説明

熱延コイルの顕熱回収装置

【課題】熱延コイルの顕熱をスターリングエンジンの熱源として回収する際に、熱延コイルが冷却して収縮しても、スターリングエンジンのヒータを伝熱部材から容易に取り外すことが可能な熱延コイルの顕熱回収装置を提供する。
【解決手段】顕熱回収装置10は、熱延コイルCの中空部C2に挿入されコイル内周面C1に接触する円筒状の伝熱部材31と、伝熱部材31内に挿入され伝熱部材31と接触する円柱状のヒータ15が設けられたスターリングエンジン12とを備え、伝熱部材31の中心軸方向に延在する第1の突条歯が伝熱部材31の内周面に複数形成されると共に、第1の突条歯間に遊嵌される第2の突条歯がヒータ15の外周面に複数形成されている。第1の突条歯間で第2の突条歯を円周方向に移動させて第1の突条歯の側面と第2の突条歯の側面とを接触させることにより、熱延コイルCの顕熱が第1の突条歯と第2の突条歯の接触面を介して回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延後に巻き取られた熱延コイルの顕熱を回収する顕熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延後に巻き取られた熱延コイルは500〜800℃の温度を有している。しかし、熱延コイルの顕熱は回収して有効利用されることなく、コイルヤードにおいて常温になるまで冷却された後、貯蔵あるいは出荷される。
そこで、特許文献1では、熱延コイルを密閉可能な容器に装入し、容器を密閉した状態で該熱延コイルに水を接触させ、大気圧以上の圧力の蒸気を発生させることにより、熱延コイルの顕熱を回収する方法が開示されている。また、特許文献2には、熱延コイルの顕熱を回収するに当たり、熱媒体として溶融塩を用いることにより、常圧下の操作で高ポテンシャルの熱を回収する方法が開示されている。
【0003】
ところで、スターリングエンジンは熱源を選ばず、温度差があれば運転できるという特徴を有することから、廃熱やバイオマスなどの熱源の有効利用に適している(例えば、特許文献3の[背景技術]参照)。本発明者等は、このスターリングエンジンの特性を熱延コイルの顕熱回収に利用すべく鋭意研究開発を重ね、特願2010−072494において、熱延コイルの中空部に挿入した伝熱部材とスターリングエンジンのヒータとを接触させることにより、熱延コイルの顕熱をスターリングエンジンの熱源(駆動エネルギー)として回収する顕熱回収装置の出願を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−075801号公報
【特許文献2】特開昭59−080730号公報
【特許文献3】特開2008−101501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特願2010−072494の発明は、図12に示すように、熱延コイルCを搬送する一対のコンベア53の下方に配置されたスターリングエンジン50と、熱延コイルCを挟んでスターリングエンジン50の上方に配置された一対の伝熱部材54とを備えている。
スターリングエンジン50は第1昇降機52に支持されて昇降する。また、一対の伝熱部材54はアーム55を介して第2昇降機56に連結され、昇降機能に加えて、互いに近づく方向に移動したり、離れる方向に移動したりする機能を有している。
スターリングエンジン50の上面にはヒータ51が設けられており、ヒータ51の上部51aは上方に向けて縮径するテーパ状とされている。一方、一対の伝熱部材54の対向面には、ヒータ51の上部51aが下方から嵌入する凹部54aが形成されている。
【0006】
熱延コイルCの顕熱を回収する際は、第2昇降機56を下降させて、一対の伝熱部材54を熱延コイルCの中空部C2に挿入させた後、一対の伝熱部材54を開いて各伝熱部材54を熱延コイルCのコイル内周面C1に接触させる。そして、第1昇降機52を上昇させてヒータ51の上部51aを一対の伝熱部材54の凹部54aに嵌入させる。これにより、熱延コイルCの顕熱は、一対の伝熱部材54を介してヒータ51に伝達され、スターリングエンジン50の熱源として利用される。
【0007】
