説明

熱接着性被覆弾性糸、及び衛材用伸縮性積層シートの製造方法

【課題】
巻糸体からの解舒性に優れ、かつ、布帛や不織布のようなシート材とを接着剤を塗布しなくても容易に接着することができ、特に衛材用伸縮性複合シートのための弾性糸として好適な熱接着性被覆弾性糸を提供する。
【解決手段】
ポリウレタン系弾性繊維糸に熱接着性ポリアミド系フィラメント糸がカバリングされた被覆弾性糸であって、ポリウレタン系弾性繊維の含有率が35〜90重量%である、熱接着可能な被覆弾性糸である。また、この熱接着性被覆弾性糸をを伸長状態にしてシート間に挟み、120℃〜190℃で加熱して熱接着させることにより伸縮性積層シートを製造するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛材用伸縮性積層シートの製造用として好適な熱接着性被覆弾性糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紙オムツや生理用ナプキンなどの衛材商品については様々な商品が開発され、装着部位へのフィット性を高める目的でポリウレタン系弾性繊維やゴムが、伸縮性付与素材として部分的に用いられている。これら用途において、ポリウレタン系弾性繊維は、布帛、不織布あるいはシートに接着剤を介して接着されるが、その接着時にポリウレタン系弾性繊維は伸長された状態にあり、熱や圧力が加えられて接着される。
【0003】
一方、ポリウレタン弾性糸は巻糸体の状態で保管、運搬されるので、巻糸体からの解舒性を高めるために糸表面に滑剤を塗布することが好ましい。しかし、滑剤を塗布すれば、シートとの接着性が低下する。接着性を高めるために、接着剤を多量に付着させればコスト高となり、しかも、本来求めていたフィット性が阻害され易いという不都合が生じる。
【0004】
逆に、弾性糸表面に付着させる滑剤の量を減らせば、解舒性が低下し、解舒不良による糸切れを引き起こし易くなり、衛材の製造工程を止める要因となる。また解舒不良の場合、送り込み長が大きく変動し、衛材としての美観を損ない易いという問題もある。
【0005】
そこで、弾性糸とシートとの接着性に悪影響を及ぼすことなく解舒性を改良することができるポリウレタン繊維用処理剤として、鉱物油とポリジメチルシロキサンとからなる処理剤が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、ポリウレタン弾性糸の製糸工程における融着方法を改善して、融着一体化したポリウレタン弾性糸を偏平断面状とすることにより、弾性糸とシートとの接着性も解舒性もともに良好な衛材製品用弾性糸を製造することが提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、これらの場合、接着剤を付与することによってポリウレタン弾性糸とシートとを接着させることを前提にして開発された技術であるので、伸縮性シート製造時に接着剤付与工程が必要であり、付与された接着剤によってポリウレタン弾性糸の伸縮特性が阻害されることがあり、得られる伸縮性複合シートのフィット性不良が生じることがある。さらに、弾性糸をシート間に固定するためには接着剤付与作業が必要であり、製造工程の合理化のために接着剤付与作業の省略が望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−205876号公報
【特許文献2】特開2002−129428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、巻糸体からの解舒性に優れ、かつ、布帛や不織布のようなシート材と、接着剤を塗布しなくても容易に接着することができ、特に衛材用伸縮性複合シートのための弾性糸として好適な熱接着性被覆弾性糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の弾性糸は、ポリウレタン系弾性繊維糸に熱接着性ポリアミド系フィラメント糸がカバリングされた被覆弾性糸であり、かつ、ポリウレタン系弾性繊維の含有率が35〜90重量%である。
【0011】
この被覆弾性糸は、その製造工程において、ポリウレタン弾性繊維糸がその巻糸体から一旦解舒され、その周りに他の糸が被覆された糸構造にされた後に改めて巻き上げられるので、本発明の被覆弾性糸の巻糸体においてはポリウレタン弾性糸のポリウレタン同士が粘着することを回避できる。従って、本発明の被覆弾性糸は、その巻糸体から良好に解舒することができ、弾性糸使用工程における糸切れ等のトラブルを解消できる。
【0012】
