説明

熱可塑性複合材料の製造方法及び光学素子

【課題】光学特性(青色光透過性,耐光性等)や熱安定性、金型転写性に優れた光学素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る該熱可塑性複合材料の製造方法は、熱可塑性樹脂に対し酸化防止剤を添加する第1の添加工程と、前記第1の添加工程後に、前記熱可塑性樹脂に対し無機粒子を添加する第2の添加工程と、前記第2の添加工程後に、前記熱可塑性樹脂に対し耐光安定剤を添加する第3の添加工程と、を備えており、当該製造方法によって製造された熱可塑性複合材料を成型したものが対物レンズ6等の光学素子に適用されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路などとして好適に用いられ、特に熱的に安定で、青色光透過性と耐光性に優れ、金型転写性に優れた熱可塑性複合材料の製造方法及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成型等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体等が知られている。
【0004】
近年、光ピックアップ装置は、記録密度の向上のため、青色光を用いる検討が進められている。ピックアップのような光学素子ユニットにおいては、熱的、光学的安定性を有する物質であることが求められている。
【特許文献1】特開2002−207101号公報
【特許文献2】特開2002−241560号公報
【特許文献3】特開2002−241569号公報
【特許文献4】特開2002−241592号公報
【特許文献5】特開2002−241612号公報
【特許文献6】特開2004−83813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プラスチックのように、熱による物性変動が大きい素材は、青色光を使用するピックアップに使用すると、球面収差の温度変動が大きく、安定した工学物性を確保することが困難な場合が多い。更に、環状オレフィンのようなプラスチックは、青色光に対する耐性は必ずしも十分でないのが現状である。
【0006】
また、ピックアップに用いられる場合、レーザー出力の向上による環境温度の上昇は、樹脂の耐熱性の課題を顕在化させつつある。そのため、樹脂を無機物質と複合化することで、耐熱性を向上させる試みが行われている。更に無機物質の光学物性と樹脂の光学物性の温度依存性が逆であることを利用して、複合材料としての温度特性を相殺する手法も提案されているが、通常熱可塑性樹脂に無機材料を複合化すると、複合材料を溶融した時の流動性が樹脂に比べて低下する場合が多く、金型の微細構造の複合材料への転写性が問題になる場合が多い。これまで提案されている複合材料では金型への転写性が不十分で、複合材料として実用的であるとは言い難かった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路などとして好適に用いられ、特に光学特性(青色光透過性,耐光性等)や熱安定性、金型転写性に優れた熱可塑性複合材料の製造方法及び光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため第1の発明に係る熱可塑性複合材料の製造方法は、
熱可塑性樹脂に対し酸化防止剤を添加する第1の添加工程と、
前記第1の添加工程後に、前記熱可塑性樹脂に対し無機粒子を添加する第2の添加工程と、
前記第2の添加工程後に、前記熱可塑性樹脂に対し耐光安定剤を添加する第3の添加工程と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
第1の発明に係る熱可塑性複合材料の製造方法においては、
前記第2の添加工程後で前記第3の添加工程前に、前記熱可塑性樹脂、前記酸化防止剤及び前記無機粒子を溶融混練する溶融混練工程を備えるのが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る熱可塑性複合材料の製造方法においては、
前記熱可塑性樹脂がシクロオレフィン樹脂を含むものである。
【0011】
第1の発明に係る熱可塑性複合材料の製造方法においては、
前記無機粒子の当該熱可塑性複合材料中に占める含有率が30〜70重量%であることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る熱可塑性複合材料の製造方法においては、
前記無機粒子の体積平均分散粒子径が2〜30nmであることが好ましい。
【0013】
第2の発明に係る光学素子は、
第1の発明に係る熱可塑性複合材料の製造方法で製造された熱可塑性複合材料を成型したものである。
【発明の効果】
【0014】
第1,第2の発明によれば、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路などとして好適に用いられ、光学特性(青色光透過性,耐光性等)や熱安定性、金型転写性に優れた熱可塑性複合材料及び光学素子を提供することができる(下記実施例参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は光ピックアップ装置1の概略構成を示す断面図である。
この図に示す通り、光ピックアップ装置1は、光源としての3種類の半導体レーザー発振器L1,L2,L3を有している。
【0016】
半導体レーザー発振器L1は、BD(ブルーレイディスク)10を記録媒体として情報の記録/再生を行う際に、波長350〜450nm中の特定波長(例えば405nm,407nm)の光束を出射するものである。なお、本実施の形態においては、BD10の保護層の厚さは0.1mmとなっている。
【0017】
半導体レーザー発振器L2は、DVD20を記録媒体として情報の記録/再生を行う際に、波長620〜680nm中の特定波長(例えば、655nm)の光束を出射するものであり、半導体レーザー発振器L3と一体化されて光源ユニットL4を形成している。なお、本実施の形態においては、DVD20の保護層の厚さは0.6mmとなっている。また、本明細書において、DVDとは、DVD−ROMや、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等、DVD系列の光情報記録媒体の総称である。
【0018】
