説明

熱成形装置および熱成形装置の型交換方法

【課題】熱板でシートを加熱しながら型を用いて成形する熱成形装置において、型の交換を容易にさせ、型交換の作業時間を短縮させることを課題とする。
【解決手段】所定の成形位置L1を通る所定の搬送方向D1へシートS1を搬送するシート搬送機構10と、成形位置L1にあるシートS1の一面側に配置される熱板30と、成形位置L1にあるシートS1の他面側となる型側成形位置L2に配置されて熱板に対向する成形面41aが形成された型40とを有し、シートS1が成形位置L1まで搬送されたときに熱板30と型40とを近接させてシートS1を加熱しながら成形面の形状に合わせて成形する成形機構20と、型40を型側成形位置L2からシートの搬送方向D1とは異なる所定の引出方向D2へ引き出し可能にさせる型引出機構60とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板でシートを加熱しながら型を用いて成形する熱成形装置および熱成形装置の型交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂シート搬入機構により樹脂シートを搬入するときには加熱板と型とを離間させるとともに、搬入された樹脂シートに向けて加熱板と型とを近接させ、同樹脂シートを加熱軟化させつつ、この加熱軟化した樹脂シートを型の型面形状に合わせて変形させることにより成形品を形成する熱成形装置が記載されている。この装置では、上テーブルに対して型が固定されている。
【特許文献1】特開2005−297399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記装置で型を交換しようとすると、装置内に固定された型を外して別の型を取り付ける作業を熱成形装置内で行う必要があるため、この作業が容易ではなく、多くの時間がかかっていた。
【0004】
本発明は、熱板でシートを加熱しながら型を用いて成形する熱成形装置において、型の交換を容易にさせ、型交換の作業時間を短縮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の熱成形装置は、所定の成形位置を通る所定の搬送方向へ成形可能なシートを搬送するシート搬送機構と、前記成形位置にあるシートの一面側に配置される熱板と、前記成形位置にあるシートの他面側となる型側成形位置に配置されて前記熱板に対向する成形面が形成された型とを有し、前記シート搬送機構により前記シートが搬送されるときには前記熱板と前記型とを離間させ、前記シートが前記成形位置まで搬送されたときに前記熱板と前記型とを近接させて前記シートを加熱しながら前記成形面の形状に合わせて成形する成形機構と、前記型を前記型側成形位置から前記シートの搬送方向とは異なる所定の引出方向へ引き出し可能にさせる型引出機構とを具備することを特徴とする。
【0006】
すなわち、上記型は、上記型引出機構により、型側成形位置からシートの搬送方向とは異なる所定の引出方向へ引き出し可能とされている。これにより、型の交換作業を行う際には型をシート搬送方向とは違う引出方向へ引き出すことにより、該交換作業を容易に行うことができる。従って、熱板を用いる熱成形用の型の交換が容易になり、型交換の作業効率が向上する。
【0007】
また、本発明の熱成形装置の型交換方法は、前記型を前記型側成形位置から前記シートの搬送方向とは異なる所定の引出方向へ引き出して交換することを特徴とする。
すなわち、型をシート搬送方向とは違う引出方向へ引き出して型の交換作業を行うので、該交換作業を容易に行うことができる。従って、熱板を用いる熱成形用の型の交換を容易にさせ、型交換の作業効率を向上させる型交換方法を提供することができる。むろん、請求項2〜請求項7に記載された構成を型交換方法に対応させることも可能である。
【0008】
本発明を適用可能なシートは、成形可能なシートであればよく、例えば、樹脂シート、可塑性シート、等を用いることができる。
上記所定の搬送方向は、水平方向であるとシートを安定して搬送することができるので好適であるが、水平方向からずれた方向でも、鉛直方向でもよい。
上記シートの一面側に配置される熱板は、該シートの一面に接触しても、接触せず該シートの一面に対向して配置されてもよい。上記シートの他面側に配置される型は、該シートの他面に接触しても、接触せず該シートの他面に対向して配置されてもよい。
上記熱板と上記型とを近接および離間させる際には、片方のみ移動させても、両方を移動させてもよい。また、熱板と型との近接および離間の際、シートを移動させなくても、シートを移動させてもよい。
上記成形には、差圧成形のような熱成形等を用いることができる。
上記所定の引出方向は、上記搬送方向と略直交する方向等と該搬送方向と平行でない種々の方向とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、熱板でシートを加熱しながら型を用いて成形する熱成形装置において、型の交換を容易にさせ、型交換の作業時間を短縮させることが可能になる。
請求項2に係る発明では、型を円滑に引出可能にさせることができるとともに、成形時に成形品が型引出レール部材と干渉しないので円滑にシートを成形することが可能になる。
【0010】
請求項3に係る発明では、成形ずれが生じないので、より精度よくシートを成形することが可能になる。
請求項4に係る発明では、シートを精度よく円滑に成形することができるとともに型交換を円滑に行うことができる有用な構成を提供することができる。
【0011】
請求項5に係る発明では、支柱や型用テーブルに過大な力が加わることが無いので、より円滑にシートを成形することが可能になる。
請求項6に係る発明では、支柱の数が少なくて済むので、熱成形装置のコストを低減させることが可能になる。
【0012】
請求項7に係る発明では、より円滑にシートを成形することが可能になる。
請求項8に係る発明では、熱板でシートを加熱しながら型を用いて成形する熱成形装置において、型の交換を容易にさせ、型交換の作業時間を短縮させる型交換方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)熱成形装置の説明:
(2)熱成形装置の作用:
(3)変形例:
【0014】
(1)熱成形装置の説明:
