説明

熱可塑性補強材料

本発明は、特に靴産業のための、新種の熱可塑性補強材料、並びに、その製造方法に関する。この新規の熱可塑性補強材料は、植物繊維充填剤及び熱可塑性ホットメルト接着剤(いわゆる充填剤−プラスチック−コンパウンド)の予備アグロメレーションの予備配置された製造工程により得られ、これが押出の際に、充填剤が、一方では極めてコスト安価な天然に存在する、様々な由来の植物繊維から構成されるが、他方では65質量%までの量で使用できることを可能にし、この場合に、必要とされる材料特性、例えば、熱中の安定性、良好な曲げ強さ及び表面接着性は失われない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に靴産業のための、新種の熱可塑性補強材料、並びに、その製造方法に関する。靴産業のための補強材料には、特につま先キャップ及びかかとキャップ(Vorder- und Hinterkappe)、又は中底(Brandsohle)、側面補強材料、かかと裏張り又は滑りヒモ(Schlupfriem)が含まれる。これらは久しく靴産業において機械により作成した充填剤含有プラスチック部品の形で使用され、これは熱及び圧力作用を介して表材料(例えば皮革)及び裏張り材料(例えば皮革又はテキスタイル材料)と接着し、靴型に適合される。
【0002】
先行技術においては既に様々な補強材料が知られている。DE2621195Cには、平面物品/プレート物品の形で製造される補強材料が記載され、その際、担体材料を、さらになお充填剤を含有する、粉末状の溶融可能なプラスチック材料で被覆する。溶融可能なプラスチックとは、ポリエチレン、酢酸ビニル及びそのコポリマーが挙げられ、充填剤は例えば木粉又はチョーク粉末である。本発明の目的は、被覆中の充填剤の含分を高め、この場合にこの材料の強度を得ることであった。プラスチック粉末及び充填剤粉末の粒径分布が類似である場合に、50%までに充填剤含分を増加させることができることが見出された。これにより、この溶融性プラスチック粒子は充填剤粒子を完全に取り囲み、この結果、この粒子はプラスチックと同様に挙動する。通常は、この混合物は十分な接着特性を有さず、この結果、この混合物は、持続的に靴の胴部材料と接着するために、なおホットメルト接着剤被覆を備えなくてはならない。
【0003】
EP183192B2には、直接的に接着可能である靴補強材料が記載されている。結合剤としては、この場合に、例えばいわゆるホットメルト接着剤、ε−ポリカプロラクトンが約60℃のその低い融点のために使用され、この充填剤はプラスチック粉末又はプラスチックで覆われた有機又は無機粉末(これは結合剤中に溶解しないが、これと固く接着する)からなる。結合剤対充填剤の比は結合剤70〜20質量%対充填剤30〜80質量%であり、その際、充填剤は粒径50〜500μmを有しなくてはならない。
【0004】
更なる補強材料はWO00/41585A1、WO00/53416に記載されている。全てのこの材料の欠点は、テキスタイル又は非テキスタイル担体材料の使用が、靴複合体の機械による作成の場合に必要な強度を加熱した状態でこの複合体に付与するために、必要であることである。これによって、平面テープからの部品の打ち抜き及び研ぎ(周辺部の薄化)の場合に生じる廃棄物は、再度製造プロセスに返送されることができない。
【0005】
EP1525284B1には、特殊なホットメルト接着剤/充填剤混合物が記載され、これはMFI値(100℃、21.6kgでDIN ISO 1133により測定)2〜6cm3/10分、好ましくは3〜5cm3/10分を有し、これによって、担体なしで加工できる十分な固有安定性を有する。このためには、ホットメルト接着剤自体がMFR値(100℃、21.6kgでDIN ISO 1133により測定)2〜300cm3/10分、好ましくは10〜30cm3/10分を有し、この結合剤対充填剤の比は結合剤50〜95質量%対充填剤50〜5質量%であり、その際、充填剤は、粒径10〜500μmを有する球状、多角形粒子を有しなくてはならない。
【0006】
さらに、このコンパウンド/混合物は、表面接着性(タック(Tack)と呼ばれ、65℃でDIN EN 14510により測定)少なくとも10N〜60N、好ましくは15N〜30Nを有しなくてはならない。さらに、この接着値(DIN 53357により測定した剥離強さ)が表材料に対して少なくとも30N/5cmを有し、かつ、この長さ伸びが温度90℃での加熱棚中の5分間の貯蔵後に最大25%であることが必要である。
【0007】
この材料の廃棄物は、出発物質と同じ組成を有し、したがって、問題なく再使用されることができる。この材料の欠点は、比較的高い含分の結合剤であり、というのも、この生成物はより高い充填剤含分でもはや固く十分に結合せず、より高温で長さ方向においてばらばらになり、また冷却又は固化後にもろくもなるからである。