しかも、このような糸構造の被覆弾性糸とすることにより、鞘糸により熱接着機能が発揮されるので、接着剤を付与しなくても、加熱により他素材と接着させることができる。さらに、接着剤を使わずに製造される伸縮性複合シートでは、接着剤により弾性糸の伸縮性が阻害されることがなく、衛材用伸縮性複合シートはより優れたフィット性を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱接着性被覆弾性糸は、その巻糸体からの解舒性に優れるので、使用工程における糸切れを低減させることができる。しかも、布帛や不織布のようなシート材とを、接着剤を塗布しなくても容易に接着することができる。従って、特に衛材用伸縮性複合シートのための弾性糸として好適であり、接着剤塗布せずに、伸縮性に優れた衛材用伸縮性複合シートを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で用いるポリウレタン系弾性繊維は、ポリウレタンやポリウレタンウレアで代表されるポリウレタン系ポリマで構成される繊維である。ここで、ポリウレタンウレアは、ポリマージオール、ジイソシアネート、及びジアミン系鎖伸長剤から重合されたポリマであり、ポリウレタンは、ポリマージオール、ジイソシアネート、及びジオール系鎖伸長剤から重合されたポリマである。
【0015】
これらポリウレタンウレアやポリウレタンを重合するために使用されるポリマージオールとしては、ポリエーテル系グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネートジオールなどが好ましい。
【0016】
ポリエーテル系ジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)が挙げられ、また、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)と環状エーテルやジオールとを共重合させた共重合ポリテトラメチレンエーテルグライコール(以下、共重合PTMGと略す)が挙げられる。この共重合PTMGとしては、例えば、THFと3−メチルTHFとの共重合体(以下、3M−PTMGと略す)、THFと2,3−ジメチルTHFとの共重合体、THFとエチレンオキシドとの共重合体がある。さらに、THFとネオペンチルグリコールとの共重合体のような、側鎖を両側に有するポリマージオールなども用いることが出来る。またさらにこれらのポリエーテル系グリコールの1種または2種以上を混合もしくは共重合させて使用するのもできる。
【0017】
ポリエステル系ジオールとしては、エチレンアジペート、ブチレンアジぺート、エチレン・ブチレンアジぺート、ポリカプロラクトンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとポリプロピレンポリオールの混合物をアジピン酸等と縮重合することにより得られる側鎖を有するポリエステルポリマジオールなどのポリエステル系グリコール、3,8−ジメチルデカン二酸およびは3,7−ジメチルデカン二酸からなるジカルボン酸成分とジオール成分とから誘導されるジカルボン酸エステル単位を含有するポリカーボネートジオール等が代表的なものである。
【0018】
これらポリマージオールのうち、特に、PTMG、および/または共重合PTMGが好ましい。
また、こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上を混合もしくは共重合させて用いてもよい。
【0019】
伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れたポリウレタン系弾性繊維を得る観点から、このポリマージオールの数平均分子量は1000〜8000の範囲にあるのが好ましく、1800〜6000の範囲にあるのがより好ましい。
【0020】
また、ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性体(カーボジイミド変性体、ウレタン変性体、ウレトジオン変性体など)及びこれらの2種以上の混合物などが好ましい。
【0021】
前記芳香族ジイソシアネートの具体例としては、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。
【0022】
前記脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどが好ましい。
【0023】
前記脂環族ジイソシアネートの具体例としては、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。
【0024】
前記芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが好ましい。
