説明

熱可塑性特性を有するポリマー複合体の製造方法

【課題】架橋ゴムおよび水性懸濁ポリマー分散物から柔軟な複合体物質を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、架橋ゴムの粒子を懸濁ポリマーの1種以上のポリマー水性分散物と混合して、水性分散物中の混合物を形成し、および、場合によって、この水性分散物混合物を固体状態剪断粉砕にかけて、この物質の全固形分を基準にして10〜95重量%の架橋ゴム濃度で、熱可塑性物質として処理されうる物質を形成することを含む、複合体物質を製造する方法を提供する。この方法は、粉砕された生成物を混練および/または圧縮成形して、屋根用膜および靴底などの有用な物品を形成することをさらに含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架橋ゴムおよび水性懸濁ポリマー分散物から柔軟な複合体物質を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、廃棄ゴム加硫物および水性懸濁ポリマー分散物から熱可塑性のように挙動する複合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム物品、特に架橋または加硫ゴムの再使用に多くの労力が注ぎ込まれてきた。廃棄自動車タイヤは非常に数が多くその廃棄は問題を呈しているので、廃棄自動車タイヤについての新たな用途を見いだすことの要求は特に急を要している。廃棄タイヤは埋め立て地で容易に分解せず、焼却による廃棄タイヤの廃棄は粒子状排出物および潜在的に有害な化合物による大気汚染についての懸念を伴う。廃棄タイヤには限定的な用途、例えば、セメント製造操作における燃料として;新たなタイヤにおける充填剤(微細に粉砕される場合)として;屋外競技場表面および道路アスファルトとして;またはマルチとしての用途が見いだされている。
【0003】
原料物質としてタイヤゴムを再使用することは、タイヤゴムは架橋した熱硬化組成物なので、特に所望の最終生成物が熱可塑性である場合には困難をもたらす。例えば、純粋な粉砕タイヤゴムから製造された押出物品は脆弱で柔軟性がない、なぜなら、粉砕タイヤの粒子は熱硬化組成物なので充分に融合できないからである。粉砕タイヤが熱可塑性組成物に充填剤として添加される場合には、物理的特性が付与される前に粉砕タイヤ含有量の上限がきて、この上限は約5〜10%の粉砕タイヤゴムである。粉砕タイヤゴムが新たなタイヤに使用される場合も同様である。
【0004】
固体熱可塑性物質、例えば、ポリエチレンと混合することにより廃棄タイヤを再利用または回収し、ゴムタイヤを加工可能な物質に変換する実質的な努力がなされてきた。しかし、この取り組みは、高温での熱可塑性/ゴム混合物の溶融処理と、特殊な装置および多くの処理用添加剤を必要とする。他の公知の方法としては、廃棄タイヤゴムから高表面活性のゴム粉体を製造し、これがポリマー/ゴム粉体複合体を形成するのに使用されうることが挙げられる。粉砕タイヤゴム(GTR)とラテックスコポリマーとを一緒にする湿式技術は、この混合物が分離するのを避けるためにコポリマーの凝集工程を概して必要としてきた。
【0005】
廃棄ゴムタイヤは多くの注目を集めてきたが、ゴムを再利用する問題は広範囲の廃棄タイヤに存在している。構成ポリマーの機械的特性を損失することなく、新たな複合体が熱可塑性組成物として効果的に再使用されうるように、架橋ゴムのような熱硬化ポリマーを熱可塑性ポリマーと組み合わせる方法についての必要性が存在している。
【0006】
水性分散物のコールドブレンド(周囲温度でのブレンド)も、硬質で非弾性のコポリマー物質をゴム状コポリマー物質と一緒にするために試みられてきた。Fendleyへの英国特許広報第841,215号は硬質で非弾性のスチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸メチルコポリマーを1,3−ブタジエンのゴム状ポリマーもしくはコポリマーと組み合わせて使用する熱可塑性成形用組成物を開示し、このゴムは架橋されていてよい。しかし、このような方法は、再利用熱硬化ゴムと熱可塑性ポリマーとから、10%を超える再利用ゴムを含む、有用な柔軟な熱可塑性物質を製造する方法についての要求を満たすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許第841,215号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、再利用熱硬化ゴムと熱可塑性ポリマーとから、熱硬化ゴムの比率が複合体の10重量%を超える場合であってさえ構成ポリマーの機械的特性を維持している有用な熱可塑性物質を製造するという課題に対する解決策を見いだそうと努力してきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、複合体物質を製造する方法は、
(a)示差走査熱量測定DSCで測定した場合に80℃以下のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1種の懸濁ポリマーの1種以上のポリマー水性分散物を懸濁重合によって提供し;
(b)約10ミクロンシーブ粒子サイズ〜約11,100ミクロンシーブ粒子サイズの粒子サイズを有する1種以上の架橋ゴムの粒子と、懸濁ポリマーのポリマー水性分散物とを混合して、水性分散物中の水性分散物混合物を形成し;
(c)水性分散物混合物の水分含有量を低減させ;および
(d)物品を形成する;
ことを含む。
【0010】
架橋ゴムの粒子サイズは35ミクロンシーブ粒子サイズ(400メッシュ)以上、または2,500ミクロンシーブ粒子サイズ(8メッシュ)以下であることができる。
好ましくは、懸濁ポリマーはアクリル系ポリマーもしくはスチレン−アクリル系ポリマーである。
【0011】
本発明のある実施形態においては、本方法は、水性分散物混合物の水分含有量を低減させる前もしくは後で、水性分散物混合物を固体状態剪断粉砕にかけることをさらに含む。このような実施形態の一つにおいては、架橋ゴムの粒子サイズは43ミクロンシーブ粒子サイズ(325メッシュ)以上、もしくは11,100ミクロンシーブ粒子サイズ(2メッシュ)以下であることができる。固体状態剪断粉砕は、例えば、パンミリング(pan milling)もしくはディスクミリングを含むことができる。
【0012】
本発明の別の実施形態においては、本方法は、物品を形成する工程において、混合物を混練すること、混合物を2−ロールミルすること、混合物を圧縮成形すること、および混合物を押し出すことから選択される1種以上の処理工程をさらに含む。このような実施形態の一つにおいて、複合体物質はこの1以上の処理工程中にさらに架橋される。
【0013】
さらに別の実施形態においては、架橋ゴムは少なくとも部分的に再利用ゴムから、好ましくは少なくとも部分的に再利用タイヤから得られる。
さらに別の実施形態においては、混合物の水分含有量を低減することは混合物の固形分を単離することを含む。
別の実施形態においては、懸濁ポリマーは、カルボン酸官能基、リン含有酸(phosphorus acid)官能基、ヒドロキシ官能基、アミン官能基、アセトアセトキシ官能基、シリル官能基、エポキシ官能基、シアノ官能基、イソシアナート官能基およびこれらの組み合わせから選択される官能基を有する1種以上の官能性モノマーの重合単位を有するコポリマーを含む。
【0014】
別の異なる実施形態においては、
(a)示差走査熱量測定DSCで測定した場合に80℃以下のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1種の懸濁ポリマーの1種以上のポリマー水性分散物を懸濁重合によって提供し;
(b)懸濁ポリマーのポリマー水性分散物を乾燥させて、10%未満の水分含有量の懸濁ポリマーを生じさせ;
(c)約10ミクロンシーブ粒子サイズ〜約11,100ミクロンシーブ粒子サイズの粒子サイズを有する1種以上の架橋ゴムの粒子と、10%未満の水分含有量の懸濁ポリマーとを混合し;および
