説明

熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸並びに酸化繊維織物及び炭素繊維織物の製造方法

【課題】 紡績工程においては紡績性に優れ、製織工程においては織物加工性に優れ、高強度である熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸を提供する。
【解決手段】 酸化繊維と熱可塑性繊維とが混合紡績されてなる紡績糸であって、熱可塑性繊維の炭素化収率が0.5質量%、熱可塑性繊維の繊度が0.5〜10.0dtex、酸化繊維の繊度が0.5〜3.4dtex、紡績糸中の熱可塑性繊維の混合率が7〜45質量%、紡績糸の乾強度が16mN/dtex以上、紡績糸のより数150〜900回/mである熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面毛羽の少ない炭素繊維織物の製造方法、並びに、この炭素繊維織物製造用の酸化繊維紡績糸、及び酸化繊維織物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化繊維は不溶融性、難燃性を有し、必要に応じ、高温の不活性ガス雰囲気下で、炭素化され、断熱材、不燃材、導電材、強化材等さまざまな用途に応用されている。特に、炭素化された繊維(炭素繊維)は、その柔軟性、加工性、成型性等の繊維形態の特徴を活かせる電極材として注目され、高分子電解質型燃料電池に応用されている。
【0003】
高分子電解質型燃料電池の電極材に用いる炭素繊維材料としては、特に薄型のシート状で、強度があり、電気抵抗値が低く、柔軟性がある炭素繊維材料の要望が多く、種々の炭素繊維構造体が開発されている。
【0004】
高分子電解質型燃料電池用の炭素繊維構造体としては、(1)C/Cペーパー(シート状の炭素繊維強化炭素材料)、(2)炭素繊維不織布、(3)炭素繊維フィラメント織物、並びに、(4)炭素繊維紡績糸織物などが例示される。
【0005】
これら構造体のうちでも炭素繊維紡績糸織物は、C/Cペーパーに比べると柔軟性がある。炭素繊維不織布に比べると強度が高い。炭素繊維フィランメント織物に比べると嵩高で、厚さ方向への繊維配列度が高い為、ガス透過性及び通電性に優れている等の特徴がある。
【0006】
これらの特徴を活かすと共に、更なる課題改善の検討もなされている(例えば、特許文献1、2参照)。特に、特許文献2では表面毛羽発生量低減の検討がなされ、ある程度の改善が得られた。しかし、特許文献2での検討にも拘らず表面毛羽発生量低減はまだ充分とは言えず、より充分な改善の必要がある。
【特許文献1】特開2002−348743号公報 (特許請求の範囲、段落番号[0096]〜[0111])
【特許文献2】特開2003−109616号公報 (特許請求の範囲、段落番号[0089]〜[0102])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、上記問題を解決するために種々検討しているうちに、炭素繊維織物製造用の原料である酸化繊維が、一般の熱可塑性繊維(ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン系等)に比べ繊維強度や伸度が低く、紡績加工性に劣ることに上記問題は起因していると考えた。
【0008】
一般の有機繊維・熱可塑性繊維は繊維特性には優れるが、大気中の高温雰囲気では、燃焼・焼失する。しかし、不活性雰囲気下では、高温時に溶融・分解し、一部タール分として、残存する。即ち、ある程度の炭素化収率を有する。
【0009】
以上の酸化繊維の特性と熱可塑性繊維の特徴を生かし、熱可塑性繊維は不活性ガス中でタール分としての残存分を炭素繊維同士の結着剤として有効に利用でき、酸化繊維と熱可塑性繊維とを所定の条件で混合紡績されてなる紡績糸は、その紡績工程において紡績性に優れ、製織工程において織物加工性に優れ、高強度であることを知得した。
【0010】
この酸化繊維紡績糸を製織、加圧熱処理、炭素化処理することにより賦形性の良い、薄い、表面毛羽の少ない炭素繊維織物が得られることを知得し、本発明を完成するに到った。
【0011】
従って、本発明の目的とするところは、上記問題を解決した、熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸、並びに、酸化繊維織物及び炭素繊維織物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0013】