半導体レーザー発振器L3は、CD30を記録媒体として情報の記録/再生を行う際に、750〜810nm中の特定波長(例えば、785nm)の光束を出射するものである。なお、本実施の形態においては、CD30の保護層の厚さは1.2mmとなっている。また、本明細書において、CDとは、CD−ROMや、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等、CD系列の光情報記録媒体の総称である。
【0019】
半導体レーザー発振器L1から出射される光束の光軸方向には、図1中下側から上側に向けてビームシェイパー40、ビームスプリッタ41、コリメートレンズ42、ビームスプリッタ43、1/4波長板44、絞り部材45、対物レンズ6が順に並んで配されている。対物レンズ6には、対物レンズ6を図1中上下方向に移動させる2次元アクチュエータ60が配されている。対物レンズ6との対向位置には、光情報記録媒体としてのBD10、DVD20又はCD30が配されるようになっている。
【0020】
また、ビームスプリッタ41に対し、図1中右側にはセンサーレンズ46及び光検出器47が順に並んで配されている。センサーレンズ46は、シリンドリカルレンズ460及び凹レンズ461を備えている。
【0021】
また、半導体レーザー発振器L2,L3から出射される光束の光軸方向には、図1中右側から左側に向けてビームスプリッタ48,コリメートレンズ49、ビームスプリッタ43が順に並んで配されている。ビームスプリッタ48の図1中上側にはセンサーレンズ50及び光検出器51が順に並んで配されている。センサーレンズ50は、シリンドリカルレンズ500及び凹レンズ501を備えている。
【0022】
続いて、光ピックアップ装置1における動作・作用を簡単に説明する。
BD10への情報の記録時やBD10中の情報の再生時には、半導体レーザー発振器L1が光束を出射する。この光束は、図1において実線でその光線経路を示すように、始めにビームシェイパー40を透過して整形され、ビームスプリッタ41を透過した後、コリメートレンズ42で平行光に変換される。次に、この光束は、ビームスプリッタ43及び1/4波長板44を透過して絞り部材45で絞られた後、対物レンズ6で集光されてBD10の情報記録面10a上に集光スポットを形成する。このとき、対物レンズ6は、その周辺に配置された2次元アクチュエータ60によってフォーカシングやトラッキングを行う。
【0023】
次に、集光スポットを形成した光は、BD10の情報記録面10aで情報ピットにより変調されて反射する。次に、この反射光は、対物レンズ6、1/4波長板44、ビームスプリッタ43及びコリメートレンズ42を透過してビームスプリッタ41で反射した後、センサーレンズ46により非点収差が与えられて、光検出器47に到達する。そして、光検出器47の出力信号を用いることにより、BD10中の情報の再生が行われる。
【0024】
DVD20への情報の記録時やDVD20中の情報の再生時には、半導体レーザー発振器L2が光を出射する。この光束は、図1において点線でその光線経路を示すように、始めにビームスプリッタ48を透過した後、コリメートレンズ49で平行光に変換される。次に、この光束は、ビームスプリッタ43で反射して、1/4波長板44を透過して絞り部材45で絞られた後、対物レンズ6で集光されてDVD20の情報記録面20a上に集光スポットを形成する。このとき、対物レンズ6は、その周辺に配置された2次元アクチュエータ60によってフォーカシングやトラッキングを行う。
【0025】
次に、集光スポットを形成した光は、DVD20の情報記録面20aで情報ピットにより変調されて反射する。次に、この反射光は、対物レンズ6、1/4波長板44を透過して、ビームスプリッタ43,48でそれぞれ反射した後、センサーレンズ50により非点収差が与えられて、光検出器51に到達する。そして、光検出器51の出力信号を用いることにより、DVD20中の情報の再生が行われる。
【0026】
CD30への情報の記録時やCD30中の情報の再生時には、半導体レーザー発振器L3が光を出射する。この光束は、図1において2点鎖線でその光線経路を示すように、始めにビームスプリッタ48を透過した後、コリメートレンズ49で平行光に変換される。次に、この光束は、ビームスプリッタ43で反射して、1/4波長板44を透過して絞り部材45で絞られた後、対物レンズ6で集光されてCD30の情報記録面30a上に集光スポットを形成する。このとき、対物レンズ6は、その周辺に配置された2次元アクチュエータ60によってフォーカシングやトラッキングを行う。
【0027】
次に、集光スポットを形成した光は、CD30の情報記録面20aで情報ピットにより変調されて反射する。次に、この反射光は、対物レンズ6、1/4波長板44を透過して、ビームスプリッタ43,48でそれぞれ反射した後、センサーレンズ50により非点収差が与えられて、光検出器51に到達する。そして、光検出器51の出力信号を用いることにより、CD30中の情報の再生が行われる。
【0028】
続いて、対物レンズ6の構成について詳細に説明する。
対物レンズ6は本発明に係る光学素子であり、各半導体レーザー発振器L1,L2,L3から出射された光束をBD10、DVD20,CD30の情報記録面10a,20a,30a上に集光する機能を有している。この対物レンズ6は単レンズであり、2つの光学面がともに非球面となっている。対物レンズ6の開口数NAは、半導体レーザー発振器L1,L2から出射される光束に対しては0.85、半導体レーザー発振器L3から出射される光束に対しては0.45〜0.51となっている。また、対物レンズ6の屈折率は、1.55となっている。
【0029】
対物レンズ6の2つの光学面のうち、少なくとも光源側の光学面は、図示しない中央側領域及び外周側領域に分割されている。
【0030】
中央側領域は、半導体レーザー発振器L1,L2,L3から出射される光束が透過する領域である。この中央側領域には、図示しない回折構造が形成されている。この回折構造は、光路差を発生させることによって半導体レーザー発振器L1,L2,L3からの各光束を、それぞれ対応する光情報記録媒体の情報記録面10a,20a,30aに集光させるものである。このような回折構造の形状としては、従来より公知の形状を用いることができる。
【0031】
外周側領域は、半導体レーザー発振器L1,L2から出射される光束が透過する領域である。この外周側領域は、半導体レーザー発振器L1,L2の2つの光束が透過する領域と、半導体レーザー発振器L2から出射される光束のみが透過する領域とに更に分割してもよい。
【0032】
