説明

熱可塑性樹脂組成物、その成形体、及び成型方法

【課題】溶融強度が高く優れた成形加工性を有する熱可塑性樹脂組成物、及び該組成物をを成形して得られる優れた外観を有する成形体を提供する。
【解決手段】熱可塑性組成物は、重量平均分子量が1万以上、100万未満の高分子(A)100重量部、重量平均分子量が100万以上、1000万未満であり、その分子中に10〜1000個のカルボキシル基を有する高分子(B1)0.5〜15重量部、及び重量平均分子量が100万以上、500万未満であり、その分子中に10〜1000個のエポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を有する高分子(B2)0.5〜15重量部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の高分子を含む熱可塑性樹脂組成物、及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、塩化ビニル系樹脂はその特性を活かして成形材料等に広く用いられているが、熱分解温度が加工温度に近く加工幅が狭い、流動性に乏しいなど種々の加工に関する問題を有している。しかし、メタクリル酸メチルを主成分とする高分子量の(メタ)アクリル系重合体粉体を配合することで、塩化ビニル系樹脂の成形加工時におけるゲル化を促進したり、成形体の外観を向上したりする改良を加えられることで、真空成形や異型押出成形にも適用可能となることが知られている。
【0003】
一方、塩化ビニル系樹脂の成形方法の一つに発泡成形があり、この成型方法を用いることで塩化ビニル系樹脂を軽量化し、木材代替材料として用いる試みがなされている。しかしながら、塩化ビニル系樹脂に高分子量の(メタ)アクリル系重合体粉体を加えて発泡成形体を製造する場合には、塩化ビニル系樹脂の溶融伸び、溶融強度が不足するため、発泡成形体が十分に発泡しない、発泡セルが不均一になる等、その製造には課題があった。また、塩化ビニル系樹脂は、成形加工幅が狭いために、加工条件を変更するだけでは外観に優れ、かつ、十分な発泡倍率を有する発泡成形体を得ることは困難であった。
【0004】
これらの欠点を克服するために超高分子量のメタクリル酸メチルを主成分とする(メタ)アクリル系重合体粉体を配合することで溶融強度を付与させ、外観を損なうことなく十分な発泡倍率を有する塩化ビニル系樹脂を得る方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照のこと。)。この方法によれば、発泡成形体の外観を損なうことなく高い発泡倍率の塩化ビニル系発泡成形体を得ることが可能である。
【0005】
しかしながら、このような超高分子量の(メタ)アクリル系重合体粉体を塩化ビニル系樹脂に添加した場合には、(メタ)アクリル系重合体の塩化ビニル系樹脂への分散が不十分であるため溶融強度の向上が不十分であるだけでなく、セル径が大きくなったり発泡成形体が収縮したりするために発泡成形体の外観を損なうという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2には、均質で有用な熱可塑性樹脂製品を調整しうる、改良された溶融加工挙動を示すコームコポリマーやブロックコポリマーのようなセグメントコポリマーを含む熱可塑性溶融ブレンドを形成する方法であって、(a)熱可塑性ポリマーおよびセグメントコポリマーを含む粉末またはペレット形態である固形ブレンドを形成する工程、および(b)前記固形ブレンドを混合および加熱して、溶融ブレンドを形成する工程、を含む方法であって、前記溶融ブレンドが、少なくとも10の値を示す溶融加工改良項、即ち、このようなセグメントポリマーをポリマー添加剤として添加することにより、融解時間が短くなり、融解温度が低くなり、平衡トルクが大きくなり溶融粘度即ち溶融強度が増加する、これらを総合した溶融加工性を高くする方法が開示されている。
【0007】
ここで、「コームコポリマー」は、グラフトコポリマーのポリマー主鎖が基本的に線状であり、グラフトコポリマーの各側鎖(グラフトセグメント)が、ポリマー主鎖にグラフトされる「マクロモノマー」によって形成されることを特徴としており、例えば、コームコポリマーは、従来のモノマー(例えば、第二のエチレン性不飽和モノマー)を有するマクロモノマーのフリーラジカル共重合化によって調製されうるとしており、このマクロモノマーは、フリーラジカル開始剤および触媒性金属キレート連鎖移動剤(例えば、遷移金属キレート)の存在下で第一のエチレン性不飽和モノマーを重合することによって調製することが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−255717公報
【特許文献2】国際公開2002/022715号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、樹脂組成物の溶融強度が高く優れた成形加工性を有する樹脂組成物を成形して得られる優れた外観を有する成形体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の高分子(B1)、及び特定の高分子(B2)から形成される高分子(B)を加工性改良剤として含むマトリクス樹脂である高分子(A)の成形体では上記課題が解決された成形体となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、重量平均分子量が1万以上、100万未満の高分子(A)100重量部、重量平均分子量が100万以上、1000万未満であり、その分子中に10〜1000個のカルボキシル基を有する高分子(B1)0.5〜15重量部、及び重量平均分子量が100万以上、500万未満であり、その分子中に10〜1000個のエポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を有する高分子(B2)0.5〜15重量部を含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0012】
好ましい実施態様は、前記高分子(B1)、及び前記高分子(B2)を、直鎖状高分子とすることである。
【0013】
好ましい実施態様は、前記高分子(B1)、及び前記高分子(B2)を、(メタ)アクリル系重合体とすることである。
【0014】
好ましい実施態様は、前記熱可塑性樹脂組成物であって、さらに、重量平均分子量が5000以上、15万以下であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜40℃の(メタ)アクリル系重合体を高分子補助剤として0.5〜5重量部を含む、熱可塑性樹脂組成物とすることである。
【0015】
好ましい実施態様は、さらに、発泡剤を0.1〜3重量部を含む発泡成形用熱可塑性樹脂組成物とすることである。
【0016】
好ましい実施態様は、前記発泡剤を、アゾ系発泡剤とすることである。
【0017】
また、本発明は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形体に関する。
【0018】
また、本発明は、本発明の熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、本発明の前記熱可塑性樹脂組成物を、140〜350℃の温度で、30秒〜10分間溶融混練する工程を含み、この工程により、前記高分子(B1)と、前記高分子(B2)とを縮合せしめることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、その溶融成型時に溶融強度を大きくすることができるので、優れた成形体外観を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(熱可塑性樹脂成形体)
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、マトリクス樹脂である重量平均分子量が1万以上、100万未満の高分子(A)100重量部、及び特定の高分子(B1)、及び特定の高分子(B2)から形成される特定の高分子(B)を含む熱可塑性樹脂成形体なので、その溶融成型時に溶融強度を大きくすることができ、その為、優れた成形体外観を有し、かつ、溶融成形時の例えば押出方向、及びその直角方向の全方位で強度が改善されている。