〔1〕 酸化繊維と熱可塑性繊維とが混合紡績されてなる紡績糸であって、熱可塑性繊維の炭素化収率が0.5質量%以上、熱可塑性繊維の繊度が0.5〜10.0dtex、酸化繊維の繊度が0.5〜3.4dtex、紡績糸中の熱可塑性繊維の混合率が7〜45質量%、紡績糸の乾強度が16mN/dtex以上、紡績糸のより数150〜900回/mである熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸。
【0014】
〔2〕 〔1〕に記載の紡績糸を製織して得た紡績糸織物を100〜350℃、0.5〜100MPaで加圧熱処理することを特徴とする、目付が100〜350g/m2、嵩密度が0.40〜0.95g/cm3の酸化繊維織物の製造方法。
【0015】
〔3〕 〔2〕に記載の酸化繊維織物を不活性ガス中、1000〜2800℃の温度で熱処理することを特徴とする、目付が60〜210g/m2、厚さが0.14〜0.6mm、嵩密度が0.25〜0.55g/cm3の炭素繊維織物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸化繊維紡績糸は、酸化繊維と熱可塑性繊維とを所定の条件で混合紡績されてなるので、それを得るための紡績工程においては紡績性に優れ、それを製織して酸化繊維織物を得る製織工程においては織物加工性に優れ、それ自体は高強度である。
【0017】
本発明の炭素繊維織物は、上記酸化繊維紡績糸を製織、加圧熱処理、炭素化処理してなるので、賦形性が良い、薄く、表面毛羽が少ない織物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸は、酸化繊維中に熱可塑性繊維が混合紡績されてなる紡績糸であって、乾強度が16mN/dtex以上である。乾強度が16mN/dtex未満の場合は、織物加工時に糸切れ生じ易い。得られる織物の品位が低下する。
【0020】
本発明の熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸は、より数が150〜900回/mである。より数が150回/m未満の場合は、紡績糸強度低下、織物加工が困難、毛羽発生し易い。より数が900回/mを超える場合は、紡績糸の加工性低下、単繊維切れを生じ、毛羽が発生し易い。
【0021】
本発明の熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸の太さは、170〜1000dtex/本が好ましい。糸の太さが170dtex未満の場合は、紡績糸強度が低下する。製織が困難になる。糸の太さが1000dtex/本を超える場合は、所期の厚さの炭素繊維織物が作製できない。薄くできない。
【0022】
この熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸を構成する各材料を製造方法と共に説明する。
【0023】
[熱可塑性繊維]
本発明の熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸中の熱可塑性繊維の混合率は7〜45質量%である。7質量%未満の場合は、紡績性改善効果認められない。炭素化処理時の賦形性及び強度向上効果認められない。45質量%を超える場合は、炭素化時に強度低下、表面毛羽発生が顕著となる。
【0024】
熱可塑性繊維の種類は、ナイロン6、ナイロン66等のナイロン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリアリレート繊維、ポリ乳酸繊維等のポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)等のアクリル系繊維、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン系繊維など従来公知のいずれの熱可塑性繊維でも用いられる。
【0025】
熱可塑性繊維の炭素化収率は0.5質量%以上である。
【0026】
熱可塑性繊維の繊度は、0.5〜10dtexであり、1.0〜5.0dtexが好ましい。0.5dtex未満の場合は、開繊性が悪く、酸化繊維との均質な混合が難しい。10.0dtexを超える場合は、強度の高い紡績糸が得られない。
【0027】
熱可塑性繊維のクリンプ率は8〜20%が好ましい。この範囲外の場合は、紡績性が低く、糸切れ発生が多く。開繊性が悪く、酸化繊維との均質な混合が難しい。
