説明

熱可塑性樹脂

【課題】低複屈折性、耐熱性に極めて優れ、さらに好ましい態様においては透明性にも優れた熱可塑性樹脂および該熱可塑性樹脂を含む成型体およびフィルムを提供。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるトリシクロデカンビスフェノール残基を含んでなる樹脂であって、該樹脂のガラス転移温度が160℃以上であり、かつ数平均分子量が10000以上であることを特徴とする樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低複屈折性、耐熱性に極めて優れ、さらに好ましい態様においては透明性にも優れた熱可塑性樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称する)やポリカーボネート(以下、PCと称する)といった非晶性樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
【0003】
近年、これらの樹脂は、特に光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シート・フィルム、導光板などの、より高性能な光学材料にも幅広く使用されるようになっており、樹脂に要求される光学特性や成形加工性、耐熱性もより高度なものになっている。
【0004】
また現在、これらの透明樹脂は、テールランプやヘッドランプといった自動車等の灯具部材としても使用されているが、近年、車内空間を大きくするためやガソリン燃費を改良するために、テールランプレンズやインナーレンズ、ヘッドランプ、シールドビーム等の各種レンズと光源の間隔を小さくすること、部品の薄肉化が図られる傾向にあり、優れた成形加工性が要求されるようになっている。また、車両は過酷な条件下で使用されるため、高温多湿下での形状変化が小さいことや、優れた耐傷性、耐候性、耐油性も要求される。
【0005】
しかしながら、PMMA樹脂は、優れた透明性、耐候性を有するものの、耐熱性が十分ではないといった問題があった。一方、PC樹脂は、耐熱性、耐衝撃性に優れるものの、光学的歪みである複屈折率が大きく、成形物に光学的異方性が生じること、成形加工性、耐傷性、耐油性に著しく劣るといった問題があり、透明性、耐熱性、低複屈率性などの全てに優れた光学材料が求められていた。
【0006】
これらの問題点を解決する方法として、5価のリン原子を有する構造、中でもホスホン酸構造をポリマーの主鎖に導入することによって、無色透明で高屈折であり、しかも低複屈折性に優れた熱可塑性樹脂が得られることを見いだしている(特許文献1参照)。
【0007】
リン系官能基を含有する樹脂は種々知られているが、特にホスホン酸エステル基を主鎖に含む樹脂はポリホスホネートと呼ばれ(非特許文献1、非特許文献2、特許文献2)、難燃機能などを目指し精力的な研究が行われている。しかし、公知のポリホスホネート系樹脂は、低分子量体ゆえに力学特性が不十分であったり、耐熱性や低複屈折性が不十分であった。
【特許文献1】特開2002−167440号公報
【非特許文献1】K. S. Kim, J. Appl. Polym. Sci., 28, 1119 (1983)
【非特許文献2】Y. Imaiら, Makromol. Chem., Rapid Commun., 1, 419 (1980)
【特許文献2】米国特許第3719727号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低複屈折性、耐熱性に極めて優れ、さらに好ましい態様においては透明性にも優れた熱可塑性樹脂および該熱可塑性樹脂を含む成型体およびフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の分子構造を有する高分子材料が低複屈折性、耐熱性に極めて優れ、さらに好ましい態様においては透明性にも優れた熱可塑性樹脂および該熱可塑性樹脂を含む成型体およびフィルムが得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、つぎのとおりのものである。
[1]下記一般式(1)で示されるトリシクロデカンビスフェノール残基を含んでなり、該樹脂のガラス転移温度が180℃以上であり、かつ数平均分子量が10000以上であることを特徴とする樹脂。
【0011】
【化1】

【0012】
[一般式(1)中、R、R、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基およびニトロ基からなる群から選ばれた原子または官能基を表し、p、q、r、は各々独立に0〜4の整数を表す。一般式(1)は、さらに置換されていても良い。]
[2]下記一般式(2)で示されるホスホン酸残基を含む[1]記載の樹脂。
【0013】
【化2】

【0014】
[一般式(2)中、Rは有機基、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子および非共有電子対からなる群から選ばれた原子または電子対を表す。]
[3]前記ホスホン酸残基のRがビシクロアルキル構造を含む[2]記載の樹脂。
[4]前記ビシクロアルキル構造含有ホスホン酸残基が、下記一般式(3)で示される[3]に記載の樹脂。
【0015】
【化3】

【0016】
[一般式(3)中、l、m、nはそれぞれ独立に1〜4の整数、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子および非共有電子対からなる群から選ばれた原子または電子対を表す。Rは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基およびハロゲン原子からなる群から選ばれた官能基または原子を表し、sは0〜4の整数である。一般式(3)のホスホン酸残基は、さらに置換されていても良い。]
[5]d線屈折率が1.56以上でかつアッベ数が35以上である[1]〜[4]いずれかに記載の樹脂。

である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低複屈折性、耐熱性に極めて優れ、さらに好ましい態様においては透明性にも優れた熱可塑性樹脂および該熱可塑性樹脂が得られる。汎用的な成形体あるいはフィルムの用途など各種分野に用いることができるほか、特にレンズあるいは光学用のフィルムなどにおいて、この樹脂を用いることにより優れた効果をより一層発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
