説明

熱可塑性樹脂組成物とそれを成形してなる成形体

【課題】耐熱性、機械物性、耐湿熱性に優れ、地球環境負荷の低いポリ乳酸系の樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(Α)、ポリカーボネート樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、ならびにスチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)を含有する樹脂組成物であって、(A)が25〜50質量%、(B)が30〜69.5質量%、(C)および(D)の合計が0.5〜20質量%である樹脂組成物およびスチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)のアクリル系モノマーの全部または一部がグリシジル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械物性、耐熱性、耐湿熱性に優れ、石油系製品への依存度の低い樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の見地からポリ乳酸樹脂をはじめとするバイオマス原料の樹脂が注目されている。バイオマス由来の樹脂の中では、ポリ乳酸樹脂は耐熱性が高い樹脂の1つであり、大量生産が可能なためコストも安く、有用性が高い。さらに、ポリ乳酸樹脂はトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造することが可能で、石油等の枯渇資源の節約に貢献できる。また、植物由来樹脂の場合、植物原料中の炭素は、大気中の炭素を固定化したものであるので、石油のように地中の炭素を地表に持ち込まず、二酸化炭素排出量増大による地球温暖化の問題もない。
【0003】
しかし、バイオマス由来樹脂の中で耐熱性の高いポリ乳酸樹脂であっても、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等の汎用樹脂と比べると、耐熱性は必ずしも十分とはいえない。また、ポリ乳酸樹脂は、機械物性、とりわけ衝撃強度が低く、また製品化したときの耐湿熱性も悪く、高温多湿環境では劣化が顕著である。そのため、現在、汎用樹脂が使用されている自動車部品や家電筐体にポリ乳酸樹脂を使用する場合、製品の寿命に到達する前に性能が低下してしまうという欠点があった。
【0004】
このようなポリ乳酸樹脂の欠点を補うため、他樹脂とのアロイが検討されており、耐熱性、耐衝撃性の高い、芳香族ポリカーボネート樹脂とのアロイが提案されている。このようなアロイであっても100%石油由来の樹脂に比較すると、石油資源の節約および二酸化炭素排出量の低減といった環境負荷を低減する効果がある。
【0005】
例えば、特許文献1ではポリ乳酸樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融混練してアロイ化することが提案されている。
【0006】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂を単純に溶融混練しても、両樹脂の溶融粘度の差が大きいため、均一な相溶化が難しく、混練押出機のノズルから溶融樹脂が脈動を伴って吐出され、安定したペレット化が困難であるという問題があった。また、成形品の外観に真珠光沢が現れるため、樹脂に着色剤を混合して着色すると、ヘイズが目立つという問題があった。
【0007】
そこで、ポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂のアロイの相溶性・性能・外観の問題を改善するため、次のような相溶化剤や耐衝撃改良剤が見出されている。
【0008】
特許文献2では、アクリル樹脂あるいはスチレン樹脂をポリ乳酸樹脂にグラフト重合することが提案されている。特許文献3では、ポリ乳酸樹脂と他の樹脂のアロイに、ビニル系単量体をゴム状重合体にグラフト重合した樹脂を配合することが提案されている。
【0009】
特許文献2、3においては、いずれも機械物性、耐衝撃性、外観は改善効果がみられたが、耐湿熱性が不十分であり、特に、高温環境下で使用される自動車部品や電気部品において使用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平07−109413号公報
【特許文献2】特開2007−56247号公報
【特許文献3】特開2005−320409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、耐熱性、機械物性、耐湿熱性いずれにも優れ、地球環境負荷の低いポリ乳酸系の樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意検討の結果、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、ポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂に、ポリエステル樹脂と特定組成の樹脂を混合することで、耐熱性、機械物性、耐湿熱性すべてを向上させることができることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
【0013】
(1)ポリ乳酸樹脂(Α)、ポリカーボネート樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、ならびにスチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)を含有する樹脂組成物であって、(A)が25〜50質量%、(B)が30〜69.5質量%、(C)および(D)の合計が0.5〜20質量%である樹脂組成物。
(2)スチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)のアクリル系モノマーの全部または一部がグリシジル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである(1)記載の樹脂組成物。
(3)(1)または(2)記載の樹脂組成物100質量部に対し、さらにカルボジイミド化合物(E)を0.1〜5質量部含有する樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)いずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、(C)と(D)を反応させて変性ポリエステル樹脂を作製した後、前記変性ポリエステル樹脂に、前記変性ポリエステル樹脂の作製に用いた(C)および(D)以外の成分を溶融混練する樹脂組成物の製造方法。
(5)(1)〜(3)いずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、(D)の一部と(C)を反応させて変性ポリエステル樹脂を作製した後、前記変性ポリエステル樹脂に、前記変性ポリエステル樹脂の作製に用いた(D)および(C)以外の成分とともに、(D)の残部を溶融混練する樹脂組成物の製造方法。
