説明

熱安定性及び化学的安定性が改善されたハイドロフルオロアルコール

式:
A−(R−CFX−O−RO−(CFX−(Ra*−CFX−O−RO−)H (I)
[式中:
は、炭化水素系鎖であり、Xは、FまたはC〜C(ペル)フルオロアルキルであり;aまたはaは、0または1であり;Rは、(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖または(ペル)フルオロアルキル鎖であり;Aは、−F、−Cl、及びH(a=1の場合にのみ可能)またはHO−R−O−CFX−から選択され;nは、0〜200の整数であり、但し、Aが、−F、−Cl、及びHから選択される場合、n=0である]のハイドロフルオロアルコール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的、特に酸及び塩基に対する安定性が改善されており、より高い熱安定性を兼ね備えたハイドロフルオロアルコール(hydrofluoro alcohol)ならびにその調製方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、ブレンステッド酸及びルイス酸に対する安定性が改善された、含フッ素部分がペルフルオロポリエーテル系またはペルフルオロアルキル系である、ハイドロフルオロアルコールに関する。
【背景技術】
【0003】
ハイドロフルオロアルコールは、蒸気圧が低く、かつ表面張力値が低いことを特徴とする化合物であることが従来技術より周知である。さらに、ハイドロフルオロポリエーテルアルコール、例えば、Solvay Solexisより販売されているFomblin(登録商標)Z−DOL及びFomblin(登録商標)Z−DOL TXとして周知の製品は、ガラス転移(Tg)値も低い。アルコール基が存在することによって、様々な官能性を有する誘導体(例えば、エステル型)を調製することが可能である。
【0004】
ハイドロフルオロアルコール及びその誘導体は、ガラス、板紙、繊維製品等の表面処理における界面活性剤として、潤滑性添加剤(lubrication additive)として、高分子材料の表面性状を改質するための添加剤として、磁性潤滑剤として、及び液浸顕微鏡観察用液体としての用途が見出されている。特に、1分子中に2個以上のアルコール基を有するハイドロフルオロアルコール(官能価2以上)は、高分子材料の合成または架橋のためのマクロマー(「ビルディングブロック」)として使用することができる。
【0005】
ペルフルオロポリエーテルまたはペルフルオロアルキル構造を有する市販のハイドロフルオロアルコールは、一般に、−CF(CHOH(式中、b=1または2)型の末端基を有している。例えば、Fomblin(登録商標)Z−DOLとして周知のものなどのペルフルオロポリエーテル構造のハイドロフルオロアルコールは、b=1である。Zonyl(登録商標)BAフルオロアルコール等のペルフルオロアルキル構造のアルコールは、b=2である。
【0006】
ハイドロフルオロアルコールは、対応するエステル、例えばリン酸エステルに、POClと反応させることによって変換することができる。しかしながら、こうしてアルコールから得られた−CFCHOH末端基(b=1)を有するエステルは容易に加水分解される。例えば、非特許文献1に記載された報告を参照されたい。加水分解安定性が改善されたエステルを得るためには、−CFCHOH末端基を有するハイドロフルオロアルコールのOH基をフルオロ鎖から離すようにアルコール誘導体に変換する。これは、例えば、非特許文献2に記載されているように、例えば、エチレンオキシドとの反応を用いて実施してもよい。この場合、エチレンオキシドと反応させることによって、−CFCH−O(CHCHO)H末端基(cは1〜1.5)が得られる。こうすることによって誘導体の加水分解安定性が改善される。しかしながら、得られる生成物は、特に酸による化学的な攻撃を受けやすい水素化されたエーテル結合−CHOCH−を含んでいる。
【0007】
また、例えば、特許文献1に報告されているように、−CF(CHOH末端基を有するアルコール及びその誘導体に−CFCH−基の脱フッ化水素化反応が起こることも周知である。これは通常、塩基及び/または高温の存在下に、例えば、10%重量%のKOH水溶液を90℃で用いることによるかまたは例えば175℃を超える高温で加熱することによって起こる。Scicchitanoによる非特許文献2及び本出願人により実施された試験(比較例)を参照されたい。
【0008】
末端基が−RCH(C2q)OH(式中、q=1〜10である)であるペルフルオロアルキルペルフルオロポリエーテル構造を有するハイドロフルオロアルコールも周知である。例えば、特許文献2を参照されたい。そこから得られるエステル誘導体は加水分解安定性が改善されている。しかしながら、b=2である上述の化合物などのこの構造を有するアルコール及びその誘導体は、塩基に対する耐薬品性及び/または高温に対する耐性が低く、耐熱性が低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7138551号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/287559号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C. Tonelliら、Journal of Fluorine Chemistry、95(1999)、p.53
【非特許文献2】M. Scicchitanoら、Die. Ang. Makromol. Chem.、231(1995)、pp.47〜60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、以下の特性を兼ね備えたハイドロフルオロアルコールの必要性が認識されている:
酸及び塩基、特に、ブレンステッド酸及びルイス酸に対する改善された化学的安定性、
180℃台、そして210℃さえ超える高温に対する改善された熱安定性、
ハイドロフルオロアルコール誘導体、特にエステル型誘導体の改善された加水分解安定性。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、そして予期せぬことに、本出願人らは、特定のハイドロフルオロアルコールによって上述した技術的問題点が解決されることを見出した。
【0013】
本発明の1つの目的は、式:
A−(R−CFX−O−RO−(CFX−(Ra*−CFX−O−RO−)H (I)
[式中、
は、2価のC〜C20炭化水素系残基であり、
Xは、Fであるかまたは場合により1個もしくはそれ以上のヘテロ原子を含む直鎖もしくは可能であれば分岐のC〜C(ペル)フルオロアルキルであり、
a及びaは、互いにかつ各出現において同一であっても異なっていてもよく、独立に0または1の整数であり、
は、(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン(PFPE)鎖または(ペル)フルオロアルキル鎖であり、
Aは、
・ 式:HO−R−O−CFX−(式中、R及びXは上記と同義である)の基ならびに
・ −F、−Cl、及びHから選択される基
から選択され、
但し、a=1である場合に限り、Aは−F、−Cl、及びHから選択される基であってもよく、
nは、0〜200の整数であり、
但し、Aが−F、−Cl、及びHから選択される場合はn=0である)
のハイドロフルオロアルコールである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましくは、Rは、
・ 直鎖または可能であれば分岐のC〜C10アルキル鎖、
・ C〜C10環式環または1個もしくはそれ以上のC〜C10環式環を含むC〜C20アルキル鎖、
・ 芳香環であって、場合により、上記芳香環の1個もしくはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている芳香環または1個もしくはそれ以上の上記芳香環を含むC〜C20アルキル鎖、
から選択され、
は、1個またはそれ以上の不飽和を含んでいてもよく、環式及び/または芳香環の1個またはそれ以上の水素原子が直鎖または可能であれば分岐のC〜C10(フルオロ)アルキル鎖で置き換えられていてもよい。Rは、好ましくは、直鎖または可能であれば分岐のアルキル鎖であり、より好ましくはC〜C10であり、よりさらに好ましくはC〜Cであり、場合により、1個またはそれ以上の不飽和を含む。Rは、場合により、1個またはそれ以上のヘテロ原子、例えば、非エーテル性酸素、N等を含んでいてもよい。
