説明

熱可塑性樹脂組成物

本発明は、(A)ポリトリメチレンテレフタレート1〜99重量部と(B)ポリカーボネート99〜1重量部を含んでおり、融点(Tm)が224℃以上、且つ高温側のガラス転移温度(Tg)が143℃以上である、熱可塑性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な熱可塑性樹脂組成物に関する。より詳しくは、本発明は、極めて優れた機械物性、成形性を有するとともに、色調外観、耐熱性および滞留安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリエステルとポリカーボネートを含む樹脂組成物は優れた機械特性および耐薬品性から産業界で広く使われている。中でも、ポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートを含む樹脂組成物はその優れた耐薬品性と成形加工性を利用して、自動車部品、電気・電子部品、建築部品および工業部品としても広く使用されている。しかしながら、従来のポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートを含む樹脂組成物は高温雰囲気下における物性が低く、例えば自動車のエンジンルーム内などのような高温雰囲気下では使用できないという問題があった。
また、機械的強度や荷重たわみ温度を向上させるために、無機充填剤をポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートを含む樹脂組成物に配合させることも広く行われている。しかし、高温雰囲気下での物性は依然として満足できるレベルではない。
【0003】
上記問題を解決すべく、例えばビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル成分を規定したポリエステルとポリカーボネートを含む樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また同様に、酸化を規定したポリエステルと分岐成分を規定したポリカーボネートを含む樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記手法により、耐熱性は確かに改善されているが、要求特性を満たすには至ってない。また、溶融滞留安定性や成形片の色調に関しても満足できるレベルに至っていない。
【特許文献1】特開2002−275369号公報
【特許文献2】特開2002−265771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、極めて優れた機械物性、成形性を有するとともに、耐熱性、滞留安定性および色調外観に優れ、例えば、自動車部品材料、電気電子材料、産業資材、工業材料、家庭用品などの成形材料として好適に使用することができる熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)ポリトリメチレンテレフタレートと(B)ポリカーボネートを含む樹脂組成物が特定範囲の融点とガラス転移温度を有する場合、特に(C)成分として特定のpH調整剤を添加した場合に、該樹脂組成物から得られる成形体が機械物性、成形性に加え、色調、耐熱性および滞留安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の構成を有する。
(1)(A)ポリトリメチレンテレフタレート1〜99重量部と(B)ポリカーボネート99〜1重量部を含む熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)が224℃以上、且つ高温側のガラス転移温度(Tg)が143℃以上である、上記熱可塑性樹脂組成物。
(2)(A)ポリトリメチレンテレフタレート、(B)ポリカーボネート及び(C)pH調整剤を含む熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂組成物が下記i)およびii)の条件を満たす、上記熱可塑性樹脂組成物:
i)(A)成分と(B)成分の重量比が1/99〜99/1の範囲内であること;及び
ii)(A)+(B)成分と(C)成分の重量比が100/Xであること(ただし、pH=6の蒸留水100gに(C)成分を完全溶解させた系の20℃のpHが2.5〜5.5を示すような(C)成分の量をXgとする)。
(3)該熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)が224℃以上、且つ高温側のガラス転移温度(Tg)が143℃以上である、上記(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)(C)成分が、リン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、リン酸アンモニウム塩、及びオキソ酸からなる群から選ばれる1種以上である、上記(2)または(3)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含んでなる樹脂成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来の熱可塑性樹脂組成物と比較し、極めて優れた機械物性、成形性を有するとともに、耐熱性、滞留安定性、および色調外観に優れるという顕著な効果を有する。該熱可塑性樹脂組成物は、例えば、自動車部品材料、電気電子材料、産業資材、工業材料、家庭用品などの成形材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における(A)ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略称することがある。)とは、酸成分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてトリメチレングリコールを用いたポリエステルポリマーを示している。トリメチレングリコールは、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,1−プロパンジオール、2,2−プロパンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる。それらの中でも安定性の観点から1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0009】
このほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、酸成分として、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸等;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;ε―オキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシジカルボン酸を一部用いて共重合することができる。