しかし、上記構成とした場合、熱延コイルCが冷却して収縮した際、伝熱部材54を介してヒータ51の周面に収縮力が作用し、伝熱部材54からヒータ51が外れなくなるおそれがある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、熱延コイルの顕熱をスターリングエンジンの熱源として回収する際に、熱延コイルが冷却して収縮しても、スターリングエンジンのヒータを伝熱部材から容易に取り外すことが可能な熱延コイルの顕熱回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、円筒状とされた熱延コイルの顕熱を回収する顕熱回収装置であって、前記熱延コイルの中央部に設けられた中空部に挿入され該熱延コイルの内周面に接触する円筒状の伝熱部材と、前記伝熱部材内に挿入され該伝熱部材と接触する円柱状のヒータが設けられたスターリングエンジンとを備え、前記伝熱部材の中心軸方向に延在する第1の突条歯が該伝熱部材の内周面に複数形成されると共に、前記第1の突条歯間に遊嵌される第2の突条歯が前記ヒータの外周面に複数形成され、前記第2の突条歯が前記第1の突条歯間で円周方向に移動して、前記第1の突条歯の側面と前記第2の突条歯の側面が接触可能とされていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、円筒状とされた熱延コイルの中空部に挿入される伝熱部材を、複数の第1の突条歯が内周面に形成された円筒状とすると共に、スターリングエンジンのヒータを、複数の第2の突条歯が外周面に形成された円柱状とし、伝熱部材内にヒータを挿入した際、第1の突条歯間に第2の突条歯が遊嵌され、第2の突条歯が第1の突条歯間で円周方向に移動できるようにしている。
熱延コイルの顕熱を回収する際は、第1の突条歯間で第2の突条歯を円周方向に移動させて、第1の突条歯の側面と第2の突条歯の側面とを接触させることにより、熱延コイルの顕熱が第1の突条歯と第2の突条歯の接触面を介してスターリングエンジンに伝達される。一方、伝熱部材からヒータを取り外す際は、第1の突条歯間で第2の突条歯を逆方向に移動させて、第1の突条歯と第2の突条歯とを非接触とする。これにより、熱延コイルが冷却して収縮した場合でも、伝熱部材からヒータを容易に取り外すことができる。
【0010】
また、本発明に係る熱延コイルの顕熱回収装置では、前記伝熱部材が円周方向に分割され、各部分円筒が該伝熱部材の径方向に移動可能とされていることを好適とする。
当該構成では、伝熱部材が径方向に拡縮可能とされているので、熱延コイルの中空部への伝熱部材の着脱が容易となる。
【0011】
また、本発明に係る熱延コイルの顕熱回収装置では、接触する前記第1及び第2の突条歯の少なくともいずれか一方の側面に伝熱シートが貼着されていてもよい。
当該構成では、接触する第1及び第2の突条歯の少なくともいずれか一方の側面に、熱伝導率が高く柔軟性のある伝熱シートが貼着されているので、接触する突条歯の側面に多少の凹凸があっても伝熱シートを介して面接触が実現され、熱延コイルの顕熱を伝熱部材からヒータへ伝達することができる。
【0012】
また、本発明に係る熱延コイルの顕熱回収装置では、接触する前記第1及び第2の突条歯の側面が、隣接する歯底面に対して略垂直にそれぞれ形成されていることが好ましい。
伝熱部材やヒータの径が変更できない条件下では、接触する第1及び第2の突条歯の側面を、隣接する歯底面(円周面)に対して略垂直にそれぞれ形成することにより、隣接する歯底面(円周面)に対して傾斜させた場合に比べて、歯数を多くして接触面の数を増大させることができる。これにより、熱延コイルの顕熱を伝熱部材からヒータへ高い効率で伝達することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る熱延コイルの顕熱回収装置では、円筒状とされた熱延コイルの中空部に挿入される伝熱部材を、複数の第1の突条歯が内周面に形成された円筒状とすると共に、スターリングエンジンのヒータを、複数の第2の突条歯が外周面に形成された円柱状とし、伝熱部材内にヒータを挿入した際、第1の突条歯間に第2の突条歯が遊嵌され、第2の突条歯が第1の突条歯間で円周方向に移動できるようにしている。そのため、熱延コイルの顕熱を回収する際に、第1の突条歯の側面と第2の突条歯の側面とを接触させることにより、熱延コイルの顕熱を第1の突条歯と第2の突条歯の接触面を介してスターリングエンジンに伝達することができるだけでなく、熱延コイルが冷却して収縮した場合でも、第1の突条歯と第2の突条歯を非接触として伝熱部材からヒータを容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】スターリングエンジンの模式図である。
【図2】(A)〜(D)はスターリングエンジンの動作原理を説明するための模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る熱延コイルの顕熱回収装置の全体図である。
【図4】(A)は伝熱部材の側面図、(B)は伝熱部材の端面図、(C)は拡径させた伝熱部材の端面図である。
【図5】(A)はヒータの側面図、(B)はヒータの端面図である。
