説明

熱成形方法及び熱成形用の加熱装置

【課題】熱成形において、雄型の予備延伸を行うことなく半製品における局所的に異なる熱成形作用を達成でき、半製品の吸収性に対する調整を必要としない技術を提供する。
【解決手段】半製品(1)を熱成形温度まで加熱し、半製品の上面と下側との間で相違する圧力を印加することにより3次元成形部位を成形し、インモールド制約のもとに冷却するものであり、成形プロセス前における半製品の局所的に異なる加熱が、局所的に異なる熱成形作用を生じるものであって、対向する両側から半製品(1)に同時に接触して半製品を加熱する2つの接触加熱装置(2)が使用され、各接触加熱装置は、断熱支持部材(7)上にセラミック加熱層が形成された単一の加熱回路(6)を有し、局所的に相違する加熱は、支持部材(7)上の加熱回路(6)の局所的に異なる形状設計によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱成形において熱可塑性の半製品を加熱する方法に関する。熱成形においては、半製品が熱成形温度に加熱され、半製品の上面と下側との間で相違する圧力を印加することにより3次元の成形部位をなすよう成形され、その後、インモールド制約のもとに冷却されて、成形プロセス前における半製品の局所的に異なる加熱が、局所的に異なる熱成形作用を生じる。更に、この発明は、この方法を実行する加熱装置に関する。
【0002】
熱成形では、輪郭付けられた3次元の型内に熱可塑性半製品が配置される。半製品を成形するには、少なくとも熱成形温度まで加熱する必要がある。熱成形温度は、その材料が成形に適した作用を呈する温度である。熱成形プロセス自体は、半製品の上面と下側との間で相違する圧力と、真ひずみに依存する付加的な機械的予備延伸とによって行われる。圧力の相違は、圧縮空気及び/又は真空の使用により発生される。成形後、半製品は冷却される。一般に可塑性材料フィルムや可塑性材料シートが半製品として用いられる。
【背景技術】
【0003】
或る3次元の型を用いるには、たとえば作成される成形部位の角や縁が望ましくない薄さになることを防止するために、成形プロセスの間、局所的に異なる熱成形作用又は成形部位の特定の壁厚分布を達成することが必要である。その目的は、それによって成形部位の望ましい安定性や完全性を確保するためである。熱可塑性材料の材料特性、したがってその熱成形作用は、温度によって変化する。作成される成形部位における材料の分布を制御するために用いられる不均一な熱成形作用は、不均一な温度場の結果として、加熱中に選択的に発生される。
【0004】
小さめの型については、半製品は一般に接触加熱によって加温又は加熱される。加熱道具における熱伝導の困難性の結果として、特に小さな成形形状で作動するときに、直接熱接触を用いたこのタイプの半製品の加熱では、事前に、局所的に異なる熱成形作用を達成するための不均一な加熱を選択的に及び制御可能に提供することはできなかった。したがって、予備延伸の雄型は、主に、作成される成形部位における壁厚分布に影響を与えるために用いられる。これらの雄型は、これとの加熱された半製品の直接接触の結果として、より小さな程度に変形される領域における、限定された局所的な冷却を達成するために用いられる。半製品は、雄型の移動によって更に予備延伸される。これは、壁厚分布に対して著しい影響を持つ。最終成形工程は、相違する圧力(つまり超過圧力)若しくは真空、又はこれら双方を適用することで達成される。
【0005】
可塑性材料製品の圧空成形の方法及び装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。その方法では、半製品の熱成形作用は、選択された部分領域における成形前及び/又は成形中の上昇温度の放射の付加的な適用により、局所的に影響を受ける。この放射の適用は、作成される成形部位における壁厚分布がそのように影響を受けるようになされる。たとえば、上昇温度の放射としては、レーザ、特にCOレーザが用いられる。しかし、この例では、使用される放射を半製品の材料の吸収性に適合させなければならない。更に、レーザを使用するには、一般にスキャナが追加的に必要である。このスキャナは、選択された大きな程度まで加熱するために、当該領域にレーザビームを導くものである。
【0006】
特許文献2には、格子状に配置された多数の熱源によって平坦な物体を加熱する装置が開示されている。熱源は点放射加熱器として構成される。必要な熱は、そのようにして熱放射を介して生成される。これら放射加熱器は個々に制御可能であり、それにより柔軟な局所的加熱が達成される。加熱器の出力は吸収性に対して調整されなければならない。更に、小さな成形形状で作動するとき、この装置では、成形される領域における温度プロファイルの生成によって局所的に予熱することは不可能である。発生源の粒状性は、放射源のサイズにより予め決定される。更に、加熱領域は、特殊な電熱器(hotplate)構成によって調整されるが、これは、複数の空洞を同時に加熱する際に非常に問題となる。