【0008】
したがって、より高い充填物含分でもなお十分な曲げ強さ、すなわち長さ方向強さ(Laengenfestigkeit)/長さ方向伸長(Laengenausdehnung)/及び良好な表面接着性、並びに剥離強さを有する、混合物又は方法を見出すという課題が課せられる。
【0009】
さらに、完成した熱可塑性補強材料が混和及び加工(Ein-und Verarbeiten)の際に特に熱中でばらばらになることなく、より大量に、すなわち、接着剤含分に対して65質量%までで使用可能である、天然に再生する原料、特に植物由来の天然に再生する原料を見出す、という課題が存在した。前述の課題は、意外なことに、本発明により解決されることができた。意外なことに、植物繊維充填剤及び熱可塑性ホットメルト接着剤の予備アグロメレーションの予備配置された(vorausgelagert)製造工程によりいわゆる充填剤−プラスチック−コンパウンドが得られことができ、これは押出の際に、充填剤が一方では極めてコスト安価な天然に存在する、様々な由来の植物繊維からであるが、他方では65質量%までの量で使用できることを可能にし、この場合に、必要とされる材料特性、例えば、熱中の安定性、良好な曲げ強さ及び表面接着性を失わせない。反対に、これは、上述の特性を十分に有し、したがって、達成しようとする目的のためには特に良好に適している。植物繊維充填剤、穀物わら繊維(Getreidestrohfaser)、例えばイネわら繊維又はコムギわら繊維は、特徴的な長さ1mm〜30mmを有し、これは好ましくは3〜10mmの長さで使用される。
【0010】
65質量%を超えるより高い充填剤含分では、ニーダー中でしばしばもはや十分な混合が保証されないか、或いは、安定でない、すなわちばらばらになるか若しくはより高温では長さ方向において伸長することがあり、これによってもはや加工可能でない材料が発生する。充填剤材料として特に全ての天然に再生する植物繊維がアグロメラートの形で適しており、これは相応する含分の熱可塑性ホットメルト接着剤と一緒に押出機中で熱及び圧力下で平面テープ又はシートへと問題なく加工されることができる。このテープ又はシートは次いで、打ち抜き機械中で成形部品へと打ち抜かれ、かつ、それ自体で靴製造において使用されることができる。
【0011】
植物繊維は、穀物わらからシュレッダー又は粉砕によって得られ、かつ、わずかな量の湿分しか含有せず、このため、植物繊維は付加的な乾燥なしに使用されることができる。このような植物繊維が、動物の敷きわら(Tierstreu)として使用できることが知られている。これらはしばしば炭酸カルシウムを炭酸カルシウム/石灰、チョーク/の形で含有する。これらの、本発明による植物繊維と組み合わせは、特に完成製品の曲げ強さに関して、本発明により同様に好ましく使用可能である。
【0012】
本発明による予備アグロメラートの製造方法は、例えばPallmann社のPlast AgglomeratorタイプPFV中で実施される。この中で、植物繊維、例えばわら玉(Strohball)を予備破砕(シュレッダー処理)し、計量供給容器中へと撹拌機を用いて輸送する。全ての材料成分は貯蔵サイロから連続的ターボ混合スクリューを用いて押出機に供給される。この計量供給された植物繊維/わら繊維、及び熱可塑性ホットメルト接着剤を、摩擦熱によりそれぞれのホットメルト接着剤の融点弱未満でアグロメレーションし、その際、湿分又は発生するガスを吸引する。このようにして製造したコンパウンドは適した押出機、プレートプレス若しくはカレンダーを用いて、又は射出成型法において、テープ物品及びプレート物品に加工することができる。この方法の利点は、植物繊維充填剤、例えばわら玉の予備乾燥が必要でないことである。これは、15質量%までの湿分でもって問題なく加工されることができ、このため、完成コンパウンドは1%までの湿分しか有しない。
【0013】
EP1525284B1による方法との相違点は、本発明によりコンパウンドの成分又は構成要素、すなわち、植物繊維充填剤及び熱可塑性ホットメルト接着剤の予備アグロメレーションがすぐさま押出機中で作業することを可能にすることにある。このようにして、EP1525284B1中でパラメーターにより記載されている特性の十分な維持下で、安定かつ特に曲げ強さのある生成物を、極めて高い量含分の植物繊維充填剤でもって得ることができる。この曲げ強さ及び極めて高い充填剤含分は、EP1525284B1の方法によっては実現されることができない。
【0014】
以下実施例は本発明をより詳細に考察している。試験結果は第1表にまとめてある。
【0015】
実施例1〜7は本発明による実施例である。実施例V1〜V3は比較例である。
【0016】
1.