図1は熱成形装置100の外観を示す斜視図、図2は成形機構20を正面から見て示す正面図、図3は成形用の型40が所定の離間位置L13にあるときの成形機構20を右側面から見て示す右側面図、図4は型40が所定の近接位置L14にあるときの成形機構20を右側面から見て示す右側面図、図5は成形機構20の要部を上面から見て示す平面図、図6は固定部材51の下から成形機構20の要部を上面から見て示す平面図、図7は型40の下から底面を見て示す底面図、図8は型40を組み立てる様子を底面側から見て示す分解斜視図、図9は熱成形装置から型40を引き出した様子を底面から見て示す底面図、図10は型40の下から成形機構20の要部を上面から見て示す平面図、図11は熱成形装置から熱板30を引き出した様子を底面から見て示す底面図、図12は型引出レール部材61をレール側ブラケット62aとともに側面から見て示す側面図、図13はレール部材61を所定の型支持位置L5に固定するレール部材退避機構62の様子を示す斜視図、図14はレール部材61を所定の退避位置L6に固定するレール部材退避機構62の様子を示す斜視図、図15は本熱成形装置の動作を示すタイミングチャート、図16は型40をレール部材61上に載置した様子を右側面から見て示す右側面図、図17は熱成形装置から型40を引き出した様子を右側面から見て示す右側面図である。
なお、図2において、左から右へ向かう方向が所定の搬送方向D1であり、左側がシートS1の上流側、右側がシートS1の下流側である。図7、図9、図10、図11では、搬送されるシートS1の位置を破線で示している。
【0015】
本発明の熱成形装置100の基本部分は、シート搬送機構10、成形機構20、型引出機構60、からなる。
シート搬送機構10は、所定の成形位置L1を通る所定の搬送方向D1へシートS1を搬送する。
成形機構20は、成形位置L1にあるシートS1の下面(一面)S1b側となる所定の熱板側成形位置L3に配置される加熱板(熱板)30と、成形位置L1にあるシートS1の上面(他面)S1a側となる所定の型側成形位置L2に配置されて熱板30に対向する所定の成形面41aが形成された型40とを有している。そして、成形機構20は、シート搬送機構10によりシートS1が搬送されるときには熱板30と型40とを離間させ、シートS1が成形位置L1まで搬送されたときに熱板30と型40とを近接させてシートS1を加熱しながら成形面41aの形状に合わせて成形する。
型引出機構60は、型40を型側成形位置L2からシートS1の搬送方向D1とは異なる所定の引出方向D2へ引き出し可能にさせる。
以上により、型の交換作業を行う際には型40をシート搬送方向D1とは違う引出方向D2へ引き出すことにより、該交換作業を容易に行うことができる。従って、熱板でシートを加熱しながら型を用いて成形する熱板成形装置において、型の交換を容易にさせ、型交換の作業時間を短縮させることが可能になる。
【0016】
成形対象のシートS1は、成形可能なシートであればよく、例えば、熱可塑性樹脂シートのような樹脂シート、熱可塑性シートのように可塑性を示す可塑性シート、等を用いることができる。前記樹脂シートは、樹脂を含むシートであればよく、樹脂のみからなるシートでも、樹脂に充てん材等の添加材が添加された材質からなるシートでもよく、単層シートでも、異なる材質をラミネートした積層シートでもよい。前記樹脂は、熱可塑性樹脂のような合成樹脂等とすることができる。シートの素材としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、等を利用可能である。特に、ポリプロピレン樹脂は、比較的低価格でありながら、使用時における耐熱性があり、差圧成形の適性が良く、好適な合成樹脂である。また、シートS1は、シート状ないしフィルム状になっていればよく、ロール状に巻かれていても、所定の長さにカットされていてもよい。シートの厚みは、1〜2mm程度、0.25〜1mm程度、等、様々な厚みとすることが可能であり、0.25mm程度以下のフィルムでもよい。当該程度の厚みの熱可塑性シートを用いると、差圧成形を良好に行うことができる。
【0017】
シートS1の成形は、熱成形により行われる。該熱成形は、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、といった差圧成形が好適である。
シートの搬送方向D1は、水平方向としてシートが安定して搬送されるようにしているが、水平方向から上方向へずれた方向でも、水平方向から下方向へずれた方向でも、鉛直上方向でも、鉛直下方向でもよい。
型の引出方向D2は、搬送方向D1と平行でない水平方向かつ上記搬送方向D1と直交する方向として型の引出量を最小限にして熱成形装置の設置に必要な面積を少なくさせるようにしているが、略直交する水平方向(例えば、搬送方向D1に対して60〜120°、75〜105°ずれた方向)でも、さらに搬送方向D1と平行に近づいた方向(例えば、搬送方向D1に対して30〜60°または120〜150°ずれた方向)でもよい。
【0018】
本実施形態のシート搬送機構10は、シート供給機構12、クランプ搬送機構14を備えている。シート供給機構12は、ロール状に巻かれたシートS1を連続した状態で搬送方向D1へ送り出し可能とされている。クランプ搬送機構14は、成形後のシートS2の両側縁部をクランプ(把持)するクランプ部材14aを有し、成形のタイミングに合わせて成形位置L1にて成形されたシートS2の両側縁部をクランプ部材14aでクランプして間欠的に連続した状態のシートS1を引っ張って搬送方向D1へ搬送する。
【0019】
本熱成形装置100は、さらに、熱板引出機構70を備えている。また、成形後のシートS2を所定の長さでカット(切断)して取り出す成形品取出機構を設けてもよい。該成形品取出機構は、例えば、成形後のシートS2を所定の長さでカットする切断機構、カットされたシートを昇降テーブル上に載置して積み重ねる成形品積載機構、積み重ねられた成形品スタックを取出台上に取り出す取出機構、を備える機構としてもよい。
【0020】
以上の構成により、ロール状のシートS1は、順次必要量がシート供給機構12から巻き出され、所定の搬送方向D1へ搬送されて、成形位置L1に搬入される。なお、シートが搬送されるとき、熱板30と型40とは離間した状態にされている。ここで、成形位置にあるシートの下面S1b側に該下面と接触して熱板30が配置されているので、成形位置のシートS1は熱板30から熱を供給され、加熱されて軟化する。シートが成形位置まで搬送されたとき、熱板30と型40とが近接して成形位置の加熱軟化したシートS1を挟み、該シートS1を差圧成形により成形面41aに密接させる。これにより、シートS1が成形面41aの形状に合わせて成形される。
