025】
上記プロピレン系重合体(A)の製造において、本重合を実施する前に、公知の方法によって、予備重合を行ってもよい。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(1)及び有機アルミニウム化合物(2)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0026】
〔エチレン−α−オレフィン共重合体(B)〕
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物は、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を含む。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)としては、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体、又は、これらの混合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。
【0027】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)に用いられるα−オレフィンは、炭素数4〜20のα−オレフィンである。例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン及び1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンが好ましく、1−ブテンがより好ましい。
【0028】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)は1〜50g/10分であり、より好ましくは10〜40g/10分であり、さらに好ましくは10〜35g/10分である。上記の数値の範囲内であると微細なセルを有する発泡体を得ることが可能となる。
【0029】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度は、好ましくは0.85〜0.89g/cmであり、より好ましくは0.85〜0.88g/cmであり、さらに好ましくは0.86〜0.88g/cmである。上記の数値の範囲内であると、発泡成形性に優れるプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。また、均一性及び微細性に優れた発泡体を得ることができる。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)中に含有されるエチレンの含有量は、40〜90質量%であることが好ましい。なお、エチレンの含有量は、赤外吸収スペクトル法により求めることが可能である。
【0030】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造方法としては、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等によって、所定のモノマーを、メタロセン系触媒を用いて重合する方法が挙げられる。メタロセン系触媒としては、例えば、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報及び特表平10−508055号公報等に記載されているメタロセン系触媒が挙げられる。メタロセン系触媒を用いるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造方法として、好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書に記載されている方法が挙げられる。
【0031】
上記プロピレン系重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の含有割合としては、プロピレン系重合体(A)が40〜99質量%、好ましくは、60〜95質量%、さらに好ましくは70〜95質量%である。含有量が40質量%未満の場合は、成形体の剛性が低下する可能性がある。また含有量が99質量%より多い場合は、衝撃強度が低下する可能性がある。エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の含有量としては、1〜60質量%、好ましくは、5〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である(但し、(A)と(B)の合計量を100質量%とする)。
【0032】
〔プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(C)〕
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物は、上記前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)以外の重合体であって、下記要件(1)〜(5)を全て満たすプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(C)(以下、共重合体(C)ともいう)を含有する。このような共重合体(C)を含有することにより、発泡体の製造時にシルバーストリークやコルゲーション等の外観不良が発生することを防止することが可能となる。
要件(1):α−オレフィンの炭素数が4〜20
要件(2):分子量分布が1〜4
要件(3):極限粘度が0.5〜10dl/g
要件(4):融解熱量が30J/g以下
要件(5):エチレン含有量が60モル%以下
【0033】
上記要件(1)において、炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、直鎖状のα−オレフィン、分岐状のα−オレフィンが挙げられる。直鎖状のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセン等が挙げられる。分岐状のα−オレフィンとしては、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン等が挙げられる。
このうちα−オレフィンとして1−ブテンを用いることが好ましい。
【0034】
上記要件(2)において、共重合体(C)の分子量分布は、1〜4である。なお、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)であり、これらはゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンを分子量標準物質として測定した値を用いる。
上記要件(3)において、共重合体(C)の極限粘度[η]は、0.5〜10dl/gであり、好ましくは0.9〜5dl/gであり、より好ましくは1.2〜3dl/gである。なお、極限粘度は135℃のテトラリン溶媒中で測定した固有粘度である。