150℃、10kgで測定してMFI値1〜25g/10分を有する35質量%の熱可塑性ポリウレタン、10質量%の、20〜40質量%のVA含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー及び10質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、かさ密度約250kg/m3、残留湿度9%未満及び微細含分(Feinanteil)2%未満を有する穀物わらペレット40質量%と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0017】
2.
150℃、10kgで測定してMFI値1〜25g/10分を有する10質量%の熱可塑性ポリウレタン、10質量%の、20〜40質量%のVA含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー及び30質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、かさ密度約250kg/m3、残留湿度9%未満及び微細含分2%未満を有する穀物わらペレット50質量%と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0018】
3.
150℃、10kgで測定してMFI値1〜25g/10分を有する35質量%の熱可塑性ポリウレタン、10質量%の、20〜40質量%のVA含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー及び15質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、かさ密度約250kg/m3、残留湿度9%未満及び微細含分2%未満を有する穀物わら顆粒40質量%と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0019】
4.
10質量%の、20〜40質量%のVA含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー及び40質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、かさ密度約250kg/m3、残留湿度9%未満及び微細含分2%未満を有する穀物わら顆粒50質量%と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0020】
5.
20質量%の、20〜40質量%のVA含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー及び20質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、かさ密度約250kg/m3、残留湿度9%未満及び微細含分2%未満を有する穀物わら顆粒60質量%と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0021】
6.
150℃、10kgで測定してMFI値1〜25g/10分を有する20質量%の熱可塑性ポリウレタン、10質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、かさ密度約250kg/m3、残留湿度9%未満及び微細含分2%未満を有する穀物わら顆粒65質量%と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0022】
7.
150℃、10kgで測定してMFI値1〜25g/10分を有する20質量%の熱可塑性ポリウレタン、10質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、45質量%のわら繊維及び20質量%を有するわら顆粒からなる65質量%の繊維充填剤と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0023】
比較試験V1〜V3はそれぞれ40、50及び60質量%の木粉を用いて実施した。
【0024】
V1:
150℃、10kgで測定してMFI値1〜25g/10分を有する35質量%の熱可塑性ポリウレタン、10質量%の、20〜40質量%のVA含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー及び15質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、40質量%の木粉と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0025】
V2:
10質量%の、20〜40質量%のVA含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー及び40質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、50質量%の木粉と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【0026】
V3:
20質量%の、20〜40質量%のVA含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマー及び20質量%の直鎖状ポリエステル ポリε−カプロラクトン(分子量分布40〜80000を有する)を、60質量%の木粉と一緒に予備アグロメレーションし、次いで押出機中で更に加工した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤/プラスチックコンパウンドの形の、靴産業のための熱可塑性補強材料であって、長さ1〜30mm、好ましくは3〜10mmを有する植物繊維充填剤の含分を65質量%までの量で有し、かつ、このコンパウンドがDIN 53121により測定した曲げ強さ1000〜2500Nを有し、このコンパウンドの両成分、すなわち、植物繊維充填剤及び熱可塑性ホットメルト接着剤を、押出前にアグロメレーションし、かつ、予備アグロメラートとして押出機中に導入し、ここで押出すことを特徴とする、ホットメルト接着剤/プラスチックコンパウンドの形の、靴産業のための熱可塑性補強材料。
【請求項2】
熱可塑性ホットメルト接着剤が、直鎖状ポリエステル、ポリカプロラクトン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、/HDPE/ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン又はこのプラスチックの混合物から選択されていることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性補強材料。
【請求項3】
植物繊維充填剤が、繊維長さ1〜30mm、好ましくは3〜10mmを有する予備アグロメレーションした形で使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性補強材料。
【請求項4】
無機充填剤を1質量%までの最大量で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の熱可塑性補強材料。
【請求項5】
植物繊維充填剤が、穀物わらからの再生有機植物繊維であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の熱可塑性補強材料。
【請求項6】
有機植物繊維及び熱可塑性ホットメルト接着剤からなる予備アグロメラートを、ニーダー中で溶融し、カレンダー又は押出機で平面テープ/平面シートへと加工することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の熱可塑性補強材料の製造方法。
【請求項7】
靴又は靴部品の製造における請求項1から6のいずれか1項記載の熱可塑性補強材料の使用。

【公表番号】特表2012−525875(P2012−525875A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508929(P2012−508929)
【出願日】平成22年4月24日(2010.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002536
【国際公開番号】WO2010/127781
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(504133899)ベーカー ギウリニ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】BK Giulini GmbH
【住所又は居所原語表記】Giulinistrasse 2,D−67065 Ludwigshafen,Germany
【Fターム(参考)】