説明

熱形状安定性微孔質ポリメタクリルイミドフォーム

本発明は低下した孔径を有するポリメタクリルイミドを製造するための組成物に関する。請求した方法により不溶性の核剤を使用することなしに、特に均一な孔径分布を有する微孔質フォームを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に微細な孔を有する熱形状安定性ポリメタクリルイミドフォームを製造するための組成物、この組成物の製法、加工およびこのフォームの適用に関する。
【0002】
ポリメタクリルイミド−フォーム(PMI−フォーム)はすでに長い間公知である。市販名ROHACELL(R)を有するこのフォームは、特に積層材の分野において多くの適用(ラミネート、複合材料、フォーム複合材料、サンドイッチ構造体、サンドイッチ系)を有する。積層材は、外側に存在する被覆層および内側に存在するコア材料から構成されている成形体である。被覆層としては著しく高い単軸および多軸引張力を受け入れることのできる材料を使用する。例えばガラス−およびカーボンファイバー織物またはアルミニウムプレートであり、これを接着樹脂でコア材料上に固定する。コア材料としては有利に低い密度、典型的には30kg/m〜200kg/mの範囲を有する材料を使用する。
【0003】
コア材料は3つの異なるクラスに分けることができる。第1のクラスとしては、バルサ材を挙げることができる。バルサ材は、その繊維構造により、特に繊維方向に高い引張力および圧力を受けることができ、一方これに鉛直方向には非常に弱い機械特性を有する。すなわち、バルサ材は強く異方性の材料である。平均密度は比較的高く、〜150kg/mであるが、多くの適用にはなお十分に低い。この種のコア材料は例えば商標Baltec(R)として製造社DIABから販売されている。
【0004】
コア材料のその他のクラスはハニカム構造、例えばNomex(R)−ハニカムまたはアルミニウムからなるハニカムを形成する。ハニカム構造はハニカムの長さ方向には高い耐荷力と同時に、特に低い密度により優れている。この観点からはハニカムは他のコア材料より優れている。しかしながら、加工または完成した構成部材においてハニカム方向に鉛直に力が生じる場合、ハニカムはあまり好適ではない、それというのもハニカムは構造上、長さ方向に対して鉛直方向で機械的に弱い。その他の欠点は、サンドイッチ構造を製造するために使用する樹脂がハニカム構造中に流れ込むことがあり、構造体の全質量が上昇するということである。このことにより、ハニカムをベースとするサンドイッチ構造体を製造するために提供される方法の選択は強く制限される。特に、例えばレジンインジョクション法において使用するような低粘度の樹脂系を使用する場合には、ハニカムを用いることは排除される。その他の問題は、ハニカムの加工性であり、これは特にあまり単純に構成されていない成形体において非常に費用がかかり、従って高価であるということである。
【0005】
第3のクラスは閉鎖気孔を有するポリマー樹脂フォームを挙げることができる。等方性のフォームは全ての空間方向の剪断力を受け入れることが可能である。材木において常用の工具および機械で実施することのできる容易な加工性が有利である。更に、一定の硬質フォーム、例えばROHACELL(R)、は熱により変形することができる。閉鎖気孔を有する硬質フォームは、全質量を上昇させる樹脂の侵入がないという著しい利点を有する。
【0006】
サンドイッチ構造体の製造は、過去においては使用した被覆層およびコア材料に関係なく費用がかかり、従ってそのような構成は長期にわたって高価格のために正しく認められることはなかった。サンドイッチ構造の古典的な製法は、コア材料上に被覆層を乾燥して担持し、引き続き樹脂で含浸するというラミネート法である。他の方法は重合した樹脂で含浸されているガラス−またはカーボンファイバーマット(“プリプレグ”)の使用に基づく。この樹脂の粘度は一般に滴下が生じない程度に高い。
【0007】
近年、サンドイッチを製造するために、新規な所謂レジンインフュージョン法が開発された。このサンドイッチコアに乾燥したファイバー材料を設け、かつ閉鎖した型枠中でまたは気密包袋中で低粘性樹脂を用いて含浸する。この方法の利点は一方では、樹脂系およびファイバー材料のより広い範囲、他方では改善された自動化の可能性にある。
【0008】
従って、サンドイッチ構造はこの方法を用いて多くの場合安価に生産することができる。このレジンインフュージョン法には、例えばRTM(レジンインジョクション成形(Resin Transfer Molding))、RIM(レジンインフュージョン成形(Resin Infusion Molding))、SCRIMP(シーマンのレジンインフュージョン成形法(Seeman's Resin Infusion Molding Prozess))およびVARI(真空アシステッドレジンインフュージョン(Vaccum Assisted Resin Infusion))を挙げることができる。更なる詳細に関しては“Resin Transfer Molding、SAMPE(R) Monograph No.3”(ISBN 0−938994−83−2)に記載されている。このインフュージョン法においてはコア材料の開放キャビティを低粘性樹脂が完全に満たし、これにより例えばハニカムはコア材料として不適である。