【0035】
上記要件(4)において、共重合体(C)の融解熱量は、30J/g以下であり、好ましくは20J/g以下であり、より好ましくは10J/g以下であり、さらに好ましくは、0J/gである。なお、融解熱量はDSCによって測定した値を用いる。
上記要件(5)において、共重合体(C)中のエチレン含有量は、エチレン含有量が60モル%以下であり、好ましくは55モル%以下である。また、共重合体(C)中のプロピレンの含有量は、5〜99モル%であることが好ましく、25〜99モル%であることがより好ましく、35〜99モル%であることが更に好ましい。また、α−オレフィン含有量は、1〜35モル%であることが好ましく、1〜20モル%であり、さらに好ましくは1〜10モル%である。(ただし、いずれの含有量もプロピレン含有量、エチレン含有量、α−オレフィン含有量の合計を100モル%とする。)
【0036】
また、上記要件(5)は、下記式を満たすことが好ましい。
0.1<[y/(x+y)]≦1.0
より好ましくは、0.5<[y/(x+y)]≦1.0であり、
さらに好ましくは、0.8<[y/(x+y)]≦1.0である。
〔式中、xは(C)中のエチレンのモル含有量を表し、yは(C)中のα−オレフィンのモル含量の合計を表す。〕
【0037】
共重合体(C)の製造方法としては、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等によって、所定量のプロピレン、エチレン及びα−オレフィンを、メタロセン系触媒を用いて重合する方法が挙げられる。
メタロセン系触媒としては、例えば、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載されているメタロセン系触媒が挙げられる。
メタロセン系触媒を用いる共重合体(C)の製造方法として、好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書に記載されている方法が挙げられる。
【0038】
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(C)の添加量としては、前記プロピレン系重合体(A)と前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して、5〜20質量部であり、好ましくは5〜15質量部である。プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(C)が5質量部以下であると、発泡体の製造時にシルバーストリークやコルゲーション等の外観不良が発生することがある。また20質量部を超えると曲げ弾性率や衝撃強度が低い発泡体が得られる場合がある。
【0039】
〔有機ポリマービーズ(D)〕
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物は、有機ポリマービーズ(D)を含む。
本発明に用いられることができる有機ポリマービーズ(D)は、架橋された有機ポリマービーズであることがより好ましい。
有機ポリマービーズ(D)は、例えば、一般的な乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法、ソープフリー重合法、シード重合法等を用いて得ることができる。有機ポリマービーズの重合に使用できるモノマー種の例としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー等を挙げることができる。(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、アクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸エチル・アクリル酸ブチル等のアクリル酸又はアクリル酸のエステル誘導体、メタクリル酸・メタクリル酸メチル・メタクリル酸エチル・メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸又はメタクリル酸のエステル誘導体を挙げることができる。スチレン系モノマーの具体例としては、スチレン・メチルスチレン・エチルスチレン・ブチルスチレン・プロピルスチレン等のスチレン誘導体、また、その他モノマーとしては、酢酸ビニル・塩化ビニル・塩化ビニリデン・アクリロニトリル・メタクリロニトリル等の重合性ビニルモノマーを挙げることができる。これらのモノマーのうち、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマーを用いることが好ましい。これらのモノマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明に用いられることができる有機ポリマービーズ(D)の重合には架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては、ビニル基を2つ以上含有するラジカル重合可能なモノマーであればよい。そのような具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリストールテトラメタアクリレートが挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
また上記以外の有機ポリマービーズとして、1以上の有機基を有するシロキサン系ポリマービーズが挙げられる。シロキサン系ポリマービーズとは、一般的にシリコーンゴム、シリコーンレジンと呼称されるものであり、常温で固体状のものを指す。
有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、炭化水素環基等が例示できる。
シロキサン系ポリマーは主にオルガノクロロシラン類の加水分解と縮合によって製造される。
例えば、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランに代表されるオルガノクロロシラン類を加水分解と縮合することにより、シロキサン系ポリマーを得ることができる。
これらのオルガノクロロシラン類は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
また、上記オルガノクロロシラン類とテトラクロロシラン等とを加水分解と縮合によってもシロキサン系ポリマーを得ることができる。
さらに、これらのシロキサン系ポリマーを過酸化ベンゾイル、過酸化−2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化−p−クロルベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の過酸化物により架橋したり、シロキサン系ポリマーの末端にシラノール基を導入し、アルコキシシラン類と縮合架橋させたりすることにより架橋シロキサン系ポリマービーズを得ることができる。
