説明

熱安定性α−アミラーゼを含むフラワー系食品

本発明は熱安定性α−アミラーゼと現場変性デンプンを含むフラワー系食品に関し、また、少なくともフラワーと水と熱抵抗性α−アミラーゼを混合することによってバッターをつくり、そしてバッターを少なくとも一つの熱表面の上でクッキングする諸工程を含む、フラワー系食品の製造方法に関し、また、フラワー系食品のテクスチャー属性を加減するための熱安定性α−アミラーゼの使用に関し、さらには、バッター粘度を増加させることなくウェイファーの中のデンプンを変性させる方法に関する。好ましいフラワー系食品はウェイファー、ビスケットおよびクラッカーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱安定性のα−アミラーゼをベーキング工程(baking step)で使用することによって製造されたウェイファー(wafer)に関し、また、かかるα−アミラーゼをベーキング工程中に使用することによってウェイファーのテクスチャー属性を加減する方法、およびウェイファーのテクスチャー属性を加減するためのかかるα−アミラーゼの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
α−アミラーゼは従来周知であり、そして多数の分野に、特に製パン(bread baking)に、しかし菓子製造にも、使用されている。いくつかの特許はパン類およびベーカリー製品類の老化(staling)を遅らせるためのα−アミラーゼの使用に関している。それは、たとえば、ベーキング前のドウ(dough)に熱安定性のデンプン分解酵素(amylolytic enzyme)を少量添加することによってパンの老化速度を防止、抑制または遅延させることが可能であるということを開示しているイルヴィン・ストーン(Irwin Stone)のUSP 2,615,810のケースである。この熱安定性酵素は細菌源(bacterial sources)から得られてもよく、そして強いデンプン液化・糊精化力(starch liquefying and dextrinizing power)、α−アミラーゼ活性、およびタンパク分解活性(proteolytic activity)を特徴としており、80℃〜90℃の温度まで安定である。この老化防止法はこの特許によればケーキ類およびその他のベーカリー製品にも応用可能である。
【0003】
全く同じような関係では、WO 2001011975は保護および持続放出のためにリパーゼをコートしてあるα−アミラーゼの顆粒をドウの中に組み込むことによって老化が遅延されるベークド品(baked goods)の製造に関しており、そしてエンザイム・バイオ・システムズ社(Enzyme Bio Systems Ltd)のUSP 5,059,430は、ベークド品が古くなった感じになるのを遅らせるための、微生物α−アミラーゼと細菌α−アミラーゼの混合物を含む組成物を保護している。
【0004】
別の関係では、デュート・イット(Deutt Itt)のUSP 4,299,848は、バッファー(buffer)をもつ水溶液の加熱をコントロールすることによる、市販のα−アミラーゼの中でのタンパク分解酵素(protease)の選択的不活性化について開示している;これはパンの保存料として使用される。
【0005】
やはり知られているものはウェイファー製造における酵素類の使用、ベーキング業界におけるアミラーゼ類の使用、およびデンプン工業における及び食品工業における熱安定性細菌α−アミラーゼの使用である。
【0006】
ウェイファー製造は酵素を使用している:好ましくは、エンド型プロテイナーゼ類(endo-proteinases)(たとえば、枯草菌(Bacillus subtilis)からの天然細菌プロテイナーゼ、またはカリカパパヤ(Carica papaya)からのパパイン)を、小麦グルテンの中のペプチド結合を加水分解させるために使用して、グルテン塊の形成を防ぐ効果を有し、また、キシラナーゼ(xylanase)(ペントサナーゼ(pentosanase))を、アラビノキシラン(ペントサン)の中のキシラン骨格を加水分解させるために使用し、小麦ペントサンの水結合容量を減少させる及びその他のフラワー(flour)成分の中に水を再分配させる効果を有する。これら酵素の組合せも、主に、バッター(batter)粘度を低下させるため、バッターをより均質にするため、機械加工性を増大させるため、標準フラワー銘柄(standard flour grades)を使用するのを可能にするため、および/またはバッターの中のフラワー量を低減させるために使用される。これら調製物は広く受け入れられるようになってきた(Food Marketing & Technology, April 1994, p.14)。