成形後、熱板30と型40とが離間すると、既に成形位置L1から搬送方向D1へ搬出された成形後のシートS2の両側縁部がクランプ位置L11のクランプ部材14aでクランプされ、クランプ搬送機構14が前記クランプ位置から所定の解放位置L12まで水平移動してシートS2をさらに搬送方向D1へ所定量搬送する。すると、既にクランプされていた成形後のシートS2が例えば成形品取出機構へ送られる。該成形品取出機構では、例えば、所定の長さでカットされて、必要に応じて順次下がっていく昇降テーブル上で積み重ねられ、成形品あるいは成形品スタックが取出機構により取出台上へ送り出される。
以上により、シートS1から成形品を形成することができる。
【0021】
本実施形態の成形機構20は、金属製基台21、真空圧空供給機構25、熱板30、下テーブル(熱板用テーブル)35、成形用の型40、上テーブル(型用テーブル)45、型用テーブル駆動機構50、支柱555、等から構成されている。また、本実施形態の型引出機構60は、型引出レール部材61、レール部材退避機構62、キャスター付支持部材63、を備えている。
上テーブル45は、例えば金属製とされ、熱板30に対向する下面45aで型40を保持する。上テーブル45における搬送方向D1側の両側縁部45c,dには、長手方向を型の引出方向D2に向けた一対の型引出レール部材61,61が取り付けられている。該レール部材61は、上テーブルの縁部45c,dから型40における熱板に対向する下面42aに回り込んで接触することにより型40を引出方向D2へ移動可能にさせる。また、下流側の縁部45dには、レール部材61を型40における熱板に対向する下面42aに接触する位置から上テーブル45の方向へ退避可能にさせるレール部材退避機構62が設けられている。図13と図14に示すように、レール部材退避機構62は、レール部材61を、所定の型支持位置L5に位置決めするか、所定の退避位置L6に位置決めするかする。
【0022】
以上の構成により、レール部材61が型支持位置L5にある場合、型40はレール部材61,61に沿って引出方向D2の往復双方向へスライド可能にされる。これにより、型を円滑に引き出すことが可能になる。
ここで、シートを成形する際、型の高さが低いと成形後のシートS2が下流側のレール部材61に接触する可能性がある。そこで、型を上テーブルに保持させたときに下流側のレール部材61を型支持位置L5から退避位置L6まで退避させておく。これにより、成形時に成形品が型引出レール部材と干渉しないので円滑にシートを成形することが可能になる。
【0023】
本実施形態の型は、図8に示すように、複数の交換用雌型(交換用型)41と、型ベース部材42とを有している。各雌型41は、例えば金属製とされ、それぞれ熱板30に対向する成形面41aが形成されて、該成形面に通気孔(第二の通気孔)41bが形成されている。型ベース部材42は、例えば、金属製とされ、略板状に形成されて、熱板に対向する下面42aで複数の雌型41を着脱可能に保持する型保持部位42eが形成されている。該型保持部位には、雌型の通気孔41bの位置に合わせて通気孔42bが多数形成されている。ここで、該型保持部位に雌型を着脱可能に取り付けて固定するためには、例えば、前記型保持部位と前記雌型とにねじ孔を形成しておき、該ねじ孔にねじを螺合させて前記型保持部位に対して前記雌型を固定し、ねじを外して前記型保持部位から前記雌型を取り外す構成とすることができる。これにより、複数の雌型が型ベース部材に対して交換可能に取り付けられて固定される。
なお、型ベース部材42を冷却液や熱電対等で冷却する型ベース部材冷却機構を設け、成形時に冷却された型ベース部材で雌型41を冷却するようにしてもよい。すると、加熱されたシートが繰り返し接触する雌型の温度上昇を防ぐことができ、長時間安定して成形を行うことが可能になる。
ここで、型引出レール部材61は、上テーブル45における搬送方向側の縁部42dから型ベース部材42における熱板に対向する下面42aに回り込んで接触することにより型ベース部材42を引出方向D2へ移動可能にさせる部材とされている。
上テーブル45は、レール部材61に接触した型ベース部材42の両側縁部42c,dをクランプ部材47a,47aでクランプして引き寄せる型ベース部材クランプ機構47,47を有し、該機構により熱板に対向する下面42aで型ベース部材42を保持する。型ベース部材クランプ機構47,47には、図示しないクランプ部材昇降切替スイッチが接続されており、このスイッチを下降側に切り替えられるとクランプ部材47a,47aを下降させて型ベース部材42をレール部材61上に載置させて型ベース部材の両側縁部42c,dのクランプを解除し、前記スイッチを上昇側に切り替えられるとレール部材61上に載置された型ベース部材の両側縁部42c,dをクランプして型ベース部材42を上昇させて上テーブルの下面45aに接触させて保持する。
【0024】
図12に示すように、下流側の型引出レール部材61は、例えば金属製とされ、長手方向を引出方向D2に向けるとともに、上テーブル45の下流側で鉛直方向に向けた壁状の立壁部61a、該立壁部の下側縁部から上テーブルの方向へ向けて延出した水平延出部61b、該水平延出部の上面に対して回転動作可能に取り付けられた複数のベアリング61c、を備えている。上流側のレール部材についても、同様である。
以上により、レール部材61を型支持位置L5にし、雌型41を取り付けた型ベース部材42の縁部42c,dをレール部材の水平延出部61b,61b上に載置すると、ベアリング61c,61cにより前記縁部42c,dが円滑にスライドし、型ベース部材42が引出位置L4から型側成形位置L2まで円滑に水平移動する。そして、型ベース部材クランプ機構47,47で型ベース部材42を引き上げると、縁部42c,dがベアリング61c,61cから離間し、レール部材61を型支持位置L5から退避させることができる。
【0025】
図13と図14に示すように、レール部材退避機構62は、レール部材の立壁部61aにおける上テーブルとは反対側の面に取り付けられたL字状の金属製レール側ブラケット62a,62a、上テーブル45の搬送方向側の縁部45dの上面に取り付けられたL字状の金属製テーブル側ブラケット62b,62b、レール側ブラケットとテーブル側ブラケットとを相対的に回転可能に連結した金属製の軸部材62c,62c、金属製ボルト62d,62d、金属製ナット62e,62e、を備える。ここで、レール部材61が型支持位置L5にあるときを基準として、レール側ブラケット62aは、立壁部61aの取付部位から上方に延出した上方延出部と、該上方延出部の先端部から上テーブルの方向へ延出した水平延出部とを有する形状とされ、前記上方延出部の上部にボルト挿通用の貫通穴62a1が形成され、前記水平延出部において貫通穴62a1よりも上テーブル側で軸部材62cが貫通している。テーブル側ブラケット62bは、上テーブルの取付部位から水平方向外側へ延出した水平延出部と、前記取付部位から上方へ延出した上方延出部とを有する形状とされ、前記水平延出部と前記上方延出部とが交わる部位で軸部材62cが貫通し、前記水平延出部の先端部にボルト挿通用の貫通穴62b1が形成され、前記上方延出部の上部にボルト挿通用の貫通穴62b2が形成されている。
