説明

熱接着性不織布芯地、その製造方法および使用

本発明は、少なくとも1つのステープルファイバーフリースからなる接着層(A)であって、融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度が60〜165℃の範囲にある、(層(A)を基準にして)少なくとも50重量%の割合を占める融着または非融着熱可塑性ステープルファイバーあるいはそれらが混在したステープルファイバーを有する少なくとも1つのステープルファイバーフリースからなる接着層(A)ならびに少なくとも1つのステープルファイバーフリースまたは1ステープルファイバー不織布からなる層(B)であって、170℃を上回る軟化・融解温度、またはそれが存在しない場合には170℃上回る分解温度を有する、(層(B)を基準にして)80重量%〜100重量%の割合を占める少なくとも1つのステープルファイバーフリースまたは1ステープルファイバー不織布からなる層(B)を含み、接着層(A)および層(B)は互いに結合されているように構成した熱接着性不織布芯地に関する。本発明はさらに、本発明による不織布芯地を製造するための方法ならびに該不織布芯地の好ましい使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱接着性不織布芯地ならびにその製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱接着性芯地は主として衣料、自動車、家具、ホームテキスタイル、衛生用品等の分野において使用される。このような芯地は通例、温度、熱および時間の作用によって大抵の場合に繊維製基材たとえば表地との耐久的な接着結合をもたらす溶融接着剤の塗付された繊維製面状構造物たとえば織布、編布、不織布またはフェルトである。接着によって基材の安定化および/または賦形が達成される。繊維製基材と芯地との結合強度は剥離強さによって表される。使用にあたっては、普通、芯地と繊維製基材との強固な耐久結合、したがって、優れた剥離強さが所望される。それゆえ、芯地と接着された衣料品に実現される結合はたとえば家庭での洗濯等の手入れ後にもなお有効でなければならない。
【0003】
さらに、衣料品への使用には、裏側アンカリング(Ruckvernietung)が低度な多彩な芯地が必要である。ここで、裏側アンカリングと称されるのは、繊維製基材との熱接着に際して、溶融接着剤が該接着剤の被着されている繊維製面状材料をしみとおり抜けるという特性である。
【0004】
熱接着性不織布芯地は通例、常用の不織布製造法によって形成された支持材料、つまり接着コンパウンドとして熱可塑性溶融接着剤が塗付(コーティング)されるステープルファイバー不織布から成る。この種の方法は、たとえば、“Handbuch der textilen Fixiereinlagen”(Prof.Dr.P.Sroka著、増補第3版1993、Hartung−Gorre出版、コンスタンツ、p.95〜161)に記載されている。
【0005】
接着芯地用の溶融接着ポリマーとしては、通例、合成熱可塑性ポリマーたとえばコポリアミド、コポリエステル、ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル−コポリマーまたはポリウレタンが使用される。これらは、通例、ペーストまたは粉末あるいはその混在した形態、オルガノゾルまたはプラスチゾルまたは溶融体として支持不織布材料上に塗付され、乾燥させられ、さらに焼結によって不織布と結合される。溶融接着ポリマーを塗付するためによく使用される方法はペーストプレッシャー(Pastendruck)法、パウダーポイント(Puderpunkt)法またはダブルポイント(Doppelpunkt)法である。
【0006】
熱可塑性溶融接着ポリマーの塗付は繊維製支持材料の製造後、そのために定められた少なくとも1つの塗付装置を経て行われる。この場合、溶融接着ポリマー用の塗付装置はほとんどの場合、繊維製面状構造物を製造する装置から切り離されているため、溶融接着ポリマーの塗付は付加的な、繊維布設に後置された工程で行われる。熱接着性(不織布)芯地、溶融接着ポリマーおよび当該塗付法は、たとえば、“Handbuch der textilen Fixiereinlagen”(Prof.Dr.P.Sroka著、増補第3版1993、Hartung−Gorre出版、コンスタンツ、p.7−400)に記載されている。
【0007】
熱接着性不織布芯地としての使用にあたり、溶融接着剤は、熱と圧力の作用下で溶融する。したがって、不織布芯地は溶融接着剤の塗付された面(多くの場合、片側面のみ)の全体にわたって繊維製表地と接着結合される。不織布芯地と繊維製表地との接着結合(接着)は従来の技術によれば、所定の時間にわたる温度および場合によっては圧力を加えた条件下で実施される。これらのパラメータは当業者に既知の一定の限度内で自由に選択可能である。したがって、使用される接着温度は、接着性不織布芯地との接着結合における繊維製表地の熱損傷を回避すべく、通例、60℃〜165℃(稀に〜200℃)の範囲とされる。接着温度は一般に、使用されるそれぞれの溶融接着剤の融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度またはそれを僅かに上回る温度に設定され、こうして、溶融接着剤は繊維製表地と接着結合される。溶融接着剤は一般に軟化温度に達するとすでに十分な粘着性を有するために表地との接着が可能であることも判明した。
【0008】
温度が作用する接着時間は通例、5s〜120sの範囲である。圧力は通例、0N/m〜8×10N/mの範囲である。接着は従来の技術によれば接着装置で行われるが、この装置はたとえばプレス機(連続プレスまたは多段プレス)あるいはアイロンであってもよい。接着に関連するパラメータ(温度、時間、圧力、装置)は接着条件と称される。
【0009】
溶融接着剤が不織布の両側面に塗付される場合、こうして製造された芯地は両側面で繊維製表地と接着される。ただし、繊維製表地と熱接着性不織布芯地との両面接着はごく稀に使用される程度である。
【0010】
公知の熱接着性不織布芯地の短所は、その製造が常に高い不良品発生率と結びついていることである。その原因は、接着不良箇が生じうる接着剤塗付の不均一性にある。接着不良箇所とは支持材料上に接着剤が塗付されていない、またはごく僅かしか塗付されていない箇所である。使用に際して、これらの箇所は気泡として可視化され、さらに、相応な負荷がかかる場合に繊維製表地からの不織布の剥離が起こり得る。こうした問題を回避すべく、接着不良箇所は目視点検によって検出され、爾後の使用を防止するためにマーキングされ、相応した屑と共に分別除去されて、廃棄物として処分されるが、そのためにコストが発生し、環境に対する負荷も生ずる。
【0011】
不均一な溶融接着剤塗付の原因は多様である。たとえば、支持材料の厚さ変動または重量変動あるいはその両方の変動が溶融接着剤の不均一な塗付状態をもたらすことがある。支持材料の重量部や厚さが大きい箇所にはより多量の溶融接着剤が集積するが、薄い箇所には少量の溶融接着剤しか集積しない。
【0012】
不均一な溶融接着剤塗付のさらに別の原因は不織布支持材料の歪みである。不織布ウェブが布設張力の相違によって歪みのある状態で溶融接着剤塗付装置を通過する場合、布設張力の低い箇所に容易に皴が発生する。こうした箇所には、布設張力の高い他の領域に比較して、溶融接着剤が被着されない、または僅かに被着されるにすぎない。こうした歪みは処理工程に起因するものであり、不織布材料製造時にそれを予防することはできない。
【0013】
最後に、さまざまな障害たとえば塗付装置の汚れ、溶融接着剤ポリマーの凝集および不均質性ならびに静電帯電も不織布支持材料への溶融接着剤の不均一な塗付をもたらす。
【0014】
公知の熱接着性不織布芯地のさらに別の短所は、特に表地の厚さが0.35mm未満の薄い材料、あるいは表地がかご目(穴あき)構造を有する材料の場合、接着後に表地の表面側に接着コンパウンドが視覚的、触覚的に感じ取られるようなたとえば隆起の形の不整性を生じてしまう、または不織布芯地とは接着されていない繊維製表地の表面側に溶融接着剤がしみとおり抜けて、そこが感知可能または可視可能な隆起のようなものを生じてしまうことである。この種の薄い、あるいは穴あき構造を有する繊維製表地は従来の熱接着性不織布芯地と接着可能であるが、通常、その結果は、不十分となる。
【0015】
“Handbuch der textilen Fixiereinlagen”(Prof.Dr.P.Sroka著、増補第3版1993、Hartung−Gorre出版、コンスタンツ、第6.12章、p.146−152)に論じられているように、接着芯地に代わるものとして、ネット側の面は封止接着性を有しているが、反対側の面は接着性を有していない接着ネットが暫定的な手段として提供された。こうしたネットは連続的なリブで構成されている。ただし、これらのネットは、接着後の感触が固く締まって膨らみの感じられないものであったことから、普及に至らなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】“Handbuch der textilen Fixiereinlagen”(Prof.Dr.P.Sroka著、増補第3版、1993年、Hartung−Gorre出版、コンスタンツ)
【非特許文献2】“Vliesstoffe”(J.Lunenschlos,W.Albrecht著、Georg Thieme出版、シュツットガルト、ニューヨーク、1982年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、容易かつ安価に製造可能であって、優れた視覚的、触覚的特性と共に優れた接着性と均等な接着性を有し、必要に応じて低度な裏側アンカリングを有する片面熱接着性不織布芯地を提供することである。この不織布芯地はとりわけ、基材が薄い場合あるいは穴あき構造を有する場合にも、使用可能でなければならない。さらに、触感の異なる、つまりハードな触感あるいはソフトな触感を有する多彩な芯地が提供されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は請求項1に記載の一切の特徴を備えた熱接着性不織布芯地ならびに請求項12に記載の一切の特徴を備えた熱接着性不織布芯地製造方法によって解決される。請求項17および18は本発明による方法によって製造された繊維製品ないし当該繊維製品を含んだ衣料品に関する。