【0007】
ベーキング業界も酵素を使用しており、特に、パン製造には及びビスケット業界では菌類α−アミラーゼを使用している。パン製造における菌類α−アミラーゼは損傷デンプン(damaged starch)をマルトデキストリンに転化させ(その後、β−アミラーゼによってマルトースに、そして酵母によって二酸化炭素に転化される)、損傷デンプン粒から水を解放させ、かつ、糊化するデンプン(gelatinising starch)の一部をベーキングの早い時期に分解させる。これら作用の効果はガス保持容量を改善することによるローフボリューム(loaf volume)の増大、改善されたテクスチャー、より均一なクラム(crumb)構造、より濃い色のクラスト(crust)、改善されたクラム軟度、および老化の遅延にある。通常は、菌類α−アミラーゼが好ましい、何故ならば、それらは低い熱安定性を呈し従ってベーキング過程の最後に熱によって不活性化されるからである。
ビスケット業界ではα−アミラーゼは損傷デンプン粒から水を解放させることによって、および二酸化炭素を発生させるための酵母のための基質(substrate)を提供することによっても作用する。主な効果はヒビ入り(checking)(乾燥中の亀裂)の防止ばかりでなく、種づくり効果(leavening effect)およびフレーバー発現(高級クラッカー)である。
【0008】
フィルスベリー社(Fillsbury Company)のWO 0239820は高湿環境でパリパリ感(crispness)が望まれるベーカリー製品のような食品の中に高分子量デンプン水解物類または結晶性水和物形成剤類(たとえば、マルトース、イソマルトース、トレハロース、ラクトースおよびラフィノース)を使用することに関している。
【0009】
熱安定性の細菌α−アミラーゼはデンプン工業に使用されており、事実、エンドアミラーゼはアミロースおよびアミロペクチンの中の1,4−α−グルコシド結合を加水分解させる;その結果、デンプンは可溶性デキストリンに切断される。これは主として、高温(たとえば、スチームジェットクッカーまたは類似装置)におけるデンプン連続液化に使用されている。
【0010】
熱安定性α−アミラーゼは食品工業においても、通常、シロップからのデンプン濁り(starch haze)の除去、醸造およびアルコール発酵のためのデンプンの液化または調理済み穀類の製造のために使用されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明者らはこのたび、熱安定性α−アミラーゼがフラワーデンプンを現場(in-situ)で変性させることによってウェイファーに様々な新しいテクスチャーを与える能力を有していることを発見した。従って、本発明はまた、熱安定性α−アミラーゼを使用することによるウェイファーのテクスチャー属性を加減する(manipulate)方法、およびウェイファーのテクスチャー属性を加減するための熱安定性α−アミラーゼの使用に関している。
【0012】
(発明の詳細)
本記述においては、用語「フラワー系食品(粉系食品、flour based food products)」はベーキング工程の最後において6%湿度を超えない湿気を有する製品、たとえば、中でも、ウェイファー、ビスケットまたはクラッカー、として理解されなければならない。本発明による好ましいフラワー系食品はウェイファーである。
【0013】
用語「食品」は全ての消費可能な類を包含することを意図している。従って、それはヒトによる消費を意図した製品であってもよいが、この用語は動物たとえばペット、たとえば、犬、猫、うさぎ、テンジクネズミ(guinea pigs)、マウス、ラット、鳥類(たとえば、オウム)、爬虫類および魚類(たとえばゴールドフィッシュ)による消費を意図した製品も包含する。しかしながら、この用語はその他の飼いならされた動物たとえば家畜類、たとえば、牛、馬、豚、羊、山羊、水牛、駱駝など、によって消費されるべき食物も包含する。