(6)(5)記載の製造方法において、変性ポリエステル樹脂を作製する際に、(D)の一部として、スチレンおよびグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体を用い、(D)の残部を溶融混練する際に、アルキル(メタ)アクリレート系の重合体、スチレン系モノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、またはグリシジル(メタ)アクリレートの重合体を含有する樹脂を用いる樹脂組成物の製造方法。
(7)(1)〜(3)いずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた機械物性、耐熱性、耐湿熱性、外観を有し、かつ、石油系製品への依存度の低い樹脂組成物が提供される。この樹脂組成物は射出成形等により各種成形体とすることができ、上記の特性を生かして、電気・電子部品、機械部品、光学機器、建築部材、自動車部品および日用品等各種用途に有効に利用することができる。さらに天然物由来の樹脂を利用しているので、石油等の枯渇資源の節約・二酸化炭素排出量の削減に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、スチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)を含有する。
【0016】
ポリ乳酸樹脂(A)としては、例えば、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を挙げることができる。
【0017】
ポリ乳酸樹脂(A)の含有量は、(A)〜(D)の合計に対して、25〜50質量%とすることが必要で、30〜40質量%とすることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が25質量%未満であると、バイオマス原料の比率が小さく環境側面でのメリットが小さくなり、一方、含有量が50質量%を超えると、耐熱性や耐湿熱性が低下するので好ましくない。
【0018】
ポリ乳酸樹脂(A)には、ポリ乳酸樹脂(A)に対して、20質量%を超えない範囲で、他の生分解性樹脂が混合されていてもよい。他の生分解性樹脂としては、例えば、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンアジペート)等のジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(δ−バレロラクトン)等のポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、澱粉等の多糖類が挙げられる。また、他の生分解性樹脂としては、芳香族成分を含んでいても生分解性を示すポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート−co−ブチレンテレフタレート)、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネートも含まれる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。また、共重合されていてもよい。
【0019】
ポリ乳酸樹脂(A)の後述の測定方法によるメルトフローレート(以下、「MFR」と略称する。)は、0.1〜50g/10分とすることが好ましく、0.2〜20g/10分とすることがより好ましく、0.5〜15g/10分がさらに好ましい。MFRを、0.1〜50g/10分とすることで、耐衝撃性や曲げ特性を向上させることができる。
【0020】
ポリ乳酸樹脂(A)は、公知の溶融重合法により、あるいは必要に応じて固相重合法を併用して製造される。
【0021】
ポリ乳酸樹脂(A)として、ポリ乳酸樹脂に架橋構造を導入した架橋ポリ乳酸樹脂を使用することで、耐熱性や、溶融混練時の操業性を向上させることができる。架橋の形態は、ポリ乳酸樹脂分子同士が直接架橋したものでも、架橋助剤を介して間接的に架橋したものでも、直接架橋と間接架橋が混在したものでもよい。
【0022】
ポリ乳酸樹脂に架橋構造を導入する方法としては、電子線を照射する方法、多価イソシアネート化合物等の多官能性化合物を使用する方法、過酸化物を使用する方法等の公知の方法が挙げられる。架橋効率の点で、過酸化物を使用する方法が好ましい。
【0023】
過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメンが挙げられる。
【0024】
過酸化物の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。過酸化物の含有量が20質量部を超えても使用できるが、効果が飽和するばかりか、経済的でない。なお、過酸化物は、混練する際に分解して消費されるため、ポリ乳酸樹脂との混練時に使用されても、樹脂組成物中には残存しない場合がある。
【0025】
架橋効率を上げるために、過酸化物とともに架橋助剤を使用することが好ましい。架橋助剤を用いる場合、その含有量は、過酸化物100質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、10〜30質量部とすることがより好ましい。架橋助剤の含有量が100質量部を超えても使用できるが、効果が飽和するばかりか、経済的でない。
【0026】
架橋助剤としては、例えば、アルコキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、脂肪族および芳香族系モノマー、芳香族アリル化合物、ビニル複素環式化合物、多官能性(メタ)アクリル系化合物、脂肪族および芳香族多価カルボン酸のポリビニルエステル、脂肪族および芳香族多価カルボン酸のポリビニルエステル、ポリアリルエステル、シアヌール酸またはイソシアヌール酸のアリルエステル、マレイミド系化合物、2個以上の三重結合を有する化合物が挙げられる。中でも架橋反応性の点から、アルコキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物と(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
【0027】
アルコキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基から選ばれる官能基を2個以上有するシラン化合物とは、シラン化合物の4つの水素のうち、2つ以上がアルコキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基から選ばれる官能基で置換された構造を有する化合物である。
【0028】
このような化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−1003)、ビニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8311、信越化学工業社製KBE−1003)、p−スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−1403)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製TSL8370、信越化学工業社製KBM−503)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−503)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−5103)が挙げられる。