以上の光ピックアップ装置1では、本発明に係る光学素子が、ビームシェイパー40、ビームスプリッタ41、コリメートレンズ42、ビームスプリッタ43、1/4波長板44、対物レンズ6、シリンドリカルレンズ460、凹レンズ461、ビームスプリッタ48、コリメートレンズ49、シリンドリカルレンズ500、凹レンズ501等に適用されており、これら光学部品を含む当該光学素子は、熱可塑性複合材料(後述参照)を成型したものとなっている。
【0033】
上記熱可塑性複合材料は、「熱可塑性樹脂」に対し「無機粒子」及び「添加剤」が添加されたものである。以下では、当該熱可塑性複合材料を構成する(1)熱可塑性樹脂、(2)無機粒子(無機粒子の製造方法及び表面修飾を含む。)及び(3)添加剤についてそれぞれ説明し、その後に(4)当該熱可塑性複合材料の製造方法、(5)その製造方法で製造された熱可塑性複合材料を用いた光学素子の製造方法及び(6)その製造方法で製造された熱可塑性複合材料の光学素子への適用例について説明する。
【0034】
(1)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、一般的な透明の熱可塑性樹脂であれば特に制限はなく用いることができるが、光学素子としての加工性を考慮すると、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくはシクロオレフィン樹脂であり、例えば、特開2003−73559号公報等に記載の化合物を挙げることができる。好ましい化合物の例を以下の表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
(2)無機粒子
無機粒子の含有率は、熱可塑性複合材料中で10重量%以上で90重量%以下であることが好ましい。無機粒子の含有率が10重量%以上であれば、無機粒子混合による物性改良効果を発揮させることができ、また90重量%以下であれば、必要な熱可塑性樹脂比率を維持すると共に、元来の熱可塑性樹脂の長所である加工性などの特性が損なわれることがない。さらに、無機粒子の熱可塑性複合材料中に占める含有率が30重量%以上で70重量%以下であると、加工性保持と熱的安定性向上のバランスが取れるため好ましい。
【0037】
無機粒子は、その一次粒径の体積平均分散粒径が30nm以下であることが好ましく、2nm以上で30nm以下であることがより好ましく、2nm以上で15nm以下であることが更に好ましい。体積平均分散粒径が30nm以下であれば、得られる熱可塑性複合材料において良好な透明性を得ることができる。ここでいう体積平均分散粒径とは、分散状態にある無機粒子を、同体積の球に換算した時の直径を言う。また、一次粒子30nm以下の粒子が凝集し、凝集粒径が30nm以上であっても、凝集物を解凝集させ分散させることで所望の透明性を確保することが可能であるが、一次粒子自体が30nm以上であると、それを粉砕し30nm以下の粒径の粒子を得ることは困難であるため、一次粒子の大きさが重要である。逆に、無機粒子の一次粒径の体積平均分散粒径が2nm以下であると、後述するように無機粒子の表面処理が困難になる場合があり好ましくなく、そもそも体積平均分散粒径が2nm以下といった微小の無機粒子を工学的に安定製造するのも非常に困難である。
【0038】
無機粒子の形状は、特に限定されるものではないが、好適には球状の微粒子が用いられる。また、粒径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
【0039】
無機粒子としては、例えば、酸化物微粒子が挙げられ、より具体的には、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム等、あるいは、リン酸塩、硫酸塩等、を挙げることができる。
【0040】
また、無機粒子として、半導体結晶組成の微粒子も好ましく利用できる。該半導体結晶組成には、特に制限はないが、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものが望ましい。具体的な組成例としては、例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO)、硫化錫(II、IV)(Sn(II)Sn(IV)S)、硫化錫(IV)(SnS)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al)、セレン化アルミニウム(AlSe)、硫化ガリウム(Ga)、セレン化ガリウム(GaSe)、テルル化ガリウム(GaTe)、酸化インジウム(In)、硫化インジウム(In)、セレン化インジウム(InSe)、テルル化インジウム(InTe)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII〜VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As)、セレン化砒素(III)(AsSe)、テルル化砒素(III)(AsTe)、硫化アンチモン(III)(Sb)、セレン化アンチモン(III)(SbSe)、テルル化アンチモン(III)(SbTe)、硫化ビスマス(III)(Bi)、セレン化ビスマス(III)(BiSe)、テルル化ビスマス(III)(BiTe)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(CuO)、セレン化銅(I)(CuSe)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS)、酸化タングステン(IV)(WO)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO)、酸化タンタル(V)(Ta)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO、Ti、Ti、Ti等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCrSe)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCrSe)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO)等が挙げられる。なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF1515や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
【0041】