【0014】
ウェイファーの製造は主としてフラワーと水を含有しそれに他の少量成分が添加されてもよいバッターを調製することにある。市販のフラットウェイファーの製造ではバッターの中に代表的には40〜50%のフラワーが使用される。普通の配合物はさらに次の成分の少なくとも一つを含んでいてもよい:たとえば、脂肪および/または油、レシチンおよび/または乳化剤、砂糖、全卵、食塩、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、スキンミルク粉末、大豆粉、酵母、および/または酵素たとえばキシラナーゼまたはタンパク分解酵素。ウェイファー製造においては、バッターは調製後に、通常、2つの彫刻金属プレートの間で、低い湿気レベルを有する大きなフラットウェイファーを製造するために一定温度で一定時間、たとえば、160℃で2分間、クッキングされる。クッキング後に、ウェイファーは最終製品の要求に従って加工される。
【0015】
ウェイファーのテクスチャーは糊化済みデンプン(gelatinised starch)から主として構成されたゲル構造の中でのガスセル(gas cells)の発生から結果的に生じる。ベーキングプレートの高温はフラワーの中に存在するデンプン粒の急速糊化を、そして糊状マトリックス内部での気泡の生成と膨張を誘発する。これらガスセルは通常のプラクチスでは、ガス化剤(gassing agent)たとえば添加重炭酸塩やバッター発酵中に酵母によって生成された二酸化炭素から、または加熱によって生じた蒸気から、主として発生させられる。従って、ウェイファーは糊化され乾燥されたデンプンのセル壁によって収容されたガスセルの固形発泡体(solid foam)として見ることができる。
【0016】
本発明はウェイファーとして使用するのに適する又は食品、菓子製品またはその他の糖質系製品の中に組み込むのに適する様々なテクスチャーと諸性質を有するウェイファーを製造することができる酵素的方法を記載する。上記の通り、バッターは通常、約40〜50%のフラワー(粉)たとえば小麦粉を含み、粉自体は主として粒の形態で存在するデンプンを約70%含有している。このデンプンは、糊化、すなわち、加熱によるデンプン粒の溶解を伴う過程、の以前にはデンプン分解酵素によって変性されることができない。しかしながら、熱処理とそれに続く酵素的加水分解によるバッタータンク内のフラワーデンプンの糊化は実行可能でない、何故ならば、それは劇的な粘度増加を引き起こしてバッターをもはやポンプ汲み出し不可能および機械加工不可能にするからである。
【0017】
結局、本発明の一局面は、「要望により」新しいウェイファーテクスチャーを生じさせるためのベーキング工程における糊化されたデンプンの酵素的変性に関している。従って、熱安定性α−アミラーゼはデンプンの分子量を低減させるために使用される。使用される酵素は好ましくは細菌起源のものであり、大抵はpH5〜7において温度約70〜105℃で活性である。たとえば、酵素はバチルス属の種(Bacillus species)またはα−アミラーゼ活性を有するいずれかのその他細菌から生産されることができる。結局、酵素は菌類α−アミラーゼ、植物起源からの特に穀類起源からのα−アミラーゼであることができる。概して、比較的低い熱安定性を示し65℃を超えると急速に失活する現行のα−アミラーゼは本発明の実施のためには意図されていない。
【0018】
理論的に拘束することを望まないが、本発明者らは、ウェイファーの中にα−アミラーゼを添加しそれらをウェイファー加工処理に使用することがウェイファーテクスチャーに影響するであろう2つの主要な効果を誘発すると信じている。第一に、酵素はベーキング工程においてデンプン粘度の減少を誘発し、それが気泡の膨張度および大きさの変更につながる。第二に、酵素はデンプンの巨大分子構造を変性させ、それが乾燥ウェイファーの中の固体セル壁の物理的性質の変更につながる。
【0019】
デンプン分解酵素は結局、デンプン粒が50〜60℃を超える温度で起こる糊化過程に入れば効率的にデンプンを攻撃することができる。本発明によれば、酵素的加水分解は熱安定性α−アミラーゼを使用してのホットベーキングプレート間でのデンプン糊化の直後に行われる。