【0019】
本発明による熱接着性不織布芯地は、融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度が60〜165℃の範囲にある、少なくとも50重量%の割合を占める融着または非融着熱可塑性ステープルファイバーあるいはそれらが混在したステープルファイバーを有する少なくとも1つのステープルファイバーフリースからなる接着層(A)、及び170℃を上回る軟化・融解温度、またはそれが存在しない場合には170℃上回る分解温度を有する、80重量%〜100重量%の割合を占める、少なくとも1つのステープルファイバーフリースまたは少なくとも1つのステープルファイバー不織布からなる層(B)を含み、前記接着層(A)および前記層(B)が互いに結合されている熱接着性不織布芯地。
ここで、重量パーセント(Gew.−%)の記載数値はそれぞれ接着層(A)または層(B)の重量を基準とする。
【0020】
好ましくは、接着層(A)に少なくとも50重量%含まれる60℃〜165℃の融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度を有するステープルファイバーは、層(B)に80重量%〜100重量%で含まれる170℃以上の軟化ないしは融解温度、またはそのような温度を持たない場合は170℃以上の分解温度を有するステープルファイバーに対して、少なくとも1つの化学要素の点で相違している。
【0021】
上述した本発明による熱接着性不織布芯地は、従来の技術から公知の溶融接着剤コートを備えた接着芯地とは異なり、たとえば支持体表面に被着された付加的な溶融接着剤コートは備えず、また、熱可塑性ステープルファイバー以外には、通例の接着条件すなわち温度200℃まで、接着時間5s〜120s、圧力0N/m〜8×10N/mにて繊維性基材と接着される際に繊維製基材に対して接着剤として作用し、DIN 54310:1980に準拠した測定結果からは、測定可能な接着力/剥離強さをもたらすようないかなる付加的な成分も有していない。接着作用はもっぱら接着層(A)に含まれている熱可塑性ステープルファイバーによってのみ生ずる。このことは驚くべきことである。なぜなら、当業者の予測によれば接着層(A)と層(B)との結合後に得られる不織布は繊維製基材との接着後に過少な接着性と過大な裏側アンカリングとを示すと考えられるからである。
【0022】
たとえば当業者は、層Aの熱可塑性ステープルファイバーは接着層(A)と層(B)との結合に際しもはや強固な接着結合をつくり出すのに十分な量で接着層(A)に残存していない、または結合に際し多数が層(B)の表面に移動してしまい、不十分な剥離強さと高い裏側アンカリングがもたらされると予測するであろう。
【0023】
同じく当業者は、この種の不織布にあっては、繊維製基材との常用の接着範囲での接着を行おうとすると、接着層(A)のステープルファイバー同士および/または接着層(A)と層(B)のステープルファイバー同士の強固な結合が行われてしまい、この種の不織布と繊維製基材との接着に際して繊維製基材との十分な接着効果/剥離強さは生じないと予測できる。
【0024】
接着層(A)に使用された熱可塑性ステープルファイバーは、従来の技術によって一般に支持体上に点状に被着された溶融接着剤とは異なり、熱の作用下で長さを変化させ、収縮し得るために、本発明によって製造された芯地と接着された繊維製基材が視覚的、触覚的に均一かつ平滑な表面を形成し得るということはますます驚くべきことである。
【0025】
さらに、たとえば一般に接着層(A)の上記熱可塑性ステープルファイバーの融解温度以上の温度で実施されるカレンダリング時の通例の熱結合法に際して、接着層(A)の熱可塑性ステープルファイバーは融解し、たとえばカレンダーロールに付着したままとなり、これによって接着層(A)は不均一となり、または、ステープルファイバーが層(B)に移動し、こうして、繊維製基材と接着層(A)との接着にとって不十分な量の熱可塑性材料しか残っていないということが予測される。
【0026】
同様に、ニードルパンチ工程たとえば水噴射ニードルパンチ工程を実施する場合にも、接着層(A)と層(B)との十分強固な結合をつくり出すために比較的高い水噴射圧力が適用されなければならないために、熱可塑性ステープルファイバーが層(B)のステープルファイバーと過度に強固に混交する、あるいは層(B)に移動することが予測される。だが、驚くべきことに、本発明による、水噴射処理によって結合された不織布芯地も繊維製基材との接着後に非常に優れた接着性を有していることが判明した。
【0027】
本発明による不織布芯地は通例の接着条件において、十分に優れた耐久的接着性と、必要に応じ、低度の裏側アンカリングとを有するのみならず、通例の厚さの繊維製表地との接着時にも、不織布芯地と接着された繊維製基材の表面側でそれがはっきり感じられたり、目で確認できたりすることがないために、接着された表地に非常に均一な視覚性が実現される。さらに、不織布芯地と接着された表地領域全体にわたって基本的な感触の相違が感じられないために、本発明による不織布芯地によって非常に均質な触感が達成される。驚くべきことにこれは薄い、あるいは穴のあいた構造の繊維製表地の場合にもそうであり、したがって、こうした繊維製基材の場合にも本発明による不織布芯地によって同じく均一な視覚性ならびに均質な触感がもたらされる。
【0028】
本発明によれば、「熱接着性不織布芯地」なる用語によって、片側接着面全体にわたって繊維製基材との十分良好な接着結合を実現するのに適していると共に、それを目的とした不織布が意味される。
【0029】
本発明による熱接着性不織布芯地は十分良好な接着が実現される点で優れている。こうした接着は、接着芯地と繊維製基材とが結合される際の通例の接着条件(温度、圧力、時間、装置)適用下での熱接着後に、DIN 54310:1980に準拠した、試料サイズ(試験片:150mm×50mm、試験表布:160mm×60mm)、剥離速度(150mm/min)、接着プレスKannegiess−er CX 1000またはGygli Top Fusing Mod.PR 5/70による適切な繊維製基材を用いた剥離強さ試験にあたり、少なくとも3Nの剥離強さが得られる場合に実現されていると見なされる。本発明による熱接着性不織布芯地は、さらに以下において一連の実施例から看取されるように、3Nを明白に上回る剥離強さを示している。接着後、つまり他の処理たとえば家庭での洗濯等が行われない場合、測定された剥離強さはしばしば一次接着力とも称される。耐久的な接着は、接着された基材につき少なくとも1つの回の家庭での洗濯が行われた後に、EN ISO 6330:2000(方法No.2A、60℃)に準拠して、なお少なくとも1つのNの剥離強さが得られる場合に実現されていると見なされる。本発明による一連の実施例は、以下に挙げた表から読み取れるように、この値をも大きく上回っている。
【0030】
接着層(A)および層(B)は、好ましくは1枚以上の乾燥処理されたステープルファイバーフリースから製造される。層(B)の製造には、別法として、乾燥処理されたステープルファイバー不織布を使用することもできる。ステープルファイバーフリースおよびステープルファイバー不織布はとりわけ不織布芯地用に主として使用されるような100g/m以下の軽量等級においても、非常に均一な重量・厚さ分布ならびに密な表面性状が得られる。さらに、ステープルファイバーフリースおよびステープルファイバー不織布の触感はフレキシブルに調整可能である。なぜなら、ステープルファイバーの長さ、ステープルファイバーフリースないしステープルファイバー不織布の繊維配向およびステープルファイバーフリースへの種々様々な繊維種(ポリマー繊維)の容易な混入可能性を介して、触感調整に関する高い自由度が存在するからである。
【0031】
本発明により、接着層(A)と層(B)ならびにこれらから得られた不織布芯地は、繊維としてもっぱら所定の限定された長さのステープルファイバーを含み、エンドレスファイバー(フィラメント)は含んでいない。
【0032】
ステープルファイバー、エンドレスファイバー、ステープルファイバーフリースおよび不織布なる用語はDIN 60000(1969年1月)に定められた定義に依拠して使用される。したがって、本発明の趣旨によるステープルファイバーとは限定された長さの繊維であり、他方、エンドレスファイバー(フィラメント)とは実際に長さに制限のない繊維である。本出願中において、ステープルファイバーなる用語は、J.Lunenschlos,W.Albrecht著“Vliesstoffe”(Georg Thieme出版、シュツットガルト、ニューヨーク、1982年、第1.2章、図0.1、p.3)に従って、化学繊維および天然繊維すなわち合成製造された、または半合成製造された繊維および天然繊維を表すものとして使用される。紡糸不織布およびステープルファイバー不織布なる用語はJ.Lunenschlos,W.Albrecht著、“Vliesstoffe”(Georg Thieme出版、シュツットガルト、ニューヨーク、1982年、p.106以下ないしp.63以下)に従って使用される。
【0033】
接着層(A)を生ずる1枚以上のステープルファイバーフリースは、50重量%から100重量%までの、熱可塑性材料製ステープルファイバー(熱可塑性ステープルファイバー)を有しており、該熱可塑性ステープルファイバーの融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度は60〜165℃の範囲にある。これによって、当該ファイバーは通例使用される冒頭に述べた接着温度にて十分な粘着性を有するようになるため、表地との間に強固な接着結合をつくり出すことが保証される。50重量%の割合を下回ると、接着性は大幅に低下する。
【0034】