【0026】
以上により、レール部材61を型支持位置L5に固定する場合、必要に応じてナット62e,62eを外してボルト62d,62dを抜き、レール側ブラケットの貫通穴62a1,62a1をテーブル側ブラケットの貫通穴62b1,62b1に合わせてボルト62d,62dを貫通してナット62e,62eに螺合させる。一方、レール部材61を退避位置L6に固定する場合、ナット62e,62eを外してボルト62d,62dを抜き、レール側ブラケットの貫通穴62a1,62a1をテーブル側ブラケットの貫通穴62b2,62b2に合わせてボルト62d,62dを貫通してナット62e,62eに螺合させる。このようにして、レール部材61を型支持位置L5や退避位置L6に位置決めすることができる。
むろん、レール部材を型支持位置と退避位置との間で手動ではなく自動的に移動させるよう、レール部材退避機構を構成してもよい。また、レール部材61が型支持位置L5にあるか否かを検出する位置検出センサ(赤外線センサ等)を設け、上記クランプ部材昇降切替スイッチが下降側に切り替えられたときに前記位置検出センサがレール部材を検出しなかった場合にはクランプ部材47a,47aを下降させず前記位置検出センサがレール部材を検出した場合のみクランプ部材47a,47aを下降させるようにしてもよい。
【0027】
図2と図17に示すように、キャスター付支持部材63は、例えば金属製とされ、型を引き出すときに型ベース部材42の引出側縁部42fを引出可能に下から支持する。同支持部材63は、型ベース部材の引出側縁部42fを下から支持する基部63a、該基部の搬送方向D1両端部から下方に延出した脚63b,63b、該脚の下端部に取り付けられて床上を転動するキャスター63c,63c、を備えている。なお、同支持部材63は、型40が型側成形位置L2に収容されたときに型ベース部材の引出側縁部42fから外れ、型40を型側成形位置L2から引き出すときに型ベース部材の引出側縁部42fに掛止するようにされている。
以上により、レール部材61,61に沿って水平移動する型ベース部材42は、型ベース部材の引出側縁部42fが支持されて水平を保ったまま姿勢が安定する。従って、型を円滑に水平方向へ引き出すことができる。
なお、型40を型側成形位置L2と引出位置L4との間で手動ではなく自動的に移動させる自動型引出機構を構成してもよい。また、型40が所定の載置位置L15にあるか否かを検出する位置検出センサ(赤外線センサ等)を設け、型40が載置位置L15にあることを前記位置検出センサが検出しなかった場合には型の引き出しを禁止し、型40が載置位置L15にあることを前記位置検出センサが検出した場合のみ型の引き出しを許可する型引出許否機構を設けてもよい。
【0028】
以上の構成により、型ベース部材42の下面に複数の雌型41を取り付け、レール部材61を型支持位置L5にして、型40を引出位置L4から型側成形位置L2まで水平移動させると、クランプ機構47,47で型ベース部材42の両側縁部42c,dをクランプして引き上げることにより型40を上テーブル45の下面に保持させることができる。これにより型が上テーブルに固定され、成形ずれが生じないので、精度よくシートを成形することができる。
【0029】
また、床に接触した基台21には、搬送されるシートS1および引き出される型40と接触しない位置に複数の支柱55が上方に向かって立設されている。複数の支柱55は、熱板30を位置決めしながら型用テーブル駆動機構50に向けて立設されて該型用テーブル駆動機構を下から支持する。同複数の支柱55は、上テーブル45の近接および離間の往復動をガイドする。一方、型用テーブル駆動機構50は、上テーブル45における熱板に対向する下面45aとは反対側の上部45bに取り付けられ、成形位置L1で型40を保持した上テーブル45を熱板30に対して近接および離間させる。
以上により、型を保持した上テーブルが支柱にガイドされて位置決めされながら往復動するので、シートを精度よく円滑に成形することができる。また、複数の支柱が引き出される型40と接触しない位置に設けられているので、型交換を円滑に行うことができる。
【0030】
図5〜図7に示すように、複数の支柱55は、引き出される型40よりも前記搬送されるシートS1の上流側において該搬送されるシートS1を挟む位置に配置された第一の円柱状支柱55aおよび第二の円柱状支柱55bと、引き出される型40よりも前記搬送されるシートS1の下流側において該搬送されるシートS1を挟む位置に配置された第三の円柱状支柱55cおよび第四の円柱状支柱55dとから構成されている。ここで、複数の支柱55は、円柱状支柱55a〜dから少なくとも構成されればよく、円柱状支柱55a〜dから構成されても、さらに、搬送されるシートS1および引き出される型40と接触しない位置に立設された他の支柱を含めて構成されてもよい。
また、第一の円柱状支柱55aと第四の円柱状支柱55dとは対角の位置に配置され、第二の円柱状支柱55bと第三の円柱状支柱55cとは対角の位置に配置されている。
【0031】
型用テーブル駆動機構50は、複数の支柱55の先端部で下から支持された固定部材51、該固定部材と上テーブル45とを近接および離間させるリンク機構52、を備えている。固定部材51は、例えば金属製とされ、H字形に形成されて、該H字形の4箇所の端部51a〜dで前記立設された円柱状支柱55a〜dの先端部に固定される。ここで、各円柱状支柱55a〜dの先端部にはねじ55eが形成されており、ナット56を用いて各円柱状支柱55a〜dの先端部に固定部材51を固定することができる。リンク機構52は、リンク部材52a、ボールねじ機構52b、電動モータ52c、を備え、固定部材51の前記H字形の中央部51eと上テーブル45との間に設けられて固定部材51と上テーブル45とを近接および離間させる。モータ52cは、固定部材51の前記H字形の中央部51eに取り付けられ、ボールねじ機構52bに接続されて該ボールねじ機構を駆動する。ボールねじ機構52bは、リンク部材52aに接続されて該リンク部材を連動させる。リンク部材52aは、上テーブルの上部45bに取り付けられて、ボールねじ機構52bの移動に応じて上テーブルを上下方向へ往復動させる。