【0010】
また、グリコール成分として、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジエチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ハイドロキノンなどを一部用いて共重合することができる。
共重合する場合の共重合成分の量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常酸成分の20モル%以下、あるいはグリコール成分の20モル%以下であることが好ましい。
【0011】
また、上述のポリエステル成分に分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメシン酸、トリメリット酸等の、三官能または四官能のエステル形成能を持つ酸、またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの三官能または四官能のエステル形成能を持つアルコールを共重合してもよい。その場合にそれらは全ジカルボン酸成分の1.0モル%以下、好ましくは、0.5モル%以下、さらに好ましくは、0.3モル%以下であってもよい。更に、PTTはこれら共重合成分を2種類以上組み合わせて使用しても構わない。
【0012】
本発明に用いられるPTTの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、特開昭51−140992号公報、特開平5−262862号公報、特開平8−311177号公報等に記載されている方法によって製造することができる。一例として、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体(例えばジメチルエステル、モノメチルエステル等の低級アルキルエステル)とトリメチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを、触媒の存在下、好適な温度・時間で加熱反応させ、更に得られるテレフタル酸のグリコールエステルを触媒の存在下、好適な温度・時間で所望の重合度まで重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0013】
本発明に用いられるPTTの極限粘度[η]は0.60dl/g〜1.50dl/gであることが組成物の機械特性、成形性、特に靭性面から好ましく、[η]が0.68dl/g〜1.40dl/gであることがより好ましい。さらに組成物の成形性、耐薬品性の観点から[η]が0.75dl/g〜1.30dl/gであることが最も好ましい。
PTTの極限粘度[η]については、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中にPTTを含む樹脂組成物を、溶質(PTT樹脂成分)/溶液=1.00g/dlになるように溶解させ、不溶分(無機質強化材等)をフィルターで除去した後、不溶分除去後の溶液を用いて比粘度ηspを測定し、下記式により求めることができる。
[η]=0.713×ηsp/C+0.1086
C=1.00g/dl
【0014】
また、本発明のPTTには必要に応じて、各種の添加剤、例えば、pH調整剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、艶消し剤などを共重合、または混合する場合も含む。
【0015】
本発明の(B)ポリカーボネート樹脂(以下、PCと省略することもある)は、下記式(1)で表される繰り返し単位からなる主鎖を有するものである。
−(O−Ar−O−CO)− (1)
(式中、Arは、二価の芳香族残基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、 ビフェニレン、ピリジレンや、下記式(2)で表される基が挙げられる。)
−Ar−Y−Ar− (2)
(式中、Ar及びArはそれぞれアリーレン基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレン等の基を表す。Yはアルキレン基または置換アルキレン基である。)
また、下記式(3)で示される二価の芳香族残基を共重合体成分として含有している場合も含む。
−Ar−Z−Ar− (3)
(式中Ar、Arは式(2)と同じ。Zは単なる結合または−O−、−CO−、−S−、−SO−、−CO−、−CONR−等の二価の基である。ただし、Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜30のアリール基である。)
【0016】
これら二価の芳香族残基の具体例としては下記式(4)で表されるもの等が挙げられる。
【化1】


(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜30のアリール基である。m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各Rはそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各Rはそれぞれ同一でも異なるものであっても良い。)
【0017】
これら二価の芳香族残基の中でも、下記式(5)で表される基が好ましい一例である。
【化2】


特に、上記の式(5)で表される基をArとする繰り返し単位を85モル%以上(ポリカーボネート中の全モノマー単位を基準として)含むポリカーボネートが特に好ましい。また、本発明に用いることができるポリカーボネートは、三価以上の芳香族残基を共重合成分として含有している場合も含む。
【0018】
ポリマー末端の分子構造は特に限定されないが、フェノール性水酸基、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合することができる。これらの中で、フェノール性水酸基、フェニルカーボネート基、p−t−ブチルフェニルカーボネート基、p−クミルフェニルカーボネート等が末端構造として好ましい。フェノール性水酸基末端の全末端基数に対する割合は、特に限定されないが、よりすぐれた色調や機械的物性を得る観点からは、フェノール性水酸基末端の割合が全末端基数の20%以上であることが好ましく、20〜80%の範囲にあることが更に好ましい。フェノール性水酸基末端の割合が全末端基数の80%を超えると、組成物の溶融時の熱安定性が若干低下する傾向にある。フェノール性水酸基末端の割合は、一般にNMRを用いて測定する方法(NMR法)や、チタンを用いて測定する方法(チタン法)や、UVもしくはIRを用いて測定する方法(UV法もしくはIR法)で求めることができる。