熱可塑性ステープルファイバーは、熱可塑性プラスチックと同様に、一定の温度範囲内で変形し得ることを特徴としている。この現象は可逆的である。つまり、この現象は過熱によるこの材料の熱分解が生じない限り、冷却と再加熱によって反復可能である。この点で、熱可塑性プラスチックは、熱硬化性プラスチックおよびエラストマーと相違している。
【0035】
軟化温度(ガラス転移温度Tg)と称されるのは、ポリマーが脆いエネルギー弾性状態(T<Tg)から軟らかいエントロピー弾性状態(T>Tg)へ移行する際の温度のことである。部分結晶性プラスチックたとえば熱可塑性ステープルファイバーはガラス転移温度も、結晶相が解消されてポリマーが液体状態に移行する融解温度も有している。ステープルファイバーのガラス転移温度はISO 11357−2:1999−03に準拠して決定することができる。また、ステープルファイバーの融解温度はISO 3146:2002−06に準拠して決定することができる。熱可塑性ステープルファイバーの軟化温度および融解温度は多少とも広い範囲に及んでいるために、温度範囲は多様に記載される。それゆえ、本実施例において、軟化温度および融解温度は温度範囲で取り扱うことができる。
【0036】
分解温度とは、それを超えると材料が不可逆的にその化学構造を変化させ、それによって分解が生じる際の温度または温度範囲のことである。
本発明の好ましい実施形態において、接着層(A)と層(B)とは当業者にとって視覚的にまたは触覚的にあるいは視覚かつ触覚的に識別可能である。好ましくは、以下にさらに詳細に述べるように、接着層(A)と層(B)との製造および/または結合方法は、視覚的および/触覚的識別性が共に生じて、識別性を設定するための他の方法ステップを要さずに実施される。
【0037】
本発明によれば、層(B)は80〜100重量%が、軟化・融解温度、またはそうしたものが存在しない場合には、分解温度が170℃以上のステープルファイバーから成る。これにより、層(B)は通例使用される接着温度に際して熱的に安定したままであることが保証される。ただし、場合により、層(B)のステープルファイバーは170℃以下の温度でその長さを変化させることがある(熱収縮)。
【0038】
本発明による不織布は、適切な繊維製機材との通例の接着条件下での接着後に、DIN 54310:1980に準拠して、試料サイズ(試験片:150mm×50mm、試験表布:160mm×60mm)、剥離速度(150mm/min)、接着プレスKannegiesser CX 1000またはGygli Top Fusing Mod.PR 5/70にて測定して、少なくとも3Nの剥離強さを有している。
【0039】
本発明による不織布は、DIN EN 29073−03:1992に準拠して、剥離速度(200mm/min)にて測定して、少なくとも3Nの長手方向(不織布製造時の製品流れ方向)最大引張り強さを有している。
【0040】
最大引張り強さは、本発明による不織布において、触感特性の尺度である。最大引張り強さが低いほど、触感はソフトになる。最大引張り強さが3N以下の範囲にあれば、当該不織布はもはや取扱い不能であり、使用にあたって容易に裂けたり破損したりする。それゆえ、接着芯地と繊維製基材との接着後にもたらされる最大引張り強さは、接着された繊維製基材の触感の尺度である。
【0041】
必要に応じ、本発明による接着芯地の付された繊維製品につき、0〜3Nの範囲とくに<1Nまたは0Nの低度な裏側アンカリングを設定することができる。この場合、裏側アンカリングは、DIN 54310:1980に準拠して、試料サイズ(試験片300mm×100mm、試験表布300mm×110mm)、剥離速度(150mm/min)、測定距離(50mm)、接着プレスKannegiesser CX 1000またはGygli Top Fusing Mod.PR 5/70にて測定されている。低度の裏側アンカリングは使用にあたり、不織布支持体を貫く接着媒のしみとおり抜け、およびそれに付随する問題たとえば重ねられた複数の芯地/表地層の同時接着に際する層のはり付き、接着装置の汚れや接着された基材の過度に強剛な触感を回避するためにしばしば必要である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、本発明による不織布芯地は、接続層(A)と層(B)との良好ないし極めて良好な視覚的または触覚的あるいはその両方で識別性を有している。これは、芯地と繊維製表地とを接着させる際、使用者にとって有利である。
【0043】
本発明による接着芯地は0.05mm〜30mmの厚さを有している。これより薄い、あるいは厚い不織布芯地は、いずれも製造および/または取扱いがかなり困難である。特に好ましい厚さは、DIN EN ISO 9073−2(1997年2月)に準拠して測定して、0.05mm〜3mmであり、非常に特に好ましいのは0.1mm〜0.6mmである。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、接着層(A)における、60〜165℃の範囲の融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度を有する熱可塑性ステープルファイバーの割合は少なくとも75重量%、特に好ましくは90重量%である。接着層(A)における、60〜165℃の範囲の融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度を有する熱可塑性ステープルファイバーの割合は非常に特に95〜100重量%であるのが好ましい。したがって、接着層(A)には、融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度が165℃を上回る非熱可塑性ステープルファイバーは50、25、10、5または0重量%だけ含まれていてよい。
【0045】
本発明のさらに別の好ましい実施形態において、接着層(A)は熱可塑性複合ステープルファイバーを含む、または該ステープルファイバーから成る。この複合ステープルファイバーは60℃〜165℃の範囲の融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度を有する繊維成分と、165℃を上回る融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度を有する繊維成分とから成る。この場合、60℃〜165℃の範囲の融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度を有する繊維成分は被覆されていない。この熱可塑性複合ステープルファイバーにはコア被覆式成分配置または並行式成分配置が行われていてよい。
【0046】
層(B)は、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは90重量%、非常に特に好ましくは95重量%〜100重量%がホモポリマーステープルファイバーおよび/またはコポリマーステープルファイバーから成る。層(B)のステープルファイバーの融解温度または軟化温度、またはそうしたものが存在しない場合には、分解温度は、好ましくは少なくとも1つの0℃だけ、特に好ましくは少なくとも35℃だけ、非常に特に好ましくは少なくとも85℃だけ165℃を上回る。こうして、不織布芯地の接着に際して、層(B)のステープルファイバーの有意な融解は生ずることがなく、層(B)のステープルファイバーの融解による接着装置の汚れも生ずることがない。
【0047】
接着層(A)および層(B)の製造に使用されるステープルファイバーは、5mm〜150mm、好ましくは10mm〜100mm、特に好ましくは20mm〜50mmの断裁長を有している。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、熱可塑性ステープルファイバーの融解温度または軟化温度は75℃〜160℃の範囲、特に好ましくは75℃〜140℃の範囲にあり、75〜140℃の融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度は特に、コポリアミド、コポリエステルまたはポリエチレンからなる繊維によって達成される。
【0049】
接着層(A)に使用される熱可塑性ステープルファイバーはホモポリマーまたはコポリマーであってよい。本発明の好ましい実施形態において、接着層(A)の1枚以上のステープルファイバーフリースは、コポリアミド、ポリエステル、コポリエステル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリ乳酸または(エチレン)メタクリル酸またはそのコポリマーからなる熱可塑性繊維を有している。
【0050】
層(B)の1枚以上のステープルファイバーフリースの製造には、170℃を下回る温度に際して熱的に安定なステープルファイバーを使用することができる。このことは、軟化・融解温度、またはそうしたものが存在しない場合には、分解温度が170℃を上回るために、170℃以下の温度では軟化も、融解もあるいは分解も生じないステープルファイバーが使用可能であることを意味している。ただし、場合により、これらのステープルファイバーは170℃以下の温度でその長さを変化させることがある(熱収縮)。層(B)の1枚以上のステープルファイバーフリースまたはステープルファイバー不織布の製造に使用されるステープルファイバーは170℃を下回る温度に際して熱的に安定な熱可塑性繊維または非熱可塑性繊維であってよく、相応した合成繊維、半合成繊維または天然繊維あるいはこれらの繊維の混合物を使用することができる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、層(B)の1枚以上のステープルファイバーフリースまたはステープルファイバー不織布は、ポリアミド、ポリエステル、天然または再生セルロース、m−またはp−アラミド、メラミン樹脂、ウールまたは場合によりこれらのコポリマーからなるステープルファイバーを有している。これらのステープルファイバーは特にポリエステルまたはポリアミドあるいはそれらを組み合わせたグループから選択される。
【0052】
接着層(A)は接着芯地の総重量の5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜35重量%を占め、層(B)は同じく接着芯地の総重量の50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは65〜85重量%を占めている。