【0009】
閉鎖気孔を有するフォームを機械加工する際に、表面に開放セルが生じることは避けられない。この際に、低分子樹脂により満たされるキャビティが生じ、こうして重い構成部材に導く。完全に閉鎖した気孔を有するフォームにおいて、コア材料の表面への樹脂吸収は実質的にセルの大きさに依存する。切断した大きなセルは深いキャビティを生じ、この中に多くの樹脂が侵入することができる。
【0010】
フォームコアの表面への樹脂吸収の直接的な測定はほとんど不可能である。それでも相互に比較するために、以下の方法が開発された:最初に板状の試験体の密度および質量をできる限り正確に測定する。次いでこの試験体を公知体積を有する2つの入口を有する室中に装入し、これを真空密に閉鎖する。室中にスペーサーを設置することにより試験体がどの位置でも面的に壁に接触しないようにする。全質量を測定する。この室を1つの入口を介して0.2バールに真空にする。真空を保持して、第2の入口からオイルを吸引し、このオイルは試験体中に表面的に侵入する。この室を閉鎖し、秤量する。質量の増加から侵入したオイルの質量が得られる。オイルの密度および質量、室の体積並びに試験体の密度および質量から、試験体の表面に侵入したオイルの体積およびこれから質量を計算することができる。次の表中に選択した市販のフォームのオイル吸収を記載する。
【0011】
【表1】

【0012】
表中の値は、コア材料の樹脂吸収の減少が著しい質量の削減を可能にすることを示す。寸法が1000×1000×10mmのROHACELL(R)71 RISTからなる四角のプレートは0.72kgであり、この加工により0.46kgの樹脂を吸収する。ROHACELL(R)71 WFからなる相応するプレートは0.96kgの樹脂を吸収し、すなわち、それ自体の質量より0.96kg重い。
【0013】
従って、サンドイッチ構造において質量の削減のためには、特に低い樹脂吸収を有するフォームを選択することが必要である。第1表に記載したフォームのオイル吸収の値は0.18kg/mを有するROHACELL(R)71 Aの場合にすでに最も低い値が達せられる。それでも、もっと低い樹脂吸収を有するフォームが所望される。更に、ROHACELL(R)71 Aは多くの樹脂系の硬化のために必要である圧力および温度において、十分に安定ではない。これはROHACELL(R)71 RISTを用いて達せられるが、いくらか高い樹脂吸収を示す。
【0014】
DE2726260中には、ポリメタクリルイミド−フォーム(PMI−フォーム)が記載されており、これは高い温度においても優れた機械特性を示す。このフォームの製造はキャスティング法により実施される、すなわちモノマーおよび必要な添加物を混合し、室中で重合する。このポリマーは、第2の工程で加熱により発泡される。DE2726260中に記載されているフォームの欠点は、その粗大な気孔構造にある。発泡剤を変更することにより孔径をすでに非常に小さくすることができるが、レジンインジョクション法のためのコア材料の製造のためには、まだ粗大すぎ(比較例1)、かつ不均一な孔径分布を示す(図1)。
【0015】
より小さい気孔を有するPMI−フォームの製造は、不溶性の核剤(DE10212235.0)を使用することにより達成される。しかしながら、キャスティング法における不溶性の核剤の使用は、製造の際に著しく高い費用をもたらす。重合すべきモノマー混合物は僅かに約0.8g/cmの密度を有する。核剤として考慮される物質、例えば二酸化ケイ素、硫化亜鉛、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムはこのモノマー混合物より高い密度を有し、従って直ぐに沈降する。均一な気孔構造を有するフォームは核剤の沈降を抑制した場合にのみ得ることができる。このためには、モノマー混合物に沈降防止剤、例えばエーロジルおよびカーボンブラックまたは増粘剤、例えば可溶性の高分子ポリマーを使用しなければならず、これを核剤と共に混合物に費用をかけて混合しなければならない。
【0016】
更に、PMIをベースとする微孔質フォームはEP532023中に記載されている(比較例7)。しかしながら、そこに記載されている方法は種々の重大な欠点を示す。重合のために比較的高い濃度の開始剤を使用し、こうして生じたポリマーはキャスティング法で製造するにもかかわらず、質量平均分子量を50〜500kDaの範囲に有するに過ぎない。更に、この処方は架橋剤を添加しない。この理由から、生じたフォームは低い熱形状安定性および劣悪なクリープ特性を有する。
【0017】
微孔質フォームは公知であり、Roehm GmbH & Co KGからの商標名ROHACELL(R)で購入可能である。発泡剤の変更によりまたは不溶性の核剤の添加により微孔性を達成することは可能である。しかしながら、発泡剤を変更することにより達成される微孔性が常に十分ではないということが問題である。微孔質材料は不溶性の核剤を使用することにより製造することができるが、核剤は沈降防止剤の使用を必要とし、このことは生産において高い費用を必要とする。
【0018】
従って、本発明の課題は、不溶性の核剤を使用することなしに、特に微孔質PMI−フォームを製造するための配合物を見出すことである。更に、フォームは例えば公知PMI−フォームと同様に良好な熱機械的特性を有するべきである。
