説明

熱可塑性樹脂組成物の製造方法

【課題】
本発明は、耐塗装性、色調、流動性などの物性バランスに優れ、操業性や生産性に優れた熱可塑性共重合体を得ることができる熱可塑性共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】
(イ)芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)を含む単量体混合液(a)を完全混合型の反応器に連続的に供給して共重合体(A)を重合し、さらに、
(ロ)前記完全混合型反応器に直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器に共重合体(A)を供給して重合し、共重合体(B)を製造する熱可塑性共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐薬品性、色調などのバランスに優れ、且つ、成形加工性と生産性に優れた透明熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム強化スチレン系樹脂に代表されるスチレン系樹脂は、優れた機械的性質、成形加工性および外観特性を有することから、家庭用電気機器、OA機器および一般雑貨等をはじめとする広範な分野で使用されている。特に、自動車・オートバイ分野では、軽量化によるメリットから、内装のみならず外装部品としても用いられており、この場合塗装されることが多い。
【0003】
一般に、ABS樹脂中のアクリロニトリル含有率を増加させることにより、耐塗装性が向上することが知られており、これまでにABS樹脂中の高アクリロニトリル含有共重合体を検討することによって塗装性を改良する方法がいくつか検討されている。たとえば、特許文献1、2、3ではゴム含有グラフト共重合体の中のアクリロニトリル含有率やゴム成分を含有していないスチレン系共重合体中のアクリロニトリル含有率を規定する方法が提案されている。しかし、この方法では塗装性および溶融時の色調安定性が不十分であり、アクリロニトリル含有率が異なるスチレン系共重合体成分を数種類重合ならびに配合押出する必要があり、ABSの生産性が著しく低下する問題がある。
【0004】
特許文献4では、スチレン系共重合体中のアクリロニトリルの組成分布をブロードにするためにバッチ式の懸濁重合を用いた共重合体を利用しているが、その製造方法は水を利用することからポリマの分離、洗浄、乾燥を必要とし、製造コストが多大である。更には、懸濁重合では反応性比の制約上、重合後半にアクリロニトリルが過剰に残ってしまうため、ポリアクリロニトリルが生成し、色調が悪化する点と目的とする組成分布を得ることができない。また未反応アクリロニトリルが水に溶解するため、工程排水にアクリロニトリルを含むという環境上の問題がある。
【特許文献1】特開平6−16896号公報
【特許文献2】特開平7−11099号公報
【特許文献3】特開平5−209108号公報
【特許文献4】特開平9−302197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。本発明の目的は、耐衝撃性、耐塗装性、色調安定性および成形加工性のバランスに優れた耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。特に耐塗装ABS樹脂に含まれる高アクリロニトリル含有スチレン系樹脂に関し、組成分布がブロードとなる高アクリロニトリル含有スチレン系樹脂を連続的に生産し、生産効率を向上させ、さらに環境負荷を低減させることに成功した熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
(イ)芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)を含む単量体混合液(a)を完全混合型の反応器に連続的に供給して共重合体(A)を重合し、さらに、
(ロ)前記完全混合型反応器に直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器に共重合体(A)を供給し重合し、共重合体(B)を製造する熱可塑性共重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、熱可塑性樹脂組成物の製造方法について鋭意検討した結果、従来の知見では成し得ることができなかった、樹脂の塗装性を兼ね備えつつ、優れた色調と機械特性を持ち、生産性と環境上に優れた製造方法を見出した。
【0008】
また従来、共重合体を高アクリロニトリル領域において連続重合した場合、しばしば、高粘度により重合を安定化できない課題があったが、共重合体を、本発明の熱可塑性共重合体の製造方法によって、高粘度化した重合溶液となる共重合体の含有率が高い条件でも安定的に、経済的に有利な連続重合が可能となった。本発明の熱可塑性共重合体の製造方法では、環境負荷を低減する事が可能となった。
【0009】
本発明により、耐衝撃性などの物性バランスに優れた耐塗装性スチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を得ることができる。また、高アクリロニトリル含有スチレン系樹脂の組成分布をブロードにすることができるため、アクリロニトリル含有率が異なるスチレン系共重合体成分を数種類重合ならびに配合押出する必要がなく、ABSの生産性も向上する事ができる。
【0010】
本製造方法で得られる熱可塑性樹脂は、AS樹脂やABS樹脂とブレンド押出し、耐塗装ABS樹脂として利用される。耐塗装ABS樹脂は、自動車・オートバイ分野では、内装のみならず外装部品として使用されており、従来の耐塗装ABS樹脂より、連続生産性に優れる。また、本手法を採用することで、樹脂の色調を改善することが可能となり、ABSの品質安定性が向上し、着色塗装性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0012】
本発明は、(イ)芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)を含む単量体混合液(a)を完全混合型の反応器に連続的に供給して共重合体(A)を重合し、さらに、(ロ)前記完全混合型反応器に直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器に共重合体(A)を供給し重合し、共重合体(B)を製造する熱可塑性共重合体の製造方法である。
【0013】
本発明は、芳香族系ビニル単量体(a1)とシアン化ビニル単量体(a2)を含む単量体混合液(a)を完全混合型の反応器に連続的に供給して共重合体(A)を重合する。
【0014】
芳香族ビニル系単量体(a1)としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレン等が挙げられるが、特に、スチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。芳香族ビニル系単量体(a1)は、1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
シアン化ビニル系単量体(a2)としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタクリロニトリル等が挙げられるが、特に、アクリロニトリルが好ましく用いられる。シアン化ビニル系単量体(a2)は、1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
