説明

熱放出ナノ物質

本発明は、(a)金属、金属カルコゲン、金属プニコゲン、合金またはこれらを含有する多成分混成構造体から1種以上選択された第1物質と、(b)金属、金属カルコゲン、金属プニコゲン、合金またはこれらを含有する多成分混成構造体から1種以上選択されて、前記第1物質に接合された第2物質と、を含み、前記第1物質または第2物質の中、少なくとも一つは、磁性物質を含むヘテロ構造(hetero-structure)のナノ物質を含む熱放出組成物に関する。本発明の熱放出用ナノ物質は、既存の知られたナノ物質に比べ、画期的に増加された熱放出係数(商用化されたFeridexより40倍増加)を示し、ナノ物質の大きさと、第1物質と第2物質の組成、または比率を調節することにより、熱放出係数を調節することができる。本発明の熱放出ナノ物質は広範囲に応用できて、一つの効果的な例として、癌細胞死滅に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ構造を有する熱放出ナノ物質に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ物質(nanomaterial)は、減少された大きさにより、バルク物質(bulkmaterial)と異なる新しい物理的/化学的性質を示す。また、ナノ物質に対するたくさんの研究により、大きさだけではなく、物質の組成や形も調節できるようになり、ナノ領域における物理的/化学的特性を、バルク領域でのように調節することができるようになった。このような新しい特性を利用し、現在ナノ物質は、化学反応の触媒、次世代ナノ素子の製作、新しいエネルギー開発、そして医/生命科学との結合(ナノメディスン)による癌診断及び治療分野までその応用性を広げ、その他にも多様な分野で広範囲に応用されている。
【0003】
その中でも磁性ナノ物質は、それらが持っている独特の磁気的性質により、高周波磁場を周辺に与えると、1)液体中に分散されているナノ物質自体の回転現象によるBrownian Relaxation現象と、2)ナノ物質内部spinのエネルギー障壁(E = KV, K =非等方常数、V=ナノ物質の容量)により生じるNeel Relaxation現象により、磁性ナノ物質から熱が発生するようになる(J. Mater. Chem. 2004, 14, 2161-2175.)。このように生成された熱を利用して、磁性ナノ物質は、多様な熱発生装置あるいは技術に利用できる。特に、医療分野では、磁性ナノ物質に強力な高周波を加えて生成される熱を、癌を始めとした疾病治療(hyperthermia)に使用している。
【0004】
磁性ナノ物質により発生された熱は、熱放出係数(SLP = specific loss power)を通じて定量化できる。そして熱放出係数は、R. E. Rosensweig J. Magn. Magn. Mater. 2002, 252, 370-374.を参考すれば分かるように、物質の多様な要因により決定されるが、特に、
1.スピン非等方性(spin anisotropy)、
2.飽和磁化率(saturation magnetism, Ms
によりその値が決定される。
【0005】
これと関連し、多様な研究チームが、高い熱放出係数を有するナノ物質を開発するために鋭意研究している。現在までのこのようなナノ物質を利用した熱放出応用事例は、以下のようである。
【0006】
米国特許第7282479号は、高温治療物質(hyperthermia agents)として、磁性ナノ物質のフェライト(ferrite)、マグネタイト(magnetite)あるいはパーマロイ(permalloy)を癌細胞治療に利用することを開示している。
【0007】
米国特許出願公開第20050090732号は、酸化鉄を利用した標的指向的高温治療を開示している。
【0008】
米国特許第6541039号は、鉄酸化物コア周辺にシリカ、またはポリマーを利用してコーティングして、これを高温治療に利用することを開示している。
【0009】
WO2006/102307は、貴金属でコーティングされた磁性ナノ物質コアに、金属ではない他の有機物シェルを包んで、再び抗体、または蛍光物質でシェル層を包んだ後、これを高温治療に利用することを開示している。
【0010】
しかしながら、米国特許第7282479号及び米国特許出願公開第20050090732号で提示するナノ物質は、単一構造の磁性ナノ物質を利用した癌治療に関するものである。また、前記特許は、磁性ナノ物質の熱放出係数を増加させる目的よりは、既存に開発された磁性物質にターゲッティング物質を付着し、標的指向癌治療物質を開発することにその目的があった。