【0053】
接着層(A)の重量は好ましくは少なくとも5g/mであり、層(B)の重量は好ましくは少なくとも5g/mである。
【0054】
接着層(A)および層(B)の製造に使用される繊維の繊度は0.5dtex〜40dtex、好ましくは1.0dtex〜10dtex、特に好ましくは1.3dtex〜6dtexである。
【0055】
本発明による接着芯地の単位面積重量は10g/m〜300g/m、好ましくは15g/m〜150g/m、特に好ましくは20g/m〜100g/mである。
【0056】
本発明による熱接着性不織布芯地を製造するための方法は以下のステップを含んでなる:
a)融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度が60〜165℃の範囲にある、50重量%〜100重量%の割合を占める融着または非融着熱可塑性ステープルファイバーあるいはそれらが混在したステープルファイバーを有する、または複合ステープルファイバーにて同等の割合を占める融着または非融着熱可塑性ステープルファイバーあるいはそれらが混在したステープルファイバー成分を有する少なくとも1つのステープルファイバーフリースから接着層(A)を製造するステップ。
b)170℃を上回る軟化・融解温度、または軟化温度または融解温度が存在しない場合には、分解温度を有する、80重量%〜100重量%の割合を占めるステープルファイバーを有する少なくとも1つのステープルファイバーフリースまたは1ステープルファイバー不織布から層(B)を製造するステップ。
c)接着層(A)を層(B)と結合するステップ。
ここでも、重量パーセント(Gew.−%)の記載数値はそれぞれ接着層(A)または(B)の重量を基準にしている。
【0057】
本発明による接着芯地の接着層(A)および層(B)の1枚以上のステープルファイバーフリースの製造は、一般に制限なく、当業者に公知の、乾燥処理されたステープルファイバーフリースを製造するための方法を使用して行うことができる。これらの方法はたとえば、Lunenschlos、W.Albrecht著“Vliesstoffe”(Georg Thieme出版、シュツットガルト、ニューヨーク、(1982年)の第2章、p.67−105;1.フリース形成、1.1.1.ステープルファイバーフリース)に記載されている。ステープルファイバーフリースに代えて層(B)として使用可能な乾燥処理されたステープルファイバー不織布も同じく当業者に公知の、乾燥処理されたステープルファイバー不織布を製造するための方法によって製造することができる。この種の方法はたとえば、Lunenschlos、W.Albrecht著“Vliesstoffe”(Georg Thieme出版、シュツットガルト、ニューヨーク、(1982年)の第1.2−1.2.4章、p.122−225)に記載されている。
【0058】
本発明による熱接着性不織布芯地の製造には、好ましくは少なくとも2台のフリース形成装置(これらは梳毛機および/または梳綿機および/または空力式フリース形成装置であってもよい)が使用され、これらの装置によって相応する毛羽から少なくとも2枚のステープルファイバーフリースが製造される。そのうち少なくとも1枚のステープルファイバーフリースは接着層(A)を形成し、少なくとも1枚のステープルファイバーフリースまたはそれに代えて1枚のステープルファイバー不織布は層(B)を形成する。
接着層(A)および層(B)の製造は同時にまたは時間的にずらして行うことができる。
【0059】
接着層(A)を層(B)と結合するため、これらの層は合わされて結合される。結合は、熱処理法、水噴射法、機械処理法、化学処理法、超音波法またはレーザ処理法により実施可能である。これらの方法は任意に組み合わされてもよい。
【0060】
接着層(A)と層(B)とを結合するために、付加的な溶融接着剤も使用されず、あるいは、通例の接着条件すなわち温度200℃以下、接着時間5s〜120s、圧力0N/m〜8×10N/mにて繊維製基材と接着される際に接着剤として作用し、DIN 54310:1980に準拠して測定して、繊維製基材に対して測定可能な接着力/剥離強さをもたらすいかなる成分も使用されない。このことは、溶融接着剤のための付加的な塗付装置が必要とされず、不均一な溶融接着剤塗付に関連する欠陥源も品質問題も接着芯地に生じないために、方法の複雑性ならびにコストが低減するという利点を有している。さらに、付加的な溶融接着剤を使用する場合、接着芯地の多くの使用例において望ましくない最大引張り強さの増大と強剛な触感がもたらされることになろう。
【0061】
接着層(A)と層(B)との結合は、特別に適合された条件を用いた公知の方法により可能であり、その条件は、接着層(A)の繊維が層(B)に僅かに突き抜けるにすぎないか、またはそうしたことを生じなくするということである。これは、層(B)の単位面積重量が可能最小限でありかつ接着層(A)の単位面積重量が可能最大限であっても、使用されるあらゆる結合方法に際しても当てはまる。当業者はそのために必要な方法パラメータを容易に見つけることができる。
【0062】
層同士の結合や場合によりその後の後処理では実質的に、芯地の接着に際して接着層(A)の熱可塑性繊維の過度の収縮(これは接着された領域の不均質性たとえば波打ちをもたらすことになる)が生じないように実施されなければならないが、これは達成可能である。
【0063】
熱処理は一般に、接着層(A)または層(B)あるいはその両方のステープルファイバーの少なくとも応分の軟化または融解あるいはその両方が行われように実施される。ステープルファイバーフリースはこうして熱可塑性接着される。この場合、熱処理法は接着層(A)または(B)と接触する圧縮固着装置の加熱部分に融解した繊維が付着することがないように実施されなければならず、さもなければ、接着層(A)の均一性が破壊されて、圧縮固着欠陥もしくは繊維面の断裂がもたらされることになろう。こうした熱処理法は、驚くべきことに、接着層(A)および層(B)の単位面積重量が低く、かつ、少なくとも1つのカレンダーロールが最も低い温度で融解する接着層(A)のステープルファイバーの融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度を大幅に上回る温度に加熱される場合にも良好に達成されるが、これは当業者にとっては驚くべきことである。若干のコポリアミド繊維の場合、高い融解温度範囲におけるカレンダーロールへの融解繊維残滓の付着は低い融解温度範囲における付着に比べ僅かでさえあり、この事象も同じく予期に反する。処理の程度に応じ、ステープルファイバーフリースおよび繊維の構造は接着層(A)と層(B)との結合後も保持されるか、または失われる。
【0064】
好ましい実施形態において、層(B)の1枚以上の乾燥処理されたステープルファイバーフリースは接着層(A)の1枚以上のステープルファイバーフリースと合わされて、たとえば加熱された型押しロールと加熱された平滑ロールとからなるカレンダーを使用して、接着層(A)と結合される。型押しロールは好ましくは層(B)と接触させられる。型押しおよび平滑ロールの温度はそれぞれ、層(B)と接着層(A)とのステープルファイバーの軟化が少なくとも応分に行われるように調整される。これはロール間に著しく顕著な温度勾配が生ずることによって実現されるが、その際、B側と接触しているロールはA側と接触しているロールよりも著しく高い温度に加熱される。従来の技術による標準方法では、この種の顕著な温度勾配は通例ではない。双方の側面は、それらの結合後、一般にとくに接着側および非接着側の繊維の一体化度の相違により、または接着側の繊維の硬化により視覚的および触覚的に識別可能である。
【0065】
さらに別の好ましい実施形態において、80重量%〜100重量%が、170℃以上の軟化・融解温度、またはそれが存在しない場合には、分解温度を有するステープルファイバーからなる1枚以上の乾燥処理されたステープルファイバーフリースが、加熱された型押しロールと加熱された平滑ロールとからなるカレンダーによって圧縮固着され、層(B)を形成する不織布となされる。熱的圧縮固着の条件は、圧力、滞留時間および温度を介して、層(B)のステープルファイバーの少なくとも応分の軟化ならびに不織布への圧縮固着が行われるようにして調整されなければならない。こうして得られた不織布(層(B))は、場合により、溶融接着剤を使用することなく、当業者に公知の方法で仕上げ加工または染色されるか、あるいはその両方が施され、その後、接着層(A)の1枚以上のステープルファイバーフリースと合わされる。接着層(A)と層(B)とは、加熱された型押しロールと、好ましくは接着層(A)と接触する加熱された平滑ロールとからなるカレンダーを使用して結合される。そのため、ロール間に強度な温度勾配が設定され、その際、B側と接触しているロールはA側と接触しているロールよりも著しく高い温度に加熱される。不織布の両側面は、双方の層の結合後、一般にたとえば接着側および非接着側の繊維の一体化度の相違に基づき、または双方の側の色の相違によって視覚的および触覚的に識別可能である。
【0066】
ただし、接着層(A)と層(B)との結合は、こうしたステープルファイバーの熱可塑性接着なしでも、たとえば水噴射処理により、機械式乾式ニードルパンチ工程により、または結合剤による接着(化学処理)により行うこともできる。本発明によれば、後者の場合、接着芯地へのその塗付と乾燥後、繊維製基材との熱接着に際して接着剤として作用することも、DIN 54310:1980に準拠して測定して、繊維製基材に対して測定可能な接着力/剥離強さをもたらすこともないような結合剤のみが使用される。
【0067】
接着層(A)が層(B)と水噴射圧縮固着法によって結合される場合、その方法は好ましくは層(B)が第1の水噴射刺入側であって、層(B)に接着層(A)よりも高い圧力がもたらされるようにして実施される。接着層(A)の繊維の一体化度が低いことにより、接着層(A)は耐摩性が低く、したがって、相対的に高い毛羽立ち性とソフトな触感を有し、それゆえ、層(B)に比較して視覚的および触覚的な識別性を有している。