(d)物品を形成する;
ことを含む複合体物質を製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「粉砕ゴムタイヤ」(GTR)とは、再利用の目的のために微細に粉砕された形態の熱硬化ゴム物質、例えば、クラムゴムをいう。この物質は廃棄タイヤからの架橋ゴムから主としてなるが、他のソースからの他の廃棄ゴムを含むことができる。GTRは多くの粒子サイズ範囲で商業的に供給され、最も広いクラスのGTRは一般的に、「粉砕ゴム」(1,520ミクロンシーブ粒子サイズ、すなわち10メッシュもしくはこれより小さいクラムゴム)、および「粗ゴム(coarse rubber)」(1/4インチ以上の粒子を含み、最大寸法で13,000メッシュシーブ粒子サイズ(1/2インチ)の最大サイズを有する)と称される。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「ポリマー水性分散物」は架橋ゴム粒子ではないポリマー粒子の水中での分散物を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「懸濁ポリマー」は懸濁重合プロセスによって製造されたポリマーを意味する。懸濁ポリマーの粒子サイズは1ミクロン〜10,000ミクロンであることができ、ポリマー粒子は多くの場合「ビーズ」と称される。
本明細書において使用される場合、用語「ラテックスポリマー」とは、水中でのポリマーマイクロ粒子(1ミクロン未満の粒子サイズ)の分散物をいう。
本明細書において使用される場合、用語「エマルションポリマー」は、水中または実質的に水性の溶液中で、乳化重合プロセスにより製造されたポリマーを意味する。
本明細書において使用される場合、用語「粉砕」とは、引き裂き、剪断、摩耗または摩滅によって達成される固体粒子状物質の粒子サイズの低減をもたらすあらゆるプロセスをいう。
本明細書において使用される場合、用語「固体状態剪断粉砕(solid state shear pulverization)」または「SP」とは、固体粒子に激しい剪断応力を与える、固体状態での物質の非溶融粉砕をいい、これは周囲温度のもしくは冷却した物質を用いて行われうる。
本明細書において使用される場合、用語「形成」とは、形作られた物品を生じさせるように熱可塑性物質を取り扱う操作をいう。
【0017】
他に示されない限りは、挿入語句を含むあらゆる用語は、二者択一的に、挿入語句の丸括弧が存在しない全体の語句、および挿入語句を含まない(すなわち、挿入語句の内容を除いた)語句、並びにそれぞれの選択肢の組み合わせを意味する。よって、用語(コ)ポリマーとは、ホモポリマーもしくはコポリマーをいう。さらに、(メタ)アクリルとは、アクリル、メタクリルおよびこれらの混合物のいずれも意味する。
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、語句「コポリマー」は、独立して、コポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマーおよびこれらのあらゆる混合物もしくは組み合わせを含む。
本明細書において使用される場合、語句「アルキル」は、1以上の炭素原子を有するあらゆる脂肪族アルキル基を意味し、アルキル基にはn−アルキル基、s−アルキル基、i−アルキル基、t−アルキル基、または5、6もしくは7員環構造を1以上含む環式脂肪族が挙げられる。
【0018】
本明細書において使用される場合、語句「(C−C12)−」または「(C−C)−」などは、それぞれ3〜12の炭素原子、および3〜6の炭素原子を含む化合物をいう。
用語「不飽和カルボン酸モノマー」または「カルボン酸モノマー」には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸、フマル酸モノアルキル、マレイン系モノマー;これらの無水物およびこれらの混合物が挙げられる。マレイン系モノマーには、例えば、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、マレイン酸モノアルキルおよび無水マレイン酸、およびこれらの置換体が挙げられる。
用語「不飽和スルホン酸モノマー」には、例えば、2−(メチル)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびパラ−スチレンスルホン酸が挙げられる。
【0019】
本明細書において使用される場合、語句「水性」もしくは「水性溶液」には、水と水混和性溶媒とから実質的になる混合物、および水が挙げられる。
本明細書において使用される場合、「重量%」、「重量.%」または「重量パーセント」は、重量パーセントを意味する。本明細書において使用される場合、語句「ポリマー複合体固形分の全重量を基準にして」とは、ポリマー複合体(例えば、懸濁コポリマーおよび粉砕タイヤゴム)中の全ての非−水成分の合計重量に対する所定の成分の重量をいう。
同じ成分もしくは特性に関する全ての範囲の端点は、その端点を含み、独立して組み合わせ可能である。
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「シーブ粒子サイズ」とは、所定の粒子サイズのふるいを通過したサンプルから得られた物質の粒子サイズをいう。例えば、203ミクロンサイズのふるい(60メッシュ)を通過するようにミルされた粉砕タイヤゴムは、203ミクロンサイズのシーブ粒子サイズを有する、もしくは単に203ミクロンシーブ粒子サイズを有すると称される。
本明細書において記載されるポリマー水性分散物の粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、Malvern Mastersizer2000商標粒子サイズ分析器(Malvern Instruments Ltd.,Malvern、Worcestershire、英国)を用いて測定された。この装置は光散乱技術を使用し、得られる粒子サイズは重量平均粒子サイズである。
【0020】
本発明は、再利用熱硬化ゴムと熱可塑性ポリマーとから熱可塑性物質を製造する方法を提供し、この方法は、熱可塑性懸濁ポリマーの水性分散物と熱硬化架橋ゴムとを周囲条件下で混合することを含み、その結果その生成物は容易に単離されかつ有用な物品に加工されうる。
【0021】
本発明の方法は、それぞれ熱可塑性ポリマーおよび熱硬化ポリマーとしての、アクリル系ポリマーおよびクラムゴムタイヤの加工に特に好適であり、10%より多く、95%以下の熱硬化ゴムを含む有用な複合体物質を製造することができる。コロイド的に安定なラテックス粒子は粗グレートGTRよりもかなり小さい(約3桁の違い:150nm対150ミクロン)ので、従来のラテックスを用いてGTRを分散させることにより製造されたスラリーは、それぞれの粒子が変化せずに相分離する傾向がある。懸濁重合方法は、約1ミクロン〜約1,000ミクロンの範囲の平均粒子サイズのポリマー粒子を製造し、これはその出発ゴム粒子の一般的なサイズ範囲内にある。よって、本発明の方法は、熱硬化ゴム粒子と混合する前もしくは後で、ポリマーの凝集処理を必要としない。このことは、ポリマーと架橋ゴム、すなわちGTRとの生成物混合物の単離を、遠心分離およびろ過のような従来の方法によってさえ可能にする。コロイド的に安定なラテックスポリマーを使用するのでは、ろ過は容易に達成されない。
【0022】
