説明

熱抑制された予備糊化非粒状デンプン及びフラワー並びにそれらの製造方法

【課題】化学的に架橋された予備糊化非粒状デンプンのテクスチャー性を有し、実質的に異食味のない、未化工予備糊化非粒状デンプンについてのニーズに応える。
【解決手段】熱抑制された(thermally-inhibited)予備糊化非粒状デンプン及びフラワーを、デンプン及びフラワーを予備糊化し、デンプン及びフラワーを無水または実質的に無水となるまで脱水し、次いで脱水されたデンプンを熱処理することにより、デンプン及びフラワーを熱抑制することにより製造する。予備糊化はドラム乾燥またはジェット加熱及び噴霧乾燥によるような粒状構造を破壊する公知の方法を用いて、熱抑制の前または後に行うことができる。デンプンを適切な加熱装置中で加熱するか、デンプンから溶媒、たとえばエタノールを用いて水を抽出するか、デンプンを凍結乾燥するかにより、デンプンを脱水することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抑制(inhibit)された予備糊化(pregelatinized)非粒状デンプン及びフラワー(flour)並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然のデンプン粒は冷水に溶けない。しかしながら、天然の粒子を水に分散させ、加熱した時、それらは水和し、膨潤する。加熱、剪断力または極度のpH条件を継続すると、糊化粒子断片及びデンプン分子が水に分散、すなわち溶解化する。
【0003】
予備糊化デンプン(すなわち、冷水溶解性または分散性デンプン)は典型的には、熱的、化学的または機械的糊化により製造される。用語「糊化された(gelatinized)」または「加熱調理された(cooked)」デンプンは、それらの偏光十字を喪失した、そして粒子状構造を有し、または有していない、膨潤したデンプン粒をいう。
【0004】
前記デンプンを製造するのに用いられる一般的な熱的工程は、バッチ加熱、オートクレーブに入れること及び熱交換機またはジェットクッカー中の連続的な加熱(cooking)工程を含む。粒状デンプンの水への熱分散は複雑なメカニズムを含む。T.M.DeMan 、P.W.Voisey、V.F.Rasper編の「Rheology & Texture in Food Quality」(AVI Publishing 、コネチカット州、ウェストポート、1976年)の第12章、第427 〜444 頁のKruger及びMurrayの検討、R.Whisther編の「Starch : Chemisty & Technology, Vol.2 」(Academic Press 、ニューヨーク州、ニューヨーク、1967年)の第21章、第449 〜520 頁の検討並びにPaul及びH.H.Palmer編「Food Theory and Applications」(John Wiley & Sons. Inc.、ニューヨーク州、ニューヨーク、1972年)の第4章、第165 〜171 頁のE.M.Osman の検討を参照のこと。その工程は糊化温度で水がデンプン粒に吸収される時に始まり、水和した粒子が膨潤し、より小さい粒状断片に分裂しながら、デンプンが最後に分子分散に達するまで継続する。調理されたものの粘度はこの工程の間に有意に変化し、粒子が水和し、膨潤するにつれ増加し、粒子断片のサイズが減少するにつれ低下する。適当な量の剪断力は膨潤した粒子断片を分裂させて、実質的な分子分解なしに分子分散を与えるのを促進する。
【0005】
デンプン基礎材料に依存して、予備糊化されたデンプンは、デンプンが水に分散した後に、特異的なテクスチャーと粘度特性を示すだろう。アミロースを含有するデンプンはゲル様の非凝集性のテクスチャーを示すだろう。高レベルのアミロース(たとえば40%を越える)デンプンは非常に硬いゲルに固まるだろう。ドラム乾燥または押し出しにより予備糊化された未変性アミロース含有デンプンは水に分散したとき、しばしば、パルプ状のテクスチャーを有している。主にアミロペクチンを含有するデンプン、すなわち、ワキシー(waxy)デンプンはアミロース含有デンプンと同じゲル特性を生じない。未変性の予備糊化されたアミロペクチン含有デンプンの分散液は、水に分散したとき凝集性で流れやすいテクスチャーを示す。
【0006】
テクスチャーは、ワキシーデンプンが予備糊化前に化学的に架橋されるなら改良することができる。架橋は粒子をいっしょに保っておく会合水素結合を補強し、予備糊化の間のデンプン粒の膨潤と水和を抑制し、結果として、架橋化デンプン粒をそのままに保つ。化学的に架橋したデンプンの予備糊化された粉末が水に分散した時、分散液は非凝集性で軟膏様のテクスチャーを有する。それをヘビー(heavy)またはショート(short)と記載する。
【0007】
予備糊化されたデンプンの風味は乏しいことが望ましい。多くのデンプン、たとえばトウモロコシ、モロコシ(sorghum)及び小麦は少量の不飽和脂肪酸を含有する。脂肪酸は空気酸化による腐ったような悪臭を発生し得る。さらに存在するタンパク質がデンプンに所望しない穀物食味を与える。特定のデンプン、たとえばトウモロコシ及びワキシートウモロコシは、予備糊化に由来する「木のような」または「棒付きアイスキャンディー様」の匂いを発生するため、濃厚にした食品組成物には用いない。米国特許第4,303,451 号 (W.C.Seidelに1981年12月1日に発行された)参照。この特許は、予備糊化されたワキシートウモロコシデンプンにおける「木のような」臭いの発生を防ぐ方法を開示している。デンプン粒を、糊化前に、約120 〜200 ℃で0.1〜24時間加熱する。加熱時間は予備糊化の間に木のような臭いの生成を防ぐのに十分であるがデキストリン化をもたらすには不十分でなければならない。トウモロコシ、小麦、米及びサゴのテクスチャー及び風味はこの熱処理により変性されたが、これらのデンプンは食品組成物に矛盾した、非再現性の結果をもたらした(第2欄、第14〜18行参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いくつかの出願では、化学的に変性されたデンプン及びフラワーは許容できず、望ましくない。したがって、化学的に架橋された予備糊化非粒状デンプンのテクスチャー性を有し、実質的に異食味(off taste)のない、未化工予備糊化非粒状デンプンについてのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はサーマルインヒビションされた、予備糊化非粒状デンプン及びフラワーをもたらす。これらのデンプン及びフラワーをデンプン粒を破壊させる方法を用いて予備糊化する。デンプン及びフラワーは熱抑制もされ(thermally-inhibited)、それはデンプンまたはフラワーに化学薬品を用いないで、化学的に架橋されたデンプンの粘度とテクスチャー特性をもたらす。サーマルインヒビションされた、予備糊化非粒状デンプンまたはフラワーは冷水に分散でき、充分に抑制されたなら、デンプンがアミロペクチン含有デンプンなら非凝集性、軟膏様テクスチャーを有するか、または、デンプンがアミロース含有デンプンならゲル様テクスチャーを有する。
【0010】
デンプン及びフラワーは最初に予備糊化し、次に熱抑制するか、最初に熱抑制して、次に予備糊化してもよい。
【0011】
熱抑制方法は、(a)粒状もしくは非粒状デンプンまたはフラワーのpHを約7.0 以上のpHに調整する工程、(b)前記デンプンまたはフラワーを無水または実質上無水となるまで脱水する工程、及び(c)前記脱水されたデンプンまたはフラワーを、前記デンプン及びフラワーが抑制され、好ましくはそれを非凝集性にするのに十分な温度及び時間、加熱処理する工程を含む。本明細書で用いる時、「実質上無水」は1重量%未満の湿分を含有することを意味する。
