説明

熱感知器

【課題】強誘電性物質に関する熱応答性の維持と保護という相互に相反する目的を同時に達成することができる、熱感知器を提供すること。
【解決手段】監視領域における熱を感知する感熱部10と、この感熱部10を固定する筐体41とを備えた熱感知器1において、感熱部10よりも少なくとも監視領域側の位置に、感熱部10を保護するための保護フィルム30を設けた。このため、監視領域から感熱部10に向けて水分等が浸入することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域における熱を感知して、感知状態に応じて警報を行う熱感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、火災の発生を、火災により発生する熱で感知する熱感知器が提案されている。この熱感知器は、その感知原理に基づいて、差動式熱感知器と定温式熱感知器とに大別されている。このような熱感知器は、一般的に、監視領域における熱を感知する感熱部と、感熱部による感知状態に応じて警報を行う感知器本体とを備えて構成されている。
【0003】
このうち、感熱部は、監視領域における熱を感知し、その感知状態を他の状態変化へ変換するセンサ素子を備えて構成されている。このセンサ素子には、温度上昇による空気の膨張により変形するダイヤフラム、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタ、又は、温度に応じて所定方向に変形するバイメタル等が使用されている。
【0004】
図10は、従来の、熱感知器の縦断面図である。この熱感知器100は、感熱部101と感知器本体102とを備えて構成されており、天井面C等の取付け面に設置されている。感熱部101は、感知器本体102の内側に、接着剤103によって直接的に接続されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このような従来の熱感知器には種々の問題があった。すなわち、ダイヤフラム利用型の熱感知器においては、所定以上の温度上昇率を正確に検出するために、ある程度の膨張スペースを持ったチャンバが必要になる。また、サーミスタ利用型の熱感知器においては、サーミスタ自体が嵩張ることに加えて、このサーミスタを保護するためにその周囲にサーミスタガイドを設けていたので、熱感知器が全体として比較的大型になってしまい、この熱感知器の薄型化を図ることが困難になっていた。あるいは、バイメタル利用型の熱感知器においては、バイメタルの変形スペースを確保することが必要になる。従って、これら従来の熱感知器は、小型化が困難であった。
【0006】
このような問題を解決するため、温度が変化すると焦電効果によって焦電電流を出力する強誘電性物質であるセラミック素子を、熱感知素子として利用することが検討されている。この強誘電性物質は薄膜状に成型できるため、これを熱感知素子として利用することで、熱感知器全体を小型化することが可能になる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−196760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような強誘電性物質を熱感知素子として具体的に実用化する場合には、その熱応答性を維持しつつ、十分な耐環境性を確保するための実装構造が必要になる。すなわち、強誘電性物質の熱応答性を確保するためには、この強誘電性物質を監視領域に極力直接露出させて、監視領域の温度変化がダイレクトに強誘電性物質に伝達されることが好ましい。しかしながら、単に強誘電性物質を監視領域に露出させた場合には、監視領域から受ける外力によって強誘電性物質が変形したり、監視領域から浸入する様々な物質によって強誘電性物質が劣化や腐食等したりする可能性がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、強誘電性物質に関する熱応答性の維持と保護という相互に相反する目的を同時に達成することができる、熱感知器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の熱感知器は、監視領域における熱を感知する感熱手段と、前記感熱手段を固定する筐体とを備えた熱感知器において、前記感熱手段よりも少なくとも前記監視領域側の位置に、前記感熱手段を保護するための保護手段を設けたこと、を特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の熱感知器は、請求項1に記載の熱感知器において、前記感熱手段よりも前記監視領域側の位置に、薄板状部材を配置し、前記薄板状部材における前記監視領域側の側面を、前記保護手段にて略覆い、前記薄板状部材における前記監視領域側とは反対側の側面に、前記感熱手段を固定すると共に、この側面に前記筐体を固定したこと、を特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