【0020】
本発明は全く老化防止に関していないということが理解されるはずである。老化防止過程は次のように説明できる:デンプン粒が水の中に分散されそしてクッキングによって十分に糊化されたときに、結晶性構造およびデンプンポリマーが溶解される。この溶液が冷却されるにつれて(たとえば、パンの場合にはベーキング後)、ポリマーは部分結晶性構造を形成するであろう(戻り(retrogradation)=再結晶化)。アミラーゼはパンのような高湿系における老化(戻り)を防止するのにしばしば使用されている。
ベークドウェイファーにおいては、戻りを起こすには水移動度(water mobility)が不十分である。本発明は劣化防止に関するものではない。
【0021】
α−アミラーゼは好ましくは他の成分と同時にバッターに添加され、そしてオーブンの中で約100℃の温度において、水蒸発に相当する時間の期間中、デンプンを加水分解することが許される。この酵素は次いで、乾燥期において到達する更に高い温度で徐々に不活性化される。α−アミラーゼはベーキング工程の直前に添加されることも可能である、何故ならば、この酵素はオーブンの中でのみデンプンを加水分解するからである。この手法はタンパク分解酵素を含有するバッターの中でのタンパク分解的攻撃によって起こり得るα−アミラーゼ不活性化の危険を解消する。α−アミラーゼの量ばかりでなくガス化剤の量を調節することによって、多様な食品に適合した様々なウェイファーテクスチャーを生じさせることが可能である。その上、デンプンの酵素的開裂は、還元糖の量を増加させることによって、褐変(browning)反応を促進し、そして最終製品の風味にプラスの影響を有する(メイラード(Maillard)反応)。
【0022】
得られたウェイファーはウェイファー単独で消費者に提供することができるが、さらに加工することもできる。たとえば、ウェイファーを外層とし、様々な詰め物(filling)、たとえば、チョコレート、ゼリー、コンパウンドチョコレート、アイスクリーム、シャーベット、ナッツペースト、クリーム系製品、ケーキ、ムース、カラメル、プラリネ(praline)、ジャム、ウェイファーリワーク(wafer rework)、又はこれら成分の同一成分を異なる状態で包含してまたは異なる成分を包含して構成されたサンドイッチ棒をつくることが可能である。サンドイッチはウェイファーと詰め物の対から構成されていて第一層と最後の層がウェイファーであり2〜15のウェイファー層を含むこともできる。
コーティングされた製品の中心として又は中心の一部としてウェイファーを使用することも可能である。コーティングは通常のコーティング、たとえば、チョコレートコーティング、コンパウンドコーティング、カラメルコーティング、またはクランブル(crumble)コーティング、のいずれであることもできる。
フラワー系食品がウェイファーである場合には、それは幾何学的形状またはアニメキャラクター(cartoons character)形状のどちらかばかりでなくアルファベットや数字の形状を有するフラットウェイファーであることができる。それは三次元形状ウェイファーたとえば円錐、グラス、皿、またはシュガーウェイファーであることもできる。フラワー系食品がビスケットである場合には、それは砂糖、チョコレート、カラメル、フルーツ、ナッツなどの混入を含むことができる。フラワー系食品がクラッカーである場合には、該クラッカーはたとえばチーズ、トマトペースト、ハム、ハーブ、および/またはスパイスフレーバーを含むことができ、そして四角形、三角形、円形、アニメキャラクターまたは顔の形、またはその他のあらゆる適する形状として造形されることができる。
【0023】
本発明による方法は少なくともフラワーと水と熱安定性α−アミラーゼの混合物を調製し、そしてその生成物をオーブンの中で又はベーキングプレートの上または中でクッキングする諸工程を含む。一態様においては、フラワー系食品がウェイファーである場合には、クッキング時間は60〜180秒好ましくは90〜120秒の間で構成されることができる。プレート温度は好ましくは、過程の最初および最後において140〜180℃の間で、好ましくは160℃で、構成され、そして温度の変動は本発明の好ましい態様によれば、25℃未満ではないし50℃を超えるべきでもない。
【0024】