これらの無機粒子は、1種類の無機粒子を用いてもよく、また複数種類の無機粒子を併用してもよい。また、複合組成の無機粒子を用いることも可能である。
【0042】
(2.1)無機粒子の製造方法及び表面修飾
無機粒子の体積平均粒径の下限としては2nm以上であることが好ましい。2nm以上であれば、比表面積が大きくなりすぎることがなく、熱可塑性樹脂との親和性を得るための表面処理に必要な処理剤を適切な範囲に設定することができる。すなわち、無機粒子の形態が球状である場合、総体積が同じであれば、比表面積は平均粒径に反比例するので、例えば、平均粒径が30nmから2nmになると、比表面積は15倍となる。30nmの無機粒子を用い、その表面処理剤の必要量が総体積の10%であったとすると、2nmの粒子を用いた場合には、表面処理にようする表面処理剤の量は15倍、すなわち複合材料より多くなり、この実現は不可能となる。
【0043】
無機粒子の表面処理方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、ハロゲン化金属やアルコキシ金属を原料に用い、水を含有する反応系において加水分解することにより、所望の酸化物微粒子を得ることができる。この際、微粒子の安定化のために有機酸や有機アミンなどを併用する方法も用いられる。より具体的には、例えば、二酸化チタン微粒子の場合、ジャーナル・オブ・ケミカルエンジニアリング・オブ・ジャパン第31巻1号21−28頁(1998年)や、硫化亜鉛の場合は、ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリー第100巻468−471頁(1996年)に記載された公知の方法を用いることができる。例えば、これらの方法に従えば、体積平均分散粒径が5nmの酸化チタンは、チタニウムテトライソプロポキサイドや四塩化チタンを原料として、適当な溶媒中で加水分解させる際に適当な表面修飾剤を添加することにより容易に製造することができる。また、超微粒子の硫化亜鉛は、ジメチル亜鉛や塩化亜鉛を原料とし、硫化水素あるいは硫化ナトリウムなどで硫化する際に、表面修飾剤を添加することにより製造することができる。表面修飾する方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、水が存在する条件下で加水分解により微粒子の表面に修飾する方法が挙げられる。この方法では、酸またはアルカリなどの触媒が好適に用いられ、微粒子表面の水酸基と、表面修飾剤が加水分解して生じる水酸基とが、脱水して結合を形成することが一般に考えられている。
【0044】
使用可能な表面修飾剤としては、例えば、シランカップリング剤:テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メチルフェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルフェノキシシランなどが挙げられる。
【0045】
また、チタンカップリング剤:テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0046】
その他、アルミネート系カップリング剤や、アミノ酸系分散剤、各種シリコンオイルを表面処理に用いることも可能である。
【0047】
これら表面処理剤は、反応速度などの特性が異なり、表面修飾の条件などに適した化合物を用いることができる。また、1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよい。さらに、用いる化合物によって得られる表面修飾微粒子の性状は異なることがあり、熱可塑性樹脂と無機粒子との熱可塑性複合材料を得るにあたって用いる熱可塑性樹脂との親和性を、表面修飾する際に用いる化合物を選ぶことによって図ることも可能である。
【0048】
表面修飾の割合は、特に限定されるものではないが、表面修飾後の微粒子に対して、表面修飾剤の割合が10〜99重量%であることが好ましく、30〜98重量%であることがより好ましい。
【0049】
(3)添加剤
各種の添加剤の分類については、幾つかの成書があるが、技術の進歩とともに分類自体が変化している。本願の分類は、「月刊ファインケミカル vol.33 NO.5 p.12 シーエムシー出版」の記載を参考にしている。添加剤としては、主に酸化防止剤及び耐光安定剤が用いられ、それ以外の他の添加剤が用いられてもよい。
【0050】
(3.1)酸化防止剤
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の併用が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、熱可塑性複合材料100質量部に対して好ましくは0.001〜20質量部、より好ましくは0.01〜10質量部である。
【0051】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0052】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0053】
あるいは、フェノール基を有するリン系酸化防止剤、6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピンのような化合物も好ましい。
【0054】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0055】
そのほか、ジフェニルアミン誘導体などのアミン系酸化防止剤、ニッケルや亜鉛のチオカルバメートなども酸化防止剤として用いることが出来る。
【0056】
(3.2)耐光安定剤
耐光安定剤は、光安定剤とも呼ばれるが、本明細書では耐光安定剤として記する。耐光安定剤は、クエンチャーと、ラジカル捕捉剤に大きく分けられる。ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、トリアジン系の光安定剤はクエンチャーとして分類され、ヒンダードアミン系耐光安定剤はラジカル捕捉剤に分類される。本実施形態においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤(HALS)を用いるのが好ましい。このようなHALSは具体例には、低分子量のものから中分子量、高分子量の中から選ぶことができる。
【0057】