下記一般式(1)で示されるトリシクロデカンビスフェノール残基を含んでなり、該樹脂のガラス転移温度が180℃以上であり、かつ数平均分子量が10000以上であることを特徴とする樹脂。
【0019】
【化4】

【0020】
[一般式(1)中、R、R、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基およびニトロ基からなる群から選ばれた原子または官能基を表し、p、q、r、は各々独立に0〜4の整数を表す。一般式(1)は、さらに置換されていても良い。]
以下、本発明の樹脂について具体的に述べる。
【0021】
本発明の樹脂は、下記一般式(1)で示されるトリシクロデカンビスフェノール残基を含むことが必要である。
【0022】
【化5】

【0023】
[一般式(1)中、R、R、Rは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基およびニトロ基からなる群から選ばれた原子または官能基を表し、p、q、r、は各々独立に0〜4の整数を表す。一般式(1)は、さらに置換されていても良い。]
前記一般式(1)で表されるトリシクロデカンビスフェノールの中でも、低複屈折性、耐熱性的には、8,8′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロデカンが最も好適である。
【0024】
また、本発明のポリマーは必ずしも直鎖状である必要はなく、得られるポリマーの性能に応じて多価フェノールを共重合することができる。このような多価フェノールを具体的に例示すると、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチルフェニル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、4−〔(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、2,4−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−エトキシフェノール、2−〔ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、3,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、2,4,6−〔トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1,2,2−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,4−〔〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、4−〔1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕アニリン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、1,3,3−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0025】
また、本発明の樹脂において、無色透明で高屈折、低分散な樹脂を得るために下記一般式(2)で示されるホスホン酸残基を含有させることができる。
【0026】
【化6】

【0027】
一般式(2)中、Rは有機基、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子および非共有電子対からなる群から選ばれた原子または電子対を表す。
【0028】
前記一般式(2)で表されるホスホン酸残基を構成する置換基Rを具体的に例示すると、フェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、エチル、イソプロピル、シクロアルキル、ビニル、アリル、ベンジル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ置換アルキルおよびアルキルサルファイド基等が挙げられる。
【0029】
このようなホスホン酸残基を構成するホスホン酸を具体的に例示すると、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、n−ペンチルホスホン酸、ネオペンチルホスホン酸、シクロヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、クロロメチルホスホン酸、ジクロロメチルホスホン酸、ブロモメチルホスホン酸、ジブロモメチルホスホン酸、2−クロロエチルホスホン酸、1,2−ジクロロエチルホスホン酸、2−ブロモエチルホスホン酸、1,2−ジブロモエチルホスホン酸、3−クロロプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロプロピルホスホン酸3−ブロモプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモプロピルホスホン酸、2−クロロー1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジクロロー1−メチルエチルホスホン酸、2−ブロモー1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジブロモー1−メチルエチルホスホン酸、4−クロロブチルホスホン酸、3,4−ジクロロブチルホスホン酸、4−ブロモブチルホスホン酸、3,4−ジブロモブチルホスホン酸、3−クロロー1−メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロ−1−メチルプロピルホスホン酸、3−ブロモ−1メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモ−1−メチルホスホン酸、1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−クロロー1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモ−1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、5−クロロペンチルホスホン酸、4,5−ジクロロペンチルホスホン酸、5−ブロモペンチルホスホン酸、4,5−ジブロモペンチルホスホン酸、1−ヒドロキシメチルホスホン酸、2−ヒドロキシエチルホスホン酸、3−ヒドロキシプロピルホスホン酸、4−ヒドロキシブチルホスホン酸、5−ヒドロキシペンチルホスホン酸、1−アミノメチルホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