【0025】
これらのうち、各種用途において、最終製品の強度を向上させ、優れた耐熱性や強度を得る観点からは、芳香族ジイソシアネートが好ましく、特に好ましいものはMDIである。また、ポリウレタン弾性糸の黄変を抑制する観点からは脂肪族ジイソシアネートが好ましい。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
また鎖伸長剤として使用される低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが好ましい。これらの低分子量ジアミンから1種または2種以上を選択して使用すればよい。なかでも、伸度及び弾性回復性、さらに耐熱性に優れた弾性糸を得る観点からして、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンが好ましい。
【0027】
なお、ジアミン系鎖伸長剤として、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものを使用してもよい。これらの鎖伸長剤に、架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミンなどが効果が失われない程度に使用されてもよい。
【0028】
また鎖伸長剤として使用される低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1、3プロパンジオール、1、4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートなどが挙げられる。なかでも、エチレングリコール、1、3プロパンジオール、1、4ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。これらの低分子ジオールから1種または2種以上が選ばれて用いられる。
【0029】
上記した重合成分を適宜選定して重合しポリウレタンやポリウレタンウレアを製造し、さらに紡糸することにより、ポリウレタン弾性糸を製造することができる。
【0030】
本発明において用いるポリウレタン系弾性繊維には、適宜、各種の添加剤、安定剤などが含まれていてもよい。例えば、ハイドロタルサイト類化合物、フンタイト及びハイドロマグネサイト、トルマリンなどに代表される各種の鉱物、Ca、Mg、Zn、Al、Ba、Tiに代表される金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物などが、本発明の効果を損なわない範囲内で含まれていてもよい。
【0031】
また、これら無機系添加剤の糸中への分散性を向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリマージオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤またはこれらの混合物で表面処理された無機薬品を用いてもよい。
【0032】
さらに、これら弾性繊維には、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などとして、いわゆるBHTや住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80などをはじめとする両ヒンダードフェノール系薬剤、チバガイギー社製“チヌビン”等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業(株)製の“スミライザー”P−16等のリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料、フッ素系樹脂粉体またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などを添加してもよいし、またポリマと反応して存在させてもよい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるためには、酸化窒素捕捉剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN−150、熱酸化安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80等、光安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミソーブ”300#622などの光安定剤などを含有させることが好ましい。
【0033】