【0068】
接着層(A)が層(B)とニードルパンチ工程によって結合される場合、接着層(A)と層(B)とは互いに重ねられて刺し縫い織機を通過させられる。層(B)への接着層(A)の繊維の移動をできるだけ少なくするため、好ましくは、層(B)を刺入側として片面刺し縫い締結され、返しのない針または返しがごく僅かに形成された針が使用される。
【0069】
接着層(A)が層(B)と化学的に結合される場合、場合により他の添加剤たとえば顔料を含んだ結合剤を公知の方法で好ましくは噴霧する、またはフォームの形でウェブ上に塗付することができる。本発明において使用可能な結合剤および添加剤については一般に、不織布への塗付および縮合/乾燥後に、繊維製基材に対する熱接着に際してこうして製造された接着芯地と繊維製基材との間に接着作用を生ずることのない結合剤および添加剤のみが使用されるという一つの制限が存在するだけである。接着層(A)と層(B)とを結合するために、結合剤を含むウェブは好ましくは加熱された装置たとえば乾燥機を通過させられる。その際、温度は、結合剤の乾燥と場合により縮合、したがって、圧縮固着によって不織布が生ずるように調整されなければならない。好ましくは、乾燥は、層(A)のステープルファイバーの応分の軟化または融解あるいはその両方が生じるように温度調整された吸引乾燥機によって実施される。コンベア乾燥機が使用される場合、ウェブは好ましくは、層(B)が乾燥機のコンベア上に載置されるようにしてコンベアを通過させられる。乾燥には他の装置たとえばマイクロ波乾燥機を使用することもできる。
【0070】
別の好ましい実施形態において、結合剤はUV架橋性結合剤である。好ましいUV架橋性結合剤は、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、場合により少量の反応性稀釈剤たとえばスチレンを添加したモノ、ジ、トリまたはテトラ官能性アクリレートおよび/または光重合開始剤たとえばアゾビスイソブチルニトリル、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノンを添加したそれである。この場合、結合剤は公知の方法で、好ましくは両側にフォームとしてウェブ上に塗付または噴霧され、1個以上のUVランプで架橋される。
【0071】
接着層(A)が層(B)と超音波処理によって結合される場合、該方法は、層(B)および/またはAのステープルファイバーの少なくとも応分の軟化または融解あるいはその両方が行われるように実施される。その際、超音波カレンダーのロール好ましくは型押しロールは層(B)と接触させられる。
【0072】
上記の結合方法は互いに任意に組み合わせることができる。
一般に、接着層(A)と層(B)との結合後、さらなる処理方法を使用することができる。
【0073】
これらの処理方法に際しても、通例の接着条件すなわち温度200℃以下、接着時間5s〜120s、圧力0N/m〜8×10N/mにて繊維性基材と接着される際に接着剤として作用し、DIN 54310:1980に準拠して測定して、繊維製基材に対して測定可能な接着力/剥離強さをもたらすようないかなる付加的な溶融接着剤も成分も使用されることはない。
【0074】
本発明のさらに別の好ましい実施形態において、接着層(A)と層(B)との結合(C)に続き、本発明による接着芯地の側[がわ]面(A)と層(B)との視覚的にまたは触覚的にあるいは視覚かつ触覚的に顕著な判別を可能とする識別性をもたらすさらに別の処理ステップが設けられている。
この処理ステップは、別の好ましい実施形態としてさらなる不織布圧縮固着をもたらすために採用できる。
【0075】
接着層(A)と層(B)との結合時にすでに達成されていない限り、これらの処理ステップはさらに接着層(A)の安定化をもたらし、これによって、接着された繊維製基材の表面側の不均質性をもたらすと考えられる芯地接着時のステープルファイバーの比較的激しい収縮は防止される。
【0076】
適切な処理ステップとして、機械処理、化学処理、熱処理、レーザ処理、超音波処理またはプリント処理法を使用することが可能である。
【0077】
結合された接着層(A)と層(B)とのさらなる処理を行い、視覚的別性または触覚的識別性あるいは両方の識別性を達成し、場合により、不織布のさらなる圧縮固着と接着層(A)の安定化とを達成するための適切な機械処理方法は、たとえば、加熱なしに片面側または両面側で実施可能であり、場合によっては、双方の面の異なった構造化をもたらす機械プレスを利用しても良い。
【0078】
視覚的別性または触覚的識別性あるいは両方の識別性を達成し、場合により、不織布のさらなる圧縮固着と接着層(A)の安定化とを達成するための適切な熱処理方法は、たとえば、型押しロールまたは平滑ロールあるいはその組み合わせによる熱間カレンダリング(サーモボンディング)、(メッシュ、スクリーンまたは他の構造を有した金属ベルトによる炉内での)加熱またはIR処理である。
【0079】
好ましい実施形態において、好ましくは熱処理、機械処理、水噴射処理または化学処理によって得られた不織布は、接着層(A)と層(B)との結合後に、加熱されたロールを備えたカレンダーまたは均し機によって熱的均し処理に付される。その際、均し処理は最も低い温度で融解する接着層(A)の繊維成分の軟化または融解あるいはその両方が行われように実施される。この場合、より高い温度で融解する繊維の融解温度、軟化温度または分解温度は到達されない。これにより、接着層(A)の安定化と平滑化ならびに接着層(A)の側面と層(B)の側面との視覚的、触覚的識別性の向上が達成される。
【0080】
さらに、好ましくは熱処理、機械処理、水噴射処理または化学処理によって得られた不織布が、接着層(A)と層(B)との結合後に、熱風処理またはIR処理に付される処理法が好ましい。その際、処理温度は最も低い温度で融解する接着層(A)の繊維成分の軟化または融解あるいはその両方が行われるように選択される。この場合、より高い温度で融解する繊維の融解温度、軟化温度または分解温度は到達されない。これにより、接着層(A)の追加的な圧縮固着が達成されると共に、該層の硬化によって層(B)の安定性と付加的な触覚的識別性が達成される。
【0081】
接着層(A)と層(B)とを結合するための熱処理方法の場合と同様に、熱的後処理に際しても、驚くべきことに、条件が最適設定されれば、接着層(A)および層(B)と接触する圧縮固着装置たとえばカレンダーロールの加熱部分に融解した繊維の付着が生ずることはない。この問題は、驚くべきことに、圧縮固着装置の1要素たとえばカレンダーロールが最も低い温度で融解する接着層(A)のステープルファイバーの融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度を上回る温度に加熱される場合にも生ずることがない。
【0082】
視覚的別性または触覚的識別性あるいは両方の識別性の達成ならびに、場合により、不織布のさらなる圧縮固着と接着層(A)の安定化とを達成するための適切な化学的方法は、たとえば、塗付またはプリントである。この化学的方法は結合剤を使用しても使用しなくとも実施可能である。本発明によれば、この化学的方法に際しても一般に、接着芯地への塗付および乾燥後、熱接着に際して繊維製基材に対して接着性を生ずることがなく、かつ、溶融接着剤としても作用することのない化学物質(たとえば結合剤、触感軟化剤)のみが使用される。
【0083】
プリント法に際しては、公知のすべての方法たとえば凸版またはスタンプ印刷法(たとえばレリーフ印刷)、凹版印刷法(たとえばRoulaux印刷)、フィルム印刷/スクリーン印刷法(たとえばフラットフィルム印刷、ロータリーフィルム印刷)、転写印刷法を使用することができる。
【0084】
さらに別の好ましい実施形態において、好ましくは熱処理、機械処理、水噴射処理、化学処理、超音波処理またはレーザ処理によって得られた不織布は、接着層(A)と層(B)との結合後に、少なくとも1つの端縁に印刷が行われる。たとえば、1以上のロータリースタンプ印刷システムにより、水または溶剤をベースとした染料または異なる染料の混合物がプリントされて、水または溶剤の蒸発後に製品上に付着残存する。この実施形態は、不織布のさらなる圧縮固着を行って触感を変化させることなしに、接着層(A)の側面と層(B)の側面とのさらなる識別性を達成することができるという利点を有している。
【0085】
本発明による芯地の触感特性は、接着層(A)中のホモポリマー/コポリマーステープルファイバーの割合および熱可塑性繊維の割合、ステープルファイバーフリース中の数多くのさまざまな繊維種の組み合わせ/混入の可能性および繊維配向によって、フレキシブルに調整することができる。カレンダリングによって熱的に圧縮固着される不織布芯地にあっては、型押しロールの構造とそれによる不織布溶接面の構造とによって触感調整を行うさらなる可能性が生ずる。
【0086】
本発明による接着芯地は、熱可塑性ステープルファイバー以外には、他の繊維製基材と芯地との接着時に接着剤として作用するいかなる他の活性または活性化可能な接着ポリマーも含んでいないことを特徴としている。
【0087】
本発明による接着芯地は、通例の接着条件下での適切な繊維製基材との接着に際し、試料サイズ(試験片:150mm×50mm、試験表布:160mm×60mm)、剥離速度(150mm/min)、接着プレスKannegiesser CX 1000またはGygli Top Fusing Mod.PR 5/70にて、DIN 54310:1980に準拠して測定して、3Nを上回る優れた接着力を有すると共に、手入れ処理(洗濯1×60℃)の後にも耐久的な接着力を有することを特徴としている。
【0088】
必要に応じ、通例の接着条件下での適切な繊維製基材との接着に際し、低度の裏側アンカリングが達成される。
【0089】
本発明による接着芯地は、接着された繊維製基材の表面側に視覚的ならびに触覚的に均一な面をもたらすと共に、接着は、接着条件が最適調整されていれば、溶融接着剤のしみとおり抜けなしに行われるために、薄い繊維製基材およびかご目/穴あき構造を有する基材用に特に適している。
【0090】
