説明

熱可塑性高分子フィルム用の水性液、熱可塑性高分子フィルムへの表面層形成方法及び改質熱可塑性高分子フィルム

【課題】熱可塑性高分子フィルムに優れた帯電防止性を付与でき、同時に優れた耐ブロッキング性、透明性、防汚性及び耐溶剤性を付与できる水性液及びかかる水性液を用いる表面層形成方法並びに前記のような優れた性能を同時に有する改質熱可塑性フィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性高分子フィルムの表面に塗布する水性液として、特定のオルガノポリシロキサン樹脂水性液、特定の帯電防止剤水性液及び特定の樹脂バインダー水性液からなることを特徴とする水性液、及びかかる水性液を用いる表面層形成方法、並びに該表面層形成方法によって得られる改質熱可塑性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性高分子フィルム用の水性液、熱可塑性高分子フィルムの表面層の形成方法及び改質熱可塑性高分子フィルムに関する。各種の熱可塑性高分子フィルムが広く利用されている。しかし、熱可塑性高分子フィルムは、本来的に静電気を帯電し易く、かかる帯電により、その製造、加工及び使用の場面で様々な障害を引き起こしている。そのため、熱可塑性高分子フィルムには一般に、帯電防止剤による処理が施されているが、近年では、帯電防止性だけでなく、耐ブロッキング性、透明性、防汚性及び耐溶剤性が同時に要求されるようになっている。本発明はかかる要求に応える熱可塑性高分子フィルム用の水性液、熱可塑性高分子フィルムへの表面層形成方法及び改質熱可塑性高分子フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性高分子フィルムに帯電防止性及び耐ブロッキング性の良好な表面層を形成する方法として、帯電防止剤及び架橋剤等を使用する方法、帯電防止剤に架橋性単量体を共重合したビニル共重合体を使用する方法が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。また熱可塑性高分子フィルムに帯電防止性及び耐ブロッキング性の良好な表面層を形成する方法としては、帯電防止剤及びシリコーンオイルを使用する方法、帯電防止剤、バインダー樹脂及び微粒子を使用する方法、帯電防止剤及び防汚剤を使用する方法等が知られている(例えば特許文献3〜5参照)。
【0003】
ところが、従来提案されている方法では帯電防止性、耐ブロッキング性、透明性、防汚性及び耐溶剤性を同時に充足することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−147105号 公報
【特許文献2】特開2008−056711号 公報
【特許文献3】特開2002−012686号 公報
【特許文献4】特開2003−292654号 公報
【特許文献5】特開2008−020698号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題は、熱可塑性高分子フィルムに優れた帯電防止性を付与でき、同時に優れた耐ブロッキング性、透明性、防汚性及び耐溶剤性を付与できる水性液及びかかる水性液を用いる表面層形成方法並びに前記のような優れた性能を同時に有する改質熱可塑性フィルムを提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定のオルガノポリシロキサン樹脂水性液、特定の帯電防止剤水性液及び特定の樹脂バインダー水性液からなる水性液を用いることが正しく好適であることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、熱可塑性高分子フィルムの表面に塗布する水性液であって、下記のオルガノポリシロキサン樹脂水性液、帯電防止剤水性液及び樹脂バインダー水性液から成ることを特徴とする水性液に係る。また本発明は、かかる水性液を使用する熱可塑性高分子フィルムへの表面層形成方法及びかかる表面層形成方法により得られる改質熱可塑性高分子フィルムに係る。
【0008】
オルガノポリシロキサン樹脂水性液:下記の(1)〜(4)を全て満足するオルガノポリシロキサン樹脂を含有する水性液。
【0009】
(1)下記の化1で示されるシロキサン単位P、化2で示されるシロキサン単位Q及び化3で示されるシロキサン単位Rで構成された架橋構造体から成るものであること。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
化1〜化3において、
,R,R:炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基
X:エポキシ基を有する非ラジカル重合性の炭化水素基
Y:二重結合を有するラジカル重合性の炭化水素基
a,m,n:aは1〜3の整数、mは1又は2、nは0〜2の整数であって、a+m+n=4を満足する整数
b,i,j,k:bは1〜3の整数、iは1又は2、j及びkは0〜2の整数であって、b+i+j+k=4を満足する整数
c,p,q,r:cは1〜3の整数、pは1又は2、q及びrは0〜2の整数であって、c+p+q+r=4を満足する整数
【0014】
(2)1分子中にシロキサン単位Pを80〜99モル%、シロキサン単位Qを0.5〜15モル%及びシロキサン単位Rを0.5〜5モル%(合計100モル%)の割合で有するものであること。
【0015】
(3)水性液中に平均粒径が10〜100nmとなるよう分散されたものであること。
【0016】
(4)(化1中のa+nが2である場合のシロキサン単位Pのモル数と化2中のb+kが2であるシロキサン単位Qのモル数と化3中のc+rが2である場合のポリシロキサン単位Rのモル数との合計)/(化1中のa+nが3である場合のシロキサン単位Pのモル数と化2中のb+kが3であるシロキサン単位Qのモル数と化3中のc+rが3である場合のシロキサン単位Rのモル数との合計)=99/1〜80/20(モル比)の割合で有するものであること。
【0017】
帯電防止剤水性液:分子中にカチオン基を有する高分子化合物を帯電防止剤として含有する水性液。
【0018】
樹脂バインダー水性液:アクリル樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂及びエポキシ樹脂から選ばれる一つ又は二つ以上を樹脂バインダーとして含有する水性液。
【0019】
先ず、本発明に係る水性液(以下、本発明の水性液という)ついて説明する。本発明の水溶液は、熱可塑性高分子フィルムの表面に塗布する水性液であって、前記のオルガノポリシロキサン樹脂水性液、帯電防止剤水性液及び樹脂バインダー水性液から成るものである。
【0020】
本発明の水性液に供するオルガノポリシロキサン樹脂は、化1で示されるシロキサン単位P、化2で示されるシロキサン単位Q及び化3で示されるシロキサン単位Rで構成された架橋構造体である。
【0021】
化1で示されるシロキサン単位Pにおいて、aは1〜3の整数、mは1又は2、nは0〜2の整数であって、a+m+n=4を満足する整数である。かかるシロキサン単位Pには、1)化1中のaが1、mが1及びnが2である場合の1価のシロキサン単位、2)化1中のaが1、mが2及びnが1である場合の1価のシロキサン単位、3)化1中のaが2、mが1及びnが1である場合の2価のシロキサン単位、4)化1中のaが2、mが2及びnが0である場合の2価のシロキサン単位、5)化1中のaが3、mが1及びnが0である場合の3価のシロキサン単位が含まれる。化1中のmが2又は3の場合、Rは同時に同一であっても又は異なっていてもよい。