【0029】
ポリ乳酸樹脂に、過酸化物と架橋助剤を架橋反応させる方法としては、一般的な押出機を用いて溶融混練する方法が挙げられる。その場合、あらかじめ過酸化物および/または架橋助剤を媒体に溶解または分散させてもよい。例えば、ポリ乳酸樹脂と過酸化物とを溶融混練しながら架橋助剤の溶解液または分散液を注入してもよく、また、ポリ乳酸樹脂を溶融混練しながら架橋助剤と過酸化物の溶解液または分散液を注入して溶融混練してもよい。
【0030】
過酸化物および/または架橋助剤を溶解または分散させる媒体としては、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物との相溶性に優れた可塑剤が好ましい。例えば、脂肪族多価カルボン酸エステル誘導体、脂肪族多価アルコールエステル誘導体、脂肪族オキシエステル誘導体、脂肪族ポリエーテル誘導体、脂肪族ポリエーテル多価カルボン酸エステル誘導体が挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノカプレート、ポリグリセリン酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセライド、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、トリエチレングリコールジアセテート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルトリブチルクエン酸、ポリエチレングリコール、ジブチルジグリコールサクシネート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ビス(メチルジグリコール)アジペートが挙げられる。市販品としては、理研ビタミン社製PL−012、PL−019、PL−320、PL−710、アクターシリーズ(M−1、M−2、M−3、M−4、M−107FR)、田岡化学社製のATBC、大八化学社製のBXA、MXA、太陽化学社製のチラバゾールVR−01、VR−05、VR−10P、VR−10P改1、VR−623が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネート樹脂(B)とは、ビスフェノール類残基とカーボネート残基からなる樹脂である。
【0032】
ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略称する。)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下、ビスフェノールTMCと略称する。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジチオジフェノール、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジクロロジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテルが挙げられる。中でも、汎用性の点から、ビスフェノールAとビスフェノールTMCが好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ポリカーボネート樹脂(B)は、公知の方法で製造することができる。例えば、ビスフェノール類とホスゲン、または、ビスフェノール類とジフェニルカーボネートを反応させる方法が挙げられる。
【0034】
ポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、(A)〜(D)の合計に対して、30〜69.5質量%とすることが必要で、40〜60質量%とすることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(B)の含有量が30質量%未満であると、耐熱性が低下し、一方、含有量が69.5質量%を超えると、バイオマス比率が少なくなり、環境面で好ましくない。
【0035】
ポリカーボネート樹脂(B)の濃度1.0g/dlでの極限粘度は0.35〜0.65とすることが好ましい。(B)の極限粘度をこの範囲とすることで、耐衝撃性や曲げ特性を向上させることができる。
【0036】
本発明の樹脂組成物には、ポリエステル樹脂(C)を含有させることが必要である。(C)を含有させることにより、ポリ乳酸樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の相溶性を向上させ、耐熱性、耐衝撃性、耐湿熱性を向上させることができる。
【0037】
ポリエステル樹脂(C)とは、ジカルボン酸残基とグリコール残基からなる樹脂である。
【0038】
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を含有していることが好ましい。テレフタル酸とイソフタル酸の合計の含有量は、50モル%以上とすることが好ましく、60モル%以上とすることがより好ましく、65モル%以上とすることがさらに好ましい。
【0039】
ジカルボン酸成分としては、本発明の効果を損なわない範囲で、他のジカルボン酸を加えてもよい。他のジカルボン酸としては、例えば、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0040】
グリコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族または脂環族グリコールを含有していることが好ましい。炭素数2〜10の脂肪族または脂環族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。中でも、グリコール成分を、エチレングリコールとネオペンチルグリコール(60/40〜90/10(モル比))、エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノール(60/40〜90/10(モル比))、エチレングリコールと1,2−プロパンジオール(90/10〜10/90(モル比))の組み合わせとすることで、耐衝撃性や曲げ特性を向上させることができる。
【0041】
グリコール成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のグリコールを加えてもよい。他のグリコールとしては、例えば、ダイマージオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
【0042】
ポリエステル樹脂には、3官能以上のカルボン酸、3官能以上のアルコールを、それぞれ、ジカルボン酸成分、グリコール成分に対して、0.001〜5モル%含有することが好ましい。3官能以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸が挙げられ、3官能以上のグリコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンが挙げられる。3官能以上のカルボン酸、3官能以上のアルコールを含有することで、成形性を向上させることができる。
また、ポリエステル樹脂には、ヒドロキシカルボン酸を含有してもよい。
【0043】