本発明においては、単量体混合物(a)は、芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)で構成される場合と、芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)以外の他の単量体(a3)を含有する場合がある。他の単量体(a3)としては、アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和カルボン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物およびN−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミドおよびアクリルアミド等の不飽和アミドなどが挙げられる。他の単量体(a3)は、1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
本発明においては、単量体混合物は、耐塗装性と耐衝撃性と剛性との物性バランスの点から、芳香族系ビニル化合物単位(a1)10〜70重量%、シアン化ビニル化合物単位(a2)10〜60重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(a3)0〜50重量%からなるビニル系単量体混合物であることが好ましい。シアン化ビニル系単量体が10重量%未満であると、得られるシアン化ビニル系共重体を用いた耐塗装性熱可塑性樹脂組成物の耐塗装性が不十分であり、60重量%を越えると色調安定性が低下するため好ましくない。
【0018】
本発明においては、芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)を含む単量体混合液(a)を完全混合型の反応器に連続的に供給して、共重合体(A)の重合率が20〜70重量%となるまで反応させることが好ましい。より好ましい態様においては、共重合体(A)の重合率が30〜70質量%である。
【0019】
本発明においては、ビニル系単量体混合物(a)を、連続塊状重合または連続溶液重合せしめるプロセス中に添加することが好ましい。
【0020】
連続溶液重合を選択する場合、上記単量体のほかに、溶媒が使用される。使用する溶媒には飽和分の水が含まれていることも可能である。溶媒を使用する場合は、溶媒として、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、テトラヒドロフランなどの極性溶媒などが挙げられるが、これらの中で極性溶媒が好ましく、より好ましくは、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン基を有する溶媒であり、さらにより好ましくは、共重合体(A)の溶解性からメチルエチルケトンである。完全混合槽へ供給する有機溶媒は、好ましくは、極性溶媒である。完全混合槽へ供給する有機溶媒の量は、単量体混合物(a)+単量体混合物(b)の総計を100重量%としたとき、好ましくは、1〜50重量%、より好ましくは、1〜30重量%、さらにより好ましくは、1〜20重量%の溶媒が使用される。
【0021】
本発明において、完全混合型反応器における重合温度は、70〜120℃が好ましく、より好ましくは、90〜115℃が望ましい。重合温度が70℃〜120℃であると、未反応アクリロニトリルの量が少なくなり、また、ブロードな組成分布の共重合体を得ることが出来きる。
【0022】
完全混合型反応器による重合工程の平均滞留時間は、目標とする重合率、重合温度、開始剤の種類・使用量によって決定されるが、0.5〜4時間の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3時間である。この範囲にすることにより、重合制御が安定するとともに、高アクリロニトリル成分を含有する共重合体を製造することができる。滞留時間が0.5時間より短いと、ラジカル重合開始剤の使用量を増加させる必要があり、重合反応の制御が困難になる場合がある。
【0023】
本発明において、芳香族ビニル化合物(a1)とシアン化ビニル化合物(a2)とを含む単量体混合物(a)を、前段工程として完全混合型反応器を用いて重合する。
【0024】
完全混合型反応器としては、各種の撹拌翼、例えば、パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、ブルマージン翼、多段翼、アンカー翼、マックスブレンド翼およびダブルヘリカル翼などを有する混合タイプの重合槽類を使用することができる。
【0025】
これらの重合槽類や反応器類は、1基(槽)または2基(槽)以上で使用され、また必要に応じて2種類以上の反応器類を組み合わせることもできるが、生産性の観点から、1槽の完全混合槽を利用する事が好ましい。
【0026】
本発明では、芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)を含む単量体混合液(a)を完全混合型の反応器に連続的に供給して共重合体(A)を重合し、さらに、前記完全混合型反応器に直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器に共重合体(A)を供給して重合し、共重合体(B)を製造する。
【0027】
本発明の静的混合用構造部を有する管状反応器とは、可動部分の無い複数のミキシングエレメントが内部に固定されている管状反応器(静的ミキシングエレメントを有する管状反応器)である。管状反応器による静的な混合を行いながら、好ましくは、連続的に塊状重合または溶液重合を行うことにより、これまで達成することのできなかった、高ポリマー濃度領域で連続重合が可能となった。静力学的混合器は、複合湾曲管を持っているものが好ましい。本発明で使用する管状反応器の単位体積あたりの伝熱面積は、好ましくは、10m/m以上、より好ましくは、30m/m以上、更に好ましくは、50m/m以上である。
【0028】
さらに、好ましくは、大きい内部熱交換表面との組み合わせにより、高い熱伝導が達成される。これにより、ホットスポットを形成するおそれなく、熱制御下にきわめて堅い発熱重合反応を行うことが可能となる。
【0029】
管状反応器の内部に固定されている複数のミキシングエレメントとしては、例えば、管内に流入した重合液の流れの分割と流れの方向を変え、分割と合流を繰り返すことにより、乱流を形成し重合液を混合するものが挙げられ、このような管状反応器として、好ましくは、スタティックミキサーが挙げられ、例として、SMX型、SMR型のスルザー式の管状ミキサー、ケニックス式のスタティクミキサー、東レ式の管状ミキサーなどが挙げられる。特に、SMX型、SMR型のスルザー式の管状ミキサーが好ましい。
【0030】
静的混合用構造部を有する管状反応器としては、有効反応容積を大きくするために、液状熱伝導媒体が内部コイルを流動する、少なくとも1個の静力学的混合用構造部が配設されている、少なくとも1個の反応器をから構成されていることが望ましい。これらの反応器は、1基または2基以上で使用され、また必要に応じて2種類以上の反応器類を組み合わせることもできる。
【0031】
本発明では、完全混合型反応器に直列に配した静的混合用構造部を有する管状反応器で重合を進めることにより、共重合体の組成分布をブロード化する事ができる。
【0032】
本発明では、管状反応器内部の圧力は、反応液の蒸気圧以上であることが好ましい。管状反応器内部の圧力は、好ましくは、1〜40kg/cm2Gかつ反応液の蒸気圧以上である。反応器内部を反応液の蒸気圧以上に維持することにより、反応液の発泡が抑えられ、発泡による閉塞が防止できる。
【0033】