本発明において使用する熱接着性ポリアミド系フィラメント糸は、加熱により接着可能な糸であり、100℃〜150℃の融点を有する低融点ポリアミドのフィラメント糸が好ましい、低融点ポリアミドとして種々の共重合ナイロンがあるが、なかでも、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、及びナイロン12の4者の共重合体が好ましい。この共重合体からなるフィラメント糸として、東レ(株)製の“エルダー”[登録商標]などが使用できる。この“エルダー”は110℃から120℃の範囲に融点があり、繊維同士を熱接着させるために好適なものである。
【0034】
以下、本発明の被覆弾性糸について説明する。
【0035】
本発明の熱接着性被覆弾性糸は、芯糸となるポリウレタン系弾性繊維糸と、これを被覆する熱接着性ポリアミド系フィラメント糸とから構成される被覆弾性糸であり、カバリングや合撚のような一般的な被覆弾性糸製造方法によって製造することができる。
【0036】
この熱接着性被覆弾性糸は、伸縮性を有することが重要であり、そのためには、被覆弾性糸を製造する工程において芯糸(ポリウレタン系弾性繊維糸)にドラフトをかけつつ被覆する必要がある。この状態で熱接着性ポリアミド系フィラメント糸により被覆されることで、被覆弾性糸になった段階で、少なくともドラフト以上の伸度を有するものとなる。
【0037】
被覆弾性糸製造時における弾性繊維糸のドラフトは、ポリウレタン系弾性繊維糸を巻糸体から解舒しつつ供給するために、1.1倍以上が望ましく、さらに経済性を考慮すれば2.0倍以上であることが好ましい。
【0038】
また、そのドラフトの上限は、その弾性繊維糸の破断伸度等の特性に応じて設定すればよい。例えば、最大5倍伸びるポリウレタン弾性糸を芯糸に用いる場合は、ドラフトの上限は、5倍×85%=4.25倍まで設定することが可能である。通常、被覆工程における工程通過性、弾性糸の破断伸度のバラツキを考慮し、破断伸度の85%を上限ドラフトとすることが一般的である。
【0039】
上記したドラフトの範囲内で、最終製品に要求されるストレッチ性や経済性等を考慮し最適のドラフトを設定すればよい。
【0040】
本発明の熱接着性被覆弾性糸は、衛材用伸縮性積層シートを製造する工程で使用する際の工程通過性を良好とするためには、トルクをもたないこと、即ち無トルクであることが望ましい。
【0041】
例えば、シングルカバリングによって被覆弾性糸を製造する場合、得られる一重被覆弾性糸(SCYと略す)は被覆巻付け糸の解撚方向にトルクをもつので、このトルクによるヨリが多い場合はビリが発生し、工程通過性を悪化させる場合がある。
【0042】
これに対し、ダブルカバリングによる二重被覆弾性糸(DCYと略す)は、上ヨリと下ヨリのヨリ方向を逆向きとし、互いに発生するトルクを打ち消させ、無トルクに近い状態で被覆することが可能であるので、無トルクという点からするとDCYの方がより好ましい。
【0043】
但し、SCYであっても、ヨリ数を下げること、被覆糸の繊度を下げること、あるいは被覆糸の単糸繊度を下げること等によって、トルクを下げることができるので、工程通過性に支障を来さない程度までトルクを低減させることも可能である。
【0044】
また、弾性糸と合繊フィラメント糸をリング撚糸機で合撚する製法によってもSCYに近い構造の被覆弾性糸(一般的にFTYと呼ばれる)を製造できるので、この製法によって本発明の熱接着性被覆弾性糸を製造してもよい。
【0045】
被覆弾性糸の製造をいかなる方法で行う場合であっても、本発明の熱接着性被覆弾性糸は、伸縮可能であり、しかも、ポリウレタン系弾性繊維糸が芯に位置し、熱接着性ポリアミド系フィラメント糸が鞘に位置する芯鞘構造の被覆弾性糸である。このような糸構造をとるので、布帛や不織布のようなシート材の間に挟んで加熱することにより、接着剤塗布なしでも、シートと弾性糸とを熱接着させることができ、特に衛材用伸縮性複合シートを製造するために有用である。
【0046】
衛材用伸縮性複合シートは、本発明の熱接着性被覆弾性糸を伸長状態にしてシート間に挟み、120℃〜190℃の加熱ローラーを通過させる等の加熱手段により加熱して、シートと弾性糸とを熱接着させることにより製造されるものであり、得られる複合シートには、シート間の弾性糸が縮む(伸長回復する)ことによりシートにギャザーが形成される。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものでない。
【0048】
[実施例1]
糸条繊度が3730dtexのポリウレタン系弾性繊維糸(オペロンテックス(株)製、商品名”ライクラ”)を芯糸として供給し、糸条繊度が56dtexの低融点ナイロン糸(東レ(株)製、商品名”エルダー”)を鞘糸として供給し、カバリング機(片岡機械(株)製、SSD−230)で、ドラフト3.0、下ヨリ数400回/m(下ヨリ方向はSヨリ)、上ヨリ数350回/m(上ヨリ方向はZヨリ)の条件でダブルカバリングし、ポリウレタン系弾性繊維の重量比率が約90%の二重被覆弾性糸を製造した。
