説明

熱安定化成形組成物

【課題】既知の組成物よりも良好な熱老化特性を有する成形組成物を提供し、それにより、高い連続使用温度で使用することができる成形物品をを提供する。
【解決手段】熱安定剤として金属粉末を含む非繊維強化熱可塑性成形組成物に関し、該金属粉末は最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、該金属粉末中の金属は、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。そして該組成物は、前記金属粉末の次に、最大でも50,000g/molのMwを有する熱可塑性ポリアミド、または少なくとも20℃だけ異なるTmeltまたはTgを有する少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのブレンド、または第2の熱的安定剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリアミドと、微細分散化金属粉末を含む熱安定化系とを含む熱的安定化熱可塑性成形組成物、ならびに該成形組成物の高温用途での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
成形物品の高温使用用途は、本明細書では、成形物品がその通常の耐用寿命中に少なくとも140℃の温度に頻繁に到達するおよび/またはより長い期間到達する熱源と接触している用途であると理解される。熱源は発熱デバイスまたは被加熱デバイスでもよいし、あるいは少なくとも140℃の温度の条件に成形物品がさらされる周囲環境でもよい。このような高温使用用途は、電気、電子および自動車産業で使用される物品の場合には定常的に経験される。被加熱デバイスまたは発熱デバイスの例は、エンジンまたはその要素、および半導体などの電子デバイスである。自動車セグメントでは、高温使用用途はいわゆるフード下(under−the−hood)またはボンネット下(under−the−bonnet)の用途で定常的に見られ、本明細書では高温自動車用途とも称される。従って本発明は、特に電気、電子および自動車産業で使用するための成形物品に関する。
【0003】
電気、電子および自動車産業のための成形物品、ならびにこれらの用途のために使用される熱可塑性材料に基づく成形組成物は、通常、成形された組成物のために良好な寸法安定性、高い熱変形温度(HDT)、ならびに高引張強さ、引張弾性率および疲労などの良好な機械特性を含む複雑な特性プロファイルに従わなければならない。上記のように、自動車のフード下用途およびいくつかの電気または電子用途において役立つ成形物品は、長期間にわたって比較的高温にさらされ得る。組成物は、通常、ポリマーの熱分解のために機械特性の低下を示す傾向にある。この作用は熱老化と呼ばれる。この作用は望ましくない程度まで生じ得る。熱可塑性ポリマーとしてポリアミドを用いる場合は特に、高温にさらすことによる劣化作用が非常に著しいことがある。通常、示された用途に使用されるポリアミド含有材料は、熱安定剤を含有する。熱安定剤の機能は、成形物品が高温にさらされたときに組成物の特性をより良く保持することである。熱安定剤を使用する場合、材料の種類、使用条件ならびに熱安定剤の種類および量に応じて、成形された材料の耐用寿命は著しく延長され得る。ポリアミドにおいて典型的に使用される熱安定剤の例は、フェノール系酸化防止剤および芳香族アミンのような有機安定剤、ならびにヨウ化カリウムまたは臭化カリウムと組み合わせられた銅塩の形態、もしくは元素銅の形態のいずれかの銅である。フェノール系酸化防止剤および芳香族アミンは、約130℃までの高温における安定化のために通常使用される。銅含有安定剤は、より高い温度における安定化のために適切であり、長年にわたって利用されている。
【0004】
電気、電子および自動車産業のための成形物品、ならびにそのために使用される熱可塑性ポリアミドおよび銅系の熱安定剤を含む熱的安定化成形組成物は、EP−0612794−B1号明細書から知られている。既知の組成物中の熱可塑性ポリアミドは、脂肪族または芳香族ポリアミドである。既知の組成物中の熱安定剤として、ヨウ化銅/ヨウ化カリウム、およびその場で形成される微細分散化元素銅の両方が言及される。ヨウ化銅/ヨウ化カリウム含有組成物は、組成物の構成成分を単に溶融混合することを含む配合方法によって形成された。元素銅を含む組成物は、ポリアミドがイオンまたは錯体の銅安定剤および還元剤と共に溶融混合され、元素銅がその場で形成される配合方法によって形成された。その場で調製された元素銅を含む既知の組成物は、銅塩/ヨウ化カリウム含有組成物よりも熱的酸化および光の影響に対してはるかに良い耐性を有すると、EP−0612794−B1号明細書では述べられている。微細分散化元素銅は、その場で調製された場合にだけ熱安定剤として有効であると述べられている。元素銅が溶融混合工程よりも前に調製された場合(この場合は、熱安定化組成物を調製するための溶融混合工程においてコロイド銅を用いることによる)、その組成物の熱老化性能は、EP−0612794−B1号明細書に記載されるように、ヨウ化銅/ヨウ化カリウム含有組成物の熱老化性能よりも本質的に良好ではなかった。これらの材料の熱老化性能は、140℃の温度で試験された。
【0005】
熱可塑性成形組成物のための多くの用途では、160℃もの高温、またはさらに180℃〜200℃およびそれ以上の温度に長期間さらされた後の機械特性の保持は、基本的な必要条件になる。改善された熱老化特性を有する組成物を必要とする特殊な用途の数も増大している。既知の組成物を用いて調製された成形物品の欠点は、より高い温度における熱安定性がまだ低すぎることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、既知の組成物よりも良好な熱老化特性を有する成形組成物を提供し、それにより、既知の組成物を用いて調製された成形物品よりも高い連続使用温度で使用することができる成形物品を製造する可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、熱的安定化熱可塑性成形組成物を調製するために金属粉末を使用すること(ここで、該金属粉末は最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして金属粉末中の金属は、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される)と、金属粉末を含む本発明に従う熱的安定化熱可塑性成形組成物(ここで、該金属粉末は最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして金属粉末中の金属は、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される)とによって達成された。
【0008】
意外なことに、特定の粒径範囲内である周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族の金属は、非常に有効な熱安定剤である。これらの金属は、本明細書では、「VB〜VIIB族遷移金属」とも呼ばれ得る。周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族の金属には、VB族:バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、VI族:クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、およびタングステン(W)、VIIB族:マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)およびレニウム(Re)、ならびにVIII族:鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、および白金(Pt)の金属が含まれる。熱可塑性成形組成物中でこれらの金属を、最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有する金属粉末の形態においてその元素状態で使用することの効果は、既知の銅塩/ヨウ化カリウム含有組成物と比較して、そして既知の元素銅含有組成物に関して、熱老化特性が著しく改善されることである。この熱老化特性の改善は、高温において機械特性がはるかに良く保持されることによって表される。鉄のような元素金属はポリアミドのようなポリマーの溶融安定性に対して悪影響を及ぼすことが知られているので、この効果は非常に意外なことである。