の熱感知器は、請求項1に記載の熱感知器において、前記感熱手段を前記保護手段にて略覆ったこと、を特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の熱感知器は、請求項3に記載の熱感知器において、前記感熱手段よりも前記監視領域側の位置に、薄板状部材を配置し、前記薄板状部材における前記監視領域側とは反対側の側面に、前記保護手段にて略覆った前記感熱手段を固定すると共に、この側面に前記筐体を固定したこと、を特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の熱感知器は、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱感知器において、前記感熱手段は、強誘電性物質を備えること、を特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の熱感知器は、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱感知器において、前記保護手段は、前記監視領域から前記感熱手段に対する水分の浸入を防止するための防湿フィルムであること、を特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載の熱感知器は、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱感知器において、前記筐体と前記薄板状部材とを、相互に略同一の材質から形成したこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、感熱手段よりも監視領域側に保護手段を設けているので、監視領域から感熱手段に向けて水分や腐食性物質が浸入することが保護手段にて防止される。従って、感熱手段の劣化や腐食を防止でき、熱感知器の信頼性を長期間に渡って維持できる。
【0018】
また、この発明によれば、薄板状部材における監視領域側の側面を保護手段にて略覆ったので、感熱手段に加えて、薄板状部材についても同様に保護できる。
【0019】
また、この発明によれば、感熱手段を保護手段にて略覆うことで、感熱手段の劣化や腐食を防止できると共に、感熱手段の剛性を向上させてその変形を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、発明を実施するための最良の形態について説明する。まず、〔I〕本発明に係る各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的構成
まず、各実施の形態に共通の基本的構成について説明する。各実施の形態に係る熱感知器は、例えば、天井等の取付け面へ設置される。この熱感知器は、監視領域における熱を感知する感熱手段と、当該感熱手段による感知状態に応じて警報を行う制御手段と、当該制御手段を保護する筐体とを備えて構成されている。
【0022】
各実施の形態に係る熱感知器の特徴の一つは、感熱手段の保護構造にある。すなわち、感熱手段を監視領域に露出させた場合には、この感熱手段に、監視領域から受ける外力による変形や、様々な物質による劣化や腐食等が生じる可能性がある。そこで、各実施の形態では、感熱手段を保護するための保護手段を設けている。この保護手段の具体的な構造や配置等について、各実施の形態では異なる形態を採用しており、このことにより、異なる効果を得ることができる。
【0023】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
以下に添付図面を参照して、各実施の形態の具体的内容について順次詳細に説明する。
【0024】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、薄板状部材の監視領域側の側面を、保護手段にて略覆った形態である。
【0025】
(全体構成について)
図1は、実施の形態1に係る熱感知器の縦断面図、図2は、感熱部及びその周辺部分と筐体とを接続する前の状態における熱感知器の縦断面図である。これら図1、2に示すように、熱感知器1は、感熱部10、保護固定部20、保護フィルム30、及び、感知器本体40を備えて構成されており、天井面C等の任意の取り付け面に公知の方法にて固定されている。
【0026】
(感熱部10について)
このうち、感熱部10の構成を説明する。図3は、感熱部及び保護固定部の平面図及び縦断面図を関連させて示した図、図4は、図3の各部を分解した状態の縦断面図、図5は、感熱部の平面図及び縦断面図を関連させて示した図である。感熱部10は、監視領域における熱を感知し、この熱に応じた電圧の電流を出力するもので、特許請求の範囲における感熱手段に対応する。この感熱部10は、センサ素子11、及び、金属電極12、13を備えて構成されている。
【0027】