【0019】
この課題は、発泡性架橋ポリマーを製造する方法により解決し、その際
(A)メタクリル酸 30〜70質量部、
メタクリロニトリル 30〜60質量部、
その他のビニル系不飽和モノマー 0〜30質量部、
(B)t−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート
0.01〜15質量部、
(C)発泡剤 0.01〜10質量部、
(D)架橋剤 0.01〜10質量部、すなわち
(D1)ラジカル重合性の、複数不飽和である化合物および/または
(D2)モノマー混合物に可溶性の、少なくとも2価の金属カチオンを含有す
る塩の形のイオン架橋剤、
(E)重合開始剤 0.01〜2質量部、
(F)常用の添加剤 0〜20質量部、例えば
帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、染料、難燃剤、流動性改善剤、充填剤、光安定剤および有機リン化合物、例えばホスフィット、ホスホネート、顔料、剥離剤、耐候安定剤および可塑剤
からなる混合物を塊状で重合してプレートとし、このプレートを場合により調温処理し、引き続き150〜250℃で発泡させる。
【0020】
更に、本発明の対象は、
(A)メタクリル酸 30〜70質量部、
メタクリロニトリル 30〜60質量部、
その他のビニル系不飽和モノマー 0〜30質量部、
(B)t−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート
0.01〜15質量部、
(C)発泡剤 0.01〜10質量部、
(D)架橋剤 0.01〜10質量部、すなわち
(D1)ラジカル重合性の、複数不飽和である化合物および/または
(D2)モノマー混合物に可溶性の、少なくとも2価の金属カチオンを含有す
る塩の形のイオン架橋剤、
(E)重合開始剤 0.01〜2質量部および
(F)常用の添加剤 0〜20質量部、例えば
帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、染料、難燃剤、流動性改善剤、充填剤、光安定剤および有機リン化合物、例えばホスフィットまたはホスホネート、顔料、剥離剤、耐候安定剤および可塑剤
からなる発泡性架橋ポリマーである。
【0021】
(A)メタクリル酸 30〜70質量部、
メタクリロニトリル 30〜60質量部、
その他のビニル系不飽和モノマー 0〜30質量部、
(B)t−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート
0.01〜4.99質量部、
(C)発泡剤 0.01〜10質量部、
(D)架橋剤 0.01〜10質量部、すなわち
(D1)ラジカル重合性の、複数不飽和である化合物および/または
(D2)モノマー混合物に可溶性の、少なくとも2価の金属カチオンを含有す
る塩の形のイオン架橋剤、
(E)重合開始剤 0.01〜2質量部および
(F)常用の添加剤 0〜20質量部
からなる発泡性架橋ポリマーが有利に使用される。
【0022】
その際、僅かな量のt−ブチルメタクリレートまたはt−ブチルアクリレートの組み込み重合が非常に良好な熱機械的特性および著しく微細でかつ均一な気孔構造を有するフォームに導くことが、意外にも確認された。
【0023】
僅かな量のt−ブチルメタクリレートまたはt−ブチルアクリレートにより著しく優れた熱機械的特性を有する、分子量の大きいフォームが本発明による方法で製造することができることが見出された。良好なフォームはt−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート0.01〜15質量部を使用する際に得られる。多量のt−ブチルメタクリレートまたはt−ブチルアクリレートはポリマーの軟化に導き、このことは熱機械的特性の悪化に導く(比較例7a)。分子量>600kDaを有する発泡性ポリマーが得られ、これを非常に微孔質のフォームに加工することができた。
【0024】
t−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート0.01〜4.99質量部、特にt−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート1.0〜4.99質量部を使用するのが有利である。均質で、かつ制御された発泡性ポリマーのためには、架橋剤0.01〜10質量部、有利に0.05〜3質量部を添加しなければならない。更に、良好な発泡のためには、更に発泡剤0.01〜10質量部、有利に2〜8質量部を添加しなければならない。
【0025】
こうして、密度が所望の範囲30〜300kg/mにある微孔質フォームが得られる。
【0026】
本発明による方法は、DE10212235.0に対して、外からの核剤を使用しないことによる費用のかからない製造の他に、フォームがより微細な気孔構造を示すという利点を提供する。これに相応して樹脂吸収もより低下する(第2表の例2および8)。
【0027】