【図6】(A)は伝熱部材にヒータを挿入した時点、(B)はヒータを回動させて第1の突条歯と第2の突条歯を接触させた時点、(C)は熱延コイルが冷却して収縮した時点における第1及び第2の突条歯の係合状態を示す部分断面図である。
【図7】第1及び第2の突条歯の変形例を示す部分断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る熱延コイルの顕熱回収装置の動作を説明するための模式図である。
【図9】同熱延コイルの顕熱回収装置の動作を説明するための模式図である。
【図10】同熱延コイルの顕熱回収装置の動作を説明するための模式図である。
【図11】同熱延コイルの顕熱回収装置の動作を説明するための模式図である。
【図12】先願に係る発明の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。
【0016】
[スターリングエンジン]
図1にスターリングエンジン11の一例を示す。このスターリングエンジン11は、ディスプレーサピストン17とパワーピストン18が同一のシリンダ24内に配置されたβ形と呼ばれるタイプである。ディスプレーサピストン17とパワーピストン18はそれぞれコネクティングロッド19、20を介してクランクシャフト21に90°の位相差を有して連結されている。また、シリンダ24には、ヒータ13aと再生器13bとクーラ13cが直列に配置された熱交換器13が接続されている。熱交換器13は、シリンダ24内の作動ガス(例えばヘリウム)を加熱したり冷却したりする。
ディスプレーサピストン17は、シリンダ24内部の作動ガスを移動させるだけで、クランクシャフト21を回す力はなく、パワーピストン18がクランクシャフト21を回す働きをする。なお、クランクシャフト21には、ディスプレーサピストン17に初動作を与える際にモータとして機能すると共に、クランクシャフト21の回転によって発電する発電機23と、クランクシャフト21をスムーズに回転させるためのフライホイール22とが取り付けられている。
【0017】
図2を用いてスターリングエンジンの動作原理について説明する。なお、理解を容易にするため、ディスプレーサピストン17が第1シリンダ25内、パワーピストン18が第2シリンダ26内にそれぞれ配置され、第1シリンダ25と第2シリンダ26が連通するγ形のスターリングエンジンについて説明する。
(1)第1シリンダ25内のディスプレーサピストン17が圧縮空間S2側へ移動することにより、圧縮空間S2に存在した作動ガスは熱交換器13を通過して膨張空間S1に移動する(図2(A)参照)。作動ガスが熱交換器13を通過する際、作動ガスは再生器13bに蓄えられた熱を受け取り、ヒータ13aによって加熱される。
(2)加熱された作動ガスが膨張空間S1に移動することにより、膨張空間S1内のガス圧が高まる。これにより、パワーピストン18が矢印の方向に押され、パワーピストン18はクランクシャフト21を回転させる(図2(B)参照)。
【0018】
(3)クランクシャフト21の回転に伴って、ディスプレーサピストン17は膨張空間S1側へ移動する(図2(C)参照)。これにより、膨張空間S1に存在した作動ガスは熱交換器13を通過して圧縮空間S2に移動する。作動ガスが熱交換器13を通過する際、作動ガスは再生器13bに熱を奪われ、クーラ13cによって冷却される。
(4)冷却された作動ガスが圧縮空間S2に移動することにより、圧縮空間S2内のガス圧が低下する。これにより、パワーピストン18が矢印の方向に押され、パワーピストン18はクランクシャフト21を回転させる(図2(D)参照)。
【0019】
スターリングエンジンでは、上記一連の動作が繰り返されることにより、クランクシャフト21が回転する。
【0020】
[顕熱回収装置の構成]
次に、本発明の一実施の形態に係る熱延コイルの顕熱回収装置10(以下では、単に「顕熱回収装置」と呼ぶ。)について説明する。
図3に顕熱回収装置10の全体図を示す。顕熱回収装置10は、作動ガスの膨張と圧縮を交互に繰り返すことにより回転力を得るスターリングエンジン12と、熱延コイルCの顕熱をスターリングエンジン12に伝達する伝熱装置30と、熱延コイルCを支持する昇降機34とを備えている。
【0021】
円筒状の熱延コイルCは、中心軸が水平となるように、即ち熱延コイルCの両端面が鉛直となるように、昇降機34上に載置される。スターリングエンジン12は熱延コイルCの一方の端面側に、伝熱装置30は熱延コイルCの他方の端面側にそれぞれ配置されている。
【0022】