【0021】
この高分子(B)は、その構造、特に成形体中でのその構造を実際に特定することは現段階では困難であるが、前述の構造のものが、これらの原料から溶融成型時に形成されると考えられる。
【0022】
この高分子(B)は、例えば、(メタ)アクリル系重合体とすることができ、1本から数本の直鎖高分子、及び1〜500個の側鎖高分子からなり、かつ、前記直鎖高分子上の1〜500個の分岐構造により、前記1〜500個の側鎖高分子が、前記直鎖高分子にグラフトされてなる。好ましくは、前記直鎖高分子の前駆体である高分子(B1)、及び前記側鎖高分子の前駆体である高分子(B2)の反応生成物であり、より好ましくは前記直鎖高分子、又は高分子(B1)の重量平均分子量を100万〜1000万とし、かつ、前記側鎖高分子、又は高分子(B2)の重量平均分子量を100万〜500万未満とするものである。
【0023】
この高分子(B)は、高分子(A)100重量部に対して、1〜30重量部が熱可塑性樹脂組成物中に存在することが好ましいと考えられる。
【0024】
なお、本発明において(メタ)アクリルとは、特に断らない限り、アクリル、及び/又は、メタクリルを意味する。
【0025】
マトリクス樹脂中でこのような高分子(B)が形成される本発明の熱可塑性樹脂組成物にいては、後述する(熱可塑性樹脂組成物)で具体的に説明する。
【0026】
(熱可塑性樹脂成形体の製造方法)
本発明の成形体は、好ましくは後述する本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を溶融混練成形、好ましくは反応押出しする工程を含む製造方法により形成され、前記本発明に係る反応押出工程において、前記高分子(B1)、及び前記高分子(B2)が反応して前記高分子(B)が生成することが好ましく、このようにすることで絡まらずに全体に分散した高分子(B)がマトリクス樹脂である高分子(A)中に形成されるものと考えられ、この際の好ましい溶融混練条件は、140〜350℃の温度で、30秒〜10分間である。
【0027】
(発泡成形体)
本発明の成形体は発泡成形体として好適であり、本発明に係る溶融強度の増大により好ましくは2〜7倍の倍率の発泡成形体が得られ、例えば前記高分子(A)を塩化ビニル系樹脂として塩化ビニル系樹脂発泡成形体とした場合には好ましくはその比重が0.2〜0.7g/cm3とできる。このような成形体は、部材としての実用強度が弱くならない程度であれば、比重が低いほど部材を軽量化できるため扱いやすく、またコスト面でも有利である。
【0028】
本発明の成形体として好ましい発泡成形体としては、以下の(1)〜(2)の1つ以上を特徴とする成形体であ、より好ましくは、木材代替発泡ボードである。(1)発泡が独立気泡、個数平均発泡径が10〜1000μmであること。(2)発泡倍率が1.5〜10倍であること。
【0029】
(熱可塑性樹脂組成物)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、重量平均分子量が1万以上、100万未満の高分子(A)100重量部、重量平均分子量が100万以上、1000万未満であり、その分子中に10〜1000個のカルボキシル基を有する高分子(B1)0.5〜15重量部、重量平均分子量が100万以上、500万未満であり、及びその分子中に10〜1000個のエポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を有する高分子(B2)0.5〜15重量部を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明に係る高分子(B1)、及び本発明に係る高分子(B2)からの前記高分子(B)のマトリクス樹脂中での形成を促進する観点から、さらに、さらに、重量平均分子量が5000以上、5万以下であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜40℃の(メタ)アクリル系重合体を高分子補助剤として0.5〜5重量部を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の成形体を発泡成形体とする場合には、さらに、前記高分子(A)100重量部に対して、このような本発明の組成物に発泡剤(D)を0.1〜3重量部含めることが好ましい。
【0032】
前記発泡剤(D)としては、気泡径を小さく、かつ、均一とする観点から、有機発泡剤が好ましく、その中でもアゾ系発泡剤がより好ましい。
【0033】
(重量平均分子量)
本明細書において、重量平均分子量は、重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解したものを、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定し、ポリスチレン換算した値である。
【0034】
(高分子(A))
本発明に係る高分子(A)は、溶融成型される樹脂であれば特に限定されず、一般的な熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー樹脂であっても良い。
【0035】
前記熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を十分に発揮させる観点から、その溶融成形時に溶融強度が成型性に重要である塩化ビニル系樹脂、PMMA、PS、及びPETからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、より好ましくは塩化ビニル樹脂、さらに好ましくはK値が52〜70.5、即ち、重合度が500〜1300の塩化ビニル系樹脂である。K値の算出方法は塩化ビニル樹脂0.5gをシクロヘキサン100mLに溶解し、25℃にて比粘度ηrelを測定し、下記に示した数式1から求める。
【0036】
【数1】

【0037】
(塩化ビニル系樹脂)
前記塩化ビニル系樹脂としては、従来から使用されている塩化ビニル系樹脂を特に制限無く使用できる。具体的には、ポリ塩化ビニル、好ましくは80重量%以上の塩化ビニルとこれと共重合可能な単量体20重量%以下からなる塩化ビニル系共重合体、あるいは後塩素化ポリ塩化ビニルなどを例示することができる。前記の塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、スチレン、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどを例示することができる。これらは単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0038】
(高分子(B))
本発明に係る前記高分子(B)は、本発明の成形体の成形加工時に成形用加工性改良剤としての機能を有するものであって、本発明に係る高分子(A)100重量部に対し、上述の如く1〜30重量部含まれていることが好ましく、本発明の効果を十分に発揮せしめ成形加工時にゲル化促進効果を得る観点、例えば塩化ビニル系樹脂発泡成形体とした場合に比重を十分に低下せしめる観点、成形体の表面性を優れたものとする観点、及び溶融粘度を適正範囲に制御することで加工機のモーターに大きな負荷がかかることを防ぐ観点から、好ましくは1.5〜25重量部含まれていることであり、より好ましくは2〜20重量部であると考えられる。
【0039】
本発明に係る前記高分子(B)の前記分岐構造の1本の直鎖高分子上の個数、又は、前記1本の直鎖高分子にグラフトされてなる側鎖高分子の個数は、本発明に係る溶融強度を高めつつ、成形性を維持し、かつ、成形体の中央での盛り上がり等の変形を防止する観点から、好ましくは2〜100であり、より好ましくは4〜50であると考えられる。
【0040】
また、このような本発明に係る分岐構造は、高分子(B)を高分子(A)中で絡まない状態で存在せしめる観点から、エステル分岐構造、アミド分岐構造、及びイミド分岐構造からなる群から選ばれる1種以上とすることが好ましくは、より好ましくはエステル分岐構造とすることである。
【0041】