【0012】
予備糊化が最初に行なわれるなら、粒状デンプンまたはフラワーを水中に2.0 〜2.5 部の水対1.0 部のデンプンの比率でスラリー化し、好ましくはpHを塩基を添加することによって中性またはそれよりも大に調整する。本明細書で用いる場合、「中性」はpH値約pH 7の範囲を含み、約pH 6.5 〜約pH 7.5 を含むことを意味する。スラリーは、粒状構造を破壊し、次いで湿分約2〜15%まで乾燥させる、公知の予備糊化方法を用いて予備糊化する。乾燥された予備糊化非粒状デンプンまたはフラワーを、次いで予備糊化された非粒状デンプンまたはフラワーが無水または実質上無水となるまで脱水し、次いで脱水された予備糊化非粒状デンプンを熱処理することにより熱抑制する。
【0013】
代りに、デンプンまたはフラワーが予備糊化の前に熱抑制されるなら、粒状デンプンまたはフラワーを水中に分散させ、任意にpHを塩基を加えることによって、中性またはそれよりも大に調整し、前記デンプンまたはフラワーを約湿分2〜15%まで乾燥する。次に乾燥された粒状デンプンまたはフラワーを、前記デンプンまたはフラワーを無水または実質上無水となるまで脱水し、次に前記脱水されたデンプンを熱処理することにより熱抑制する。生じる粒状の熱抑制されたデンプンを、次いで、その粒状構造を破壊する公知の予備糊化方法を用いて予備糊化する。
【0014】
脱水は熱的脱水または非熱的脱水でよい。熱的脱水は慣用のオーブンもしくは電子レンジまたは任意の他の加熱機器を用いて、湿分含量を1%未満に、好ましくは0%まで低下させるのに十分な温度及び時間、加熱することにより行なう。非熱的脱水方法の例は、親水性溶媒、たとえばアルコール(たとえばエタノール)を用いて、粒状デンプンまたは予備糊化デンプンから水を抽出するか、またはデンプンを凍結乾燥することを含む。この後の記載から分かるであろうが、エタノールを用いる脱水は、デンプンを直接加熱して脱水することにより製造された熱抑制されたデンプンに比べて、熱抑制されたデンプンの食味を改良する。凍結乾燥も食味の利点をもたらすことが期待される。
【0015】
好ましいpHは少なくとも7、最も好ましくはpH 8より大、典型的にはpH 7.5 〜10.5、好ましくは8〜9.5 である。pH 12より大では、糊化はより容易に起こり、したがって、12より低くpHを調整することがより効果的である。
【0016】
緩衝液、たとえばリン酸ナトリウムを、必要ならpHを維持するのに用いることができる。pHを上げる代りの方法は、熱抑制工程の間または前のいずれかに、デンプンが所望のpHを得るまで、粒状または予備糊化デンプン上に塩基の溶液を噴霧することからなる。デンプンを食品中に用いようとしないのなら、デンプンのpHを上げるのに、いかなる適当な無機または有機塩をも用いることができる。他の方法は煎じること(infusing)等からなる。熱抑制方法のテクスチャー及び粘度の利点は、pHが高いと加熱処理工程の間にデンプンの褐色化が増加する傾向があるけれども、pHの増加につれて促進される傾向にある。
【0017】
食品用途については、pH調整工程で用いられる適切な食品級塩基は、限定するものではないが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ピロリン酸テトラナトリウム、オルトリン酸アンモニウム、オルトリン酸ジナトリウム、リン酸トリナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、及び食品医薬品管理法または他の食品規制法の下で食品用に承認されたいかなる他の塩基をも含む。好ましい食品級塩基は炭酸ナトリウムである。これらの規則の下で食品用に承認されない塩基も、最終製品が意図する用途に対して良好な製造プラクティスに適合するようにそれらをデンプンから洗い出すことができるなら用いることができる。
【0018】
デンプンまたはフラワーの最初のpH、脱水方法及び条件並びに加熱処理温度及び時間を含むプロセス条件を変えることによって、抑制のレベルを、最終予備糊化非粒状デンプンまたはフラワーに異なった粘度特性をもたらすように、変えることができる。脱水及び熱処理パラメーターが熱処理のために用いられる特定の装置の関数であり得る限りは、装置の選択も抑制のレベルを調節する因子であるだろう。
【0019】
これらのデンプンは、予備糊化され化学的に架橋された非粒状デンプンが有用であることが知られている、食品及び工業の用途において有用である。
【0020】
熱抑制の前または後での、種々のタンパク質、脂質及び他の異味(off-flavor)成分の除去は熱抑制されたデンプンの風味(すなわち、味及び芳香)を改善する。非予備糊化デンプンからのタンパク質の亜塩素酸ナトリウム抽出は、下文でよい例となる。タンパク質及び/または脂質の除去に用いることができる他の方法はデンプンをアルカリ性pH(たとえば、pH 11〜12)で洗うこと及び/またはデンプンをプロテアーゼで処理することを含む。タンパク質及び/または脂質に親和性を有する、極性及び非極性溶媒も用いることができる。例としてはアルコール(たとえばエタノール)、ケトン(たとえばアセトン)、エーテル(たとえばジオキサン)、芳香族溶媒(たとえばベンゼンまたはトルエン)、その他である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
デンプン及びフラワーは、任意の出所、たとえば、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、モロコシ、ワキシートウモロコシ、ワキシー大麦、ワキシージャガイモ、ワキシーサゴ、ワキシーモロコシ、及び40%またはそれよりも高いアミロース含量のデンプンまたはフラワーから得ることができる。
【0022】
本明細書では「天然の」デンプンは天然に見い出されるものである。デンプンまたはスターチを未化工または転化(すなわち、酵素転化、熱転化もしくは酸転化)、酸化、リン酸化、エーテル化、エステル化及び/または化学的架橋により変性してもよい。フラワーを漂白または酵素転化により変性してもよい。
【0023】
特別に区別しないなら、本明細書ではデンプンはそれらの相当するフラワーも含むことを意味する。
【0024】
デンプンは、粒状構造の破壊を生じる公知のいかなる予備糊化方法によっても予備糊化することができる。予備糊化デンプンは典型的にはドラム乾燥、押し出しまたはジェット加熱(jet-cooking)により製造する。
【0025】
適切な方法は次の特許に開示されている。
米国特許第1,516,512 号(1924年11月25日、R.W.G.Stutzke に発行された)は、デンプンスラリーを加熱されたパイプコイルを通して次いで噴霧口を通して乾燥室に押し出す方法が記載されている。処理中の液体の蒸発の可能性に対して保証するためにスラリーを過度の高圧(たとえば1000lbs.)でコイルを通す。蒸気は35〜110 ポンドの圧力に保つ。乾燥室に導入する空気の温度は約121 ℃で、それは蒸発点で約96℃に低下する。生じたデンプンは加水分解され、冷水中に約15〜75%が溶解する。
【0026】
米国特許第3,630,775 号(1971年12月28日にA.A.Winkerに発行された)は、デンプンスラリーを加熱の間圧力下に維持し、霧化工程の間中加圧を継続する、噴霧乾燥方法を記載している。圧力は粘度、温度及び装置と相互に依存する。必要な圧力は霧化に必要であって、高温での高固体含量のスラリー中の水の蒸発を防ぐのに必要な圧力より多い。加熱時間は、過去に糊化されていないなら、デンプンの実質的に完全な糊化及び溶解化を十分にする時間である。典型的には、スラリー(10〜40%固体含量)を54〜171 ℃まで予備加熱し、2,000 〜6,800psiの圧力下で連続管状熱交換機にポンプで送り込み、182 〜304 ℃に加熱する(温度163 〜232 ℃のデンプンを生じる)。クッカー中のデンプンの保持時間は1.0 〜2.5 分である。圧力型霧化ノズルのついた慣用の噴霧乾燥機が用いられる。生じるデンプンは50%冷水溶解性より高い。