【0022】
化1で示されるシロキサン単位Pにおいて、Rとしては、1)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、2)フェニル基が挙げられるが、なかでもメチル基、エチル基、プロピル基及びフェニル基が好ましい。
【0023】
化1で示されるシロキサン単位Pの具体例としては、1)メチルジヒドロキシシロキサン単位、エチルジヒドロキシシロキサン単位、プロピルジヒドロキシシロキサン単位、イソプロピルジヒドロキシシロキサン単位、ブチルジヒドロキシシロキサン単位、イソブチルジヒドロキシシロキサン単位、ヘキシルジヒドロキシシロキサン単位、フェニルジヒドロキシシロキサン単位、ジメチルヒドロキシシロキサン単位、メチルエチルヒドロキシシロキサン単位、メチルプロピルヒドロキシシロキサン単位、メチルイソプロピルヒドロキシシロキサン単位、メチルブチルヒドロキシシロキサン単位、メチルイソブチルヒドロキシシロキサン単位、メチルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、メチルフェニルヒドロキシシロキサン単位、ジエチルヒドロキシシロキサン単位、エチルプロピルヒドロキシシロキサン単位、エチルイソプロピルヒドロキシシロキサン単位、エチルブチルヒドロキシシロキサン単位、エチルイソブチルヒドロキシシロキサン単位、エチルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、ジプロピルヒドロキシシロキサン単位、プロピルイソプロピルヒドロキシシロキサン単位、プロピルブチルヒドロキシシロキサン単位、プロピルイソブチルヒドロキシシロキサン単位、プロピルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、プロピルフェニルヒドロキシシロキサン単位、ジイソプロピルヒドロキシシロキサン単位、イソプロピルブチルヒドロキシシロキサン単位、イソプロピルイソブチルヒドロキシシロキサン単位、イソプロピルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、イソプロピルフェニルヒドロキシシロキサン単位、ジブチルヒドロキシシロキサン単位、ブチルイソブチルヒドロキシシロキサン単位、ブチルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、ブチルフェニルヒドロキシシロキサン単位、ジイソブチルヒドロキシシロキサン単位、イソブチルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、イソブチルフェニルヒドロキシシロキサン単位、ジヘキシルヒドロキシシロキサン単位、ヘキシルフェニルヒドロキシシロキサン単位、ジフェニルヒドロキシシロキサン単位等の1 価のシロキサン単位、2)メチルヒドロキシシロキサン単位、エチルヒドロキシシロキサン単位、プロピルヒドロキシシロキサン単位、イソプロピルヒドロキシシロキサン単位、ブチルヒドロキシシロキサン単位、イソブチルヒドロキシシロキサン単位、ヘキシルヒドロキシシロキサン単位、フェニルヒドロキシシロキサン単位、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルプロピルシロキサン単位、メチルイソプロピルシロキサン単位、メチルブチルシロキサン単位、メチルイソブチルシロキサン単位、メチルヘキシルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、ジエチルシロキサン単位、エチルプロピルシロキサン単位、エチルイソプロピルシロキサン単位、エチルブチルシロキサン単位、エチルイソブチルシロキサン単位、エチルヘキシルシロキサン単位、エチルフェニルシロキサン単位、ジプロピルシロキサン単位、プロピルイソプロピルシロキサン単位、プロピルブチルシロキサン単位、プロピルイソブチルシロキサン単位、プロピルヘキシルシロキサン単位、プロピルフェニルシロキサン単位、ジイソプロピルシロキサン単位、イソプロピルブチルシロキサン単位、イソプロピルイソブチルシロキサン単位、イソプロピルヘキシルシロキサン単位、イソプロピルフェニルシロキサン単位、ジブチルシロキサン単位、ブチルイソブチルシロキサン単位、ブチルヘキシルシロキサン単位、ブチルフェニルシロキサン単位、ジイソブチルシロキサン単位、イソブチルヘキシルシロキサン単位、イソブチルフェニルシロキサン単位、ジヘキシルシロキサン単位、ヘキシルフェニルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位等の2価のシロキサン単位、3)メチルシロキサン単位、エチルシロキサン単位、プロピルシロキサン単位、イソプロピルシロキサン単位、ブチルシロキサン単位、イソブチルシロキサン単位、ヘキシルシロキサン単位、フェニルシロキサン単位等の3価のシロキサン単位が挙げられるが、なかでもジメチルジヒドロキシシロキサン単位、ジエチルヒドロキシシロキサン単位、プロピルフェニルヒドロキシシロキサン単位、フェニルジヒドロキシシロキサン単位、ジメチルシロキサン単位、ジエチルシロキサン単位、フェニルヒドロキシシロキサン単位、フェニルシロキサン単位が好ましい。
【0024】
化2で示されるシロキサン単位Qにおいて、化2中のXは、エポキシ基を有する非ラジカル重合性の炭化水素基である。これには例えば、3−グリシドキシプロピル基、2−グリシドキシエチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等が挙げられるが、なかでも3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。化2中のiが2の場合、Xは同時に同一であっても又は異なっていてもよい。
【0025】
化2で示されるシロキサン単位Qにおいて、bは1〜3の整数、iは1又は2、i及びjは0〜2の整数であって、b+i+j+k=4を満足する整数である。かかるシロキサン単位Qには、1)化2中のbが1、iが1、jが1及びkが1である場合の1価のシロキサン単位、2)化2中のbが1、iが2、jが0及びkが1である場合の1価のシロキサン単位、3)化2中のbが1、iが1、jが0及びkが2である場合の1価のシロキサン単位、4)化2中のbが2、iが1、jが1及びkが0である場合の2価のシロキサン単位、5)化2中のbが2、iが1、jが0及びkが1である場合の2価のシロキサン単位、6)化2中のbが2、iが2、jが0及びkが0である場合の2価のシロキサン単位、7)化2中のbが3、iが1、jが0及びkが0である場合の3価のシロキサン単位が含まれる。
【0026】
また化2で示されるシロキサン単位Qにおいて、Rとしては、1)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、2)フェニル基が挙げられるが、なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましい。
【0027】