繊維製基材の表面側への溶融接着剤のしみとおり抜けは、溶融接着剤が表地に対してもたらす色の相違によって容易に確認可能である。場合により、いっそう判別し易くするために、溶融接着剤に対して対照的な色に染色された繊維製基材(表地)を使用することができる。したがって、黒い表地は、たとえば白い溶融接着剤のしみとおり抜けの判別に最も適している。
【0091】
他方、溶融接着剤に繊維製基材の色と対照的な色をもたらす染料たとえば顔料を添加することもできる。接着された繊維製基材の表面側に溶融接着剤のしみとおり抜けによってもたらされるコントラストは、デジタル撮影後、たとえば画像処理プログラムによって量的に評価することができる。
【0092】
本発明による方法によれば、従来の不織布芯地の製造時の高い不良品発生率と結びついていた溶融接着剤コーティングは行われないために、廃棄物の発生が減少する。したがって、本発明による方法によれば、接着不良箇所の数が減少し、これによって、不良品に分別されて除外されなければならない欠陥品が減少する。さらに、溶融接着剤コーティング工程が不要となるために、それぞれの生産開始時に溶融接着剤被着層の重量調整に関連して生ずる工程起因欠陥品の量が減少し廃棄物の発生量も減少する。
【0093】
本発明による方法は、付加的なコーティングまたはライニング装置を使用しない、通例のステープルファイバーフリース形成装置による接着芯地の製造を可能にするために、経済的で廃棄物発生の少ない省資源的な熱接着性不織布芯地の製造が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】穴あき材料構造を有する表地と接着された比較実施例11Aの標準フリース芯地を示す図である。
【図2】同一の表地と接着された実施例11の本発明による不織布芯地を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
実施例:
この場合、最大引張り強さは、DIN EN 29073−03:1992に準拠して、剥離速度(200mm/min)にて、長手方向(=不織布製造時のウェブ流れ方向)において測定される。
【0096】
不織布の剥離強さは、DIN 54310:1980に準拠して、試料サイズ(試験片:150mm×50mm、試験表布:160mm×60mm)、剥離速度(150mm/min)、接着プレスKannegiesser CX 1000またはGygli Top Fusing Mod.PR 5/70にて測定される。
【0097】
洗濯後の剥離強さは、DIN 54310:1980に準拠して、試料サイズ(試験片:150mm×50mm、試験表布:160mm×60mm)、剥離速度(150mm/min)、接着プレスKannegiesser CX 1000またはGygli Top Fusing Mod.PR 5/70にて、EN ISO 6330:2000に定める家庭での洗濯(方法No.2A、60℃)後に測定される。
【0098】
不織布の裏側アンカリングは、DIN 54310:1980に準拠して、試料サイズ(試料300mm×100mm、試験クロス300mm×110mm)、剥離速度(150mm/min)、測定距離(50mm)、接着プレスKannegiesser CX 1000にて測定される。
【0099】
厚さはDIN EN ISO 9073−2:1995に準拠して測定される。
【0100】
以下の実施例において、接着層(A)としては、乾燥処理されたステープルファイバーフリースが使用され、層(B)としては、乾燥処理されたステープルファイバーフリースまたは乾燥処理されたステープルファイバー不織布(実施例6)が使用された。
【0101】
接着層(A)および層(B)のステープルファイバーフリースは別々のフリース形成装置(梳毛機)で製造された。製造は取引通例の梳毛機を使用し、当業者に公知の乾燥フリース形成法によって行なわれるが、その際、フリースのステープルファイバーは縦配向、横配向あるいは錯綜配向も可能である。接着層(A)と層(B)とのステープルファイバーフリースは、その後、結合され、場合により、さらなる処理に付される。
【0102】
実施例6においては、乾燥処理されたステープルファイバーフリースから製造され、当業者に公知の方法で圧縮固着されて不織布とされた、乾燥処理されたステープルファイバー不織布が層(B)として使用される。
【0103】
本発明による方法において、熱可塑性ステープルファイバー以外には、不織布芯地と繊維製基材との接着に際して接着剤として作用すると考え得るいかなる溶融接着剤も他の成分も使用されることはない。
【0104】
実施例1:
100重量%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、ISO 3146:2002−06に準拠して測定して128〜133℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンステープルファイバーからなる、横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量18g/mの横延伸ステープルファイバーフリース(A)が、それぞれ100%が、繊度1.7dtex、断裁長38mm、200〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる、第2の横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量22g/mの横延伸ステープルファイバーフリース(B)および錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量10g/mの錯綜配向されたステープルファイバーフリース(B)と合わされて、水噴射機械的圧縮固着により結合される。この場合、水噴射圧縮固着は、層(B)が第1の水噴射刺入側であって、層(B)に接着層(A)よりも高い圧力がもたらされるように実施される。続いて、製品は乾燥機で110℃にて乾燥させられる。接着層(A)の繊維の一体化度が低く、それによる接着側(A)の高い毛羽立ち性によって、非接着側との目で確認することのできる感知可能な相違が所与である。最後に、乾燥された製品は、スチールロールとゴムロールとからなる均し機で、熱的均し処理に付される。この均し処理は60N/mmの線形負荷(カレンダー設定値)と90℃ゴムロール/130℃スチールロールの温度にて実施される。接着層(A)は、この処理後、非接着側よりも遥かに平滑となり、したがって、視覚的ならびに触覚的に処理前よりも遥かに顕著に非接着側と識別可能である。
【0105】
実施例2:
100重量%が、繊度7dtex、断裁長60mm、127〜132℃の融解温度範囲(ISO 3146:2002−06)を有するホモポリマーポリエチレンステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量12g/mの錯綜配向ステープルファイバーフリース(A)が、95%が、繊度1.7dtex、断裁長38mm、200〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーと、5%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、128〜133℃の融解温度範囲を有するポリエチレンステープルファイバーとからなる、第2の錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量24g/mの錯綜配向ステープルファイバーフリース(B)と合わされて、水噴射機械的圧縮固着によって結合される。この場合、水噴射圧縮固着は、層(B)が第1の水噴射刺入側であって、層(B)に接着層(A)よりも高い圧力がもたらされるように実施される。水噴射圧縮固着後に得られた不織布はスチール平滑ロールとスチール型押しロールとを有するカレンダーを湿潤状態で通過させられ、空気が当てられて、つまり加圧なしで126℃にて軽度に構造化され、その際、型押しロールと接触している層(B)に視覚的に顕著な構造化が行われる。製品は、続いて、乾燥機で110℃にて乾燥させられ、巻き取られる。
【0106】
実施例3:
100重量%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、128〜133℃の融解温度範囲(ISO 3146:2002−06)を有するホモポリマーポリエチレンステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量24g/mのステープルファイバーフリース(A)が、100%が、繊度1.7dtex、断裁長38mm、融解温度範囲200〜260℃を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる、横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量40g/mの横延伸ステープルファイバーフリース(B)と合わされて、水噴射機械的圧縮固着によって結合される。この場合、水噴射圧縮固着は、層(B)が第1の水噴射刺入側であって、層(B)に接着層(A)よりも高い圧力がもたらされるように実施される。続いて、製品は乾燥機で110℃にて乾燥させられる。その後、非接着側の端縁に、スタンプ印刷システムによって、溶剤ベースの染料がプリントされ、乾燥させられる。
【0107】
比較実施例3A:
水噴射圧縮固着されたポリエステルステープルファイバーからなる単位面積重量40g/mの乾燥処理されたステープルファイバー不織布に、続いて、パウダーポイント法で24g/mの溶融接着剤がコーティングされる。
【0108】
実施例4:
100重量%が、繊度1.7dtex、断裁長40mm、210〜220℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリアミド6ステープルファイバーからなる、横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量35g/mの横延伸ステープルファイバーフリース(B)が、100%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、128〜133℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量10g/mの錯綜配向ステープルファイバーフリース(A)と合わされて、加熱された型押しロールと平滑ロールとを有するNipcoカレンダーで、線形負荷(カレンダー設定値)60N/mm、型押しロールの表面温度195℃、平滑ロールの表面温度115℃にて、圧縮固着される。接着層(A)側には一体化度の大幅に低い繊維が生じるため、これにより、この接着側によりソフトな触感が生ずる。