【0007】
特許文献3には、熱成形中におけるフィルムウェブの予熱及び封止のための電熱器が開示されている。フィルムウェブに適合した加熱は、このように熱接触の原理により行われ、それにより成形結果の向上を可能にする。この電熱器は、加熱道具内に配列された多数の加熱手段により特徴付けられる。これら加熱手段は、設定温度に関する電力供給を介して制御可能であり、統合的な温度制御によって更なる調整が可能である。この原理の欠点は、加熱道具内の配置による加熱手段の熱結合である。熱結合は、特に小さな成形形状で作動するときに必要な、小領域における大きな熱勾配の発生を不可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第103 49 156号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2005 018 652号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/034624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、半製品内における温度分布を細かく調整可能にすることで、小さな又は中程度のサイズの成形形状で作動するときであっても、雄型の予備延伸を行うことなく、半製品における局所的に異なる熱成形作用を達成することが可能であり、半製品の吸収性に対する調整を必要としない熱成形方法及び熱成形用の加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1〜4に係る方法及び加熱装置によって達成される。この方法及び加熱装置の有利な構成は、その従属請求項の主題であり、或いは以下の記載及び実施形態から把握される。
【0011】
熱可塑性の半製品を熱成形するために提案する方法においては、半製品は、熱成形温度に加熱され、半製品の上面と下側との間で相違する圧力を印加することにより3次元成形部位を成形し、それからインモールド制約のもとに冷却し、成形プロセスの前及び/又はその間における半製品の局所的に異なる加熱が局所的に異なる熱成形作用を生じる。この例では、熱成形温度は、その材料が成形される温度範囲として理解される。熱成形の間、熱成形温度は、可塑性材料の流動温度よりも低い状態とされ、可塑性材料は質的に比較的安定したままであるが、小さな力の影響により可塑的に変形可能である。成形プロセス自体は、特に真空成形や圧力成形、或いはこれらの組み合わせなど、公知の方法で実行される。同様の方法は、冷却段階でのインモールド制約を確保するためにも使用可能である。提案する方法は、成形部位を熱的接触加熱によって加熱する点により特徴付けられ、これは2つの接触加熱装置を用いて両側から半製品に同時に接触する状態にするものである。各接触加熱装置は、断熱支持部材上のセラミック加熱層からなる単一の平面的な加熱回路を有する。加熱回路は、支持部材の面上に形成され、当該面上において局所的に異なる加熱出力を発する。これは、当該面における各加熱回路の形状的構成及び/又は分布により達成される。支持部材としては、たとえばセラミックプレートを用いることができる。
【0012】
加熱装置は、この方法を実行し、差し込まれた半製品を熱成形温度に加熱するための構成を有する。加熱装置の後段には、加熱された半製品を成形する熱成形機(thermoforming station)が設けられて、熱成形の間に3次元成形部位を成形する。加熱装置は、対向する両側から半製品に同時に接触することが可能な2つの接触加熱装置からなる。各接触加熱装置は、断熱支持部材上にセラミック加熱層として形成された単一の加熱回路を有する。加熱回路は、支持部材の面上に形成され、当該面上において局所的に異なる加熱出力を発する。
【0013】
一方、支持部材の上方での加熱段階における望ましくない熱伝導は、接触加熱装置を用いることでその大部分を防止できる。各接触加熱装置の各平面加熱回路は、セラミック加熱層として形成され、断熱支持部材に設けられている。一方、そのために設けられた支持部材の面上の加熱回路の選択的な不均一な分布又は形状構成により、加熱中における温度分布の選択的な制御を達成することが可能となる。実用上自由に選択可能な加熱回路を形成するセラミック加熱層の形状、そしてそれによる当該面からの熱出力(熱画像)により、各半製品への熱の導入を選択的に事前に決定することが可能になる。この加熱層は、望ましい加熱回路の形状の薄膜として、特に有利にインプリントされる。加熱セラミックスの比較的小さな断面、及び、支持部材からの加熱層の熱デカップリング(thermal decoupling)の結果として、高度に動的な温度制御が可能である。加熱回路のレイアウト設計によって、望ましい不均一な温度分布が得られる。