【0009】
さらに、この熱安定化効果は、元素金属を組成物の他の成分と単に溶融混合することを含む方法により調製される成形組成物によっても達成される。本発明に従う熱安定化効果を得るために、微細分散化元素金属粉末をその場で調製することは必要とされない。本発明に従う組成物は、例えば、キャリアポリマー中に微細分散された金属粉末を用いることによって調製することができる。
【0010】
好ましくは、熱安定剤として使用される金属粉末は元素鉄を含み、より好ましくは、少なくとも本質的に元素鉄からなる。
【0011】
周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族の金属の前記金属粉末は、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドを含むポリマー組成物と、
b)微細分散化金属粉末を含む熱的安定化系と、任意で、
c)非繊維状無機充填剤、および/または
d)繊維状強化剤を含まないその他の補助添加剤と
からなる熱的安定化された非繊維強化熱可塑性成形組成物の調製において有利に使用することができる。
【0012】
本発明は、特に、
a.1.少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドが、最大でも50,000g/molの重量平均分子質量Mwを有し、
b.1.金属粉末が最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして金属粉末中の金属が、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、そして
c.1.組成物が、組成物の全質量に対して少なくとも10質量%の非繊維状充填剤を含む、
非繊維強化熱可塑性成形組成物に関する。
【0013】
また本発明は、特に、
a.1.少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドが、融解温度(Tm−1)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−1)を有するアモルファスポリマーであり(Tm−1およびTg−1は合わせてT1で示される)、
a.2.ポリマー組成物が、融解温度(Tm−2)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−2)を有するアモルファスポリマーであって(Tm−1およびTg−1は合わせてT2で示される)、T2がT1よりも少なくとも20℃低い第2の熱可塑性ポリマーを含み、そして
b.1.金属粉末が最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして金属粉末中の金属が、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、
非繊維強化熱可塑性成形組成物に関する。
【0014】
融解温度という用語については、本明細書では、ASTM D3417−97/D3418−97に従って10℃/分の加熱速度でDSCにより測定され、最も高い融解エンタルピーを有する温度として決定される融解温度と理解される。ガラス転移温度という用語については、本明細書では、ASTME1356−91に従って20℃/分の加熱速度でDSCにより測定され、元の熱曲線の変曲点に相当する元の熱曲線の第1次導関数(時間に関して)のピークにおける温度として決定される温度と理解される。
【0015】
また本発明は、特に、
b.1.金属粉末が最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして金属粉末中の金属が、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、そして
b.2.熱的安定化系が、第2の熱的安定剤をさらに含む、
非繊維強化熱可塑性成形組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に従う組成物は、これらが微細分散化金属粉末を含む熱的安定化系を含み、該金属粉末が最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして金属粉末中の金属が、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるという発明の特徴を共通して有する。
【0017】
熱可塑性ポリアミドおよび微細分散された元素鉄を含む組成物は、いくつかの特許公報から知られており、例えば、パッケージング用途のための薄膜および箔で使用される単層および多層バリア材料に関する米国特許第6,369,148号明細書において知られている。これらの特許公報では、元素金属は酸素捕捉剤として使用される。既知の組成物は、様々な種類の酸素捕捉性パッケージング物品における押出コーティング用途に特に適すると述べられている。
【0018】
米国特許第6,369,148号明細書には、本発明に従う鉄または他の「VB〜VIIB族遷移金属」のいずれかの熱老化作用については記載されていない。米国特許第6,369,148号明細書には、射出成形に適切であり、VB〜VIIIB族遷移金属、充填剤および限られたMwを有する熱可塑性ポリアミドを含むか、あるいはVB〜VIIIB族遷移金属および銅塩または第2の低融点熱可塑性ポリマーを含む非繊維強化熱可塑性成形組成物についても、電子部品およびフード下の自動車部品などの高温使用用途のために成形物品を製造するために良好な特性、その熱老化特性およびその適合性についても記載されていない。
【0019】
本発明との関連では、繊維強化熱可塑性成形組成物は繊維状強化剤を含む熱可塑性成形組成物であると理解され、同様に非繊維強化熱可塑性成形組成物は繊維状強化剤を含まない熱可塑性成形組成物であると理解される。繊維状強化剤は、本明細書では、長さ、幅および厚さを有する材料であり、平均の長さが幅および厚さのいずれよりも大幅に長いと考えられる。より具体的には、繊維状強化剤は、本明細書では、長さ(L)と幅および厚さ(D)の最大値との数平均比として定義され、少なくとも5であるアスペクト比L/Dを有する材料であると理解される。好ましくは、繊維状強化剤のアスペクト比は少なくとも10であり、より好ましくは少なくとも20、さらにより好ましくは少なくとも50である。
【0020】
微細分散化元素金属は、本明細書では、連続高分子媒体中に小粒子の形態で分散された元素金属であると理解される。連続高分子媒体は連続相を形成し、例えば、熱可塑性ポリマーまたはキャリアポリマーからなることができる。
【0021】
本発明に従う組成物中では、VB〜VIIIB族遷移金属またはこれらの混合物の金属粉末が使用される。金属粉末は、本明細書では、粒子の形態で存在する元素金属であり、その大部分は小さい粒径を有すると理解される。通常このような材料は、粒子の大部分が例えば最大でも2mmの粒径を有する粒径分布を有する。一般に、元素金属は、最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有する。重量平均粒径は、ASTM標準D1921−89の方法Aに従うDとして決定される。
【0022】
好ましくは、dmは最大でも500μmである。適切には、dmは最大でも400μm、または300μmである。さらに元素金属は、最大でも200μm、より好ましくは最大でも100μm、そしてさらにより好ましくは最大でも50μmの重量平均粒径を有することが好ましい。元素金属は非常に小さい粒径を有することができ、重量平均粒径は、例えば10μmまたは5μm、そしてそれよりもさらに小さい。最も適切には、dmは最大でも1〜150μmである。重量平均粒径がより小さいことの利点は、金属粉末がより有効な熱安定剤であることである。
【0023】
好ましくは、本発明に従う組成物において使用される金属粉末は元素鉄を含み、より好ましくは、金属粉末は少なくとも本質的に元素鉄からなる。
【0024】