【0019】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、一般に耐衝撃性の観点から5000以上、また熱可塑性樹脂組成物の溶融流動性の観点から200000以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10000〜60000であり、さらに好ましくは15000〜40000であり、特に好ましくは18000〜30000である。
重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行い、測定条件は以下の通りである。すなわち、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
PC=0.3591MPS1.0388
(式中、MPCはポリカーボネートの重量平均分子量、MPSはポリスチレンの重量平均分子量である。)
【0020】
本発明で用いられるポリカーボネート樹脂は、公知の方法で製造したものを使用することができる。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体と反応せしめる公知の方法で製造することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)などを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法〔特開平1−158033号公報(米国特許第4,948,871号明細書に対応)、特開平1−271426号公報、特開平3−68627号公報(米国特許第5,204,377号明細書に対応)〕等の方法により製造されたものが用いられる。
【0021】
好ましいポリカーボネート樹脂としては、2価フェノール(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂が挙げられる。本発明では異なる構造や分子量の2種以上の異なるポリカーボネートを組み合わせて使用することも可能である。
【0022】
さらに、(A)ポリトリメチレンテレフタレートと(B)ポリカーボネートは、両者の混練温度における溶融粘度が近いことが望ましい。また剪断速度100sec−1におけるそれぞれの溶融粘度(単位;poise)をμ(A)及びμ(B)で表した場合、次の条件を満たすことが望ましい。
|μ(A)−μ(B)|≦18,000(poise)
この溶融粘度差は、(A)ポリトリメチレンテレフタレートの(B)ポリカーボネートに対する相溶化を進め、樹脂組成物の成形性および物性を発揮させるために望ましい範囲である。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)は224℃以上であり、且つ高温側のガラス転移温度(Tg)は143℃以上である。さらに耐熱性及び滞留安定性の観点からTmが224.5℃以上、且つ高温側のTgが145℃以上であることが好ましく、Tmが225℃以上、且つ高温側のTgが147℃以上であることが最も好ましい。本発明における融点(Tm)とは、120℃、5時間、10Pa以下の条件で真空乾燥した樹脂組成物あるいは成形品5mgを、示差走査熱量測定器(DSC)を使用して、0℃で3分間保持した後、0℃から270℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した際に現われる融解ピーク温度である。本発明における高温側のガラス転移温度(Tg)とは、樹脂組成物を樹脂温度270℃、金型温度80℃の条件で成形加工したISOダンベル片を用いて、−100℃から200℃の温度領域で、2℃/分の昇温速度、10rad/秒の条件で動的粘弾性測定を行った際の損失弾性率(G″)の最も高温側に発現するピーク温度である。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記範囲の融点及びガラス転移温度を保持した(A)ポリトリメチレンテレフタレート1〜99重量部と(B)ポリカーボネート99〜1重量部を含む樹脂組成物である。耐熱性および靭性の観点から(A)成分5〜95重量部に対して(B)成分95〜5重量部であることがより好ましく、(A)成分10〜50重量部に対して(B)成分90〜50重量部であることがさらに好ましく、(A)成分20〜50重量部に対して(B)成分80〜50重量部であることが最も好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、滞留安定性の観点からその樹脂ペレットのb*値が5以下であることが好ましく、3以下であることがさらに好ましく、1以下であることが最も好ましい。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は第3成分として、(C)pH調整剤を添加することが、耐熱性、滞留安定性及び色調の観点から好ましい。(C)pH調整剤とは系全体のpHを特定範囲に調整する働きを持つ化合物であり、(C)成分の配合量としては、上記の(A)と(B)成分の合計重量と(C)成分の重量比を100/Xとした時、pH=6の蒸留水100gに(C)成分Xgを完全溶解させた系の20℃のpHが2.5〜5.5を示すような量であることが好ましい。さらに、組成物の耐熱性、滞留安定性の観点から、上記pHが3〜5を示すような量を配合することがより好ましい。(C)成分としては、そのXgがpH=6の蒸留水100gに完全溶解するものが、樹脂への分散速度の観点から好ましい。
【0026】
上記項目を満足するような(C)pH調整剤の種類としては、リン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、メタリン酸金属塩、リン酸アンモニウム塩及びオキソ酸が挙げられる。
リン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、メタリン酸金属塩、リン酸アンモニウム塩及びオキソ酸の具体例としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素カリウム、第一リン酸アルミニウム、リン酸二水素亜鉛、リン酸二水素アンモニウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素二カリウム、ピロリン酸二水素亜鉛、ピロリン酸二水素マグネシウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸亜鉛、クエン酸、リン酸及びホスホン酸等を挙げることができる。上記金属塩の中でリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム及びクエン酸が最も好ましく用いられる。
【0027】
(C)pH調整剤は、押出機前段においてポリカーボネート樹脂およびポリトリメチレンテレフタレート樹脂の反応時に存在していればよい。従って、(C)pH調整剤の添加方法は、特に制限されない。例えば、上記の原料樹脂を供給口から供給する際に何れかの原料樹脂に(C)pH調整剤を混合して添加する方法、あるいは両原料樹脂を混合した後に(C)pH調整剤を混合する方法を採用することができる。