ポリエステル樹脂の濃度1.0g/dlでの極限粘度は、0.40〜1.50とすることが好ましく、0.50〜1.20とすることがより好ましく、0.60〜1.00とすることがさらに好ましい。極限粘度を0.40〜1.50dl/gの範囲とすることで、耐衝撃性や曲げ特性を向上させることができる。
【0044】
ポリエステル樹脂の酸価は、100当量/10g以下とすることが好ましく、50当量/10g以下とすることがより好ましく、40当量/10g以下とすることがさらに好ましい。酸価を100当量/10g以下とすることで、加水分解することなく成形することができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物には、スチレン系モノマーおよび/またはアクリルモノマーの重合体(D)を含有させることが必要である。(D)を含有させることにより、ポリ乳酸樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の相溶性を向上させ、耐熱性、耐衝撃性、耐湿熱性を向上させることができる。
【0046】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
アクリル系モノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
ポリエステル樹脂(C)と、スチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)の合計の含有量は、(A)〜(D)の合計に対して、0.5〜20質量%とすることが必要で、1〜15質量%とすることが好ましい。(C)と(D)の合計の含有量が0.5質量%未満であると、ポリ乳酸樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の相溶性が向上せず、耐熱性、耐衝撃性、耐湿熱性を向上させることができないので好ましくない。一方、(C)と(D)の合計の含有量が20質量%を超えると、耐熱性や耐衝撃性が低下するので好ましくない。
【0049】
ポリエステル樹脂(C)の含有量とスチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)の含有量の質量比率は、70/30〜99.5/0.5とすることが好ましく、80/20〜98/2とすることがより好ましい。(C)の含有量と(D)の含有量の質量比率を70/30〜99.5/0.5とすることで、ポリ乳酸樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の相溶性をさらに向上させ、耐熱性、耐衝撃性、耐湿熱性をさらに向上させることができる。
【0050】
本発明の樹脂組成物には、さらに、カルボジイミド化合物(E)を含有させることができる。カルボジイミド化合物(E)は、耐湿熱性を向上させることができる。
【0051】
カルボジイミド化合物(E)とは、(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を分子内に有する化合物をいう。なお、カルボジイミド基を分子内に1個有する化合物をモノカルボジイミド化合物と表し、カルボジイミド基を分子内に2個以上有する化合物を多価カルボジイミド化合物と表す。
【0052】
カルボジイミド化合物(E)を用いる場合、その含有量は、(A)〜(D)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部とすることが好ましく、0.5〜3質量部とすることがより好ましい。カルボジイミド化合物(E)の含有量を0.1〜5質量部とすることで、耐湿熱性が向上し、耐熱性が向上する。なお、カルボジイミド化合物(E)として2種以上のカルボジイミド化合物を用いる場合、その含有量は、全てのカルボジイミド化合物の合計量とする。
【0053】
カルボジイミド化合物(E)としては、モノカルボジイミド化合物と多価カルボジイミド化合物を併用することが好ましい。
【0054】
モノカルボジイミド化合物の含有量と多価カルボジイミド化合物の含有量の質量比率は、10/90〜90/10とすることが好ましく、30/70〜70/30とすることがより好ましい。質量比率を10/90〜90/10とすることで耐湿熱性をさらに向上させることができる。
【0055】
モノカルボジイミド化合物と多価カルボジイミド化合物を併用することで、それぞれを単独で用いる場合より、耐湿熱性が向上する。理由は明らかでないが、以下のように推測できる。
【0056】
ポリ乳酸分子の加水分解は、ポリ乳酸のカルボン酸末端基により促進されることが知られている。モノカルボジイミド化合物は、分子量が小さく動きやすいため分散性に優れ、すばやくポリ乳酸分子のカルボン酸末端と反応するため、ポリ乳酸分子の末端を封鎖し加水分解を抑制する。一方、多価カルボジイミド化合物は、ポリ乳酸が加水分解して新たに発生したカルボン酸末端と反応し、鎖延長させることによって分子量を増大させ、分子量の低下を抑制する。この2つの効果が相まって、耐湿熱性が向上すると推察される。
【0057】
モノカルボジイミド化合物としては、例えば、N,N´−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−o−トルイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トルイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トルイルカルボジイミド、N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドが挙げられる。中でも、耐湿熱性の点から、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好ましい。
【0058】
多価カルボジイミド化合物としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)カルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)カルボジイミドが挙げられる。中でも、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)カルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)カルボジイミドが好ましい。
【0059】
カルボジイミド化合物は、公知の方法により製造することができる。例えば、ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素反応により製造する方法が挙げられる。
カルボジイミド化合物には、末端にイソシアネート基が残存していてもよい。
【0060】
本発明の樹脂組成物には、さらに、難燃剤(F)を含有させることができる。
【0061】
難燃剤(F)としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が好ましく、例えば、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)が挙げられる。
【0062】
難燃剤(F)を用いる場合、その含有量は、(A)〜(D)の合計100質量部に対して、5〜30質量部とすることが好ましい。難燃剤の含有量をこの範囲とすることで、樹脂組成物の強度を低下させることなく、難燃性能を発現させることができる。