本発明に係る高分子(B)は上述の如く、(メタ)アクリル系重合体であること、即ち、(メタ)アクリル重合体を主成分とする重合体であることが好ましく、樹脂との相溶性の観点から、好ましくは、メタクリル酸メチル75〜99.99重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル0〜25重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体0.01〜5重量%を重合した重合体とすることであり、より好ましくは乳化重合した重合体とすることである。
【0042】
本発明においては、このような高分子(B)は、前記高分子(B1)、及び前記高分子(B2)の反応生成物として、好ましくは本発明に係る溶融混練工程中に形成される。
【0043】
このような本発明に係る高分子(B)の原料単量体中のメタクリル酸メチルの割合は、本発明に係る溶融強度増大効果を十分に得る観点、例えば本発明の成形体を塩化ビニル系樹脂発泡成形体とした場合にその比重を十分に低下させる観点、及びゲル化特性の観点から75〜99重量%が好ましく、80〜99重量%がより好ましく、81〜98重量%が特に好ましく、85〜97重量%が最も好ましい。
【0044】
一方、本発明に係る高分子(B)の原料単量体中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合は、同様の観点から0〜25重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、2〜19重量%であることが特に好ましく、3〜15重量%であることが最も好ましい。
【0045】
本発明に係る高分子(B)を、上述の本発明の好ましい実施態様である本発明に係る溶融混練中でなく、高分子(A)を含まない、高分子(B1)、及び高分子(B2)の混合物から作成し、通常の成形用加工性改良剤と同様に粉体として、本発明に係る高分子(A)の粉体にドライブレンドして、それを成形することで本発明の熱可塑性樹脂成形体とすることもできるが、溶融成形時や成形体において、高分子(B)を高分子(A)中で絡まない状態で存在せしめることで、例えば押出方向、及びその直角方向の全方位で、溶融強度を増大させたり成形体強度を増大させたりするために、前記高分子(B1)や前記高分子(B2)を含む粉体と、高分子(A)の粉体と、をドライブレンドし、得られた混合物を溶融混練して成形する際に前記高分子(B1)、及び前記高分子(B2)を反応させて前記高分子(B)を生成することが好ましい。このようにして溶融成型時に成形用加工性改良剤として高分子(B)を合成することで、絡まらずに全体に分散した高分子(B)がマトリクス樹脂である高分子(A)中に形成されるものと考えられる。
【0046】
ここで、前記高分子(B1)、前記高分子(B2)、及び後述する高分子分散補助剤は製造のし易さの観点から好ましくは乳化重合で重合する。このようにして作成された高分子(B1)、高分子(B2)、及び高分子分散補助剤は、ラテックスブレンドして混合物とすることが好ましい。また、別々に重合することもできるが、反応条件等を適宜調整することで同時に、即ちワンポットで重合し高分子(B1)、及び(B2)の混合物、又は、さらに高分子分散補助剤が混合された混合物とすることが、生産性向上の観点から好ましい。
【0047】
また、前記高分子(B1)や前記高分子(B2)、高分子分散補助剤を含むラテックスから後述する凝固法や噴霧乾燥法により得た粉体と、高分子(A)の粉体とを混合することで本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることも好ましい実施態様である
(高分子(B)、高分子(B1)、高分子(B2)、高分子分散補助剤、及びこれらの混合物の粉体)
本発明に係る高分子(B)、高分子(B1)、高分子(B2)、高分子分散補助剤、及びこれらの混合物の粉体は、上述したように好ましくは乳化重合法、懸濁重合法により得られたこれらの高分子のラテックスから回収される。その際の一般的な回収方法は、凝固法や噴霧乾燥法である。
【0048】
これらの粉体は、レーザー回折・散乱法で、その粉体の各々の粒子、即ち粉体粒子を測定した場合に、その体積平均粒子径が、50μm〜300μmであり、同じく通常粉体である好ましくは熱可塑性樹脂の粉体と分級しにくくする観点から、好ましくは、70μm〜250μmである。また、この粉体の粒子径分布としては、作業性、及び粉塵爆発防止の観点から、10μm以下の粒子が少ないことが好ましい。このようなレーザー回折・散乱法としては、例えば、日機装株式会社製のMICROTRAC MT3300II(登録商標)を用いることができる。
【0049】
また、本発明に係る高分子(B)、高分子(B1)、高分子(B2)、高分子分散補助剤、及びこれらの混合物のラテックスは、これらの高分子の一次粒子のラテックスであり、これは前記粉体粒子中を構成する一次粒子でもあり、基本的にこれらの高分子の体積平均一次粒子径は、ラテックス中での値と、粉体中での値が一致する。
【0050】
このようなラテックス中の体積平均一次粒子径は動的光散乱法により測定することができる。このような動的光散乱法としては、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることができる。
【0051】
本発明に係る高分子(B)、高分子(B1)、高分子(B2)、高分子分散補助剤、及びこれらの混合物の体積平均一次粒子径は、一次粒子同士の強固な癒着防止により分散性を確保することでゲル化を促進し、かつ、成形体へのフィッシュアイ(F.E.)発生を防止する観点、及び本発明に係る縮合反応を促進せしめる観から、0.05μm〜0.70μmとすることが好ましく、より好ましくは0.05μm〜0.40μm、さらに好ましくは0.05μm〜0.20μmである。
【0052】
(凝固法)
前記凝固法では、回収すべき高分子を含むラテックスに、例えば、硫酸、塩酸、リン酸等の酸、又は塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の塩に代表される電解質を添加することにより、前記ラテックスを酸凝固もしくは塩析させた後、熱処理、洗浄、脱水、乾燥の各処理を行い、粉体を回収する。
【0053】
(噴霧乾燥)
前記噴霧乾燥法では、回収すべき高分子を含むラテックスを、スプレードライヤー(例えば大川原化工機株式会社、L−12型)にて、入り口温度110℃および出口温度50℃で噴霧乾燥を行ない、発泡性成形用加工性改良剤として得る。このようにして、好ましい実施態様である乳化重合体ラテックスを直接噴霧乾燥した粉体は、その全量100重量%に対して0.5重量%程度の乳化剤を含むこととなる。
【0054】
また、噴霧乾燥時にラテックスを熱風中に噴霧した際に形成された液滴から水分が蒸発した後に残ったラテックス粒子の集合体として形成された粒子の内部および表面が融着すると、(メタ)アクリル系重合体粉体が本来有するゲル化促進能力が失われるため、粒子内部および表面が融着しない条件で実施することが好ましい。
【0055】
さらに、このような噴霧乾燥により作成した粉体の粒子は、体積平均一次粒子径が0.05μm〜0.70μmの一次粒子が粒子間の接触位置で半融状態により融着した多孔質集合体となる。
【0056】
噴霧乾燥により形成された粉体粒子の場合には、前記一次粒子の癒着は融着として現れ、その融着の有無は、光学顕微鏡で観察することにより、融着していない場合には、粉体粒子全体が白色であるが、融着が進行するに従い透明になっていくことから観察できる。
【0057】
(高分子(B1))
本発明に係る高分子(B1)は上述の如く、本発明に係る高分子(B)の主鎖となる高分子であり、直鎖状高分子であることが好ましく、(メタ)アクリル系重合体であることが好ましく、重量平均分子量が100万以上、1000万未満であり、その分子中に10〜1000個のカルボキシル基を有することを要するが、本発明の効果を十分に発揮させる観点から、その重量平均分子量は200万〜900万であることが好ましく、より好ましくは300万〜800万であり、さらに好ましくは400万〜700万であり、特に好ましくは400万〜600万である。
【0058】
また、本発明に係る高分子(B1)は上述の如く、前記高分子(A)100重量部に対して本発明に係る熱可塑性樹脂組成物中に0.5〜15重量部含まれていることを要するが、好ましくは1〜10重量部とすることである。
【0059】
さらに、本発明に係る高分子(B1)は上述の如く、その分子中に10〜1000個のカルボキシル基を有することを要するが、好ましくは100〜500個である。