このうち、センサ素子11は、その感知状態を他の状態変化へ変換するセンサ手段である。このセンサ素子11は、例えば、監視領域の温度が変化すると焦電効果によって焦電電流を出力するものであって、セラミック等の強誘電性物質を薄膜化した薄板状感熱センサとして構成されている。金属電極12、13は、センサ素子11から出力された焦電電流を筐体41へ図示しない電線等を介して出力するための電極手段である。
【0028】
この感熱部10は、金属電極12、センサ素子11、及び、金属電極13を順次重合させた積層構造となっており、センサ素子11の外側(監視領域に面する側。以下同じ)に金属電極13が、センサ素子11の内側(監視領域と反対側。以下同じ)に金属電極12がそれぞれ配置されている。これらセンサ素子11、金属電極12、及び、金属電極13は、それぞれ略薄厚円盤形に形成されており、略同心円盤状に積層されている。ここで、各部の直径は、金属電極12、センサ素子11、金属電極13の順に大きくなっている。そして、センサ素子11と金属電極13とは、接着剤により接着されており、金属電極12は、センサ素子11上に蒸着されている。
【0029】
(保護固定部20について)
また、保護固定部20は、ラミネート外材20aとラミネート内材20bとを備えている。このうち、ラミネート外材20aは、特許請求の範囲における薄板状部材に対応するもので、金属電極13の外側に配置されている。また、ラミネート内材20bは、金属電極12の内側に配置されている。そして、これらラミネート外材20aとラミネート内材20bとの間に感熱部10を挟持することにより、この感熱部10を監視領域からの外力や腐食性成分の浸入から保護できる。この点において、保護固定部20は感熱部10を保護する保護手段として機能する。また、後述するように、感熱部10は保護固定部20を介して筐体41に固定されている。この意味において、保護固定部20は感熱部10を筐体41に固定するための固定手段として機能する。この保護固定部20の詳細については後述する。
【0030】
(保護フィルム30について)
ここで、ラミネート外材20aの監視領域側の側面には、保護フィルム30が貼付されている。この保護フィルム30は、監視領域から感熱部10に対する所定物質の浸入を防止するためのもので、特許請求の範囲における保護手段に対応する。この保護フィルム30の詳細については後述する。
【0031】
(感知器本体の構成について)
次に、感知器本体40の構成を説明する。ただし、特記する場合を除いて、感知器本体40は公知の感知器の本体部分と同様に構成できる。この感知器本体40は、図示しない制御部と筐体41とを備えて構成されている。
【0032】
制御部は、感熱部10から出力された焦電電流を受け取り、この焦電電流の大きさを所定の閾値と比較等することによって、火災の発生の有無を判断し、この判断結果に応じて警報を行う制御手段である。この制御部は、例えば、IC(Integrated Circuit)及びこのIC上で実行されるプログラムとして構成され、所定の制御を実行する。
【0033】
この筐体41は、熱感知器1の構造体であり、感熱手段を固定するための固定手段である。この筐体41の具体的材質や製造方法は任意であるが、例えば、筐体41は樹脂成型にて形成されている。図1、2に示すように、筐体41の下端部近傍の内側に、略円盤形の接続面部41aが形成されており、この接続面部41aに、上述した保護固定部20に挟持された感熱部10が溶着にて固定されている。
【0034】
(保護固定部20の詳細について)
次に、保護固定部20についてより詳細に説明する。ラミネート外材20aとラミネート内材20bとは、感熱部10をそれらの間に挟めるように、感熱部10よりも充分に大きい直径の略薄厚円盤形に形成されている。また、ラミネート外材20aの外周部がラミネート内材20bよりも外側に露出するように、ラミネート外材20aの直径はラミネート内材20bよりも大きい。そして、ラミネート外材20aの金属電極13の側の面と、ラミネート内材20bの金属電極12の側の面には、粘着材が塗布されている。よって、ラミネート外材20aとラミネート内材20bとを、感熱部10を挟んで貼り合わせることにより、感熱部10は、ラミネート外材20aとラミネート内材20bとによって挟持される。
【0035】
これらラミネート外材20a及びラミネート内材20bの具体的な材質や寸法は任意であるが、例えば、ラミネート外材20aは、樹脂から成り、その厚さは、強度、応力吸収特性、形成容易性、及び、感熱部10に対する熱の伝達性を考慮して、0.2mm以下となっている。ラミネート内材20bは、樹脂から成り、例えば、その厚さは、0.05mm以下となっている。ラミネート外材20aとラミネート内材20bの耐熱温度は、熱感知器1の作動温度と樹脂の溶融温度とを考慮して、85℃以上であることが好ましい。
【0036】