、4−アミノブチルホスホン酸、5−アミノペンチルホスホン酸、メチルチオメチルホスホン酸、メチルチオエチルホスホン酸、メチルチオプロピルホスホン酸、メチルチオブチルホスホン酸、エチルチオメチルホスホン酸、エチルチオエチルホスホン酸、エチルチオプロピルホスホン酸、プロピルチオメチルホスホン酸、プロピルチオエチルホスホン酸、ブチルチオメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、3,4−ジクロロフェニルホスホン酸、3,5−ジクロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、3,4−ブロモフェニルホスホン酸、3,5−ブロモフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、3,4−ジメトキシフェニルホスホン酸、1−ナフチルホスホン酸、2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−ブロモフェニルメチルホスホン酸、3,4−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、3,5−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、2−(4−ブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,4−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,5−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、3−フェニルプロピルホスホン酸、3−(4−ブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,4−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,5−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、4−フェニルブチルホスホン酸、4−(4−ブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,4−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,5−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、2−ピリジルホスホン酸、3−ピリジルホスホン酸、4−ピリジルホスホン酸、1−ピロリジノメチルホスホン酸、1−ピロリジノエチルホスホン酸、1−ピロリジノプロピルホスホン酸、1−ピロリジノブチルホスホン酸、ピロール−1−ホスホン酸、ピロール−2−ホスホン酸、ピロール−3−ホスホン酸、チオフェン−2−ホスホン酸、チオフェン−3−ホスホン酸、ジチアン−2−ホスホン酸、トリチアン−2−ホスホン酸、フラン−2−ホスホン酸、フラン−3−ホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2−ノルボルニルホスホン酸およびビシクロ[2,2,2]オクチルホスホン酸などが挙げられる。これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。また、これらホスホン酸は、その酸塩化物、エステルおよびアミドなどのホスホン酸誘導体であってもよい。
構造式(2)においてリン原子状に2つの有機基を有するホスフィン酸残基や、リン酸残基もホスホン酸残基に含む。
【0030】
また、本発明の樹脂において、より高屈折、低分散な樹脂を得るために下記一般式(3)で示されるホスホン酸残基を含有させることが好ましい。ビシクロアルキル構造を有するホスホン酸残基において、かかるビシクロアルキル構造とリン原子の結合については、空間にSP炭素をより多く含有させるために、ビシクロアルキル骨格に直接リン原子が結合していることが最も好ましいが、メチレン基あるいはエチレン基などのアルキレン基を間に介して結合していてもよい。ポリマー構造を低複屈折性、耐熱性にするという観点から、さらに好適なビシクロアルキル基を有するホスホン酸残基は、下記一般式(3)に示す構造のホスホン酸残基である。
【0031】
【化7】

【0032】
一般式(3)中、l、m、nは、それぞれ独立に1〜4の整数を表す。この範囲にあることにより、単位空間あたりにSP炭素を多く含有させることができる。l、m、nは、より好ましくは1〜3の整数である。また、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子および非共有電子対からなる群から選ばれた原子または電子対を表す。また、一般式(3)は、さらに置換されていても良い。
【0033】
ビシクロアルキル構造上におけるリン原子との結合位置は任意であり、橋頭あるいは橋どちらであってもよい。置換基Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基およびハロゲン原子からなる群から選ばれた官能基または原子であり、またsは0〜4の整数である。sが2以上の整数である場合、同一原子ビシクロアルキル構造上に、異なる置換基Rを2種以上含んでもよい。また、熱可塑性樹脂中に、l、m、n、RあるいはXの異なるホスホン酸残基を2種以上含んでもよい。
【0034】
ビシクロアルキル構造上の置換基Rは、力学特性や熱特性を制御すべく、光学特性を損なわない程度に導入されていてもよいが、耐熱性の観点からSP3炭素が高密度で充填されていることが望ましく、ビシクロアルキル骨格の中でも合計炭素数は12以下が好ましく、さらに好ましくは10以下が好ましい。リン原子は多環式アルキル骨格の橋頭でも橋でもいずれに結合していてもよく、多環式アルキル骨格とリン原子はメチレン基、エチレン基などのアルキレン基を介していてもよい。また、置換基Rの具体例としてはメチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、ブチル、シクロブチル、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、シクロノナン、デカン、シクロデカン、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジン、キノリン、イソキノリンなどコンパクトな構造が好ましい。また、その置換基rも同様の観点から、4以下が好ましく、より好ましくは2以下である。
【0035】