【0028】
熱可塑性繊維のクリンプ数は3〜7ヶ/cmが好ましい。3ヶ/cm未満の場合は、絡合がおきにくく、紡績糸加工が難しい。7ヶ/cmを超える場合は、単繊維強度が低下し、繊維切れを生じ易い。
【0029】
熱可塑性繊維の乾強度は、20〜80mN/dtexが好ましい。熱可塑性繊維の乾伸度は、25〜50%が好ましい。乾強度が20mN/dtex未満の場合又は乾伸度が25%未満の場合は、酸化繊維との混合時の特性向上の寄与が低下する。
【0030】
熱可塑性繊維の平均綿長は、35〜100mmが好ましい。35mm未満の場合は、絡みがないため、紡績糸強度が低下する。100mmを超える場合は、繊維の均一分散性低下に伴い紡績困難である。
【0031】
[酸化繊維]
酸化繊維の原料となるプリカーサー繊維の種類は、PAN系、ピッチ系、フェノール系、レーヨン系など従来公知のいずれの繊維でも用いられる。なお、紡績加工を行う上では、強伸度の比較的高いPAN系繊維が最も好適である。
【0032】
例えばPAN系酸化繊維は、PAN系繊維を空気中、高温で処理することにより環化反応を生じさせ、酸素結合量を増加させて不融化、難燃化させる耐炎化処理によって得られる。
【0033】
酸化繊維の繊度は、0.5〜3.5dtexであり、1.0〜3.2dtexがより好ましい。0.5dtex未満の場合は、開繊性が悪く、酸化繊維との均質な混合が難しい。3.5dtexを超える場合は、強度の高い紡績糸が得られない。
【0034】
酸化繊維の平均綿長は、35〜150mmが好ましい。35mm未満の場合は、絡みがないため、紡績糸強度が低下する。150mmを超える場合は、繊維の均一分散性低下に伴い紡績が困難になる。
【0035】
酸化繊維の限界酸素指数(LOI)は、30〜60が好ましい。30未満の場合は、炭素化時に強度劣化、炭素繊維の微粉末発生し易い。60を超える場合は、紡績加工時の紡績糸の強度が低下する。
【0036】
酸化繊維の乾強度は、5mN/dtex以上が好ましい。乾強度が高いほど紡績性が向上する。5mN/dtex未満では、繊維切れが多発し紡績加工が難しい。
【0037】
酸化繊維の乾伸度は、5〜30%が好ましい。乾伸度が高いほど紡績性が向上する。5%未満では、繊維切れが多発し紡績加工が難しい。
【0038】
酸化繊維のクリンプ数は、2.4〜5.0ヶ/cmが好ましい。2.4ヶ/cm未満の場合は、紡績加工時、紡績糸強度低下する。5.0ヶ/cmを超える場合は、クリンプ処理時クリンプ切れが多発する。
【0039】
酸化繊維のクリンプ率は、8〜16%が好ましい。8%未満の場合は、紡績加工時、紡績糸強度が低下する。16%を超える場合は、クリンプ処理時クリンプ切れが多発する。
【0040】
[製織]
次に、この酸化繊維紡績糸を製織して、酸化繊維紡績糸織物を作製する。織り形態については平織り、綾織り、朱子織り、杉綾織り等のいずれでもよいが、賦形性の観点より平織りが最も好ましい。
【0041】
酸化繊維紡績糸の打込み本数は、特に限定されないが20〜60本/24.5mmが好ましい。
【0042】
[加圧熱処理]
本発明の酸化繊維織物は、上記紡績糸織物を加圧熱処理することにより得られる。上記熱可塑性繊維の熱的特性により最適条件は多少異なるが、下記範囲にて行われる。
【0043】
加圧熱処理雰囲気は、空気中などの酸化性雰囲気中で行う。
【0044】
加圧熱処理時の温度は、好ましくは100〜350℃、更に好ましくは110〜250℃である。100℃未満の場合は、織物への賦形性向上、強度向上、薄層化等の効果が得られない。350℃を超える場合は、繊維性能が劣化する。蓄熱又は発火等のトラブルを生ずる危険性がある。
【0045】
加圧熱処理時の圧力は、好ましくは0.5〜100MPa、更に好ましくは2〜50MPaである。0.5MPa未満の場合は、織物への賦形性向上、強度向上、薄層化等の効果が得られない。100MPaを超える場合は、繊維性能が劣化する。
【0046】
加圧熱処理時間は、上記加圧熱処理温度に0.1秒〜5分保持することが好ましい。
【0047】
加圧熱処理後の酸化繊維織物の目付は、100〜350g/m2が好ましい。100g/m2未満の場合は、織物強度が低下する。350g/m2を超える場合は、所期厚さの薄層織物が作製困難である。目付の調整は、紡績糸の太さ及び打込み本数により行うことができる。
【0048】