また、本発明に用いられることができる有機ポリマービーズ(D)は、多孔質のポリマービーズであってもよい。
これらの中でも、本発明に用いられることができる有機ポリマービーズ(D)は、架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ、架橋シロキサン系ポリマービーズ、又は、架橋ポリスチレンポリマービーズであることが好ましく、架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ、又は、架橋シロキサン系ポリマービーズであることがより好ましく、架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズであることが特に好ましい。
【0043】
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物に含まれる有機ポリマービーズ(D)の含有量は、前記プロピレン系重合体(A)と前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部であり、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜6質量部である。含有量が0.1質量部以下であると、セルが粗大で不均一な発泡体が得られることがある。また含有量が20質量部以上であると、製造コストが高くなり、かつ、発泡体の機械物性が不足となる場合がある。
【0044】
有機ポリマービーズの重量平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.1〜6μmである。また、ポリマービーズの形状は、球状、楕円状、破砕状等が挙げられる。
本発明における有機ポリマービーズの重量平均粒子径は、コールターカウンター法により測定した値を用いている。
【0045】
〔無機フィラー(E)〕
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、無機フィラー(E)をさらに含有していてもよい。
本発明に用いられることができる無機フィラー(E)としては、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、ベントナイト、スメクタイト、マイカ、セピオライト、ワラストナイト、アロフェン、イモゴライト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、硫酸バリウム、ガラスフレーク等が挙げられるが、好ましくはタルク及び繊維状マグネシウムオキシサルフェートであり、より好ましくはタルクである。これらの無機フィラーは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
無機フィラー(E)の平均粒子径としては、好ましくは0.01〜50μmであり、より好ましくは0.1〜30μmであり、さらに好ましくは0.1〜5μmである。ここで無機フィラー(E)の平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0047】
無機フィラー(E)は、無処理のまま使用してもよく、樹脂組成物との界面接着強度を向上させるために、又は、樹脂組成物中での無機フィラーの分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で無機フィラーの表面を処理して使用してもよい。
【0048】
無機フィラー(E)の含有量としては、前記プロピレン系重合体(A)と前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜60質量部、より好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは1〜10質量部である。
【0049】
〔添加剤〕
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤を添加してもよい。
本発明に用いられることができる添加剤としては、特に制限はなく、公知の添加剤を用いることができる。例えば、中和剤、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、分散剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤、難燃剤、気泡防止剤、架橋剤、着色剤、顔料等が挙げられる。
【0050】
プロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(測定温度は230℃、荷重は2.16kg)は、好ましくは40〜200g/10分であり、より好ましくは40〜150g/10分であり、さらに好ましくは40〜120g/10分である。上記範囲内であると、流動性が好適であり、発泡成形時にバリ等の外観不良が発生しにくくなる。
【0051】
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物の製造方法は、各成分を混練する方法が挙げられ、混練に用いられる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。混練温度としては170〜250℃であり、混練時間は20秒〜20分である。また、各成分の混練は同時に行ってもよく、分割して行ってもよい。例えば樹脂組成物の各成分を所定量計量し、タンブラー等で均一に予備混合する工程と、予備混合物を溶融混練する工程とを含むことが好ましい。
【0052】
〔熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法〕
本発明の発泡体は、下記の工程を経て得られる。発泡体の形状は、特に限定されず、公知の如何なる形状のものであってもよい。
工程(1):溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に発泡剤として二酸化炭素を溶解する工程
工程(2):発泡剤を溶解させた前記プロピレン系樹脂組成物を、一対の金型にて形成される金型キャビティにキャビティ容積以下の体積となるように充填する工程
工程(3):金型キャビティ内に充填された前記プロピレン系樹脂組成物を冷却する工程
工程(4):前記金型キャビティの容積を増加して前記プロピレン系樹脂組成物を発泡させる工程
工程(5):金型を開き、得られた発泡体を取り出す工程
【0053】
上記工程(1)において、溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に発泡剤を溶解する方法としては、発泡剤を射出成形装置のノズル又はシリンダ内に注入する方法が挙げられる。溶融状態のプロピレン系樹脂組成物と発泡剤とを均一に溶解しやすいことから、シリンダ内に発泡剤を注入する方法が好ましい。