本発明において、静的混合用構造部を有する管状反応器における重合温度は、70〜200℃が好ましく、90〜180℃がより望ましく、更に好ましくは100〜160℃である。重合温度が70℃以下では、重合速度が本発明に達せず、生産性が確保出来ない上に、共重合体の組成分布が不十分となる場合がある。また、200℃以上では反応速度が著しく速くなるとともに、重合体(B)が静的混合用構造部にスケールとして付着し、製造の安定性に問題が生じる場合がある。
【0034】
本発明は、管状反応器における反応液の平均滞留時間を0.01〜120分の範囲で行うことが好ましい。より好ましくは0.1〜90分であり、この平均通過時間が0.01分より短いと重合率を十分に高めることができない。一方、この平均通過時間が120分より長いと最終的に得られる共重合体(B)の熱安定性が低下し、生産性も低下する場合があるため好ましくない。
【0035】
本発明において、好ましくは、静的混合用構造部を有する管状反応器へは、完全混合型の反応器からの重合溶液の他に、単量体(b)を供給することで組成分布を更にブロード化することができる。
【0036】
静的混合用構造部を有する管状反応器へ供給する単量体混合物(b)を構成する単量体成分は、好ましくは、芳香族ビニル系単量体(b1)であることが望ましい。
【0037】
芳香族ビニル系単量体(b1)としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレン等が挙げられるが、特に、スチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。芳香族ビニル系単量体(b1)は、1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
単量体混合物(b)は、芳香族系ビニル化合物単位(b1)以外に、シアン化ビニル化合物単位(b2)およびこれらと共重合可能な他の単量体(b3)を含有することができる。
【0039】
シアン化ビニル系単量体(b2)としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタクリロニトリル等が挙げられるが、特に、アクリロニトリルが好ましく用いられる。シアン化ビニル系単量体(b2)は、1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
他の単量体(b3)としては、アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和カルボン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物およびN−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミドおよびアクリルアミド等の不飽和アミドなどが挙げられる。他の単量体(b3)は、1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
本発明においては、単量体混合物に単量体(b)が含まれる場合は、耐塗装性と耐衝撃性と剛性との物性バランスの点から、芳香族系ビニル化合物単位(b1)1〜45重量%、シアン化ビニル化合物単位(b2)1〜10重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(b3)1〜50重量%からなるビニル系単量体混合物であることが好ましい。(ただし、芳香族系ビニル化合物単位(a1)、シアン化ビニル化合物単位(a2)、これらと共重合可能な他の単量体(a3)、芳香族ビニル単量体(b1)、シアン化ビニル化合物単位(b2)、これらと共重合可能な他の単量体(b3)、の合計は、100重量%)である。
【0042】
本発明においては、単量体混合物に単量体(b)が含まれる場合は、単量体混合物(b)の供給量は、好ましくは、3〜50重量%、であり、ビニル系単量体(a)とビニル系単量体(b)の合計は100重量%である。
【0043】
本発明では、完全混合型反応器から反応液を抜き出して静的混合用構造部を有する管状反応器へ送液する操作は、例えば、ポンプにより行うことができる。ポンプは市販のギアポンプが好ましい。ポンプにより反応液を抜き出すことにより、安定に次の工程に反応液を送液することができるとともに、続いて設置された静的混合用構造部を有する管状反応器内部を反応液の蒸気圧以上に昇圧することができる。
【0044】
本発明において、静的混合用構造部を有する管状反応器へは、完全混合型の反応器からの重合溶液の他に、各種有機溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、熱安定剤を供給する事が出来る。
【0045】
静的混合用構造部を有する管状反応器へ供給する有機溶媒としては、完全混合型の反応器へ供給する有機溶媒と、同等であっても異なる種類でもよいが、揮発分分離の容易性から、完全混合型の反応器へ供給する有機溶媒と同等の有機溶媒を用いることが望ましい。管状反応器へ供給する有機溶媒は、好ましくは、極性溶媒である。管状反応器へ供給する有機溶媒の量は、単量体混合物(a)+単量体混合物(b)の総計を100重量%としたとき、好ましくは、1〜50重量%、より好ましくは、1〜30重量%、さらにより好ましくは、1〜20重量%の溶媒が使用される。
【0046】
静的混合用構造部を有する管状反応器へ供給する単量体混合物(b)には、適時、重合開始剤や連鎖移動剤、酸化防止剤、熱安定剤を混合することができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系および含リン有機化合物系等であり、熱安定剤としては、フェノール系やアクリレート系等が挙げられる。酸化防止剤、熱安定剤の供給量としては、単量体混合物(b)に対して、0〜2重量%が好ましい。その添加方法は、当該管状反応器入口に併設したサイドラインより添加する方法や管状反応器入口において、別に直列配置されたスタティックミキサーで予備混合し、当該管状反応器に通す方法が好ましい。
【0047】
また、静的混合用構造部を有する管状反応器へ有機溶媒を供給する場合、有機溶媒にも、必要に応じて、重合開始剤や連鎖移動剤、酸化防止剤、熱安定剤を混合することができる。
【0048】
静的混合用構造部を有する管状反応器における共重合体(B)の重合率は、40〜90重量%となるまで反応させることが好ましい。共重合体(B)の重合率は、より好ましくは、50〜85重量%、さらに好ましくは、70〜85重量%である。共重合体(B)の重合率が40〜90重量%となるまで反応させることにより、完全混合型反応器に直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器を用いて反応した共重合体(B)の組成分布がブロード化する。
【0049】
本発明の熱可塑性共重合体の製造方法では、共重合体(B)を製造する時、重合開始剤を使用せずに熱重合することも、重合開始剤を用いて開始剤重合することも、さらに熱重合と開始剤重合を併用することも可能である。重合開始剤としては、過酸化物またはアゾ系化合物などが用いられる。
【0050】
過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
【0051】
また、アゾ系化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1′−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノブタンおよび2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。
【0052】
なかでも、重合開始剤として、10時間半減期温度が70〜120℃であるものが好ましく、より好ましくは、80〜100℃であり、過酸化物系の重合開始剤の1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンが特に好ましく用いられる。