伝熱装置30は、熱延コイルCの中央部に設けられた中空部C2に対峙して配置される円筒状の伝熱部材31と、水平方向に延びるアーム32を介して伝熱部材31を保持する保持部33と、保持部33を支持する架台28とから概略構成されている。保持部33は架台28上を、架台28は床29上を、それぞれ熱延コイルCの中心軸方向に移動することができる。
【0023】
一方、スターリングエンジン12は架台27上に設置され、側面部には水平方向に延びる熱交換器14を有している。熱交換器14の先端部は円柱状のヒータ15とされ、熱延コイルCの中空部C2と対峙する位置に配置されている。また、スターリングエンジン12は、図示しない回動機構によってヒータ15の中心軸回りに回動可能とされている。
【0024】
顕熱回収装置10では、熱延コイルCの中空部C2に伝熱部材31を挿入し、さらに伝熱部材31内にヒータ15を挿入しなければならない。そのため、伝熱部材31、ヒータ15、及び熱延コイルCの各中心軸が同一直線上に位置するように、伝熱装置30、スターリングエンジン12、及び昇降機34が配置されている。
【0025】
伝熱部材31の詳細を図4(A)〜(C)に示す。円筒状の伝熱部材31の内周面44には、伝熱部材31の中心軸方向に延在する第1の突条歯40が所定のピッチで複数形成されている(図4(B)参照)。
また、伝熱部材31は円周方向に4分割されており、各部分円筒31aを伝熱部材31の径方向に移動させることにより、伝熱部材31を拡縮させることができる(図4(C)参照)。具体的には、アーム32の先端部間に架設されたプレート36に4台のシリンダ35が放射状に設置され、連結部31bを介してシリンダ35のロッドと部分円筒31aの後端部とがそれぞれ連結されている(図4(A)参照)。各シリンダ35のロッドを進退させることにより、各部分円筒31aを伝熱部材31の径方向に移動させることができる。
【0026】
ヒータ15の詳細を図5(A)、(B)に示す。円柱状とされたヒータ15の外周面45には、ヒータ15の中心軸方向に延在する第2の突条歯42が所定のピッチで複数形成されている。
【0027】
図6(A)〜(C)は、伝熱部材31を拡径させた状態における第1の突条歯40と第2の突条歯42の係合状態を示したものである。本実施の形態では、第1の突条歯40及び第2の突条歯42の断面を矩形状としている。第2の突条歯42の幅は第1の突条歯40間の幅より狭く、また第1の突条歯40の頂面は、対向するヒータ15の外周面45と非接触とされ、第2の突条歯42の頂面は、対向する伝熱部材31の内周面44と非接触とされている。即ち、第2の突条歯42は第1の突条歯40間に遊嵌される(図6(A)参照)。
熱延コイルCの顕熱を回収する際は、第1の突条歯40間で第2の突条歯42(ヒータ15)を円周方向(図6(B)では反時計方向)に移動させて、第1の突条歯40の側面と第2の突条歯42の側面とを接触させる。
【0028】
図6(C)は、第1の突条歯40と第2の突条歯42の対峙する側面が接触した状態で、熱延コイルCが冷却して収縮したときの第1の突条歯40と第2の突条歯42の係合状態を示している。熱延コイルCが冷却して収縮した場合でも、第1の突条歯40と第2の突条歯42はそれぞれ一方の側面のみで接触している。そのため、第1の突条歯40間で第2の突条歯42(ヒータ15)を逆方向(図6(C)では時計方向)に容易に移動させて、第1の突条歯40と第2の突条歯42とを非接触として伝熱部材31からヒータ15を容易に取り外すことができる。
【0029】
図7に第1及び第2の突条歯の変形例を示す。
図7は、接触させる第1の突条歯40と第2の突条歯42の少なくともいずれか一方の側面に伝熱シート46を貼着した例である。このようにすることで、接触する第1の突条歯40又は第2の突条歯42の側面に多少の凹凸があっても面接触が実現され、伝熱シート46を介して、熱延コイルCの顕熱を伝熱部材31からヒータ15へ伝達することができる。
伝熱シート46としては、熱伝導率が高く柔軟性のあるものであればよく、例えばグラファイトシートなどを使用することができる。
【0030】
[顕熱回収方法]
続いて、上記構成を有する顕熱回収装置10を用いた熱延コイルCの顕熱回収方法について説明する。
(1)円筒状の熱延コイルCの中心軸が水平となるようにして、昇降機34上に熱延コイルCを載置し、熱延コイルCの外周面を昇降機34で支持する(図8参照)。そして、昇降機34を昇降させて、伝熱部材31、ヒータ15、及び熱延コイルCの各中心軸が同一直線上となるように調整する。
(2)伝熱装置30の保持部33を前進させて、熱延コイルCの中空部C2に、伝熱部材31を縮径させた状態で挿入する(図9参照)。
(3)伝熱部材31の後端部に装着されているシリンダ35を駆動して、伝熱部材31を拡径させ、伝熱部材31の外周面を熱延コイルCのコイル内周面C1に密着させる(図10参照)。