例えば、比較的分子量の小さいものとして、LA−77(旭電化製)、Tinuvin765(CSC製)、Tinuvin123(CSC製)、Tinuvin440(CSC製)、Tinuvin144(CSC製)、HostavinN20(ヘキスト社製)中程度の分子量として、LA−57(旭電化製)、LA−52(旭電化製)、LA−67(旭電化製)、LA−62(旭電化製)、さらに分子量の大きいものとして、LA−68(旭電化製)、LA−63(旭電化製)、HostavinN30(ヘキスト社製)、Chimassorb944(CSC製)、Chimassorb2020(CSC製)、Chimassorb119(CSC製)、Tinuvin622(CSC製)、CyasorbUV−3346(Cytec製)、CyasorbUV−3529(Cytec製)、Uvasil299(GLC製)などが挙げられる。特に、成型体には、低、中分子量のHALSを用いるのが好ましく、膜状の熱可塑性複合材料には高分子量のHALSを用いることが好ましい。
【0058】
HALSは、ベンゾトリアゾール系の耐光安定剤などと組み合わせて用いられることも好ましい。たとえば、アデカスタブLA−32、LA−36、LA−31(旭電化工業製)、Tinuvin326、Tinuvin571、Tinuvin234、Tinuvin1130(CSC製)などが挙げられる。
【0059】
またHALSは、先述の各種酸化防止剤と併用されることが好ましい。HALSと酸化防止剤の組み合わせに特に制約は無く、フェノール系、リン系、硫黄系などとの組み合わせが可能であるが、特にリン系とフェノール系との組み合わせが好ましい。
【0060】
(3.3)その他の添加剤
熱可塑性複合材料の調製時や成型工程においては、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤については、格別限定はないが、先述した酸化防止剤、耐光安定剤以外に、熱安定剤、耐候安定剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、などが挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本明細書に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。また、造核剤の添加は、白濁防止の観点から好ましい。
【0061】
また、熱可塑性複合材料に、更に最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
【0062】
(4)熱可塑性複合材料の製造方法(熱可塑性複合材料の作製法と添加剤の添加法)
始めに、溶媒に溶解させた状態の上記熱可塑性樹脂に対し上記酸化防止剤を添加する(第1の添加工程)。第1の添加工程では、溶融中の熱可塑性樹脂に対し酸化防止剤を添加してもよい。
【0063】
第1の添加工程の処理を終えたら、その処理後の生成物(溶融中又は溶媒に溶解させた状態の熱可塑性樹脂や酸化防止剤等の混合物)に対し無機粒子を添加する(第2の添加工程)。
【0064】
第2の添加工程では、無機粒子は粉体ないし凝集状態のまま添加することが可能である。あるいは、液中に分散した状態で添加することも可能である。液中に分散した状態で添加する場合は、後述の溶融混練工程後に脱揮を行うことが好ましい。
【0065】
液中に分散した状態で添加する場合、あらかじめ凝集粒子を一次粒子に分散して添加することが好ましい。分散には各種分散機が使用可能であるが、特にビーズミルが好ましい。ビーズは各種の素材があるがその大きさは小さいものが好ましく、特に直径0.1mm以下、0.001mm以上のものが好ましい。無機粒子は表面処理された状態で加えられることが好ましいが、表面処理剤と無機粒子を同時に添加し、熱可塑性樹脂との複合化を行うインテグラルブレンドのような手法がありどのような手法を用いることも可能である。
【0066】
第2の添加工程の処理を終えたら、その処理後の生成物(溶融中又は溶媒に溶解させた状態の熱可塑性樹脂や酸化防止剤、無機粒子等の混合物)を溶融混練する(第1の溶融混練工程)。熱可塑性樹脂を無機粒子の存在下で重合したり、熱可塑性樹脂存在下で無機粒子を作製することも可能であるが、熱可塑性樹脂の重合や無機粒子の作製において、特殊な条件が必要になるから、溶融混練法を適用するのがよい。溶融混練法では、既成の手法で作製した熱可塑性樹脂や無機粒子を混合することで熱可塑性複合材料を作製できるため、通常安価な熱可塑性複合材料の作製が可能になる。
【0067】
第1の溶融混練工程においては、有機溶剤の使用も可能である。有機溶剤の使用で、溶融混練の温度を下げることができ、熱可塑性樹脂の劣化が抑制しやすくなる。その場合、溶融混練後に脱揮を行い、熱可塑性樹脂や酸化防止剤、無機粒子等の混合物中から有機溶剤を除去することが好ましい。
【0068】
第1の溶融混練工程に用いることのできる装置としては、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を挙げることができる。また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いてもよい。
【0069】
第2の添加工程及び第1の溶融混練工程では、無機粒子を一括で添加し混練してもよいし、無機粒子を段階的に分割添加して混練してもよい。この場合、押出機などの溶融混練装置では、段階的に添加する成分をシリンダーの途中から添加することも可能である。第1の溶融混練工程で熱可塑性樹脂を加熱する場合、上記の通り、第1の溶融混練工程前の第1の添加工程で熱可塑性樹脂に対し酸化防止剤を添加すると、熱可塑性樹脂の熱劣化を防止することができ、好ましい。熱可塑性樹脂に対し酸化防止剤を添加せずに無機粒子を添加すると、熱可塑性樹脂の劣化が顕著になるため、好ましくない。
【0070】
第1の溶融混練工程では、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの中から選ばれる一種の不活性ガスないしこれらのうち少なくとも一種を含む、二種以上の混合ガス下で処理が行なわれることが好ましい。酸素の含有量は少ないほど好ましく、特に0.1体積%以下が好ましい。炭酸ガスや、エチレンガス、水素ガスなど、他の一般的なガスの中で、熱可塑性複合材料の物性に悪影響を及ぼさないガスの場合は不活性ガスと混合して用いることも可能である。
【0071】
第1の溶融混練工程の処理を終えたら、その処理後の生成物(溶融中又は溶媒に溶解させた状態の熱可塑性樹脂や酸化防止剤、無機粒子等の溶融混練物)に対し耐光安定剤を添加する(第3の添加工程)。耐光安定剤は熱劣化を起こして着色する場合が多いため、第1の溶融混練工程後の当該第3の添加工程で添加されることが好ましい。