架橋ゴムは架橋されたあらゆるゴムであることができ、廃棄タイヤを粉砕することにより得られるゴムに限定されない。例えば、架橋ゴムは、天然ゴム、合成ゴムおよびこれらの誘導体から選択される一種以上のゴムに由来することができる。合成ゴムの例としては、ジエンベースのポリマー、例えば、イソプレン、シス−1,4−ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン、シス−1,4−ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマーゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどが挙げられる。架橋ゴムの粒子サイズは35ミクロンシーブ粒子サイズ(400メッシュ)以上、好ましくは43ミクロンシーブ粒子サイズ(325メッシュ)以上から、7,000ミクロンシーブ粒子サイズ(3メッシュ)以下、または好ましくは2,500ミクロンシーブ粒子サイズ(8メッシュ)以下の範囲であることができる。最も好ましくは、架橋ゴムの粒子サイズは、75ミクロンシーブ粒子サイズ(200メッシュ)以上、300ミクロンシーブ粒子サイズ(46メッシュ)以下である。
【0023】
好ましくは、複合体物質の架橋ゴムは再利用ゴムであり、最も好ましくは、粉砕された自動車タイヤポリマーからの再利用ゴムから少なくとも部分的に得られる。よって、このゴムは加硫(架橋)または超酸化ゴムであることができ、かつ多くの場合廃棄ゴム生成物中に存在するような、架橋剤、硫黄、加硫促進剤、酸化防止剤、オゾン分解阻害剤、防腐剤、加工用油、酸化亜鉛(ZnO)、カーボンブラック、ワックス、ステアリン酸などのような1種以上を含むことができる。好ましくは、投入されるゴムは、多くの場合廃棄自動車タイヤに存在するような、例えば、スチールベルトまたは布のような非ゴム成分をあらかじめ除去されている。市販のGTR源は概してこのように提供される。
【0024】
本発明は出発架橋ゴム粒子の形状によって限定されない。本発明のある実施形態においては、このゴムは湿潤ミリングプロセスにおいて使用され、スラリーの形態で懸濁ポリマーと一緒に固体状態剪断粉砕(SP)を受ける。この実施形態において、このゴムは、例えば、細断された形態で、ゴムペレットで、ゴムストランドで、またはクラムゴムのような粒子で、またはゴム粉体であることができ、この粒子状形態は商業的に入手可能であり、かつ当業者に知られた方法によって製造される。SPプロセスに導入される場合には、11,100ミクロンシーブ粒子サイズ(2メッシュ)を超えるゴム粒子サイズは、使用可能であるが、実用性は低い。概して、ゴム粒子サイズは7,000ミクロンシーブ粒子サイズ(3メッシュ)以下の範囲である。より大きな粒子サイズは湿式ミリングのさらなる繰り返しを必要とする場合がある。さらに、接触表面のデザインおよび回転速度も湿式ミリングの有効性に影響を与えうる。好ましくは、ミリングのための架橋ゴムは3,350ミクロンシーブ粒子サイズ(6メッシュ)以下、または150ミクロンシーブ粒子サイズ(80メッシュ)以上、またはより好ましくは203ミクロンシーブ粒子サイズ(60メッシュ)以上の粒子サイズを有する。SPミルされたゴムの得られる粒子サイズは、概して懸濁ポリマー粒子のサイズと同じサイズであり、より大きな出発ゴム粒子サイズについては、2000ミクロンシーブ粒子サイズ以下の範囲であることができる。好ましくは、SPミルされたゴムの得られる粒子サイズは100ミクロンシーブ粒子サイズ以下、または43ミクロンシーブ粒子サイズ(325メッシュ)以上、または35ミクロンサイズのシーブ粒子サイズ(400メッシュ)以上である。SP処理を使用しない実施形態においては、ゴムの粒子サイズは好ましくは2,500ミクロンシーブ粒子サイズ(8メッシュ)以下である。
【0025】
複合体物質に使用される懸濁(コ)ポリマーは、重合単位として、エチレン性不飽和モノマー、例えば、α,β−エチレン性不飽和モノマー(例えば、第1級アルカン);ビニル芳香族化合物、例えば、スチレンもしくは置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン);エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルキシレン、ビニルトルエンなど;ブタジエン;酢酸ビニル;酪酸ビニルおよび他のビニルエステル;ビニルモノマー、例えば、ビニルアルコール、ビニルエーテル、塩化ビニル、ビニルベンゾフェノン、塩化ビニリデンなど;アリルエーテル;N−ビニルピロリドン;オレフィン;C−C30アルキル基を有するビニルアルキルエーテル(例えば、ステアリルビニルエーテル);C−C30アルキル基を有するアリールエーテル;(メタ)アクリル酸のC−C30アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル);(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルモノマー、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルおよび(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ヒドロキシエチル;並びに、関連するアミドおよびニトリル、例えば、(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミド(例えば、ジアセトンアクリルアミド)、またはN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド(例えば、オクチルアクリルアミド、およびマレイン酸アミド);およびアクリロニトリルもしくはメタクリロニトリル;(メタ)アクリル酸の不飽和ビニルエステル;多官能性モノマー(例えば、ペンタエリスリトールトリアクリラート);コレステロール由来のモノマー;エチレン;界面活性剤モノマー(例えば、C1827−(エチレンオキシド)20メタクリラート、およびC1225−(エチレンオキシド)23メタクリラート);酸官能基を含むα,β−モノエチレン性不飽和モノマー(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、(メタ)アクリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくは無水物、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、イタコン酸モノアルキル);酸置換(メタ)アクリラート;メタアクリル酸スルホエチルおよび不飽和スルホン酸モノマー;酸置換(メタ)アクリルアミド(たとえば、2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸);塩基置換(メタ)アクリラート(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ターシャリーブチルアミノエチルメタクリラート);および(メタ)アクロレインを含むことができる。
【0026】
複合体物質の懸濁(コ)ポリマーは、複合体物質の望まれる最終用途にしたがって好ましい特性を付与するために、共重合されている、官能性モノマー、またはその後に官能化されるモノマーをさらに含むことができる。このようなモノマーには、カルボン酸官能基を有するモノマー(例えば、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー)、リン含有酸官能基を有するモノマー(リン含有酸モノマー)、またはヒドロキシ官能基、またはアミン官能基、またはアセトアセトキシ官能基、またはシリル官能基、またはエポキシ官能基、またはシアノ官能基、またはイソシアナート官能基を有するモノマーが挙げられうる。官能性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、ホスホエチル(メタ)アクリラート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリラートなどが挙げられる。アクリル系ポリマーは、様々な官能基が容易にポリマー骨格に組み込まれうるので、本発明に特に良好に適合する。
【0027】