【0028】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、剛性及び耐熱性の向上を目的として(D)無機充填剤を配合することが可能である。(D)無機充填剤としては目的に応じて繊維状、粉粒状、板状の無機充填剤が用いられる。
繊維状無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ウォラストナイト、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などの無機質繊維状物質があげられる。特に代表的な繊維状無機充填剤はガラス繊維およびカーボン繊維である。なおポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することができる。
【0029】
一方、粉粒状無機充填剤としてはカーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土のごとき硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナのごとき金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのごとき金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのごとき金属の硫酸塩、その他、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。又、板状無機充填剤としてはタルク、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0030】
本発明の無機充填剤はなかんずく、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、炭素繊維(CF)、及びチタン酸カリウムウィスカーからなる群から選ばれた少なくとも一つの無機充填剤が好ましい。特に、機械的特性の補強効果という観点から、ガラス繊維が最も好ましく用いられる。
これらの無機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。繊維状無機充填剤、特にガラス繊維と粒状及び/又は板状無機充填剤の併用は、機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。
【0031】
また、本発明に用いられる繊維状無機充填剤の平均繊維長(以下、Lともいう)、平均繊維径(以下、dともいう)、アスペクト比(以下、L/dともいう)については特に限定されない。ガラス繊維の場合、平均繊維長(L)が50〜10000μm、平均繊維径(d)が5〜30μm、アスペクト比(L/d)が10〜1000であることが高い機械的特性を発現するという観点から最も好ましい。また炭素繊維は、平均繊維長(L)が100〜750μm、平均繊維径(d)が、3〜30μm、アスペクト比(L/d)が10〜100であるものが好ましく用いられる。さらに、ウォラストナイトは、平均繊維径は、3〜30μm、平均繊維長が10〜500μm、前記アスペクト比(L/d)が3〜100のものが好ましく用いられる。その他のタルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカーは平均粒径が0.1〜100μmのものが最も好ましく用いられる。
【0032】
(D)無機充填剤の樹脂組成物への添加量としては、(A)成分+(B)成分100重量部に対して、0〜150重量部が剛性及び成形品外観の観点から好ましく、0〜100重量部がより好ましく、0〜50重量部が最も好ましい。
これらの無機充填剤は、特に表面処理を施したものが好ましく用いられる。表面処理としては公知のカップリング剤やフィルム形成剤を用いて行う。好ましく用いられるカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤が挙げられる。これ等の化合物はあらかじめ表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は材料調製の際同時に添加してもよい。
【0033】
シラン系カップリング剤としては、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(1,1−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−α−(アミノエチル)−α−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−α−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル-トリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−α−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−α−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−4,5ジヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア等が挙げられる。
この中でも、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−α−(アミノエチル)−α−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(1,1−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシランおよびエポキシシランが好ましく用いられる。
チタン系カップリング剤は、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスフェイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェイト)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェイト)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェイト)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル、アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0034】