本発明に従う成形組成物の調製のために使用することができるVB〜VIIIB族遷移金属の適切な金属粉末は、例えば、オハイオ州のSMCメタル・プロダクツ(SMCMetal Products)から市販されているSCM鉄粉末A−131であり、この粉末は元素鉄を含む。
【0025】
本発明に従う成形組成物を調製するために使用される元素金属の量は、広い範囲にわたって変化し得る。VB〜VIIIB族遷移金属、特に元素鉄は、非常に有効な安定剤であり、非常に少量でも効果を示す。実際にはこれらの元素金属は、成形組成物中のポリマー組成物100pbwに対して少なくとも0.01重量部(本明細書では、さらに「pbw」と略される)の量で使用することができる。より好ましくは元素金属の量は、成形組成物中のポリマー組成物100重量部に対して少なくとも0.05pbwであり、さらにより好ましくは少なくとも0.10pbw、そして最も好ましくは少なくとも0.20pbwである。成形組成物中のポリマー組成物の重量に対して元素金属の量がより多いことの利点は、組成物がより良好な熱老化特性を有することである。
【0026】
一方で、量は、成形組成物中のポリマー組成物100重量部に対して10重量部、あるいはさらにそれよりも多いこともある。しかしながら、熱可塑性ポリマー100重量部に対して2〜5pbwであれば既に非常に良好な熱老化特性が得られるので、より多くの量の使用は、相対的に少ししか改善をもたらさない。
【0027】
本発明に従う成形組成物を調製するために使用される金属粉末は、キャリアポリマー中に微細分散された金属粉末のマスターバッチの形態を適切に有し得る。また本発明に従う成形組成物は、キャリアポリマー中に微細分散された金属粉末のマスターバッチを含む成分の乾燥ブレンドから適切になることができる。マスターバッチにおいて使用することができるキャリアポリマーは、ポリマー組成物中の少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドと同じでもよく、より低融点の熱可塑性ポリマー、エラストマーまたはゴムなどの別のポリマーでもよい。
【0028】
好ましい実施形態では、キャリアポリマーは熱可塑性ポリアミドと同じポリマーである。その利点は、キャリアポリマーと熱可塑性ポリアミドとの最大の相溶性である。
【0029】
もう1つの好ましい実施形態では、キャリアポリマーはエラストマーまたはゴムである。これは、本発明に従う組成物が改善された耐衝撃性を有し、別個の衝撃改質剤を添加する必要性が低減される、あるいは完全に回避され得るという利点を有する。
【0030】
キャリアポリマーとして使用することができる適切なゴムは、例えばSBSゴムおよびEPDMゴムである。
【0031】
また有利に、キャリアポリマーは、熱可塑性ポリマー、さらに特別には低い融解温度を有する熱可塑性ポリマーであってもよい。キャリアポリマーとして使用することができる適切な低融点熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PE/PPコポリマー、ポリアミド(PA)およびポリエステル(PES)である。
【0032】
キャリアポリマー中に微細分散された元素金属のマスターバッチは、例えば、押出機などの溶融混合装置内で小さい平均粒径を有する元素金属粉末をキャリアポリマーの溶融物に添加することによって調製することができる。
【0033】
本発明に従う方法において使用するのに適した、キャリアポリマー中に微細分散された元素金属のマスターバッチは、例えば、スイスのチバ(Ciba)からのシェルフプラス(Shelfplus)O22400、元素鉄のマスターバッチである。
【0034】
本発明に従う成形組成物において使用することができる熱可塑性ポリアミドは、高温への曝露を含む用途のための強化成形組成物において使用するのに適したどの種類の熱可塑性ポリアミドでもよい。熱可塑性ポリアミドは、例えば、アモルファスポリマーまたは半結晶性ポリマーであり得る。熱可塑性ポリアミドは、任意で、熱可塑性エラストマー、または液晶ポリマーなどの結晶性ポリマーであってもよい。
【0035】
本発明に従う成形組成物において使用することができる適切なポリアミドは、例えば、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドおよびこれらの混合物である。
【0036】
適切な脂肪族ポリアミドは、例えば、PA−6、PA−11、PA−12、PA−4,6、PA−4,8、PA−4,10、PA−4,12、PA−6,6、PA−6,9、PA−6,10、PA−6,12、PA−10,10、PA−12,12、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6/12−コポリアミド、PA−6/11−コポリアミド、PA−6,6/11−コポリアミド、PA−6,6/12−コポリアミド、PA−6/6,10−コポリアミド、PA−6,6/6、10−コポリアミド、PA−4,6/6−コポリアミド、PA−6/6,6/6、10−ターポリアミド、ならびに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンとから得られるコポリアミド、そして上記ポリアミドのコポリアミドである。
【0037】
適切な半芳香族ポリアミドは、例えば、PA−6,I、PA−6,I/6,6−コポリアミド、PA−6,T、PA−6,T/6−コポリアミド、PA−6,T/6,6−コポリアミド、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,6/6,T/6、I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD,T−コポリアミド(2−MPMD=2−メチルペンタメチレンジアミン)、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD,T(2−MOMD=2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン)、テレフタル酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから得られるコポリアミド、イソフタル酸、ラウリンラクタムおよび3,5−ジメチル−4,4−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、イソフタル酸、アゼライン酸および/またはセバシン酸ならびに4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸および/またはテレフタル酸ならびに4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸および/またはテレフタル酸ならびにイソホロンジアミンから得られるコポリアミド、イソフタル酸および/またはテレフタル酸および/または他の芳香族または脂肪族ジカルボン酸、任意でアルキル−置換されたヘキサメチレンジアミンおよびアルキル−置換された4,4−ジアミノジシクロヘキシルアミンから得られるコポリアミド、そして上記ポリアミドのコポリアミドである。
【0038】
ポリアミドは、任意で、修飾された末端基、例えばモノカルボン酸で修飾されたアミン末端基および/または単官能性アミンで修飾されたカルボン酸末端基を含有してもよい。ポリアミド中の修飾された末端基は、溶融混合によるその調製中または前記組成物の成形工程中の組成物の改善された溶融安定性のために有利に適用され得る。
【0039】
好ましくは、ポリアミドは、PA−6、PA−6,6、PA−6,10、PA−4,6、PA−11、PA−12、PA−12,12、PA−6,I、PA−6,T、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,T/6,6−コポリアミド、PA−6,T/6−コポリアミド、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6,6/6,T/6,I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD,T−コポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD,T−コポリアミド、PA−4,6/6−コポリアミド、ならびに上記ポリアミドの混合物およびコポリアミドからなる群から選択される。より好ましくは、PA−6,I、PA−6,T、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,6、PA−6,6/6T、PA−6,6/6,T/6,I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD,T−コポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD,T−コポリアミドまたはPA−4,6、もしくはこれらの混合物またはコポリアミドが、ポリアミドとして選択される。