発泡剤は上記の二酸化炭素に加え、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の不活性ガス、ブタン、ペンタン等のフロン以外の揮発性有機化合物等の物理発泡剤を併用して用いてもよい。物理発泡剤を併用したときの物理発泡剤全体に含まれる二酸化炭素の濃度は50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0054】
また、二酸化炭素は、超臨界状態であることが好ましい。超臨界状態の二酸化炭素は樹脂への溶解性が高く、短時間で溶融状態のプロピレン系樹脂組成物中に均一に拡散することができるため、発泡倍率が高く、均一な発泡セル構造をもつ発泡体を得ることができる。
【0055】
上記工程(2)において、発泡剤を溶解させたプロピレン系樹脂組成物の金型キャビティへの充填は、所謂射出成形法を用いて行われる。プロピレン系樹脂組成物の射出方法は、特に限定されるものでなく、単軸射出、多軸射出、高圧射出、低圧射出、プランジャーを用いる射出方法等が挙げられる。また、射出発泡成形は、ガスアシスト成形、メルトコア成形、インサート成形、コアバック成形、2色成形等の成形方法と組み合して行ってもよい。
【0056】
金型キャビティ内に充填されるプロピレン系樹脂組成物は、金型キャビティ容積以下の体積となるように充填される。これにより、発泡体の製造時に、シルバーストリーク等の外観不良が発生することを抑制することができる。
【0057】
射出発泡成形における温度条件は、射出成形機のシリンダ温度が150℃〜300℃、好ましくは180℃〜270℃であり、より好ましくは200〜260℃であり、キャビティ温度が0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃、より好ましくは40℃〜60℃である。
シリンダ温度が150℃未満では樹脂をキャビティ内に充填することが困難になり、外観も悪化するため好ましくなく、シリンダ温度が300℃より高いとプロピレン系樹脂組成物が熱により劣化し、成形体の機械物性が低下するおそれがある。
金型温度が0℃未満ではキャビティ内への充填性と外観が悪化する恐れがあり、100℃以上では発泡体を冷却時間が長くなりすぎる恐れがある。
成形時の背圧は、2MPa〜30MPa、好ましくは5MPa〜20MPaである。背圧をこのような範囲とすることにより、溶融状樹脂組成物がシリンダ内で発泡してしまうのを防止することができる。
【0058】
また、金型キャビティ内の圧力は特に限定されないが好ましくは大気圧以下、より好ましくは大気圧未満である。そのため、上記工程(1)の後に、金型キャビティ内の圧力を大気圧以下とする工程をさらに有していてもよい。金型キャビティ内の圧力を大気圧以下とする方法としては、少なくとも一方の金型として真空吸引可能な金型を用い、予めキャビティ内を真空吸引しておく方法が挙げられる。金型キャビティの圧力は樹脂充填時においても大気圧以下にしておくことが好ましい。
大気圧以下の圧力となった金型キャビティに発泡剤を含む溶融状態のプロピレン系樹脂組成物を供給するため、溶融状態のプロピレン系樹脂組成物とキャビティ壁面との間にガスが入り込むことがなく、得られる発泡体は表面に凹みのない、外観良好なものとなる。
【0059】
上記工程(3)において、金型キャビティ内に充填されたプロピレン系樹脂組成物の冷却温度は、プロピレン系重合体(A)の(結晶化温度−15℃)以上、(結晶化温度+15℃)以下であることが好ましい。このような温度とすることにより、所望の発泡倍率でかつ、微細なセルを有する発泡体を得ることができる。
【0060】
上記工程(4)において、金型キャビティの容積を増加して前記プロピレン系樹脂組成物を発泡させる方法としては、例えば、金型キャビティ面を後退させてキャビティ全体を拡大する方法、スライドコアを用いて部分的及び/又はキャビティ全体を拡大する方法が挙げられる。
【0061】
上記工程(1)〜(5)により得られる発泡体の形状は、特に限定されず、公知の如何なる形状のものであってもよい。なお、発泡体の発泡倍率は、樹脂組成物の密度を発泡体1全体の密度で除した値であり、1倍を越え10倍以下であることが好ましく、1.5倍〜5倍であることがより好ましく、2倍〜4倍であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の発泡体は電気部品や自動車用部品、その他の工業用製品などの用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
(1)プロピレン系重合体(A)
プロピレン系重合体(A)として、下記の方法で調製した固体触媒成分を用いて気相重合法により製造されたプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いた。
このプロピレン−エチレンブロック共重合体の諸物性は以下の通りである。
MFR:80g/10分
プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度[η]:1.4dl/g
プロピレン単独重合体成分の固有粘度[η]:0.8dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体
全体に対する質量比率:12質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度[η]EP:7.0dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン単位含量:32質量%
【0065】
実施例および比較例で用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体は、特開2004
−182876号公報に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分、および、そのα−オ
レフィン重合用固体触媒成分の製造方法に準拠して調製した固体触媒成分を用いて、気相
重合により製造した。
【0066】
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
エチレン−α−ブテン共重合体ゴム
商品名:CX5505(住友化学(株)製)
密 度:0.878(g/cm
MFR(190℃、2.16kg荷重):14(g/10分)
【0067】
(3)プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C)
(3−1)プロピレン−1−ブテン共重合体(C)の製造
冷却水を循環させるためのジャケットを外部に取り付けた、攪拌機付のSUS製重合器(100L)の下部から、重合溶媒としてヘキサンを100L/時間の速度で、プロピレンを24.00Kg/時間の速度で、1−ブテンを1.81Kg/時間の速度で、重合触媒成分として、特開平9−87313号公報の実施例25に記載の、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.005g/時間の速度で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.298g/時間の速度で、トリイソブチルアルミニウムを2.315g/時間の速度で、分子量調節剤としての水素を、それぞれ連続的に供給し、45℃で連続的に共重合させた。