フィルム形成剤としては、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、無水マレイン酸とエチレン、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエンなどの不飽和単量体とのコポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマーなどの重合体を挙げることが出来る。これらの中でも、エポキシ系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ブタジエン無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、及び、これらの混合物が好ましく用いられる。
【0035】
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物及び樹脂成形体には衝撃特性の向上を目的として、(E)衝撃性改良剤を添加することが可能である。
(E)衝撃性改良剤としては、ゴム様のコア上に一つ以上のシェルをグラフトさせて構成されているコアーシェルポリマーが挙げられる。コアとなるゴム成分としては、ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、アクリルゴム、アクリル−シリコン複合ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−プロプレンゴム、二トリルゴム、エチレン−アクリルゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴムおよびこれらの不飽和結合部分に水素が添加した形のものを挙げることができる。一方のシェル成分としては、ビニル芳香族化合物、シアン化ビニル、アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸およびこれらの共重合可能なビニル化合物を挙げることができる。ビニル芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アルコキシスチレン、ハロゲン化スチレン等を挙げることができる。また、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル等を挙げることができる。さらに、上記コア及び/またはシェルは架橋剤及び/またはグラフト剤として機能し得る多官能性化合物を含んでいることが好ましい。
【0036】
オレフィンアクリレート、オレフィン−ジエンターポリマーのようなオレフィンを含有するコポリマーも衝撃性改良剤として使用することができる。オレフィンアクリレートコポリマーとしてはエチレン−エチルアクリレートコポリマーであるDPD−6169(Union Carbide社)、エチレン−メチルアクリレートグリシジルメタクリレート共重合体であるLotadar GMA(ATOFINA社)やエチレンアクリル酸エステル共重合体であるLotryr(ATOFINA社)等が挙げられる。また、オレフィン−ジエンターポリマーとしては、エチレン−プロピレン−ジエン系ターポリマーであるEPYSN704(Copolymer Rubber Company社)が挙げられる。
【0037】
また、ゴム質の各種ポリマーやコポリマーも衝撃性改良剤として用いることができる。例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−アクリル複合ゴム、アクリルゴム、アクリル−シリコン複合ゴムが挙げられる。
更に、スチレン含有ポリマーも衝撃性改良剤として好ましく用いられる。例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン、α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、その他耐衝撃性のスチレン含有ポリマーが挙げられる。
【0038】
その他衝撃性改良剤としては、各種エラストマー性物質、たとえば有機シリコーンゴム、エラストマー性フルオロ炭化水素、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ランダムブロックポリシロキサン−ポリカーボネート、ランダムブロックポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー等が挙げられる。
【0039】
本発明の樹脂組成物あるいは樹脂成形体に、さらに(F)成形性改良剤を添加するとより本発明の目的に合致した樹脂組成物あるいは樹脂成形体が得られる。(F)成形性改良剤としては、高級脂肪酸類、高級脂肪酸金属塩類、高級脂肪酸エステル類、高級脂肪酸アミド化合物類、ポリアルキレングリコールあるいはその末端変性物類、低分子量ポリエチレンあるいは酸化低分子量ポリエチレン類、置換ベンジリデンソルビトール類、ポリシロキサン類、カプロラクトン類が挙げられる。特に好ましいのは、(x)高級脂肪酸類、(y)高級脂肪酸金属塩類、(z)高級脂肪酸エステル類である。以下これら(F)成形性改良剤について詳細に説明する。
【0040】
(x)高級脂肪酸類
高級脂肪酸類としては、高級飽和脂肪酸類、高級不飽和脂肪酸類あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
(x−1)高級飽和脂肪酸類
高級脂飽和肪酸類は、例えばカプリン酸、ウラデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸など、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
(x−2)高級不飽和脂肪酸類
高級不飽和脂肪酸類としては、炭素数が6〜22の不飽和脂肪酸が好ましく用いられる。
中でも、より好ましいものとしては、例えばウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビル酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸、2−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、9−ヘキサデセン酸、ガドレイン酸、ガドエライジン酸、11−エイコセン酸など、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
(y)高級脂肪酸金属塩類
高級脂肪酸金属塩類としては、高級飽和脂肪酸金属塩類、高級不飽和脂肪酸金属塩類あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
(y−1)高級飽和脂肪酸金属塩類
高級脂飽和肪酸類は、下記一般式で示される。
CH(CHCOO(M)
ここで、n=8〜30であり、金属元素(M)が、元素周期律表の1A、2A、3A族元素、亜鉛、アルミニウムなどが好ましく用いられる。
中でも、より好ましいものとしては、例えばカプリン酸、ウラデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸のリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩など、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