【0015】
Xが(ペル)フルオロアルキル基である場合、ペルフルオロアルキル基の末端基は、1個またはそれ以上の水素原子、好ましくは1個の水素原子を含んでいてもよい。Xが1個またはそれ以上のヘテロ原子を含む場合は、好ましくは酸素である。Xがペルフルオロアルキルである場合、好ましくは、直鎖または可能であれば分岐のC〜Cである。より好ましくは、XはFである。
【0016】
指数a及びaは、好ましくは1である。
【0017】
指数nは、好ましくは0〜100、より好ましくは0〜50の範囲にある。
【0018】
好ましくは、Rは、数平均分子量が約100〜約10000のPFPE鎖であり、(ペル)フルオロアルキル鎖である場合は、好ましくは、直鎖または可能であれば分岐のC〜C30(ペル)フルオロアルキル鎖である。
【0019】
鎖は、場合によりフッ素原子または直鎖もしくは可能であれば分岐の1もしくはそれ以上のC〜C10(ペル)フルオロアルキル鎖で置換された、1個またはそれ以上のC〜C10(ペル)フルオロ化環式環を含んでいてもよい。
【0020】
がペルフルオロアルキル基である場合、好ましくは直鎖、より好ましくはC〜Cである。この実施形態によれば、Rは、鎖(主鎖)上に1個またはそれ以上の−CFYOROH懸垂基(式中、Rは、上記と同義であり、Yは、Fまたは直鎖もしくは可能であれば分岐のC〜C(ペル)フルオロアルキルである)を場合により含んでいてもよい。この場合、式(I)の化合物は、数個の−OH基を含む。好ましくは、懸垂基の数は、1〜10個の範囲にある。−CFYOROH懸垂基が存在する場合、nは、好ましくは0である。
【0021】
が(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖である場合、分子量は、好ましくは、116〜3000である。この実施形態によれば、好ましくは、Rは、この鎖上に統計学的に分布した以下の1種またはそれ以上の配列:−(CO)−、−(CFO)−、−(CFCFO)−、−(CFCFCFO)−、−(CFCFCFCFO)−、−(CF(CF)O)−を含む(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖である。場合により、この実施形態におけるRは、単位−(CFCF(CFYOROH)O)−、−(CF(CFYOROH)CFO)−、及び(CF(CFYOROH)O)−(Y及びRは上記と同義である)を含んでいてもよい。単位−(CO)−は、−(CFCF(CF)O)−または−(CF(CF)CFO)−であってもよい。
【0022】
より好ましくは、この実施形態によるRは、以下のフルオロ(ポリ)オキシアルキレン構造:
(B)
−CFO[(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)−(CFCF(CFYOROH)O)p’(CF(CFYOROH)O)q’]CF
[式中、指数r、s、p、q、p’、及びq’は、上述した数平均分子量になるような0を含む整数であり、好ましくは、rが0以外である場合、s/rは0.1〜10であり、(r+s)が0以外である場合、(p+q)/(r+s)は0〜0.2(境界値を含む)であり、R及びYは上記と同義である]、
(C)
−CFY”O[(CFO)(CFCFO)(CFCF(CF)O)(CF(CF)O)−(CFCF(CFYOROH)O)p’(CF(CFYOROH)O)q’]−CFY’−
[式中、指数r、s、t、u、p’、及びq’は、ここに示した数平均分子量になるような0を含む整数であり、好ましくは、sが0以外である場合、t/sは0.1〜10であり、(t+s)が0以外である場合、(r+u)/(t+s)は0.01〜0.5、より好ましくは0.01〜0.2であり、Rは上記と同義であり、Y、Y’、及びY”は、F及び直鎖または可能であれば分岐のC〜C(ペル)フルオロアルキルから選択される]
から選択される。
【0023】
式(I)の化合物は、一般に、数平均分子量が約100〜300000、好ましくは約200〜200000、より好ましくは約400〜50000、よりさらに好ましくは600〜10000である。特に好ましい一実施形態においては、数平均分子量は、150〜3000である。
【0024】
式(I)の化合物の例を以下に示す:
CF(CFOCHCHOH
CF(CFOCHCHCHOH
CF(CFOCHCHCHCHOH
CF(CFOCH−(cC10)−CHOH
CF(CFOCH−Ph−CHOH(ここで、Ph=C
CF(CFOCHCH=CHCHOH
CF(CFOCHCHOH
CF(CFOCHCHCHOH
CF(CFOCHCHCHCHOH
CF(CFOCHCHCHCHOH
HOCHCHO−(CF−OCHCHOH
HOCHCHCHO−(CF−OCHCHCHOH
HOCHCHCHCHO−(CF−OCHCHCHCHOH
HOCHCHO−(CF−OCHCHO−[(CFOCHCHO−]
HOCHCHCHO−(CF−OCHCHCHO−[(CF−OCHCHCHO−]
HOCHCHCHCHO−(CF−OCHCHCHCHO−[(CF−OCHCHCH−CHO−]
CFCFCFOCF(CF)CFOCHCHOH
CFCFCFOCF(CF)CFOCHCHCHOH
CFCFCFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
HCFOCF(CF)CFOCHCHOH
HCFOCF(CF)CFOCHCHCHOH
HCFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
HCFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
HCFCFOCF(CF)CFOCHCHOH
HCFCFOCF(CF)CFOCHCHCHOH
HCFCFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
HCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
HCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHOH
HCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHOH
HCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
HCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
ClCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHOH
ClCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHOH
ClCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
ClCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
CFOCF(CF)CFOCHCHOH
CFOCF(CF)CFOCHCHCHOH
CFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
CFCFOCF(CF)CFOCHCHOH
CFCFOCF(CF)CFOCHCHCHOH
CFCFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
(CFCFOCF(CF)CFOCHCHOH
(CFCFOCF(CF)CFOCHCHCHOH
(CFCFOCF(CF)CFOCHCHCHCHOH
F−R−CFOCHCHOH
F−R−CFOCHCHCHOH
F−R−CFOCHCHCHCHOH
F−R−CFOCH−(cC10)−CHOH
F−R−CFOCH−Ph−CHOH(Ph=C
F−R−CFOCHCH=CHCHOH
HOCHCHOCF−R−CFOCHCHOH
HOCHCHCHOCF−R−CFOCHCHCHOH
HOCHCHCHCHOCF−R−CFOCHCHCHCHOH