【0072】
第3の添加工程の処理を終えたら、その処理後の生成物(溶融中又は溶媒に溶解させた状態の熱可塑性樹脂や酸化防止剤、無機粒子、耐光安定剤等の混合物)を溶融混練し(第2の溶融混練工程)、熱可塑性複合材料の製造が完了する。
なお、第2の溶融混練工程の処理は上記第1の溶融混練工程の処理と同様のものであり、熱可塑性樹脂が溶媒に溶解させた状態である場合には、第2の溶融混練工程後にその溶媒を脱気等して除去してもよい。
【0073】
(5)光学素子(光学用レンズ)の製造方法
次いで、上記(4)の項目で説明した製造方法により熱可塑性複合材料から作製される光学素子の一つである光学用樹脂レンズの作製方法について説明する。
【0074】
まず、上記の通りに熱可塑性複合材料を調製し、次いで、得られた熱可塑性複合材料を成型する。成型方法としては、格別制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成型物を得る為には溶融成型が好ましい。溶融成型法としては、例えば、市販のプレス成型、市販の押し出し成型、市販の射出成型等が挙げられるが、射出成型が成型性、生産性の観点から好ましい。
【0075】
成型条件は使用目的、または成型方法により適宜選択されるが、例えば、射出成型における熱可塑性複合材料の温度は、成型時に適度な流動性を熱可塑性樹脂に付与して成型品のヒケやひずみを防止し、熱可塑性樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、更に、成型物の黄変を効果的に防止する観点から150℃〜400℃の範囲が好ましく、更に好ましくは200℃〜350℃の範囲であり、特に好ましくは200℃〜330℃の範囲である。
【0076】
射出成型においては、流動性向上のため炭酸ガスを可塑剤として使用する成型法を用いることが可能である。また、金型表面を誘導加熱することで転写性を高める手法も適用可能である。
【0077】
熱可塑性複合材料は、AMES試験に陰性であることが好ましい。AMES試験で陽性になる場合、使用者の健康を損なう可能性があるだけでなく、環境負荷を与える可能性がある。さらに、材料として不安定で、必要な安定性が得られない虞があるからである。
【0078】
成型物は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、本発明の光学素子の一つである光学用樹脂レンズとして用いられるが、その他の光学部品としても好適である。
【0079】
(6)光学素子への適用例
上記では、本発明に係る光学素子をビームシェイパー40、ビームスプリッタ41、コリメートレンズ42、ビームスプリッタ43、1/4波長板44、対物レンズ6、シリンドリカルレンズ460、凹レンズ461、ビームスプリッタ48、コリメートレンズ49、シリンドリカルレンズ500、凹レンズ501等に適用した例を示したが、当該光学素子はその他の光学部品にも適用することができる。その具体的な適用例としては、以下のようである。
【0080】
例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
【0081】
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
【0082】
これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適であり、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
【0083】
なお、本発明に係る光学素子は上記(4),(5)の項目の記載の通り製造されるようになっているが、その表面には、無機化合物、シランカップリング剤などの有機シリコン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂などからなるハードコート層を形成してもよい。ハードコート層の形成手段としては、熱硬化法、紫外線硬化法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法を挙げることができる。これによって、光学素子の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐摩耗性および耐水性などを向上させることができる。
【0084】
なお、本発明に係る光学素子においては、波長405nmの光透過率が3mm厚で70%以上であることが好ましい。70%未満であると、データの読み取り精度が下がるからである。無機粒子は、405nmの光を吸収しないものが多いが、熱可塑性樹脂は若干吸収する場合がある。このような時、無機粒子の分率を増大させることで、熱可塑性複合材料の405nmにおける光透過率を上げることが期待できる。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明の実施例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0086】
(1)試料の作製
(1.1)熱可塑性複合材料1,2の組成物
熱可塑性複合材料1,2の組成物として下記の熱可塑性樹脂、無機粒子及び添加剤を用いた。
熱可塑性樹脂:PMMA(PolyMethylMethAclylate,三菱レーヨン社製アクリペットVH)をMIBK(Methyl Isobutyl Ketone)に溶解後、水中で再沈させ、精製したものを用いた。
無機粒子:シリカ(日産化学製 MIBK−ST,一次粒子径12nm)
酸化防止剤:IRGANOX 1135(下記参照)
耐光安定剤:TINUVIN 571(下記参照)
【0087】
【化1】

【0088】
【化2】

【0089】
(1.1.1)熱可塑性複合材料1の作製
精製した熱可塑性樹脂をMIBKに溶解し、20重量%溶液とした。80℃とした熱可塑性樹脂100部含む溶液に対して酸化防止剤を2部添加し、5分攪拌した。さらに無機粒子が100部になるよう分散液を添加し、さらに10分攪拌した。その後、耐光安定剤1部を加え、さらに5分攪拌した。エバポレータで溶媒を除去した後、さらに100℃で12時間真空乾燥し、熱可塑性複合材料1を得た。
【0090】
(1.1.2)熱可塑性複合材料2の作製
熱可塑性複合材料1の作製で、酸化防止剤と耐光安定剤の添加順を逆にした以外は、すべて同じ手順で熱可塑性複合材料2を得た。
【0091】
(1.2)熱可塑性複合材料3〜10の組成物