本発明者らは驚くべきことには、α−アミラーゼによって操作されるデンプンの酵素的開裂が還元糖の量を増加させそうして褐変反応を促進する最終製品の風味に対するプラスの影響をまた見出した。α−アミラーゼがバッターの中に多く存在するほど、褐変が速く達成される。結局、本発明による方法もウェイファーのより速い褐変を可能にする。
【0025】
本発明者らはバッターの中に組み込まれたα−アミラーゼの量とベーキング中のヒッシング時間(hissing time)との間に関係があることも見出した。ヒッシング時間はベーキング期の開始時にガスおよび蒸気の放出によって生じる可聴音に対応している時間として定義される。熱安定性α−アミラーゼを含有しているバッターは減少したヒッシング時間を有するであろう、それはクッキング中のウェイファーからのガスおよび蒸気の放出が促進されていることを意味している。結果として、きれいな褐変がより迅速に達成される。
【0026】
本発明による製品は少なくともフラワーと水を含有しそして熱安定性α−アミラーゼによって処理されたウェイファーである。好ましくは、それは、ガス化剤、たとえば、二酸化炭素、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、またはガスセル構造を生じさせることができる低沸点成分、を使用して製造される。ガス化剤は細菌や酵母のようなガス発生性微生物によって置き換えること又はそれと一緒に添加することができる。熱安定性α−アミラーゼは最終製品に望まれる構造に応じて、バッター1g当り3〜2500単位の量で、好ましくは、バッター1g当り10〜1000単位の量で、バッターの中に組み込まれることができる。
【0027】
ここで使用された単位は、米国サウスベンド(South Bend)のバレーリサーチ社(Valley Research Inc.)によって確立された検定の条件下で30分で1gの可溶性デンプンを規定青色値にまで糊精化する酵素量として定義されたモディファイド・ウォルゲムート単位(Modified Wohlgemuth Units)(MWU)である。
【0028】
別の態様においては、本発明によるウェイファーは、タンパク分解酵素、たとえば、エンド型プロテイナーゼまたはキシラナーゼ(ペントサナーゼ)、またはこれらタイプの酵素の組合せ、によって処理されたバッターからも製造される。プロテイナーゼは塊形成を防止するのに使用され、そして同じ目的を有することがベーキング業界で知られているその他のいずれのタイプの酵素も上記酵素と組み合わせて又はそれの代わりに普通に使用することができる。好ましくは、α−アミラーゼは、プロテイナーゼによって損なわれるのを防ぐためには、クッキング直前たとえば60秒前にバッターに組み込まれる。
【0029】
本発明によるウェイファーは特異なクロマトグラフィープロフィールを呈する(図2を参照)。実際、α−アミラーゼは可溶性デキストリンを解放させることによってデンプンの分子量を低下させる。従って、調製物に遊離マルトデキストリンを添加してない本発明によるウェイファーがそのマルトデキストリンプロフィールによって特徴付けられてもよい。これらオリゴ糖は最終製品の中の還元糖の量を測定することによって、又はクロマトグラフィー技法(TLC、HPLC)または電気泳動(FACE)によって、分析できる。デンプンの分解はゲル濾過によって推定できる。
【0030】
本発明による方法は少なくともフラワーと水と熱安定性α−アミラーゼを一緒に混合してバッターをつくることにあり、バッターはそれからクッキングを受けるであろう。好ましい態様においては、バッターを2つのベーキングプレートの間で約120秒間クッキングするが、他の意図される態様においては、ドウを調製しそしてたとえば一つのホット表面上で又はオーブンの中で部分的に又は全体的にクッキングすることも可能である。
【0031】