HOCH−(cC10)−CH−OCF−R−CFO−CH−(cC10)−CHOH
HOCHCHOCF−R−CFOCHCHO−(CF−R−CFOCHCHO−)
HOCHCHCHOCF−R−CFOCHCHCHO−(CF−R−CFOCHCHCHO−)
HOCHCHCHCHOCF−R−CFOCHCHCHCHO(CF−R−CFOCHCHCHCHO−)
HOCH−(cC10)−CH−OCF−R−CFO−CH−(cC10)−CHO−(CF−R−CFO−CH−(cC10)−CH−O)H。
【0025】
例示した化合物において、指数nは、1〜10の整数であり、純粋な生成物であっても、nが異なる生成物の混合物であってもよい。例示した式中のRは、上に定義した(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖であり、好ましくは、式:
−[CFO(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)CF]−
[式中、p、q、r、sは、0以上の整数であり、sが0以外である場合、r/s比は好ましくは0.5〜2.5であり、(r+s)が0以外である場合、(p+q)/(r+s)比は好ましくは0〜0.2であり(境界値を含む)、数平均分子量は、通常、200〜1000である]
に適合する。
【0026】
驚くべきことに、そして予期せぬことに、本発明のハイドロフルオロアルコールは、特に塩基及び酸(ブレンステッド酸及びルイス酸の両方)に対し化学的に安定であり、熱安定性も有している。約180℃または210℃を超える高温でさえも脱フッ化水素反応が全く起こらない。
【0027】
本発明の式(I)の化合物は、以下のステップを含む方法によって調製してもよい:
ステップa)
フッ化物陰イオン供給源の存在下に、
式:
B−O−R−O−B (II)
[式中、
は上記と同義であり、
Bは、FC(O)−、R’−SO−(式中、芳香族基、直鎖または可能であれば分岐の水素化または(ペル)フルオロ化C〜C10アルキルである)である]
の二官能性アルキル化化合物を、
式:
A’−(R−COX (III)
[式中、
X及び指数aは上記と同義であり、
は上記と同義であり(任意的な懸垂基−CFYOROHは任意的な懸垂基−COYで置換されている)、
A’は、−COX(Xは上記と同義である)または−F、−Cl、及びHから選択される基であり、但し、A’は、a=1である場合に限り、−F、−Cl、及びHから選択される基であってもよい]
のカルボニル化合物と、
比k:
k=アルキル化剤(II)の−Bの当量/((III)の−COXの当量 + −COYの当量)
が1〜100(境界値を含む)となるように(但し、A’が−F、−Cl、または−Hである場合、kは1.25〜100(境界値を含む)である)反応させることによって、
式:
A”−(R−CFX−O−RO−(CFX−(R−CFX−O−RO−)H (I)
[式中、
は上記と同義であり、
は上記と同義であり(任意的な懸垂基−CFYOROHは懸垂基−CFYOROB(式中、Y及びBは上記と同義である)で置換されている)、
式(III)中のA’が−COX(Xは上記と同義である)である場合、A”は−CFXOROBであり、式(III)中のA’が−F、−Cl、及びHから選択される基である場合、A”は−F、−Cl、及びHから選択される基であり、
nは上記と同義であり、但し、A”が−F、−Cl、及びHから選択される場合はn=0である]
の生成物を得るステップと;
ステップb)
式(IV)の生成物を加水分解または造塩し、式(I)の化合物を生成させるステップと;
ステップc)
ステップb)で得られた式(I)の生成物を回収するステップ。
【0028】
ステップa)についてより詳細に説明する。
【0029】
式(II)のアルキル化剤において、好ましくは、R’は、直鎖または可能であれば分岐のC〜Cアルキル基で場合により置換されている芳香族化合物であってもよい。R’は、好ましくはフェニルまたはトリルである。
【0030】
上述したように、化合物(III)の鎖Rは、懸垂基−COY(式中、Y=Fまたは直鎖もしくは可能であれば分岐のC〜Cペルフルオロアルキルである)を含んでいてもよい。ステップa)の最後に、−COY基がCFYOROBに変換される。ステップb)の最後に、−CFYOROB基が(もし存在する場合は)−CFYOROH基に変換される。
【0031】
好ましくは、このステップにおいては溶媒が使用される。極性非プロトン性溶媒がよりさらに好ましい。
【0032】
ステップa)においては、まず最初に(II)を(III)に加えるかもしくはその逆であってもよいし、またはこれらを同時に加えてもよい。好ましくは、化合物(III)をフッ化物イオンの供給源に加える。次いで、化合物(II)を反応混合物に加える。好ましい手順の1つは、撹拌しながら化合物(II)及び(III)を加えることにある。
【0033】
カルボニル試薬(III)は、単官能性、二官能性、または多官能性化合物であってもよい。式(III)の単官能性化合物は、官能価f=1である。「官能価f」という用語は、式(III)の化合物1分子中における−COX基及びCOY基の総数を意味する。二官能性化合物においてはf=2であり、多官能性化合物においてはfは3を超える。
【0034】
式(III)の化合物はまた、上に定義した単官能性、二官能性、及び多官能性化合物の混合物の形態で使用してもよい。例えば、化合物が単官能性分子を50mol%及び二官能性分子を50mol%から構成される場合、平均官能価は1.5である。
【0035】
式(III)の二官能性化合物が使用される場合、比kの値は、好ましくは1.05〜20、よりさらに好ましくは1.1〜10である。特に、kが1〜1.5の場合、nが0を超える式(I)のアルコールが得られる。反応生成物中に−COX基が依然として存在する場合は、−COXを完全に変換するためにさらなる量の二官能性アルキル化剤(II)を加えることが好ましい。
【0036】
式(III)の単官能性化合物が使用される場合、kは、好ましくは2〜100、より好ましくは3〜20から選択される。
【0037】
式(III)の多官能性化合物が使用される場合、kは、好ましくは2〜100、より好ましくは3〜20から選択される。こうすることによって、架橋生成物の形成が回避される。
【0038】
フッ化物陰イオンの供給源の例としては、金属フッ化物、例えば、場合により混合された、KF、RbF、CsF、またはAgFを挙げることができる。金属フッ化物は、天然の形態かまたは担持(例えば、木炭、NaF、またはCaF上に)して使用してもよい。フッ化物陰イオン供給源の量は、通常、−COX基及びCOY基の当量の合計の0.01〜10倍である。式(II)中のBがR’SO−である場合は、金属フッ化物を−COX基及びCOY基の当量の合計の1〜3倍の量で使用することが好ましい。このような条件下で作業することにより、90%さえ超える高い転化率が得られる。
【0039】
フッ化物陰イオンの供給源として有機フッ化物を使用することも可能である。例えば、第4級アンモニウムもしくはホスホニウム塩のフッ化物またはピリジン−HF(Olah試薬)やトリエチルアミン−HF等の種類の錯体がある(例えば、Y.Cherbukov、G.J.Lillquist、J.Fluor.Chem.、118(2002)、pp.123〜126参照)。
【0040】
好ましくは、フッ化物陰イオンの供給源として、KFまたはCsFが使用される。
【0041】
反応は、好ましくは、無水条件下で実施される。例えば、無機フッ化物陰イオンの供給源の脱水を、窒素気流中または真空中、高温(T>200℃)下で長時間加熱することにより実施してもよい。溶媒の脱水は、当該技術分野において周知の方法により、例えば蒸留によるかまたは例えばモレキュラーシーブによる処理によって実施される。
【0042】
式(III)の生成物は、微量のHFを含んでいてもよい。この場合、反応は、好ましくは、酸受容体またはHF受容体、例えば、第3級アミンまたはフッ化ナトリウムを用いて実施される。第3級アミンは脂肪族または芳香族化合物であってもよく、好ましくは脂肪族化合物である。例えば、トリエチルアミン及びトリブチルアミンを挙げることができる。
【0043】
場合により、段階a)の反応を、反応速度を増大させることを目的として、相間移動触媒、例えばクラウンエーテル及びクリプタンドの存在下に実施することも可能である。
【0044】
