説明

熱圧着装置及び電気部品の実装方法

【課題】簡素な構成の熱圧着装置で、接着剤を用いて実装方式の異なる複数の電気部品を効率良く実装可能な実装技術を提供する。
【解決手段】本発明の熱圧着装置は、実装方式の異なる複数の電気部品を一括して熱圧着を行い実装するためのものであり、剛性材料からなるステージ2と、ステージ2に装着され弾性材料からなる圧着部材3と、圧着部材3に対して上方に対向配置され、上下動可能に構成された加熱機構4とを有する。加熱機構4の本体部40には、熱圧着に使用する接着剤に対する加熱領域に応じた大きさの加熱押圧面40aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体チップやフレキシブルプリント配線板等の電気部品を配線基板上に実装する技術に関し、特に接着剤を用いて実装方式の異なる複数の電気部品を液晶表示装置用の配線基板上に実装する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置(LCD)用のガラス基板上にICチップ(ベアチップ)やフレキシブルプリント配線板を直接実装する方法として、異方導電性接着剤を用いる方法が知られている。
【0003】
このようなCOG(CHIP ON GLASS)、FOG(FILM ON GLASS)方式の実装では、例えば図3(a)(b)に示すように、LCDパネル102を設けたガラス基板101の実装領域101aに異方導電性接着フィルム103、104を配置し、それぞれの上にICチップ105、フレキシブルプリント配線板106を搭載した後に、金属製の熱圧着ヘッド107、108を用いてICチップ105、フレキシブルプリント配線板106を加圧・加熱して熱圧着実装を行う。
【0004】
しかしながら、このような従来の実装方法では、COG実装、FOG実装という実装方式の異なる複数の電気部品に対して別個独立した工程が必要であり、実装効率が悪い等の問題がある。
【0005】
これに対し、近年、熱圧着ヘッドとして、例えばエラストマーからなる弾性圧着部材を用いて熱圧着を行う技術が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
この従来技術によれば、従来各実装方式の電気部品毎に行っていた各実装工程を一括して行うことが可能になるため、実装効率を向上させることができる。
【0006】
しかし、このような従来技術では、例えば図4に示すように、上下動可能な弾性圧着部材201を有する熱圧着ヘッド200を上下動可能に構成するとともにステージ300側に熱源301を配置する必要があるため、既存の熱圧着装置と比較して装置構成が複雑化するという問題がある。
【0007】
また、従来技術では、熱圧着の際にガラス基板101側から実装領域101aの全体を加熱することになるため、実装領域101aに形成された配線パターン等にダメージを与えるおそれがあるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−86635号公報
【特許文献2】特開2006−245554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、簡素な構成の熱圧着装置で、接着剤を用いて実装方式の異なる複数の電気部品を効率良く実装可能な実装技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、剛性材料からなるステージと、前記ステージに装着され弾性材料からなる圧着部材と、前記圧着部材に対して上方に対向配置され、上下動可能に構成された加熱機構とを有する熱圧着装置である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記加熱機構が、当該熱圧着に使用する接着剤に対する加熱領域に応じた大きさの加熱押圧面を有するものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2のいずれか1項記載の熱圧着装置を用い、電気部品を配線基板上に実装する電気部品の実装方法であって、前記電気部品を、その接続側面を上方に向けた状態で前記ステージの前記圧着部材上に配置するとともに、当該電気部品上に接着剤を介して前記配線基板を配置し、前記加熱機構を下降させ前記配線基板を前記電気部品に対して押圧することにより、当該配線基板と前記電気部品とを熱圧着する工程を有するものである。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記接着剤として、結着樹脂中に導電粒子が分散された異方導電性接着フィルムを用いるものである。
請求項5記載の発明は、請求項3又は4のいずれか1項記載の発明において、前記配線基板が、液晶表示装置用の配線パターンが形成された基板であることを特徴とする。