【0040】
通常、本発明に従う高温使用用途を対象とした組成物において使用される少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドは、少なくとも180℃の融解温度(Tm−1)を有する半結晶性または結晶性ポリマーもしくは熱可塑性エラストマー、あるいは少なくとも180℃のガラス転移温度(Tg−1)を有するアモルファスポリマーである。Tm−1およびTg−1は、本明細書では、合わせてT1で示される。
【0041】
好ましくは、本発明に従う組成物中の少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドは、少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも220℃、さらにより好ましくは少なくとも240℃の融解温度、あるいは熱可塑性ポリアミドがアモルファスポリマーの場合にはガラス転移温度を有する。本発明に従う成形組成物中の熱可塑性ポリアミドの融解温度またはガラス転移温度がより高いことの利点は、成形組成物の熱変形温度(HDT)がより高いこと、そしてさらに特別には、前記のより高いHDTに相当する温度における熱老化特性に対する元素金属の効果がより強調され、組成物の最高使用温度のさらなる上昇が可能になることである。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、成形組成物中のポリマー組成物は、上記のようなT1を有する少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドの次に、融解温度(Tm−2)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−2)を有するアモルファスポリマーであって(Tm−2およびTg−2は合わせてT2で示される)、T2がT1よりも少なくとも20℃低い第2の熱可塑性ポリマーを含む。
【0043】
T1を有する第1の熱可塑性ポリマーで示される少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドの次に、ポリマー組成物が、第1の熱可塑性ポリアミドの対応する温度T1よりも少なくとも20℃低い融解温度または上記のように適用できる場合にはガラス転移温度T2を有する第2の熱可塑性ポリマーを含む、本発明に従う成形組成物の利点は、T2付近の温度またはそれより高い温度における成形組成物の熱老化特性が増大されることである。そのさらなる利点は、元素金属、特に鉄の量が制限され、それによりポリアミドのようなポリマーの溶融安定性に対する鉄の悪影響をより良く抑制できることである。
【0044】
より好ましくは、T2はT1よりも少なくとも30℃低く、さらにより好ましくは少なくとも40℃低く、そして最も好ましくは少なくとも60℃低い。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に従う成形組成物中のポリマー組成物は、少なくとも260℃のT1を有する半結晶性熱可塑性ポリアミドまたはアモルファス熱可塑性ポリアミドのいずれかである第1のポリマーと、最大でも240℃のT2を有する第2の熱可塑性ポリマーとのブレンドを含む。より好ましくは、第2のポリマーは、最大でも220℃、より好ましくは最大でも200℃、そしてさらにより好ましくは最大でも180℃のT2を有する半結晶性またはアモルファスポリマーである。
【0046】
本発明に従う成形組成物において2番目として使用することができる熱可塑性ポリマーは、高温への曝露を含む用途のための強化成形組成物において使用するのに適したどの種類の熱可塑性ポリマーでもよい。熱可塑性ポリマーは、例えばアモルファスポリマーまたは半結晶性ポリマーであり得る。熱可塑性ポリマーは、任意で、熱可塑性エラストマーまたは液晶ポリマーなどの結晶性ポリマーであってもよい。
【0047】
本発明に従う組成物中の熱可塑性ポリマーとして使用することができる適切なアモルファスポリマーは、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリアリーレート(PAR)、およびアモルファスポリアミドである。
【0048】
適切な半結晶性ポリマーは、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、半結晶性ポリアミド、ポリフェニルスルフィド(PPS)、および半芳香族熱可塑性ポリエステルである。
【0049】
また熱可塑性ポリマーは、異なる熱可塑性ポリマーのブレンドを含んでもよい。
【0050】
本発明に従う組成物において使用することができる適切な半芳香族熱可塑性ポリエステルは、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロへキサンジメチレンテレフタレート(PCT)のようなポリ(アルキレンテレフタレート)、およびポリエチレンナフタネート(polyethylenenaphthanate)(PEN)のようなポリ(アルキレンナフタネート)(poly(alkylenenaphthanate))、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物、またはこれらと、少ない含量の別のジカルボン酸またはジオールとのコポリマーである。
【0051】
本発明に従う成形組成物中の第2の熱可塑性ポリマーとして使用することができる適切な熱可塑性ポリアミドは、少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドについて上記された熱可塑性ポリアミドと同じである一般的な種類から選択することができる。
【0052】
第1および第2の熱可塑性ポリマーは同じ種類であってもよいし、異なる一般的な種類であってもよい。
【0053】
好ましくは、第1および第2の熱可塑性ポリマーは同じ種類であり、すなわちいずれの熱可塑性ポリマーもポリアミドである。さらにより好ましくは、いずれのポリアミドも半結晶性ポリマーである。本発明のさらにより好ましい実施形態では、本発明に従う成形組成物中のポリマー組成物は、少なくとも260℃である融点を有する半結晶性ポリアミドと、240℃よりも低いT2を有する第2のポリアミドとのブレンドを含む。
【0054】
適切なポリアミドの組み合わせは、例えば、第1のポリアミドがPA4,6および半芳香族ポリアミドの群から選択され、第2のポリアミドが、PA−6、PA−11、PA−12、PA−6,10、PA−6,12、PA−10,10、PA−12,12、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6/12−コポリアミド、PA−6/11−コポリアミド、PA−6,6/11−コポリアミド、PA−6,6/12−コポリアミド、PA−6/6,10−コポリアミド、PA−6,6/6,10−コポリアミドを含む脂肪族ポリアミドの群から選択される組み合わせである。
【0055】
第2の熱可塑性ポリマーは、使用される場合には、好ましくはポリマー組成物の全質量に対して0.1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、そして最も好ましくは10〜25質量%の量で存在する。
【0056】