【0027】
米国特許第3,086,890 号(1963年4月23日にA.Sarko 他に発行された)は、予備糊化され単離されたアミロース粉末を製造する方法を記載している。それは、圧力5〜140psig で191 ℃で、1.3 〜2.9 の極限粘度の単離されたアミロースのスラリーを固体含量0.1 〜25%で1〜60分間オートクレーブに入れ、分散液を90℃に冷却し、110〜 200℃の表面上でドラム乾燥することを含む。ドラム上の保持時間は0.001 インチまたはそれより小さいニップギャップ(nip gap)を用いて40〜75秒である。
【0028】
米国特許第3,137,592 号(1964年1月16日にT.F.Protzman他に発行された)は、デンプンの糊化を引き起こす、高温高圧でのデンプン−水混合物の押し出し、それに続く押出機から出た後の水のフラッシュの間の膨張を記載している。温度と圧力は押出機の回転翼(オーガー)及び円筒状ハウジング(バレル)の間の機械的剪断力により発生する。加熱は、デンプンがその系を押し通るにつれて、熱及び機械的エネルギーの両方によって達成される。これは典型的には、不完全な加熱により、加工の間に高粘度をもたらし、最終製品は過剰の剪断力により引き起こされた分子破壊により典型的には等級をはずれる(derate)。再分散すると、その粉末は、加熱の間の不完全な分散により、特に低湿分デンプンが加工された時、所望しない粒状のテクスチャーを与えることがある。デンプンを追加の水の存在下に加工すると、押出物が押出機を出た後、さらなる乾燥工程が必要となる。この延長された乾燥時間は、再分散時の所望しないテクスチャーをさらに大きくする。
【0029】
予備糊化デンプンは慣用の二工程ジェット加熱(jet-cooking)及び噴霧乾燥方法によって作られる。この慣用の方法の変形は米国特許第2,314,459 号(1943年3月23日にA.A.Salzburgに発行された)及び米国特許第3,332,785 号(1967年7月25日にE.Kurchinke に発行された)に記載されている。典型的な方法では、水溶性デンプンスラリーを、通常はバット加熱によるか、熱交換機中の加熱によるか、または大気圧に保たれたタンク(しばしばバッチ処理での加熱調理タンクまたは圧力をかけた加熱処理のための受器タンク)中での蒸気注入ジェット加熱により調理され、続いて噴霧乾燥する。後−加熱保持期間は、バッチ法での添加剤の添加、温度制御及び/または噴霧乾燥機の容量と適合しない速度での加熱を可能にする。保持タンクを出ると噴霧乾燥機への供給材料の温度は38〜93℃の範囲になり得る。霧化は1個の液体圧力ノズル、遠心機または気圧ノズルにより行なう。この方法は、ペーストの粘度が低くて霧化できるという理由で、通常、「薄い加熱調理(thin-cooking)デンプン」、すなわち、重合体の構造が、酸加水分解、酵素分解、酸化及び/または高レベルの機械的剪断力により分解された、転化デンプンに限定される。未化工デンプンの調理物は、それらの粘度が高いため霧化が困難であり、噴霧乾燥をするなら、したがって、低固体含量で処理される。ジェット加熱は、適当な剪断力レベルをもたらし、分子レベルの完全な溶解性に到達する分散液をより速やかに生じる{米国特許第2,805,966 号(1957年9月10日にO.R.Ethridgeに発行)、米国特許第2,582,198 号(1957年1月8日にO.R.Ethridgeに発行)、米国特許第2,919,214 号(1959年12月29日にO.R.Ethridgeに発行)、米国特許第2,940,876 号(1960年6月14日にN.E.Elsas に発行)、米国特許第3,133,836 号(1964年5月19日にU.L.Winfrey に発行)及び米国特許第3,234,046 号(1966年2月8日にG.R.Etchisonに発行)を参照}。ジェット加熱は、分解を伴なわずに、より低い工程内粘度をもたらし、分解の低下をさらに助ける、より低い加熱及び搬送温度並びに温度の使用を可能にする。
【0030】
米国特許第3,607,394 号(1971年9月21日にF.J.Germino 他に発行)は、少なくとも50%のアミロペクチンを含有する粒状デンプン、たとえば、トウモロコシ、小麦、大麦、ジャガイモ、タピオカ、ワキシートウモロコシ、ワキシー米及びワキシーモロコシから予備糊化れた冷水分散性デンプンを製造する方法を目指している。その方法は、 149℃またはそれよりも高く、約 232℃まででペースト化することを含む。デンプンペーストを次いで非常に急速に乾燥して、任意の適切な装置、たとえば、ドラム乾燥機、噴霧乾燥機、ベルト乾燥機、フォームマット乾燥機、その他における、老化及び凝集を防止する。
【0031】
連続的な複合、ジェット加熱/噴霧乾燥方法が米国特許第5,131,953 号に記載されている(1992年7月21日にJ.J.Kasica他に発行)。この方法は、
(a)粒状デンプン及び水のデンプンスラリーまたはデンプンペーストを形成する工程、
(b)前記デンプンスラリーまたはデンプンペーストを蒸気を用いてデンプン溶液またはデンプン分散液を形成するのに十分な温度でジェット加熱する工程、
(c)高温高圧下で、前記ジェット加熱されたデンプン分散液または前記ジェット加熱された溶液を噴霧乾燥機の室のノズル中に直ちに搬送及び導入する工程、
(d)前記ジェット加熱されたデンプン分散液または前記ジェット加熱されたデンプン溶液をノズルを通して霧化する工程、
(e)前記分散または溶解化デンプンを乾燥するのに十分な温度で前記噴霧乾燥機の室内で霧化された霧を乾燥する工程、及び
(f)前記乾燥されたデンプンを冷水分散性または冷水溶解性粉末として回収する工程を含む。
【0032】
加熱脱水については、適切な条件は低温または脱水前にデンプンのpHを上げることである。好ましい条件は、低温と中性〜塩基性pHの組合せに存する。好ましくは、デンプンを脱水するのに用いられる温度は、 125℃またはそれよりも低く、より好ましくは100 〜 120℃である。脱水温度は 100℃よりも低いことも可能であるが、湿分の除去には少なくとも 100℃の温度が効率的であろう。
【0033】
デンプンは水の存在下に加熱をすると、デンプンの加水分解または分解が起こることがある。加水分解または分解は粘度を低下させ、したがってインヒビションの効果を制限し、高粘度製品が望ましい時には、望ましくない。したがって、デンプンの脱水条件は加水分解及び分解を減少させながら、抑制を助力するように選択する必要性がある。基準に合ういかなる条件も用いることができる。溶媒抽出または凍結乾燥による水の除去は、水の追い出しのためにデンプンを直接加熱するよりもデンプンを加水分解しないようである。
【0034】
溶媒を用いる実験室規模の脱水については、デンプンまたはフラワー(湿分約4〜5%)をソックスレー円筒ろ紙中に入れ、それをソックスレー装置中に置く。適切な溶媒を装置に入れ、還流温度まで加熱し、デンプンまたはフラワーを脱水するのに十分な時間還流する。還流の間、溶媒はデンプンまたはフラワー上に凝縮するから、デンプンまたはフラワーは溶媒の沸点より低い温度にさらされる。たとえば、エタノール(沸点約78℃)抽出の間、デンプンの温度はたった約30〜40℃である。エタノールを溶媒として用いる時、還流を約17時間継続する。脱水されたデンプンまたはフラワーを前記円筒ろ紙から取り出し、トレー上に広げ、過剰の溶媒を気散させる。エタノールについては、エタノールを気散させるのに要する時間は約20〜30分である。デンプンまたはフラワーを熱処理のために適切な加熱装置に直ちに入れる。商業規模の脱水については、いかなる連続式抽出装置をも用いることができる。