(y−2)高級不飽和脂肪酸金属塩類
高級不飽和脂肪酸金属塩類としては、炭素数が6〜22の不飽和脂肪酸と、元素周期律表の1A、2A、3A族元素、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩が好ましく用いられる。
中でも、より好ましいものとしては、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビル酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸、2−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、9−ヘキサデセン酸、ガドレイン酸、ガドエライジン酸、11−エイコセン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩など、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
(z)高級脂肪酸エステル類
本発明における高級脂肪酸エステル類は、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル、あるいは多価アルコールと高級脂肪酸とのエステル、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
(z−1)高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル類
高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル類として、好ましいのは、炭素数8以上の脂肪族アルコールと炭素数8以上の高級脂肪酸とのエステル類である。好ましい高級脂肪酸エステル類としては、例えばラウリルラウレート、ラウリルミリステート、ラウリルパルミテート、ラウリルステアレート、ラウリルベヘネート、ラウリルリグノセレート、ラウリルメリセート、ミリスチルラウレート、ミリスチルミリステート、ミリスチルステアレート、ミリスチルベヘネート、ミリスチルリグノセレート、ミリスチルメリセート、パルミチルラウレート、パルミチルミリステート、パルミチルステアレート、パルミチルベヘネート、パルミチルリグノセレート、パルミチルメリセート、ステアリルラウレート、ステアリルミリステート、ステアリルパルミテート、ステアリルステアレート、ステアリルベヘネート、ステアリルアラキネート、ステアリルリグノセレート、ステアリルメリセート、アイコシルラウレート、アイコシルパルミテート、アイコシルステアレート、アイコシルベヘネート、アイコシルリグノセレート、アイコシルメリセート、ベヘニルラウレート、ベヘニルミリステート、ベヘニルパルミテート、ベヘニルステアレート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルアラキネート、ベヘニルメリセート、テトラコサニルラウレート、テトラコサパルミテート、テトラコサニルステアレート、テトラコサニルベヘネート、テトラコサニルリグノセレート、テトラコサニルセロテート、セロチニルステアレート、セロチニルベヘネート、セロチニルセロチネート、メリシルラウレート、メリシルステアレート、メリシルベヘネート、メリシルメリセートなど、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0043】
(z−2)多価アルコールと高級脂肪酸とのエステル類
多価アルコールと高級脂肪酸の部分エステル類は、多価アルコールとして、例えばグリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、エリスリット、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、マニトール、ソルビトールなどが好ましく用いられる。
また高級脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ウラデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などが好ましく用いられる。
【0044】
これら多価アルコールと高級脂肪酸とのエステル類は、モノエステル類、ジエステル類またはトリエステルのいずれであってもかまわない。より好ましいものとしては、例えばグリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノリグノセレート、グリセリンモノメリセートなどの高級脂肪酸モノグリセリド、ペンタエリスリトール−モノまたはジ−ラウレ−ト、ペンタエリスリトール−モノまたはジ−ラウレ−ト、ペンタエリスリトール−モノまたはジ−ミリステ−ト、ペンタエリスリトール−モノまたはジ−パルミテート、ペンタエリスリトール−モノまたはジ−ステアレート、ペンタエリスリトール−モノまたはジ−ベヘネート、ペンタエリスリトール−モノまたはジ−リグノセレート、ペンタエリスリトール−モノまたはジ−メリセートなどのペンタエリスリトールのモノまたはジ高級脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン−モノ−またはジ−ラウレート、トリメチロールプロパン−モノ−またはジ−ミリステート、トリメチロールプロパン−モノ−またはジ−パルミテート、トリメチロールプロパン−モノ−またはジ−ステアレート、トリメチロールプロパン−モノ−またはジ−ベヘネート、トリメチロールプロパン−モノ−またはジ−リグノセレート、トリメチロールプロパン−モノ−またはジ−メリセートなどのトリメチロールプロパンのモノ−またはジ−高級脂肪酸エステルが挙げられる。
【0045】
また、ソルビタン−モノ、ジまたはトリ−ラウレート、ソルビタン−モノ、ジまたはトリ−ミリステート、ソルビタン−モノ、ジまたはトリ−ステアレート、ソルビタン−モノ、ジまたはトリ−ベヘネート、ソルビタン−モノ、ジまたはトリ−リグノセレート、ソルビタン−モノ、ジまたはトリ−メリセートなどのソルビタン−モノ、ジ、またはトリ高級脂肪酸エステル、マンニタン−モノ、ジまたはトリ−ラウレート、マンニタン−モノ、ジまたはトリ−ミリステート、マンニタン−モノ、ジまたはトリ−パルミテート、マンニタン−モノ、ジまたはトリ−ステアレート、マンニタン−モノ、ジまたはトリ−ベヘネート、マンニタン−モノ、ジまたはトリ−リグノセレート、マンニタン−モノ、ジまたはトリ−メリセレートなどのマンニタン−モノ、ジまたはトリ−高級脂肪酸エステルなど、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0046】