熱可塑性ポリマーは別として、本発明に従う成形組成物中のポリマー組成物は、他のポリマー成分、例えば金属粉末のキャリアとして使用されるポリマーを含んでもよい。同様に、他のポリマー成分はゴムである。好ましくは、他のポリマー成分は、ポリマー組成物の全質量に対して最大でも20質量%、より好ましくは最大でも10質量%、そして最も好ましくは最大でも5質量%の量で本発明に従う組成物中に存在する。言い換えると、本発明に従う成形組成物中のポリマー組成物は、好ましくは、ポリマー組成物の全質量に対して少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、そしてさらにより好ましくは少なくとも95質量%の量の1種または複数の熱可塑性ポリマーを含む。
【0057】
本発明に従う成形組成物中のポリマー組成物がポリマーのブレンド、例えば第1および第2の熱可塑性ポリマーのブレンド、または少なくとも1種の熱可塑性ポリマーおよび他のポリマー成分のブレンドを含む実施形態では、第1の熱可塑性ポリマー、すなわち最も高い融解温度、あるいは適用できる場合には最も高いTgを有する熱可塑性ポリマーは、ポリマー組成物の全質量に対して少なくとも50質量%の量で通常存在する。好ましくは、第1の熱可塑性ポリマーは、ポリマー組成物の全質量に対して少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%の量で存在する。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドは、最大でも35,000の重量平均分子質量Mwを有する。熱可塑性ポリアミドのMwがより低いと、非繊維状無機充填剤および/または繊維状強化剤を含む成形組成物にとって特に有利であり、このような組成物は、射出成形部品を製造するための射出成形工程において使用するのにより良く適するようになる。特に、組成物の全質量に対して少なくとも10質量%の非繊維状無機充填剤を含む成形組成物に対して、最大でも50,000g/mol、より好ましくは最大でも40,000g/mol、さらにより好ましくは最大でも30,000g/mol、そして最も好ましくは最大でも25,000g/molの重量平均分子質量Mwを有する熱可塑性ポリアミドは、このような射出成形工程におけるより良好な加工挙動を提供する。
【0059】
また本発明に従う成形組成物は、本発明を本質的に損なわなければ、非繊維状および好ましくは非金属である無機充填剤および/またはその他の補助添加剤を含有することができる。
【0060】
充填剤は、本明細書では、粒子形状の材料であると理解される。充填剤の粒子は、様々な構造、例えば薄片、板、米粒、六角形、または球のような形状を有し得る。本発明に従う非繊維強化成形組成物中に含まれ得る充填剤は、5よりも小さいアスペクト比L/Dを有する充填剤である。使用される充填剤は、成形コンパウンドを製造する当業者に既知である5よりも小さいアスペクト比L/Dを有する任意の充填剤でよい。適切には、充填剤は、非金属無機充填剤である。適切な非金属無機充填剤には、例えば、ガラスビーズ、硫酸バリウムおよびケイ酸アルミニウムのような無機充填剤、ならびにタルカム、炭酸カルシウム、カオリン、ウォラストナイト、マイカ、クレイおよびか焼クレイなどの鉱物充填剤が含まれる。充填剤は、任意で、熱可塑性ポリアミドとのより良好な相溶性のために表面処理されてもよい。
【0061】
適切には、充填剤は、ポリマー組成物100重量部に対して0〜300重量部、好ましくは10〜200重量部、そしてより好ましくは20〜100重量部の量で存在する。
【0062】
本発明に従う成形組成物中に任意で含まれ得る適切な添加剤は、例えば、顔料(例えば、カーボンブラックおよびニグロシンなどの黒色顔料、ならびにTiO2およびZnSなどの白色顔料)または顔料濃縮物、難燃剤、可塑剤、加工助剤(離型剤など)、安定剤(酸化防止剤およびUV安定剤など)、結晶化促進剤または造核剤、衝撃改質剤および相溶化剤である。相溶化剤は、熱可塑性ポリアミドとの低い相溶性を有するキャリアポリマーと組み合わせて有利に使用され、成形組成物の改善された熱安定性がもたらされる。
【0063】
これらの補助添加剤は、通常、成形組成物中のポリマー組成物100重量部に対して0〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜5重量部の量で使用される。本発明に従う組成物が別の添加剤またはその他の添加剤を含む場合、前記添加剤は、通常、組成物の全質量に対して少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、そしてさらにより好ましくは少なくとも1質量%の全量で存在する。
【0064】
好ましくは、本発明に従う組成物は黒色顔料を含む。黒色顔料の存在の利点は、熱老化作用による組成物の表面変色が隠されることである。黒色顔料は通常、成形組成物の全質量に対して0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%の量で使用される。
【0065】
その他の添加剤には、例えば、無機塩、酸性化成分およびこれらの混合物などの熱老化特性をさらに促進する物質が特に含まれる。適切な無機塩の例としては、塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸第2銅、ヨウ化第2銅、酢酸第2銅およびこれらの混合物などの、アルカリ、アルカリ土類および遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、亜硫酸塩およびリン酸塩があげられる。適切な酸性化成分は、例えば、ピロリン酸二水素二ナトリウムのようなピロリン酸ナトリウムなどのナトリウム−リンバッファ(sodium−phosphorbuffer)である。
【0066】
好ましい実施形態では、本発明に従う成形組成物における熱的安定化系は、前記元素VB〜VIIIB族遷移金属の次に、フェノール系熱的安定剤(例えば、イルガノックス(Irganox)1098)、ホスフェート(例えば、イルガフォス(Irgafos)168)、芳香族アミンおよび金属塩からなる群から選択される第2の熱的安定剤を含む。適切な金属塩の例は、例えば、ジチオカルバミン酸ニッケル(ハスタビン(Hastavin)VPNiCS1など)、ジチオカルバミン酸亜鉛(ホスタノックス(hostanox)VPZnCS1など)および銅塩である。VB〜VIIIB族遷移金属の次に、前記群から選択される第2の熱的安定剤が存在することは、成形組成物の熱老化特性がさらにもっと改善されるという利点を有する。特に、第2の熱的安定剤が銅塩である場合に良好な結果が得られる。
【0067】
好ましくは、銅塩は、銅ハロゲン化物/アルカリハロゲン化物の組み合わせである。適切なハロゲン化物には、塩化物、臭化物およびヨウ化物が含まれ、適切なアルカリイオンには、ナトリウムおよびカリウムが含まれる。適切な銅ハロゲン化物/アルカリハロゲン化物の組み合わせは、例えばCuI/KIである。任意で、成形組成物は塩化ナトリウムなどの潮解性物質をさらに含む。
【0068】
適切には、本発明に従う成形組成物は、ポリマー組成物100重量部に対して0.001〜2、好ましくは0.01〜1重量部の量の銅塩を含む。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、熱可塑性成形組成物は、
a) a.1.融解温度(Tm−1)を有する半結晶性ポリアミドまたはガラス転移温度(Tg−1)を有するアモルファスポリアミドであって(Tm−1およびTg−1は合わせてT1で示される)、T1が少なくとも200℃である第1の熱可塑性ポリマー、および
a.2.融解温度(Tm−2)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−2)を有するアモルファスポリマーであって(Tm−2およびTg−2は合わせてT2で示される)、T2がTm−1よりも少なくとも20℃低い第2の熱可塑性ポリマー
を含むポリマー組成物と、
b) b.1.周期表のVB族、VIB族、VIIB族またはVIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有する金属の微細分散化金属粉末、および
b.2.銅塩
を含む熱的安定化系と、そして任意で、
c)非繊維状無機充填剤、および/または
d)繊維状強化剤を含まないその他の補助添加剤と
からなる非繊維強化成形組成物である。
【0070】
より好ましい実施形態では、非繊維強化成形組成物は、