【0014】
提案する方法及びこれに伴う加熱装置は、熱可塑性材料の部分的加熱の結果として、成形プロセスにおける壁厚分布に選択的に影響を与えることが可能である。雄型の予備延伸の使用も完全に不要となる。壁厚分布は、主として、加熱領域における温度分布によって制御される。更に、加熱プロセスのエネルギー効率は、選択的なエネルギー伝達によって向上させることができる。これは、半製品に直接接触している間にのみ加熱を作用させることで達成される。加熱回路は、成形される領域のみを加熱するように設計される。更に、加熱回路と半製品との接触により、熱を直接的に伝導させることができる。放射加熱器により実行される熱成形プロセスと比較して、熱可塑性半製品の吸収性は重要でない。提案する方法では、加熱回路の設計時にだけ、各加熱出力が望ましい位置に達するように加熱線や加熱回路の位置やサイズを選択すればよい。これは、事前に数学的にシミュレーション可能である。設計の融通は物理的な制限にのみ制約される。加熱線の小さな断面、及び、支持部材からの熱デカップリングの結果として、加熱線は低い熱容量を呈する。半製品を加熱するときの高効率及び高度の動的な温度制御は、このようにして可能となる。
【0015】
有利な構成において、加熱回路の温度依存型の抵抗は、温度の測定と制御とに使用される。半製品の温度の測定変数としての加熱回路の電気抵抗の温度依存性の利用は、制御システムにおける温度センサの使用を不要なものとする。熱エネルギーの導入は、そのようにして測定され、制御システムによりそのようにして直接に制御され、或いは局所的な設定温度を観察するように調整される。これは、適切に構成された制御装置により達成される。この制御装置は、加熱回路の抵抗を測定する(電流I及び電圧Uを測定する)。更に、この制御装置は、半製品を特定温度に加熱して維持するために要求される加熱出力を発生するように、当該測定に基づいて各加熱回路を制御する。加熱装置は、この方法におけるインパルスヒータ(impulse heater)としても作用する。
【0016】
この方法や加熱装置において、断熱支持部材は、たとえば、セラミック(たとえばAl、AlN、Si)、石英、ガラスセラミックにより形成できる。たとえばMoケイ化物やRuOは、セラミック加熱層の材料として用いることができる。たとえば加熱層の厚さは、2〜100μmの範囲内としてもよい。加熱層は、支持部材に直接に又は中間層(たとえばセラミック中間層)を介して設けられる。
【0017】
インプリント可能な又はインプリントされたセラミック加熱層の使用は、作成中における特定の有利性を提供するが、これら有利性の放棄とともに加熱回路を適用する他の方法を用いることももちろん可能である。
【0018】
提案する方法及びそれに付随する加熱装置は、以下において、実施形態を参照しつつ、そして以下の図面とともに、簡潔に再度説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】加熱装置及びこれに接続された熱成形を行うための熱成形機の一例を表す概略図である。
【図2】接触加熱装置の構成の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、提案する熱成形用の加熱装置の構成の一例を表す概略図である。図1aは加熱装置を示し、図1bは加熱装置の後段の熱成形機を示す。熱成形機は、3つの作業段階で示されている。この例では、発明の主要部は加熱装置にて実行される。熱成形機の図は、雄型の予備延伸を用いない成形プロセスを説明するために示したものである。型3は、基本的に、その底部領域に設けられて真空ポンプ5bに接続された流路4と、圧縮空気供給器5aに接続された型上部とを有する。
【0021】
成形される半製品1(この例では、熱可塑性ポリマーの薄いシート)は、図1に示すように熱成形機内に配置される。電熱器2は、半製品1を熱成形温度に加熱するために、半製品1に対して各側から同時に接触する状態とされる。電熱器2は、のちに型3の下部の角に配置される半製品1の領域に対して低い加熱出力を供するように構成される。成形プロセスにおける低い材料の流れはこれらの領域においてこのようにして得られ、これらの領域ではより厚い壁厚が選択的に達成される。各電熱器2は、半製品1において望ましい局所的な温度分布が得られるようなレイアウトに構成された、セラミック加熱層からなる単一の加熱回路により構成される。図1aにおける符号Aの拡大詳細図において、加熱回路6を形成するセラミック加熱層は、断熱支持部材7上に示されている。図1aの右側部分は、電熱器2の詳細平面図を示す。
【0022】