【0035】
凍結乾燥による脱水については、デンプンまたはフラワー(湿分4〜5%)をトレー上に置き、凍結乾燥機に入れる。適切なバルクトレー凍結乾燥機は、商標Dura-Tapの下にニューヨーク州ストーンリッジのFTS Systems から入手できる。凍結乾燥機はデンプンまたはフラワーから湿分を除去するのにプログラムされたサイクルにかける。デンプンまたはフラワーの温度を約20℃の一定に保ち、真空を約50ミリトル(mT)まで引く。デンプンまたはフラワーを脱水するのに要する時間は約3日である。デンプンまたはフラワーを凍結乾燥機から取り出し、直ちに熱処理のための適切な加熱装置に入れる。
【0036】
デンプンを脱水後、デンプンを抑制するのに十分な時間及び温度または温度範囲で、熱処理する。好ましい加熱温度は 100℃よりも高い。実際上の目的には、熱処理温度の上限は通常 200℃で、その温度で高度に抑制されたデンプンが得られる。典型的には熱処理は120 〜 180℃、好ましくは140 〜 160℃、より好ましくは 160℃で行なう。抑制のレベルはpH及び加熱温度及び時間に依存する。たとえば、デンプンまたはフラワーのpHを9に、オーブンの温度を 160℃に調整すると、わずかに抑制されたデンプンまたはフラワーは約3〜4時間の加熱を要し、中位に抑制されたデンプンまたはフラワーは約4〜5時間の加熱を要し、高度に抑制されたデンプンまたはフラワーは5〜6時間の加熱を要するだろう。より低い温度については、長い加熱時間を要する。デンプンまたはフラワーが、pH約5.0 〜6.5 の天然のデンプンのように、低いpHにあるなら、加熱はより少い抑制をもたらす。
【0037】
フラワーについては、相当するデンプンに比較して同一レベルの抑制に到達するのに、より低い温度及び/またはより短かい加熱時間を要する。
【0038】
デンプンを加熱脱水する場合、脱水及び熱処理工程は連続的であって、デンプンへの熱の適用は、周囲温度から始めることにより達成できる。流動床を用いると湿分は追い払われ、デンプンは温度が約 125℃に達する前に無水となるだろう。デンプンまたはフラワーが無水または実質的に無水となった後、そして加熱を継続している間に、いくらかの抑制が、最終的熱処理温度に到達する前、同時にまたはその時ですら、達成されるだろう。
【0039】
デンプンまたはフラワーを独立にまたは1以上を同時に抑制してもよい。それらは、熱抑制工程を妨げ、または熱抑制された予備糊化非粒状デンプンもしくはフラワーの性質を変更しない、他の物質または成分の存在下に抑制してもよい。
【0040】
加熱脱水及び熱処理工程を常圧下、真空下または加圧下で及び当業界で公知のいかなる手段を用いて、成しとげてもよい。好ましい方法は、空気中または不活性ガス環境での乾熱の適用による。
【0041】
加熱脱水及び熱処理装置は、その装置が湿分がデンプン及びフラワーの上に蓄積または沈澱しないように大気への通風口を備えている限りは、任意の工業用オーブン、たとえば慣用のオーブン、電子レンジ、デキストリン化機、流動床反応器及び乾燥機、加熱機器及び他の型のヒーターを備えたミキサー及びブレンダーであり得る。好ましくは、装置は、装置から水蒸気を除去する手段、たとえば、真空または送風機を備え、装置のヘッド空間からの空気または流動床ガスを運び去る。
【0042】
熱処理工程は、加熱脱水工程が起こるの同じ装置で達成でき、最も便利には加熱脱水工程に連続している。加熱脱水工程が熱処理工程に連続している時、特に用いられる装置が流動床反応器または乾燥機である時、脱水工程は、装置を最終の熱処理温度まで上げる間に同時に起こる。
【0043】
熱抑制された、低%の粘度下降(breakdown)を伴った高粘度のデンプンは、慣用の加熱オーブン中でよりも流動床反応器中の方が短い時間で得られる。適切な流動床ガスは空気及び窒素である。安全性の理由のため、12%より少ない酸素を含有するガスを用いることが好ましい。
【0044】
適切な流動床反応器は、ニュージャージー州、ニューブルンスヴィクのProcedyn Corporationにより製造される。流動床反応器の断面積は0.05 mである。出発床高は0.77mである。流動床ガスは空気で、5〜21m/分の速度で用いられる。反応器パネルの側壁は、熱油で加熱し、流動床ガスは電気ヒーターで加熱する。サンプルを反応器に装填し、次いで流動床ガスを導入するか、流動床ガスを導入しながらサンプルを装填する。サンプルが無水になるまで、サンプルを周囲温度から 125℃にし、さらに所望の熱処理温度まで加熱する。熱処理温度が 160℃の時、その温度に達する時間は3時間より少ないであろう。
【0045】
サンプルの製造
用いられたすべてのデンプン及びフラワーにニュージャージー州ブリッジウォーターのナショナル スターチ アンド ケミカルカンパニイより供給された。試験サンプルのためのコントロールは試験サンプルと同じ天然源からであって、試験サンプルと同様に未変性または変性され、そして、他のように示されていない時は同じpHである。試験及びコントロールサンプルを含め、すべてのデンプンとフラワーを個別に製造し、試験した。
【0046】
ドラム乾燥により予備糊化したサンプルについて、デンプンまたはフラワーを30〜40%固形分で水中にスラリー化し、所望のpHに達するまで十分な量の5%炭酸ナトリウム液を加えることによりpHを上げた。約142 〜 145℃のシングルタイプの蒸気加熱スチール製ドラムをドラム乾燥に用いた。
【0047】
米国特許第5,131,953 号の連続複合式ジェット加熱/噴霧乾燥法または米国特許第4,280,851 号のデュアル霧化/噴霧乾燥法により、予備糊化されたサンプルについて、デンプンまたはフラワーを6〜10%固形分で水中にスラリー化し、所望のpHに達するまで十分量の5%炭酸ナトリウム溶液を加えることによりpHを所望のpHに調整した。
【0048】
特に記載がなければ、加熱脱水及び熱処理に慣用のオーブンまたはデキストリン化機を用いた。最終加熱温度での加熱脱水されたまたは非加熱脱水されたサンプルの湿分レベルは約0%だった。
【0049】
サンプルを次のブラベンダー(Brabender)手順を用いて抑制について試験した。
ブラベンダー手順
試験する熱抑制した予備糊化非粒状デンプンを十分な量の蒸留水の中でスラリー化して、下記の通りにしてpH 3において 4.6%の無水固体デンプンスラリーを供した:132.75gのスクロース、 26.55gのデンプン、50gのクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝液(pH 3)及び 366.7gの水を標準家庭用Mixmaster ブレンダーの中で設定値♯1において3分混合した。次いでこのスラリーを 350cm/gのカートリッジの装着されたブラベンダー VISCO/Amylo /GRAPH (C.W.Brabender Instruments, Inc., Hackensak, NJ)のサンプルカップに導入し、そして粘度を測定した。その際、スラリーを30℃に加熱し、そして10分保持した。30℃での粘度及び30℃に保持して10分(10′)後の粘度を記録した。加熱は95℃まで続け、そしてその温度に10分(10′)保持した。
【0050】
ピーク粘度及び95℃で10分(10′)後の粘度をブラベンダー単位(BU)で記録し、そして下記の式に従い粘度の下降パーセントを計算した:
【数1】