溶媒としては、トルエンやキシレン等を挙げることができる。グリム、好ましくは、ジグリム、トリグリム、もしくはテトラグリム、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、またはジメチルスルホキシド、より好ましくはグリムを極性非プロトン性溶媒として挙げることができる。場合により、一部フッ素化された共溶媒、例えば、ハイドロフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、またはハイドロフルオロカーボンを使用することが可能である。H−Galden(登録商標)等の商業的に周知のハイドロフルオロポリエーテルが好ましい共溶媒である。
【0045】
反応温度は、通常、−50℃〜+200℃、好ましくは−40℃〜+150℃である。
【0046】
温度の選択は、アルキル化化合物(II)の反応性に加えて、反応混合物の沸点及び圧力に依存する。アルキル化剤の反応性が高くなるほど、反応温度は低くなる。非常に反応性の高いアルキル化化合物(II)、例えば、トリフラート(B=CFSO−)を用いて作業する場合、反応は、有利には、室温またはより低温で実施してもよい。
【0047】
フルオロギ酸エステル(B=FC(O)−)等のアルキル化化合物(II)を用いて作業することにより、反応は、好ましくは、60〜150℃の温度で実施される。
【0048】
ステップa)における圧力は、一般には1〜50バール、好ましくは1〜20バール、より好ましくは1〜10バールである。
【0049】
ステップa)の終了後にステップb)を実施する前に、周知の技法、例えば分離または蒸留を用いて、溶媒、存在する場合は共溶媒、及び過剰のアルキル化剤を除去することが好ましい。
【0050】
が単官能性または二官能性ペルフルオロポリエーテルである化合物(III)は、例えば、特許である米国特許第3847978号明細書、米国特許出願公開第2004/147780号明細書、米国特許第3242218号明細書、米国特許出願公開第2005/0192413A1号明細書、及び国際公開第2007/075804号パンフレットに記載されているように調製される。
【0051】
が多官能性ペルフルオロポリエーテルである化合物(III)は、例えば、特許である米国特許第4853097号明細書に記載されているように調製してもよい。
【0052】
がペルフルオロアルキルである化合物(III)は、例えば、特許である米国特許第2519983号明細書及び米国特許第5466877号明細書に記載されているように調製してもよい。
【0053】
フルオロギ酸アルキルエステル(B=FC(O)−)類に属する化合物(II)は、例えば、式HO−R−OH(式中、Rは上記と同義である)の水素化されたジオールを、COFX’(式中、X’=F、Br、Cl)と、例えば、特許である米国特許第3362980号明細書またはP.E.Aldrich及びW.A.Sheppard、J.Org.Chem.、29(1964)、pp.11〜15に記載された手順に従い反応させることによって調製してもよい。
【0054】
BがR’−S(O)−であるアルキル化化合物(II)は、トシラート(B=CH−Ar−SO−、Ar=フェニル)及びトリフラート(B=CFSO−)類に関しては、一般に市販されている。
【0055】
これらの製品は、例えば、Vogel’s、「Textbook of Practical Organic Chemistry」、第4版、Longman中の文献に報告されている手順に従い、式HO−R−OH(Rは上記と同義である)の水素化されたジオールを、式R’−SO−X’(X’=F、Cl、Br)(式中、R’は上記と同義である)の対応するスルホン酸のハロゲン化物と反応させることによって合成してもよい。
【0056】
ステップb)において、式(IV)の化合物は、加水分解または造塩反応を介して式(I)のハイドロフルオロアルコールに変換される。加水分解または造塩反応は、a)で得られた反応混合物をそのまままたはステップa)の反応生成物から溶媒及び/もしくは試薬及び/もしくは副生成物を例えば蒸留によって除去した後に5℃〜150℃の温度で実施してもよい。造塩は、塩基、例えばNaOHまたはKOHの水溶液を用いて実施される。
【0057】
ステップc)において、式(I)の生成物が、例えば蒸留によるかまたは分離によって回収される。得られた生成物を、例えば洗浄することによって精製してもよい。好ましくは、得られた生成物をアルミナの床を通過させる。
【0058】
上述したように、本発明の式(I)のハイドロフルオロアルコールは、化学的安定性、特に塩基ならびにブレンステッド及びルイス酸に対する安定性が、従来技術におけるハイドロフルオロアルコールと比較して改善されており、180℃を超え、最高で約220℃ものより高温に対する改善された熱安定性を兼ね備えている。
【0059】
本発明のハイドロフルオロアルコールを撥水及び/または撥油性を付与するための表面処理に使用してもよい。表面の例としては、板紙、ガラス、石、木材、布帛等を挙げることができる。
【0060】
アルコールは、例えば、洗浄や、含水素含フッ素モノマー、好ましくは含フッ素モノマーの重合における界面活性剤として使用してもよい。さらに、これらを、溶融加工できない(コ)ポリマー、溶融加工可能なポリマー、及びエラストマー性ポリマーの調製における重合用界面活性剤として使用してもよい。これらはまた、オイルまたはグリース形態のフッ素系潤滑剤、好ましくはペルフルオロポリエーテル潤滑剤に、例えば、防錆及び耐摩耗性を付与するための潤滑性添加剤として使用してもよい。
【0061】
本発明のアルコールの他の使用は、含水素含フッ素ポリマーの加工助剤としてである。これらはまた、含水素含フッ素ポリマーの表面性状を改質するための添加剤として使用してもよい。
【0062】
本発明のアルコールはまた、磁性潤滑剤として、または例えば、特許である米国特許第7285231号明細書に記載されているような液浸顕微鏡観察用液体として使用してもよい。
【0063】
特に、官能価が2であるハイドロフルオロポリエーテルアルコールを、Tgが低い高分子材料合成用のマクロマー(ビルディングブロック)として使用してもよい。多官能性アルコールを架橋ポリマー用に使用してもよい。
【0064】
本発明の式(I)の化合物は、環境に優しい含水素溶媒(hydrogenated solvent)、例えば、ケトン及びエーテル中に分散または溶解してもよい。これは被膜の形成において特に有利である
【0065】
本発明の式(I)のハイドロフルオロアルコールは、様々な種類の官能性を有する誘導体の調製における前駆体として使用してもよい。アセタール、ケタール、ウレタン、またはエステル、例えば、カルボン酸、リン酸、ホウ酸、スルホン酸、またはアクリル酸エステルを挙げることができる。
【0066】
本発明のアルコールから得られるエステルは、従来のものと比較すると、加水分解に対する安定性が改善されている。
【0067】
カルボン酸エステルは、例えば、式RCOOH(式中、Rは、含水素または含フッ素基、例えばC〜C20アルキルである)のカルボン酸と反応させることによって得てもよい。Rが水素化されている場合、反応は、好ましくは、酸または塩基触媒の存在下に、50〜150℃の温度で実施される。Rがペルフルオロ化されている場合、触媒の使用は任意的であり、反応は室温で実施される。
【0068】
リン酸エステルは、例えば、オキシ塩化リンPOClまたはピロリン酸[O=P(O)(OH)と反応させることによって得てもよい。
【0069】
ホウ酸エステルは、例えば、約100℃の温度で加熱しながらホウ酸HBOと反応させることによって得てもよい。
【0070】
スルホン酸エステルは、例えば、ハロゲン化スルホニル、例えば、p−トルエンスルホニルクロリド及びトリフルオロメタンスルホニルフルオリドと、比較的低温(0〜20℃)で反応させることによって得てもよい。同一条件下で、着色剤を反応させることによって、塩化チオニル、クロロ亜硫酸との誘導体(−SOCl)、及びCl末端基を有する式(I)の生成物が得られる。
【0071】
アセタール及びケタールは、例えば、触媒としてのルイス酸またはブレンステッド酸の存在下に、それぞれアルデヒド及びケトンと反応させることによって得てもよい。
【0072】
ウレタンは、例えば、イソシアネートと反応させることによって得てもよい。
【0073】