理論的に拘束されるのを望まないが、本発明者らは本発明の説明が次の通りであり得ると信じている: バッターはホットクッキング表面(単数または複数)と接触したときにはα−アミラーゼによって分解されなかった糊化デンプンの非常に薄い層(スキン)を形成する、何故ならば、ホットベーキングプレートと密接に接触した酵素は直ちに不活性化されるからである。ウェイファー内部の糊化デンプンは酵素的加水分解に有利である低い温度に長い時間とどまる。デンプンはクッキング中にバッター内部では変性される、すなわち、現場変性される。その粘着性質について知られているマルトデキストリンがクッキング表面と直接には接触しないという事実は本発明によるウェイファーまたはビスケットが何故にマルトデキストリンの高含有率にもかかわらず粘着しないでクッキングできるかを説明している。クッキング時間の最後には、ウェイファーの中に存在するα−アミラーゼの全てが又は殆ど全てが不活性化されてしまっている。該不活性化はたとえば160℃になることもあるバッター内部の高温によって達成される。
【0032】
本発明による方法はバッターにタンパク分解酵素たとえばエンド型プロテイナーゼまたはキシラナーゼ(ペントサナーゼ)またはこれらタイプの酵素の組合せを添加する工程を含むことができる。プロテイナーゼはグルテン塊形成を防止するのに使用され、そして同じ目的を有することがベーキング業界で知られているその他のいずれのタイプの酵素も上記酵素と組み合わせて又はそれの代わりに普通に使用することができる。
それは、ウェイファーテクスチャーに対する相乗効果を有するためには、二酸化炭素、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムおよび/またはガス発生性微生物のようなガス化剤を添加する工程を含むこともできる。
【0033】
本発明者らは驚くべきことには、α−アミラーゼの含有率とウェイファーの褐変との間の関係を見出した。従って、α−アミラーゼがバッターの中に多量に含有されるほど、ウェイファーの褐変が最も速く得られる。
【0034】
本発明の最後の局面はフラワー系製品のテクスチャー属性を加減するためのα−アミラーゼの使用に関する。好ましくは、かかるフラワー系製品は薄い製品である。従って、使用されるα−アミラーゼの量がウェイファーテクスチャーの変動を可能にする(図1を参照)。理解できるように、使用されるα−アミラーゼの量が増加すると、ウェイファーの中の気泡の大きさは大きくなる。アミラーゼ処理によって誘発されるもう一つの変化はデンプン分子量の低下によるガスセル壁自体のテクスチャー変化である。
本発明によるαーアミラーゼの使用はガス化剤の使用と組み合わせることができる:実際、これら2つの成分の組合せ使用は所期製品に適合した多様なテクスチャーの創出を可能にする。
【0035】
ウェイファーの中への熱安定性α−アミラーゼの使用は多数の利点を呈する。従って、製品の新規かつ特異なテクスチャーは要望により、バッターの中の熱安定性α−アミラーゼの量を変動させることによって、加工できる。本発明のもう一つのプラス局面は、驚くべきことには、当業者の予想とは反対に、熱安定性α−アミラーゼを含むバッターの粘度が増加せずそしてバッターが容易に機械加工可能なままであるという事実によっている。さらには、バッターの厚さは変化させられないし、そして本発明によるバッターはベーキングプレートに粘着しない。
【0036】
本発明の最後の局面によれば、熱安定性α−アミラーゼでバッターを処理することによって、バッター粘度を増加させることなく、そしてバッターがベーキングプレートに粘着しないで、ウェイファーの中のデンプンを変性させる方法が提供される。
【0037】
(実施例)
下記実施例は本発明の範囲に入る製品およびその製造方法のいくつかを例証する。それらはどのようにも本発明の制限として理解されるべきでない。本発明に関しては変形および変更が可能である。すなわち、当業者は、多様な適用のために本発明の中の化合物の自然に存在するレベルを合理的に調節するのに広範囲の処方、成分、加工処理および混合物をカバーするためのこれら実施例における多様なバリエーションを認識するであろう。
【実施例1】
【0038】
[バッター調製に使用した酵素の量に応じたウェイファー構造の変化の例証]
780gの小麦粉と720gの水と少量成分を含むバッターを、所期粘度を得るためにタンパク分解酵素とキシラナーゼを含有する市販の酵素ブレンドで、35℃で、30分間処理する。この混合物に2gの重炭酸ナトリウムを加える。ベーキング1分前に、このバッターに、様々な量の熱安定性α−アミラーゼ、340 000のモディファイド・ウォルゲムート単位を含有するバレーリサーチ社からのバリダーゼ(Validase)H340L、を加える。バッターの中のこの最終酵素濃度は0.0016%、0.00625%、0.025%、0.05%および0.1%である。バッターを、160℃に加熱されたプレートをもつオーブンの中で2分間ベーキングする。