ある実施形態においては、本発明の懸濁(コ)ポリマーは1種以上の共重合された多エチレン性不飽和モノマー、例えば、メタクリル酸アリル(ALMA)、アクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、1,4−ブチレングリコールジメタクリラート、1,2−エチレングリコールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、ブタジエン、トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)およびジビニルベンゼンを含む。多エチレン性不飽和モノマーはコポリマーの重量を基準にして、0.1重量%の低さの量で、好ましくはコポリマーの重量を基準にして0.1〜10重量%、または0.1〜5重量%の量で効果的に使用されうる。
【0028】
本発明において使用するのに好適な懸濁(コ)ポリマーには、限定されないが、アリル−アクリル系ポリマー;スチレン−アクリル系ポリマー;ビニル−アクリル系ポリマー、酢酸ビニルポリマー、酢酸ビニル−アクリル系ポリマー、エチレン−酢酸ビニルポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルポリマー、および合成ゴム、例えば、イソプレン、ブタジエン、例えば、スチレン−ブタジエンポリマー、およびスチレン−ブタジエン−アクリロニトリルポリマー;およびこれらの組み合わせが挙げられる。このような懸濁ポリマーの分子量は鎖調整剤(chain regulator)、例えば、硫黄化合物、例えば、メルカプトエタノールおよびドデシルメルカプタンの使用によって制御されうる。鎖調整剤の量は(コ)ポリマーを製造するのに使用された全てのモノマーの合計重量を基準にして、20%以下、より一般的には7%以下の範囲であり得る。(コ)ポリマーの分子量は、好ましくは、約5,000〜2,000,000、より好ましくは20,000〜1,000,000である。
【0029】
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry;DSC)により測定される。「Tg」は、その温度以上でガラス状ポリマーがそのポリマー鎖のセグメント運動を受けるであろう温度である。DSCによってポリマーのガラス転移温度を測定するために、ポリマーサンプルは乾燥させられ、120℃に予備加熱され、素早く−100℃に冷却され、次いでDSCデータを集めつつ20℃/分の割合で150℃に加熱される。このサンプルのガラス転移温度は、当該技術分野で知られているように、温度およびエンタルピーのためにインジウム参照を使用したセルキャリブレーションで;半高さ法(half−height method)を用いて、変曲の中点で測定される。好ましくは、本発明において使用されるエマルションコポリマーは、−40℃〜+80℃、好ましくは、−10℃〜35℃のTgを有する。
【0030】
懸濁ポリマー粒子は、1ミクロン以上、好ましくは10ミクロン以上、より好ましくは50ミクロン以上から、10,000ミクロン以下、好ましくは1,000ミクロン以下、より好ましくは500ミクロン以下の粒子サイズの範囲であることができる。
【0031】
複合体物質に使用される懸濁(コ)ポリマーは、好ましくは複合体の全固形分の5重量%以上、または95重量%以下、または10重量%以上、または90重量%以下、好ましくは25重量%以上、または75重量%以下、または25〜65重量%、より好ましくは35〜65重量%または50重量%以下を構成する。
水性懸濁ポリマー分散物は架橋ゴムの粒子とブレンドされて、水性分散物中の混合物を形成する。
さらに、本発明者は固体状態ミリング技術がスラリーの湿式ミリングにおいて好適であり得ることを見いだした。ある実施形態においては、水性懸濁ポリマー分散物は架橋ゴムの粒子と混合されて、水性分散物中の混合物を形成し、この混合物は固体状態剪断粉砕(SP)にかけられる。
【0032】
Pは、引き裂き、剪断、摩耗または摩滅によって粒子サイズの低減が行われるミリング方法であり、多くの場合周囲条件下で行われる(例えば、固体状態剪断粉砕のチャプター2および3、K.KhaitおよびS.Carr、Technomic Publishing Company,Inc.2001を参照)。サイズの低減に加えて、SPは複数成分の混合物の混合または混和、並びに炭素−炭素結合の破壊から生じるラジカルの結果としてのメカノケミストリーをもたらすことが示された。例えば、Berstorff粉砕機、押出粉砕、回転グラインディングミルおよびパンミル(ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス、1997年6月、第37巻、第6号、1091〜1101;プラスチック、ゴムおよび複合体加工および用途(Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications)1996年、第25巻、第3号、152〜158)をはじめとするいくつかの種類のSP処理技術および装置が1970年代以来開発されてきた。回転グラインディングミルおよびパンミルは両方とも、固定された表面と回転する表面とを含み、そのそれぞれは異なるデザインの接触表面を有する。
【0033】
本発明のスラリー法は、クラムタイヤゴムと懸濁ポリマーとの均一な混合物を提供し、これはミルに容易に導入されることができ、かつミリングの後で、遠心分離およびろ過のような従来の方法によってさえ、懸濁ポリマーと架橋ゴムまたはGTRとの生成物混合物の単離を容易にすることができる。好適な固体状態ミリング技術には、固体粒子状物質を含むスラリーとして混合物を粉砕し、それによりゴム粒子が凝集したポリマーと緊密に接触しながらゴム粒子の粒子サイズを低減するために使用されうる技術が挙げられる。例えば、加熱ユニットを備えて設計され、通常の使用においては、溶融状態で導入物質を処理するために使用されるものであった固体状態剪断押出、SSSEのような技術は、周囲条件下で水性スラリー混合物と共に使用されうる。よって、様々なミリング技術、例えば、回転グラインディングミル、高剪断固体状態ミリング、ディスクミリング、パンミリング、ストーンミリング、プラスト(plast)ミリング;並びに他の粉砕技術、例えば、Berstorff粉砕機、押出粉砕、固体状態剪断押出およびBrubender押出機;および類似の技術をはじめとするが、これに限定されない多くの技術が使用されうるか、または使用のために適用されることができて、本発明のこの実施形態の方法を実施することができる。
【0034】
本発明の方法は、混合物の水分含有量を低減することをさらに含む。これは残りの固体複合体物質を脱水することおよび乾燥することの双方を含むことができる。混合物を脱水することは、例えば、過剰な水を除去するための固体のろ過、または遠心分離、並びに、絞りもしくは加圧もしくは凍結乾燥によるサンプルの水分含有量のさらなる低減のような方法を同様に含むことができる。固体の単離は、場合によって行われる処理工程、例えば、固体をすすぐかまたは洗浄する工程も容易にする。例えば、オーブンまたはドライヤー、例えば、真空ドライヤー、エアドライヤー、ドラムドライヤー、ハンドドライヤーもしくは流動床ドライヤーの使用をはじめとする従来の乾燥方法も使用されうる。好ましくは、この方法は単離された固体の熱可塑性処理をさらに含み、水分含有量のさらなる低減がこのような処理中に、例えば、サンプルを室温より高い温度で圧縮することによって起こりうる。熱可塑性複合体物質の処理は、高温で行われることができ、複合体物質を混練または形成する工程を含むことができる。混練は2ロールミルを用いて、または物質の押出により、またはある場合には射出成形機への送達において達成されうる。形成プロセスはカレンダリング、圧縮成形、射出成形または押出のような技術を含むことができる。2ロールミリングは標準的なポリマー処理操作であり、多くの場合圧縮成形と一緒に使用されて、物質を成形物品に変形する。あるいは、押出または同様の溶融加工手順が使用されうる。
【0035】
複合体物質は、加熱処理段階中にさらに架橋されることができ、屋根用膜の機械的特性および耐水性を向上させうる。架橋は上述の官能基(ヒドロキシ、グリシジル、酸、アミンなど)によって、または加熱条件下で反応部位を生じさせるであろうラジカル発生剤(ペルオキシド、ペルエステル、アゾ化合物など)の組み込みによって行われうる。