加圧熱処理後の酸化繊維織物の厚さは、0.15〜0.50mmが好ましい。0.15mm未満の場合は、織物強度が低下する。0.50mmを超える場合は、所期の炭素繊維織物の厚さに作れない。
【0049】
[炭素化処理]
本発明の炭素繊維織物は、上記酸化繊維織物を炭素化処理することにより得られる。即ち、上記酸化繊維織物を次に記載する炭素化条件で炭素化処理することにより、表面毛羽の少ない下記物性の炭素繊維織物が製造される。
【0050】
炭素化は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下、1000〜2800℃で行う。なお、昇温下で炭素化する場合の昇温速度は200℃/min以下が好ましい。1000℃未満の場合は、炭素繊維の固有の特性、すなわち耐熱性、強度保持性、電気伝導性等が発現されない。2800℃を超える場合は、繊維強度劣化に伴い、微粉末が多く発生する。最高温度での滞留時間は0.5〜20分が好ましい。
【0051】
炭素化時には、織物中の酸化繊維は重量換算で50〜60%、繊維の形態を保ち残留する。一方熱可塑性繊維は、溶融しかつ重量換算で0.5〜10%残留し、炭素繊維間を繋ぎとめる効果(バインダー効果)がある。この効果により、炭素繊維織物の賦形性、及び強度が向上するとともに、薄い、表面毛羽の少ない炭素繊維織物を得ることができる。
【0052】
炭素繊維織物の厚さは0.15〜0.60mmが好ましい。0.15mm未満の場合は、織物強度が低下する。0.60mmを超える場合は、厚さ方向の通電性が低下し、表面毛羽が増大する。
【0053】
炭素繊維織物の目付けは60〜210g/m2が好ましい。60g/m2未満の場合は、織物強度が低下する。210g/m2を超える場合は、所期厚さの薄層織物が作製困難であり、電気抵抗値が増加する。
【0054】
炭素繊維織物の嵩密度は0.25〜0.55g/m3が好ましい。0.25g/m3未満の場合は、織物強度が低下し、通電性が低下する。0.55g/m3を超える場合は、織物強度が低下し、表面毛羽が増大する。
【0055】
炭素繊維織物の電気抵抗値は4.0mΩ以下が好ましい。4mΩを超える場合は、通電性が低く、応用が難しい。
【0056】
炭素繊維織物の強度は25〜80N/cmが好ましい。25N/cm未満の場合は、取扱性が低下する。80N/cmを超える場合は、作製が困難である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各物性の測定は次の方法によった。
【0058】
[酸化繊維のLOI:限界酸素指数]
酸素と窒素の混合気体中にサンプルを配置し、燃焼・発火開始する酸素濃度(容積%)をLOIとする。
【0059】
[酸化繊維混入率]
紡績時の混打綿等の混合工程での投入重量比より算出する。
【0060】
[繊維特性:繊度、乾強度、乾伸度、クリンプ数、クリンプ率、平均繊維長]
JIS L 1015に基づいて測定している。
【0061】
[紡績糸の太さ]
紡績糸を長さ10m、各5本を120℃、1時間乾燥させ、得られた質量より算出する。
【0062】
[紡績糸のより数]
10cm長さを取り出し、倍率20倍の拡大鏡を用いてより数を測定し、m当たりに換算する。
【0063】
[紡績糸強力]
紡績糸をつかみ間隔100mmとし、引っ張り速度30mm/minで引っ張ったときの破断強力を紡績糸強力(N/本)とする。
【0064】
[織物厚さ]
直径5mmの円形圧板で厚さ方向に1.2Nの荷重(61.9kPa)を負荷したときの厚さを測定する。
【0065】
[織物目付け]
200mm×250mm織物を120℃で1時間乾燥した後の質量値より算出する。
【0066】
[織物強度]
幅50mm、長さ120mm以上のサンプルを、チャック間距離100mmの冶具に固定し、速度30mm/minで引っ張った時の破断強度を10mmに換算した値である。
【0067】
[電気抵抗値]
2枚の50mm角(厚さ10mm)の金メッキした電極で、炭素繊維紡績糸織物を電極が全面接触するように挟み、荷重10kPaを織物の厚さ方向かけたときの厚さ方向の電気抵抗値を測定する。
【0068】
[表面毛羽測定方法]
炭素繊維織物を幅50mm、長さ200mmに切り出す。図1に示すように、この切り出した炭素繊維織物2を外径8mm(曲率半径4mm)の金属製パイプ4に半周巻きつける。巻きつけた炭素繊維織物の端部側6を、質量約80g(厚さ10mm×幅30mm×長さ35mm)の金属板8で抑える。半周巻きつけた炭素繊維織物の最頂部の稜線部分10に沿って0.5mm以上の長さの毛羽数を測定する。