化2で示されるシロキサン単位Qの具体例としては、1)3−グリシドキシプロピルメチルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルエチルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルプロピルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルイソプロピルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルブチルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルイソブチルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルフェニルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルジヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルメチルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルエチルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルプロピルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルイソプロピルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルブチルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルイソブチルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルフェニルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルジヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルプロピルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルイソプロピルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルブチルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルイソブチルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルヘキシルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルフェニルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジヒドロキシシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)メチルシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)エチルシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)プロピルシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)イソプロピルシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)ブチルシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)イソブチルシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)ヘキシルシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)フェニルシロキサン単位、ビス(2−グリシドキシエチル)ヒドロキシシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)メチルシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)エチルシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)プロピルシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)イソプロピルシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)ブチルシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)イソブチルシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)ヘキシルシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)フェニルシロキサン単位、ビス(3−グリシドキシプロピル)ヒドロキシシロキサン単位等の1価のシロキサン単位、2)3−グリシドキシプロピルメチルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルエチルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルプロピルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルイソプロピルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルブチルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルイソブチルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルヘキシルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルフェニルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルヒドロキシシロキサン単位、2−グリシドキシエチルメチルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルエチルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルプロピルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルイソプロピルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルブチルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルイソブチルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルヘキシルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルフェニルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルプロピルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルイソプロピルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルブチルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルイソブチルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルヘキシルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルフェニルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルヒドロキシシロキサン単位等の2価のシロキサン単位、3)3−グリシドキシプロピルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルシロキサン単位等の3価のシロキサン単位が挙げられるが、なかでも3−グリシドキシプロピルジヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルヒドロキシシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルヒドロキシシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルシロキサン単位が好ましい。
【0028】
化3で示されるシロキサン単位Rにおいて、化3中のYは、二重結合を有するラジカル重合性の炭化水素基である。これには例えば、3−メタクロキシプロピル基から形成された炭化水素基、3−アクリロキシプロピル基から形成された炭化水素基、ビニル基から形成された炭化水素基、アリル基から形成された炭化水素基、イソプロペニル基から形成された炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
化3で示されるシロキサン単位Rにおいて、cは1〜3の整数、pは1又は2、q及びrは0〜2の整数であって、c+p+q+r=4を満足する整数である。かかるシロキサン単位Rには、1)化3中のcが1、pが1、qが1及びrが1である場合の1価のシロキサン単位、2)化2中のcが1、pが2、qが0及びrが1である場合の1価のシロキサン単位、3)化2中のcが1、pが1、qが0及びrが2である場合の1価のシロキサン単位、4)化2中のcが2、pが1、qが1及びrが0である場合の2価のシロキサン単位、5)化2中のcが2、pが1、qが0及びrが1である場合の2価のシロキサン単位、6)化2中のcが2、pが2、qが0及びrが0である場合の2価のシロキサン単位、7)化2中のcが3、pが1、qが0及びrが0である場合の3価のシロキサン単位が含まれる。
【0030】
また化3で示されるシロキサン単位Rにおいて、Rとしては、1)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、2)フェニル基が挙げられるが、なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましい。
【0031】
化3で示されるシロキサン単位Rの具体例としては、1)3−メタクリロキシプロピルメチルヒドロキシシロキサン単位、3−メタクリロキシプロピルエチルヒドロキシシロキサン単位、3−メタクリロキシプロピルプロピルヒドロキシシロキサン単位、3−メタクリロキシプロピルブチルヒドロキシシロキサン単位、3−メタクリロキシプロピルフェニルヒドロキシシロキサン単位、3−メタクリロキシプロピルジヒドロキシシロキサン単位、ビス(3−メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン単位、ビス(3−メタクリロキシプロピル)エチルシロキサン単位、ビス(3−メタクリロキシプロピル)ヒドロキシシロキサン単位、ビニルメチルヒドロキシシロキサン単位、ビニルエチルヒドロキシシロキサン単位、ビニルプロピルヒドロキシシロキサン単位、ビニルブチルヒドロキシシロキサン単位、ビニルフェニルヒドロキシシロキサン単位、ビニルジヒドロキシシロキサン単位、ジビニルメチルシロキサン単位、ジビニルエチルシロキサン単位、ジビニルヒドロキシシロキサン単位等の1価のシロキサン単位、2)3−メタクリロキシプロピルメチルシロキサン単位、3−メタクリロキシプロピルエチルシロキサン単位、3−メタクリロキシプロピルプロピルシロキサン単位、3−メタクリロキシプロピルヒドロキシシロキサン単位、ビニルメチルシロキサン単位、ビニルエチルシロキサン単位、ビニルプロピルシロキサン単位、ビニルヒドロキシシロキサン単位等の2価のシロキサン単位、3)3−メタクリロキシプロピルシロキサン単位等の3価のシロキサン単位が挙げられるが、なかでも3−メタクリロイルオキシプロピルジヒドロキシシラン単位、ビニルメチルヒドロキシ単位、3−メタクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン単位、ビニルメチルシロキサン単位、3−メタクリロイルオキシプロピルシラン単位が好ましい。
【0032】
本発明の水性液に供するオルガノポリシロキサン樹脂は、上記説明したように化1で示されるシロキサン単位P、化2で示されるシロキサン単位Q及び化3で示されるシロキサン単位Rで構成された架橋構造体から成るものであって、1分子中にシロキサン単位Pを80〜99モル%、シロキサン単位Qを0.5〜15モル%及びシロキサン単位Rを0.5〜5モル%(合計100モル%)の割合で有するものであるが、なかでも1分子中にシロキサン単位Pを85〜93モル%、シロキサン単位Qを6〜12モル%及びシロキサン単位Rを1〜3モル%(合計100モル%)の割合で有するものが好ましい。
【0033】
本発明の水性液に供するオルガノポリシロキサン樹脂は、上記説明したように、所定割合のシロキサン単位P、シロキサン単位Q及びシロキサン単位Rで構成された架橋構造体から成るものであって、(化1中のa+nが2である場合のシロキサン単位Pと化2中のb+kが2であるシロキサン単位Qと化3中のc+rが2である場合のポリシロキサン単位Rとの合計)/(化1中のa+nが3である場合のシロキサン単位Pと化2中のb+kが3であるシロキサン単位Qと化3中のc+rが3である場合のポリシロキサン単位Rとの合計)=99/1〜80/20(モル比)の割合で有するものであるが、なかでも前者/後者=97/3〜85/15(モル比)の割合で有するものが好ましい。
【0034】
本発明の水性液に供する以上説明したオルガノポリシロキサン樹脂は、公知の方法で合成できる。例えば、水系媒体中でシラノール基形成性ケイ素化合物を加水分解しつつ縮重合してオルガノポリシロキサンを生成させる方法で合成できる。
【0035】
本発明の水性液に供するオルガノポリシロキサン樹脂水性液は、前記したオルガノポリシロキサン樹脂を水性液中に平均粒子径が10〜100nmとなるよう分散させたものである。ここで平均粒子径は、動的レーザー散乱粒度分布計により測定される値である。オルガノポリシロキサン樹脂水性液中におけるオルガノポリシロキサンの濃度は特に制限されない。
【0036】
本発明の水溶液に供する帯電防止剤は、分子中にカチオン基を有する高分子化合物であるが、なかでも下記の化4で示される単量体及び化5で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上の単量体から形成された数平均分子量(GPC法によるプルラン換算の数平均分子量、以下同じ)5000〜1000000のビニル(共)重合体が好ましい。
【0037】
【化4】