(A)で記載したその他のビニル系不飽和モノマーの例は:アクリル−またはメタクリル酸並びに炭素原子1〜4個を有する低級アルコールとのエステル、スチレン、マレイン酸またはその無水物、イタコン酸またはその無水物、ビニルピロリドン、塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンである。無水物またはイミドに環化しないかまたは非常に環化しにくいコモノマーの割合はモノマーの質量に対して、30質量部、有利に20質量部、および特に有利に10質量部を越えるべきではない。
【0028】
発泡剤(C)としては次の化合物またはこれからなる混合物を使用することができる:ホルムアミド、蟻酸、尿素、イタコン酸、クエン酸、ジシアンジアミド、水、モノアルキル尿素、ジメチル尿素、5,5′−アゾ−ビス−5−エチル−1,3−ジオキサン、2,2′−アゾ−ビス−イソ酪酸ブチルアミド、2,2′−アゾ−ビス−イソ酪酸−N−ジエチルアミド、2,2’,4,4,4’,4’−ヘキサメチル−2,2’−アゾペンタン、2,2′−アゾ−ビス−2−メチル−プロパン、炭酸ジメチル、炭酸ジ−t−ブチル、アセトンシアンヒドリンカーボネート、オキシ−イソ酪酸メチルエステル−カーボネート、N−メチルウレタン、N−エチルウレタン、N−t−ブチルウレタン、ウレタン、シュウ酸、マレイン酸、オキシ−イソ酪酸、マロン酸、シアンホルムアミド、ジメチルマレイン酸、メタンテトラカルボン酸テトラエチルエステル、オキサミド酸−n−ブチルエステル、メタントリカルボン酸トリメチルエステル、メタントリカルボン酸トリエチルエステル、並びに炭素原子3〜8個からなる一価のアルコール、例えばプロパノール−1、プロパノール−2、ブタノール−1、ブタノール−2、t−ブタノールおよびイソブタノール。
【0029】
この処方には僅かな量の架橋剤(D)を添加しなければならない。僅かな架橋は発泡工程の間の気泡を安定化し、こうして均一なフォームの製造を可能にする。同時にフォームの熱形状安定性およびクリープ特性は架橋により改善される。可能な架橋剤は2つのグループに分けることができる:共有結合架橋剤(D1)、すなわち複数の不飽和結合を有する化合物。この種のモノマーとしては、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリルアミド、アリルメタクリルアミド、メチレン−ビス−アクリルアミドまたは−メタクリルアミド、ジエチレンビス(アリルカーボネート)、エチレングリコールジアクリレートまたは−ジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートまたは−ジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートまたは−ジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートまたは−ジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートまたは−ジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレートまたは−ジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレートまたは−ジメタクリレート、ネオペンチルジオールジアクリレートまたは−ジメタクリレート、ヘキサンジオール−1,6−ジアクリレートまたは−ジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートまたは−ジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートまたは−トリメタクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレートまたは−トリメタクリレート、ペンタエリトリットテトラアクリレートまたは−テトラメタクリレート、場合によってはトリ−およびテトラ官能化化合物からなる場合により工業用混合物としても使用されているペンタエリトリット誘導体、並びにトリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートを使用することができる。もう一つの群はイオン架橋剤である(D2)。これは多価の金属カチオンであり、これはコポリマーの酸基の間にイオン結合を形成する。この例は、特に、アルカリ土類金属または亜鉛のアクリレートまたはメタクリレートである。Zn−およびMg−(メタ)アクリレートは有利である。(メタ)アクリレート塩は、例えばモノマー配合物中でZnOまたはMgOを溶かすことによっても製造することができる。
【0030】