【0063】
本発明の樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない範囲内で、他の熱可塑性樹脂、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、耐光剤、顔料、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、結晶核剤を添加することができる。
【0064】
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン化合物含有コアシェルゴム、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。
【0065】
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、ビタミンEが挙げられる。
【0066】
充填材としては、機械的強度や耐熱性の向上を目的に、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維等の繊維状強化材を用いることが好ましく、中でも、ガラス繊維を用いることが好ましい。
【0067】
ガラス繊維を用いる場合、その含有量は、(A)〜(D)の合計100質量部に対して、1〜50質量部とすることが好ましい。ガラス繊維は公知のガラス繊維を用いることができ、樹脂との密着性を高めるために、表面処理を施してもよい。添加の方法としては、押出機において、ホッパーから、あるいはサイドフィーダを用いて混練の途中から添加する方法が挙げられる。また、ガラス繊維をマスターバッチ加工して、成形時にベース樹脂で希釈し、使用することもできる。
【0068】
繊維状強化材以外の充填材としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト等の無機充填材、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーの有機充填材が挙げられる。
【0069】
本発明においては、ポリエステル樹脂(C)と、スチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)を、予め反応させ、変性ポリエステル樹脂とした後、前記変性ポリエステル樹脂に、前記変性ポリエステル樹脂の作製に用いた(C)および(D)以外の成分、すなわち(A)、(B)、(E)、(F)を溶融混練して樹脂組成物を作製することが好ましい。(D)成分は、一部を変性ポリエステル樹脂の作製に用いて、その残部を溶融混練する際に追加してもよい。
【0070】
変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂(C)と、スチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)を溶融混練することによって得ることができる。
【0071】
変性ポリエステル樹脂を作製するために用いるスチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)(以下、「変性用樹脂(D−1)」と略称する。)は、スチレン系モノマーおよびアクリル系モノマーいずれもが共重合されたものであることが好ましく、スチレン系モノマーの含有量と(メタ)アクリレート系モノマーの含有量の質量比率は、25/75〜90/10とすることが好ましく、30/70〜85/15とすることがより好ましい。
【0072】
アクリル系モノマーは、全部またはその一部がグリシジル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。このようにすることで、ポリ乳酸樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の相溶性をさらに向上させることができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0073】
変性用樹脂(D−1)の重量平均分子量は、200〜50万とすることが好ましく、500〜30万とすることがより好ましく、700〜10万以下がさらに好ましく、1000〜5万以下とすることが特に好ましい。変性用樹脂(D−1)の重量平均分子量を200〜50万とすることで、未反応物が製品の表面にブリードアウトすることなく、ポリ乳酸樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)との相溶性を向上させることができる。
【0074】
溶融混練する際に、(D)の残部として追加する樹脂(以下、「特定樹脂(D−2)」と略称する。)は、(D)成分そのものであってもよいし、(D)成分を含有する樹脂であってもよい。溶融混練する際に特定樹脂(D−2)を追加することにより、ポリ乳酸樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の相溶性をより向上させることができる。
【0075】
特定樹脂(D−2)として(D)そのものを用いる場合、特定樹脂(D−2)としては、アクリル系モノマーの重合体、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーの共重合体が好ましい。アクリル系モノマーを用いる場合、アルキル(メタ)アクリレートまたはグリシジル(メタ)アクリレートがより好ましく、(A)成分と(B)成分の相溶性をさらに向上させることから、グリシジル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0076】
(D)成分を含有する特定樹脂(D−2)としては、ゴム強化アクリル系樹脂、コアシェル型アクリル系樹脂、グラフト型アクリル系樹脂、グラフト型グリシジル基含有アクリル系樹脂、コアシェル型グリシジル基含有アクリル系樹脂が好ましい。中でも、(A)成分と(B)成分の相溶性をさらに向上させることから、グラフト型グリシジル基含有アクリル系樹脂、コアシェル型グリシジル基含有アクリル系樹脂等グリシジル基を有するものがより好ましい。
【0077】
ゴム強化アクリル系樹脂とは、ゴム状重合体に、アルキル(メタ)アクリレートの重合体をグラフト重合させたものである。アルキル(メタ)アクリレートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレン共重合体、イソプレン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ブタジエン・イソプレン・スチレン共重合体、ポリクロロプレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン・非共役ジエン共重合体等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ゴム、ポリブチルアクリレート等のアクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム等のシリコン系ゴム、これら2種以上のゴムからなる複合ゴムが挙げられる。中でも、ジエン系ゴムまたはアクリル系ゴムが好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