【0038】
【化5】

【0039】
化4及び化5において、
:メチル基
:水素原子、メチル基又はヒドロキシエチル基
:水素原子又はメチル基
,R:水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基
:水素原子、炭素数が1〜6のアルキル基又は炭素数が2〜3のヒドロキシアルキル基
A:−COO−で示される有機基又は−CONH−で示される有機基
B:炭素数2〜6のアルキレン基
:塩化物イオン基又はアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基
:炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基、メチル硫酸イオン基又はエチル硫酸イオン基
【0040】
化4で示される単量体において、化4中のRはメチル基である。化4中のRとしては、1)水素原子、2)メチル基、3)2−ヒドロキシエチル基が挙げられるが、メチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。化4中のXとしては、1)塩化物イオン基、2)メチルスルホン酸イオン基、エチルスルホン酸イオン基、プロピルスルホン酸イオン基、ブチルスルホン酸イオン基等の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基が挙げられるが、塩化物イオン基又はメチルスルホン酸イオン基が好ましい。
【0041】
化5で示される単量体において、化5中のAで示される有機基はカルボニルオキシ基又はカルボニルアミノ基である。カルボニルオキシ基は、置換基Rが結合している炭素にカルボニルオキシ基中のカルボニル基が結合し、アルキレン基のBと該カルボニルオキシ基中のオキシ基が結合したものである。またカルボニルアミノ基は、置換基Rが結合している炭素にカルボニルアミノ基中のカルボニル基が結合し、アルキレン基のBと該カルボニルアミノ基中のアミノ基が結合したものである。化5中のBは、一方をカルボニルオキシ基中のオキシ基又はカルボニルアミノ基中のアミノ基と、他方をアンモニウム基の窒素と結合している炭素数2〜6のアルキレン基である。かかる炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられるが、エチレン基、トリメチレン基が好ましい。
【0042】
また化5で示される単量体において、化5中のRは水素原子又はメチル基である。化5中のR、Rとしては、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。またRとしては、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、3)2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基が挙げられるが、水素原子、メチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。化5中のYは1)メチルスルホン酸イオン基、エチルスルホン酸イオン基、プロピルスルホン酸イオン基、ブチルスルホン酸イオン基等の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基、2)メチル硫酸イオン基、若しくはエチル硫酸イオン基が挙げられるが、メチルスルホン酸イオン基、メチル硫酸イオン基、エチル硫酸イオン基が好ましい。
【0043】
本発明の水性液に供する帯電防止剤としてのビニル共重合体は、以上説明した化4で示される単量体及び化5で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上の単量体をラジカル(共)重合して得られるものである。ラジカル(共)重合それ自体は、公知の方法、通常は水又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いた水性溶液中にて行なうことができる。例えば、化4で示されるビニル単量体を水に溶解し、単量体を10〜45質量%含む水溶液を調整した後、窒素ガス雰囲気下において、これにラジカル開始剤を加え、50〜80℃で4〜8時間ラジカル重合反応させる。用いるラジカル開始剤としては、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであれば、その種類は特に制限されないが、水溶性のラジカル開始剤を用いるのが好ましい。かかる水溶性のラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。これらは、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸の如き還元性物質更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤として用いることもできる。ここで得られる帯電防止剤水性液中の帯電防止剤の濃度は特に制限されない。
【0044】
以上説明したラジカル(共)重合により得られるビニル(共)重合体の数平均分子量は、5000〜1000000とするが、7000〜100000とするのが好ましい。数平均分子量が5000未満であると、合成高分子フィルムに付与する帯電防止性が不充分になり、逆に数平均分子量が1000000を超えると、そのようなビニル重合体を合成高分子フィルムに均一塗布するのが難しくなる。
【0045】
本発明の水溶液に供する樹脂バインダーとしては、アクリル樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。本発明の水性液では、これらの一つ又は二つ以上を水系媒体中へ分散し、水性液として用いる。アクリル樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂等の構造は特に制限されない。また樹脂バインダー水性液中の樹脂バインダーの濃度も特に制限されない。
【0046】
本発明の水性液は、オルガノポリシロキサン樹脂水性液、帯電防止剤水性液及び樹脂バインダー水性液から成るもので、それぞれの濃度は特に制限されないが、固形分換算で、オルガノポリシロキサン樹脂を5〜30質量%、帯電防止剤を30〜70質量%、樹脂バインダーを10〜65質量%(合計100質量%)の割合で含有するものが好ましく、オルガノポリシロキサン樹脂を10〜20質量%、帯電防止剤を40〜60質量%、樹脂バインダーを20〜50質量%(合計100質量%)の割合で含有するものがより好ましい。
【0047】
次に、本発明に係る熱可塑性高分子フィルムへの表面層形成方法(以下、本発明の表面層形成方法という)について説明する。本発明の表面層形成方法は、前記した本発明の水性液を熱可塑性高分子フィルムの片表面又は両表面に、片表面1m当たりの固形分として0.01〜0.5gとなるよう塗布した後、乾燥して、表面層を形成することを特徴とするものである。
【0048】
本発明の水性液の塗布量は、熱可塑性高分子フィルムの片面1m当たり固形分として0.01〜0.5gの割合となるようにするが、0.04〜0.4gの割合となるようにするのが好ましい。塗布方法としては公知の方法を適用できる。これには例えば、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアナイフコート法、バーコート法、キスコート法等が挙げられる。
【0049】
最後に、本発明に係る改質熱可塑性高分子フィルム(以下、本発明の改質熱可塑性高分子フィルムという)について説明する。本発明の改質熱可塑性高分子フィルムは、前記した本発明の熱可塑性高分子フィルムへの表面層形成方法によって得られるものである。
【0050】