特に、ラミネート外材20aは、筐体41に対して直接的に溶着固定されるため、この筐体41と略同一種類の樹脂から形成されることが好ましい。ここで、略同一種類とは、ラミネート外材20aと筐体41との溶着時における親和性をある程度確保できる範囲である種類の同一性を意味しており、完全に同一種類の樹脂で形成する場合の他、同一基材に対して異なる添加剤を添加して樹脂を形成する場合や、同一材料を異なる条件で樹脂化する場合を含む。例えば、筐体41がポリカードネートにて形成されている場合において、ラミネート外材20aは、ポリカードネート製フィルムにて形成される。
【0037】
さらに、ラミネート内材20bは、図3に示すように、切欠き部20cを備えている。この切欠き部20cは、ラミネート内材20bの外周から中心部に向けて設けられた、略U溝の切欠きとして形成されている。ここで、制御部と電気的に接続された電線等を、切欠き部20cから一部露出した金属電極12と金属電極13とに直接半田付けすることにより、感熱部10と制御部とを電気的に接続することができる。ただし、金属電極12や金属電極13に対する電線の接続方法はこの構造に限定されず他の任意の方法を取ることができ、例えば、金属電極12や金属電極13に接続した細径の電線を、金属電極12や金属電極13と共にラミネート外材20a及びラミネート内材20bにてラミネートし、これらラミネート外材20a及びラミネート内材20bの相互間から側方に電線を引き出すようにしてもよい。
【0038】
(保護フィルム30の詳細について)
次に、保護フィルム30についてより詳細に説明する。この保護フィルム30は、監視領域から感熱部10に対する所定物質の浸入を防止するためのもので、特許請求の範囲における保護手段に対応する。ここで、所定物質としては、感熱部10を劣化や腐食させ得る単一種類又は複数種類の全ての物質が該当し、この所定物質に応じた材質を選択することができる。例えば、所定物質が水分である場合には、保護フィルム30として水分の浸入を防止するための防湿フィルムを選択できる。あるいは、所定物質として腐食性ガス(二酸化硫黄(SO2)、硫化水素(H2S)、二酸化窒素(NO2)、塩素(Cl2)等)が想定される場合には、保護フィルム30としてこれら腐食性ガスの浸入を防止するためのフッ素樹脂フィルムを選択できる。
【0039】
この保護フィルム30は、ラミネート外材20aの両側面のうち、少なくとも、監視領域側の側面に配置されている。より具体的には、保護フィルム30は、ラミネート外材20aと略同径の円形薄板状に形成され、ラミネート外材20aの側面を略完全に覆っている。従って、監視領域からの所定物質が、ラミネート外材20aを通過して感熱部10に至ることを防止できる。また、この保護フィルム30をさらに広範囲に設けてもよく、例えば、ラミネート外材20aの両側面を含む全体を保護フィルム30にて覆ってもよい。ただし、ラミネート外材20aは、後述するように、筐体41に対して直接的に溶着固定されるため、溶着性が保護フィルム30にて妨げられることがないように、筐体41との接触部分については保護フィルム30を切欠く等することが好ましい。
【0040】
この保護フィルム30の厚みは、所定物質の浸入を防止できる限りにおいて任意に決定でき、その材質や、何重に設けるのか等に応じて異なり得るが、監視領域の熱が感熱部10に対して伝達されることを極力阻害しないように、保護フィルム30は極力薄くすることが好ましい。例えば、保護フィルム30を、約50〜100μmの厚みのフィルム状に形成して、ラミネート外材20aの側面に固定する。なお、ラミネート外材20aに対する保護フィルム30の具体的な固定方法は任意であり、ラミネート外材20aや保護フィルム30の材質に応じて異なる固定方法を採用できるが、例えば、薄い両面テープ、薄く塗布した接着剤、あるいは、蒸着等にて、保護フィルム30をラミネート外材20aに固定できる。
【0041】
このように構成される保護フィルム30の主たる効果は下記の通りである。すなわち、上述したように保護固定部20は、感熱部10を保護する保護手段として機能する。しかしながら、保護固定部20は、感熱部10を筐体41に固定するための固定手段としての機能も有するため、ラミネート外材20aと筐体41との相互の接合性を考慮すると、これらを相互に略同一種類の樹脂から形成することが好ましく、ラミネート外材20aを形成するための材質の選択肢は著しく制限される。さらに、監視領域から感熱部10への熱の伝達効率を維持するためにはラミネート外材20aが極力薄い方が好ましく、ラミネート外材20aの形状も制限される。これら材質と形状の制限を受けることから、ラミネート外材20aを水分やガスが透過することを完全に防止することは困難である。さらに、ラミネート外材20aとラミネート内材20bとを相互に接着するための接着剤として透水性が高いものを用いた場合には、この接着剤が、水分がラミネート外材20aを透過することを誘引する原因になり得る。従って、水分やガスがラミネート外材20aを透過して感熱部10に触れる可能性があり、この場合には、金属電極12や金属電極13が酸化したり、センサ素子11が腐食したり、あるいは、水分がセンサ素子11と金属電極12又は金属電極13との間に浸入した場合にはショートを招いたりする可能性がある。このため、感熱部10を保護するためには、保護固定部20に加え、保護フィルム30による第2の保護構造を構築することが有用になる。