本発明は、実装方式の異なる複数の電気部品を一括して熱圧着を行い実装するための熱圧着装置であって、剛性材料からなるステージと、前記ステージに装着され弾性材料からなる圧着部材と、前記圧着部材に対して上方に対向配置され、上下動可能に構成された加熱機構とを有し、前記加熱機構は、当該熱圧着に使用する接着剤に対する加熱領域に応じた大きさの加熱押圧面を有する熱圧着装置である。
本発明は、上述した熱圧着装置を用い、電気部品を配線基板上に実装する電気部品の実装方法であって、実装方式の異なる複数の電気部品を、その接続側面を上方に向けた状態で前記ステージの前記圧着部材上に配置するとともに、当該電気部品上に接着剤を介して前記配線基板を配置し、前記加熱機構を下降させ前記配線基板を前記電気部品に対して押圧することにより、当該配線基板と当該電気部品とを一括して熱圧着する工程を有する電気部品の実装方法である。
本発明では、前記接着剤として、結着樹脂中に導電粒子が分散された異方導電性接着フィルムを用いる場合にも効果的である。
本発明では、前記配線基板が、液晶表示装置用の配線パターンが形成された基板である場合にも効果的である。
【0011】
本発明装置の場合、剛性材料からなるステージに弾性材料からなる圧着部材を装着し、上下動可能に構成された加熱機構を圧着部材に対して上方に対向配置したことから、ステージ側に熱源を配置する必要はなく、既存の熱圧着装置に多少の改造を施すだけで済む簡素な構成の熱圧着装置を提供することができる。
また、本発明によれば、弾性材料からなる圧着部材がステージ側に設けられており確実に固定することができるので、ファインピッチの電極を有する電気部品の接続の際においても、安定して熱圧着を行うことができる。
本発明において、加熱機構が、当該熱圧着に使用する接着剤に対する加熱領域に応じた大きさの加熱押圧面を有する場合には、熱圧着の際に例えば基板側から電気部品の実装領域、即ち接着剤の広がる領域と同等の領域のみを加熱することができるため、液晶表示装置等の配線パターンへのダメージを確実に回避することができる。
【0012】
そして、本発明装置並びに方法によれば、従来各実装方式の電気部品毎に行っていた実装工程を一括して行うことができ、工程数を大幅に削減することができるので、例えば液晶表示装置の製造の際における異方導電性接着剤を用いた実装効率を大幅に向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡素な構成の熱圧着装置で、接着剤を用いて実装方式の異なる複数の電気部品を効率良く実装可能な実装技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る熱圧着装置の実施の形態を示す部分断面図
【図2】(a)(b):同熱圧着装置を用いた実装方法の実施の形態を示す部分断面工程図
【図3】(a):従来技術に係る熱圧着装置を用いた実装方法の例を示す斜視図(b):同従来技術に係る熱圧着装置を用いた実装方法の例を示す側面図
【図4】他の同従来技術に係る熱圧着装置を用いた実装方法の例を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る熱圧着装置の実施の形態を示す部分断面図、図2(a)(b)は、同熱圧着装置を用いた実装方法の実施の形態を示す部分断面工程図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の熱圧着装置1は、金属等の剛性材料からなるステージ2を備えている。
このステージ2は、鉛直方向には移動しないように固定された状態で設置されている。なお、ステージ2を水平方向に移動可能に構成することもできる。
【0017】
ステージ2の上面部分には凹部2aが形成されており、この凹部2aには、プレート状のエラストマーからなる圧着部材3が凹部2aに密着するように取り付けられている。
【0018】
そして、後述するように、圧着部材3上には、例えばICチップやフレキシブル基板等の実装方式の異なる複数の電気部品10と、配線基板12とが、結着樹脂21中に導電粒子22が分散された異方導電性接着フィルム(接着剤)20を挟んで載置されるようになっている(図1においては、説明の都合上一つの電気部品10のみが示されている。)。
【0019】
圧着部材3は、その上面側に位置する圧着面3aが水平となるように配置される。そして、圧着部材3の圧着面3aは、電気部品10の頂部10aの面積より大きくなるように構成されている。
【0020】
本発明の場合、圧着部材3のエラストマーの硬さは特に限定されることなないが、接続信頼性を向上させる観点からは、ゴム硬度が40以上80以下のものを用いることが好ましい。
【0021】
ゴム硬度が40未満のエラストマーは、電気部品に対する圧力が不十分で初期抵抗及び接続信頼性が劣るという不都合があり、ゴム硬度が80より大きいエラストマーは、接着剤のフィレット部分に対する圧力が不十分で結着樹脂中にボイドが発生して接続信頼性が劣るという不都合がある。