アクリル酸エステルは、例えば、塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイルと、室温〜混合物の環流点の間の温度で反応させることによって得てもよい。
【0074】
上に報告した反応は、例えば、C.Tonelliら、Journal of Fluorine Chemistry、95(1999)、pp.51〜70及びMarch’s Advanced Organic Chemistry、第5版、Wiley−Interscience Publication、2005に記載されている。
【0075】
本発明のさらなる主題は、式(I)のハイドロフルオロアルコールから得ることができる、式(V):
−(R−CFX−O[RO−(CFX−(Ra*−CFX−O−RO−)n−1−CFX−(Ra*−CFX−O]−CH−D−(T)k°
[式中、
は、
・ 式:−CFX−O−CH−D−(T)k°の基、及び
・ −F、−Cl、または−Hから選択される基
から選択され、
但し、Aは、a=1である場合に限り、−F、−Cl、及びHから選択される基であってもよく、
a及びaは、互いにかつ各出現において同一であるかまたは異なっており、独立に0または1の整数であり、
n、X、Rは、上記と同義であり、
wは、整数であり、n=0である場合は0であり、n≧1である場合は1であり、
は、上記と同義であり、任意的な懸垂基−CFYOROHは懸垂基−CFYO−CH−D−(T)k°で置換されており、
Dは、−CH−基及び末端基Tを連結する橋かけであり、
Tは、1種またはそれ以上の官能基を表し、
k°は、1〜4、好ましくは1〜2の整数であり、
qは、0または1の整数である]
を有するハイドロフルオロポリエーテルである。
【0076】
式(V)の化合物は、例えば、特許である米国特許第3810874号明細書、米国特許第4721795号明細書、及び米国特許第4757145号明細書に記載されている方法に従い調製してもよい。
【0077】
Dは、2価の基、好ましくは直鎖脂肪族基−(CHm’−(式中、m’は、1〜9の整数である)または(アルケニル)脂環式もしくは(アルケニル)芳香族基である。Dは、場合により、このアルケニル鎖または環にヘテロ原子を含んでいてもよい。場合により、Dは、アミド、イミン、エステル、またはスルフィド基を含んでいてもよい。
【0078】
炭素原子数は、脂環式基の場合は3〜9の範囲にあり、芳香族基の場合は6〜19個の範囲にあり、D基は、場合により、上に定義した脂肪族、脂環式、及び芳香族基を組み合わせることによって形成したものであってもよい。
【0079】
D基は、例えば:−CONR−(式中、Rは、以下の意味を有する:H、C〜C15アルキル基、C〜C15脂環式基、またはC〜C15芳香族基である);−CO−;−COS−;−CO−;ヘテロ原子、トリアジン基、5または6員環の芳香族複素環(好ましくは2個以上の同一または異なるヘテロ原子を含む)であってもよい。
【0080】
化合物(V)の官能価が2である場合、例えば、k°=1であり、Aが−CFX−O−CH−D−(T)のものを得ることができる。
【0081】
式(V)のハイドロフルオロポリエーテルは、重縮合または重付加反応によってポリマーを製造するためのマクロマーとして使用してもよい。
【0082】
Tが反応性を有する官能性末端基であり、かつk°>1である場合、式(V)のペルフルオロポリエーテルは、重縮合または重付加反応によって、機械的性質が改善された例えば星型ポリマーを製造するためのマクロマーとして使用される。
【0083】
反応性を有する官能性末端基Tを含む式(V)の化合物は、天然及び人工基材の表面を処理するために使用してもよく、板紙、綿、木材、石材、高分子材料、及び金属基板を挙げることができる。
【0084】
Tが、反応性を有しない官能性末端基である場合、式(V)の化合物は、表面接着性が改善された潤滑剤として使用される。
【0085】
特に、Tは、例えば:−SH、−SR”、−NR”、−COOH、SiR”3−d(式中、Qは、OR”基であり、dは、0〜3の整数であり、R”は、アルキル、脂環式、または芳香族基であり、R”は、場合によりフルオロを含む)、−CN、−NCO、−CH=CH
【化1】

−COR”、−OSOCF、−OCOCl、−OCN、
−N(R”)CN、−(O)COC(O)−、−I、−CHO、−CO、−CH(−OCH、−SOCl、−C(OCH)=NH、−C(NH)=NH、−CH(O−H)CH−OH、−CH(−COOH)、−CH(COOR”)、−CH(CHOH)、−CH(CH−NH、−CH(CN)、CH(CHO−CH−CH=CH、メチレンジオキシ基:
【化2】

で置換された芳香族基であってもよい。
【0086】
式(V)の化合物は、式(I)の化合物から、例えば、周知の反応を介して、例えば、特許である米国特許第3810874号明細書及び米国特許第6127498号明細書に記載されている試薬及び反応条件を用いて調製される。
【0087】
以下に本発明を例示する多くの非限定的な例を示す。
【実施例】
【0088】
実施例1
式(II)のアルキル化剤FC(O)O(CHOC(O)Fの調製
P.E.Aldrich及びW.A.Sheppard、J.Org.Chem.、29(1964)、pp.11〜15に報告されている教示に従い、1,4−ブタンジオールからアルキル化化合物(II)FC(O)O(CHOC(O)Fを調製する。
【0089】
実施例2
実施例1で得られたアルキル化剤(II)FC(O)O(CHOC(O)Fからの式(I)(n=0)のアルコールの調製
ステップa)
無水CsF(10.5mmol)1.6g、ジグリム15.0g、及び特許出願である米国特許出願公開第2005/0192413号明細書の教示に従い調製された、以下の構造(III):
T’−CFO(CFCFO)(CFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)−CF
(式中、T及びT’はいずれも−COFであり、s=1.91、r=0.34、p=0.002、q=0.005であり、数平均分子量は455である)を有するカルボニルペルフルオロポリエーテル(III)2.0g(4.4mmol)を、50mlのガラス製三ツ口丸底フラスコにドライボックス中で装入する。
【0090】
フッ化アシル末端基をそれぞれアルコキシ陰イオンに変換するために、混合物を室温で60分間撹拌する。
【0091】
次いで、アルキル化剤(II)FC(O)O(CHOC(O)Fを5.5g(30mmol)を加える。
【0092】
アルキル化剤(II)の当量及びカルボニル化合物(III)の当量の比kは6.8である。
【0093】
混合物を除々に110℃まで加熱し、この温度で48時間維持する。
【0094】
反応混合物の19F NMR分析から、ペルフルオロポリエーテル(III)の−COF末端基の95mol%が化合物(IV)の−CFO(CHOC(O)Fに変換されたことが示される。
【0095】
真空蒸留することにより、ジグリム及び未反応のブタンジオールホルメートFC(O)O(CHOC(O)F(II)を回収する。
【0096】
ステップb)
蒸留残渣をポリエチレン製容器に移し、末端基−O(CHO−COFをすべて−O(CH−OHに変換するために水で数回洗浄する。
【0097】
ステップc)
含フッ素相(fluorinated phase)を分離、回収し、H−Galden(登録商標)ZV60を15gで希釈し、アルミナ3gで精製する。
【0098】
溶液を濾過して溶媒を留去することにより、生成物1.4gを得る。これは、19F NMR及びH NMR分析から、式:
HO−CHCHCHCH−OCF−R−CFO−CHCHCHCHOH
(式中、Rは、−CFO−(CFCFO)(CFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)CF−であり、s=1.90、r=0.32、p=0.002、及びq=0.005であり、得られた生成物(I)の数平均分子量は635である)を有する構造(I)の化合物から構成されることがわかる。
【0099】
実施例3
FC(O)O(CHOC(O)Fから出発する、式(I)(n>0)のアルコールの調製
ステップa)において無水CsF(32.9mmol)5.0g、カルボニルペルフルオロポリエーテル(III)6.9g(15.1mmol)、及びブタンジオールホルメートFC(O)O(CHOC(O)Fを2.88g(15.8mmol)を用いることを除いて実施例2を繰り返す。
【0100】
kの値は1.05である。
【0101】
混合物を除々に110℃まで加熱し、この温度で100時間維持する。
【0102】
得られた生成物の19F NMR分析から、ペルフルオロポリエーテル(III)の−COF末端基の90mol%が変換された高分子生成物の存在が示される。
【0103】
この反応混合物にジグリム中のFC(O)O(CHOC(O)Fを2.75g(15mmol)を加える。110℃で100時間反応させた後の転化率は98mol%となる。
【0104】
含フッ素相をGalden(登録商標)HT55を50gで希釈し、アルミナ8gで精製することを除いて実施例2のステップc)を繰り返す。生成物6.0gが得られる。これは、19F NMR及びH NMR分析から、式:
HOCHCHCHCH−OCF−R−CFO−CHCHCHCHO(CF−RCFOCHCHCHCHO)
(Rは、−CFO−(CFCFO)(CFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)CF−であり、s=1.91、r=0.35、p=0.004、q=0.005、n=7.4であり、数平均分子量は4700である)を有する構造(I)の化合物から構成されることがわかる。生成物は非常に粘性の高い液体ポリマーである。
【0105】
実施例2及び3のデータは、比kを変化させることによってnの値を制御することが可能であることを示している。
【0106】
実施例4
アルキル化剤(II)FC(O)OCH−(cC10)−CHOC(O)Fの調製
P.E.Aldrich及びW.A.Sheppard、J.Org.Chem.、29(1964)、pp.11〜15に報告されている教示に従い、1,4−シクロヘキサンジメタノールからアルキル化化合物(II)FC(O)OCH−(cC10)−CHOC(O)Fを調製する。
【0107】
実施例5
実施例4で得られたFC(O)OCH−(cC10)−CHOC(O)F(II)から出発する式(I)(n=0)のアルコールの調製
ステップa)において、無水CsF(9.9mmol)1.5g、カルボニルペルフルオロポリエーテル(III)1.5g(3.3mmol)、及び実施例4で調製したアルキル化剤(II)FC(O)OCH−(cC10)−CHOC(O)Fを4.1g(17mmol)を用いることを除いて実施例2を繰り返す。
【0108】
kの値は5.2である。
【0109】
混合物を除々に110℃まで加熱し、この温度で100時間維持する。
【0110】
ステップb)において、末端基−R−OCOFを加水分解する。
【0111】
ステップc)完了後、生成物1.2gが得られる。これは、19F NMR及びH NMR分析から、式:
HOCH−(cC10)−CH−OCF−R−CFO−CH−(cC10)−CHOH
[式中、Rは、−CFO−CFCFO)(CFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)CF−であり、s=1.88、r=0.34、p=0.001、q=0.004であり、生成物(I)の数平均分子量は747である]
を有する構造(I)を有している。
【0112】
実施例6
エチレングリコールトシラート(II)から出発する式(I)(n=0)のアルコールの調製
ステップa)において、1リットルのガラス製三ツ口丸底フラスコ内で、無水CsF(138mmol)21g、ジグリム600g、カルボニルペルフルオロポリエーテル(III)(s=3.64、r=1.54、p=0.015、q=0.018、数平均分子量740)27g(36mmol)、及びアルキル化剤(II)としてのエチレングリコールトシラート(Aldrich)200g(540mmol)を用いることを除いて実施例2を繰り返す。
【0113】
kは15.9である。
【0114】
混合物を除々に60℃まで加熱し、この温度で200時間維持する。
【0115】
反応混合物の19F NMR分析から、ペルフルオロポリエーテル化合物(III)の−COF末端基の転化率が99mol%であることが示される。
【0116】
洗浄に20重量%のKOH水溶液250mlを用いることを除いて実施例2のステップb)を繰り返す。
【0117】
ステップc)
混合物を撹拌しながら90℃で1時間加熱する。撹拌を停止し、混合物を90℃に維持し、分離した含フッ素相をシリンジを用いて取り出す。得られた生成物をステップb)の水性KOHで処理し、この処理を3回繰り返す。次いで、生成物を蒸留水で洗浄する。
【0118】
含フッ素化合物20gが式(I):
HO−(CH−OCF−R−CFO−(CHOH
[式中、Rは、−CFO−(CFCFO)(CFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)CF−であり、s=3.66、r=1.54、p=0.015、q=0.017であり、平均分子量は870である]
の粘性油の形態で回収される。
【0119】
実施例7
プロパンジオールトシラート(II)から出発する式(I)(n=0)のアルコールの調製
ステップa)において、50mlの三ツ口丸底フラスコ、無水CsFを1.5g(9.9mmol)(熱処理は、窒素気流中、350〜370℃で4時間実施する)、テトラグリム24g、及びペルフルオロポリエーテル(III)2.0g(2.7mmol)、及びAldrichからの1,3−プロパンジオールジ−p−トシラート(TsO−CHCHCH−OTs)14.0g(36mmol)を用いることを除いて実施例6を繰り返す。
【0120】
kの値は13.3である。
【0121】
混合物を除々に100℃まで加熱し、この温度で20時間維持する。
【0122】
反応混合物の19F NMR分析から、ペルフルオロポリエーテル化合物(III)の−COF末端基の転化率が99mol%を超えることが示される。
【0123】
ステップb)においては、20重量%のKOH水溶液40mlを使用する。
【0124】
ステップc)の後、式:
HO−CHCHCH−OCF−R−CFO−CHCHCHOH
[式中、Rは、−CFO−(CFCFO)(CFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)CF−であり、s=3.62、r=1.50、p=0.015、q=0.018であり、数平均分子量は900である]
を有する構造(I)の化合物1.0gが粘性油の形態で得られる。
【0125】
実施例8
プロパンジオールトシラート(II)からのアルコール(I)(n>0)の調製
ステップa)において、50mlの三ツ口丸底フラスコ、無水CsFを1.5g(9.9mmol)(熱処理は、窒素気流中、350〜370℃で4時間実施する)、テトラグリム12g、ペルフルオロポリエーテル(III)2.0g(2.7mmol)、及びAldrichからの1,3−プロパンジオールジ−p−トシラート(TsO−CHCHCH−OTs)1.15g(3.0mmol)を用いることを除いて実施例6を繰り返す。
【0126】
kの値は1.1である。
【0127】
混合物を除々に100℃まで加熱し、この温度で20時間維持する。次いで、1,3−プロパンジオールジ−p−トシラート(10.4mmol)4gを加える。混合物を100℃で50時間撹拌する。
【0128】
反応混合物の19F NMR分析から、ペルフルオロポリエーテル化合物(III)の−COF末端基の転化率が99mol%であることが示される。
【0129】
ステップc)の後、式:
HO−CHCHCH−OCF−R−CFO−CHCHCHO−(CF−R−CFO−CHCHCHO)−H
[式中、Rは、−CFO−(CFCFO)(CFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)CF−であり、s=3.62、r=1.59、p=0.011、q=0.014、n=6.4であり、数平均分子量は6100である]
を有する構造(I)の化合物1.8gが粘性油の形態で得られる。
【0130】
実施例9
単官能性ペルフルオロアルキルアルコール(I)の調製
無水CsF(155mmol)24g、ジグリム675g、及びエチレングリコールトシラート(Aldrich)225g(610mmol)を、ドライボックス中、1リットルのスチール製オートクレーブに装入する。次いで、ABCRから供給されるヘプタフルオロブチリルフルオリドCFCFCFCOF(Bp=8℃)22.5g(103mmol)を−10℃で縮合させることによって導入する。