【0036】
スラリー混合物は追加的に、複合体物質の最終用途に従って望まれるもしくは必要とされる場合に、様々な添加剤、例えば、加硫剤、酸化防止剤、UV−安定剤、難燃剤、着色剤、充填剤、顔料および加工助剤の1種以上を含むことができる。
【0037】
特に好ましい実施形態においては、150ミクロンシーブ粒子サイズ(80メッシュ)の粉砕タイヤゴムが、等しい固形分重量ベースで、10%固形分のアクリル系懸濁コポリマー(約320ミクロンの重量平均粒子サイズ)の水性分散物に添加され、次いで、ろ過され、乾燥させられ、その後で2ロールミルにおいて処理され、圧縮成形されて、アクリル系ゴム複合体を生じさせる。柔軟なポリマー/ゴム複合体を生じさせるために、懸濁ポリマーは80℃未満の、好ましくは−40℃〜+60℃のガラス転移温度、Tgを有するべきである。
【0038】
本発明の方法により製造される複合体物質は熱可塑性物質であり、これは、場合によっては、さらに配合され圧縮成形されて所望の最終生成物を提供することができ、これは当業者に対して特定の方法に限定されない。ある用途においては、複合体物質は、例えば、それぞれの分野において知られた、粉体、繊維、スライバーもしくはチップの形態の充填剤;または強化用物質、例えば、不織布もしくはスクリムなどを追加的に含むことができる。カーボンブラックは、想定される多くの最終生成物で使用される充填剤の例である。有用な最終生成物には、自動車用部品、例えば、タイヤ、バンパー、ガスケット、ファンベルト、ワイパーブレード、ライナー、振動減衰マウント、アンダーボディーコーティング、断熱材およびトリム;建築用品、例えば、屋根用膜、シングル屋根板または屋根用フェルト;EPDM屋根用膜の改質剤;コーティング材;ネオプレンコーティング材の改質剤;タイルもしくはタイル裏打ち;カーペット裏打ち;アスファルトシーラー;アスファルト強化材およびアスファルトコンクリート道路表面用物質;アスファルトおよびセメント用クラック充填材;コンクリート改質剤;防音材;音響用下張り;床用下張りおよびマット;産業用製品、例えば、埋立地用ライナー;ホットメルト接着剤;スポーツ用、例えば、人工芝およびトラック;グラウンド表面;マットおよびパッド;ボールの芯;および消費者用製品、例えば、床用タイル;靴底;ライナー;カバー;成形製品;などが挙げられるがこれらに限定されない。
【実施例】
【0039】
略語
BA:アクリル酸ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
LMA:メタクリル酸ラウリル
MHEC:メチルヒドロキシエチルセルロース(Culminal登録商標MHEC8000)
界面活性剤A:分子あたり1〜40のエチレンオキシド基を有するエトキシ化C8−C18アルキルエーテルサルフェート(水中30%活性)
SLS:ラウリル硫酸ナトリウム
APS:過硫酸アンモニウム
t−BHP:tert−ブチルヒドロペルオキシド
IAA:イソアスコルビン酸
LPO:ジラウロイルペルオキシド
BPO:ジベンゾイルペルオキシド(水中75%活性)
EDTA:エチレンジアミン四酢酸キレート剤
1.登録商標(Hercules Inc.,Aqualon Division、ウィルミントン、デラウエア州、米国から入手可能)
【0040】
実施例1:懸濁ポリマーの製造
パドルスターラ、熱電対、窒素入口および還流凝縮器を備えた5リットル四つ首丸底フラスコ中で懸濁重合によりポリマー水性分散物が製造された。それぞれの場合において、懸濁重合からのケトル内容物は100メッシュスクリーン上で水ですすがれ、水中分散物として貯蔵された。
【0041】
懸濁ポリマー1(SP1):50BA/50MMA
1600gの蒸留水、4.9gのMHECおよび0.77g亜硝酸ナトリウムをケトルに添加した。この混合物を80℃に加熱し、1時間80℃で保持した。次いで、これを室温まで冷却した。一方で、350gのBA、350gのMMA、5.25gのLPOおよび7gのBPOを混合することにより有機相溶液が製造された。ケトル内容物が室温に到達したら、攪拌を停止し、有機相をケトルに注いだ。次いで、攪拌を再開させた。混合物を室温で1/2時間攪拌し、攪拌を停止させた時点で分散物は安定性について(目視で)チェックされた。次いで攪拌が再開された。ケトル内容物の温度を1時間かけて70℃に上昇させ、次いで3時間70℃に保持した。次いで、ケトル内容物の温度を80℃に上昇させ、80℃で1時間保持し、次いで室温まで下げた。
概して、ケトル内容物は100メッシュスクリーン上で水ですすがれ、水中分散物として貯蔵された。SP1の場合には、バッチの一部分だけが100メッシュスクリーン上で水ですすがれ、水中分散物として貯蔵された。ポリマー/ゴム複合体の特性に対する懸濁ポリマー処理条件の影響を評価するために、バッチの残部は以下の実施例7において記載されるように処理された。
【0042】
懸濁ポリマー2(SP2):75BA/25MMA
有機相溶液が525gのBA、175gのMMA、5.25gのLPOおよび7gのBPOを混合することにより製造されたことを除いて、製造法はSP1のと同じである。
【0043】
懸濁ポリマー3(SP3):35LMA/33BA/32MMA
400gの蒸留水、2.09gのMHECおよび0.165gの亜硝酸ナトリウムをケトルに添加した。この混合物を80℃に加熱し、80℃で1時間保持した。次いでこれを室温に冷却した。一方、49.5gのBA、52.2gのMMA、48gのLMA、0.75gのLPOおよび1gのBPOを混合することにより、有機相溶液を製造した。残りの方法はSP1と同じである。
【0044】
実施例2:エマルションポリマーの製造
パドルスターラ、熱電対、窒素入口および還流凝縮器を備えた5リットル四つ首丸底フラスコ中で乳化重合によりポリマー水性分散物が製造された。
【0045】
エマルションポリマー1(EP1A):50BA/49MMA/1MAA
500gの蒸留水および25gの界面活性剤Aをフラスコに添加した。内容物を窒素下85℃で加熱した。次いで、20gの蒸留水中の5.3gの重炭酸ナトリウムの溶液を添加し、20gの蒸留水中の5.3gのAPSの溶液であった。
フラスコ内容物が85℃の安定な温度を達成してから、120gの蒸留水中の1gのAPSの開始剤溶液を1g/分の割合でケトルに供給した。開始剤供給が始まったのと同じ時点で、9.5g/分で20分間のモノマーエマルション(ME)供給(500gの蒸留水、12.5gの界面活性剤A、750gのBA、735gのMMAおよび15gのMAAから製造された)が開始された。20分後、ME供給が19g/分に増大され、一方で、開始剤供給は1g/分のままであった。ケトル温度は85℃に維持された。約90分で、温度が85±3℃に維持されうるように充分にゆっくりと、100gの蒸留水を重合系に添加した。
開始剤供給およびME供給が完了した後、ケトル温度を85℃で20分間維持し、次いで75℃に下げた。蒸留水中の0.15%硫酸鉄の溶液5gをケトルに添加し、蒸留水中の1%EDTAの溶液1.6gであった。温度が75℃に安定化したときに、20gの蒸留水中の0.8gのt−BHPと、20gの蒸留水中の0.42gのIAAとのコフィードが1g/分でケトルに添加された。これらの供給がが完了したとき、温度を65℃に下げた。温度が65℃に安定したとき、20gの蒸留水中の0.8gのt−BHPと、20gの蒸留水中の0.42gのIAAとのコフィードが1g/分でケトルに添加された。これらの供給が完了したとき、温度を室温に下げた。ケトル温度が40℃未満に低下したら、水中14.5%のアンモニア16gが添加されて、pHを増加させた。4.64gのRocima商標BT25(ロームアンドハースカンパニー、フィラデルフィア、ペンシルバニア州、米国)が5gの蒸留水中に溶解されて、ケトルに添加され、ケトルの内容物はろ過されて、凝塊を除いた。得られた分散物、EP1Aは50.9%の固形分と9.17のpHを有していた。