【0022】
なお、本明細書では、エラストマーのゴム硬度として、JIS S 6050に準拠する規格を適用するものとする(温度条件は室温:5〜35℃)。
【0023】
このようなエラストマーとしては、天然ゴム、合成ゴムのいずれも用いることができるが、耐熱性、耐圧性の観点からは、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0024】
なお、本発明の場合、圧着部材3の厚さは電気部品の厚さより厚ければ特に限定されることなないが、接続信頼性を向上させる観点からは、0.1〜2cmに設定することが好ましい。
【0025】
一方、ステージ2の圧着部材3の上方には、圧着部材3と対向する位置に加熱機構4が配設されている。
【0026】
この加熱機構4は金属製の本体部40を有し、この本体部40内には、温度制御可能なヒーター5が設けられている。また、加熱機構4の本体部40は、図示しない駆動機構によって鉛直方向に上下動するように構成されている。
【0027】
さらに、本実施の形態の場合、加熱機構4の本体部40は、熱圧着に使用する接着剤に対する加熱領域に応じた大きさの水平な加熱押圧面40aを有している。
【0028】
例えば、図1に示す例の場合、加熱機構4の加熱押圧面40aは、電気部品10の本体部分と同様の形状で、かつ、熱圧着の際に異方導電性接着フィルム20の広がる領域と同等の領域の大きさ(面積)に形成されている。
【0029】
なお、フレキシブル基板(図示せず)に対しては、当該フレキシブル基板の接着剤によって接着される領域と同様の形状で、かつ、熱圧着の際に接着剤の広がる領域と同等の大きさ(面積)に形成された加熱押圧面を有する加熱機構(図示せず)を用いるとよい。
【0030】
本実施の形態において電気部品10の実装を行うには、図2(a)に示すように、電気部品10をステージ2の圧着部材3の圧着面3a上に配置する(実際上は、上述したように複数の電気部品10をステージ2の圧着部材3の圧着面3a上に配置する)。
【0031】
この場合、本実施の形態では、各電気部品10を、その接続側面、即ち電極であるバンプ11が設けられた側の面10bを上方に向けた状態で圧着部材3上に配置する。
【0032】
そして、これらの電気部品10上に異方導電性接着フィルム20を配置し、さらに配線基板12を、電極パターン13が形成された側の面12aを下にした状態で異方導電性接着フィルム20上に配置する。
【0033】
その後、図2(b)に示すように、加熱機構4を下降させ、配線基板12の裏側面12bに加熱機構4の加熱押圧面40aを押し付けて位置決め(仮圧着)を行い、さらに、200℃程度の温度で本圧着を行う。
【0034】
これにより、当該熱圧着の際、異方導電性接着フィルムを、溶融粘度が1.0×102mPa・s以上1.0×105mPa・s以下となるように加熱する。
【0035】
ここで、熱圧着の際の異方導電性接着フィルムの溶融粘度が1.0×102mPa・s未満の場合は、熱圧着時の結着樹脂の流動性が大きく、ボイドが発生して初期抵抗及び接続信頼性が劣るという不都合があり、溶融粘度が1.0×105mPa・sより大きい場合は、熱圧着時に接続部分において結着樹脂が排除しきれず、初期抵抗及び接続信頼性が劣るという不都合がある。
【0036】
なお、本圧着時の圧力は、電気部品1個当たり4MPa程度で10秒程度とするとよい。
【0037】
以上述べたように本実施の形態においては、剛性材料からなるステージ2に弾性材料からなる圧着部材3を装着し、上下動可能に構成された加熱機構4を圧着部材3に対して上方に対向配置したことから、ステージ2側に熱源を配置する必要はなく、既存の熱圧着装置に多少の改造を施すだけで済む簡素な構成の熱圧着装置を提供することができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、弾性材料からなる圧着部材3がステージ2側に設けられており確実に固定することができるので、ファインピッチの電極を有する電気部品の接続の際においても、安定して熱圧着を行うことができる。
【0039】
さらに、本実施の形態では、加熱機構4が、熱圧着に使用する接着剤に対する加熱領域に応じた大きさの加熱押圧面40aを有することから、熱圧着の際に配線基板12側から電気部品の実装領域、即ち接着剤の広がる領域と同等の領域のみを加熱することができるため、液晶表示装置等の配線パターンへのダメージを確実に回避することができる。
【0040】