【0032】
図6に示すように、上テーブル45は、第一の円柱状支柱55aの径よりも大きい径とされて該円柱状支柱を上下方向へ貫通させる第一の貫通穴46a、第二の円柱状支柱55bの径よりも大きい径とされて該円柱状支柱を上下方向へ貫通させる第二の貫通穴46b、第三の円柱状支柱55cの径よりも大きい径とされて該円柱状支柱を上下方向へ貫通させる第三の貫通穴46c、第四の円柱状支柱55dの径よりも大きい径とされて該円柱状支柱を上下方向へ貫通させる第四の貫通穴46d、が形成されている。
ここで、対角の位置にある第一・第四の貫通穴46a,dの径は、対角の位置にある第二・第三の貫通穴46b,cの径よりも大きくされている。すなわち、第一・第四の貫通穴46a,dの遊びは、第二・第三の貫通穴46b,cの遊びよりも大きくされている。
以上により、遊びの少ない第二・第三の貫通穴46b,cで上テーブルが位置決めされる。熱板を用いて成形を行う場合、生じる熱により装置の部材が膨張する等して寸法のずれが生じることがあるが、以上の構成により支柱や上テーブルに過大な力が加わることが無いので、より円滑にシートを成形することが可能になる。
なお、支柱55bを第一の円柱状支柱、支柱55aを第二の円柱状支柱、支柱55dを第三の円柱状支柱、支柱55cを第一の円柱状支柱、穴46bを第一の貫通穴、穴46aを第二の貫通穴、穴46dを第三の貫通穴、穴46cを第三の貫通穴、とすることもできる。
【0033】
図2、図3等に示すように、熱板30は、型40に対向する上面30aが成形位置L1のシートS1の下面S1bに接触するように配置され、成形位置L1に搬入されたシートS1を加熱して軟化させる。熱板30は、下テーブル(熱板用テーブル)35上に載置された台座31上に載置されている。ここで、台座31には図示しないヒータ(加熱機構)が設けられており、ヒータに通電するとヒータから熱が発生し、台座31が加熱される結果、熱板30が加熱される。また、台座31には熱板30の温度を検出する温度センサも設けられており、図示しない加熱温度フィードバック制御機構により熱板30を設定温度となるように加熱する。熱板の加熱温度は、シートの材質や厚み等に応じて設定され、例えばシートが軟化する温度以上溶融する温度以下とすることができる。
【0034】
図10等に示すように、熱板30は、例えば金属製とされ、矩形板形状に形成されている。また、熱板30には、上下方向へ貫通した通気孔(第一の通気孔)30bが多数形成されている。各通気孔30bは、通気経路25aに接続され、真空圧空供給機構25から真空圧を作用させられたり(空気を吸引されたり)、真空圧の供給(減圧)から解放されたり、圧空を供給されたり、圧空の供給を解除されたりする。
なお、差圧成形を円滑に行うため、雌型41の成形面41aにも複数の通気孔41bが形成されている。
台座31は、例えば金属製とされ、矩形板形状に形成されている。図10に示すように、台座31は、下テーブル35に対してシートの搬送方向D1とは異なる所定の熱板引出方向D3へ引出可能に設けられており、熱板引出方向D3の往復双方向へスライド可能とされている。従って、台座31に載置された熱板30は、熱板側成形位置L3からシートの搬送方向D1とは違う熱板引出方向D3へ往復動可能に引き出し可能とされている。
熱板の引出方向D3は、搬送方向D1と平行でない水平方向かつ上記搬送方向D1と直交する方向として熱板の引出量を最小限にして熱成形装置の設置に必要な面積を少なくさせるようにしているが、略直交する水平方向でも、さらに搬送方向D1と平行に近づいた方向でもよい。
なお、熱板を熱板側成形位置L3と熱板引出位置L7との間で手動ではなく自動的に移動させる自動熱板引出機構を構成してもよい。
【0035】
下テーブル35は、第一の円柱状支柱55aの径よりも大きい径とされて該円柱状支柱を上下方向へ貫通させる第一の貫通穴36a、第二の円柱状支柱55bの径よりも大きい径とされて該円柱状支柱を上下方向へ貫通させる第二の貫通穴36b、第三の円柱状支柱55cの径よりも大きい径とされて該円柱状支柱を上下方向へ貫通させる第三の貫通穴36c、第四の円柱状支柱55dの径よりも大きい径とされて該円柱状支柱を上下方向へ貫通させる第四の貫通穴36d、が形成されている。
ここで、対角の位置にある第一・第四の貫通穴36a,dの径は、対角の位置にある第二・第三の貫通穴36b,cの径よりも大きくされている。すなわち、第一・第四の貫通穴36a,dの遊びは、第二・第三の貫通穴36b,cの遊びよりも大きくされている。
以上により、遊びの少ない第二・第三の貫通穴36b,cで下テーブルが位置決めされる。熱板を用いて成形を行う場合、生じる熱により装置の部材が膨張する等して寸法のずれが生じることがあるが、以上の構成により支柱や下テーブルに過大な力が加わることが無いので、より円滑にシートを成形することが可能になる。
なお、支柱55bを第一の円柱状支柱、支柱55aを第二の円柱状支柱、支柱55dを第三の円柱状支柱、支柱55cを第一の円柱状支柱、穴36bを第一の貫通穴、穴36aを第二の貫通穴、穴36dを第三の貫通穴、穴36cを第三の貫通穴、とすることもできる。
【0036】
成形機構20は、シートS1が成形位置L1まで搬送されて熱板30と型40とを所定の近接位置(L14)まで近接させるときには熱板の通気孔30bに真空圧を作用させてシートS1を熱板30に密接させる。そして、熱板30と型40とが近接位置(L14)まで近接したときに熱板の通気孔30bに作用させた真空圧を解除してシートS1を型の成形面41aに密接させることにより差圧成形する。本加熱機構は、熱板と型との近接時に真空圧空供給機構25から通気孔30bに圧空を供給して真空圧を解除し、型の通気孔41bからシートS1の上側の空気を抜けさせて該シートを成形面41aに密接させる圧空成形を行う。
【0037】
図15のタイミングチャートに示すように、初期状態では、クランプ搬送機構のクランプ部材14aのシートクランプをオフにしてシートS2のクランプを解除させた状態にし、クランプ搬送機構14を上流側の所定のクランプ位置L11にさせ、型40を所定の離間位置L13にさせ、真空圧空供給機構25から通気孔30bへの真空圧または圧空の供給を解除している状態にしている。この状態で、まず、クランプ部材14aのシートクランプをオンにしてシートS2の両側縁部をクランプ搬送機構14にクランプさせる(タイミングt1)。次に、クランプ搬送機構14をクランプ位置L11から下流側の所定の解放位置L12まで移動させる(タイミングt2〜t3)。すると、成形後のシートS2が所定量搬送方向D1へ搬送され、成形前のシートS1も成形後のシートS2に引っ張られて所定量搬送方向D1へ搬送されて、成形されていないシートS1が成形位置L1に搬入される。さらに、クランプ部材14aのシートクランプをオフにしてシートS2のクランプを解除させた状態にする(タイミングt4)。なお、タイミングt2に戻るまでに、所定のタイミングでクランプ搬送機構14を解放位置L12から上流側のクランプ位置L11まで移動させるようにしている。