【0042】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、ラミネート外材20aに設けた保護フィルム30によって、監視領域から感熱部10に対する所定物質の浸入を防止できるので、感熱部10の劣化や腐食を防止できる。特に、保護フィルム30として、防湿フィルムを用いることで、感熱部10に対する水分の浸入を防止でき、感熱部10の劣化やショートを防止できる。また、保護フィルム30として、熱の伝達を阻害しない薄厚のフィルムが用いられているので、感熱部10の熱応答性を高レベルに維持できる。従って、感熱部10に関する熱応答性の維持と保護という相互に相反する課題を両立させることができる。さらに、このような効果を有する保護フィルム30を、ラミネート外材20aよりも監視領域側に設けているので、ラミネート外材20aについても同様に保護できる。
【0043】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る熱感知器は、感熱手段及び電極手段を保護手段にて略覆った形態である。なお、特に説明なき構造については、上述した実施の形態1と同様であり、同一の構成については、必要に応じて、実施の形態1において使用したものと同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図6は、実施の形態2に係る熱感知器の縦断面図、図7は、感熱部等と筐体とを接続する前の状態における熱感知器の縦断面図である。これら図6、7に示すように、熱感知器2は、感熱部10、保護固定部20、保護フィルム50、51、及び、感知器本体40を備えて構成されている。
【0045】
(保護固定部20の構成について)
保護固定部20は、実施の形態1とは異なり、監視領域側のラミネート外材20aのみを備えて構成されている。すなわち、実施の形態1のラミネート内材20bは省略されており、このラミネート内材20bの機能を、保護フィルム51にて代替している。
【0046】
(保護フィルム50、51の構成について)
次に、保護フィルム50、51の構成を説明する。図8は、保護フィルムに挟持されている状態における感熱部の平面図及び縦断面図を関連させて示した図、図9は、図8の各部を分解した状態の縦断面図である。感熱部10は、一対の保護フィルム50、51にて覆われており、この保護フィルム50、51を介して保護固定部20に固定されている。
【0047】
この保護フィルム50、51は、監視領域から感熱部10に対する所定物質の浸入を防止するためのもので、特許請求の範囲における保護手段に対応する。具体的には、各保護フィルム50、51は、実施の形態1の保護フィルム30と同様の薄厚の樹脂フィルムであり、感熱部10よりやや大きな径の円盤形状をなし、これら一対の保護フィルム50、51の間に感熱部10が配置されることで、この感熱部10が保護フィルム50、51によって完全に覆われている。従って、感熱部10よりも監視領域の側に配置された保護フィルム50によって、水分や腐食性ガスが感熱部10に向けて浸入することを防止でき、感熱部10の耐環境性を高めることができる。さらに、保護フィルム50とは反対側に配置された保護フィルム51によって、水分や腐食性ガスが筐体41の方から感熱部10に浸入することを防止でき、感熱部10の耐環境性を一層高めることができる。特に、保護フィルム50、51で感熱部10を直接的に挟持しているので、この感熱部10の剛性を高めることができ、感熱部10を補強して、感熱部10が外力を受けて変形すること等を防止できる。
【0048】
なお、感熱部10や保護固定部20に対する保護フィルム50、51の固定方法は任意であるが例えば、まず第1に、各保護フィルム50、51における感熱部10に対抗する面にホットメルトを塗布し、保護フィルム50、51の間に感熱部10を挟持した状態で、保護フィルム50、51に熱を加えてホットメルトを溶融させることで、これら保護フィルム50、51と感熱部10とを相互に貼り付ける。次に、保護フィルム50、51をラミネート外材20aに対して、薄い両面テープ又は薄く塗布した接着剤にて接着する。
【0049】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果に加えて、保護フィルム50、51で感熱部10を挟持しているので、この感熱部10の剛性を高めることができ、感熱部10が外力を受けて変形すること等を防止できる。
【0050】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0051】
(本発明の適用分野について)
本発明の適用対象は、上述したような熱感知器には限られず、監視領域における熱を感知する全ての機器、例えば、火災警報器、熱検出器、あるいは、熱線センサにも同様に適用できる。