コアシェル型アクリル系樹脂とは、内層にゴム層を有し、外層にアルキル(メタ)アクリレートの重合体をグラフト重合させたものである。コアシェル構造の一例として、コア(内層)は、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分、エチレンプロピレン成分等を重合させたゴムから構成され、シェル(外層)はメタクリル酸メチル重合体等から構成されるものが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製メタブレン、鐘淵化学工業社製カネエース、呉羽化学工業社製パラロイド、ロームアンドハース社製アクリロイド、武田薬品工業社製スタフィロイドまたはクラレ社製パラペットSAが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
グラフト型アクリル系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に、アルキル(メタ)アクリレートの重合体をグラフト重合させたものである。市販品としては、例えば、日油製モディパーが挙げられる。
【0080】
グラフト型グリシジル基含有アクリル系樹脂とは、グリシジル(メタ)アクリレートの重合体、スチレン・グリシジル(メタ)アクリレートの重合体、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体にアルキル(メタ)アクリレートの重合体をグラフト重合させたものである。市販品としては、例えば、東亜合成社製RESEDA、日油社製モディパーA4200が挙げられる。
【0081】
コアシェル型グリシジル基含有アクリル系樹脂とは、内層にゴム層を有し、外層にアクリル系重合体をグラフト重合させたものである。コアシェル構造の一例として、コア(内層)は、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分、エチレンプロピレン成分等を重合させたゴムから構成され、シェル(外層)はグリシジルメタクリレートの重合体等から構成されるものが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製メタブレンS−2200が挙げられる。
【0082】
溶融混練時、カルボジイミド化合物(E)やグリシジル基を有する特定樹脂(D−2)を用いる場合は、それ以外の化合物を溶融混練させた後、カルボジイミド化合物(E)やグリシジル基を有する特定樹脂(D−2)を溶融混練させた方が好ましい。このようにすることで、樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性や耐湿熱性が向上する。明確な理由は不明であるが、カルボジイミド化合物(E)やグリシジル基を有する特定樹脂(D−2)は、いずれもポリ乳酸樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、変性ポリエステル樹脂と反応するため、反応の順序が変わるためと推測される。
【0083】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、およびシート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。特に、射出成形法に適しており、一般的な射出成形のほか、ガス射出成形、射出プレス成形に用いることができる。射出成形条件は、熱可塑性樹脂の種類や含有比率によって適宜選択される。例えば、シリンダ温度は180〜260℃とすることができる。金型温度は100℃以下とすることが好ましく、80℃以下とすることがより好ましい。成形温度が低すぎると成形品にショートショットが発生する等操業性が不安定になる場合がある。逆に成形温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、強度が低下したり、着色したりする等の問題が発生する場合がある。
【0084】
本発明の樹脂組成物から得られる本発明の成形品としては、例えば、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フイルム、繊維およびシートが挙げられる。中でも、射出成形品は反り変形問題が生じにくく薄肉成型品に適用可能である。また、これらの成形品は、電気・電子部品、機械部品、光学機器、建築部材、自動車部品および日用品等各種用途に利用することができ、特に電子機器用筐体として有用に利用できる。また、さらに難燃性を付与した組成物は、ノートパソコン、プロジェクタ、複写機、プリンタ等の筐体に好適に使用することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0086】
1.評価項目
(1)MFR
JIS規格K−7210(試験条件4)にしたがい、190℃、荷重21.2Nで測定した。
【0087】
(2)融点
DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製Pyrisl DSC)を用いて、−100℃から300℃まで20℃/分で昇温し、次に−100℃まで50℃/分で降温し、続いて−100℃から300℃まで20℃/分で昇温した。2回目の昇温過程における融解ピークを融点とした。
【0088】
(3)極限粘度
1,1,2,2−テトラクロロエタンを測定溶媒として、温度25℃の条件で測定した。なお、ポリカーボネート樹脂を測定する場合は濃度1g/dl、ポリエステル樹脂を測定する場合は濃度0.5g/dlでおこなった。
【0089】
(4)樹脂組成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製JNM−LA400)を用いて、H−NMR分析することにより、それぞれの成分のピーク強度から樹脂組成を求めた(周波数:400MHz、溶媒:重水素化クロロホルム、温度:25℃)。また、H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解をおこなった後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析をおこなった。
【0090】
(5)重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。
送液ユニット:島津製作所社製LC−10ADvp
紫外−可視分光光度計:島津製作所社製SPD−6AV、検出波長:254nm
カラム:Shodex社製KF−803 1本、Shodex社製KF−804 2本を直列に接続して使用
溶媒:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
【0091】
(6)酸価
JIS K−0070に準拠して、試料1gをジオキサン50mlに室温で溶解し、クレゾールレッドを指示薬として0.1Nの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定して求めた。
【0092】
(7)熱変形温度(DTUL)
ISO規格75−1、2にしたがい、熱変形温度用試験片を用いて荷重1.8MPaの場合の熱変形温度を測定した。実用上、80℃以上が好ましい。
【0093】
(8)衝撃強度(シャルピー衝撃強度)