【0053】
これらの重合開始剤を使用する場合、1種または2種以上を併用することができる。二種以上を使用する場合は、10時間半減期温度が5℃以上離れているものを使用することが好ましい。これにより効率的に重合を進めることができる。
【0054】
重合開始剤の添加量は、単量体(a)と単量体(b)の合計100部に対して、通常、0〜1重量部である。液状熱伝導媒体が内部コイルを流動する静力学的混合反応器を用いる場合は、重合反応を重合開始剤ではなく、液状媒体の温度で制御できるため、重合開始剤の添加量を低減することができる。好ましくは、残存重合開始剤を低減する目的で、添加する重合開始剤の添加量は、0〜0.1重量部である。
【0055】
また、本発明の熱可塑性共重合体の製造方法では、共重合体(B)を製造する時、重合度調節を目的として、アルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤を単量体(a)と単量体(b)の合計100重量部に対して、0.05〜0.2重量部を添加することが好ましい。本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでも、特にn−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンおよびn−ドデシルメルカプタンが連鎖移動剤として好ましく用いられる。これらの連鎖移動剤を使用する場合、1種または2種以上を併用することができる。
【0056】
本発明の熱可塑性共重合体の製造方法では、必要に応じて、公知の可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤などを添加してもよい。
【0057】
本発明では、好ましくは、(イ)芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)を含む単量体混合液(a)を完全混合型の反応器に連続的に供給して共重合体(A)を重合し、さらに、(ロ)前記完全混合型反応器に直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器に共重合体(A)を供給して重合し、さらに、(ハ)温度100℃以上300℃未満で、圧力が200Torr以下の減圧下において、連続的に脱揮し、未反応原料混合物と共重合体(B)を分離除去する。
【0058】
この脱揮工程における脱揮温度は、100以上300℃未満が好ましく、より好ましくは120以上280℃未満とする。100以上300℃未満で脱揮すると、未反応単量体または重合溶媒である有機溶媒が十分除去され、熱劣化がないので、結果として得られる熱可塑性共重合体(B)の熱安定性や製品品質が良好である。
【0059】
また、脱揮工程においては、圧力が200Torr以下の減圧条件下であることが好ましく、より好ましくは、100Torr以下、最も好ましくは、50Torr以下である。圧力の下限については、好ましくは、0.1Torr以上である。
【0060】
脱揮工程における圧力が200Torr以下であると、効率よく未反応単量体または未反応単量体と重合溶媒の混合物を分離除去することができ、得られる熱可塑性共重合体(B)の熱安定性や品質が良好である。
【0061】
脱揮工程後の残留単量体の量は少なければ少ないほど、熱安定性や製品品質の観点から好ましい。好ましくは、芳香族系ビニル単量体が1.0%以下、より好ましくは5000ppm以下、好ましくは、シアン化ビニル化合物単位が5000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、好ましくは、有機溶媒が1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。
【0062】
このような脱揮を行う連続式脱揮装置としては、ベントを有する一軸または二軸の押出機で加熱下常圧または減圧でベント口から揮発成分を除去する方法、遠心型などのプレートフィン型加熱器をドラムに内蔵する蒸発器で揮発成分を除去する方法、遠心型などの薄膜蒸発器で揮発成分を除去する方法、および多管式熱交換器を用いて予熱、発泡して真空槽へフラッシュして揮発成分を除去する方法などがあり、いずれの方法も使用できるが、特に共重合体の熱分解を抑制可能であり、設備費用が安価である多管式熱交換器を用いて予熱、発泡して真空槽へフラッシュして揮発成分を除去する方法が好ましい。連続式脱揮装置内の平均滞留時間は、好ましくは、5〜60分であり、より好ましくは10〜45分である。上記連続式脱揮装置は本発明の目的を損なわない範囲で2機以上使用する事も可能である。
【0063】
本発明では、単量体混合液(a)+(b)から共重合体(B)が生成する速度、すなわち、ポリマ生成速度が20%/h以上である事が好ましい。
【0064】
脱揮工程で除去した未反応単量体、または、未反応単量体と有機溶媒の混合物を回収し、重合工程において全量リサイクルすることが好ましい。揮発成分は脱揮工程において、減圧加熱状態で気化させられるため、当該揮発成分を回収する方法としては、コンデンサー付き蒸留機などの公知の冷却装置に通じ、揮発成分を液体状として回収することにより、そのまま再度、重合工程において全量リサイクルすることができる。また、液体状に回収した揮発成分は、必要に応じて、公知の蒸留装置を用いて蒸留精製した後、重合工程でリサイクルすることも可能である。
【0065】
揮発成分を除去した重合溶融体を押出して粒子化することにより、共重合体(B)のペレットを得ることができる。得られた共重合体(B)は、アクリロニトリル由来の黄色が改善しており、好ましくは、共重合体(B)のペレットYIが20以下となる。
【0066】
本発明の熱可塑性共重合体の製造方法で得られた熱可塑性共重合体(B)の組成は、好ましくは、芳香族系ビニル化合物50〜70重量%、シアン化ビニル化合物30〜50重量%であり、より好ましくは、芳香族系ビニル化合物45〜65重量%、シアン化ビニル化合物35〜55重量である。
【0067】
本発明の熱可塑性共重合体の製造方法で得られた熱可塑性共重合体(B)は、好ましくは、シアン化ビニルの組成分布が平均シアン化ビニル含有率より2重量%以上高い組成を有する共重合体が10重量%以上存在し、より好ましくは、20重量%以上存在する。シアン化ビニルの組成分布が平均シアン化ビニル含有率より2重量%以上高い組成を有する共重合体が10重量%以上存在すると、ABS樹脂とした場合、目的とする耐塗装性を得ることが容易である。シアン化ビニルの組成分布が平均シアン化ビニル含有率より2重量%以上高い組成を有する共重合体は、60重量%未満が望ましく、好ましくは、50重量%未満である。
【0068】
本発明の熱可塑性共重合体の製造方法で得られる熱可塑性樹脂は、AS樹脂やABS樹脂とブレンド押出し、耐塗装ABS樹脂として利用される。ブレンドするAS樹脂やABS樹脂、その他の添加剤やポリマーについてはいずれも利用可能である。耐熱ABS樹脂は、一般雑貨以外にも自動車内外装部品や家庭用電気機器など、種々の用途等に好適に用いられる。
【0069】
また、本発明で得られた熱可塑性樹脂組成物を成形品として使用する場合、その成形方法については、いずれも利用可能であり、成形手段としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダ成形およびトランスファ成形などがあり、生産性の観点から射出成形が望ましい。
【実施例】
【0070】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法をさらに具体的に説明するため、以下に実施例を挙げて説明する。ここでは特に断りのない限り「%」は重量%を表し、「部」は重量部を示す。まず、熱可塑性樹脂組成物の樹脂特性の分析方法を下記する。