かかるビシクロアルキル基の好適な構造を例示すると、ビシクロ[2,2,1]−1−ヘプチル(1−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,1]−2−ヘプチル(2−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,1]−7−ヘプチル(7−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,2]−1−オクチル、ビシクロ[2,2,2]−2−オクチル、ビシクロ[3,2,1]−2−オクチル、およびビシクロ[3,2,2]−1−ノニル、ビシクロ[4,2,2]−2−デカニル等が挙げられる。これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。
【0036】
また、これらホスホン酸残基については、それぞれ対応する3価のリン官能基であるホスホナイト残基に一部置き換えてもよい(X=非共有電子対)。これにより樹脂の耐酸化性を付与することができる。
【0037】
本発明の樹脂は、熱的、化学的、力学的特性あるいは成形性などを制御するために、他の酸残基を含有させることができる。かかる他の酸残基を例示すると、ケイ素酸、硫酸、ホウ酸などのヘテロ酸残基、カーボネート残基、および2価カルボン酸残基が挙げられる。化学的安定性等の観点からは、カーボネート残基が好ましく、力学特性および低複屈折性の観点からは、アジピン酸等の2価カルボン酸残基が好ましい。
【0038】
かかるヘテロ酸残基、カーボネート残基および2価カルボン酸残基などの他の酸残基は、本発明の樹脂に、下記式(1)で示される共重合分率の範囲内で含有させることによって、熱的、光学的、力学的特性および成形性などを制御することができる。
【0039】
1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.01 (1)
式(1)は、前記一般式(2)で示されるホスホン酸残基と前記一般式(3)で示されるホスホン酸残基の合計の、カーボネート残基を含んだ全酸残基に対する共重合分率を表す式である。すなわち、前記式(1)中の(a)は、前記一般式(2)で示されるホスホン酸残基と前記一般式(3)で示されるホスホン酸残基の合計モル数(全ホスホン酸残基のモル数)であり、(b)はカーボネート残基のモル数を示す。全ホスホン酸残基のモル分率である上記式(1)の[(a)/{(a)+(b)}]の値が0.05未満である場合には、ポリマーの高屈折性が発現せず、本発明の効果が得られ難い。〔(a)/{(a)+(b)}〕の値は0.25以上の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上である。
【0040】
一方、光学物質の光の分散の度合いを表す指標としては一般にアッベ数が用いられ、次式(2)によって算出される。
【0041】
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc) (2)
(ここで、nd:d線(波長587.6nm)屈折率、nf:f線(波長486.1nm)屈折率、nc:c(波長656.3nm)線屈折率)
すなわちその数値が大きいほど低分散であることを示している。
【0042】
通常アッベ数と屈折率は負の相関関係があり、それぞれの特性をともに向上させるのは容易ではない。本発明の樹脂は、従来のポリカーボネート以上の高屈折率を維持しつつ高いアッベ数を有した樹脂であり、例えば眼鏡レンズ用途に用いる樹脂においてはアッベ数は30以上であることが好ましく、より好ましくは33以上、更に好ましくは35以上である。
【0043】
また、d線屈折率としては、1.56以上であることが好ましく、より好ましくは1.57以上である。
【0044】
また、カーボネート残基とは、炭酸エステルや炭酸ハライドなどを原料として得られる構造単位であり、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどの炭酸エステル、ホスゲン、およびトリホスゲンなどの炭酸ハライドが挙げられる。
次に、本発明の樹脂の製造方法および樹脂成形体の成形法について述べる。
【0045】
ビシクロアルキルを有するホスホン酸残基を誘導する重合前駆体としては、対応する酸ハロゲン化物あるいはエステルなどを用いることができる。その合成法としては、リン含有ビニル誘導体と各種環状ジエン化合物とのディールス−アルダー反応と水素添加反応を経由する方法(例えば、Phosphorus, Sulfur and Silicon and Related Elements、1997、123号、35頁参照。)などが知られており、それら公知の方法を用いることができる。
【0046】
すなわち、例えば、ビシクロ[2,2,1]−2−ヘプチルホスホン酸誘導体の場合は、シクロペンタジエンとビニルホスホン酸誘導体とを、ビシクロ[2,2,2]−2−オクチルホスホン酸誘導体の場合は、シクロヘキサジエンとビニルホスホン酸誘導体とをディールス−アルダー反応させた後、水素添加することによって得ることができる。
【0047】
本発明の樹脂の製造方法としては、酸ハロゲン化物と2価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(例えば、特公昭37−5599号公報参照。)や、酸ハロゲン化物と2価のフェノールを塩化マグネシウム等の触媒存在下で加熱する溶融重合法、2価の酸と2価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(例えば、特公昭38−26299号公報参照。)、および水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた2価の酸ハロゲン化物とアルカリ水溶液に溶解せしめた2価のフェノールとを混合する界面重合法(例えば、特公昭40−1959号公報参照。)等が挙げられるが、特に溶液重合法が好適に採用される。
【0048】
溶液重合法について一例を説明すると、ホスホン酸残基の前駆体分子であるホスホン酸誘導体と、2価フェノールをトリエチルアミンなどの塩基存在下混合して反応させ、続いてカーボネート残基の前駆体分子、例えば、ホスゲン、トリホスゲンなどを添加して縮合重合することによって、本発明の樹脂を得ることができる。ホスホン酸誘導体、カーボネート誘導体としては、それらのハロゲン化物、酸無水物およびエステル等が用いられるが、その種類や2価フェノールに作用させる順序は特に限定されない。
【0049】