【0060】
またさらに、本発明に係る高分子(B1)は、メタクリル酸メチル75〜99.99重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル0〜25重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体0.01〜5重量%の単量体(B1)を重合した重合体とすることが好ましい。
【0061】
本発明に係る前記分岐構造をエステル分岐構造とする本願の場合には、本発明に係る前記単量体(B1)中の前記これらと共重合可能な他の単量体0.01〜5重量%は、カルボキシル基含有ビニル単量体を含む必要がある。その場合は、これらと共重合可能な他の単量体0.01〜5重量%は、カルボキシル基含有ビニル単量体0.01〜5重量部を含み、場合によって、好ましくはその全量がカルボキシル基含有ビニル単量体である。前記これらと共重合可能な他の単量体0.01〜5重量%を基準とする同様に定義される前記単量体(B1)中のカルボキシル基含有ビニル単量体の含有量は、好ましくは0.05〜1重量%である。
【0062】
前記単量体(B1)中のメタクリル酸メチルの割合は上述の如く、75〜99.99重量%が好ましく、本発明に係る溶融強度増大効果を十分に得る観点、例えば本発明の成形体を塩化ビニル系樹脂発泡成形体とした場合にその比重を十分に低下させる観点、及びゲル化特性の観点から、80〜99重量%がより好ましく、81〜98重量%が特に好ましく、85〜97重量%が最も好ましい。
【0063】
一方、前記単量体(B1)中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合は上述の如く、0〜25重量%であることが好ましく、同様の観点から、1〜20重量%であることがより好ましく、2〜19重量%であることが特に好ましく、3〜15重量%であることが最も好ましい。
【0064】
(高分子(B2))
本発明に係る高分子(B2)は上述の如く、本発明に係る高分子(B)の側鎖となる高分子であり、直鎖状高分子であることが好ましく、(メタ)アクリル系重合体であることが好ましく、重量平均分子量が100万以上、500万未満であり、その分子中に10〜1000個のエポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を有することを要するが、本発明の効果を十分に発揮させる観点から、その重量平均分子量は100万〜400万であることが好ましい。
【0065】
また、本発明に係る高分子(B2)は上述の如く、前記高分子(A)100重量部に対して本発明に係る熱可塑性樹脂組成物中に0.5〜15重量部含まれていることを要するが、好ましくは1〜10重量部とすることである。
【0066】
またさらに、本発明に係る高分子(B2)は、メタクリル酸メチル75〜99.9重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル0〜25重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体0.1〜5重量%の単量体(B2)を重合した重合体とすることが好ましい。
【0067】
本発明に係る前記分岐構造をエステル分岐構造とする本願の場合には、本発明に係る前記単量体(B2)中の前記これらと共重合可能な他の単量体0.1〜5重量%は、エポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を含有するビニル単量体を含む必要がある。その場合は、これらと共重合可能な他の単量体0.1〜5重量%は、エポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を含有するビニル単量体0.1〜5重量部を含み、場合によって、好ましくはその全量がエポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を含有するビニル単量体である。前記これらと共重合可能な他の単量体0.1〜5重量%を基準とする同様に定義される前記単量体(B1)中のエポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を含有するビニル単量体の含有量は、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0068】
前記単量体(B2)中のメタクリル酸メチルの割合は上述の如く、75〜100重量%が好ましく、本発明に係る溶融強度増大効果を十分に得る観点、例えば本発明の成形体を塩化ビニル系樹脂発泡成形体とした場合にその比重を十分に低下させる観点、及びゲル化特性の観点から、80〜99重量%がより好ましく、81〜98重量%が特に好ましく、85〜97重量%が最も好ましい。
【0069】
一方、前記単量体(B2)中のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルの割合は上述の如く、0〜25重量%であることが好ましく、同様の観点から、1〜20重量%であることがより好ましく、2〜19重量%であることが特に好ましく、3〜15重量%であることが最も好ましい。
【0070】
(メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル)
前記メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルは、適度な水溶性があり乳化重合に適している点から、メタクリル酸メチルを除いたアルキル基の炭素数が2〜8のメタクリル酸エステル、及びアルキル基の炭素数1〜8のアクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、より具体的には、メタクリル酸アルキルエステルである、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、及びメタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシルメタクリル酸オクチルと、アクリル酸アルキルエステルである、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸オクチルとからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、高分子(B)、高分子(B1)、高分子(B2)、又は高分子分散助剤を軟質化することで、溶融混練時に本発明の熱可塑性樹脂組成物中でほぐれ易くする観点から、及び工業的に入手しやすい観点から、メタクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸オクチルとからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、より好ましくはBA、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸オクチルとからなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはBAである。
【0071】
また、このようなメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルとして、上記の(メタ)アクリル酸エステル以外に、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル等の炭素数9以上のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸トリデシル等の炭素数9以上のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等を組み合わせて適宜用いることもできる。
【0072】
(共重合可能な他の単量体)