これら(x)高級脂肪酸類、(y)高級脂肪酸金属塩類、(z)高級脂肪酸エステル類の配合量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物中のPTT100重量部に対して、0.001〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜3重量部である。前記の成形性改良剤の配合量が、0.001重量部未満の場合には、成形加工性が本発明の目的を達成するまでに向上せず好ましくない。また5重量部を越える場合には、成形品表面に、銀ぶくれを発生させたり、成形品の機械的物性を低下させる傾向にあるので好ましくない。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、さらに(G)結晶化促進剤を添加するとより本発明の目的に合致した樹脂組成物あるいは樹脂成形体が得られる。
(G)結晶化促進剤としては、ガラス繊維、タルク、マイカ、ワラストナイトなどの無機充填剤や有機カルボン酸金属塩、無機カルボン酸金属塩、アイオノマー樹脂及び熱可塑性ポリエステル樹脂などが挙げられる。結晶化促進効果の大きさから熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0048】
本発明において、(G)結晶化促進剤として好ましく用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリトリメチレンテレフタレート以外の熱可塑性ポリエステル樹脂であれば特に制限はない。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール成分とから得られる芳香族ポリエステルや、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール成分とから得られる脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0049】
上記ポリエステル樹脂は単独で用いることもできるし、2種以上の混合物を用いることができる。中でも、特にポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂は、本発明の(A)ポリトリメチレンテレフタレートと(B)ポリカーボネートを含む樹脂組成物の結晶化速度を著しく増加させる効果があり、より好ましく用いられる。結晶化促進剤の添加量は、組成物の耐熱性および熱時剛性の観点から、(A)ポリトリメチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、0.01〜100重量部であることが好ましく、0.1〜50重量部であることがより好ましく、0.5〜30重量部であることが最も好ましい。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の樹脂または添加剤、例えば、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、難燃助剤、耐候(光)性改良剤、スリップ剤、各種着色剤等を添加してもかまわない。
【0051】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種成形加工性に優れるため、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形などを用いて良好に成形加工ができる。
本発明の樹脂成形体は上記に示した公知の成形方法で成形された成形体であり、その形状は特に制限されない。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来の熱可塑性樹脂組成物と比較し、極めて優れた機械物性、成形性を有するとともに、色調外観、耐熱性、耐薬品性および滞留安定性に優れる。そのため、例えば、自動車部品材料、電気電子材料、産業資材、工業材料、家庭用品などの成形材料として好適に使用することができる。
【0053】
(実施例)
以下実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例になんら限定されるものではない。なお、使用した熱可塑性樹脂およびその配合剤は下記のとおりである。
・PTT1:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂
極限粘度[η]=1.10×dl/gのポリトリメチレンテレフタレート
なお、極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められた。
[η]=lim(1/C)×(ηr−1)[C→0]
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解したポリトリメチレンテレフタレートの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値で相対粘度として定義されるものである。またCは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0054】
・PTT2:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂
極限粘度[η]=0.89×dl/gのポリトリメチレンテレフタレート
・PTT3:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂
極限粘度[η]=0.72×dl/gのポリトリメチレンテレフタレート
・PTT4:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂
極限粘度[η]=0.65×dl/gのポリトリメチレンテレフタレート
・PBT1:ポリブチレンテレフタレート樹脂;ジュラネックス2002、ウィンテック社製
・PC1:ポリカーボネート樹脂;ユーピロンS−2000、三菱エンジニアリングプラスチックス社製
・PC2:ポリカーボネート樹脂;パンライトL−1225L、帝人社製
・GF1:ガラス繊維;T−187、日本電気硝子社製(エポキシ集束処理 繊維径13μm)
・MF1:タルク;M−SP、日本タルク社製
・MF2:ワラストナイト;ナイグロス8 10013、巴工業社製
・EL1:MBS;パラロイド EXL2602、呉羽化学社製
・S1:IRGANOX1098、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製
・PH1:リン酸二水素Na、太平化学産業社製
・PH2:リン酸二水素K、太平化学産業社製
・PH3:リン酸二水素アンモニウム、太平化学産業社製
・PH4:リン酸二水素Ca、太平化学産業社製
・PH5:第一リン酸Al、太平化学産業社製
・PH6:次亜リン酸カルシウム、和光純薬工業社製
・PH7:トリデシル亜リン酸、旭電化社製
・PH8:PEP−8、旭電化社製
・PH9:リン酸一水素二Na、太平化学産業社製
・PH10:クエン酸、和光純薬工業社製
【0055】
なお、以下の実施例、比較例において記載した樹脂成形品の物性評価は、以下のように行った。