【0039】
図1の顕微鏡写真はこうして得られたウェイファーの断面を示している。主として、高レベルのα−アミラーゼの場合には、ガスセルの膨張がよく目視可能であり、それは本発明に記載されている概念を適用することによって穏やかな又は大きな構造変化が発生し得ることを意味している。
【実施例2】
【0040】
[α−アミラーゼ処理によって誘発されたウェイファーの中の澱粉の変性]
バッターは、720gの小麦粉と780gの水と少量成分と2gの重炭酸ナトリウムを混合することによって調製された。0.00078%、0.0016%、0.0031%、0.00625%、0.0125%、0.025%、0.05%、0.1%、0.2%、0.4%の酵素を含有するバッターを得るために、実施例1に記載のα−アミラーゼを様々な量でアリコートに添加する。添加後1分したら、バッターを、157℃に加熱されたプレートをもつオーブンの中で2分間ベーキングする。このウェイファーを粉砕し、そして7mMの重炭酸ナトリウムの中に40℃で10分間抽出させる。抽出物を遠心分離し、そして上澄み液を薄層クロマトグラフィーによって分析する。
【0041】
結果は図2に見ることができ、それは粉の中に存在するデンプンが酵素のレベルに応じて様々に変性され得ることを示しており、マルトデキストリンの量が高いことはデンプンの加水分解度が高いことに対応している。
【0042】
従って、酵素濃度を変動させることによって広範囲のデンプン分解プロフィールを作成することが可能であり、従って、様々なウェイファーテクスチャーを得ることが可能である。
【実施例3】
【0043】
[ヒッシング時間]
ベーキング中のデンプン変性を検出するための別のやり方はヒッシング時間の測定である。長いヒッシング時間は比較的高いガス放出抵抗を呈する高粘度の糊化デンプンに相当している。対照的に、酵素的加水分解は、デンプン分子量および従って粘度を低下させることによって、ガス逃散を促進する。結果として、より短いヒッシング時間が観察される。
【0044】
図3はこの実験の結果を示している。データは実施例2で言及したバッターのベーキング中に収集された。
【実施例4】
【0045】
[ウェイファーの官能分析]
780gの小麦粉と730gの水と少量成分を含むバッターを、適する粘度を得るためにタンパク分解酵素とキシラナーゼを含有する市販の酵素ブレンドで、35℃で、30分間処理する。この混合物に2gの重炭酸ナトリウムを加える。実施例1に記載した熱安定性α−アミラーゼを、第一実験ではバッター1kg当り0.25gのレベルで、そして第二実験ではバッター1kg当り0.5gのレベルで、加え、そしてバッターを、160℃に加熱されたプレートをもつオーブンの中で2分間ベーキングする。
【0046】
テクスチャーに対する記述的な官能データは8人の訓練された評価者のグループから収集された。
【0047】
第一実験の結果:増大した硬さと脆さが評価者の大部分によって認知された。口の中で溶けることも大きな変化として言及され、結果として新しい口当りのよいテクスチャー特性をもつウェイファーを生じた。
【0048】
第二実験の結果:硬さとパリパリ感の有意な増加が評価者によって報告されたが、脆性についてのスコアは参照ウェイファーによって得られたものと類似していた。
【実施例5】
【0049】
[積層ビスケット]
110gの水と40gのパーム油と25gのショ糖と3.75gの塩化ナトリウムと2.85mgの重炭酸ナトリウムと250mgのバリダーゼBAA(米国バレーリサーチ社、1 200 000MWU/g)を含む混合物に、319.5gの粉を加えることによってドウを調製する。参照ドウは酵素を添加しないで同じ配合物を使用して調製される。ドウはホバート(Hobart)N−50ミキサーの中でポジション1の速度設定をもって120秒間混合され、それから緩和のために2時間放置される。
ドウを、最短ポジション(0.098インチ)に設定されたロール間間隙をもったバーチカル・ラミネーター(vertical laminator)で積層する。得られるシートを矩形片(6.0×3.5cm)に切断し、そしてビスケットを回転炉内で230℃において7分30秒間ベーキングする。