ここで「ピーク」とはブラベンダー単位のピーク粘度であり、そして「(95℃+10分)」とは95℃で10分後のブラベンダー単位の粘度である。もしピーク粘度が到達されないなら、即ち、粘度データーが上昇曲線又は平らな曲線を描いているなら、95℃での粘度及び95℃に到達して10分後の粘度を記録した。
【0051】
VISCO /Amylo /GRAPH はデンプンスラリーがプログラミングされた加熱サイクルにかけられたときに展開する粘度のバランスをとるために必要とされるトルクを記録する。その精度は±2%である。
【0052】
ブラベンダー曲線による抑制の特性決定
得られるブラベンダートレースは下記の通りであろう:
高度に抑制されたデンプンに関しては、トレースは平らとなり、デンプンが任意の更なる糊化に耐えるほどに抑制されていることを示唆するか、又はトレースは上昇曲線となり、更なる糊化がゆっくりとした速度で、且つ一定の度合いに至るまで起こることを示唆するであろう;
弱く抑制されたデンプンに関しては、トレースは下降曲線を示すが、ピーク粘度からの粘度の総合下降は非抑制型コントロールについてのそれよりも低いであろう。
【0053】
加熱調理による抑制の特性決定
7gのデンプン又はフラワー(無水ベース)と14gの糖のドライブレンドを低速に設定したワーリングブレンダー中の91mlの水に加え、次いでクック‐アップ ビーカーに移し、10分放置し、次いで粘度、色、透明度及びテクスチャーについて評価した。
【実施例】
【0054】
実施例1
ワキシートウモロコシ、タピオカ及びジャガイモデンプンのサンプルをpH 6,8 及び10においてドラム乾燥により予備糊化した。それらのサンプルを 140℃のオーブンに入れ、そして無水となるまで脱水し、そして表示の時間にわたり 140℃で処理した。
【0055】
熱抑制した(T−I)デンプンの粘度及びテクスチャー特性を下記に示す。
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