ここで共重合成分としてカーボネート基を導入する場合、上記のホスゲンやトリホスゲンなどのホスゲン誘導体を用いるのが一般的であるが、ホスゲンやホスゲン誘導体は、大気中で不安定であるため、取扱いが容易ではない。また、これらの化合物は不安定な化合物であるため、分解して不純物が生成することもあり、この不純物が該樹脂の着色原因であったり、該樹脂の高分子量化を妨げることもある。
【0050】
そこで、好ましくはカーボネート基の導入にホスゲンやホスゲン誘導体を用いることなく、2価フェノール類のカーボネートポリマーあるいは2価フェノール類のカーボネートオリゴマーを用いることによって、ホスゲン誘導体の不純物が存在しないため、全光線透過率が高く、黄色度の低い該樹脂を得ることできる。
【0051】
また、ホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノール類のカーボネートポリマーあるいは2価フェノール類のカーボネートオリゴマーを含んだ混合物に対して作用せしめるときの2価フェノール残基の濃度については、高濃度であることが環状オリゴマーの開環反応を促進する上で有利であり、1.0mol/L以上であることが好ましい。濃度は、より好ましくは1.5mol/L以上であり、更に好ましくは2.0mol/L以上である。
【0052】
本発明樹脂の数平均分子量はその力学特性を考慮すると、10000以上が好ましく、より好ましくは20000以上であり、更に好ましくは30000以上である。
【0053】
本発明の樹脂の分子量を調節する方法としては、重合時に一官能の物質を添加して行うことができる。ここで言う分子量調節剤として用いられる一官能物質としては、例えば、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール等の一価フェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライドおよびフェニルクロロホルメート等の一価酸クロライド類が挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂には、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオエーテル系およびリン系の各種抗酸化剤を添加することができる。
【0055】
さらに、本発明の樹脂は、所望の効果を損なわない範囲で、他の樹脂と配合して、成形材料として使用することも可能である。配合する樹脂の例として、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリエステル、ポリアリーレート、およびポリスルフィド等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の樹脂は、有機溶媒に対して高い溶解性を有しており、このような溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、γ―ブチロラクトン、ベンジルアルコール、イソホロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。
【0057】
さらに、本発明の樹脂は非晶性であるが、非晶性であるかどうかは公知の方法、例えば、示差走査熱量分析(DSC)や動的粘弾性測定等により融点が存在しているかどうかを確認すれば良い。
【0058】
本発明の樹脂の構成成分の分析法については、核磁気共鳴(NMR)スペクトルを用いる方法が好適で、特に、ホスホン酸残基におけるリン原子上の置換基については、プロトンあるいはリン原子核磁気共鳴が好適である。さらに、熱可塑性樹脂そのもののスペクトルによる同定の精度が十分でない場合には、本発明で用いられる熱可塑性樹脂をアルカリ類により加水分解し、モノマー成分へと分解した後、各成分を定量および定性分析することができる。例えば、本発明の樹脂を無水アルコール中、大過剰のアルカリ金属アルコラートなどの強塩基で処理することにより、2価フェノール残基は2価フェノールに、各酸残基はアルコラートイオンに対応するエステルに分解する。これらはいずれも低分子量体であるため、高速液体クロマトグラフィーにより定量および分離した後、NMRスペクトルなどによる詳細な構造分析が可能である。
【0059】
本発明に係る樹脂から、例えば、板状の成形体を得る方法については、公知の方法を採用して製造することができ、特に限定されないが、成形法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、圧縮成形法、トランスファ成形法、積層成形法および押し出し成形法などが挙げられる。
【0060】
また、フィルム状に成形する場合には、溶液製膜法や溶融押し出し製膜法などが挙げられ、特に溶液製膜法が好適に採用される。溶液製膜法においては前記有機溶媒を適宜用いることができるが、好ましくはハロゲン含有溶媒、特に好ましくはクロロホルムを使用して成形することが好ましい。
【0061】
本発明の樹脂のガラス転移温度は、150℃以上300℃以下であることが、任意の形状への成形性、高温プロセスに耐える耐熱性という2つの観点から望ましい。熱可塑性樹脂はガラス転移温度以上では熱変形をおこすため、ハンダや蒸着、スパッタ等の高温にさらされる環状でのプロセスに耐える耐熱性の指標であるガラス転移温度は高ければ高いほどよい。しかし、逆にガラス転移温度が高すぎると、任意の形状に樹脂を成形しようとする際に、ガラス転移温度以上まで温度を上げなければならないため、樹脂骨格が分解反応を起こしてしまうなどの不都合が生じるため好ましくない。そのため、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、150℃以上300℃以下であることが好ましく、より好ましくは180℃以上250℃以下である。
【0062】
本発明の樹脂は、その板状成形体(幅10mm、長さ25mm、厚さ3mm)として成形したときの靱性値が、好ましくは3N/mm以上であり、より好ましくは5N/mm以上である。
【0063】
ここで、靱性値は以下のように定義される。試料を、オリエンテック(株)社製テンシロンを用い、支点間距離22mm、曲げ速度1.5mm/分にて曲げ試験を行い、曲げ応力と破談変位を求めた。評価パラメーターは脆さの指標である靱性値で算出した。
【0064】
靱性値(N/mm)=曲げ応力×破断変位
また、本発明で得られる樹脂を光学用樹脂として用いる場合には、その樹脂から得られる幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成形体の全光線透過率が、好ましくは70%以上、かつ黄色度30位以下であり、より好ましくは全光線透過率が80%以上、かつ黄色度30以下、さらに好ましくは10以下である。
【0065】