本発明の改質熱可塑性高分子フィルムに適用する合成高分子フィルムとしては、1)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル又はこれらの共重合ポリエステルから製膜されるポリエステル系フィルム、2)ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10等の脂肪族ポリアミドから製膜されるポリアミド系フィルム、3)1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと脂肪族ジカルボン酸とのポリアミド、脂肪族ジアミンと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とのポリアミド等の脂環族ポリアミドから製膜されるポリアミド系フィルム、4)ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタラミド等の芳香族ポリアミド等から製膜されるポリアミド系フィルムが挙げられる。なかでも、ポリエステル系フィルムに適用する場合に効果の発現が高い。
【発明の効果】
【0051】
以上説明した本発明には、熱可塑性高分子フィルムの表面に優れた帯電防止性、耐ブロッキング性、透明性、防汚性及び耐溶剤性を同時に付与できるという効果がある。
【0052】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【実施例】
【0053】
試験区分1(オルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−1)の調製)
・オルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−1)の調製
オクタメチルシクロテトラシロキサン91.8g(0.31モル)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.7g(0.024モル)及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.6g(0.01モル)の混合液を、ドデシルベンゼンスルホン酸1gを溶解したイオン交換水300gに加え、ホモミキサーで分散した後、更にホモジナイザーで均一乳化して、シラノール化合物の水系エマルジョンを得た。フラスコにドデシルベンゼンスルホン酸10g及びイオン交換水217gを仕込み、溶解した後、80〜85℃に昇温し、攪拌しながら、これに前記のシラノール化合物の水系エマルジョンを滴下して、縮重合反応を開始した。シラノール化合物の水系エマルジョンを2時間かけて滴下した後、85℃で1時間熟成した。室温まで冷却した後、炭酸ナトリウムで中和して縮重合反応を停止し、オルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−1)を調製した。この水性液の一部を採り、110℃で3時間、熱風乾燥して、固形物を得た。この固形物を更に洗浄し、乾燥した後、元素分析、ICP発光分光分析、NMRスペクトル分析及びFT−IRスペクトル分析等を行なったところ、オルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−1)の固形分は、1分子中にシロキサン単位(P−1)を90モル%、シロキサン単位(Q−1)を7モル%及びシロキサン単位(R−1)を3モル%(合計100モル%)の割合で有するオルガノポリシロキサン樹脂であった。また前記のオルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−1)を動的レーザー散乱粒度分布計(大塚科学社製、ELS−800)に供して平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は100nmであった。
【0054】
・オルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−2)〜(S−8)及び(r−1)〜(r−5)の調製
オルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−1)の場合と同様にして、オルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−2)〜(S−8)及び(r−1)〜(r−5)を調製した。
以上で調製した各オルガノポリシロキサン樹脂水性液の内容を表1にまとめて示した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1において、
D/T:(化1中のa+nが2である場合のシロキサン単位Pのモル数と化2中のb+kが2である場合のシロキサン単位Qのモル数と化3中のc+rが2である場合のシロキサン単位Rのモル数との合計)/(化1中のa+nが3である場合のシロキサン単位Pのモル数と化2中のb+kが3である場合のシロキサン単位Qのモル数と化3中のc+rが3である場合のシロキサン単位Rのモル数との合計)の割合(モル比)
【0057】
P−1:化1中のRがメチル基、a=1、m=2、n=1である場合のシロキサン単位と、化1中のRがメチル基、a=2、m=2、n=0である場合のシロキサン単位との混合物
P−2:化1中のRがエチル基、a=1、m=2、n=1である場合のシロキサン単位と、化1中のRがエチル基、a=2、m=2、n=0である場合のシロキサン単位との混合物
P−3:化1中のRがフェニル基とプロピル基、a=1、m=2、n=1である場合のシロキサン単位と、化1中のRがフェニル基とプロピル基、a=2、m=2、n=0である場合のシロキサン単位との等モル混合物
P−4:化1中のRがフェニル基、a=1、m=1、n=2である場合のシロキサン単位と、化1中のRがフェニル基、a=2、m=1、n=1である場合のシロキサン単位と化1中のRがフェニル基、a=3、m=1、n=0である場合のシロキサン単位との混合物
【0058】
Q−1:化2中のXが3−グリシドキシプロピル基、b=1、i=1、j=0、k=2である場合のシロキサン単位と、化1中のXが3−グリシドキシプロピル基、b=2、i=1、j=0、k=1である場合のシロキサン単位と、化1中のXが3−グリシドキシプロピル基、b=3、i=1、j=0、k=0である場合のシロキサン単位との混合物
Q−2:化2中のXが2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、Rがエチル基、b=1、i=1、j=1、k=1である場合のシロキサン単位と、化2中のXが2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチル基とRがエチル基、b=2、i=1、j=1、k=0である場合のシロキサン単位との混合物
【0059】
R−1:化3中のYが3−メタアクリロイルオキシプロピル基、c=1、p=1、q=0、r=2である場合のシロキサン単位と、化3中のYが3−メタアクリロイルオキシプロピル基、c=2、p=1、q=0、r=1である場合のシロキサン単位と、化1中のYが3−メタアクリロイルオキシプロピル、c=3、p=1、q=0、r=0である場合のシロキサン単位との混合物
R−2:化3中のYがビニル基、Rがメチル基、c=1、p=1、q=1、r=1である場合のシロキサン単位と、化3中のYがビニル基、Rがメチル基、c=2、p=1、q=1、r=0である場合のシロキサン単位との混合物
【0060】
試験区分2(帯電防止剤水性液の調製)
・帯電防止剤水性液(A−1)の調製
反応容器に水200gを仕込み、撹拌下に該反応容器内を窒素置換して80℃とした後、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド97.5g(0.6モル)と水150gとからなるビニル単量体水溶液と、5%過硫酸アンモニウム水溶液30gとを、2時間かけて同時に滴下し、ラジカル重合反応を行なった。次いで5%過硫酸アンモニウム水溶液30gを1時間かけて追加した後、反応温度を80℃に保持して6時間ラジカル重合反応を続け、帯電防止剤水性液(A−1)を調製した。この水性液の一部を採り、精製して分析した結果、反応物は化4中のRがメチル基、Rがメチル基、Xが塩化物イオン基である場合の化4で示される単量体から形成された数平均分子量30000のビニル重合体(A−1)であった。これを本発明の水性液に供する帯電防止剤水性液(A−1)とした。
【0061】
・帯電防止剤水性液(A−2)〜(A−15)の調製
帯電防止剤水性液(A−1)の場合と同様にして、帯電防止剤水性液(A−2)〜(A−15)を調製した。以上で合成した各帯電防止剤水性液の内容を表2及び表3にまとめて示した。
【0062】
【表2】