N.D.−未測定
【0058】
ブラベンダーを上記のデンプンのいくつかに対して作用させた。その結果を以下に示す。
【表4】

【0059】
これらの結果は、140 ℃で非凝集性のデンプンを製造するのに、より長い加熱時間および/またはより高いpHを必要としないことを示す。好ましくは流動床で、160 ℃での加熱が非凝集性のデンプンを提供するであろうことが期待される。
【0060】
好ましくは、種々の脂質、タンパク質および他の異味成分が、実施例7に記載される手順を用いる加熱処理の後に、またはソックスレー抽出器中においてエタノールでそのデンプンを還流処理することによって、デンプンから抽出される。これによって風味が改善される。
【0061】
実施例2
粒状高アミロースデンプン(50%のアミロース)を米国特許第5,131,953 号に記載の連続複合式ジェット加熱/噴霧乾燥工程を利用してジェット加熱及びスプレー乾燥した。利用したジェット加熱/噴霧乾燥条件は下記の通りとした:
スラリー pH 8.5〜9.0
加熱調理固形分 10%
モイノ(moyno)設定 約1.5
加熱調理温度 約145℃
過剰スチーム 20%
ボイラー圧 約85psi
背圧 65psi
噴霧乾燥器 Niroドライヤー
入口温度 245℃
出口温度 115℃
霧化器 遠心式ホイール
【0062】
熱抑制工程(オーブン脱水及び加熱処理)において利用された条件及び得られる熱抑制されたT−Iデンプンの特性を下記に示す。
【表5】

【0063】
これらの結果は高アミロースデンプンでさえも抑制されうることを示す。熱抑制されたデンプンについての粘度の下降は低く、そして全体的な粘度は高かった。
【0064】
実施例3
0.04%のオキシ塩化燐で若干架橋させたワキシートウモロコシデンプンを熱抑制した。粒状デンプンを実施例2に記載の複合連続式ジェット加熱/噴霧乾燥工程を利用してジェット加熱及び噴霧乾燥した。その条件を熱抑制工程(オーブン脱水及び加熱処理)に利用した。
【0065】
得られる熱抑制されたデンプンのブラベンダー結果及び粘度並びにテクスチャー特性を以下に示す。
【表6】

【0066】
【表7】

これらの結果は、脱水及び加熱処理工程後、架橋化デンプンは非常に高度に抑制されたことを示す。
【0067】
実施例4
熱抑制したワキシートウモロコシデンプンを熱抑制の前にドラム乾燥により準備した。得られる熱抑制されたデンプンを、実施例2において利用した連続複合式ジェット加熱及び噴霧乾燥工程並びに米国特許第4,280,251 号に記載のデュアル式噴霧化/噴霧−乾燥工程により調製した熱抑制されたワキシートウモロコシデンプンと比較した。
【0068】
オーブン脱水及び加熱処理のために利用した条件並びに得られる熱抑制された(T−I)デンプンの特性を下記に示す。
【表8】

【0069】
【表9】

【0070】
【表10】

【0071】
その結果は、 140℃での8時間の加熱処理の後、全てのデンプンがはるかに低い下降を示すことを示した。それらの結果は、デンプン粒がドラム乾燥又はジェット加熱により完全に崩壊されると高めのピーク粘度の伴う高度な抑制が得られうることも示す。
【0072】
実施例5
本実施例は、米国特許第4,391,836 号(1983年7月5日発行;C.W.Chiu)の方法と異なり、ドラム乾燥及び加熱処理を実施する順序が熱抑制工程を妨げないことを示す。′836 号の特許は即ゲル化性のタピオカ及びジャガイモデンプンが、ドラム乾燥をまず実施したときにのみ調製できることを教示する(′836 号特許の比較例VII を参照のこと)。
【0073】
ワキシートウモロコシ、タピオカ及びジャガイモデンプンをpH 8に調整し、そして 140℃で8時間の脱水及び加熱処理により熱抑制(T−I)する前後にドラム乾燥(DD)した。
ブラベンダー結果を以下に示す。
【0074】
【表11】

DD/TIはドラム乾燥を熱抑制(140℃で8hrの脱水及び熱処理)の前に実施したことを示す。
TI/DDはドラム乾燥の前に熱抑制(140℃で8hrの脱水及び熱処理)を実施したことを示す。
【0075】
それらの結果は、ドラム乾燥を熱抑制の後の実施したときに熱抑制デンプンが調製できることを示す。
【0076】
実施例6
本実施例は、エタノール抽出により脱水した予備糊化非粒状デンプンとオーブン内で脱水した予備糊化非粒状デンプンとを比較する。双方のデンプンを同一の条件を利用して加熱処理した。
【0077】
ワキシートウモロコシデンプンをpH 9.5 に調整し、そして上記の手順を利用してドラム乾燥した。次いでこのサンプルをソックスレー抽出器の中に入れ、そしてエタノールと約16時間還流させた。次いでデンプンを任意の過剰エタノールをフラッシュ除去するようにレイアウトされたソックスレー円筒ろ紙(thimble)から取り出し(約20〜30分)、そして強制通風オーブンに入れ、そして 140℃で6時間加熱した。
【0078】
【表12】