開始剤(E)としては、ラジカル重合を開始することのできる化合物および開始剤系を使用する。公知の化合物群は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシドジスルフェート、ペルカーボネート、ペルケタール、ペルオキシエステル、過酸化水素およびアゾ化合物である。開始剤の例は、過酸化水素、ジベンゾイルペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキソジカーボネート、ジラウリルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクタノエート、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルネオデカノエート、t−アミルペルピバレート、t−ブチルペルピバレート、t−ブチルペルベンゾエート、リチウム−、ナトリウム−、カリウム−およびアンモニウムペルオキソジスルフェート、アゾイソブチロニトリル、2,2−アゾビスイソ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2−アゾビスイソブチロ−ニトリル、2,2’−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリルおよび4,4’−アゾビス(シアノ吉草酸)である。同様にレドックス開始剤は好適である(H.Rauch−Puntigam, Th.Voelker, Acryl- und Methacrylverbindungen, Springer, Heidelberg, 1967またはKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 1, p286ff, John Wiley & Sons, 1New York, 1978)。時間および温度に関して異なる崩壊特性を有する開始剤および開始剤系を組み合わせるのが好適であることがある。開始剤(E)をモノマーの全質量に対して0.01〜2質量部、特に0.15〜1.5質量部で使用するのが有利である。
【0031】
更に、常用の添加物(F)を混合物に添加することができる。これには特に帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、染料、流動性改善剤、充填剤、光安定剤および有機リン化合物、例えばホスフィット、ホスホネート、顔料、剥離剤、耐候安定剤および可塑剤が属する。その他の可能な添加物は難燃剤である。部分的に酸化アンチモンを含有する、ハロゲン含有難燃剤の他に、リン含有化合物を使用することもできる。リン含有化合物は燃焼の際の低い排煙毒性のために有利である。このリン化合物には、特にホスファン、ホスファンオキシド、ホスホニウム化合物、ホスホネート、ホスフィットおよび/またはホスフェートが属する。これらの化合物は有機および/または無機であってよく、例えば燐酸モノエステル、ホスホン酸モノエステル、燐酸ジエステル、ホスホン酸ジエステルおよび燐酸トリエステル並びにポリホスフェートであってよい。
【0032】
本発明により製造したポリ(メタ)アクリルイミド−フォームから積層材を製造することができる。本発明によるポリ(メタ)アクリルイミド−フォームは広い適用分野を有する。これは自動車両、レール車両、航空機、船舶、宇宙船、機械部品、アンテナ、X−線テーブル、スピーカー、管に使用することができる。
【0033】
公知技術水準からの方法に対して、本発明による方法は以下の利点を提供する:
− 重合のために、技術的に簡単な方法で製造されかつ加工することのできる、均一で流動性の混合物を使用する、
− フォームは著しく微細な気孔構造を有し、こうして著しく低い樹脂吸収を示す(第3表)、
− 機械特性、熱形状安定性およびクリープ挙動が比較試験体より明らかに改善される(第4表)、
− フォームは特に均一な気孔構造を有する(図2)。
【0034】
次に記載する例は本発明をより明らかにするためのものであるが、本発明をここに開示された特徴に制限するものではない。
【0035】

例1〜7
表中に記載した量で、メタクリル酸(MAA)、メタクリロニトリル(MAN)、t−ブタノール(t−BuOH)およびt−ブチルメタクリレート(tBMA)並びにそれぞれアリルメタクリレート0.17質量部、MgO0.1質量部、t−ブチルペルピバレート0.40質量部、t−ブチルペル−2−エチル−ヘキサノエート0.036質量部、t−ブチルペルベンゾエート0.10質量部、クミルペルネオデカノエート0.103質量部、ベンゾキノン0.005質量部および剥離剤としてのTPAT 1037 0.16質量部(販売:E. und P. Wuertz GmbH & Co. KG, Industriegebiet, In der Weide 13+18, 55411 Bingen, Sponsheim.)を十分に混合した。この混合物を23mmの層厚の室中で48時間重合し、引き続き3時間40℃から115℃に達する温度プログラムを実施した。このポリマーを、空気循環棚中で、表中に記載した条件で発泡させた。孔径はマクロスコープで測定した。
【0036】
【表2】

【0037】
第2表中の孔径はt−BuOHのtBMAによる置換により気孔構造の著しい微細化が可能であることを明らかに示す。tBMAは明らかに、同時に発泡剤および核剤として作用する。
【0038】
比較例8(不溶性核剤)
メタクリル酸5000g(50.0質量部)、メタクリロニトリル5000g(50.0質量部)およびアリルメタクリレート17g(0.17質量部)からなる混合物に、発泡剤としてイソプロパノール290g(2.9質量部)およびホルムアミド290g(2.9質量部)を添加した。更に、t−ブチルペルピバレート40g(0.40質量部)、t−ブチルペル−2−エチル−ヘキサノエート3.6g(0.036質量部)、t−ブチルペルベンゾエート10g(0.10質量部)、クミルペルネオデカノエート10.3g(0.103質量部)、Degalan BM 130(高分子ポリメチルメタクリレート)400g(0.40質量部)、ベンゾキノン0.5g(0.005質量部)および剥離剤としてのPAT 1037 16.0g(0.32質量部)の混合物を添加した。