【0071】
(1)重合率
ガスクロマトグラフにより、重合溶液および仕込み原料溶液中の未反応単量体濃度(重量%)を定量し、下式より
重合率=100×(1−M1/M0)
算出した。なお、各記号は下記の数値を
M1=重合溶液中の未反応単量体濃度(重量%)
M0=仕込み原料溶液中の単量体濃度(重量%)
示す。
【0072】
(2)ポリマ生成速度
反応系モノマ単量体(a)、(b)の供給量をX1(kg/h)、脱揮装置から排出される共重合体(B)の吐出量をX2(kg/h)とし、完全混合槽、管状反応器、脱揮装置内の単量体と共重合体のトータル滞留時間をτ(h)とし、下式より
反応速度(%/h)=(X2/X1)/τ
算出した。
【0073】
(3)還元粘度
ウベローデ粘度計を使用し、測定温度30℃、試料濃度0.4g/dlのメチルエチルケトン溶液より測定した。
【0074】
(4)平均シアン化ビニル含有率
試料を加熱プレスにより40μm程度のフィルム状にし、赤外分光光度計により求めた。
【0075】
(5)シアン化ビニル組成分布
試料2gを80mlのメチルエチルケトンに溶解し、そこへシクロヘキサンを添加していき、分別沈殿したシアン化ビニル系共重合体を真空乾燥して重量を測定し、そのシアン化ビニル系共重合体のシアン化ビニル含有率を赤外分光分析の吸光度比より求めた。そして、累積重量%とシアン化ビニル含有率をプロットし、平均シアン化ビニル含有率より2重量%以上の割合(%)を求めた。
【0076】
(6)グラフト率
ゴム含有グラフト共重合体(I)(重量M)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を40分間遠心分離後、不溶分を濾過しこの不溶分を60℃で5時間真空乾燥、重量(N)を測定した。次式によりグラフト率を求めた。ただし、式中Lはゴム含有グラフト共重合体(I)中のゴム質重合体含有率(%)である。
【0077】
グラフト率(%)=100×(M−N×L/100)/(M×L/100)。
【0078】
(7)熱可塑性樹脂組成物の色調(YI値)
耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を230℃で成形後、得られた成形品をJISK7105(1981制定)、6.3黄色度黄変度の測定方法に従って評価した。
【0079】
(8)溶融時の色調安定性(黄変YI)
耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を230℃30分成形機内で滞留後、得られた成形品をJISK7105(1981制定)、6.3黄色度黄変度の測定方法に従って評価した。
【0080】
(9)アイゾット衝撃強度
耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、得られた成形品をASTM D256にしたがって、1/2インチ ノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
【0081】
(10)耐塗装
耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、得られた成形品にアクリル系塗料溶液(藤倉化成(株)製の塗料アクリライン#66E/シンナーアクリラインI型シンナー=50/50重量比)をスプレー塗装し、70℃にて30分乾燥した後の塗装面の表面性を外観評価した。また、ウレタン系塗料の場合は、日本ペイント株製ブラッシュホワイト(アンダーコート:Pu Blush White Base 、ミドルコート:Pu Blush White Coctail#1、トップコート:Pu Pearl Clear、硬化剤:Polyuremightylac Hardenner、シンナー:Polyur emightylac)を塗布し、70℃にて30分乾燥した後の塗装面の塗膜密着性を評価した。
【0082】
(11)流動性
耐塗装性熱可塑性樹脂組成物ISO 1133に準じて、220℃荷重10kgのメルトフローレイトを測定した。
【0083】
(12)ブリード量
耐塗装性熱可塑性樹脂組成物ペレット15gを80℃で3時間乾燥させた後、下部に配置した270℃熱プレートに平敷きとした。スペーサーを用い上部プレートの隙間を4mmに調整し、10分間加熱後、上部プレートを外した。上部プレートに付着したブリード物を秤量し、試料15gに含まれるブリード量(重量%)を求めた。
【0084】
[参考例1](ゴム含有グラフト共重合体(I)の製造)
ポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm、ゲル含率85%)50部(固形分換算)、純水180部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第一鉄0.01部およびリン酸ナトリウム0.1部を反応容器に仕込み、窒素置換後65℃の温度に温調し、この混合物に、撹拌下、スチレン38.5部、アクリロニトリル11.5部、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール(以下、ペンゾトリアゾール(A)と略す。)0.05部およびn−ドデシルメルカプタン0.3部の混合物を、4時間かけて連続滴下した。同時に並行して、クメンハイドロパーオキサイド0.25部、乳化剤であるオレイン酸ナトリウム2.5部および純水25部の混合物を5時間かけて連続滴下し、滴下終了後さらに1時間保持してグラフト共重合を終了させた。
【0085】
グラフト共重合を終了して得られたラテックス状生成物を、硫酸1.0部を加えた95℃の温度の水2000部中に、撹拌しながら注いで凝固させ、次いで水酸化ナトリウム0.8部で中和して凝固スラリーを得た。これを遠心分離した後、40℃の温度の水2000部中で5分間洗浄し遠心分離し、60℃の温度の熱風乾燥機中で12時間乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(I)(グラフト率35%)を調製した。
【0086】
[参考例2](スチレン系熱可塑性樹脂(II)の製造)
ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブの完全混合槽と予熱機および脱モノマ機からなる連続塊状重合装置を用い、アクリロニトリル28部、スチレン72部およびn−オクチルメカプタン0.18部からなる単量体混合物を135kg/時の速度で重合槽に連続的に供給し、連続塊状重合させた。重合槽出のポリマーの重合率は、74〜76%での間で制御し、重合反応混合物は、単軸押出機型予熱機で予熱された後、2軸押出機型脱モノマ機により未反応の単量体をベント口より減圧蒸発回収し、脱モノマ機の先端かスチレン熱可塑性樹脂(II)を得た。得られたスチレンル系共重合体(II)の平均シアン化ビニル含有率は28%であり、および平均シアン化ビニル含有率より2重量%以上の割合(%)は0である。
【0087】
[実施例1](連続溶液重合法)
容量が20リットルで、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、20L/分の窒素ガスで15分間バブリングした下記処方の単量体混合物を5.75kg/hの速度で連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 60.0重量部
メチルエチルケトン 15.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.005重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