【0068】
重合器中の反応混合物が100Lの量を保持するように、重合器の上部から連続的に抜き出された反応混合物に、少量のエタノールを添加して重合反応を停止させた後、脱モノマー及び水洗浄し、次いで、大量の水中でスチームによって溶媒を除去することによって、プロピレン−1−ブテン共重合体(C)を得、これを80℃で1昼夜減圧乾燥した。該共重合体の生成速度は7.10Kg/時間であった。得られた共重合体(C)の構造を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
(4)有機ポリマービーズ(D)
架橋ポリメタアクリル酸メチルポリマービーズ
商品名:エポスター MA1002(日本触媒(株)製)
粒径:2.0μm
【0071】
(5)有機過酸化物
商品名:パーカドックス14R−P(ビス(t−ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼ
ン(化薬アクゾ(株)製))
【0072】
[評価方法]
(1)メルトフローレート(MFR)
プロピレンから誘導される繰り返し単位を主成分とする樹脂については、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgなる条件で測定した。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)については、JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgなる条件で測定した。
【0073】
(2−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の固有粘度
(2−1−a)プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]
プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]はその製造時に、プロピレン単独重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体の[η]を測定して求めた。
【0074】
(2−1−b)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度:[η]EP
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度:[η]EPは、プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]とプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度:[η]をそれぞれ測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。
[η]EP=[η]/X−(1/X−1)[η]
[η]:プロピレン単独重合体部分の固有粘度(dl/g)
[η]:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度(dl/g)
【0075】
(2−1−c)プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の質量比率:X
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率(X)は、プロピレン単独重合体成分(第1セグメント)とプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示唆走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ブロック共重合体全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:プロピレン単独重合体成分の融解熱量(cal/g)
【0076】
(3)プロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量:(C2´)EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量:(C2´)EPは、赤外線吸収スペクトル法によりプロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量(C2´)Tを測定し、次式を用いて計算により求めた。
(C2´)EP=(C2´)T/X
(C2´)T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量(質量%)
(C2´)EP:プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量(質量%)
X:プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する質量比率
【0077】
(4)共重合体(C)の融解熱量
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製DSC RDC220)を用い以下の条件で測定した。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持した。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で−100℃まで降温した。
(iii)上記の降温完了後、5分間、保持した後、−100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。
(iv)において観察されるピークが融解ピークであり、ピーク面積から融解熱量を算出した。
【0078】
(5)共重合体(C)の分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法を用い、下記の条件により測定を行った。
得られた結果から、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を算出し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
装置:Waters社製 150C ALC/GPC
カラム:昭和電工社製Shodex Packed ColumnA−80M 2本
温度:140℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/min
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:400μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