そして、本実施の形態によれば、弾性材料からなる圧着部材3による押圧により、例えば、図2(b)に示すように、ICチップ等の電気部品10の周囲の接着剤フィレット部23に対してもボイドの生じないように加圧することができるので、従来各実装方式の電気部品毎に行っていた実装工程を一括して行うことができる。その結果、実装工程数を大幅に削減することができ、例えば液晶表示装置の製造の際における異方導電性接着剤を用いた実装効率を大幅に向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、電気部品としてICチップ、フレキシブル基板を実装する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、抵抗器、コンデンサ等を実装する場合に適用することはもちろんである。
【0042】
また、上述の実施の形態においては、異方導電性接着フィルムを用いて電気部品を実装する場合を例にとって説明したが、ペースト状の異方導電性接着剤を用いることも可能であり、さらに、導電粒子を含有しない接着剤を用いることも可能である。
【0043】
さらにまた、上述の実施の形態においては、熱圧着ヘッドの圧着部材についても、上記実施の形態のものに限られず、例えば、実装する電気部品に対応して複数の圧着部材を設けることもできる。
【0044】
加えて、本発明は液晶表示装置用のガラス基板上に電気部品を実装する場合のみならず、種々の配線基板上に電気部品を実装する場合に適用することができる。
ただし、本発明は液晶表示装置用のガラス基板上に電気部品を実装する場合に特に実装効率を向上させることができるものである。
【符号の説明】
【0045】
1……熱圧着装置
2……ステージ
3……圧着部材
4……加熱機構
5……ヒーター
10……電気部品
20……異方導電性接着フィルム(接着剤)
40……本体部
40a…加熱押圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性材料からなるステージと、
前記ステージに装着され弾性材料からなる圧着部材と、
前記圧着部材に対して上方に対向配置され、上下動可能に構成された加熱機構とを有する熱圧着装置。
【請求項2】
前記加熱機構は、当該熱圧着に使用する接着剤に対する加熱領域に応じた大きさの加熱押圧面を有する請求項1記載の熱圧着装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項記載の熱圧着装置を用い、電気部品を配線基板上に実装する電気部品の実装方法であって、
前記電気部品を、その接続側面を上方に向けた状態で前記ステージの前記圧着部材上に配置するとともに、当該電気部品上に接着剤を介して前記配線基板を配置し、
前記加熱機構を下降させ前記配線基板を前記電気部品に対して押圧することにより、当該配線基板と前記電気部品とを熱圧着する工程を有する電気部品の実装方法。
【請求項4】
前記接着剤として、結着樹脂中に導電粒子が分散された異方導電性接着フィルムを用いる請求項3記載の電気部品の実装方法。
【請求項5】
前記配線基板が、液晶表示装置用の配線パターンが形成された基板である請求項3又は4のいずれか1項記載の電気部品の実装方法。
【請求項6】
実装方式の異なる複数の電気部品を一括して熱圧着を行い実装するための熱圧着装置であって、
剛性材料からなるステージと、
前記ステージに装着され弾性材料からなる圧着部材と、
前記圧着部材に対して上方に対向配置され、上下動可能に構成された加熱機構とを有し、
前記加熱機構は、当該熱圧着に使用する接着剤に対する加熱領域に応じた大きさの加熱押圧面を有する熱圧着装置。
【請求項7】
請求項6記載の熱圧着装置を用い、電気部品を配線基板上に実装する電気部品の実装方法であって、
実装方式の異なる複数の電気部品を、その接続側面を上方に向けた状態で前記ステージの前記圧着部材上に配置するとともに、当該電気部品上に接着剤を介して前記配線基板を配置し、
前記加熱機構を下降させ前記配線基板を前記電気部品に対して押圧することにより、当該配線基板と当該電気部品とを一括して熱圧着する工程を有する電気部品の実装方法。
【請求項8】
前記接着剤として、結着樹脂中に導電粒子が分散された異方導電性接着フィルムを用いる請求項7記載の電気部品の実装方法。
【請求項9】
前記配線基板が、液晶表示装置用の配線パターンが形成された基板である請求項7又は8のいずれか1項記載の電気部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−48300(P2013−48300A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264673(P2012−264673)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2007−194160(P2007−194160)の分割
【原出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】