熱可塑性複合材料3〜10(熱可塑性複合材料4を除く。)の組成物として下記の熱可塑性樹脂、無機粒子及び添加剤を用いた。
熱可塑性樹脂:シクロオレフィン樹脂(日本ゼオン社製 ゼオネックス330R)をTHF(TetraHydroFuran)に溶解後、メタノール中で再沈させ、精製したものを用いた。
無機粒子:気相法シリカ(デグサ製 R8200,一次粒子径12nm)
酸化防止剤:6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン
耐光安定剤:ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕
なお、熱可塑性複合材料3〜10の作製における溶融混練工程では、英弘精機製 ポリラボシステムを用いて行った(後述参照)。
【0092】
(1.2.1)熱可塑性複合材料3の作製
熱可塑性樹脂100部に酸化防止剤2部を混合し、窒素下、240℃で5分間溶融混練した。その後、100部の無機粒子を添加し270℃まで昇温し、10分間混練した後、耐光安定剤1部を添加し、さらに5分間溶融混練し、熱可塑性複合材料3を得た。
【0093】
(1.2.2)熱可塑性複合材料4の作製
熱可塑性複合材料3の作製で、無機粒子として気相法シリカ(デグサ製 OX50,一次粒子径40nm)をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理したものを用いた以外は、すべて同じ手順で熱可塑性複合材料4を得た。
【0094】
(1.2.3)熱可塑性複合材料5の作製
熱可塑性樹脂100部に酸化防止剤1部を混合し、窒素下、240℃で5分間溶融混練した。その後、100部の無機粒子を添加、270℃まで昇温し、10分間混練した後、酸化防止剤1部、耐光安定剤1部を添加し、さらに5分間溶融混練し、熱可塑性複合材料5を得た。
【0095】
(1.2.4)熱可塑性複合材料6の作製
熱可塑性樹脂100部に酸化防止剤1部、耐光安定剤0.5部を混合し、窒素下、240℃で5分間溶融混練した。その後、100部の無機粒子を添加、270℃まで昇温し、10分間混練した後、酸化防止剤1部、耐光安定剤0.5部を添加し、さらに5分間溶融混練し、熱可塑性複合材料6を得た。
【0096】
(1.2.5)熱可塑性複合材料7の作製
熱可塑性樹脂100部に耐光安定剤1部を混合し、窒素下、240℃で5分間溶融混練した。その後、100部の無機粒子を添加し270℃まで昇温し、10分間混練した後、酸化防止剤2部を添加し、さらに5分間溶融混練し、熱可塑性複合材料7を得た。
【0097】
(1.2.6)熱可塑性複合材料8の作製
熱可塑性樹脂100部に耐光安定剤1部、酸化防止剤1部を混合し、窒素下、240℃で5分間溶融混練した。その後、100部の無機粒子を添加し270℃まで昇温し、10分間混練した後、酸化防止剤1部を添加し、さらに5分間溶融混練し、熱可塑性複合材料8を得た。
【0098】
(1.2.7)熱可塑性複合材料9の作製
熱可塑性樹脂100部を窒素下、240℃で5分間溶融混練した。その後、100部の無機粒子を添加し270℃まで昇温し、10分間混練した後、耐光安定剤1部、酸化防止剤2部を添加し、さらに5分間溶融混練し、熱可塑性複合材料9を得た。
【0099】
(1.2.8)熱可塑性複合材料10の作製
熱可塑性樹脂をそのまま熱可塑性複合材料10とした。
【0100】
(1.3)熱可塑性複合材料11〜17の組成物
熱可塑性複合材料11〜17の組成物として下記の熱可塑性樹脂、無機粒子及び添加剤を用いた。
熱可塑性樹脂:シクロオレフィン樹脂(チコナ社製 TOPAS−5013)をシクロヘキサンに溶解後、メタノール中で再沈させ、精製したものを用いた。
無機粒子:アルミナ(大明化学製 TM−300,一次粒子径7nm)
酸化防止剤:4,4’-ブチリデンビス(6-ターシャリーブチル-3-メチルフェノール)
耐光安定剤:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
【0101】
(1.3.1)熱可塑性複合材料11の作製
熱可塑性樹脂100部にとキシレン10部、酸化防止剤2部を混合し、窒素下、120℃で5分間溶融混練した。その後、メチルトリメトキシシラン50部と200部の無機粒子を添加し140℃10分間混練した後、耐光安定剤1部を添加し、さらに5分間溶融混練した。その後、2軸押出機で270℃で減圧としてキシレンを脱揮し、熱可塑性複合材料11を得た。
【0102】
(1.3.2)熱可塑性複合材料12の作製
熱可塑性樹脂100部にとキシレン10部、酸化防止剤1部を混合し、窒素下、120℃で5分間溶融混練した。その後、メチルトリメトキシシラン50部と200部の無機粒子と酸化防止剤1部混合したものを添加し140℃10分間混練した後、耐光安定剤1部を添加し、さらに5分間溶融混練した。その後、2軸押出機で270℃で減圧とし、キシレンを脱揮し、熱可塑性複合材料12を得た。
【0103】
(1.3.3)熱可塑性複合材料13の作製
熱可塑性樹脂100部にとキシレン10部、酸化防止剤2部を混合し、窒素下、120℃で5分間溶融混練した。その後、メチルトリメトキシシラン5部と20部の無機粒子を添加し140℃10分間混練した後、耐光安定剤1部を添加し、さらに5分間溶融混練した。その後、2軸押出機で270℃で減圧とし、キシレンを脱揮し、熱可塑性複合材料13を得た。
【0104】
(1.3.4)熱可塑性複合材料14の作製
熱可塑性樹脂100部にとキシレン10部、酸化防止剤2部を混合し、窒素下、120℃で5分間溶融混練した。その後、メチルトリメトキシシラン100部と400部の無機粒子を添加し140℃10分間混練した後、耐光安定剤1部を添加し、さらに5分間溶融混練した。その後、2軸押出機で270℃で減圧とし、キシレンを脱揮し、熱可塑性複合材料14を得た。
【0105】
(1.3.5)熱可塑性複合材料15の作製
熱可塑性樹脂100部にとキシレン10部、酸化防止剤2部を混合し、窒素下、120℃で5分間溶融混練した。その後、メチルトリメトキシシラン50部と200部の無機粒子と耐光安定剤1部混合をしたものを添加し140℃10分間混練した。その後、2軸押出機で270℃で減圧とし、キシレンを脱揮し、熱可塑性複合材料15を得た。
【0106】
(1.3.6)熱可塑性複合材料16の作製
熱可塑性樹脂100部にとキシレン10部を混合し、窒素下、120℃で5分間溶融混練した。その後、メチルトリメトキシシラン50部と200部の無機粒子と酸化防止剤2部、耐光安定剤1部混合をしたものを添加し140℃10分間混練した。その後、2軸押出機で270℃で減圧とし、キシレンを脱揮し、熱可塑性複合材料16を得た。