【0046】
エマルションポリマー1B(EP1B):50BA/50MMA
MEが500gの蒸留水、12.5gの界面活性剤A、750gのBAおよび750gのMMAから製造されたことを除いて、製造法はEP1Aのと同じであった。得られた分散物、EP1Bは50.4%の固形分と9.78のpHを有していた。
【0047】
エマルションポリマー2(EP2):75BA/24MMA/1MAA
MEが500gの蒸留水、12.5gの界面活性剤A、1100gのBA、350gのMMAおよび15gのMAAから製造されたことを除いて、製造法はEP1Aのと同じであった。得られた分散物、EP2は50.8%の固形分と9.26のpHを有していた。
【0048】
エマルションポリマー3(EP3):35LMA/32BA/31.4MMA/1.6MAA
EP3が界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを使用したことを除いて、製造法は、米国特許第5,521,266号の実施例4に類似していた。
【0049】
【表1】

【0050】
2つの重合方法により製造される類似のポリマー組成物は、同様のTgを必ずしも示さないことが認められうる。実際に、SP1(+38℃のTg)は別個の固体ビーズとして単離されうるが、エマルションポリマー同等物であるEP1AおよびEP1B(それぞれの場合において+15℃のTg)は双方共に室温で膜形成物である(それぞれの粒子は融合する)。
【0051】
実施例2(a):ラテックスポリマーの凝集
実施例2のエマルションポリマーはコロイド的に安定であり、後述のように、ラテックスの凝集によってゴムとのスラリー混合物を形成するために製造される。1000gのエマルションポリマー1(EP1A、50.9%固形分)は、2ガロンの容器内で3500gの水で希釈された。FeClの40%溶液37.6gをこの分散物に攪拌しつつ添加し、ラテックスの凝集を開始させた。攪拌を15分間続け、凝集したポリマー分散物を一晩平衡化させた。凝集したポリマー固体の粒子サイズは光学顕微鏡により、約10〜200ミクロンであると推定された。さらに、凝集した分散物の粒子サイズおよび粒子サイズ分布はMalvern Mastersizer2000商標粒子サイズ分析器を用いて測定された。結果は、80%超が2−200ミクロンであり、〜25ミクロンにピークを有する、1ミクロンから1,000ミクロンまでの幅広の粒子分布を示した。
【0052】
ラテックスポリマーの凝集は架橋ゴム粒子とは別にして行われることができ、または架橋ゴム粒子の存在下で行われうる。
【0053】
実施例3:ポリマー/ゴムスラリー混合物の製造
コロイド的に安定なポリマー分散物、例えば、実施例2のエマルションポリマーは、ポリマー/ゴムスラリー混合物を製造するために、追加の処理工程を必要とする。これは粒子サイズが非常に小さく固体を単離するために効果的にろ過できず、かつラテックスポリマー粒子の大部分はミリング工程においてゴムと相互作用できないからである。エマルションポリマーについては、固体の単離およびミリング工程における効果的なポリマー/ゴム相互作用の双方は、実施例2(a)に記載されるようにラテックスポリマーを凝集させることにより達成されうることが見いだされた。一方、懸濁ポリマーは合成されたままで(実施例1)使用されうる。実施例7でさらに論じられるように、懸濁ポリマーの追加の処理も行われうる。
凝集したラテックスもしくは懸濁ポリマービーズの分散物を粉砕タイヤゴムと単にブレンドすることによりポリマー/ゴムスラリーは最低限の処理で製造されることができ、またはそのスラリー混合物は、例えば、実施例4および/または実施例5に記載されるようにさらに処理されうる。単純なブレンドの場合には、ポリマー分散物(500gのポリマー固形分、凝集したラテックスとして、または懸濁ポリマービーズとして)は、固体対固体で(solid on solid)、等しい重量の(または所望のポリマー/ゴム比率に応じた)粉砕タイヤゴム(203ミクロンシーブ粒子サイズ;すなわち、60メッシュ;Lv Huan Rubber Powder Limited Company,Zhejiang,中国)とブレンドされたが、なお、粉砕タイヤゴムはポリマー分散物に対して攪拌しつつ、10分間にわたって徐々に添加された。
エマルションポリマー/ゴム複合体は、懸濁ポリマー/ゴム複合体と下記の実施例6において比較される。
【0054】
実施例4:ポリマー/ゴムスラリー混合物の固体状態剪断粉砕(SP)
実施例3からのスラリーは、場合によっては、湿潤条件下で、例えば、ディスクミル法(米国特許第6,394,372号に記載されるような)またはパンミル法(プラスチック、ゴムおよび複合体加工および用途(Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications)1996年、第25巻、第3号、152〜158;ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス、1997、第37巻、第6号、1091〜1101に記載されるような)を用いて、固体状態剪断粉砕にかけられうる。それぞれの場合において、ポリマー/ゴムスラリーは10%全固形分に希釈され、ディスクミルまたはパンミルの取り込み口に供給される。ミリングは周囲条件下で行われる。パンミルの場合には、移動パンを60rpmで回転させつつスラリーは粉砕されたスラリーの排出物をミルに再導入することにより5回粉砕される。パンの間の隙間は流体駆動装置によって制御され、ポリマー/ゴム混合物の効果的な粉砕を達成する。ディスクミルはより速い速度で回転し、一回だけしかミルの通過を必要としない。
【0055】
実施例5:ポリマー/ゴム複合体物品の製造:5(a)2−ロールミリングおよび圧縮成形
ミリング後、またはミリングなしの場合でさえ、ポリマー/ゴムスラリー混合物は典型的には、10ミクロンフィルターバッグを用いてろ過され、固体混合物はさらに絞られてフリーの水を低減させた。固体複合体生成物を単離する処理工程は変化することができ、いくつかの方法が以下(実施例7)に記載され、比較される。好ましい手順においては、得られる湿潤固体(〜50−60%水分含有量)は真空オーブン中70℃(〜75cmHg)で2日間乾燥させられた。乾燥した混合物固体(5%未満の水分含有量)は、場合によっては、2−ロールミルにおいて190℃で5分間処理された後、圧縮成形された。圧縮成形は、厚み0.102、0.127または0.203cm(厚み40、50または80mil)で、25.4cm×25.4cm(10インチ×10インチ)のフレームを取り付けたスチールプラーク(steel plaques)間で、190℃で全部で5分間;3分間は低圧(10−15トン)および2分間は高圧(75トン)で達成された。追加の冷却も加圧下(75トン)、室温で5分間、循環水を備え付けた冷却加圧器において行われた。他に示されない限りは(例えば、実施例8において)、以下の実施例において製造されたサンプルの全ては2−ロールミルで処理され、次いで圧縮成形された。
【0056】
5(b):ポリマー/ゴム複合体物品の押出製造
ポリマー/ゴム複合体物品を製造する別の手順においては、乾燥した混合物固体が、2−ロールミリング工程を経ることなく、直接に押出によっても処理されうる。乾燥したポリマー/ゴム複合体は、40rpmで回転する2つの先細の1.9cm(3/4インチ)直径のスクリューを用いた、Haake逆方向回転円錐ツインスクリューを用いて押し出されうる。この主要ユニットは3つの加熱領域(185−190−195℃)、並びに、温度制御のための様々な熱電対および冷却ホースを含む。この物質は5cm(2インチ)幅で、0.102cm(40ミル)のギャップサイズのリップダイを通して押し出されうる。
【0057】
実施例6:ポリマー/ゴム複合体物品の特性:6(a)機械的特性