1.樹脂成形品の作成および諸特性
樹脂成形品は、射出成形機を用いて作成した。装置は日精樹脂(株)製PS40E、金型温度80℃に設定し、射出20秒、冷却20秒の射出成形条件で、樹脂成形品を得た。なお、シリンダー温度は260℃に設定した。(実施例4のみ、金型温度:95℃、射出40秒、冷却20秒で成形した。)
【0056】
(1−1)pH
pH=6の蒸留水(和光純薬工業社製)100gにPH1〜PH10をXg溶解させた際の、20℃における溶液のpHを測定した。(攪拌子を用いて、10分間攪拌した後、測定を行った。)
溶解しないものは、未溶解物を含んだまま溶液のpHを測定した。
ここで、Xは、表1、2の実施例及び比較例に記載した(A)PTTと(B)PCに対する(C)PH1〜PH10の配合比率から下記式(I)を元に、PH1〜PH10の溶解量として算出された値とした。
(A)+(B):(C)= 蒸留水100g:Xg (I)
【0057】
(1−2)溶解性
pH=6の蒸留水(和光純薬工業社製)100gにPH1〜PH10を上記で算出されたXg混合し、攪拌子を用いて、20℃の条件で10分間攪拌した後の溶解性を観察した。
(1−3)融点Tm(℃)
下記実施例及び比較例において得られた押出ペレットに120℃、5時間、10Pa以下で真空乾燥を行った。得られたペレット5mgを用い、示差走査熱量測定器を使用して、0℃で3min保持した。その後、0℃から270℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した際に現われる融解ピーク温度を融点(Tm)とした。
【0058】
(1−4)ガラス転移温度Tg(℃)(高温側)
下記実施例及び比較例において得られた押出しペレットを上記成形条件で成形したISOダンベル片を用い、粘弾性測定装置(RMS800型/レオメトリックス社)を使用して、−100℃から200℃まで2℃/分の昇温速度、10rad/秒の条件で測定した際の最も高温側に発現する損失弾性率(G″)のピーク温度である。
(1−5)引張強度(MPa)および引張伸度(%)
ISO 527−1に準じて測定した。
【0059】
(1−6)荷重たわみ温度(℃)
ISO 75−1に準じて測定した。その際の荷重は0.46MPaとした。
(1−7)溶融滞留安定性
上記成形条件下、シリンダー内で20分間滞留させた後、成形することにより得られたISOダンベル片を用いて、上記手法によりガラス転移温度を測定した。得られた高温側のガラス転移温度が140℃を超える場合は○、130〜140℃の場合は△、130℃未満の場合は×とした。
【0060】
[実施例1〜21および比較例1〜6]
PTT1〜PTT4、PBT1、PC1、PC2、PH1〜10、EL1、S1を下記表1および2に示した配合比でドライブレンドした。そのブレンド物を2軸押出機(東芝機械(株)製:TEM58)を用いて溶融混練し、サイドフィーダーからGF1、MF1及びMF2を表1に示した配合比で添加した。スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度250℃(先端ノズル付近のポリマー温度は、280℃であった)、押出速度150Kg/Hr(滞留時間1分)、減圧度は0.05MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを120℃で5時間、除湿型乾燥機で乾燥した後、上記に示す射出成形方法で試験片を作成した。この試験片を上記測定方法に従って、解析および諸特性の測定を行った。結果を表1および2に示した。
融点(Tm)が223℃以上且つ高温側のガラス転移温度(Tg)が143℃以上を示す材料は耐熱性、滞留安定性及び機械的強度が優れる結果となった。また同様に、(C)成分として(A)+(D)成分と(C)成分の重量比を100/xとした時、pH=6の蒸留水100gに(C)pH調整剤xgを完全溶解させた系のpHが2.5〜5.5を示すような(C)成分xgを配合した場合には、耐熱性、滞留安定性及び機械的強度が優れる結果となった。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により、優れた機械物性、成形性に加え、色調、耐熱性および滞留安定性に著しく優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することが可能となった。したがって自動車外装・外板部品、自動車内装部品、自動車アンダーフード部品、二輪車用部品、家具用部品、OA機器分野用品、電子電器用部品、工業用部品など、各種用途に求められている高性能化・高機能化という要求の解決にも大きく貢献できることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリトリメチレンテレフタレート1〜99重量部と(B)ポリカーボネート99〜1重量部を含む熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)が224℃以上、且つ高温側のガラス転移温度(Tg)が143℃以上である、上記熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリトリメチレンテレフタレート、(B)ポリカーボネート及び(C)pH調整剤を含む熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂組成物が下記i)およびii)の条件を満たす、上記熱可塑性樹脂組成物:
i)(A)成分と(B)成分の重量比が1/99〜99/1の範囲内であること;及び
ii)(A)と(B)成分の合計重量と(C)成分の重量比を100/Xとした時、pH=6の蒸留水100gに(C)成分Xgを完全溶解させた系の20℃のpHが2.5〜5.5を示すこと。
【請求項3】
該熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)が224℃以上、且つ高温側のガラス転移温度(Tg)が143℃以上である、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分が、リン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、リン酸アンモニウム塩、及びオキソ酸からなる群から選ばれる1種以上である、請求項2または3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含んでなる樹脂成形体。

【国際公開番号】WO2005/073317
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517485(P2005−517485)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001118
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】