【0107】
(1.3.7)熱可塑性複合材料17の作製
熱可塑性樹脂をそのまま熱可塑性複合材料17とした。
【0108】
(1.4)試料1〜17の作製
各熱可塑性複合材料1〜17を厚み1mm、縦横各10mmの金型に射出成型し、試料1〜17を得た(熱可塑性複合材料1〜17の数字部分が試料1〜17の数字部分に対応している)。射出成型時においては、各熱可塑性複合材料1〜17の温度を280℃とし、金型の温度を150℃とした。金型の片面には正方形状の面内に、幅、深さとも0.1mmの溝を、側面のゲート側から等間隔に9本設けられている。
【0109】
(2)試料の評価
(2.1)無機粒子含有率
各試料1〜17の無機粒子の含有率(重量%)を元素分析で算出した。その算出結果を下記表2に示す。
【0110】
(2.2)金型転写性
9本の溝を有する金型に各熱可塑性複合材料1〜17を射出成型した際(上記(1.4)参照)に、それら熱可塑性複合材料1〜17の表面に溝が転写されたかどうかで各試料1〜17の金型転写性を判断した。その金型転写性の判断結果を下記表2に示す。表2中、金型転写性の基準は下記の5段階評価とした。
5:9本の溝すべてを転写できた
4:7〜8本の溝を転写できた
3:5〜6本の溝を転写できた
2:3〜4本の溝を転写できた
1:2本以下の溝にしか転写できなかった
【0111】
(2.3)外観
各試料1〜17の外観を目視で確認した。その観察結果を下記表2に示す。
【0112】
(2.4)光学特性(初期透過率,透過率変化)
各試料1〜17に対して波長405nmの光を強度150mW/cmで1000時間照射し、各試料1〜17におけるその光の初期透過率(光照射直後の透過率)と透過率変化((1000時間経過後の透過率)−(初期透過率))とを測定した。その測定結果を下記表2に示す。
なお、各試料1〜17の透過率の測定方法はASTM D 1003に準拠した。
【0113】
(2.5)熱安定性
室温から100℃まで昇温してその温度から室温まで降温するという温度環境の変動を1サイクルとして、各試料1〜17を100サイクルの温度環境下に供し、各試料1〜17のひずみの発生の有無を目視で確認した。その確認結果を下記表2に示す。
【0114】
【表2】

【0115】
(3)まとめ
試料1,3〜6,11〜14と試料2,7〜10,15〜17とを比較すると、表2に示す通り、熱可塑性樹脂に対し酸化防止剤、無機粒子及び耐光安定剤をこの順に添加した試料1,3〜6,11〜14は、この条件を満たさない(酸化防止剤と耐光安定剤との添加順を逆にしたり、これら添加剤と無機粒子とを同時添加したり、これら添加剤を添加しなかったりした)試料2,7〜10,15〜17に比べて、金型転写性、外観、光学特性及び熱安定性に優れている。以上から、熱可塑性樹脂に対し酸化防止剤、無機粒子及び耐光安定剤をこの順に添加する製造方法が有用であることがわかる。
【0116】
この場合において、試料11,12と試料13,14とを比較すると、無機粒子の含有率が30〜70重量%の範囲内に存する試料11,12は、この条件を満たさない(無機粒子の含有率が30〜70重量%の範囲外に存する)試料13,14に比べて、外観や熱安定性に優れており、無機粒子の含有率を30〜70重量%の範囲内に収めることが有用であることもわかる。更に、試料3と試料4とを比較すると、無機粒子の一次粒子径が12nmで2〜30nmの範囲内の試料3は、この条件を満たさない(一次粒子径が40nmで2〜30nmの範囲外の)試料4に比べて、外観や光学特性に優れており、無機粒子の一次粒子径を2〜30nmの範囲内に収めることが有用であることもわかる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】光ピックアップ装置1の概略構成を示す図面である。
【符号の説明】
【0118】
1 光ピックアップ装置
6 対物レンズ(光学素子)
40 ビームシェイパー(光学素子)
41 ビームスプリッタ(光学素子)
42,49 コリメートレンズ(光学素子)
43,48 ビームスプリッタ(光学素子)
44 1/4波長板(光学素子)
460,500 シリンドリカルレンズ(光学素子)
461,501 凹レンズ(光学素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂に対し酸化防止剤を添加する第1の添加工程と、
前記第1の添加工程後に、前記熱可塑性樹脂に対し無機粒子を添加する第2の添加工程と、
前記第2の添加工程後に、前記熱可塑性樹脂に対し耐光安定剤を添加する第3の添加工程と、
を備えることを特徴とする熱可塑性複合材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱可塑性複合材料の製造方法において、
前記第2の添加工程後で前記第3の添加工程前に、前記熱可塑性樹脂、前記酸化防止剤及び前記無機粒子を溶融混練する溶融混練工程を備えることを特徴とする熱可塑性複合材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱可塑性複合材料の製造方法において、
前記熱可塑性樹脂がシクロオレフィン樹脂を含むことを特徴とする熱可塑性複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材料の製造方法において、
前記無機粒子の当該熱可塑性複合材料中に占める含有率が30〜70重量%であることを特徴とする熱可塑性複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材料の製造方法において、
前記無機粒子の体積平均分散粒子径が2〜30nmであることを特徴とする熱可塑性複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性複合材料の製造方法で製造された熱可塑性複合材料を成型したものであることを特徴とする光学素子。

【図1】
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【公開番号】特開2007−77271(P2007−77271A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266824(P2005−266824)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】