【0052】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、感熱手段の劣化や変形を保護手段によって完全に防止できない場合においても、この劣化や変形を従来より若干でも防止できていれば、本発明の課題が達成されている。
【0053】
(感熱部)
感熱部は、監視領域における熱を感知できればどの様な構成でもよい。例えば、センサ素子と金属電極と金属部以外に、他の構成部があってもよい。また、金属電極や金属部は、他の金属や導電性物質でもよく、センサ素子の強誘電性物質は、薄膜状でなくてもよい。
【0054】
(保護手段)
保護手段としては、上述のような薄厚円盤状のフィルムの他、任意の形状の保護手段を用いることができる。例えば、感熱部を方形状に形成した場合には、この形状に合致する方形状の保護手段を設けてもよい。あるいは、保護手段にて感熱部や保護固定部の一部のみを覆ってもよい。また、実施の形態2のように、感熱部の両面を保護手段にて覆う場合において、監視領域側の保護手段と、非監視領域側の保護手段とを、相互に異なる厚みにて形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明は、熱感知器や火災報知器等の、熱を感知して、感知状態に応じて警報を行う様々な機器に適用でき、熱感知器や火災報知器における強誘電性物質に関する熱応答性の維持と保護という相互に相反する目的を同時に達成することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施の形態1に係る熱感知器の縦断面図である。
【図2】感熱部及びその周辺部分と筐体とを接続する前の状態における熱感知器の縦断面図である。
【図3】感熱部及び保護固定部の平面図及び縦断面図を関連させて示した図である。
【図4】図3の各部を分解した状態の縦断面図である。
【図5】感熱部の平面図及び縦断面図を関連させて示した図である。
【図6】実施の形態2に係る熱感知器の縦断面図である。
【図7】感熱部等と筐体とを接続する前の状態における熱感知器の縦断面図である。
【図8】保護フィルムに挟持されている状態における感熱部の平面図及び縦断面図を関連させて示した図である。
【図9】図8の各部を分解した状態の縦断面図である。
【図10】従来の、熱感知器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1、2、100 熱感知器
10、101 感熱部
11 センサ素子
12 金属電極
13 金属電極
20 保護固定部
20a ラミネート外材
20b ラミネート内材
20c 切欠き部
30、50、51 保護フィルム
40、102 感知器本体
41 筐体
41a 接続面部
103 接着剤
C 天井面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域における熱を感知する感熱手段と、前記感熱手段を固定する筐体とを備えた熱感知器において、
前記感熱手段よりも少なくとも前記監視領域側の位置に、前記感熱手段を保護するための保護手段を設けたこと、
を特徴とする熱感知器。
【請求項2】
前記感熱手段よりも前記監視領域側の位置に、薄板状部材を配置し、
前記薄板状部材における前記監視領域側の側面を、前記保護手段にて略覆い、
前記薄板状部材における前記監視領域側とは反対側の側面に、前記感熱手段を固定すると共に、この側面に前記筐体を固定したこと、
を特徴とする請求項1に記載の熱感知器。
【請求項3】
前記感熱手段を前記保護手段にて略覆ったこと、
を特徴とする請求項1に記載の熱感知器。
【請求項4】
前記感熱手段よりも前記監視領域側の位置に、薄板状部材を配置し、
前記薄板状部材における前記監視領域側とは反対側の側面に、前記保護手段にて略覆った前記感熱手段を固定すると共に、この側面に前記筐体を固定したこと、
を特徴とする請求項3に記載の熱感知器。
【請求項5】
前記感熱手段は、強誘電性物質を備えること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の熱感知器。
【請求項6】
前記保護手段は、前記監視領域から前記感熱手段に対する水分の浸入を防止するための防湿フィルムであること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の熱感知器。
【請求項7】
前記筐体と前記薄板状部材とを、相互に略同一の材質から形成したこと、
を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の熱感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−200111(P2007−200111A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19218(P2006−19218)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(596179988)株式会社ドッドウエル ビー・エム・エス (13)
【Fターム(参考)】