【0050】
官能データは8人の訓練された評価者のグループから収集された。評価者全員がビスケット間の物理的および感覚的な差異を認識することができた。酵素加工ビスケットは標準ビスケットよりも硬くそしてパリパリしていると評価された。それらは標準よりも焦げていることが判明し、そして甘味の増加も言及された。その上、評価者は標準ビスケットでは認知された不快な粉っぽい及び粘っこい感じが熱安定性α−アミラーゼで処理されたビスケットには現れなかったことも指摘した。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】バッター調製に様々な量の熱安定性α−アミラーゼを使用して得たウェイファーの断面を示す。
【図2】バッターに添加されたα−アミラーゼの量に応じてウェイファーの中に生成されたマルトデキストリンのクロマトグラムを示す。
【図3】測定されたヒッシング時間の、酵素濃度に対するプロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱安定性α−アミラーゼと現場変性デンプンを含むフラワー系食品。
【請求項2】
フラワー系食品がウェイファー、ビスケットまたはクラッカーである、請求項1のフラワー系食品。
【請求項3】
ウェイファーがフラットウェイファー、シュガーウェイファー、または三次元形状ウェイファーである、請求項2のフラワー系食品。
【請求項4】
α−アミラーゼが、最終のドウまたはバッター1g当り3〜2500単位、好ましくはバッター1g当り10〜1000単位の量で存在する、請求項1〜3のいずれか一項のフラワー系食品。
【請求項5】
さらにプロテイナーゼおよび/またはキシラナーゼを含む、請求項1〜4のいずれか一項のウェイファー系食品。
【請求項6】
ガス化剤および/またはガス発生性微生物を含む、請求項1〜5のいずれか一項のフラワー系食品。
【請求項7】
デンプンの分子量が低減されているか又は可溶性デキストリンが生成されている、請求項1〜6のいずれか一項のフラワー系食品。
【請求項8】
α−アミラーゼが細菌起源、菌類起源または植物起源のものである、請求項1〜7のいずれか一項のフラワー系食品。
【請求項9】
少なくともフラワーと水と熱安定性α−アミラーゼを混合することによってバッターまたはドウをつくり、そしてそれを少なくとも一つの熱表面の上でベーキングする諸工程を含む、フラワー系食品の製造方法。
【請求項10】
α−アミラーゼがバッターまたはドウを前処理しない、請求項9の方法。
【請求項11】
フラワー系食品がウェイファーである、請求項9または10の方法。
【請求項12】
フラワー系食品のバッターまたはドウがさらに少なくとも一つのタンパク分解酵素および/または少なくとも一つのキシラナーゼを含む、請求項9〜11のいずれか一項の方法。
【請求項13】
バッターまたはドウがガス化剤および/またはガス発生性微生物を含む、請求項9〜12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
ウェイファー、ビスケットおよびクラッカーからなる群のフラワー系食品のテクスチャー属性を加減するための熱安定性α−アミラーゼの使用であって、このα−アミラーゼがフラワー系食品を前処理しない、前記使用。
【請求項15】
少なくとも一つのガス化剤と一緒の、請求項14の熱安定性α−アミラーゼの使用。
【請求項16】
バッター粘度を増加させることなくウェイファーの中のデンプンを変性させる方法。
【請求項17】
バッターがベーキングプレートに粘着しない、請求項16の方法。
【請求項18】
バッターが熱安定性α−アミラーゼによって処理される、請求項16または17の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−504421(P2006−504421A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547614(P2004−547614)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012053
【国際公開番号】WO2004/039162
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】