【0038】
その後、真空圧空供給機構25から通気孔30bへ真空圧を作用させ、成形位置L1のシートS1を熱板30に密接させる(タイミングt5)。すると、成形位置のシートS1は、熱板30にて加熱され、軟化する。次に、図4に示すように、型用テーブル駆動機構50にて上テーブル45を下降させ、型40を所定の近接位置L14にさせて、熱板30と型40とを近接させる(タイミングt6〜t7)。そして、真空圧空供給機構25から通気孔30bへ圧空を供給して、型の通気孔41bからエアを排出させながら加熱軟化状態のシートS1を型の成形面41aに密接させる(タイミングt8)。ここで、雌型41の温度は熱板30よりも低いため、成形面41aに密接したシートが冷却され、固化する。これにより、シートが圧空成形され、カット前の成形品が形成される。
なお、型の通気孔41bに真空圧を作用させる(空気を吸引する)減圧機構を該通気孔41bに接続し、タイミングt8〜t9で通気孔41bに真空圧を作用させてもよい。すると、シートに対して真空圧空成形を行うことができる。このとき、真空圧空供給機構25から通気孔30bへ圧空を供給しないと、シートに対して真空成形を行うことができる。
【0039】
タイミングt9で真空圧空供給機構25から通気孔30bへの圧空の供給を解除すると、型用テーブル駆動機構50にて上テーブル45を上昇させ、型40を所定の離間位置L13にさせて、熱板30と型40とを離間させる(タイミングt10〜t11)。
以上で1サイクルが終了し、以下、タイミングt1〜t11を繰り返すことにより、シートから熱板を用いた差圧成形を連続して行うことができる。
【0040】
(2)熱成形装置の作用:
種々の成形品を製造するため、本熱成形装置では、雌型を交換しながら成形品の製造を行うことができるようになっている。以下、本熱成形装置の型交換方法を説明する。
ある成形品の製造を終了したとき、型40は図3に示すように離間位置L13にあり、型ベース部材クランプ機構のクランプ部材47a,47aは上昇位置で型ベース部材42を保持し、下流側の型引出レール部材61は退避位置L6に固定されている状態となっている。
【0041】
まず、型の脱落を防ぐため、型交換作業を行う作業者は、退避位置にある下流側の型引出レール部材61を型支持位置L5に付け替える作業を行う。次に、作業者は、クランプ部材昇降切替スイッチを下降側に切り替える。すると、クランプ部材47a,47aが下降して型ベース部材42はレール部材61上に載置され(図16に示す所定の載置位置L15)、型ベース部材の両側縁部42c,dのクランプが解除される。そして、作業者は、型40を型側成形位置L2から所定の引出位置L4まで引出方向D2へ引き出す。このとき、型ベース部材42はレール部材のベアリング61c,61cによりレール部材61,61に沿って円滑に水平移動し、型ベース部材の引出側縁部42fはキャスター付支持部材63に掛止され支持されて姿勢が保たれる。この状態を、図9と図17に示している。
ここで、型の引出方向D2がシートの搬送方向D1とは異なる方向とされているので、型40はシートの搬送位置からずれた位置となる。従って、作業者は、シートの搬送位置からずれた引出位置L4で型ベース部材から雌型を取り外し、次に製造する成形品用の雌型をシートの搬送位置からずれた引出位置L4で型ベース部材42に取り付けることができる。特に、型の引出方向がシートの搬送方向とは90°異なる水平方向とされているので、型を熱成形装置のシートの搬送位置から確実に外すことができるとともに、型を交換する作業に必要な作業スペースを最小限で済ますことができる。
なお、型ベース部材も引出位置L4に引き出されているので、型ベース部材も交換したり、型ベース部材を清掃したりすることもできる。むろん、型ベース部材と雌型とが一体化された型では、当該型を引出位置L4で交換すればよい。
【0042】
型を交換した後、作業者は、型40を引出方向D2に沿って引出位置L4から型側成形位置L2まで移動させる。このとき、型ベース部材42はレール部材のベアリング61c,61cによりレール部材61,61に沿って円滑に水平移動し、型ベース部材の引出側縁部42fはキャスター付支持部材63に支持されて姿勢が保たれて、型40が型側成形位置L2に収容されると型ベース部材の引出側縁部42fはキャスター付支持部材63の掛止から解除される。このとき、型40は、図16に示す載置位置L15になる。
次に、作業者は、クランプ部材昇降切替スイッチを上昇側に切り替える。すると、クランプ部材47a,47aが型ベース部材の両側縁部42c,dをクランプして型ベース部材42を上昇させて上テーブルの下面45aに接触させて保持する。このとき、型40は、離間位置L13になる。
そして、作業者は、型保持位置にある下流側の型引出レール部材61を退避位置L6に付け替える作業を行う。このとき、図3に示す状態となり、交換後の雌型の成形面に応じた成形品を製造する準備が終了する。
【0043】
以上説明したように、型の交換作業を行う際には型をシート搬送方向とは違う引出方向へ引き出すことにより、該交換作業を容易に行うことができる。従って、熱板でシートを加熱しながら型を用いて成形する熱成形装置において、型の交換を容易にさせ、型交換の作業時間を短縮させることが可能になる。また、熱板でシートを加熱しながら型を用いて成形する熱成形装置において、型の交換を容易にさせ、型交換の作業時間を短縮させる型交換方法を提供することができる。
【0044】
なお、本熱成形装置では、熱板30を載置した台座31を所定の熱板側成形位置L3から所定の熱板引出位置L7まで所定の熱板引出方向D3へ引き出すことができる。該熱板引出方向は、シート搬送方向D1とは90°異なる水平方向とされている。従って、作業者は、熱板を引き出して交換したり、清掃したりすることもできる。
【0045】
(3)変形例:
上記熱板と上記型との上下関係を逆、すなわち、シートの上面側に熱板を配置し、シートの下面側に型を配置してもよい。また、シートを鉛直方向に搬送する場合には、熱板と型とを同じ高さに配置してもよい。