【0109】
実施例5:
100重量%が、繊度1.7dtex、断裁長38mm、200〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる、横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量40g/mの横延伸ステープルファイバーフリース(B)が、100%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、128〜133℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量10g/mの錯綜配向されたステープルファイバーフリース(A)と合わされて、加熱された型押しロールと平滑ロールとを有するNipcoカレンダーで、線形負荷(カレンダー設定値)60N/mm、型押しロールの表面温度230℃、平滑ロールの表面温度116℃にて、圧縮固着される。続いて、非接着側の端縁に、ロータリースタンプ印刷システムによって染料がプリントされ、乾燥させられる。
【0110】
比較実施例5A:
熱圧縮固着されたポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる単位面積重量40g/mの乾燥処理されたステープルファイバー不織布に、続いて、ダブルポイント法で10g/mの溶融接着剤がコーティングされる。
【0111】
実施例6:
65重量%が、繊度1.7dtex、断裁長40mm、200〜210℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリアミド6ステープルファイバーからなり、35重量%が、繊度1.7dtex、断裁長38mm、200〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーホワイトポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量25g/mの錯綜配向熱圧縮固着され、ベージュ色に染色されたステープルファイバー不織布(B)が、100%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、128〜133℃の融解温度範囲を有するホモポリマーホワイトポリエチレンステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量12g/mの錯綜配向されたステープルファイバーフリース(A)と合わされて、加熱された型押しロールと平滑ロールとからなり、表面温度195℃の型押しロールは層(B)と接触させられ、表面温度115℃の平滑ロールは接着層(A)と接触させられるNipcoカレンダーを使用して、線形負荷(カレンダー設定値)60N/mmにて圧縮固着される。色の相違によって、接着層(A)と層(B)とは互いに視覚的に明白に識別可能である。
【0112】
実施例7:
100重量%が、繊度1.6dtex、断裁長38mm、200〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量50g/mの錯綜配向されたステープルファイバーフリース(B)が、加熱された型押しロールと非加熱平滑ロールとを有するNipcoカレンダーで、型押しロールの表面温度230℃、線形負荷(カレンダー設定値)60N/mmにて圧縮固着される。こうして得られた層(B)は、続いて、100%が、コア被覆式成分配置されたコポリマー・ポリエステル/コポリエステルステープルファイバー(ここでステープルファイバー中のポリエステル/コポリエステルの重量比は50%/50%である)からなる、繊度2.2dtex、断裁長50mm、より低温で融解する被覆成分の融解温度範囲110〜120℃(コポリエステル)、コア中の他方の成分(ポリエチレンテレフタレート)の融解温度範囲250〜260℃を有する、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量40g/mの錯綜配向されたステープルファイバーフリース(A)と合わされ、型押しロールと平滑ロールとを有するNipcoカレンダーで、線形負荷(カレンダー設定値)60N/mm、型押しロールの表面温度230℃、平滑ロールの表面温度105℃にて圧縮固着される。その後、非接着側の端縁に、スタンプ印刷システムによって染料がプリントされ、乾燥させられる。
【0113】
実施例8:
100重量%が、繊度1.7dtex、断裁長38mm、200〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる、横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量40g/mの横延伸ステープルファイバーフリース(B)が、100%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、128〜133℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量10g/mの錯綜配向されたステープルファイバーフリース(A)と合わされて、型押しロールと平滑ロールとを有するNipcoカレンダーで、線形負荷(カレンダー設定値)90N/mm、型押しロールの表面温度250℃、平滑ロールの表面温度132℃にて圧縮固着される。双方の側[がわ]面の視覚的および触覚的識別性は接着層(A)の繊維の一体化度が弱いことから所与であり、その結果、非接着層に比較して接着側(A)の耐摩性は低く、それに起因して、相対的に高い毛羽立ち性とソフトな触感がもたらされる。
【0114】
実施例9:
50%が、繊度1.7dtex、断裁長38mm、200〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなり、25%が、繊度1.7dtex、断裁長40mmのビスコース繊維からなり、さらに25%が、繊度2.8dtex、断裁長38mmのビスコース繊維からなる、横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量23g/mの横延伸ステープルファイバーフリース(B)が、5%が、繊度1.7dtex、断裁長40mmのビスコース繊維からなり、95%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、128〜133℃の融解温度範囲を有するポリエチレンステープルファイバーからなる、縦配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量9g/mの縦配向されたステープルファイバーフリース(A)と合わされて、含浸装置にて、ガラス転移温度Tg−30のアクリルコポリマー系結合剤フォームによる含浸が行われる。結合剤の被着層は乾燥後に7g/mである。製品ウェブは、続いて、乾燥機で120℃にて乾燥させられる。その後、製品は加熱された2本のロールを備えた均し機を通して均される。側[がわ]面Bと接触している平滑ロールの温度は180℃であり、側[がわ]面Aと接触している平滑ロールの温度は115℃である。得られる接着芯地の両側は、繊維配向の相違、表面平滑度および光沢によって互いに十分識別可能である。
【0115】
実施例10:
20%が、繊度3.3dtex、断裁長60mm、200〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなり、10%が、コア被覆式成分配置されたポリエチレンテレフタレート/改質ポリエチレン(ここでステープルファイバー中のポリエチレンテレフタレート/改質ポリエチレンの重量比は50%/50%である)からなる、繊度3.0dtex、断裁長50mm、被覆成分(改質ポリエチレン)の融解温度範囲110〜130℃、コア中の他方の成分(ポリエチレンテレフタレート)の融解温度範囲250〜260℃を有するコポリマーステープルファイバーからなり、70%が、繊度1.7dtex、断裁長40mmのビスコース繊維からなる、横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量75g/mの横延伸ステープルファイバーフリース(B)が、100%が、繊度2.8dtex、断裁長60mm、128−133°の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量25g/mの錯綜配向されたステープルファイバーフリース(A)と合わされて、機械式ニードルパンチされ、乾燥機設定温度131℃の乾燥機を(B)側が乾燥機コンベア上に載置されて通過させられる。続いて、製品ウェブは2本のスチールロールを有する加熱式均し機により、105℃、線形負荷(カレンダー設定値)13N/mmにて、片側の接着層(A)側が均される。この処理後、接着層(A)は大幅に平滑となり、これによって、触覚的に非接着側からの識別が可能になる。
【0116】
実施例11:
100重量%が、繊度1.7dtex、断裁長38mm、250〜260℃の融解温度範囲を有するホモポリマーポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる、横配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量40g/mの横延伸ファイバーフリース(B)が、100%が、繊度3.3dtex、断裁長51mm、75〜135℃の融解温度範囲を有するホモポリマーコポリアミドステープルファイバーからなる、錯綜配向梳毛機で製造され乾燥処理された単位面積重量15g/mの錯綜配向されたファイバーフリース(A)と合わされて、加熱された型押しロールと平滑ロールとを有するNipcoカレンダーで、線形負荷(カレンダー設定値)60N/mm、型押しロールの表面温度232℃、平滑ロールの表面温度110℃にて、圧縮固着される。接着側Aは、圧縮固着後、より高度な光沢と、より平滑な触感と、Bに比較して耐摩性に優れていることを特徴としており、これにより、双方の側[がわ]面は互いに十分識別可能である。