【0063】
【表3】

【0064】
表2及び表3において、
Me:メチル基
Et:エチル基
Hex:ヘキシル基
EtOH:2−ヒドロキシエチル基
PrOH:2−ヒドロキシプロピル基
Cl:塩化物イオン基
MeSO:メチルスルホン酸イオン基
BuSO:ブチルスルホン酸イオン基
MeSO:メチル硫酸イオン基
EtSO:エチル硫酸イオン基
COO:カルボニル基
CONH:カルボニルアミノ基
Er:エチレン基
Pr:トリメチレン基
HM:ヘキサメチレン基
【0065】
試験区分3(樹脂バインダー水性液の種類)
表4に記載した樹脂バインダー水性液(B−1)〜(B−6)を用意した。
【0066】
【表4】

【0067】
試験区分4(本発明の水性液の調製)
・実施例1
試験区分1で調製したオルガノポリシロキサン樹脂水性液(S−1)を固形分換算で10部、試験区分2で調製した帯電防止剤水性液(A−1)を固形分換算で45部及び試験区分3で用意した樹脂バインダー水性液(B−1)を固形分換算で45部の割合で混合し、更に水で希釈して、固形分濃度5%の水性液を調製した。
【0068】
・実施例2〜23及び比較例1〜10
実施例1の水性液と同様にして、実施例2〜23及び比較例1〜10の水性液を調製した。ここで調製した各例の水性液の内容を表5にまとめて示した。









































【0069】
【表5】

【0070】
表5において、
割合:固形分換算の使用量(部)
【0071】
試験区分5(調製した水性液のポリエチレンテレフタレートフィルムへの塗布及びその評価)
・ポリエチレンテレフタレートフィルムへの本発明の水性液の塗布
極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを280〜300℃で溶融押し出しし、15℃の冷却ロールで冷却して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを周速の異なる85℃の一対のロール間で縦方向に3.5倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムを得た。次に、試験区分1で調製した各例の固形分濃度5%の水性液を、更に延伸されて製品となる二軸延伸フィルムの片表面1m当たり固形分として0.05gとなるよう、前記の一軸延伸フィルムの片表面にキスコート法により3.5m/秒の塗布速度で塗布し、70℃の熱風で乾燥して、一軸延伸コーティングフィルムを得た。最後に、一軸延伸コーティングフィルムをテンターにより98℃で横方向に3.5倍延伸し、200〜210℃で熱固定して、製品としての厚さ100μmの二軸延伸コーティングフィルムを得た。得られた二軸延伸コーティングフィルムについて以下の評価を行なった。結果を表6にまとめて示した。
【0072】
・帯電防止性の評価
各例の二軸延伸コーティングフィルムを、20℃で相対湿度30%の条件下に24時間調湿した後、同条件でコーティング面の表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が1×1011Ω未満
○:表面比抵抗が1×1011Ω以上〜1×1012Ω未満
△:表面比抵抗が1×1012Ω以上〜1×1013Ω未満
×:表面比抵抗が1×1013Ω以上
【0073】
・耐ブロッキング性の評価
各例の二軸延伸コーティングフィルムから20cm×20cmの正方形の試料片を切り出し、この試料片とコーティング処理していないことだけが異なる二軸延伸ポリエステルフィルムとをコーティング面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、50℃にて24時間保持した後、重ねた状態のフィルムを10mm幅に切断して試験片とし、この試験片について双方のフィルム間の剥離力を測定して、耐ブロッキング性を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:剥離力が5mN/10mm未満
○:剥離力が5mN/10mm以上〜8mN/10mm未満
△:剥離力が8mN/10mm以上〜15mN/10mm未満
×:剥離力が15mN/10mm以上
【0074】
・透明性の評価
各例の二軸延伸コーティングフィルムを20℃で相対湿度65%の条件下に12時間以上調湿した後、ヘイズメーター(東洋精機社製の商品名DIRECT READING HAZE MATER)を用いてヘイズを測定し、測定値の10回の平均値を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:ヘイズが20%未満
○:ヘイズが20%以上50%未満
△:ヘイズが50%以上70%未満
×:ヘイズが70%以上
【0075】
・防汚性
各例の二軸延伸コーティングフィルムのコーティング面上に指先を押し付けて指紋を付け、ネル布でふき取った後の、指紋跡部分を目視により観察し、下記の基準で評価した。
◎:指紋跡が残っていない。
○:指紋跡がわずかに残っている。
×:指紋跡が明らかに残っている。
【0076】
・耐溶剤性
各例の二軸延伸コーティングフィルムのコーティング面にメチルエチルケトンを一滴たらし、乾燥後のフィルム外観を観察して、下記の基準で評価した。
◎:フィルム外観に変化なし。
○:フィルム外観にわずかに白化あり。
△:フィルム外観にやや白化あり。
×:フィルム外観に明らかな白化又は剥離等の著しい変化あり。
【0077】
【表6】