上記シートの一面側に配置される熱板は、該シートの一面に接触しても、接触せず該シートの一面に対面配置されてもよい。なお、シートを加熱する際には、接触加熱する以外にも、輻射加熱や、接触加熱と輻射加熱の併用によりシートを加熱してもよい。上記シートの他面側に配置される型は、該シートの他面に接触しても、接触せず該シートの他面に対面配置されてもよい。
上記熱板と上記型とを近接および離間させる際には、型のみ移動させる以外にも、熱板のみ移動させても、熱板と型の両方を移動させてもよい。また、熱板と型との近接および離間の際、シートの位置を変えないのみならず、シートを型の方向へ移動させたり、シートを熱板の方向へ移動させたりしてもよい。
型用テーブルを熱板に対して近接および離間させる機構は、上記リンク機構以外にも、各種クランク機構、エアシリンダや油圧シリンダのようなシリンダを用いた機構、等でもよい。なお、型用テーブルを駆動する方向は、型用テーブルと熱板との位置関係に応じて決定すればよく、上下動以外にも、水平方向等とすることもできる。
熱成形装置の基本部分10,20,60のみでも、型の交換を容易にさせ、型交換の作業時間を短縮させる効果が得られる。
なお、上述した変形例は、以下の変形例にも適用可能である。
【0046】
図18に示すように、複数の支柱を対角にある2本のみとしてもよい。図の例では、引き出される型40よりも前記搬送されるシートS1の上流側に配置された第一の支柱55aと、引き出される型40よりも前記搬送されるシートS1の下流側において前記第一の支柱55aとで前記搬送されるシートS1を挟む位置に配置された第二の支柱55dと、のみから複数の支柱を構成している。むろん、支柱55a,dは、前記搬送されるシートS1および前記引き出される型40と接触しない位置にて基台21から上方へ向かって立設されている。同支柱55a,dは、下テーブル35を位置決めすることによって熱板30を位置決めし、固定部材151に向けて立設されて該固定部材を下から支持し、上テーブル45の貫通穴46a,dを貫通することによって上テーブル45の近接および離間の往復動をガイドしている。固定部材151は、成形位置L1において対角を結ぶように設置され、水平方向の長手方向を、シートの搬送方向D1に対して略45°ずれた方向、かつ、型の引出方向D2に対して略45°ずれた方向にむけて配置されている。そして、固定部材151の両端部151a,dで、固定部材151は前記立設された支柱55a,dの先端部にナット56で固定されている。
以上の構成により、支柱の数が少なくて済むので、熱成形装置のコストを低減させることが可能になる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施例や変形例に限られず、上述した実施例および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施例および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、有用な熱成形装置およびその型交換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】熱成形装置の外観を示す斜視図。
【図2】成形機構を正面から見て示す正面図。
【図3】型が所定の離間位置にあるときの成形機構を示す右側面図。
【図4】型が所定の近接位置にあるときの成形機構を示す右側面図。
【図5】成形機構の要部を上面から見て示す平面図。
【図6】固定部材の下から成形機構の要部を上面から見て示す平面図。
【図7】型の下から底面を見て示す底面図。
【図8】型を組み立てる様子を底面側から見て示す分解斜視図。
【図9】熱成形装置から型を引き出した様子を底面から見て示す底面図。
【図10】型の下から成形機構の要部を上面から見て示す平面図。
【図11】熱成形装置から熱板を引き出した様子を底面から見て示す底面図。
【図12】型引出レール部材をレール側ブラケットとともに示す側面図。
【図13】レール部材を所定の型支持位置に固定するレール部材退避機構の様子を示す斜視図。
【図14】レール部材を所定の退避位置に固定するレール部材退避機構の様子を示す斜視図。
【図15】本熱成形装置の動作を示すタイミングチャート。
【図16】型をレール部材上に載置した様子を右側面から見て示す右側面図。
【図17】熱成形装置から型を引き出した様子を右側面から見て示す右側面図。
【図18】変形例において成形機構の要部を上面から見て示す平面図。
【符号の説明】
【0049】
10…シート搬送機構、12…シート供給機構、
14…クランプ搬送機構、14a…クランプ部材、
20…成形機構、21…基台、
25…真空圧空供給機構、25a…通気経路、
30…加熱板(熱板)、30a…型に対向する面、30b…第一の通気孔、
31…台座、
35…下テーブル(熱板用テーブル)、36a〜d…貫通穴、
40…型、
41…交換用雌型(交換用型)、41a…成形面、41b…第二の通気孔、
42…型ベース部材、42a…下面(熱板に対向する面)、42b…通気孔、
42c,d…搬送方向側の縁部、42e…型保持部位、42f…引出側縁部、
45…上テーブル(型用テーブル)、
45a…下面(熱板に対向する面)、
45b…上部(熱板に対向する面とは反対側の部位)、45c,d…搬送方向側の縁部、
46a…第一の貫通穴、46b…第二の貫通穴、
46c…第三の貫通穴、46d…第四の貫通穴、
47…型ベース部材クランプ機構、47a…クランプ部材、
50…型用テーブル駆動機構、
51,151…固定部材、
51a〜d…H字形の4箇所の端部、51e…H字形の中央部、
52…リンク機構、
52a…リンク部材、52b…ボールねじ機構、52c…電動モータ、
55…支柱、55a…第一の円柱状支柱、55b…第二の円柱状支柱、
55c…第三の円柱状支柱、55d…第四の円柱状支柱、
55e…ねじ、56…ナット、
60…型引出機構、
61…型引出レール部材、
61a…立壁部、61b…水平延出部、61c…ベアリング、
62…レール部材退避機構、
62a…レール側ブラケット、62b…テーブル側ブラケット、62c…軸部材、
62d…ボルト、62e…ナット、62a1,62b1,62b2…貫通穴、
63…キャスター付支持部材、63a…基部、63b…脚、63c…キャスター、
70…熱板引出機構、
100…熱成形装置、
D1…搬送方向、D2…引出方向、D3…熱板引出方向、
L1…成形位置、L2…型側成形位置、L3…熱板側成形位置、
L4…引出位置、L5…型支持位置、L6…退避位置、L7…熱板引出位置、
L11…クランプ位置、L12…解放位置、
L13…離間位置、L14…近接位置、L15…載置位置、
S1…シート、S1a…上面(他面)、S1b…下面(一面)、