a) a.1.ポリマー組成物の全質量に対して少なくとも50質量%の、最大でも35,000の質量平均分子質量を有する半結晶性またはアモルファスポリアミドである第1の熱可塑性ポリマー、および
a.2.T2がT1よりも少なくとも30℃低い半結晶性またはアモルファスポリアミドである第2の熱可塑性ポリマー
を含む100重量部のポリマー組成物と、
b) b.1. 0.01〜20重量部の微細分散された元素鉄の粉末、および
b.2. 0.001〜2重量部の銅塩と、
c)0〜200重量部の非繊維状無機充填剤と、
d)繊維状強化剤を含まない0〜20重量部の補助添加剤と、
からなる。
【0071】
周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族の金属の前記金属粉末は、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドを含むポリマー組成物と、
b)微細分散化金属粉末を含む熱的安定化系と、
c)繊維状強化剤と
を含む熱的安定化された繊維強化熱可塑性成形組成物の調製においても有利に使用することができる。
【0072】
従って、本発明は、金属粉末中の金属が周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの鉄を除く元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、金属粉末が最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有する繊維強化熱可塑性成形組成物にも関する。
【0073】
元素鉄を含む繊維強化熱可塑性成形組成物は、予め公開されていない国際特許出願PCT/NL/2004/000507号明細書において記載されており、本発明に従って権利請求の対象とする繊維強化熱可塑性組成物から除外されている。
【0074】
本発明に従う繊維強化熱可塑性成形組成物は、様々な熱可塑性ポリアミド、ならびに第2の熱可塑性ポリマー、無機充填剤および/またはその他の補助添加剤を含むことができる。適切な熱可塑性ポリアミド、第2の熱可塑性ポリマー、無機充填剤および/またはその他の補助添加剤には、本発明に従う非繊維強化熱可塑性成形組成物について上記したものと同じものが含まれる。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、熱可塑性成形組成物は、
a) a.1.融解温度(Tm−1)を有する半結晶性ポリアミドまたはガラス転移温度(Tg−1)を有するアモルファスポリアミドであって(Tm−1およびTg−1は合わせてT1で示される)、T1が少なくとも200℃である第1の熱可塑性ポリマー、および
a.2.融解温度(Tm−2)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−2)を有するアモルファスポリマーであって(Tm−2およびTg−2は合わせてT2で示される)、T2がT1よりも少なくとも20℃低い第2の熱可塑性ポリマー
を含むポリマー組成物と、
b) b.1.周期表のVB族、VIB族、VIIB族またはVIIB族からの鉄を除く元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有する金属の微細分散化金属粉末、および
b.2.フェノール系熱的安定剤、ホスフェート、芳香族アミンおよび金属塩からなる群から選択される第2の熱的安定剤
を含む熱的安定化系と、
c)繊維状強化剤と、そして任意で、
d)非繊維状無機充填剤および/または
e)その他の補助添加剤と
を含む繊維強化成形組成物である。
【0076】
より好ましい実施形態では、繊維強化成形組成物は、
a) a.1.ポリマー組成物の全質量に対して少なくとも50質量%の、最大でも50,000g/molの質量平均分子質量を有する半結晶性またはアモルファスポリアミドである第1の熱可塑性ポリマー、および
a.2.T2がT1よりも少なくとも30℃低い半結晶性またはアモルファスポリアミドである第2の熱可塑性ポリマー
を含む100重量部のポリマー組成物と、
b) b.1. 0.01〜20重量部の微細分散された元素鉄の粉末、および
b.2. 0.001〜2重量部の銅塩と、
c)5〜300重量部の繊維状強化剤と、
d)0〜200重量部の非繊維状無機充填剤と、
e)0〜20重量部の補助添加剤と、
からなる。
【0077】
本発明に従う繊維強化成形組成物において使用することができる繊維状強化剤は、高温用途で使用するための繊維強化熱可塑性組成物における使用に適したどの種類の金属および非金属の繊維状強化剤でもよい。繊維状強化剤は、本明細書では、長さ、幅および厚さを有する材料であり、平均の長さが幅および厚さのいずれよりも大幅に長いと考えられる。通常、このような材料は、長さ(L)と幅および厚さ(D)の最大値との数平均比であると定義され、少なくとも5であるアスペクト比L/Dを有する。好ましくは、繊維状強化剤のアスペクト比は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、さらにより好ましくは少なくとも50である。
【0078】
本発明に従う繊維強化成形組成物において使用することができる適切な非金属繊維状強化剤は、例えば、ガラス繊維、炭素またはグラファイト繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、ウォラストナイトなどの鉱物繊維、およびウィスカーである。好ましくは、ガラス繊維が選択される。金属繊維には、銅、鉄およびアルミニウム繊維などの繊維が含まれる。組成物の想定される適用分野を考慮すると、本発明に従う組成物中では非金属繊維状強化剤が好ましい。
【0079】
本発明に従う繊維強化成形組成物において使用される繊維状強化剤の量は、大きな範囲にわたって変化し得る。通常、その量は、ポリマー組成物100pbwに対して5〜300重量部(pbw)の範囲である。好ましくは、その量は、ポリマー組成物100pbwに対して10〜235pbw、より好ましくは15〜150pbwである。
【0080】
本発明に従う成形コンパウンドは、繊維強化および非繊維強化熱可塑性成形組成物の調製に適した既知の溶融混合工程を用いて調製することができる。このような工程は、熱可塑性ポリアミドを、熱可塑性ポリアミドの融解温度よりも高い温度、あるいは熱可塑性ポリアミドがアモルファスポリマーである場合にはガラス転移温度よりも高い温度まで加熱し、それにより熱可塑性ポリアミドの溶融物を形成することによって通常実行される。
【0081】
調製は溶融混合装置において実行することができ、このために、溶融混合によりポリマー組成物を調製する当業者に既知の任意の溶融混合装置を使用することができる。適切な溶融混合装置は、例えば、ニーダー(kneader)、バンバリーミキサー(Banburrymixer)、一軸スクリュー押出機および二軸スクリュー押出機である。好ましくは、押出機(押出機のスロート部または溶融物のいずれか)に所望の全ての成分を投与するための手段を備えた押出機が使用される。
【0082】
調製において、組成物を形成するための構成成分は溶融混合装置に供給され、その装置内で溶融混合される。構成成分は、乾燥ブレンドとしても知られる粉末混合または顆粒ミキサのように同時に供給されてもよいし、別々に供給されてもよい。調製工程は、元素金属が添加される方法に制限がない。例えば、粒状形態の熱可塑性ポリアミドおよび粉末形態の元素金属を含む粉末、乾燥ブレンドまたはプレミックスとして、あるいはキャリアポリマー中に微細分散された元素金属のマスターバッチとして添加され得る。
【0083】
また本発明は、微細分散化金属粉末を含む非繊維強化熱的安定化成形組成物の、高温使用用途のための成形物品を製造するための使用にも関し、該金属粉末中の金属は、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0084】
本発明は、微細分散化金属粉末を含む繊維強化熱的安定化成形組成物の、高温使用用途のための成形物品を製造するための使用にも関し、該金属粉末中の金属は、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。高温使用用途は、本明細書では、少なくとも150℃の使用温度を通常含む用途と理解される。熱的安定化成形組成物において使用される少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドに依存して、使用温度は、少なくとも180℃またはさらに少なくとも200℃であり得る。