上述の共重合可能な他の単量体は、メタクリル酸メチル、および上述のメタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体であれば特に制限されないが、例えば、上述のエポキシ基含有ビニル単量体、及びオキセタン基含有ビニル単量体や、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルスチレン、及び核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物、1、3−ブタンジオールジアクリレート、1、4―ブタンジオールジアクリレート、1、6ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、及びポリブチレングリコール(2〜23)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(2〜12)ジアクリレート、プロポキシル化(2〜16)ネオペンチルジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシ化(4〜30)ビスフェノールAジアクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレート等のジアクリレート化合物、1、3−ブタンジオールジメタクリレート、1、4―ブタンジオールジメタクリレート、1、6ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコール(2〜23)ジメタクリレート、ポリプロピレングリコール(2〜12)ジメタクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジメタクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、エトキシ化(4〜30)ビスフェノールAジメタクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシルエチル)イソシアヌレートトリアクリレート等のトリアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及び三官能メタクリレートエステル等のトリメタクリレート化合物、ジビニルベンゼン、アリルメタアクリレート、ジシクロペンタジエン、2、4、6-トリアロキシ-1、3、5トリアジン等の架橋剤、カルボキシル基含有ビニル単量体等が例示されうる。これらは、本発明に係る(メタ)アクリル系重合体粉体を用いた場合に、成形体の表面性、比重、ゲル化特性に関して、実用的な問題を発生しない程度に単独で又は二種以上組み合わせて適宜用いることができる。
【0073】
前記エポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を含有するビニル単量体としては、メクリル酸グリシジル(GMA)、アクリル酸グリシジル、メクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル及びアクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル等が挙げられるが、実用性の観点から、アクリル酸グリシジル、及びメタクリル酸グリシジルから選ばれる1種以上が好ましく、より好ましくはメタクリル酸グリシジルである。
【0074】
(重合方法)
上記重量平均分子量は、各重合体を重合する際の重合条件等により適宜調整することができる。具体的には、重合する際の重合開始剤(触媒)量の、重合に使用する連鎖移動剤量、重合温度、モノマーの追加速度等により調整することができる。
【0075】
具体的には、重合開始剤(触媒)量を減少させる、連鎖移動剤量を減少させる、重合温度を下げる、又はモノマー追加速度を速くすることにより、分子量を上げることが可能である。逆に、重合開始剤(触媒)量を増量する、連鎖移動剤を増量する、重合温度を上げる、又はモノマー追加速度を遅くすることでの分子量を下げることが可能である。
【0076】
本発明に係る(メタ)アクリル系重合体を得るための重合方法としては、分子量、粒子構造の制御が容易であり、工業的生産に適し、多段重合法も適用しやすい等の観点から、乳化重合法、懸濁重合法が好ましく、その中でも特に、乳化重合法が好ましい。
【0077】
乳化重合法により本発明に係る(メタ)アクリル系重合体を調製する場合には、それぞれ目的の共重合体が得られるように、適宜、乳化剤、重合開始剤、及び連鎖移動剤等の種類及び使用量、モノマーの追加速度を設定可能である。
【0078】
(乳化剤)
前記乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の公知のものを用いることができるが、中でも、重合安定性、熱安定性、色調に優れる点から、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、及びアルキルザルコシン酸塩から選ばれる1種以上が好ましく、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。
【0079】
上述の如く本発明に係る(メタ)アクリル系重合体の粉体は、乳化重合で得られた重合体ラテックスを噴霧乾燥して得られるものであることが好ましいが、この場合には、当該粉体中に乳化重合時に使用する乳化剤、開始剤残渣等が残存するため、これらが本発明の発泡性成形用加工性改良剤を含む組成物を成形加工する際の加工性や、得られる成形体の物性に影響を及ぼす場合がある。従って、本発明に係る(メタ)アクリル系重合体の粉体を、乳化重合で得られた重合体ラテックスを噴霧乾燥して得られるものとした場合には特に、その乳化重合時に使用する乳化剤として、上記成形体物性、例えば、成形体の熱安定性、色調の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルザルコシン酸塩が好ましく、中でも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0080】
前記アルキルベンゼンスルホン酸塩の具体例としては、例えば、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が例示されうる。
【0081】
前記アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩の具体例としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム等が例示されうる。
【0082】
前記アルキルザルコシン酸塩の具体例としては、例えば、オレオイルザルコシン酸ナトリウム、ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、ミリストイルザルコシン酸ナトリウム、パルミトイルザルコシン酸ナトリウム、ステアロイルザルコシン酸ナトリウム等が例示されうる。
【0083】
また前記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルザルコシン酸塩等が例示されうる。また前記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等が例示されうる。また前記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩等が例示されうる。
【0084】
(重合開始剤)
前記重合開始剤としては、水溶性や油溶性の重合開始剤、レドックス系の重合開始剤等の公知のものを使用することができる。たとえば、通常の過硫酸塩などに代表される無機塩系重合開始剤、有機過酸化物、アゾ化合物などが例示され、これらを単独で用いるか、または前記化合物と亜硫酸塩、亜硫酸水素、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどを組み合わせ、レドックス系重合開始剤として用いることもできる。
【0085】
重合開始剤として特に好ましい無機塩系重合開始剤としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などが例示され、好ましい有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどを例示することができる。
【0086】
(連鎖移動剤)