【0049】
得られた被覆弾性糸の巻糸体を縦置きした状態で、被覆弾性糸を500m/分の速度で解舒したところ、解舒糸のバルーン形状に乱れはなく、良好な解舒性を示した。
【0050】
この二重被覆弾性糸を、2枚のポリエチレンテレフタレート製不織布の間にドラフト3.5で供給して挟み込み、次いで、この積層不織布を180℃の熱ローラーに通して熱融着を生じさせ、伸縮性不織布を製造した。
【0051】
この伸縮性不織布では、鞘糸の低融点ナイロン糸によって、芯糸のポリウレタン糸と不織布とが接着していて、綺麗なギャザーが形成されており、伸縮性に富むものであった。
また、伸縮性不織布のギャザー形成部分を1cm幅にカットし、弾性糸をピンセットで引き抜こうとしたが、引き抜けなかった。また、不織布のカット面において、弾性糸のスリップ・インは起こらず、有効に接着していた。
【0052】
[実施例2]
糸条繊度が940dtexのポリウレタン系弾性繊維糸(オペロンテックス(株)製、商品名”ライクラ”)を芯糸として供給し、糸条繊度が56dtexの低融点ナイロン糸(東レ(株)製、商品名”エルダー”)を鞘糸として供給し、カバリング機(片岡機械(株)製、SSD−230)で、ドラフト4.0、下ヨリ数500回/m(下ヨリ方向はSヨリ)、上ヨリ数425回/m(上ヨリ方向はZヨリ)の条件でダブルカバリングし、ポリウレタン系弾性繊維の重量比率が約65%の二重被覆弾性糸を製造した。
【0053】
得られた被覆弾性糸の巻糸体を縦置きした状態で、被覆弾性糸を500m/分の速度で解舒したところ、解舒糸のバルーン形状に乱れはなく、良好な解舒性を示した。
【0054】
この二重被覆弾性糸を、実施例1と同様の条件で、2枚のポリエチレンテレフタレート製不織布の間に挟み込んで熱ローラーを通し、伸縮性不織布を製造した。
【0055】
この伸縮性不織布では、鞘糸の低融点ナイロン糸によって、芯糸のポリウレタン糸と不織布とが接着していて、綺麗なギャザーが形成されており、伸縮性に富むものであった。
また、伸縮性不織布のギャザー形成部分を1cm幅にカットし、弾性糸をピンセットで引き抜こうとしたが、引き抜けなかった。また、不織布のカット面において、弾性糸のスリップ・インは起こらず、有効に接着していた。
【0056】
[実施例3]
糸条繊度が310dtexのポリウレタン系弾性繊維糸(オペロンテックス(株)製、商品名”ライクラ”)を芯糸として供給し、糸条繊度が56dtexの低融点ナイロン糸(東レ(株)製、商品名”エルダー”)を鞘糸として供給し、カバリング機(片岡機械(株)製、SSD−230)で、ドラフト4.0、下ヨリ数400回/m(下ヨリ方向はSヨリ)、上ヨリ数350回/m(上ヨリ方向はZヨリ)の条件でダブルカバリングし、ポリウレタン系弾性繊維の重量比率が約40%の二重被覆弾性繊維を製造した。
【0057】
得られた被覆弾性糸の巻糸体を縦置きした状態で、被覆弾性糸を500m/分の速度で解舒したところ、解舒糸のバルーン形状に乱れはなく、良好な解舒性を示した。
【0058】
この二重被覆弾性糸を、実施例1と同様の条件で、2枚のポリエチレンテレフタレート製不織布の間に挟み込んで熱ローラーを通し、伸縮性不織布を製造した。
【0059】
この伸縮性不織布では、鞘糸の低融点ナイロン糸によって、芯糸のポリウレタン糸と不織布とが接着していて、綺麗なギャザーが形成されており、伸縮性に富むものであった。
また、伸縮性不織布のギャザー形成部分を1cm幅にカットし、弾性糸をピンセットで引き抜こうとしたが、引き抜けなかった。また、不織布のカット面において、弾性糸のスリップ・インは起こらず、有効に接着していた。
【0060】
[実施例4]
糸条繊度が940dtexのポリウレタン系弾性繊維糸(オペロンテックス(株)製、商品名”ライクラ”)を芯糸として供給し、糸条繊度が56dtexの低融点ナイロン糸(東レ(株)製、商品名”エルダー”)を鞘糸として供給し、カバリング機(片岡機械(株)製、SSD−230)で、ドラフト4.0、ヨリ数500回/m、ヨリ方向Zヨリの条件でシングルカバリングし、ポリウレタン系弾性繊維の重量比率が約80%の一重被覆弾性糸を製造した。
【0061】
得られた被覆弾性糸の巻糸体を縦置きした状態で、被覆弾性糸を500m/分の速度で解舒したところ、解舒糸のバルーン形状に乱れはなく、良好な解舒性を示した。
【0062】
この一重被覆弾性糸を、実施例1と同様の条件で、2枚のポリエチレンテレフタレート製不織布の間に挟み込んで熱ローラーを通し、伸縮性不織布を製造した。
【0063】