電熱器2との熱的接触による半製品の加熱の後、半製品1は熱成形機内に配置される。真空ポンプ5bは、半製品1の下方に配された型3の空洞内を真空にする。その結果として、半製品1は、型3の空洞内に吸い込まれる(図1bを参照)。同時に、圧縮空気供給器5aによって半製品1の上方から超過圧力を印加して、この成形プロセスを助ける。このプロセスの後、半製品1は型3内で冷却される。このとき、インモールド制約とともに冷却が実行されるように、吸引効果と超過圧力とが調整される。冷却後、完成した成形部位が型3から取り外される。
【0023】
提案する方法では、電熱器上の各加熱回路の適切かつ不均一な分布による熱的接触加熱を用いることで、半製品の局所的に異なる加熱が達成される。
【0024】
図2は、セラミック支持部材7上に単一のセラミック加熱回路6が設けられた電熱器2の一例を示している。加熱回路6は、支持部材7の面上における分布の結果として、異なる領域で異なる温度を発生する。支持部材7上における加熱回路の加熱線のレイアウトを適当なものとすることで、望ましい温度分布はいつでも達成される。別の温度分布を望む場合には、加熱回路6の加熱線の幾何学的配置が異なる別の電熱器2が用いられる。
【符号の説明】
【0025】
1 半製品(semi−finished product)
2 電熱器(hotplate)
3 型(mould)
4 流路(runner)
5a 圧縮空気供給器(compressed air supply)
5b 真空ポンプ(vacuum pump)
6 加熱回路(heating circuit)
7 支持部材(support)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性の半製品の熱成形方法において、
前記半製品(1)を熱成形温度まで加熱し、前記半製品の上面と下側との間で相違する圧力を印加することにより3次元成形部位を成形し、インモールド制約のもとに冷却するものであり、
成形プロセス前における前記半製品の局所的に異なる加熱が、局所的に異なる熱成形作用を生じるものであって、
対向する両側から前記半製品(1)に同時に接触して前記半製品を加熱する2つの接触加熱装置(2)が使用され、
各接触加熱装置は、断熱支持部材(7)上にセラミック加熱層が形成された単一の加熱回路(6)を有し、前記局所的に相違する加熱は、前記支持部材(7)上の前記加熱回路(6)の局所的に異なる形状設計によって達成される、
ことを特徴とする熱成形方法。
【請求項2】
前記加熱回路(6)の電気抵抗は、加熱プロセス中に測定され、前記半製品(1)の温度の確認及び制御に用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱成形方法。
【請求項3】
前記加熱回路(6)はパルス駆動される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱成形方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに係る方法を実行する加熱装置であって、対向する両側から前記半製品(1)に同時に接触して前記半製品を加熱する2つの接触加熱装置を有し、
各接触加熱装置は、断熱支持部材(7)上にセラミック加熱層が形成された単一の加熱回路(6)を有し、
前記加熱回路(6)は、前記支持部材(7)の面上に形成され、当該面上において局所的に異なる加熱出力を発する、
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
前記加熱回路(6)は、前記支持部材(7)上にインプリントされている、
ことを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
加熱プロセス中に一方又は双方の前記加熱回路(6)の電気抵抗に基づいて前記半製品(1)の温度を確認し、前記加熱回路を制御することで当該温度を設定値に調整する制御を行う制御装置を有する、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−520672(P2011−520672A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510822(P2011−510822)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000708
【国際公開番号】WO2009/143810
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(591037214)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ (259)
【Fターム(参考)】