前記連鎖移動剤としては公知のものを用いることができ、たとえば、主鎖の炭素数が4〜12のアルキルメルカプタンを好適に例示できる。具体的には、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン(t−DM)などのアルキルメルカプタン類、2−エチルヘキシルチオグリコール、イソオクチルチオグリコール等のチオグリコール類、アルファメチルスチレンダイマー、ターピノーレン等を挙げることができるが、連鎖移動効率の観点から、好ましくはアルキルメルカプタン類、及びチオグリコール類からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、より好ましくはt−DMである。
【0087】
((メタ)アクリル系重合体の粉体の回収)
本発明に係る前記(メタ)アクリル系重合体粉体は、上述したように好ましくは乳化重合法、懸濁重合法により得られたラテックスから回収される。
【0088】
その際の一般的な回収方法は、例えば、回収すべき(メタ)アクリル系重合体を含む重合体ラテックスに、硫酸、塩酸、リン酸等の酸、又は塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の塩に代表される電解質を添加することにより、前記ラテックスを酸凝固もしくは塩析させた後、熱処理、洗浄、脱水、乾燥の各処理を行い、粉体状の発泡成形用加工性改良剤を回収する方法である。
【0089】
しかし、本発明においては、本発明の発泡性成形用加工性改良剤を含む組成物を成形する際に、比重の低い成形体を得る観点、及び高い表面光沢を有する成形体を得る観点から、前記ラテックスを噴霧乾燥して本発明の発泡性成形用加工性改良剤、即ちその主成分である本発明に係る(メタ)アクリル系重合体の粉体を回収することが好ましい。前記噴霧乾燥の条件は特に制限されるものではないが、噴霧乾燥時にラテックスを熱風中に噴霧した際に形成された液滴から水分が蒸発した後に残ったラテックス粒子の集合体として形成された粒子の内部および表面が融着すると、(メタ)アクリル系重合体粉体が本来有するゲル化促進能力が失われるため、粒子内部および表面が融着しない条件で実施することが好ましい。
【0090】
(高分子分散補助剤)
本発明に係る高分子分散補助剤は、本発明の成形体の成形加工時に前記直鎖高分子の前駆体である高分子(B1)、及び前記側鎖高分子の前駆体である高分子(B2)の縮合反応を起こりやすくする為の分散助剤としての機能を有するものであって、本発明に係る高分子(A)100重量部に対し、上述の如く0.5〜5重量部含まれていることを要するが、本発明の効果を十分に発揮せしめ成形加工時にゲル化促進効果を得る観点、例えば塩化ビニル系樹脂発泡成形体とした場合に比重を十分に低下せしめる観点、成形体の表面性を優れたものとする観点、及び溶融粘度を適正範囲に制御することで加工機のモーターに大きな負荷がかかることを防ぐ観点から、0.2〜3重量部含まれていることが好ましい。
【0091】
本発明に係る高分子分散補助剤は上述の如く、重量平均分子量が5000以上、15万以下であることを要するが、造粒性、溶融粘度の観点から好ましい重量平均分子量1万以上、10万以下であり、より好ましくは2万以上、5万以下である。
【0092】
本発明に係る高分子分散補助剤は上述の如く、Tgが−20℃〜40℃であることを要するが、造粒性の観点から好ましいTgは−10以上、30以下である。
【0093】
本発明に係る高分子分散補助剤は上述の如く、(メタ)アクリル系重合体であることを要するが、造粒性、溶融粘度の観点から、好ましくは、メタクリル酸メチル25〜75重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル25〜75重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%を重合した重合体とすることであり、より好ましくはメタクリル酸メチル40〜60重量%、メタクリル酸メチルを除く(メタ)アクリル酸エステル40〜60重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体0〜5重量%を重合した重合体とすることである。
【0094】
(発泡剤)
本発明に係る発泡剤としては、熱分解型発泡剤、易揮発性有機溶剤系発泡剤等を例示することができるが、発泡成形を行う際に含浸、防爆等の設備が不要であり、コスト面において有利であることから、熱分解型有機発泡剤、及び熱分解型無機発泡剤からなる群から選ばれる1種以上の発泡剤を使用することが好ましく、気泡径を小さく、かつ、均一とする観点から、熱分解型有機発泡剤がより好ましく、その中でもアゾ系発泡剤がさらに好ましい。
【0095】
前記アゾ系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等が例示できるが、コスト、及び取扱いの観点からアゾジカルボンアミドが好ましい。
【0096】
前記熱分解型有機発泡剤としては、アゾ系発泡剤、ヒドラジド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤等が例示できる。
【0097】
前記熱分解型無機発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等が例示できる。
【0098】
前記易揮発性有機溶剤系発泡剤としては、ブタン、ジクロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、石油エーテル等の沸点90℃以下の有機溶剤が例示できる
(その他の添加剤)
本発明の熱可塑性樹脂成形体には、本発明の効果を損なわない限り、安定剤、滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、着色剤、充填剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【実施例】
【0099】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
(分子量測定)
分子量は、システム:東ソー製HLC−8220、カラム:東ソー製TSKgel SuperHZM−H(×2本)、溶媒:THFを用いて測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量として測定した。
【0101】
(発泡性評価)
発泡性の評価は、押出シートサンプルの比重を、東洋精機社製DENSIMETER−Hを用いて測定することで行った。
【0102】
(重合体のTgの評価(又は測定)方法)
重合体のガラス転移温度(Tg)は、重合体を構成する各単量体のホモポリマーのガラス転移温度の文献値から下記数式2で表されるFOX式を用いて算出した値である。例えば、a、b、cの3成分からなる場合には、下記数式3により導き出される。
【0103】
【数2】

【0104】
【数3】

【0105】
(式中、Tg:共重合体のガラス転移温度、Wx:単量体xの重量分率、Tx:単量体xのホモ重合体のガラス転移温度を表す。)
一方、上述の方法でガラス転移温度が計算できない場合には、分析的手法によってもガラス転移温度を決定することができる。即ち、水性ラテックスの状態にある重合体微粒子を、塩析もしくは噴霧乾燥などの方法で処理して重合体分を固形物として得た後、これを加熱下、典型的には130〜180℃、でプレス加工してシート状にしたサンプル用いる方法を挙げることができ、これらのサンプルを動的粘弾性測定装置(Dynamic Mechanical Analyzer:DMA測定)で分析することで観察されるTanδの値から、一般的に行われているように、ガラス転移温度を決定することも可能である。
【0106】
(製造例1:カルボキシル基含有高分子(B1−1、B1−2)の製造)
高分子(B1)としてカルボキシル基含有メタクリル系重合体を製造するために、水140重量部、乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5重量部を混合し、65℃で窒素置換した後に、過硫酸カリウムをB1−1では0.07重量部、B1−2では0.007重量部、B1−3では0.0007重量部添加し、次いで攪拌しながら単量体としてメタクリル酸メチル(以下、MMAともいう)79.5重量部、アクリル酸(以下、MAAともいう)0.5重量部からなる単量体の混合物を170分間を要して連続添加した。また単量体の混合物の連続添加85分目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.2重量部を添加した。5分経過後、そこに更に、単量体混合物としてMMA15重量部、及びアクリル酸ブチル(以下、BAともいう)5重量部からなる単量体の混合物を50分間を要して連続添加した後、80℃で1時間攪拌して重合反応を終了させて高分子(B1)のラテックスを得た。ラテックス中の重合体粒子の体積平均一次粒子径、重量平均分子量、及び1分子中に含有すると考えられるカルボキシル基数の計算値は、B1−1では0.08μm、160万、平均80個、B1−2では0.14μm、360万、平均180個であった。