なお、全光線透過率と黄色度は以下に定義される。試料をデジタルカラーコンピューター(スガ試験機(株)社製:SM−7CH)を用いて透過法により3刺激値(X、Y、Z)を求めた。なお、全光線透過率はYの値として定義される。黄色度(△YI)は、試料を装着して(X、Y、Z)を求め、下記式(II)によりYI値(YI2)を求めた後、試料を外した状態で同様にX、Y、Zを求め、同様にリファレンス値YI1を求め、下記式(III)より算出した。
【0066】
YI=100×(1.28X−1.06Z)/Y 式(II)
X、Y、Z:標準光Cにおける試料の三刺激値
△YI=YI2−YI1 式(III)
△YI:黄色度、YI1:リファレンス値、YI2:試料の測定値である。
【0067】
なお、全光線透過率は、ランベルト・ベールの法則を適用することで、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成型体の全光線透過率に換算可能である。
【0068】
さらに本発明樹脂を光学異方体に成型した場合、位相差フィルム(別称として、位相差板、λ/4板、あるいは円偏光板)用途において、優れた複屈折/波長分散特性を示す。一般的な樹脂の光学異方体、例えば一軸延伸したフィルムに光を透過させた場合、その光の波長が短いほど複屈折率が大きくなり、その度合いは波長の短い領域ほど大きいという傾向がある。位相差フィルム用途においては、複屈折率と波長の関係に関して次の条件を満たすものが光学的に理想であるといえる。すなわち、
(イ)百ミクロン以下のフィルムにおいて十分な大きさの複屈折率を有すること、
(ロ)このとき複屈折率の波長による変化が一定、すなわち複屈折率と波長の関係が比例関係(一次の関係)であること、
である。
【0069】
これらの条件を満たし、複屈折/波長分散特性の異なる2種の光学異方フィルムを組み合わせることによって理想的な位相差フィルムを作成することができる。本発明樹脂を製膜して得られたフィルムを延伸することによって光学異方体とした場合、従来の樹脂に比べ複屈折と波長の関係がより一次の関係に近くなること、またこの本発明の延伸フィルムと従来のポリアルカン系樹脂の光学異方フィルムとを組み合わせることにより、優れた波長分散特性を有する位相差フィルムが得られる。さらに重合体の分子量についてはそれが高いことがフィルムの力学特性に関してだけでなく光学的な特性においても重要である。すなわち、ポリマーの分子量が高いほど、一軸延伸時のポリマー主鎖の配向が強く複屈折率が大きくなり、従ってより薄いフィルムで機能発現できるようになるため、本発明樹脂を当該用途に適用する際、従来より更なる薄膜化が達成できる。
【0070】
本発明により製造された樹脂は、その優れた低複屈折性、耐熱性および無色透明性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
【0071】
本発明により製造された樹脂からなる成形品の具体的用途としては、例えば、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク(登録商標)などの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられる。
【0072】
また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品として、カメラ、VTR、プロジェクションTVなどの撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなど、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクターなど、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導光フィルム、カバーなど、自動車などの輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージングなど、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セルなど、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料などにも適用することができ、これら各種の用途にとって極めて有用である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各測定および評価は次の方法で行った。
【0074】
〔分子量測定〕
下記条件GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により数平均分子量(Mn)を測定した。
装置:TOSOH,SC8020
カラムTSKgelG2500H6 TSKgelG4000H6 ・TSKgelG6000H6の3本を直列に連結
溶媒:クロロホルム(flow=1ml/min)
検出器:UV(254nm)
試料:0.1wt%クロロホルム溶液
注入量:10μl
検量線:標準ポリスチレン
〔全光線透過率〕
デジタルSMカラーコンピューター(スガ試験機(株)社製:SM−7−CH)を使用し、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmとなるように作製した樹脂成形体の全光線透過率(Tt%)を測定した。厚さが異なる樹脂成形体の場合は、厚さが2.9mmから3.1mmの範囲であれば、そのまま測定し、そうでない場合は厚さが2.9mmから3.1mmの範囲となるようスライス等を行い、測定した。
【0075】
〔力学特性〕
樹脂を幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状に加熱プレス成形し、オリエンテック(株)社製テンシロン(型式RTM−100)を用いて、支点間距離22mm、曲げ速度1.5mm/分にて曲げ試験を行った。評価パラメーターは、脆さの指標である靭性値(曲げ応力×破断変位)とした。
【0076】
〔カーボネートオリゴマー重合度の測定〕
重水素化クロロホルムにて核磁気共鳴装置(日本電子株式会社:EX270型)を用い、末端を示すスペクトルとポリマーユニットを示すスペクトルの積分比からその平均値を算出した。また、鎖状オリゴマーの割合については、末端を示す核磁気共鳴スペクトル(NMR)ピークの強度と、すべてが鎖状オリゴマーと仮定した場合に推定されるピーク強度の比とした。
【0077】
〔光学特性の測定〕
上記樹脂成型品をサンドペーパー、バフにて互いに直行する2面を鏡面仕上げになるように研磨し、屈折計(カルニュー光学工業(株)製:KPR−2)にて評価を行い、d線(波長:587.6nm)屈折率(nd)、式(4)より求められるアッベ数(νd)を測定した。