【0078】
表6の結果からも明らかなように、本発明の水性液を塗布した各実施例では、ポリエチレンテレフタレートフィルムに、優れた帯電防止性を付与でき、同時に優れた耐ブロッキング性、透明性、防汚性及び耐溶剤性を付与できるが、他の水性液を塗布した各比較例では、帯電防止性、耐ブロッキング性、透明性、防汚性及び耐溶剤性のうちで少なくともいずれか一つが著しく悪く、実用上、大きな問題がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性高分子フィルムの表面に塗布する水性液であって、下記のオルガノポリシロキサン樹脂水性液、帯電防止剤水性液及び樹脂バインダー水性液から成ることを特徴とする水性液。
オルガノポリシロキサン樹脂水性液:下記の(1)〜(4)を全て満足するオルガノポリシロキサン樹脂を含有する水性液。
(1)下記の化1で示されるシロキサン単位P、化2で示されるシロキサン単位Q及び化3で示されるシロキサン単位Rで構成された架橋構造体から成るものであること。
【化1】

【化2】

【化3】

(化1〜化3において、
,R,R:炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基
X:エポキシ基を有する非ラジカル重合性の炭化水素基
Y:二重結合を有するラジカル重合性の炭化水素基
a,m,n:aは1〜3の整数、mは1又は2、nは0〜2の整数であって、a+m+n=4を満足する整数
b,i,j,k:bは1〜3の整数、iは1又は2、j及びkは0〜2の整数であって、b+i+j+k=4を満足する整数
c,p,q,r:cは1〜3の整数、pは1又は2、q及びrは0〜2の整数であって、c+p+q+r=4を満足する整数)
(2)1分子中にシロキサン単位Pを80〜99モル%、シロキサン単位Qを0.5〜15モル%及びシロキサン単位Rを0.5〜5モル%(合計100モル%)の割合で有するものであること。
(3)水性液中に平均粒径が10〜100nmとなるよう分散されたものであること。
(4)(化1中のa+nが2である場合のシロキサン単位Pのモル数と化2中のb+kが2であるシロキサン単位Qのモル数と化3中のc+rが2である場合のシロキサン単位Rのモル数との合計)/(化1中のa+nが3である場合のシロキサン単位Pのモル数と化2中のb+kが3であるシロキサン単位Qのモル数と化3中のc+rが3である場合のシロキサン単位Rのモル数との合計)=99/1〜80/20(モル比)の割合で有するものであること。
帯電防止剤水性液:分子中にカチオン基を有する高分子化合物を帯電防止剤として含有する水性液。
樹脂バインダー水性液:アクリル樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂及びエポキシ樹脂から選ばれる一つ又は二つ以上を樹脂バインダーとして含有する水性液。
【請求項2】
帯電防止剤が、下記の化4で示される単量体及び化5で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上の単量体から形成された数平均分子量5000〜1000000のビニル(共)重合体である請求項1記載の水性液。
【化4】

【化5】

(化4及び化5において、
:メチル基
:水素原子、メチル基又はヒドロキシエチル基
:水素原子又はメチル基
,R:水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基
:水素原子、炭素数が1〜6のアルキル基又は炭素数が2〜3のヒドロキシアルキル基
A:−COO−で示される有機基又は−CONH−で示される有機基
B:炭素数2〜6のアルキレン基
:塩化物イオン基又はアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基
:炭素数が1〜4のアルキルスルホン酸イオン基、メチル硫酸イオン基又はエチル硫酸イオン基
【請求項3】
固形分換算で、オルガノポリシロキサン樹脂を5〜30質量%、帯電防止剤を30〜70質量%及び樹脂バインダーを10〜65質量%(合計100質量%)の割合で含有する請求項1又は2記載の水性液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの項記載の水性液を、熱可塑性高分子フィルムの片表面又は両表面に、片表面1m当たりの固形分として0.01〜0.5gとなるよう塗布した後、乾燥して、表面層を形成することを特徴とする熱可塑性高分子フィルムへの表面層形成方法。
【請求項5】
熱可塑性高分子フィルムがポリエステル系フィルムである請求項4記載の熱可塑性高分子フィルムへの表面層形成方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の熱可塑性高分子フィルムへの表面層形成方法によって得られる改質熱可塑性高分子フィルム。

【公開番号】特開2011−127049(P2011−127049A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288656(P2009−288656)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】