【0107】
(製造例1−1:カルボキシル基非含有高分子(B1−0)の製造)
上記製造例1で作成した高分子(B1−1)においてMAAを添加しなかったこと以外は同様にしてカルボキシル基非含有メタクリル系重合体(B1−0)のラテックスを得た。ラテックス中の重合体粒子の体積平均一次粒子径、重量平均分子量は0.07μm、63万であった。
【0108】
(製造例2:カルボキシル基含有高分子(B1−3)の製造)
高分子(B1)としてカルボキシル基含有メタクリル系重合体を製造するために、水140重量部、乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.7重量部を混合し、65℃で窒素置換した後に、過硫酸カリウムを0.0007重量部添加し、次いで攪拌しながら単量体としてメタクリル酸メチル(以下、MMAともいう)94.5重量部、アクリル酸ブチル(以下、BAともいう)5重量部、及びアクリル酸(以下、MAAともいう)0.5重量部からなる単量体の混合物を添加した。また単量体の混合物の添加後100分目にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.1重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.002重量部、硫酸第一鉄0.0005重量部を添加した。180分経過した後、80℃で1時間攪拌して重合反応を終了させて高分子(B1−3)のラテックスを得た。ラテックス中の重合体粒子の体積平均一次粒子径、重量平均分子量、及び1分子中に含有すると考えられるカルボキシル基数の計算値は0.14μm、550万、平均275個であった。
【0109】
(製造例3:水酸基含有高分子(B2−1)の製造)
高分子(B2−1)として水酸基含有メタクリル系重合体を製造するために、水140重量部、乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5重量部を混合し、65℃で窒素置換した後に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.1重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.002重量部、硫酸第一鉄0.0005重量部を添加したのち、過酸化水素を0.15重量部添加し、次いで攪拌しながら単量体としてメタクリル酸メチル(以下、MMAともいう)80重量部からなる単量体を170分間を要して連続添加した。また単量体の混合物の連続添加85分目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.2重量部を、60分、90分、及び170分目に過酸化水素を0.15重量部ずつ添加した。5分経過後、そこに更に、単量体混合物としてMMA15重量部、及びアクリル酸ブチル(以下、BAともいう)5重量部からなる単量体の混合物を50分間を要して連続添加した。また単量体の混合物の連続添加40分目に過酸化水素0.15重量部を添加した。その後、80℃で1時間攪拌して重合反応を終了させて高分子(B2−1)のラテックスを得た。ラテックス中の重合体粒子の体積平均一次粒子径、重量平均分子量、及び1分子中に含有すると考えられる水酸基数の計算値は、0.11μm、160万、1〜2個であった。
【0110】
なお、上記で使用する過酸化水素は、水酸基含有開始剤として使用されており、これにより高分子(B2―1)は水酸基を1〜2個を末端に含有する高分子となる。
【0111】
(製造例3−1:水酸基非含有高分子(B2−0)の製造)
高分子(B2)として水酸基非含有メタクリル系重合体を製造するために、水140重量部、乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5重量部を混合し、65℃で窒素置換した後に、過硫酸カリウムを0.07重量部添加し、次いで攪拌しながら単量体としてMMA80重量部からなる単量体を170分間を要して連続添加した。また単量体の混合物の連続添加85分目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.2重量部を添加した。5分経過後、そこに更に、単量体混合物としてMMA15重量部、及びアクリル酸ブチル(以下、BAともいう)5重量部からなる単量体の混合物を50分間を要して連続添加した後、80℃で1時間攪拌して重合反応を終了させて高分子(B2−0)のラテックスを得た。ラテックス中の重合体粒子の体積平均一次粒子径、重量平均分子量は、0.08μm、150万であった。
【0112】
(製造例4:エポキシ基含有高分子(B2−2〜B2−6)の製造)
高分子(B2)としてエポキシ基含有メタクリル系重合体を製造するために、水140重量部、乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5重量部を混合し、65℃で窒素置換した後に、過硫酸カリウムをB2−2、及びB2−4では0.05重量部、B2−3、B2−5、及びB2−6では0.035重量部添加し、次いで攪拌しながら単量体としてメタクリル酸メチル(以下、MMAともいう)79.5重量部、アクリル酸グリシジル(以下、GMAともいう)B2−2、及びB2−3では0.5重量部、B2−4、及びB2−5では1.0重量部、B2−6では2.0重量部からなる単量体の混合物を170分間を要して連続添加した。また単量体の混合物の連続添加85分目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.2重量部を添加した。5分経過後、そこに更に、単量体混合物としてMMA15重量部、及びアクリル酸ブチル(以下、BAともいう)5重量部からなる単量体の混合物を50分間を要して連続添加した後、80℃で1時間攪拌して重合反応を終了させて高分子(B2)のラテックスを得た。ラテックス中の重合体粒子の体積平均一次粒子径、重量平均分子量、及び1分子中に含有すると考えられるエポキシ基数の計算値は、B2−2では0.09μm、170万、平均85個、B2−3では0.09μm、200万、平均100個、B2−4では0.09μm、170万、平均170個、B2−5では0.09μm、200万、平均200個、及びB2−6では0.09μm、200万、平均400個であった。
【0113】
(製造例5:高分子分散補助剤の製造)
水140重量部、乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム3.0重量部、硫酸ナトリウム0.13重量部、及び炭酸ナトリウム0.05重量部を混合し、70℃で窒素置換した後に、過硫酸カリウムを0.16重量部添加し、次いで攪拌しながら単量体としてMMA50重量部、BA50重量部、及びターシャリードデシルメルカプタン(以下、t−DMともいう)2.0重量部からなる単量体の混合物を300分間を要して連続添加した。また単量体の混合物の連続添加30分目、90分目、及び150分目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5重量部を添加した。30分経過した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.2重量部、ターシャリーブチルオキサイド0.2重量部を添加した。更に30分経過した後、炭酸ナトリウム0.0325重量部を添加して重合反応を終了させて高分子分散補助剤のラテックスを得た。ラテックス中の重合体粒子の体積平均一次粒子径、及び重量平均分子量は0.06μm、2.5万であった。また、この重合体のTgの計算値は4℃である。
【0114】