【0039】
この混合物に、核剤として、粒度<5μmを有するSiO−粒子(石英粉;商品名Mikrosil(R) LM500、販売Euroquarz GmbH, Kirchhellener Allee 53, 46282 Dorsten)25gを添加した。
【0040】
この混合物を均一になるまで撹拌し、引き続き大きさ50×50cmのガラスプレート2枚および厚さ2.3cmの縁部シールから構成された室中で、39℃で18.5時間重合した。引き続き、このポリマーに最終重合のために17.25時間40℃から115℃に達する温度プログラムを実施した。引き続き発泡を205℃で2時間行った。このように得られたフォームは空間密度77kg/mを示した。
【0041】
比較例9(核剤なし)
比較例8に記載されているように実施したが、核剤を使用しなかった。このように得られたフォームは空間密度77kg/mを示した。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】例1の気孔構造の拡大図、図の寸法1μm×1μm
【図2】例3の気孔構造の拡大図、図の寸法1μm×1μm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性架橋ポリマーを製造する方法において、
(A)メタクリル酸 30〜70質量部、
メタクリロニトリル 30〜60質量部、
その他のビニル系不飽和モノマー 0〜30質量部、
(B)t−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート
0.01〜15質量部、
(C)発泡剤 0.01〜10質量部、
(D)架橋剤 0.01〜10質量部、
(E)重合開始剤 0.01〜2質量部および
(F)常用の添加剤 0〜20質量部
からなる混合物を塊状でプレートに重合し、このプレートを場合により調温処理し、引き続き150〜250℃の温度で発泡させることを特徴とする、発泡性架橋ポリマーの製法。
【請求項2】
t−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート0.01〜4.99質量部を使用する、請求項1記載の発泡性架橋ポリマーの製法。
【請求項3】
(A)メタクリル酸 30〜70質量部、
メタクリロニトリル 30〜60質量部、
その他のビニル系不飽和モノマー 0〜30質量部、
(B)t−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート
0.01〜15質量部、
(C)発泡剤 0.01〜10質量部、
(D)架橋剤 0.01〜10質量部、
(E)重合開始剤 0.01〜2質量部および
(F)常用の添加剤 0〜20質量部
からなる発泡性架橋ポリマー。
【請求項4】
t−ブチルメタクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート0.01〜4.99質量部を使用することを特徴とする、請求項3記載の発泡性架橋ポリマー。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリマーを発泡させることにより得られることを特徴とする、ポリ(メタ)アクリルイミド−フォーム。
【請求項6】
請求項5に記載のポリ(メタ)アクリルイミド−フォームの層を有する積層材。
【請求項7】
全てまたは部分的に請求項5記載のポリ(メタ)アクリルイミド−フォームからなることを特徴とする、自動車両、レール車両、船舶、航空機、宇宙船。
【請求項8】
全てまたは部分的に請求項5記載のポリ(メタ)アクリルイミド−フォームからなることを特徴とする、機械部品。
【請求項9】
全てまたは部分的に請求項5記載のポリ(メタ)アクリルイミド−フォームからなることを特徴とする、アンテナ。
【請求項10】
全てまたは部分的に請求項5記載のポリ(メタ)アクリルイミド−フォームからなることを特徴とする、X−線テーブル。
【請求項11】
全てまたは部分的に請求項5記載のポリ(メタ)アクリルイミド−フォームからなることを特徴とする、スピーカー。
【請求項12】
全てまたは部分的に請求項5記載のポリ(メタ)アクリルイミド−フォームからなることを特徴とする、管。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−513213(P2007−513213A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537075(P2006−537075)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008218
【国際公開番号】WO2005/047377
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH 
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】