【0078】
〔リタデーションの測定〕
本発明の樹脂を製膜ならびに一軸延伸したもののリタデーションは大塚電子製RETS-1100(セルギャップ測定装置)を用いて測定した。
【0079】
〔ガラス転移温度(Tg)の測定〕
セイコー電子工業製DSC(SSC5200)システムを使用した。Tgは10℃/minで250℃まで昇温しそのまま3分ホールドし、次いで−50℃/minで0℃まで冷却し3分ホールドした後、再び10℃/minで昇温した際に観察されるTgのピークトップから算出した値である。なお、測定には、真空下、80℃で8時間乾燥したサンプルを用いて行った。
【0080】
[実施例1]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、8,8′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロデカン(20.2g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(9ml:56.8mmol)の塩化メチレン20ml溶液を60分間かけて滴下し20℃で12時間攪拌し、この溶液にノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を60分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で3時間攪拌した。その後反応溶液に塩化メチレン50mlを注入し、0.1NHCl水溶液および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを6.5付近にして有機層を脱塩洗浄し分離した。その後分離した有機層を0.5μmのメンブレンフィルターで濾過し、エタノール2000mlに投入して再沈しポリマーを濾取した後、100℃で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂粉末の分子量、全光線透過率、黄色度、力学特性、光学特性、ガラス転移点を前記のごとく評価した。
【0081】
[実施例2]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、8,8′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロデカン(20.2g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(9.6ml:56.8mmol)の塩化メチレン20ml溶液を60分間かけて滴下し20℃で12時間攪拌し、この溶液にノルボルニルチオホスホン酸ジクロライド(1.1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を60分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で3時間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率91%で得、成形して評価した。
【0082】
[実施例3]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、8,8′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロデカン(20.2g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルチオホスホン酸ジクロライド(6.0ml:37.9mmol)の塩化メチレン12ml溶液を60分間かけて滴下し20℃で12時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(3.8ml:25.2mmol)の塩化メチレン2ml溶液を60分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で3時間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
【0083】
[実施例4]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、8,8′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロデカン(20.2g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルチオホスホン酸ジクロライド(8.0ml:50.5mmol)の塩化メチレン16ml溶液を60分間かけて滴下し20℃で12時間攪拌し、この溶液にアジピン酸ジクロライド(1.8ml:12.6mmol)の塩化メチレン2ml溶液を60分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で3時間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率93%で得、成形して評価した。
【0084】
〔実施例5〕
〔カーボネートオリゴマー原料の調製:溶融法〕
ガラス製ナスフラスコ(1L)に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(0.67mol:180g)と炭酸ジフェニル(120g)、ナトリウムフェノラート(1g)を秤りとった。窒素パージ後、220℃まで加熱し、内容物の融解させ、220℃のまま1時間かけて減圧し約60mmHgとした。さらに約0.4mmHgまで減圧し、そのまま2時間加熱した。冷却後、窒素パージしオリゴマーをDPC転化率で93%で得た。得られたカーボネートオリゴマーはNMRにより、平均でビスフェノール/カーボネート=4/3のオリゴマーであった。
【0085】
〔ポリマー重合〕
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、8,8′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロデカン(8.3g:26.05mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(15g)およびトリエチルアミン(11.9ml:86mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(6ml:38mmol)の塩化メチレン20ml溶液を60分間かけて滴下し20℃で12時間攪拌し、この溶液にノルボルニルホスホン酸ジクロライド(0.2ml:1.1mmol)の塩化メチレン4ml溶液を60分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で3時間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