(4)伝熱装置30の架台28を前進させて、伝熱部材31内にスターリングエンジン12のヒータ15を挿入する(図11参照)。次いで、スターリングエンジン12自体をヒータ15の中心軸回りに回動させて、第1の突条歯40間で第2の突条歯42を円周方向に移動させる。そして、第1の突条歯40の側面と第2の突条歯42の側面とを接触させ、熱延コイルCの顕熱を第1の突条歯40と第2の突条歯42の接触面を介してスターリングエンジン12に伝達させる。
【0031】
次に、熱延コイルCの顕熱回収後の動作について説明する。
(1)スターリングエンジン12自体をヒータ15の中心軸回りに逆方向に回動させて、第1の突条歯40間で第2の突条歯42を円周方向に移動させ、第1の突条歯40と第2の突条歯42とを非接触とする(図11参照)。
(2)伝熱装置30の架台28を後退させて、スターリングエンジン12のヒータ15を伝熱部材31から取り外す(図10参照)。
(3)伝熱部材31の後端部に装着されているシリンダ35を駆動して、伝熱部材31を縮径させ、伝熱部材31の外周面と熱延コイルCのコイル内周面C1とを非接触とする(図9参照)。
(4)伝熱装置30の保持部33を後退させ、伝熱部材31を熱延コイルCの中空部C2から抜き取る(図8参照)。
【0032】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、伝熱部材を円周方向に4分割としたが、2分割や3分割などでもよい。また、上記実施の形態では、第1の突条歯の側面と第2の突条歯の側面とを接触させるためにスターリングエンジンを回動させたが、伝熱装置を回動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10:熱延コイルの顕熱回収装置(顕熱回収装置)、11、12:スターリングエンジン、13:熱交換器、13a:ヒータ、13b:再生器、13c:クーラ、14:熱交換器、15:ヒータ、17:ディスプレーサピストン、18:パワーピストン、19、20:コネクティングロッド、21:クランクシャフト、22:フライホイール、23:発電機、24:シリンダ、25:第1シリンダ、26:第2シリンダ、27、28:架台、29:床、30:伝熱装置、31:伝熱部材、31a:部分円筒、31b:連結部、32:アーム、33:保持部、34:昇降機、35:シリンダ、36:プレート、40:第1の突条歯、42:第2の突条歯、44:内周面、45:外周面、46:伝熱シート、C:熱延コイル、C1:コイル内周面、C2:中空部、S1:膨張空間、S2:圧縮空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状とされた熱延コイルの顕熱を回収する顕熱回収装置であって、
前記熱延コイルの中央部に設けられた中空部に挿入され該熱延コイルの内周面に接触する円筒状の伝熱部材と、前記伝熱部材内に挿入され該伝熱部材と接触する円柱状のヒータが設けられたスターリングエンジンとを備え、
前記伝熱部材の中心軸方向に延在する第1の突条歯が該伝熱部材の内周面に複数形成されると共に、前記第1の突条歯間に遊嵌される第2の突条歯が前記ヒータの外周面に複数形成され、
前記第2の突条歯が前記第1の突条歯間で円周方向に移動して、前記第1の突条歯の側面と前記第2の突条歯の側面が接触可能とされていることを特徴とする熱延コイルの顕熱回収装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱延コイルの顕熱回収装置において、前記伝熱部材が円周方向に分割され、各部分円筒が該伝熱部材の径方向に移動可能とされていることを特徴とする熱延コイルの顕熱回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱延コイルの顕熱回収装置において、接触する前記第1及び第2の突条歯の少なくともいずれか一方の側面に伝熱シートが貼着されていることを特徴とする熱延コイルの顕熱回収装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱延コイルの顕熱回収装置において、接触する前記第1及び第2の突条歯の側面が、隣接する歯底面に対して略垂直にそれぞれ形成されていることを特徴とする熱延コイルの顕熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−193640(P2012−193640A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56927(P2011−56927)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)