50rpmで撹拌し、内温を110℃に制御し、平均滞留時間2時間で、連続重合を行った。重合率は60%であった。ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブは、完全混合型の反応器である。
【0088】
続いて、前重合工程で得られた重合溶液を連続的に抜き出し、ギアポンプを用い、内径2.5インチ管状反応器(スイス国ゲブリューター・ズルツァー社製SMX型スタティックミキサー・静的ミキシングエレメント30個内蔵、伝熱面積130m/m)に連続的に供給し、重合反応を行った。この時の管型反応器の内壁温度は130℃であり、平均滞留時間は30分であり、重合率80%であった。管状反応器は、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに直列に配置されていた。
【0089】
続いて、重合溶液を260℃に加熱した脱揮タンクに供給し、30分間、圧力20Torrにて、脱揮反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(B−1)を得た。得られたポリマーの量は4.0kg/hであり、トータル滞留時間は3時間であった。この共重合体(B−1)の還元粘度は、0.548であった。
【0090】
共重合体(B)の平均シアン化ビニル含有率、共重合体(B)の平均シアン化ビニル含有率より2重量%以上の割合は20%であった。
【0091】
参考例1により得られたゴム含有グラフト共重合体(I)、参考例2より得られたスチレン系共重合体(II)、実施例1より得られた共重合体(B―1)およびエチレンビスステアリルアミド(株式会社花王:商品名PSEA)を以下に示す配合割合にてヘンシェルミキサーで混合後、
グラフト共重合体(I) 30.0重量部
スチレン系共重合体(II) 50.0重量部
共重合体(B−1) 20.0重量部
エチレンビスステアリルアミド 2.2重量部
40mmφ単押出機により溶融混練し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0092】
[実施例2](連続溶液重合法)
下記処方の単量体混合物を5.75kg/hの速度で連続的に供給し、
アクリロニトリル 45.0重量部
スチレン 55.0重量部
メチルエチルケトン 15.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.008重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
実施例1と同様に連続重合を行った。完全混合型反応器の重合率は50%であり、管状反応器出の反応温度は140℃、重合率は75%。得られたポリマーの量は3.75kg/hであった。この共重合体(B−2)の還元粘度は、0.561であった。
【0093】
得られた共重合体(B−2)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0094】
[実施例3](連続溶液重合法)
下記処方の単量体混合物を3.25kg/hの速度で完全混合型の反応器に連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 15.0重量部
メチルエチルケトン 10.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.010重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
実施例1と同様に連続重合を行った。完全混合型反応器での重合温度は100℃、重合率は70%であった。前重合工程で得られた重合溶液を3.5kg/hの速度で連続的に抜き出し、下記の単量体混合物2.5kg/hとともに
スチレン 45.0重量部
メチルエチルケトン 5.0重量部
管状反応器に連続的に供給した。
【0095】
管状反応器の内壁温度は、140℃であり、出口重合率は75%であった。脱揮反応は実施例1と同様であった。この共重合体(B−3)の還元粘度は、0.544であった。
【0096】
得られた共重合体(B−3)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0097】
[実施例4](連続溶液重合法)
下記処方の単量体混合物を4.0kg/hの速度で完全混合型の反応器に連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 30.0重量部
メチルエチルケトン 10.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.008重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
実施例1と同様に連続重合を行った。完全混合型反応器での重合温度は110℃であり、重合率は70%であった。前重合工程で得られた重合溶液を4.0kg/hの速度で連続的に抜き出し、下記の単量体混合物1.75kg/hとともに
スチレン 30.0重量部
メチルエチルケトン 5.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.003重量部
管状反応器に連続的に供給した。
【0098】
管状反応器の内壁温度は、130℃であり、出口重合率は80%であった。脱揮反応は実施例1と同様であった。この共重合体(B−4)の還元粘度は、0.552であった。
【0099】
得られた共重合体(B−4)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0100】
[実施例5](連続溶液重合法)
下記処方の単量体混合物を5.0kg/hの速度で完全混合型の反応器に連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 50.0重量部
メチルエチルケトン 10.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.012重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
実施例1と同様に連続重合を行った。
【0101】
完全混合型反応器での重合温度は110℃であり、重合率は60%であった。前重合工程で得られた重合溶液を4.0kg/hの速度で連続的に抜き出し、下記の単量体混合物0.75kg/hとともに
スチレン 10.0重量部
メチルエチルケトン 5.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.0015重量部
管状反応器に連続的に供給した。
【0102】
管状反応器の内壁温度は、140℃であり、出口重合率は75%であった。脱揮反応は実施例1と同様であった。この共重合体(B−5)の還元粘度は、0.571であった。
【0103】
得られた共重合体(B−5)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0104】
[実施例6](連続溶液重合法)
下記処方の単量体混合物を5.0kg/hの速度で完全混合型の反応器に連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 50.0重量部
メチルエチルケトン 10.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.013重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
実施例1と同様に連続重合を行った。完全混合型反応器での重合温度は110℃であり、重合率は55%であった。前重合工程で得られた重合溶液を4.0kg/hの速度で連続的に抜き出し、下記の単量体混合物0.75kg/hとともに