【0085】
また本発明は、成形組成物の射出成形を含む3次元のネットシェイプ成形部品の製造方法にも関し、該成形組成物は、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される金属の微細分散化金属粉末を含む非繊維強化熱的安定化成形組成物、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される金属の微細分散化金属粉末を含む繊維強化熱的安定化成形組成物、あるいは、特許請求の範囲または上記したその好ましい実施形態のいずれかに記載される非繊維強化熱的安定化成形組成物または繊維強化熱的安定化成形組成物のいずれかである。
【0086】
また本発明は、本発明または上記したその好ましい実施形態のいずれかに従う非繊維強化熱可塑性成形組成物または繊維強化熱可塑性成形組成物からなる三次元ネットシェイプ成形部品にも関する。
【0087】
3次元部品は、本明細書では、高温用途において使用される多くの部品の場合のように、部品が容易に(すなわち、少ない力で部品に損傷を与えることなく)薄膜、箔または薄板のような平坦な形状に変えられることを防止する、拡張部分、壁および/またはリブなどを有する複雑な形状の部品であると理解される。
【0088】
ネットシェイプ成形部品は、本明細書では、射出成形などにより成形された後、実際に使用されるその最終形状および形態に部品が成形されているので、いくらかのバリ(flash)の除去などの部品のさらなる機械加工が必要とされない、あるいは限られた程度にしか必要とされない部品であると理解される。通常、部品は少なくとも0.5mmの厚さを有するが、部品は、より少ない厚さを有することもできる。好ましくは、部品の厚さは少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも2mm、そしてさらにより好ましくは少なくとも4mmである。部品がより大きな厚さを有することの利点は、高温における熱老化条件下で機械特性がより良く保持されることである。
【0089】
さらに特別には、成形部品は、例えば、パーソナルカー、オートバイ、トラックおよびバンなどの自動車両、列車、航空機および船舶を含む汎用輸送手段、芝刈り機および小型エンジンなどの家庭用電気機具、ならびにポンプ、コンプレッサー、コンベヤーベルトなどの一般産業用設備で適用され得る機械およびエンジンにおいて使用するための成形部品、あるいは家庭用動力工具および携帯用電力装置などの電気および電子設備において使用するための成形部品である。
【0090】
部品は、例えば、排気系部品、ベアリング、ギアボックス、エンジンカバー、エアダクト、吸気マニホルド、中間冷却器のエンドキャップ、キャスターまたはトロリー部品などのエンジン部品、もしくは非導電性電子部品(コネクタ、ボルトおよびコイルボビンなど)でもよい。
【0091】
また本発明は、本発明に従う成形部品の、エンジン、機械、電気および電子設備における使用にも関し、さらに、本発明に従う成形部品を含むエンジン、機械および組み立て物品にも関する。
【0092】
本発明はさらに、自動車両、汎用輸送手段、家庭用電気機具、および一般産業用設備、電気および電子設備を含む、本発明に従う成形部品を含む製品に関する。その利点は、ヨウ化銅/ヨウ化カリウム安定化系を含む既知の組成物で製造された成形部品を含む対応する製品と比較して、高温にさらされることによる成形部品の劣化が低減されるために前記製品の耐用年数がより長いこと、および/または前記成形部品の交換を遅延できること、および/または製品がより高い温度で動作され得ることである。
【0093】
本発明は、以下の実施例および比較実験によってさらに説明される。
【実施例】
【0094】
材料
PA−6−1 ポリアミド6、タイプK123、粘度数129ml/g(ISO307に従って測定)、(オランダのDSMから)
PA−6−2 ポリアミド6、タイプK122、粘度数115ml/g(ISO307に従って測定)、(オランダのDSMから)
PA−6,6 ポリアミド−6,6、タイプS222、粘度数115ml/g(ISO307に従って測定)、(オランダのDSMから)
離型剤 アクラワックス(Acrawax)C(潤滑剤)(イタリアのロンザ(Lonza)から)
相溶化剤−I 無水マレイン酸変性ポリエチレン(オランダのDSMから)
元素鉄マスターバッチ:20質量%の鉄粒子を含有するマスターバッチ、平均粒径30μm、PE中
安定助剤A ヨウ化物安定剤201(ヨウ化銅/ヨウ化カリウム、ステアレート中(80/10/10)(スイスのチバから)
非繊維状充填剤ステアレン(Stealene)B(タルク、D50=11.5μm)(フランスのルゼナック(Luzenac)から)
【0095】
実施例IおよびIIならびに比較実験A
実施例IおよびIIならびに比較実験Aは、非繊維状充填剤を含むポリアミド組成物に関する。実施例IおよびIIは、前者の組成物が組成物の全重量に対して5重量%、実施例IIが組成物の全重量に対して1.67重量%のさらなる安定助剤を含むという点で比較実験Aとは異なり、これらのさらなる成分は、ポリアミドの量の減少によって補償される。これらの組成物は、ZSK25二軸スクリュー押出機(ワーナー&フライデラー(Werner& Fleiderer)から)を用いて調製した。押出機のシリンダー温度は275℃であり、スクリューの回転速度は275RPM、そしてスループットは20kg/時であった。スロート部においてホッパーを介して、全ての成分を添加した。配合材料をストランドの形態で押出して、水浴中で冷却し、そして顆粒状に切断した。得られた顆粒を真空下105℃で16時間乾燥させた。
【0096】
乾燥させた顆粒は、スクリュー直径30mmの射出成形機タイプ80(エンゲル(Engel)から)において、ISO527タイプ1Aに従って厚さ4mmを有するテストバーの形態で射出成形した。射出形成機の溶融物の温度は280℃であり、モールドの温度は80℃であった。
【0097】
215℃のグレンコ(GRENCO)オーブン(タイプ:GTTS12500S)においてテストバーを熱老化させた。特定の熱老化時間の後、テストバーをオーブンから取り出し、室温まで冷却させておき、そして23℃においてISO 527に従う引張試験により機械特性に関して試験した。
【0098】
実施例IおよびIIならびに比較実験Aの組成および典型的な試験結果は、表1にまとめた。
【0099】
実施例IIIおよび比較実験B
実施例IIIおよび比較実験Bは、2種の半結晶性ポリアミドのブレンドを含むポリアミド組成物に関する。実施例IIIおよび比較実験Bの組成物は、実施例IIIが、ポリアミド含量の減少により補償される7.1重量%の鉄含有マスターバッチを含むという点で互いに異なる。組成物は、ZSK25二軸スクリュー押出機(ワーナー&フライデラーから)を用いて調製した。押出機のシリンダー温度は275℃であり、スクリューの回転速度は275RPM、そしてスループットは20kg/時であった。スロート部においてホッパーを介して、全ての成分を添加した。配合材料をストランドの形態で押出して、水浴中で冷却し、そして顆粒状に切断した。得られた顆粒を真空下105℃で16時間乾燥させた。
【0100】
乾燥させた顆粒は、スクリュー直径30mmの射出成形機タイプ80(エンゲルから)において、ISO527タイプ1Aに従って厚さ4mmを有するテストバーの形態で射出成形した。射出形成機の溶融物の温度は290℃であり、モールドの温度は80℃であった。
【0101】
215℃のグレンコオーブン(タイプ:GTTS12500S)においてテストバーを熱老化させた。特定の熱老化時間の後、テストバーをオーブンから取り出し、室温まで冷却させておき、そして23℃においてISO 527に従う引張試験により機械特性に関して試験した。
【0102】
実施例IIIおよび比較実験Bの組成および典型的な試験結果は、表1にまとめた。
【0103】
実施例IVおよび比較実験C