【0131】
kの値は5.9である。
【0132】
この混合物を10時間室温で撹拌した後、40℃で40時間加熱し、次いで、60℃で40時間加熱する。
【0133】
反応混合物を排出し、真空蒸留する。
【0134】
蒸留残渣に20重量%のKOH水溶液250mlを加える。混合物を蒸留し、留出物を精留する。
【0135】
式:
CFCFCFCFOCHCHOH
の生成物13.5gを得る。
【0136】
適用試験
実施例10
酸安定性試験
実施例6で得られた生成物12meq.を25mlのガラス製丸底フラスコに装入する。20重量%の水性HIを10g(16mmol)を撹拌しながら加え、溶液を除々に100℃の温度まで加熱する。
【0137】
3時間毎に19F NMR分析用試料を採取し、試料2〜3滴を重水素化アセトン約1.5mlで希釈する。
【0138】
12時間後に観測した19F NMRスペクトルは初期の試料から変化していない。したがって、化合物は劣化していない。
【0139】
実施例11
実施例9の生成物を用いたことを除いて実施例10を繰り返した。この化合物は劣化していない。
【0140】
比較例12
AldrichからのアルコールCFCFCFCHOH(b.p.96〜97℃)を以下の手順に従いエチレンオキシドと反応させることによって、式:
CFCFCFCHO(CHCHO)sa
の単官能性アルコールに変換する。
【0141】
スチール製反応器内で0.11g(1mmol)の量のt−BuOKをCFCFCFCHOH4.0g(20mmol)に50℃の温度で加える。非常にゆっくりと撹拌しながらエチレンオキシド1.15g(26mmol)を加える。16時間後、反応混合物を室温に冷却して排出し、10重量%のHCl水溶液で酸性化する。これを濾過した後、含フッ素相4.6gを分離する。
【0142】
19F NMR分析から、分離した相の化合物は式:
CFCFCFCHO(CHCHO)sa
(sa=1.2)を有している。
【0143】
この化合物は、式:
CFCFCFCHO(CHCHO)aH(sa=1) 83%
CFCFCFCHO(CHCHO)aH(sa=2) 17%
を有する2種類の異性体の混合物から形成されている。
【0144】
酸安定性試験
得られた混合物を実施例10に示した条件下で酸安定性試験に付す。
【0145】
3時間反応後には、エーテル結合CHCHO−CHCH−がすべて反応してしまっていることから、化合物CFCFCFCHO(CHCHO)Hは劣化する。
【0146】
12時間反応後には、化合物CFCFCFCHO(CHCHO)Hのエーテル結合の4%が分解していることが観測される。
【0147】
比較例12で得られた結果は、実施例10及び11と比較すると、本発明のハイドロフルオロアルコールが比較用アルコールと比較して安定性が改善されていることを示している。
【0148】
実施例13
熱安定性試験
実施例6で得られたハイドロフルオロアルコール5.2g(12meq.)を、窒素雰囲気中、ドライボックス中、25mlのAISI 316 Swagelok試料採取用スチールボンベ(steel bomb)に導入する。このボンベを220℃の温度で10時間加熱する。
【0149】
試験終了後の生成物の19F NMR及びH NMRスペクトルは出発試料の初期スペクトルと同一である。したがって、生成物は熱処理後も全く劣化していない。
【0150】
実施例14
実施例9で得られたハイドロフルオロアルコールを用いることを除いて実施例13を繰り返す。
【0151】
生成物は熱処理後も全く劣化しなかった。
【0152】
比較例15
AldrichからのハイドロフルオロアルコールCFCFCFCFCHCHOHを用いることを除いて実施例12を繰り返す。
【0153】
得られた生成物の19F NMRスペクトルから、ハイドロフルオロアルコールの約7mol%が劣化したことが示される。19F NMR及びH NMR分析から、劣化による主要な生成物はCFCFCFCF=CHCHOHであることがわかり、これは脱フッ化水素が起こったことを示している。
【0154】
比較例15の結果は、実施例13及び14から得られた結果と比較すると、本発明のハイドロフルオロアルコールがより熱的に安定であることを示している。
【0155】
実施例16
塩基安定性試験
実施例6で得られたハイドロフルオロアルコール8.2g(19meq)をガラス製丸底フラスコに装入し、ここに、10重量%のKOH水溶液15g(KOH27mmol)を加える。混合物を90℃で10時間加熱する。
【0156】
反応混合物の19F NMR及びH NMR分析からはハイドロフルオロアルコールの劣化は認められない。
【0157】
実施例17
実施例9で得られたハイドロフルオロアルコールを用いることを除いて実施例16を繰り返す。
【0158】
NMR分析から、ハイドロフルオロアルコールが劣化していないことがわかる。
【0159】
比較例18
AldrichからのハイドロフルオロアルコールCFCFCFCFCHCHOHを用いることを除いて実施例16を繰り返す。
【0160】
NMRスペクトルから、ハイドロフルオロアルコールの約10mol%が劣化したことが示される。劣化による主要な生成物は:
CFCFCFCF=CHCHOH
である。
【0161】
比較例18の結果は、実施例16及び17と比較すると、本発明のハイドロフルオロアルコールが実施例18の比較アルコールよりも塩基に対しより安定であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
A−(R−CFX−O−RO−(CFX−(Ra*−CFX−O−RO−)H (I)
[式中、
は、2価のC〜C20炭化水素系残基であり、
Xは、Fであるかまたは場合により1個もしくはそれ以上のヘテロ原子を含む直鎖もしくは可能であれば分岐のC〜C(ペル)フルオロアルキルであり、
a及びaは、互いにかつ各出現において同一であっても異なっていてもよく、独立に0または1の整数であり、
は、(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン(PFPE)鎖または(ペル)フルオロアルキル鎖であり、
Aは、
・ 式:HO−R−O−CFX−(式中、R及びXは上記と同義である)の基ならびに
・ −F、−Cl、及びHから選択される基
から選択され、但し、a=1である場合に限り、AはF、−Cl、及びHから選択される基であってもよく、
nは、0〜200の整数であり、
但し、Aが−F、−Cl、及びHから選択される場合はn=0である]
のハイドロフルオロアルコール。
【請求項2】
が、
・ 直鎖または可能であれば分岐のC〜C10アルキル鎖、
・ C〜C10環式環または1個もしくはそれ以上のC〜C10環式環を含むC〜C20アルキル鎖、
・ 芳香環であって、場合により前記芳香環の1個もしくはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている前記芳香環または1個もしくはそれ以上の前記芳香環を含むC〜C20アルキル鎖
から選択され、
が、1個またはそれ以上の不飽和を含んでいてもよく、前記環式及び/または芳香環の1個またはそれ以上の水素原子が直鎖または可能であれば分岐のC〜C10(フルオロ)アルキル鎖で置き換えられていてもよい、請求項1に記載のハイドロフルオロアルコール。
【請求項3】
nが、0〜100、好ましくは0〜50の範囲にあり、かつaが1である、請求項1または2に記載のハイドロフルオロアルコール。
【請求項4】
が、数平均分子量が約100〜約10000であるPFPE鎖であるかまたは直鎖もしくは可能であれば分岐のC〜C30炭素原子の(ペル)フルオロアルキル鎖である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコール。
【請求項5】
が、(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖であり、前記鎖上に統計学的に分布した1種またはそれ以上の以下の単位:−(CO)−、−(CFO)−、−(CFCFO)−、−(CFCFCFO)−、−(CFCFCFCFO)−、−(CF(CF)O)−を含み、場合により、1種またはそれ以上の以下の単位:−(CFCF(CFYOROH)O)−、−(CF(CFYOROH)CFO)−、−(CF(CFYOROH)O)−(Y及びRは上記と同義である)を含む(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコール。