ISO規格179−1eAにしたがい、ノッチ(V字型切込み)付き試験片を用いてシャルピー衝撃強度を測定した。実用上、5kJ/m以上が好ましい。
【0094】
(9)耐湿熱性
曲げ強度試験片を温度60℃、湿度95%RHの環境下で200時間処理を処理した後、曲げ強度を測定して、未処理品の値に対する強度保持率を下記の式で計算した。実用上、90%以上が好ましい。
強度保持率(%)=(処理後の曲げ強度÷未処理品の曲げ強度)×100
また、カルボジイミド化合物が含有した樹脂組成物を用いた試験片については、さらに800時間まで同様に処理をおこなった。
【0095】
(10)曲げ強度
ISO規格178にしたがい、曲げ強度試験片を用いて変形速度1mm/分で、曲げ強度を測定した。
【0096】
(11)難燃性
試験片(厚み、約1.6mm)を用いて、UL94の垂直燃焼試験法に準拠して燃焼試験をおこない、難燃性を評価した。実用上、V−2、V−1、V−0であることが好ましく、V−1、V−0であることがより好ましい。
【0097】
2.原料
<ポリ乳酸樹脂(A)>
(1)ポリ乳酸樹脂(PLA)
カーギルダウ社製NatureWorks 3001DK、MFR=10、融点168℃
【0098】
(2)架橋ポリ乳酸樹脂(架橋PLA)
二軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)を使用して、PLA100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン(信越シリコーン製)1.0質量部とジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製)1.0質量部を脂肪酸トリグリセライド(理研ビタミン製)2.5質量部に溶解した溶液を注入し、190℃で混練した。吐出された樹脂をペレット状にカッティングして、架橋ポリ乳酸樹脂を得た。(以下、「架橋PLA」と略称する。)得られた架橋PLAのMFRは1.0であった。
【0099】
<ポリカーボネート樹脂(B)>
(1)ポリカーボネート樹脂(PC)
住友ダウ社製200−13、極限粘度0.49
【0100】
<ポリエステル樹脂(C)>
(1)ポリエステル樹脂1
テレフタル酸ジメチル960質量部、エチレングリコール527質量部、ネオペンチルグリコール156質量部、テトラブチルチタネート0.34質量部を攪拌翼の付いた反応缶に投入し、50rpmの回転数で攪拌しながら、170〜220℃で2時間エステル交換反応をおこなった。エステル交換反応終了後、重縮合缶へ移送して、220℃から270℃まで昇温しながら、60分かけて500Paになるまで徐々に減圧していき、270℃で55分間重縮合反応をおこなった。その後、ストランドカッターを用いて、ペレット状のポリエステル樹脂1を得た。
【0101】
(2)ポリエステル樹脂2、3
ポリエステル樹脂2、3を、ポリエステル樹脂1を製造する場合と同様の操作をおこなって製造した。ポリエステル樹脂の樹脂組成および特性値を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
<スチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)の含有物>
(1)変性用樹脂1
メチルエチルケトン50質量部を反応缶に投入し、攪拌しながら70℃に加熱した。その後、スチレン36.4質量部、グリシジルメタクリレート37.3質量部、メチルメタクリレート26.3質量部とアゾビスジメチルバレロニトリル2質量部をメチルエチルケトン50質量部に溶解した溶液を混合して1.2mL/分で反応缶に滴下し、滴下後さらに2時間攪拌を続けた。その後、減圧することにより、メチルエチルケトンを反応容器から除去し、変性用樹脂1を得た。
【0104】
(2)変性用樹脂2〜8
樹脂組成を表2に示すように変更する以外は、変性用樹脂1を製造する場合と同様の操作をおこなって変性用樹脂2〜8を得た。変性用樹脂の樹脂組成および特性値を表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
(3)グリシジル基を有する特定樹脂(EA−1)
三菱レイヨン社製メタブレンS−2200、内層にゴム層(シリコーン樹脂)を有し、外層にアクリル系モノマー(グリシジルメタクリレート含有)の重合体をグラフト重合させたコアシェル型重合体、アクリル系樹脂の成分は70質量%含有する。
(4)グリシジル基を有する特定樹脂(EA−2)
東亜合成社製RESEDA GP−301、グリシジルメタクリレートの重合体にメチルメタクリレートをグラフト重合した樹脂。
【0107】
(5)グリシジル基を有する特定樹脂(EA−3)
日本油脂社製モディパーA4200、エチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体にメチルメタクリレートをグラフト重合した樹脂。グリシジルメタクリレート成分とメチルメタクリレート成分の含有量は合計70質量%である。
(6)グリシジル基を有していない特定樹脂(A−1)
三菱レイヨン社製メタブレンC−223A、内層にゴム層(スチレンとブタジエンの共重合体)を有し、外層にメチルメタクリレートの重合体をグラフト重合させたコアシェル型重合体、スチレン成分とメチルメタクリレート成分の含有量は合計70質量%である。
【0108】
<変性ポリエステル樹脂[(C)+(D−1)]>
(1)変性ポリエステル樹脂1
二軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)を使用して、ポリエステル樹脂1 90質量部と変性用樹脂1 10質量部を220℃で混練した。吐出された樹脂をペレット状にカッティングして、変性ポリエステル樹脂1を得た。
【0109】
(2)変性ポリエステル樹脂2〜11
樹脂組成を表3に示すように変更する以外は、変性ポリエステル樹脂1を製造する場合と同様の操作をおこなって変性ポリエステル樹脂を得た。変性ポリエステル樹脂の樹脂組成を表3に示す。
【0110】
【表3】

【0111】
<カルボジイミド化合物(E)>
(1)芳香族モノカルボジイミド化合物(HMCD−1)
ラインケミー社製スタバクゾールI、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド
(2)芳香族多価カルボジイミド化合物(HPCD−1)
ラインケミー社製スタバクゾールP
(3)脂肪族多価カルボジイミド化合物(SPCD−1)
日清紡社製LA−1、イソシアネート基含有率1〜3%
【0112】
<難燃剤(F)>
(1)ホスフィン酸アルミニウム塩(FR−1)
クラリアント社製エクソリットOP935
(2)芳香族縮合リン酸エステル(FR−2)
大八化学工業社製PX−200
【0113】
実施例1
二軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)を使用し、そのトップフィーダーに、PLAを30質量部、PCを65質量部、変性ポリエステル樹脂1を5質量部供給し、押出温度210℃〜230℃で、溶融混練押出をおこない、吐出された樹脂をペレット状にカッティングし樹脂組成物を得た。
【0114】
実施例2〜15、19〜22、比較例1〜6
樹脂組成を表4、5のように変更した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を得た。