実施例5(a)からの複合体サンプルは成形されたプラークからドッグボーン状に切り出され、約0.35cm(0.14インチ)の幅および0.102cm(40ミル)の厚みが得られた。機械的試験はTinius Olsen H50KS引張試験器(Tinius Olsen Inc.,ホーシャム、ペンシルベニア州)で、ゴムのためのタイプ5セッティングを用いて、ASTM D−628プロトコールに従って行われた。クロスヘッド速度は0.76cm/分(0.3インチ/分)であって、0.76cm(0.3インチ)のゲージ長さが使用された。この試験は23℃の制御された温度および50%の制御された相対湿度で行われた。この試験から、サンプルの破断点伸び、最大応力(引張強さ)および引裂抵抗が決定された。以下の表2は、それぞれ、実施例1および実施例2の懸濁ポリマーおよびエマルションポリマーを用いて製造された50/50 ポリマー/ゴム複合体の機械的特性を比較する。有用な水準の安定性のために、エマルションポリマーは、多くの場合、追加のコロイド安定剤または少量のアニオン性モノマー(例えば、塩基性pHでの酸モノマー)のいずれかを必要とする。この理由のために、エマルションポリマー組成物における1%酸モノマーの存在は、酸モノマーを使用しない不充分な安定性のエマルションポリマーよりも、組成物のより現実的な代表となる安定性の水準を提供するように働く。
【0058】
【表2】

【0059】
このデータは、機械的特性が、重合を行う方法ではなく、構成ポリマーの特性に従って変動することを示す。すなわち、ポリマー/ゴム複合体製造において、懸濁ポリマーに対してエマルションポリマーを使用することの有意な利点、またはその逆の有意な利点は認められない。いずれのポリマーの種類も所望の特性バランスを得るために使用されることができた。
【0060】
実施例6:ポリマー/ゴム複合体物品の特性:
6(b)低温柔軟性および水吸収試験
熱可塑性複合体の柔軟性は多くの最終用途、例えば、複合体が、屋根の尖ったところの上で柔軟であることを必要とするシートの形態であり得る、シングル屋根板で重要である。ポリマー/ゴム複合体は、低温柔軟性について、ゴムタイプの物質のクラッキングに対する抵抗性を測定するマンドレル曲げ試験(ASTM試験D552)に従って試験された。ポリマー/ゴム膜(0.102cm厚、すなわち、40mil)が、特定の直径(1.3cm、すなわち1/2インチ)の円筒形マンドレル上で、特定の低い温度(−25℃および−45℃)で1秒間曲げられ、クラッキングを評価した。クラッキングが観察されなかった場合には、より小さな直径(0.3cm、すなわち1/8インチ)のマンドレルを用いてこの手順が繰り返される。この試験は、所定のマンドレル直径および所定の温度でクラッキングが起こるかどうかに従った、「合格」(P)/「不合格」(F)基準で評価される(以下の表3;「P1/2」は、示された試験温度で1/2インチ直径のマンドレル上で曲げた後で膜にクラックが生じなかったことを意味する)。
ポリマー物質または複合体の屋根用用途のような多くの産業用途は、水の吸収を最低限にすること、例えば、7日間にわたって水中に沈めた場合に5%未満の水吸収、または20日間にわたって10%未満を必要とするか、または用途が決定づけうる。圧縮成形後の最終固体複合体物質の水感受性は成形された複合体のかけらを水中に沈め、次いで表面の水を乾燥させた後で、時間の経過による水の吸収を測定することにより決定された。水吸収は、複合体の重量に対する吸収水の重量として計算された(以下の表3)。
【0061】
【表3】

【0062】
このデータは、懸濁ポリマーから製造された複合体についてのポリマー/ゴム複合体の低温柔軟性が、エマルションポリマーから製造された複合体の柔軟性よりも増強されており、この差は高いTgのポリマーについてより顕著であることを示す。さらに、懸濁ポリマーから製造されたポリマー/ゴム複合体の水感受性は、エマルションポリマーから製造された複合体の水感受性と比べてかなり低減されている。
さらに、懸濁ポリマーは優れた溶融加工特性の複合体を提供し;特に、懸濁ポリマーからのポリマー/ゴム複合体は、類似のエマルションポリマーからの複合体と比較してより良好な融合およびバンディング(banding)、バンクロール形成、溶融強度、クロスカット(cross−cut)およびフォールド(fold)を有していたことが認められた。
【0063】
1.融合:物質が加工中に粘性塊を形成する。粉体粒子は完全に一体に融合する。良好な融合の物質は、劣った融合の物質より最寄り素早くこれを行う。
2.バンディング:物質はロールの周りの粘性リボンに融合し、これはミルに固着することなく容易に取り除かれうる。このリボンは容易に除去されかつ操作されるのに充分な機械的一体性を有する。
3.バンクロール形成:円筒状物質が2つのロールの間の2−ロールミルの上部に形成する。ロールが回転するにつれてこの物質は回転する。バンクロール形成は重要である、というのは、異なる成分がミルを通る前に完全に混合するのを可能にするという観点、並びにミルを通るリボンの厚みが均一であることを確実にするという観点の双方において、バンクロール形成は生成物に均一性を付与するからである。
4.溶融強度:2−ロールミルを出るシートにおける引張によって溶融強度が定性的に測定されうるような、溶融物の引張特性。より高い溶融強度を有するサンプルは伸びて、次いで跳ね返る。非常に低い要求強度を有するサンプルは単純に流れる。
5.クロスカットおよびフォールド:2−ロールミルを出るシートが切断されることができ、折りたたまれることができ、このミルを通って再び供給されうる。
【0064】
実施例7:ポリマー/ゴム複合体特性に対する懸濁ポリマー処理の影響
50/50懸濁ポリマー/ゴムスラリー混合物のサンプル(実施例3より)が使用され、懸濁ポリマー(SP1)を処理する4つの異なる方法でポリマー複合体を製造した。この方法は以下からなる:
i)対照:洗浄されたSP1:懸濁ポリマーを製造する手順はSP1について上述したのと同じである。100メッシュスクリーン上でそのバッチの一部分が水ですすがれ、水中分散物として貯蔵された。すすがれた懸濁ポリマーおよびGTRが所望のポリマー/ゴム比率(固形分重量比率)で混合され、フィルターバッグ内で絞られた。すすぎおよび絞りのサイクルはフィルターバッグ内で3回行われた。湿潤ケーキが真空オーブン中(60℃、〜75cmHg)で一晩乾燥させられた。これは対照の(洗浄された)手順である。
バッチの残部(洗浄されていない)は次の通り処理された:
ii)洗浄されていないSP1:この部分は重合の最後にケトルから取り出され、洗浄することなく貯蔵された。懸濁ポリマーおよびGTRは所望のポリマー/ゴム比率(固形分重量比率)で混合され、何ら追加のすすぎをすることなく、一度フィルターバッグ内で絞られた。湿潤ケーキが真空オーブン中(60℃、〜75cmHg)で一晩乾燥させられた。
iii)混合前に洗浄され乾燥されたSP1:この部分は100メッシュスクリーン上で水で洗浄された。ポリマー粒子は、次いで周囲条件下で乾燥させられて、砂状の粉体を生じさせた。乾燥した懸濁ポリマーおよびGTRは所望のポリマー/ゴム比率で混合された。混合物はさらに真空オーブン中(60℃、〜75cmHg)で一晩乾燥させられた。
iv)セルロースで処理されたSP1:SP1バッチの一部分(水ですすいだ後)がセルロース(ポリマー固形分の重量基準で1.5%)と3時間混合された。これは次いで100メッシュスクリーン上で水ですすがれ、水中分散物として貯蔵された。すすがれた懸濁ポリマーおよびGTRは所望のポリマー/ゴム比率(固形分重量比率)で混合され、フィルターバッグ内で絞られた。すすぎおよび絞りのサイクルはフィルターバッグ内で3回行われた。湿潤ケーキが真空オーブン中(60℃、〜75cmHg)で一晩乾燥させられた。
ポリマー/ゴム複合体はそのほかの点では同じに製造された。それぞれのサンプルは2−ロールミルで処理され、次いで実施例5(a)に記載されたように圧縮成形された。4つの異なる方法で形成されたポリマー複合体について機械的特性が試験された(以下、表4)。
【0065】
【表4】

【0066】