実施例IVおよび比較Cは、銅含有安定助剤を含むポリアミド組成物に関する。実施例IVは、実施例IVの組成物が、より少ないポリアミド含量により補償される7.1重量%の鉄含有マスターバッチおよび2.37重量%の相溶化剤を含む(重量%は、組成物の全重量に関する)という点で比較実験Cとは異なる。実施例IVおよび比較実験Cの組成物は、ZSK25二軸スクリュー押出機(ワーナー&フライデラーから)を用いて調製した。押出機のシリンダー温度は260℃であり、スクリューの回転速度は275RPM、そしてスループットは20kg/時であった。スロート部においてホッパーを介して、全ての成分を添加した。配合材料をストランドの形態で押出して、水浴中で冷却し、そして顆粒状に切断した。得られた顆粒を真空下105℃で16時間乾燥させた。
【0104】
乾燥させた顆粒は、スクリュー直径30mmの射出成形機タイプ80(エンゲルから)において、ISO527タイプ1Aに従って厚さ4mmを有するテストバーの形態で射出成形した。射出形成機の溶融物の温度は260℃であり、モールドの温度は80℃であった。
【0105】
215℃のグレンコオーブン(タイプ:GTTS12500S)においてテストバーを熱老化させた。特定の熱老化時間の後、テストバーをオーブンから取り出し、室温まで冷却させておき、そして23℃においてISO 527に従う引張試験により機械特性に関して試験した。
【0106】
実施例IVおよび比較実験Cの組成および典型的な試験結果は、表1にまとめた。
【0107】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドを含むポリマー組成物と、
b)微細分散化金属粉末を含む熱的安定化系と、任意で、
c)非繊維状無機充填剤、および/または
d)繊維状強化剤を含まないその他の補助添加剤と
からなる非繊維強化熱可塑性成形組成物であって、
a.1.前記少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドが、最大でも50,000g/molの重量平均分子質量Mwを有し、
b.1.前記金属粉末が最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして前記金属粉末中の金属が、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、
c.1.前記組成物が、組成物の全質量に対して少なくとも10質量%の非繊維状充填剤を含むことを特徴とする非繊維強化熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドを含むポリマー組成物と、
b)微細分散化金属粉末を含む熱的安定化系と、任意で、
c)非繊維状無機充填剤、および/または
d)繊維状強化剤を含まないその他の補助添加剤と
からなる非繊維強化熱可塑性成形組成物であって、
a.1.前記少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドが、融解温度(Tm−1)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−1)を有するアモルファスポリマーであり(Tm−1およびTg−1は合わせてT1で示される)、
a.2.前記ポリマー組成物が、融解温度(Tm−2)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−2)を有するアモルファスポリマーであって(Tm−1およびTg−1は合わせてT2で示される)、T2がT1よりも少なくとも20℃低い第2の熱可塑性ポリマーを含み、
b.1.前記金属粉末が最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして前記金属粉末中の金属が、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする非繊維強化熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドを含むポリマー組成物と、
b)微細分散化金属粉末を含む熱的安定化系と、任意で、
c)非繊維状無機充填剤、および/または
d)繊維状強化剤を含まないその他の補助添加剤と
からなる非繊維強化熱可塑性成形組成物であって、
b.1.前記金属粉末が最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有し、そして前記金属粉末中の金属が、周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、
b.2.前記熱的安定化系が、第2の熱的安定剤をさらに含むことを特徴とする非繊維強化熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
前記金属粉末が元素鉄を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドが、融解温度(Tm−1)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−1)を有するアモルファスポリマーであって(Tm−1およびTg−1は合わせてT1で示される)、T1が少なくとも200℃である請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物(a)が、融解温度(Tm−2)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−2)を有するアモルファスポリマーであって(Tm−2およびTg−2は合わせてT2で示される)、T2がT1よりも少なくとも20℃低い第2の熱可塑性ポリアミドを含む請求項5に記載の成形組成物。
【請求項7】
前記熱的安定化系が、フェノール系熱的安定剤、ホスフェート、芳香族アミンおよび金属塩からなる群から選択される第2の熱的安定剤を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形組成物。
【請求項8】
前記成形組成物が、
a. a.1.融解温度(Tm−1)を有する半結晶性ポリアミドまたはガラス転移温度(Tg−1)を有するアモルファスポリアミドであって(Tm−1およびTg−1は合わせてT1で示される)、T1が少なくとも200℃である第1の熱可塑性ポリマー、および
a.2.融解温度(Tm−2)を有する半結晶性ポリマーまたはガラス転移温度(Tg−2)を有するアモルファスポリマーであって(Tm−2およびTg−2は合わせてT2で示される)、T2がTm−1よりも少なくとも20℃低い第2の熱可塑性ポリマー
を含むポリマー組成物と、
b. b.1.周期表のVB族、VIB族、VIIB族またはVIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、最大でも1mmの重量平均粒径(dm)を有する金属の微細分散化金属粉末、および
b.2.銅塩
を含む熱的安定化系と、そして任意で、
c.非繊維状無機充填剤、および/または繊維状強化剤を含まないその他の補助添加剤と
からなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形組成物。
【請求項9】
微細分散化金属粉末を含む熱的安定化系を含み、前記金属粉末中の金属が周期表のVB族、VIB族、VIIB族およびVIIIB族からの元素金属ならびにこれらの混合物からなる群から選択される非繊維強化熱的安定化成形組成物の、少なくとも150℃の使用温度を含む高温使用用途のための成形物品を製造するための使用。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の成形組成物の射出成形を含む、三次元ネットシェイプ成形部品の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の非繊維強化 熱可塑性成形組成物からなる成形部品。

【公開番号】特開2012−162734(P2012−162734A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98907(P2012−98907)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【分割の表示】特願2007−550747(P2007−550747)の分割
【原出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】