【0115】
実施例16
二軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)を使用し、そのトップフィーダーに、PLAを30質量部、PCを65質量部、変性ポリエステル樹脂1を3質量部供給し、押出機途中のサイドフィーダーからEA−1を2質量部供給し、押出温度210℃〜230℃で、溶融混練押出をおこない、吐出された樹脂をペレット状にカッティングし樹脂組成物を得た。
【0116】
実施例17、18、23〜32
樹脂組成を表4、5のように変更する以外は、実施例16と同様に樹脂組成物を得た。その際、カルボジイミド化合物(HMCD、HPCD、SPCD)とグリシジル基を有する特定樹脂(EA−1)の各原料はサイドフィーダーから供給し、それ以外の原料はトップフィーダーから供給した。
【0117】
得られた樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械製EC−100)を用いて成形し、各種試験片を得た。210〜230℃で溶融し、射出圧力100MPa、射出速度30mm/秒、射出と保圧の合計時間15秒、保圧60MPaで60℃の金型に充填し、20秒間冷却した。
【0118】
得られた試験片の樹脂組成および特性値を表4、5に示す。
【0119】
【表4】

【0120】
【表5】

【0121】
実施例1〜29の樹脂組成物は、石油系製品への依存度が低く、熱変形温度、衝撃強度、耐湿熱性すべてが良好であった。
【0122】
実施例11は、スチレン系モノマーおよびアクリル系モノマーをいずれも共重合した樹脂を用いて変性ポリエステル樹脂を作製し、その後、樹脂組成物を作製した。そのため、樹脂組成物中に、スチレン系モノマーおよびアクリル系モノマーの重合体が含有されており、実施例9、10の樹脂組成物と比較して、熱変形温度、衝撃強度、耐湿熱性が高かった。
【0123】
実施例7は、アクリル系モノマーとして、グリシジル(メタ)アクリレートを用いて変性ポリエステル樹脂を作製し、その後、樹脂組成物を作製した。そのため、樹脂組成物中に、スチレンおよびグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体が含有されており、実施例11の樹脂組成物と比較して、熱変形温度や衝撃強度が高かった。
【0124】
実施例15〜18は、溶融混練時に特定樹脂(D−2)を用いて樹脂組成物を作製した。そのため、実施例1の樹脂組成物と比較して、熱変形温度、衝撃強度がいずれも高かった。また、実施例16〜18の樹脂組成物は、グリシジル基を有する特定樹脂(D−2)を用いて作製した。そのため、実施例1の樹脂組成物と比較して、さらに熱変形温度、衝撃強度が高かった。
【0125】
実施例22は、ポリエステル樹脂と変性用樹脂(D−1)を反応させずに樹脂組成物を作製した。そのため、比較例1の樹脂組成物と比較して、やや熱変形温度、衝撃強度、耐湿熱性が低かった。
【0126】
実施例23〜32の樹脂組成物は、カルボジイミド化合物を含有していたため、耐湿熱性(200時間)だけでなく、耐湿熱性(800時間)も良好であった。中でも、モノカルボジイミド化合物の含有量と多価カルボジイミド化合物の含有量の質量比率が10/90〜90/10の範囲である実施例27〜29、実施例31、32の樹脂組成物は、耐湿熱性(800時間)が特に良好であった。
【0127】
実施例32の樹脂組成物は、難燃剤を含有していたため、難燃性も良好であった。
【0128】
比較例1は、変性用樹脂(D−1)とポリエステル樹脂を用いずに樹脂組成物を作製した。そのため、樹脂組成物中に(C)と(D)は含有しておらず、熱変形温度、衝撃強度、耐湿熱性が低かった。
比較例2は、変性用樹脂(D−1)を用いずに樹脂組成物を作製した。そのため、樹脂組成物中に(D)は含有しておらず、熱変形温度、衝撃強度、耐湿熱性が低かった。
比較例3の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が多かったため、熱変形温度と耐湿熱性が低かった。
比較例4の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(B)の含有量が少なく、(C)と(D)の合計の含有量が多かったため、熱変形温度と衝撃強度が低かった。
比較例5の樹脂組成物は、(C)と(D)の合計の含有量が少なかったため、熱変形温度、衝撃強度と耐湿熱性が低かった。
比較例6は、ポリエステル樹脂を用いずに樹脂組成物を作製した。そのため、樹脂組成物中に(C)は含有しておらず、熱変形温度、衝撃強度、耐湿熱性が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(Α)、ポリカーボネート樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、ならびにスチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)を含有する樹脂組成物であって、(A)が25〜50質量%、(B)が30〜69.5質量%、(C)および(D)の合計が0.5〜20質量%である樹脂組成物。
【請求項2】
スチレン系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの重合体(D)のアクリル系モノマーの全部または一部がグリシジル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂組成物100質量部に対し、さらにカルボジイミド化合物(E)を0.1〜5質量部含有する樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、(C)と(D)を反応させて変性ポリエステル樹脂を作製した後、前記変性ポリエステル樹脂に、前記変性ポリエステル樹脂の作製に用いた(C)および(D)以外の成分を溶融混練する樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、(D)の一部と(C)を反応させて変性ポリエステル樹脂を作製した後、前記変性ポリエステル樹脂に、前記変性ポリエステル樹脂の作製に用いた(D)および(C)以外の成分とともに、(D)の残部を溶融混練する樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の製造方法において、変性ポリエステル樹脂を作製する際に、(D)の一部として、スチレンおよびグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体を用い、(D)の残部を溶融混練する際に、アルキル(メタ)アクリレート系の重合体、スチレン系モノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、またはグリシジル(メタ)アクリレートの重合体を含有する樹脂を用いる樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2013−79310(P2013−79310A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219237(P2011−219237)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】