(実施例1〜13、及び比較例1〜3)
実施例1〜13として、表1から表3において○で示された組み合わせで、上記製造例1、又は製造例2で製造したカルボキシル基含有メタクリル系重合体(B1)50重量部、及び上記製造例4で製造したエポキシ基含有メタクリル系重合体(B2)50重量部をラテックスの状態で混合したもの(ラテックスブレンド体)にイオン交換水を加えて固形分濃度15%とした後、2.5%塩化カルシウム水溶液を4部(固形分)加えて凝固スラリーを得た。さらに水を加えて固形分濃度12%とした。得られた凝固スラリーを95℃まで加熱し、95℃で2分間保持した後、50℃まで冷却して脱水、樹脂量の5倍の水で洗浄後、乾燥させて加工性改良剤(B)をラテックスブレンド処理粉体として得た。
【0115】
同様にして、比較例1〜3として、表1から表3において○で示された組み合わせで、上記製造例1、又は製造例2で製造したカルボキシル基含有メタクリル系重合体(B1)50重量部、及び上記製造例3で製造した水酸基含有メタクリル系重合体(B2−1)50重量部からラテックスブレンド処理粉体を得た。
【0116】
実施例1〜13では、このラテックスブレンド処理粉体10重量部、塩化ビニル系樹脂100重量部、及びアゾジカルボンアミド、及び4,4‘−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)が併用されている発泡剤(スパンセル#81(登録商標) 永和化成工業株式会社)0.6重量部を混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0117】
比較例1〜3では、上述のラテックスブレンド処理粉体10重量部、塩化ビニル系樹脂100重量部、及び発泡剤0.6重量部を混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0118】
この塩化ビニル系樹脂組成物、パラレル押出機(Haake社製)を用いて、成形条件C1/C2/C3/D:170/185/190/165(℃)、スクリュー回転数70rpm、フィーダー回転数140rpmにて押出成形し、各種評価用のサンプルを作製した。結果を表1〜3に示す。
【0119】
表1〜3に示すとおり、実験した範囲内で、カルボキシル基含有メタクリル系重合体(B1)、及びエポキシ基含有メタクリル系重合体(B2)の分子量が大きいほど、よく比重が低下し、エポキシ基含有メタクリル系重合体(B2)はエポキシ基含有量が多いほど比重が低下することが判る。
【0120】
また、比較例1〜3と、対応する実施例1〜13とを比較すると、同じ分子量のカルボキシル基含有メタクリル系重合体(B1)を用いた場合に、比較例に係る水酸基含有メタクリル系重合体(B2−1)を含む組成物とした場合より、本発明に係るエポキシ基含有メタクリル系重合体(B2)を含む組成物とした場合に、より比重が低下することが判る。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
(比較例4〜9)
高分子(B1)、及び高分子(B2)が縮合して高分子(B)が形成されることにより前記比重の低下が起こっていることを確認するために、カルボキシル基非含有高分子(B1−0)、及び水酸基非含有高分子(B2−0)を用いて、比較例4〜9として、表4において○で示された組み合わせで、比較例1〜3と同様にして、各種評価用のサンプルを作製し評価した。なお、比較例8、及び比較例9においては、各々B1−1、B2−1の粉体を10重量部ずつ使用した。結果を表4に示す。
【0125】
表4から、高分子(B1)、及び高分子(B2)が縮合して高分子(B)が形成されることにより比重の低下が起こることが判る。
【0126】
【表4】

【0127】
(実施例14、及び15)
実施例14、及び15として、表5において○で示された組み合わせで、上記製造例2で製造したカルボキシル基含有メタクリル系重合体(B1)50重量部、及び上記製造例4で製造したエポキシ基含有メタクリル系重合体(B2)50重量部をラテックスの状態で、上記製造例5で製造したラテックスの状態の高分子分散補助剤15重量部と混合し、更に混合したものにイオン交換水を加えて固形分濃度15%とした後、2.5%塩化カルシウム水溶液を4部(固形分)加えて凝固スラリーを得た。さらに水を加えて固形分濃度12%とした。得られた凝固スラリーを95℃まで加熱し、95℃で2分間保持した後、50℃まで冷却して脱水、樹脂量の5倍の水で洗浄後、乾燥させて、高分子分散補助剤15重重量部、及びが実施例11の加工性改良材(B)100重量部を含む混合物の粉体として実施例14の混合粉体を得た。
【0128】
同様にして、高分子分散補助剤15重重量部、及び実施例12の加工性改良材(B)100重量部を含む混合物の粉体として実施例15の混合粉体を得た。
【0129】
実施例1〜7と同様に、実施例14、又は実施例15の混合粉体11.5重量部、塩化ビニル系樹脂100重量部、発泡剤(スパンセル#81 永和化成工業株式会社)0.6重量部を混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0130】
この塩化ビニル系樹脂組成物、パラレル押出機(Haake社製)を用いて、成形条件C1/C2/C3/D:170/185/190/165(℃)、スクリュー回転数70rpm、フィーダー回転数140rpmにて押出成形し、各種評価用のサンプルを作製した。結果を表5に示す。
【0131】
表5において、実施例11と実施例14、又は、実施例12と実施例15、を比較することにより高分子分散補助剤を用いることで、更に比重が低下することが判った。
【0132】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1万以上、100万未満の高分子(A)100重量部、
重量平均分子量が100万以上、1000万未満であり、その分子中に10〜1000個のカルボキシル基を有する高分子(B1)0.5〜15重量部、及び
重量平均分子量が100万以上、500万未満であり、その分子中に10〜1000個のエポキシ基、及びオキセタン基からなる群から選ばれる1種以上の基を有する高分子(B2)0.5〜15重量部を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記高分子(B1)、及び前記高分子(B2)が直鎖状高分子である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物
【請求項3】
前記高分子(B1)、及び前記高分子(B2)が、(メタ)アクリル系重合体である、請求項1、又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物であって、さらに、重量平均分子量が5000以上、15万以下であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜40℃の(メタ)アクリル系重合体を高分子補助剤として0.5〜5重量部を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物であって、さらに、発泡剤を0.1〜3重量部を含む発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の発泡成形用熱可塑性樹脂組成物であって、前記発泡剤が、アゾ系発泡剤である発泡成形用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の成形体である、熱可塑性樹脂成形体。
【請求項8】
請求項7に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂組成物を、140〜350℃の温度で、30秒〜10分間溶融混練する工程を含み、
該工程により、前記高分子(B1)と、前記高分子(B2)とを縮合せしめることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−246655(P2011−246655A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123280(P2010−123280)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】