この伸縮性不織布では、鞘糸の低融点ナイロン糸によって、芯糸のポリウレタン糸と不織布とが接着していて、綺麗なギャザーが形成されており、伸縮性に富むものであった。
また、伸縮性不織布のギャザー形成部分を1cm幅にカットし、弾性糸をピンセットで引き抜こうとしたが、引き抜けなかった。また、不織布のカット面において、弾性糸のスリップ・インは起こらず、有効に接着していた。
【0064】
[比較例1]
糸条繊度が3730dtexのポリウレタン系弾性繊維糸(オペロンテックス(株)製、商品名”ライクラ”)を芯糸として供給し、糸条繊度が56dtexの低融点ナイロン糸(東レ(株)製、商品名”エルダー”)を鞘糸として供給し、カバリング機(片岡機械(株)製、SSD−230)で、ドラフト4.0、下ヨリ数200回/m(下ヨリ方向はSヨリ)、上ヨリ数170回/m(上ヨリ方向はZヨリ)の条件でダブルカバリングし、ポリウレタン系弾性繊維の重量比率が約95%の二重被覆弾性糸を製造した。
【0065】
得られた一重被覆弾性糸を、実施例1と同様の条件で、2枚のポリエチレンテレフタレート製不織布の間に挟み込んで熱ローラーを通し、伸縮性不織布を製造した。
【0066】
この伸縮性不織布には綺麗なギャザーが形成されており、伸縮性に富むものであった。しかし、得られた伸縮性不織布のギャザー形成部分を1cm幅にカットし、弾性糸をピンセットで引っぱった引き抜くことができた。また不織布のカット面において、弾性糸のスリップ・インが見られた。
【0067】
[比較例2]
糸条繊度が310dtexのポリウレタン系弾性繊維糸(オペロンテックス(株)製、商品名”ライクラ”)を芯糸として供給し、糸条繊度が110dtexの低融点ナイロン糸(東レ(株)製、商品名”エルダー”)を鞘糸として供給し、カバリング機(片岡機械(株)製、SSD−230)で、ドラフト4.0、下ヨリ数1000回/m(下ヨリ方向はSヨリ)、上ヨリ数850回/m(上ヨリ方向はZヨリ)の条件でダブルカバリングし、ポリウレタン系弾性繊維の重量比率が約20%の二重被覆弾性糸を製造した。
【0068】
得られた被覆弾性糸の巻糸体を縦置きした状態で、被覆弾性糸を500m/分の速度で解舒したところ、解舒糸のバルーン形状に乱れはなく、良好な解舒性を示した。
【0069】
この二重被覆弾性糸を、実施例1と同様の条件で、2枚のポリエチレンテレフタレート製不織布の間に挟み込んで熱ローラーを通し、伸縮性不織布を製造した。
この伸縮性不織布にはギャザーが形成されていたが、伸縮性が劣るものであった。
【0070】
また、伸縮性不織布のギャザー形成部分を1cm幅にカットし、弾性糸をピンセットで引き抜こうとしたが、引き抜けなかった。また、不織布のカット面において、弾性糸のスリップ・インは起こらず、有効に接着していた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の熱接着性被覆弾性糸は、伸縮性付与機能を有する弾性繊維糸として広汎な用途で使用することができる。特に、弾性繊維糸と他の非弾性素材を組合わせ、両者を接着させて伸縮品を製造する用途(例えば、紙オムツ等の衛材用の伸縮性複合シートの用途)に特に好適である。即ち、弾性糸によりシートにギャザーを形成させて衛材用伸縮性複合シートを製造する用途等に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン系弾性繊維糸に熱接着性ポリアミド系フィラメント糸がカバリングされた被覆弾性糸であって、ポリウレタン系弾性繊維の含有率が35〜90重量%であることを特徴とする熱接着性被覆弾性糸。
【請求項2】
熱接着性ポリアミド系フィラメント糸が100℃〜150℃の融点を有する低融点ポリアミドのフィラメント糸であることを特徴とする請求項1に記載の熱接着性被覆弾性糸。
【請求項3】
熱接着性ポリアミド系フィラメント糸を異なるヨリ方向でダブルカバリングさせてなる二重被覆弾性糸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱接着性被覆弾性糸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱接着性被覆弾性糸を伸長状態にしてシート間に挟み、120℃〜190℃で加熱して熱接着させることにより伸縮性積層シートを製造することを特徴とする衛材用伸縮性積層シートの製造方法。

【公開番号】特開2006−169679(P2006−169679A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365353(P2004−365353)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】