スチレン 5.0重量部
アクリロニトリル 5.0重量部
メチルエチルケトン 5.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.0015重量部
管状反応器に連続的に供給した。
【0105】
管状反応器の内壁温度は、140℃であり、出口重合率は72%であった。脱揮反応は実施例1と同様であった。この共重合体(B−6)の還元粘度は、0.545であった。
【0106】
得られた共重合体(B−6)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0107】
[実施例7](連続塊状重合法)
下記処方の単量体混合物を5kg/hの速度で連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 60.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.005重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
実施例1と同様に連続重合を行った。完全混合器での重合温度は110℃であり、平均滞留時間は、1時間であり、重合率は、60%であった。管型反応器の内壁温度は、130℃であり、平均滞留時間は30分であり、重合率80%であった。続いて、脱揮反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(A−5)を得た。得られたポリマーの量は、4.2kg/hであり、トータル滞留時間は2時間であった。この共重合体(B−7)の還元粘度は、0.592であった。
【0108】
得られた共重合体(B−7)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0109】
[実施例8](連続塊状+溶液重合法)
下記処方の単量体混合物を4.5kg/hの速度で完全混合型の反応器に連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 50.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.005重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
実施例1と同様に連続重合を行った。完全混合器での重合温度は110℃であり、平均滞留時間は、1.5時間であり、重合率は、60%であった。前重合工程で得られた重合溶液を4.0kg/hの速度で連続的に抜き出し、下記の単量体混合物0.75kg/hとともに
スチレン 5.0重量部
アクリロニトリル 5.0重量部
メチルエチルケトン 5.0重量部
管状反応器に連続的に供給した。
【0110】
管型反応器の内壁温度は、130℃であり、平均滞留時間は30分であり、出口重合率は80%であった。脱揮反応は実施例1と同様であった。この共重合体(B−8)の還元粘度は、0.548であった。
【0111】
得られた共重合体(B−8)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0112】
[実施例9](連続溶液重合法)
実施例1の条件のうち、重合溶液を260℃に加熱した脱揮タンクに供給し、120分間、圧力250Torrにて、脱揮反応を行なった以外は、実施例1と同様の条件で実施した。脱揮缶内での長時間滞留により共重合体が大量の熱履歴を受けたため、得られたペレットが黄色を呈していた。この共重合体(B−9)の還元粘度は、0.548であった。
【0113】
得られた共重合体(B−9)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0114】
[実施例10](連続溶液重合法)
実施例1の条件のうち、メチルエチルケトン量を50重量部とした以外は、同様の条件で実施した。完全混合槽内での平均滞留時間は2時間であり、重合率は30%であった。
【0115】
管型反応器の内壁温度は、130℃、平均滞留時間は、30分であり、重合率40%であった。脱揮反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(A−7)を得た。得られたポリマーの量は、2.0kg/hであり、トータル滞留時間は3時間であった。この共重合体(B−10)の還元粘度は、0.548であった。
【0116】
得られた共重合体(B−10)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0117】
[比較例1](連続溶液重合法)
容量が20リットルで、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、20L/分の窒素ガスで15分間バブリングした下記処方の単量体混合物を5kg/hの速度で連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 60.0重量部
メチルエチルケトン 15.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.005重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
50rpmで撹拌し、内温が110℃に制御し、平均滞留時間2時間で、連続重合を行った。重合率は、60%であった。
【0118】
続いて、重合溶液を260℃に加熱した脱揮タンクに供給し、30分間、圧力20Torrにて、脱揮反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(B−11)を得た。この共重合体(B−11)の還元粘度は、0.520であった。
【0119】
得られた共重合体(B−11)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0120】
[比較例2](連続溶液重合法)
容量が20リットルで、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、20L/分の窒素ガスで15分間バブリングした下記処方の単量体混合物を5kg/hの速度で連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 60.0重量部
メチルエチルケトン 15.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.005重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
50rpmで撹拌し、内温が110℃に制御し、平均滞留時間2時間で、連続重合を行った。
【0121】
重合率は、60%であった。続いて容量が20リットルで、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに連続的に供給した。ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブは、完全混合型の反応器である。
【0122】
50rpmで撹拌し、内温を130℃に制御し、平均滞留時間1時間で、連続重合を行った。重合率75%であり、続いて、重合溶液を260℃に加熱した脱揮タンクに供給し、30分間、圧力20Torrにて、脱揮反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(B−12)を得た。この共重合体(B−12)の還元粘度は、0.513であった。
【0123】