ドラム乾燥させたが、脱水及び加熱処理はしていない。
結果は、双方のデンプンが高度に抑制されていることを示す。エタノール抽出したデンプンは粘度が高めであった。
【0079】
実施例7
本実施例はアルコール抽出による脱水がより良い味の熱抑制デンプンを供することを示す。
【0080】
実施した試験は「三角形味覚試験」であり、それは同時に提示する2つが同一で1つが異なる3つのコード化サンプルを採用する。どのサンプルも標準品としては表示されていない。コントロール及び実験処理を系統立てて変え、それぞれが不一致(odd)及び一致(identical)位置に同回数提示されるようにした。判定者は3つのサンプルのうちのどれが他の2つと異なるものであるかを決定する。強制的な選択に報酬で報いた。それぞれの処理の間に有意な差があるかを調べるために統計学的分析を利用した。機会だけで異なる又は不一致のサンプルを選択する確率は3分の1であった。不一致のサンプルを判定者が選択したら、なぜそのサンプルが異なり、そしてその者が好むかを訪ねた。
【0081】
試験したデンプンはpH 9.5 に調整し、そして 140℃で7時間加熱処理したトウモロコシデンプンとしたが、一つのサンプルはエタノール抽出により脱水し、そして他のサンプルは加熱処理の前に熱的に脱水した。
【0082】
熱抑制したデンプンを、粒状デンプンを1.5 部の水でスラリー化し、撹拌プレート上で10分混合し、そのスラリーを真空濾過し、そしてデンプンケーキを50mlの蒸留水で2回洗浄することによって洗った。次いで十分な量の水を加えてスラリーを固形分3%にした。pHを6.0 〜6.5 に調整した。そのスラリーを沸騰湯浴の中で20分加熱処理し、室温より若干高くなるまで冷却し、そして評価した。
【0083】
判定者には味見のために20mlのサンプルが与えられた。彼らはオーブン脱水デンプンとエタノール脱水デンプンとの間での有意な差を認めた。12人の判定者のうち9人が1つの異なるサンプルを選択した。異なるサンプルを決定できた9人の判定者全員がエタノール抽出したサンプルを好んだ。エタノール抽出したデンプンを説明するのに用いられる形容詞には、きれい、にがくない、及びオーブン脱水デンプンと比べて滑らか、が挙げられた。
【0084】
実施例8
この実施例は、熱抑制され予備糊化された非粒状デンプンのアルコール抽出が、より良い食味を有するデンプンを提供することを示す。
【0085】
熱抑制され予備糊化された非粒状ワキシートウモロコシデンプン(pH 9.5に調整し、ドラム乾燥し、そして流動床中で160 ℃にて180 分間熱処理したもの)をソックスレー抽出器に入れ、溶剤としてエタノール(bp≒78℃)を使って一晩(約17時間)還流させた。抽出したデンプンを紙の上に置いて余分なエタノールを蒸発分離せしめた。低速のワーリングブレンダーカップ中で水に乾燥デンプンを添加することにより、デンプンを固形分3%のスラリーにした。その試料を10分間放置した後、食味検査した。食味検査における比較試料として、熱抑制されたエタノール未抽出のデンプンベースを使った。
【0086】
食味検査は「対比較試験」であった。2つの試料を同時にまたは順番に試験した。特定の属性、ここでは清涼な味に基づいて良い方を表すように評価を要請した。全ての参加者について集積した時の2つの試料の相対選択頻度として結果を得た。4回の試験は、エタノール抽出した試料の方を、より後味が少なく口当りの良い清涼な風味を有するものであると鑑定した。
【0087】
実施例9
この実施例は、熱抑制されたワキシートウモロコシの風味(即ち味とにおい)に対する、様々なタンパク質、脂質、および他の異味成分を除去することの効果を記載する。
【0088】
予備糊化工程または熱抑制工程(即ち、脱水と熱処理)の前に、次のようにしてワキシートウモロコシデンプンからタンパク質を抽出する。デンプンをW=1.5 〔75ポンド(33.02 kg)の水に対して50ポンド(22.68 kg)のデンプン〕でスラリーにし、硫酸を使ってpHを3〜3.5 に調整する。デンプンの重量に対して2%となるように塩化ナトリウムを加える。デンプンを室温で一晩浸漬する。3%水酸化ナトリウム溶液を使ってpHを約9.5 に上げ、そして十分に洗浄した後で乾燥する。デンプンのタンパク質含量が約0.1 %に減るはずである。未処理のワキシートウモロコシの含量は約0.3 %である。
【0089】
この処理は、下記に報告するように熱抑制された粒状ワキシートウモロコシの同処理が風味を良くすることから、熱抑制され予備糊化された非粒状デンプンの風味も良くするであろう。様々なタンパク質、脂質、および他の異味成分の除去は、あらゆるデンプンベースおよびフラワーの風味を良くすると期待される。
【0090】
M. Meilgaard他により"Sensory Evaluation Techniques" 中の第47〜111 頁(CRC Press Inc., Boca Raton, Florida 1987)に記載されたような、ワンサイド式の差の食味検査方法(One-sided, directional difference taste testing procedure)を使って、除タンパクし熱抑制したワキシートウモロコシ(pHを9.5 に調整し、脱水しそして160 ℃で90分間熱処理したもの)を、熱抑制工程の前に除タンパクしなかった熱抑制したワキシートウモロコシ(pHを9.5 に調整し、脱水しそして160 ℃で90分間熱処理したもの)と比較した。
【0091】
食味検査用に、3%デンプン調理物(100 ℃で15分間加熱した試料)を調製し、パネリスト(審査員団)に試料の風味が「より清涼」であったものを選択するように頼んだ。全ての検査は、試料間に存在し得る色の差を打ち消すために、官能検査室内の赤色光の下で実施した。結果を下記に示す。
【0092】
【表13】