【0069】
測定は光学顕微鏡(倍率50倍)を用いて稜線部分を写真撮影する。測定点を5箇所として毛羽数を数え、その平均値を算出する。
【0070】
[実施例1〜5]
表1の条件で酸化繊維と熱可塑性繊維とを混合紡績し、表1に示す物性の紡績糸(単糸)を作製した。この紡績糸を用い、表1の条件で製織して平織物を作製し、表1の条件で加圧熱処理後、表1に示す物性の酸化繊維織物を得た。この織物を、不活性ガス中、表1に示す昇温勾配、昇温後到達した最高温度(表1では温度と表示)、最高温度での滞留時間(表1では時間と表示)で炭素化処理した。
【0071】
その結果、表1に示すように実施例1〜5のいずれにおいても表面毛羽量の少ない良好な物性の炭素繊維織物が得られた。
【0072】
【表1】

【0073】
[比較例1〜5]
表2の条件で酸化繊維と熱可塑性繊維とを混合紡績したが、比較例4では紡績時に繊維切断が発生し、紡績糸が作れなかった。比較例1〜3及び5については、表2に示す物性の紡績糸(単糸)が得られた。
【0074】
この紡績糸を用い、表2の条件で製織したが、比較例1、2では紡績糸強度が低いため織物が作れなかった。比較例3、5については、表2に示す物性の平織物が得られ、これを表2の条件で加圧熱処理後、表2に示す物性の酸化繊維織物を得た。この織物を、不活性ガス中、表2に示す昇温勾配、昇温後到達した最高温度(表2では温度と表示)、最高温度での滞留時間(表2では時間と表示)で炭素化処理した。
【0075】
その結果、表2に示すように比較例3、5のいずれにおいても表面毛羽量が多く、良好な物性の炭素繊維織物は得られなかった。
【0076】
表2中×で示す箇所が本発明の構成から逸脱している。
【0077】
【表2】

【0078】
[比較例6〜7及び実施例6]
表3の条件で酸化繊維と熱可塑性繊維とを混合紡績し、表3に示す物性の紡績糸(単糸)を作製した。この紡績糸を用い、表3の条件で製織して平織物を作製し、表3の条件で加圧熱処理後、表3に示す物性の酸化繊維織物を得た。この織物を、不活性ガス中、表3に示す昇温勾配、昇温後到達した最高温度(表3では温度と表示)、最高温度での滞留時間(表3では時間と表示)で炭素化処理した。
【0079】
その結果、表3に示すように実施例6においては表面毛羽量の少ない良好な物性の炭素繊維織物が得られたが、比較例6〜7においては表面毛羽量が多く、良好な物性の炭素繊維織物は得られなかった。
【0080】
表3中×で示す箇所が本発明の構成から逸脱している。
【0081】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】炭素繊維織物の表面のケバ数の測定方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
2 炭素繊維織物
4 金属製パイプ
6 端部側
8 金属板
10 稜線部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化繊維と熱可塑性繊維とが混合紡績されてなる紡績糸であって、熱可塑性繊維の炭素化収率が0.5質量%以上、熱可塑性繊維の繊度が0.5〜10.0dtex、酸化繊維の繊度が0.5〜3.4dtex、紡績糸中の熱可塑性繊維の混合率が7〜45質量%、紡績糸の乾強度が16mN/dtex以上、紡績糸のより数150〜900回/mである熱可塑性繊維混合酸化繊維紡績糸。
【請求項2】
請求項1に記載の紡績糸を製織して得た紡績糸織物を100〜350℃、0.5〜100MPaで加圧熱処理することを特徴とする、目付が100〜350g/m2、嵩密度が0.40〜0.95g/cm3の酸化繊維織物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の酸化繊維織物を不活性ガス中、1000〜2800℃の温度で熱処理することを特徴とする、目付が60〜210g/m2、厚さが0.14〜0.6mm、嵩密度が0.25〜0.55g/cm3の炭素繊維織物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−39843(P2007−39843A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226122(P2005−226122)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】