【請求項6】
が、以下の構造:
(B)
−CFO[(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)−(CFCF(CFYOROH)O)p’(CF(CFYOROH)O)q’]CF
[式中、指数r、s、p、q、p’、及びq’は、上述した数平均分子量になるような0を含む整数であり、好ましくは、rが0以外である場合、s/rは0.1〜10であり、(r+s)が0以外である場合、(p+q)/(r+s)は0〜0.2(境界値を含む)である];
(C)
−CFY”O[(CFO)(CFCFO)(CFCF(CF)O)(CF(CF)O)−(CFCF(CFYOROH)O)p’(CF(CFYOROH)O)q’]−CFY’−
[式中、指数r、s、t、u、p’、及びq’は、ここに示した数平均分子量になるような0を含む整数であり、好ましくは、sが0以外である場合、t/sは0.1〜10であり、(t+s)が0以外である場合、(r+u)/(t+s)は0.01〜0.5、より好ましくは0.01〜0.2であり、Y、Y’、及びY”は、F及び直鎖または可能であれば分岐のC〜C(ペル)フルオロアルキルから独立に選択される]
から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコールの調製方法であって、以下のステップ:
ステップa)
フッ化物陰イオン供給源の存在下に、
式:
B−O−R−O−B (II)
[式中、
Bは、FC(O)−、R’−SO−(式中、R’は、芳香族基、直鎖または可能であれば分岐の水素化または(ペル)フルオロ化C〜C10アルキルである)
である]
の二官能性アルキル化化合物を、
式:
A’−(R−COX (III)
[式中、
において、任意的な懸垂基−CFYOROHは任意的な懸垂基−COYで置換されており、
A’は、−COX(Xは上記と同義である)または−F、−Cl、及びHから選択される基であり、但し、A’は、a=1である場合に限り、−F、−Cl、及びHから選択される基であってもよい]
のカルボニル化合物と、
比k:
k=アルキル化剤(II)の−Bの当量/((III)の−COXの当量 + −COYの当量)
が1〜100(境界値を含む)となるように(但し、A’がF、Cl、またはHである場合、kは1.25〜100(境界値を含む)である)反応させることによって、
式:
A”−(R−CFX−O−RO−(CFX−(Ra*−CFX−O−RO−)B (IV)
[式中、
において、任意的な懸垂基−CFYOROHは任意的な懸垂基−CFYOROBで置換されており、
式(III)中のA’が−COX(Xは上記と同義である)である場合、A”は−CFXOROBであり、式(III)中のA’が−F、−Cl、及びHから選択される基である場合、A”は−F、−Cl、及びHから選択される基であり、
nは上記と同義であり、但し、A”が−F、−Cl、及びHから選択される場合はn=0である]
の生成物を得るステップと;
ステップb)
式(IV)の生成物を加水分解または造塩し、式(I)の化合物を生成させるステップと;
ステップc)
式(I)の生成物を回収するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
式(II)のアルキル化剤において、R’が、直鎖または可能であれば分岐のC〜Cアルキル基で場合により置換された芳香族であってもよく、好ましくはフェニルまたはトリルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)において、式(III)の二官能性化合物が用いられる場合、kは1.05〜20であり、式(III)の単官能性または多官能性化合物が用いられる場合、kは2〜100、好ましくは3〜20である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記フッ化物陰イオン供給源が、場合により(好ましくは、木炭、NaF、またはCaF上に)担持された金属フッ化物、好ましくは、KF、RbF、CsF、またはAgF;有機フッ化物、ピリジン−HFまたはトリエチルアミン−HF等の種類の錯体から選択される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
表面に撥水/撥油性を付与するための処理における被膜としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコールの使用。
【請求項12】
好ましくは、洗浄、含水素または含フッ素モノマー、好ましくは含フッ素モノマーの重合、ならびに溶融加工できない(コ)ポリマー、溶融加工可能なポリマー、及びエラストマーの調製における界面活性剤としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコールの使用。
【請求項13】
オイルまたはグリースの形態のフッ素系潤滑剤、好ましくはペルフルオロポリエーテル潤滑剤に防錆及び耐摩耗性を付与するための潤滑性添加剤としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコールの使用。
【請求項14】
含水素含フッ素ポリマーの加工助剤としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコールの使用。
【請求項15】
含水素ポリマーに撥油性を付与するための添加剤としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコールの使用。
【請求項16】
官能性誘導体、好ましくは、エステル、アセタール、及びケタールの調製における、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイドロフルオロアルコールの使用。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の式(I)のハイドロフルオロアルコールから得ることができる、式(V):
−(R−CFX−O[RO−(CFX−(Ra*−CFX−O−RO−)n−1−CFX−(Ra*−CFX−O]−CH−D−(T)k°
[式中、
は、
・ 式:−CFX−O−CH−D−(T)k°の基及び
・ −F、−Cl、または−Hから選択される基
から選択され、但し、Aは、a=1である場合に限り、−F、−Cl、及びHから選択される基であってもよく、
a及びaは、互いにかつ各出現において同一であるかまたは異なっており、独立に、0または1の整数であり、
n=0である場合、wは0であり、n≧1である場合、wは1であり、
において、任意的な懸垂基−CFYOROHは任意的な懸垂基−CFYO−CH−D−(T)k°で置換されており、
Dは、前記−CH−基及び前記末端基Tを連結する橋かけであり、
Tは、−OH以外の1種またはそれ以上の官能基を表し、
k°及びqは、整数であり、k°は、1〜4、好ましくは1〜2の範囲にあり、qは、0または1の整数である]
を有する官能性誘導体。
【請求項18】
Tが、−SH、−SR”、−NR”、−COOH、−SiR”3−d(式中、Qは、OR”基であり、dは、0〜3の整数であり、R”は、アルキル、脂環式、または芳香族基である)、−CN、−NCO、−CH=CH
【化1】

−COR”、−OSOCF、−OCOCl、−OCN、−N(R”)CN、−(O)COC(O)−、−I、−CHO、−CO、−CH(−OCH、−SOCl、−C(OCH)=NH、−C(NH)=NH、−CH(O−H)CH−OH、−CH(−COOH)、−CH(−C−OOR”)、−CH(CHOH)、−CH(CH−NH、−CH(CN)、−CH(CHO−CH−CH=CH
から選択される、請求項17に記載の官能性誘導体。

【公表番号】特表2011−530565(P2011−530565A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522491(P2011−522491)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060302
【国際公開番号】WO2010/057691
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】