【0086】
[実施例6]
実施例1で得られた樹脂を、さらに270℃に加熱溶融押し出しによりペレット化し、このペレットから、溶液キャスティング法(塩化メチレン溶液)によって、幅200mm、厚さ25μmのフィルムを作成した。該フィルムを延伸温度165℃、延伸速度100mm/minにて1.3倍に延伸した。延伸後のフィルム厚みは20μmであった。
【0087】
上記条件によって得られたフィルムは、波長550nmにおけるリタデーションが143.0nm、波長450nmのそれは157.5nm、波長650nmのそれは135.2nmを示した。
【0088】
[比較例1]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(8.0ml:50.4mmol)の塩化メチレン20ml溶液を60分間かけて滴下し20℃で12時間攪拌し、この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(7.2ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。
その後、実施例1と同様の方法で後処理することにより、ポリマーを収率93%で得た。得られた樹脂を実施例1と同様に評価した。
【0089】
[比較例2]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:133mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下フェニルホスホン酸ジクロライド(8.6ml:56.8mmol)の塩化メチレン20ml溶液を60分間かけて滴下し20℃で12時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(1.0ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を60分間かけて滴下し、滴下終了後20℃で3時間攪拌した。
その後、実施例1と同様の方法で後処理することにより、ポリマーを収率93%で得た。得られた樹脂を実施例1と同様に評価した。
【0090】
[比較例3]
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(36.2ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
【0091】
[比較例4]
比較例1で得られた樹脂から、溶液キャスティング法(塩化メチレン溶液)によって、幅200mm、厚さ25μmのフィルムを作成した。該フィルムを延伸温度150℃、延伸速度180mm/minにて1.3倍に延伸した。延伸後のフィルム厚みは20μmであった。
【0092】
上記条件によって得られたフィルムは、波長550nmにおけるリタデーションが47.5nm、波長450nmのそれは51.7nm、波長650nmのそれは44.7nmを示した。
【0093】
実施例1〜5と比較例1〜3で作成した樹脂の評価結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
比較例1および2の樹脂は、全光線透過率、黄色度、力学特性および屈折率の値は優れているが、ガラス転移点ならびにアッベ数において低い値を示していることから、耐熱性や低複屈折性が不十分であった。または、比較例3の樹脂は、全光線透過率、力学特性、ガラス転移点および屈折率の値は優れているが、着色原因となるホスゲンやトリホスゲンなどのホスゲン誘導体を用いているため、黄色度が不十分であった。
【0096】
それに対し、実施例1〜5の樹脂は、全光線透過率、黄色度、力学特性、光学特性、ガラス転移点について良好な値を示し、透明性、力学特性に加え、低複屈折性、耐熱性に極めて優れ優れていることがわかる。また、位相差フィルム用途としては、本発明の樹脂が高い力学特性を維持しているが故に、一軸延伸時に強く配向し、より大きな複屈折率が生じ、位相差フィルムの薄膜化に有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
高い低複屈折性、耐熱性に極めて優れ、さらに無色透明で高屈折、など優れた光学特性も併せ持つ樹脂は、汎用的な成形体あるいはフィルムの用途など各種分野に用いることができるほか、特にレンズあるいは光学用のフィルムとして利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるトリシクロデカンビスフェノール残基を含んでなり、該樹脂のガラス転移温度が180℃以上であり、かつ数平均分子量が10000以上であることを特徴とする樹脂。
【化1】

【請求項2】
下記一般式(2)で示されるホスホン酸残基を含む請求項1に記載の樹脂。
【化2】

[一般式(2)中、Rは有機基、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子および非共有電子対からなる群から選ばれた原子または電子対を表す。]
【請求項3】
前記ホスホン酸残基のRがビシクロアルキル構造を含む請求項2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記ビシクロアルキル構造含有ホスホン酸残基が、下記一般式(3)で示される請求項3に記載の樹脂。
【化3】

[一般式(3)中、l、m、nはそれぞれ独立に1〜4の整数、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子および非共有電子対からなる群から選ばれた原子または電子対を表す。Rは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基およびハロゲン原子からなる群から選ばれた官能基または原子を表し、sは0〜4の整数である。一般式(3)のホスホン酸残基は、さらに置換されていても良い。]
【請求項5】
d線屈折率が1.56以上でかつアッベ数が35以上である請求項1〜4いずれかに記載の樹脂。

【公開番号】特開2010−47624(P2010−47624A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210337(P2008−210337)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】