得られた共重合体(B−12)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0124】
[比較例3](連続溶液重合法)
容量が20リットルで、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、20L/分の窒素ガスで15分間バブリングした下記処方の単量体混合物を3.25kg/hの速度で連続的に供給し、
アクリロニトリル 40.0重量部
スチレン 15.0重量部
メチルエチルケトン 10.0重量部
1,1′−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン 0.010重量部
n−オクチルメルカプタン 0.20重量部
実施例3と同様に連続重合を行った。完全混合型反応器での重合率は、70%であった。前重合工程で得られた重合溶液を3.25kg/hの速度で連続的に抜き出し、下記の単量体混合物2.5kg/hとともに
スチレン 45.0重量部
メチルエチルケトン 5.0重量部
容量が20リットルで、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに連続的に供給した。ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブは、完全混合型の反応器である。
【0125】
50rpmで撹拌し、内温を130℃に制御し、平均滞留時間1時間で、連続重合を行った。重合率75%であり、続いて、重合溶液を260℃に加熱した脱揮タンクに供給し、30分間、圧力20Torrにて、脱揮反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(B−13)を得た。この共重合体(B−13)の還元粘度は、0.521であった。
【0126】
得られた共重合体(B−13)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0127】
[比較例4](懸濁重合法)
容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次にアクリロニトリル31部スチレン69部、t−ドデシルメルカプタン0.3部および2.2´−アゾビスイソブチロニトリル0.52部の混合溶液を反応系を撹拌しながら添加し、60℃に昇温し、重合を開始した。重合開始から100分までに65℃まで昇温し、その後50分かけて100℃まで昇温して重合を完結させた。以降は、通常の方法に従って、反応系の冷却、ポリマの分離、洗浄、乾燥を行ない、シアン化ビニル系共重合体(B−14) を得た。この共重合体(B−14)の還元粘度は、0.548であった。
【0128】
得られた共重合体(B−14)を使用して、実施例1と同様の方法で配合押出し、耐塗装性熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0129】
上記の実施例1〜10と比較例1〜4で得られた共重合体(B―1)〜(B−14)の製造方法を表1に、共重合体(B―1)〜(B−14)の還元粘度、組成分布結果ならびに配合押出して得られた耐塗装性熱可塑性樹脂組成物ペレットのYI値、ブリード量、アイゾット衝撃強度、塗装性およびメルトフローレイトを測定し、表2に示した。
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
実施例1〜10の結果から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法で得られた熱可塑性樹脂組成物は、生産効率がよく、操業上の問題も解決されており、組成分布が広く、色調(YI値)、熱安定性(黄変YI値)、アイゾット衝撃強度、流動性(MFR)、成形機金型汚れ(ブリード量)、耐塗装性の全てにおいて優れていた。特に、実施例1〜6の熱可塑性樹脂組成物の製造方法で得られた熱可塑性樹脂組成物は、生産効率がよく、幅広い組成分布を示した。
【0133】
比較例1は、管状反応器を有していない。組成分布が極端に狭く、耐塗装性、衝撃強度が劣っていた。
【0134】
比較例2、3では、管状反応器の代わりに完全混合槽を用いて重合したが、耐塗装性、衝撃強度が劣っていた。
【0135】
比較例4では懸濁重合法による製造方法であり、実施例同様の組成分布ならびに色調以外の機械的特性、耐塗装性を有するが、バッチ式の重合方法であり、水を利用することからポリマの分離、洗浄、乾燥を必要とし、製造コストが多大であり、生産性に劣る。反応性比の制約上、重合後半にアクリロニトリルが過剰に残ってしまうため、ポリアクリロニトリルが生成し、色調が悪化する点と目的とする組成分布を得ることができない。また未反応アクリロニトリルが水に溶解するため、工程排水にアクリロニトリルを含むという環境上の問題がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)芳香族系ビニル単量体(a1)、シアン化ビニル単量体(a2)を含む単量体混合液(a)を完全混合型の反応器に連続的に供給して共重合体(A)を重合し、さらに、
(ロ)前記完全混合型反応器に直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器に共重合体(A)を供給して重合し、共重合体(B)を製造する熱可塑性共重合体の製造方法。
【請求項2】
(イ)工程で得られた共重合体(A)を含む重合溶液と、芳香族系ビニル単量体(b1)を含む単量体混合液(b)から共重合体(B)を製造する請求項1記載の熱可塑性共重合体の製造方法。
【請求項3】
完全混合型反応器に直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器で重合した後、
(ハ)温度100℃以上300℃未満で、圧力が200Torr以下の減圧下において、連続的に脱揮し、未反応原料混合物と共重合体(B)を分離除去する
請求項1または2に記載の熱可塑性共重合体の製造方法。
【請求項4】
完全混合型の反応器における共重合体(A)の重合率が20〜70重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性共重合体の製造方法。
【請求項5】
静的混合用構造部を有する管状反応器における共重合体(B)の重合率が50〜90重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性共重合体の製造方法。
【請求項6】
静的混合用構造部を有する管状反応器が、複合湾曲管を持った構造部を有し、単位体積あたりの伝熱面積が50m/m以上である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性共重合体の製造方法。
【請求項7】
完全混合槽および/または静的混合用構造部を有する管状反応器へ有機溶媒
供給して、共重合体(B)を製造する請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性共重合体の製造方法。
【請求項8】
共重合体(B)が、芳香族系ビニル化合物50〜70重量%、シアン化ビニル化合物30〜50重量%からなり、共重合体(B)のシアン化ビニルの組成分布が平均シアン化ビニル含有率より2重量%以上高い組成を有する共重合体が10重量%以上存在する請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−235328(P2009−235328A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86487(P2008−86487)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】