数字は、風味がより清涼であると除タンパク製品の方を選んだ応答者の数を示す。
α値は統計表から決定した。5%のα危険率は、統計上相違していること、即ち、除タンパクデンプンが対照デンプンよりも清涼であることを(95%信頼度で)示す。
【0093】
上記結果は、熱処理前の除タンパクが、熱抑制された予備糊化されない粒状ワキシートウモロコシデンプンの風味を良くするのに役立つことを示す。
【0094】
本発明の好ましい態様を詳細に記載してきたが、様々な修正および改良を成し得ることは実施者に明白であろう。従って、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定されるべきであり、上述した明細事項により限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナナ、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、モロコシ、V.O.ハイブリッドから成る群より選ばれた熱抑制され予備糊化された非粒状デンプン、および40%より高いアミロース含量を有するデンプンまたはフラワー。
【請求項2】
前記デンプンまたはフラワーが冷水中に分散された時に非凝集性である、請求項1に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項3】
前記デンプンまたはフラワーがタンパク質および/または脂質からの異味を実質的に持たない、請求項1に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項4】
前記デンプンまたはフラワーがドラム乾燥、押出、またはジェット加熱および噴霧乾燥により予備糊化される、請求項1に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項5】
前記デンプンが化工デンプンである、請求項1に記載のデンプン。
【請求項6】
前記化工デンプンが、誘導体化されたデンプン、転化されたデンプン、化学的に架橋されたデンプン、誘導体化され且つ転化されたデンプン、誘導体化され且つ化学的に架橋されたデンプン、および転化され且つ化学的に架橋されたデンプンから成る群より選ばれる、請求項5に記載のデンプン。
【請求項7】
前記フラワーが化工フラワーである、請求項1に記載のフラワー。
【請求項8】
前記化工フラワーが漂白または酵素変性されたフラワーである、請求項7に記載のフラワー。
【請求項9】
タンパク質、脂質および/または他の異味成分からの異味を実質的に持たない、熱抑制された非粒状ワキシーデンプンまたはフラワー。
【請求項10】
前記デンプンまたはフラワーが冷水中に分散された時に非凝集性であり、そしてワキシートウモロコシ、ワキシー米、ワキシー大麦、ワキシージャガイモ、およびワキシーモロコシから成る群より選ばれる、請求項9に記載のデンプン。
【請求項11】
前記デンプンまたはフラワーがドラム乾燥、押出、またはジェット加熱および噴霧乾燥により予備糊化される、請求項9に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項12】
前記デンプンが化工デンプンである、請求項9に記載のデンプン。
【請求項13】
前記デンプンが、誘導体化されたデンプン、転化されたデンプン、化学的に架橋されたデンプン、誘導体化され且つ転化されたデンプン、誘導体化され且つ化学的に架橋されたデンプン、および転化され且つ化学的に架橋されたデンプンから成る群より選ばれる化工デンプンである、請求項12に記載のデンプン。
【請求項14】
前記フラワーが化工フラワーである、請求項9に記載のフラワー。
【請求項15】
前記化工フラワーが漂白または酵素変性されたフラワーである、請求項14に記載のフラワー。
【請求項16】
タンパク質、脂質および/または他の異味成分からの異味を実質的に持たない、熱抑制され予備糊化された非粒状ジャガイモもしくはタピオカデンプンまたはフラワー。
【請求項17】
前記デンプンまたはフラワーが冷水中に分散された時に非凝集性である、請求項16に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項18】
前記デンプンまたはフラワーが熱抑制され、次いでドラム乾燥により予備糊化されている、請求項16に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項19】
前記デンプンまたはフラワーがドラム乾燥により予備糊化され、次いで熱抑制されている、請求項16に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項20】
前記デンプンまたはフラワーがドラム乾燥以外の方法により予備糊化されている、請求項16に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項21】
前記デンプンまたはフラワーが押出により、ジェットクッキングおよび噴霧乾燥により、またはジェットクッキング/噴霧乾燥の連続した組合せにより予備糊化されている、請求項20に記載のデンプンまたはフラワー。
【請求項22】
前記デンプンまたはフラワーが化工デンプンである、請求項16に記載のデンプン。
【請求項23】
前記化工デンプンが誘導体化されたデンプン、転化されたデンプン、化学的に架橋されたデンプン、誘導体化され且つ転化されたデンプン、誘導体化され且つ化学的に架橋されたデンプン、および転化され且つ化学的に架橋されたデンプンから成る群より選ばれる、請求項21に記載のデンプン。
【請求項24】
前記フラワーが化工フラワーである、請求項16に記載のフラワー。
【請求項25】
前記化工フラワーが漂白または酵素変性されている、請求項24に記載のフラワー。
【請求項26】
タンパク質、脂質および/または他の異味成分からの異味を実質的に持たない、熱抑制され予備糊化された非粒状デンプンまたはフラワーの製造方法であって、
デンプンまたはフラワーからタンパク質、脂質および/または他の異味成分を除去する工程;
粒状構造を破壊する方法を使ってデンプンまたはフラワーを予備糊化する工程;および
デンプンまたはフラワーを熱的または非熱的方法で無水にまたは実質的に無水に脱水し、次いで脱水したデンプンまたはフラワーを、該デンプンまたはフラワーを熱抑制するのに十分な時間と温度で熱処理することにより、熱抑制する工程
を含んで成る方法。
【請求項27】
最初に異味の除去工程を実施し、次いで予備糊化工程を実施し、そして最後に熱抑制工程を実施する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
最初に予備糊化工程を実施し、次いで熱抑制工程を実施し、そして最後に異味の除去工程を実施する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記脱水がデンプンを約100 ℃またはそれ以上に加熱することにより行われ、そして前記熱処理が約120 〜160 ℃またはそれ以上で20時間までの時間行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記脱水が溶媒を使ってデンプンから水を抽出することによりまたはデンプンを凍結乾燥することにより行われ、そして前記熱処理が約120 〜160 ℃またはそれ以上で20時間までの時間行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
異味の除去工程の前もしくは後にまたは予備糊化工程の前に、デンプンまたはフラワーを約7またはそれ以上のpHに調整する工程を更に含んで成る、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
風味および/または色を良くするために熱抑制工程の後にデンプンまたはフラワーを有機溶剤で抽出する工程を更に含んで成る、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記有機溶剤がアルコールである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アルコールがエタノールである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ジャガイモデンプン、タピオカデンプンまたはワキシートウモロコシデンプン以外の穀物、根、塊茎、豆果または果実のデンプンまたはフラワーから成る群より選ばれた、熱抑制され予備糊化された非粒状デンプンまたはフラワーの製造方法であって、
粒状構造を破壊する方法を使ってデンプンまたはフラワーを予備糊化する工程;および
デンプンまたはフラワーを無水にもしくは実質的に無水に脱水し、そして脱水したデンプンまたはフラワーを、該デンプンまたはフラワーを熱抑制するのに十分な時間と温度で熱処理することにより、熱抑制する工程を含んで成る方法。
【請求項36】
熱抑制工程の前にデンプンまたはフラワーのpHを約7.0 またはそれ以上のpHに調整する工程を更に含んで成り、そして風味および/または色を良くするために熱抑制工程の後にデンプンまたはフラワーをアルコールで抽出する工程を更に含んで成る、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記脱水がデンプンを約100 ℃またはそれ以上に加熱することにより行われ;前記熱処理が約120 〜160 ℃で20時間までの時間行われ;そして前記抽出工程で使われるアルコールがエタノールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記脱水が、溶剤を使ってデンプンから水を抽出することにより、またはデンプンを凍結乾燥することにより行われ、そして前記熱処理が約120 〜160 ℃で20時間まで行われる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記溶剤が親水性溶剤である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記親水性溶剤が水と共沸混合物をつくる溶剤である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記溶剤がエタノールである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項1に記載のデンプンまたはフラワーを含有する食品。
【請求項43】
請求項9に記載のデンプンまたはフラワーを含有する食品。
【請求項44】
請求項16に記載のデンプンまたはフラワーを含有する食品。

【公開番号】特開2010−202878(P2010−202878A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94172(P2010−94172)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2008−104601(P2008−104601)の分割
【原出願日】平成8年5月16日(1996.5.16)
【出願人】(308036790)ブルノプ トゥヴェーデ ベスローテン フェンノートシャップ (21)
【Fターム(参考)】