【0079】
(6)発泡体の外観評価(シルバーストリーク)
発泡成形により得られたポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡体3のゲート部1から100mm離れた部位の図1に示した直径60mmの円の範囲(シルバーストリークを評価した部位)2を、目視で評価し、以下に示したとおりに判定した。
○:発泡体の表面のシルバーストリークが目視では確認できない
△:シルバーストリークがやや目立つ
×:シルバーストリークが目立つ
【0080】
(7)発泡倍率
発泡体の発泡倍率は、比重計(ミラージュ貿易株式会社製、電子比重計EW−200SG)で比重を測定し、未発泡の成形体の比重を発泡体の比重で割った値で示した。
【0081】
(8)セルの微細性及びセルの均一性
発泡体を切断して、その断面を顕微鏡(スカラ株式会社製、デジタル現場顕微鏡、DG−3)にて観察し、セル状態を撮影した。撮影した発泡断面で、スキン層近傍と発泡層中央部で任意の500μm角の正方形を選び出し、各正方形中の気泡径を測定し平均値を算出したものを用いた。その結果、セルの微細性に関しては平均セル径が200μm未満であるものを○とし、平均セル径が200μm以上であるものを×とした。セルの均一性に関しては、均一で微細なセル構造を有しているものを○とし、セルの合一、連通が発生しセルの大きさと形状が不均一なセルを有しているものを×とした。
【0082】
〔実施例1〕
表2に示す各成分を所定量、計量し、タンブラーで均一に予備混合した。次いで、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44SS 30BW−2V型)を用いて、押出量30〜50kg/hr、スクリュー回転数300rpm、ベント吸引下で混練押出して、プロピレン重合体組成物ペレットを製造した。
このペレットを用い、射出成形機として、エンゲル社製ES2550/400HL−MuCell(型締力400トン)、金型として、図1に示される成形品部寸法が350mm×450mm、高さ105mm、厚み1.5mmtの箱型形状(ゲート構造:バルブゲート、配置は図1参照)を有するものを用いて発泡成形を実施した。発泡剤としては表2に示す通り、前記射出成形機のシリンダ内に10MPaに加圧された超臨界状態の二酸化炭素を供給し、所定量溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に溶解させ、成形温度250℃、型温50℃で、金型内にフル充填するように射出した。射出充填後4.5秒経過した後、金型のキャビティ壁面を2mm後退させキャビティ容積を拡大し、プロピレン系樹脂組成物を発泡させた。そして発泡樹脂を冷却・固化して発泡体を得た。得られた発泡体のゲートAから150mmの部位(図中の符号5)にて評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
〔比較例1〕
発泡剤として、二酸化炭素の替わりに窒素を用いた以外は実施例1と同様の方法で発泡体を製造し、評価した。
【0084】
〔比較例2,3〕
プロピレン系樹脂組成物の組成を表2のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で発泡体を製造し、評価した。
【0085】
【表2】

【符号の説明】
【0086】
1:ゲートA接触部分
2:ゲートB接触部分
3:ゲートC接触部分
4:開口部
5:ゲートから150mm離れた部位(発泡体の断面評価をした部位)
6:発泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)40〜99質量%と、
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)1〜60質量%(ただし、プロピレン系重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計を100質量%とする)と、
前記プロピレン系重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して、
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)以外の重合体であって、下記の要件(1)〜(5)を全て満たすプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(C)5〜20重量部と、
有機ポリマービーズ(D)0.1〜20質量部と、を含むプロピレン系樹脂組成物を溶融し、
この溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に発泡剤として二酸化炭素を溶解して発泡成形して得られることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体。
要件(1):α−オレフィンの炭素数が4〜20
要件(2):分子量分布が1〜4
要件(3):極限粘度が0.5〜10dl/g
要件(4):融解熱量が30J/g以下
要件(5):エチレン含有量が60モル%以下
【請求項2】
前記有機ポリマービーズの質量平均粒子径が0.1〜20μmである請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項3】
前記二酸化炭素は、超臨界状態である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法であって、下記の工程を有する熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
工程(1):溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に発泡剤として二酸化炭素を溶解する工程
工程(2):発泡剤を溶解させた前記プロピレン系樹脂組成物を、一対の金型にて形成される金型キャビティにキャビティ容積以下の体積となるように充填する工程
工程(3):金型キャビティ内に充填された前記プロピレン系樹脂組成物を冷却する工程
工程(4):前記金型キャビティの容積を増加して前記プロピレン系樹脂組成物を発泡させる工程
工程(5):金型を開き、得られた熱可塑性樹脂発泡成形体を取り出す工程
【請求項5】
前記工程(1)の後に、前記金型キャビティ内の圧力を大気圧以下とする工程をさらに有する請求項4に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−839(P2011−839A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147290(P2009−147290)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】