【0117】
比較実施例11A:
熱圧縮固着されたポリエチレンテレフタレートステープルファイバーからなる単位面積重量40g/mの乾燥処理されたステープルファイバー不織布に、続いて、ペーストポイント法で15g/mの溶融接着剤がコーティングされる。
【0118】
実施例12:
実施例1〜11に基づいて製造された接着芯地が繊維製基材と結合された。この結合ステップは、使用された接着芯地に応じた温度および圧力条件にて、12〜15秒間にわたって行われた。基材としては木綿または65%木綿/35%ポリエステルが使用された。
【0119】
正確な条件、試験表布ならびに結果は表1および2から読み取ることができる。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
表1から、本発明による不織布芯地は非常に優れた一次接着力(3Nを著しく上回る)によって卓越しているのみならず、さらに、同じく優れた耐久的な接着力(1×60°にての洗濯後、1Nを著しく上回る)によっても卓越していることが看取される。
【0123】
さらに、不織布芯地と表地(=試験表布)からなる複合体の最大引張り強さ(これは当該複合体の触感特性の尺度である)は、非常にソフトな触感からハードな触感に至るまでの非常に広い範囲にわたって変化可能である。
【0124】
同じく表中に挙げられた比較実施例と比較すれば、本発明による不織布芯地は、遥かに容易かつ安価に製造可能であるにもかかわらず、従来の接着芯地に比較していかなる特性の点でもひけをとらないことが明らかである。
【0125】
上記は、表2から看取されるように、裏側アンカリングについても当てはまる。
【0126】
本発明による熱接着性不織布芯地は表地が薄い場合にも、あるいは表地が穴空き構造を有している場合にも上首尾にて使用可能であることは以下の図から明らかである。
【0127】
図1は、穴あき材料構造を有する表地と接着された比較実施例11Aの標準フリース芯地を示しており、図2は、同一の表地と接着された実施例11の本発明による不織布芯地を示す。
図1の標準フリース芯地の場合には、しみ通り抜けた溶融接着剤の点(赤で囲まれている)が認められる。他方、同じ表地に接着された本発明による不織布芯地は、図2から読み取ることができるように、視覚的ならびに触覚的均一性によって卓越していることが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度が60〜165℃の範囲にある、少なくとも50重量%(この接着層(A)を基準して)の割合を占める融着または非融着熱可塑性ステープルファイバーあるいはそれらが混在したステープルファイバーを有する少なくとも1つのステープルファイバーフリースからなる接着層(A)、及び
b)170℃を上回る軟化・融解温度、またはそれが存在しない場合には170℃上回る分解温度を有する、80重量%〜100重量%(この層(B)を基準にして)の割合を占める、少なくとも1つのステープルファイバーフリースまたは少なくとも1つのステープルファイバー不織布からなる層(B)を含み、
c)前記接着層(A)および前記層(B)が互いに結合されている熱接着性不織布芯地。
【請求項2】
繊維製表地との結合を目的としたいかなる付加的な溶融接着剤コートも有していないことを特徴とする請求項1に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項3】
前記接着層(A)の熱可塑性繊維の融解温度または軟化温度が75℃〜140℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項4】
前記接着層(A)の前記ステープルファイバーフリースが、コポリアミド、ポリエステル、コポリエステル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート、ポリ乳酸または(エチレン)メタクリル酸またはこれらのコポリマーからなる熱可塑性繊維を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項5】
前記層(B)の前記ステープルファイバーフリースないしステープルファイバー不織布が、ポリアミド、ポリエステル、天然または再生セルロース、m−またはp−アラミド、メラミン樹脂、ウールまたはこれらのコポリマーからなる繊維を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項6】
前記接着層(A)が接着芯地の総重量の5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜35重量%を占めることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項7】
前記接着層(A)および前記層(B)の繊維の繊度が0.5dtex〜40dtex、好ましくは1dtex〜10dtex、特に好ましくは1.3dtex〜6dtexであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項8】
接着芯地の単位面積重量は10g/m〜300g/m、好ましくは15g/m〜150g/m、特に好ましくは20g/m〜100g/mであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項9】
前記接着層(A)および層(B)の重量はそれぞれ少なくとも5g/mであることを特徴とする請求項1から8に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項10】
通例の接着条件による繊維製表地との接着後、DIN 54310:1980に準拠して、試料サイズ:50mm×150mm、試験表布:60mm×160mm、剥離速度:150mm/min、接着プレス:Kannegiesser CX 1000またはGygli Fusing Mod.PR 5/70にて測定して、少なくとも3Nの剥離強さが得られることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項11】
前記接着層(A)の前記少なくとも1つのステープルファイバーフリースにおける、融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度が60〜165℃の範囲にある熱可塑性ステープルファイバーの割合は、接着層(A)を基準にして、少なくとも90重量%、好ましくは95重量%であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の熱接着性不織布芯地。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項記載の熱接着性不織布芯地を製造するための方法であって、
a)融解温度または軟化温度あるいはその両方の温度が60〜165℃の範囲にある、50重量%〜100重量%の割合を占める融着または非融着熱可塑性ステープルファイバーあるいはそれらが混在したステープルファイバーを有する少なくとも1つのステープルファイバーフリースから接着層(A)を製造するステップと、
b)170℃を上回る軟化・融解温度、またはそれが存在しない場合には170℃上回る分解温度を有する、80重量%〜100重量%の割合を占めるステープルファイバーを有する少なくとも1つのステープルファイバーフリースまたは1ステープルファイバー不織布から層(B)を製造するステップと、
c)前記接着層(A)を層(B)と結合するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記ステップc)における結合は、水噴射処理またはニードル技法などの機械処理、前記熱可塑性繊維の融解温度または軟化温度を上回る温度での熱処理または化学処理によって行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記接着層(A)と前記層(B)とが互いに視覚的に識別可能となるように前記接着層(A)と前記層(B)との結合が実施されることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の熱接着性不織布芯地を繊維製基材と結合するための方法であって、付加的な溶融接着剤コートなしの前記熱接着性不織布芯地が前記接着層(A)の熱可塑性繊維の融解温度または軟化温度に等しい、またはそれを上回る温度に加熱されて、前記繊維製基材(C)と接着されることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記繊維製基材(C)は、セルロース、再生セルロース、ウール、ポリエステル、ポリアミド及びそれらの混合物のうちから選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法によって得られる繊維製品。
【請求項18】
請求項17に記載の繊維製品を含む、衣料品、自動車内装ライニング、家具化粧張りまたはカバー、ホームテキスタイルまたは衛生用品、医療品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−521310(P2012−521310A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501147(P2012−501147)
【出願日】平成22年1月16日(2010.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000228
【国際公開番号】WO2010/108562
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(510057615)カール・フロイデンベルク・カー・ゲー (19)
【Fターム(参考)】