このデータは、懸濁ポリマーから製造された複合体について、様々な懸濁ポリマー処理条件がポリマー/ゴム複合体の機械的特性に大きな影響を与えないことを示す。
さらに、この4つの異なる方法で得られたポリマー/ゴム複合体について、7日後および28日後の水吸収特性は互いにほとんど同じであった。所定の複合体組成物について、懸濁ポリマーの処理方法の詳細が、複合体の特性に対する有意な影響を有するとは認められず、このシステムは製造の容易性の観点で非常に堅調であることを示す。
【0067】
実施例8:ポリマー/ゴム複合体特性に対するポリマー/ゴム処理の影響
【表5】

【0068】
一般的にいうと、圧縮成形はポリマー/ゴム複合体の機械的特性を最適化するのに有効であり得ることがわかる。
【0069】
【表6】

【0070】
このデータは、追加の圧縮成形プロセス工程が結果的に改善された低温柔軟性および顕著に改善された水吸収特性をもたらしたことを示す。
【0071】
実施例9:ポリマー/ゴム複合体特性に対するポリマー/ゴム比率の影響
【表7】

1.それぞれのサンプルについて、ポリマー/ゴム複合体は、52.9BA/46.1MMA/1.0MAAの組成のエマルションポリマー(Rhoplex商標AC−261、ロームアンドハースカンパニー、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)、および60メッシュ粒子サイズの粉砕タイヤゴムとして提供されるゴムを含む。このサンプルは2−ロールミル処理および圧縮成形により製造された(実施例5(a))。
【0072】
この複合体の機械的特性は、ポリマー/ゴム比率に強く依存し、エマルションポリマー含有量が増大するにつれて、増大した強さおよび伸びの双方を示した。
【0073】
【表8】

1.それぞれのサンプルについて、ポリマー/ゴム複合体は50BA/50MMAの組成の懸濁ポリマー(SP1)および60メッシュ粒子サイズの粉砕タイヤゴムとして提供されるゴムを含む。このサンプルは2−ロールミル処理および圧縮成形により製造された(実施例5(a))。
【0074】
この複合体の機械的特性はポリマー/ゴム比率に強く依存し、懸濁ポリマー含有量が増大するにつれて、増大した強さおよび伸びの双方を示した。
【0075】
実施例10:懸濁ポリマーから製造される複合体物質のポリマー組成の変更
複合体物質は、アクリル系ポリマー;スチレン−アクリル系ポリマー;ビニル−アクリル系ポリマー、酢酸ビニルポリマー、酢酸ビニル−アクリル系ポリマー、エチレン−酢酸ビニルポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルポリマー、およびスチレン系ゴム、例えば、イソプレン、ブタジエン、例えば、スチレン−ブタジエンポリマー、およびスチレン−ブタジエン−アクリロニトリルポリマーをはじめとする様々な他の懸濁ポリマーを用いて製造されうる。それぞれの懸濁ポリマーについて、ポリマー/ゴムスラリー混合物は実施例3に記載された方法に従って製造される。これらのポリマー/ゴムスラリーは実施例4および5に記載された方法によってさらに処理され、複合体物質を製造する。
【0076】
実施例11:工業的懸濁ポリマー製造施設からの廃棄物質から製造された複合体物質
ポリマー/ゴムスラリー混合物は、懸濁ポリマー製造施設由来の廃棄物質を用いて、実施例3の方法によって製造されうる。この廃棄物質は、類似の固形分量で添加されるGTR(例えば、203ミクロンシーブ粒子サイズ;すなわち60メッシュ)とブレンドし、次いでミリングし、上述のようにポリマー/ゴム混合物を処理することにより、ポリマー/ゴムスラリーを製造するために使用されうる。廃棄懸濁ポリマーおよびGTRに由来し、圧縮成形後の、得られた複合体シートは実施例6におけるのと類似の一体性を有するものと期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)示差走査熱量測定DSCで測定した場合に80℃以下のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1種の懸濁ポリマーの1種以上のポリマー水性分散物を懸濁重合によって提供し;
(b)約10ミクロンシーブ粒子サイズ〜約11,100ミクロンシーブ粒子サイズの粒子サイズを有する1種以上の架橋ゴムの粒子と、懸濁ポリマーのポリマー水性分散物とを混合して、水性分散物中の水性分散物混合物を形成し;
(c)水性分散物混合物の水分含有量を低減させ;
(d)物品を形成する;
ことを含む複合体物質を製造する方法。
【請求項2】
水性分散物混合物の水分含有量を低減させる前または後で、水性分散物混合物を固体状態剪断粉砕にかけることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
物品を形成することにおいて、混合物を混練すること、混合物を2−ロールミルすること、混合物を圧縮成形すること、および混合物を押し出すことから選択される1種以上の処理工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
架橋ゴムの粒子サイズが35ミクロンシーブ粒子サイズ(400メッシュ)以上、または2,500ミクロンシーブ粒子サイズ(8メッシュ)以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
架橋ゴムの粒子サイズが43ミクロンシーブ粒子サイズ(325メッシュ)以上、または11,100ミクロンシーブ粒子サイズ(2メッシュ)以下である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
架橋ゴムが少なくとも部分的に再利用ゴムから得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
架橋ゴムが少なくとも部分的に再利用タイヤから得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
混合物の水分含有量を低減することが、混合物の固形分を単離することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
固体状態剪断粉砕がパンミリングまたはディスクミリングを含む請求項2に記載の方法。
【請求項10】
懸濁ポリマーが、カルボン酸官能基、リン含有酸官能基、ヒドロキシ官能基、アミン官能基、アセトアセトキシ官能基、シリル官能基、エポキシ官能基、シアノ官能基、イソシアナート官能基およびこれらの組み合わせから選択される官能基を有する1種以上の官能性モノマーの重合単位を有するコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
混合物を混練すること、混合物を2−ロールミルすること、混合物を圧縮成形すること、または混合物を押し出すことから選択される1種以上の処理工程中に、複合体物質がさらに架橋される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
(a)示差走査熱量測定DSCで測定した場合に80℃以下のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1種の懸濁ポリマーの1種以上のポリマー水性分散物を懸濁重合によって提供し;
(b)懸濁ポリマーのポリマー水性分散物を乾燥させて、10%未満の水分含有量の懸濁ポリマーを生じさせ;
(c)約10ミクロンシーブ粒子サイズ〜約11,100ミクロンシーブ粒子サイズの粒子サイズを有する1種以上の架橋ゴムの粒子と、10%未満の水分含有量の懸濁ポリマーとを混合し;
(d)物品を形成する;
ことを含む複合体物質を製造する方法。

【公開番号】特開2010−155977(P2010−155977A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−267133(P2009−267133)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】