S2…成形後のシート、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の成形位置を通る所定の搬送方向へ成形可能なシートを搬送するシート搬送機構と、
前記成形位置にあるシートの一面側に配置される熱板と、前記成形位置にあるシートの他面側となる型側成形位置に配置されて前記熱板に対向する成形面が形成された型とを有し、前記シート搬送機構により前記シートが搬送されるときには前記熱板と前記型とを離間させ、前記シートが前記成形位置まで搬送されたときに前記熱板と前記型とを近接させて前記シートを加熱しながら前記成形面の形状に合わせて成形する成形機構と、
前記型を前記型側成形位置から前記シートの搬送方向とは異なる所定の引出方向へ引き出し可能にさせる型引出機構とを具備することを特徴とする熱成形装置。
【請求項2】
前記成形機構は、前記熱板に対向する面で前記型を保持する型用テーブルを有し、
前記型引出機構は、
前記型用テーブルにおける前記搬送方向側の縁部に取り付けられて該縁部から前記型における前記熱板に対向する面に回り込んで接触することにより該型を前記引出方向へ移動可能にさせる型引出レール部材と、
該型引出レール部材を前記型における熱板に対向する面に接触する位置から前記型用テーブルの方向へ退避可能にさせるレール部材退避機構とを有することを特徴とする請求項1に記載の熱成形装置。
【請求項3】
前記型は、それぞれ前記成形面が形成された複数の交換用型と、前記熱板に対向する面で前記複数の交換用型を着脱可能に保持する型ベース部材とを有し、
前記型引出レール部材は、前記型用テーブルにおける前記搬送方向側の縁部から前記型ベース部材における前記熱板に対向する面に回り込んで接触することにより該型ベース部材を前記引出方向へ移動可能にさせる部材とされ、
前記型用テーブルは、前記型引出レール部材に接触した前記型ベース部材の縁部をクランプして引き寄せることにより前記熱板に対向する面で前記型ベース部材を保持する型ベース部材クランプ機構を有することを特徴とする請求項2に記載の熱成形装置。
【請求項4】
前記成形機構は、
前記型用テーブルにおける前記熱板に対向する面とは反対側の部位に取り付けられて前記成形位置で前記型を保持した型用テーブルを前記熱板に対して近接および離間させる型用テーブル駆動機構と、
搬送される前記シートおよび引き出される前記型と接触しない位置にて前記熱板を位置決めしながら前記型用テーブル駆動機構に向けて立設されて該型用テーブル駆動機構を支持するとともに前記型用テーブルの近接および離間の往復動をガイドする複数の支柱とを有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の熱成形装置。
【請求項5】
前記立設された複数の支柱は、引き出される前記型よりも前記搬送されるシートの上流側において該搬送されるシートを挟む位置に配置された第一および第二の円柱状支柱と、引き出される前記型よりも前記搬送されるシートの下流側において該搬送されるシートを挟む位置に配置された第三および第四の円柱状支柱とから少なくとも構成され、
前記第一の円柱状支柱と前記第四の円柱状支柱とが対角の位置に配置されるとともに前記第二の円柱状支柱と前記第三の円柱状支柱とが対角の位置に配置され、
前記型用テーブル駆動機構は、H字形に形成されて該H字形の4箇所の端部で前記立設された第一、第二、第三および第四の円柱状支柱の先端部に固定された固定部材と、該固定部材の前記H字形の中央部と前記型用テーブルとの間に設けられて該固定部材と該型用テーブルとを近接および離間させるリンク機構とを有し、
前記型用テーブルは、前記第一、第二、第三および第四の円柱状支柱の径よりも大きくされて該各円柱状支柱をそれぞれ貫通させる第一、第二、第三および第四の貫通穴が形成され、
対角の位置にある前記第一および第四の貫通穴の遊びは、対角の位置にある前記第二および第三の貫通穴の遊びよりも大きくされていることを特徴とする請求項4に記載の熱成形装置。
【請求項6】
前記立設された複数の支柱は、引き出される前記型よりも前記搬送されるシートの上流側に配置された第一の支柱と、引き出される前記型よりも前記搬送されるシートの下流側において前記第一の支柱とで前記搬送されるシートを挟む位置に配置された第二の支柱と、のみから構成されていることを特徴とする請求項4に記載の熱成形装置。
【請求項7】
前記シート搬送機構は、ロール状に巻かれた前記シートを連続した状態で前記搬送方向へ送り出し可能なシート供給機構と、前記成形のタイミングに合わせて前記成形位置にて成形されたシートの縁部をクランプして間欠的に前記連続した状態のシートを引っ張って搬送するクランプ搬送機構とを有し、
前記熱板に第一の通気孔が形成されるとともに前記型の成形面に第二の通気孔が形成され、
前記成形機構は、前記シートが前記成形位置まで搬送されて前記熱板と前記型とを所定の近接位置まで近接させるときには前記第一の通気孔に真空圧を作用させて前記シートを前記熱板に密接させ、前記熱板と前記型とが前記近接位置まで近接したときに前記第一の通気孔に作用させた真空圧を解除して前記シートを前記型の成形面に密接させることにより差圧成形することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の熱成形装置。
【請求項8】
所定の成形位置を通る所定の搬送方向へ成形可能なシートを搬送するシート搬送機構と、前記成形位置にあるシートの一面側に配置される熱板と、所定の成形面が形成されて前記成形位置にあるシートの他面側となる型側成形位置に配置される型とを有し、前記シート搬送機構により前記シートが搬送されるときには前記熱板と前記型とを離間させ、前記シートが前記成形位置まで搬送されたときに前記熱板と前記型とを近接させて前記シートを加熱しながら前記成形面の形状に合わせて成形する成形機構と、を備える熱成形装置の型交換方法であって、
前記型を前記型側成形位置から前記シートの搬送方向とは異なる所定の引出方向へ引き出して交換することを特徴とすることを特徴とする熱成形装置の型交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−144828(P2007−144828A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343102(P2005−343102)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(304050369)株式会社浅野研究所 (44)
【Fターム(参考)】