【0011】
また、米国特許第6541039号及びWO2006/102307の場合、多重シェルでコーティングされた熱放出ナノ物質を提示しているが、シェルをなす構成成分が、コアの磁性ナノ物質の熱放出係数を高めることに寄与してはいない。
【0012】
今まで熱放出係数を増加させることができなかった代表的な理由は、ナノ物質の大きさ、形そして組成による物理的/化学的性質の変化に対する数多い研究が単純構造ナノ物質に対するものであって、その機能性や安定性において相当な制約を有しているからである。したがって、このような問題を克服するための一つの代案であるヘテロ構造のナノ複合体の場合、単純構造ナノ物質に比べ、画期的に増加された高機能性と多機能性を有している。例えば、CdSe@ZnS(Nano Lett. 2001, 1, 207-211.)、CdSe@CdS(J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7019-7029.)ナノ複合体は、単純構造ナノ物質に比べ、増加された光学的特性と安全性を示し、FePt@Fe3O4(Nano Lett. 2004, 4, 187-190.)ナノ複合体は、新しい磁気的特性を示す。このようにヘテロ構造からなるナノ複合体物質の場合、構成成分間の相互作用により、単純構造ナノ物質から観察できなかった新しい光学的、磁気的そして化学的性質を示すようになる。
【0013】
上述のように、磁性物質を利用した高温治療に対する数多い研究がなされているが、今まで利用された単一磁性ナノ物質は、制限された物理的/化学的特性により、熱放出係数を増加させるに限界があった。したがって、本発明で明示されているコア−シェル構造のヘテロ構造ナノ物質は、画期的な熱放出効果を示すことにより、新しい代案として提示できる。
【0014】
本明細書全体にかけて多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、高周波磁場の中で既存の単一磁性ナノ物質が有していた低い熱放出係数を克服し、画期的に増加された熱放出係数を示すナノ物質を開発するために鋭意研究した。その結果、ナノ物質を製造することにおいて、ヘテロ構造を有するようにすると、既存の制限された物理的/化学的性質を有した単純構造ナノ物質の限界を克服して、その物理的/化学的性質を著しく増加させることができる。
【0016】
本発明者らは、ヘテロ構造を構成する第1物質と第2物質の中、少なくとも一つの構造には磁性物質が含まれるように製造すると、第1物質と第2物質間のスピン相互作用により物質のスピン非等方性と飽和磁化率が増加して、既存に使用された単一磁性ナノ物質に比べ、画期的に増加された熱放出係数(商用化されたFeridexより40倍増加)を示すことを確認して、本発明を完成した。
【0017】
したがって、本発明の目的は、ヘテロ構造のナノ物質を含む、画期的に増加された熱放出組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、温熱療法(hyperthermia)用組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一様態によると、本発明は、(a)金属、金属カルコゲン(calcogen, 16族)、金属プニコゲン(pnicogen, 15族)、合金またはこれらを含有する多成分混成構造体から1種以上選択された第1物質と、(b)金属、金属カルコゲン、金属プニコゲン、合金またはこれらを含有する多成分混成構造体から1種以上選択されて、前記第1物質に接合された第2物質と、を含み、前記第1物質または第2物質の中、少なくとも一つは、磁性物質を含むヘテロ構造(hetero-structure)のナノ物質を含む熱放出用組成物を提供する。
【0021】
その結果、ナノ物質を製造することにおいて、ヘテロ構造を有するようにして、第1物質と第2物質とから構成するが、第1物質と第2物質の中、少なくとも一つの構造には磁性物質が含まれるように製造して、画期的に増加された(商用化されたFeridexより40倍増加)熱放出量を示すナノ物質が製造されることを確認した。
【0022】
本発明の最も大きい特徴の一つは、熱放出用ナノ物質を、単一あるいは多成分磁性ナノ物質を含むヘテロ構造を有するようにしたことである。これは、単純構造磁性ナノ物質のみによる熱放出量よりは、ヘテロ構造を有するナノ物質による熱放出量がより一層大きいという本発明者らの発見に基づく。
【0023】
前記第1物質と第2物質は、いずれも金属、金属カルコゲン、金属プニコゲン、合金またはこれらを含有する多成分混成構造体を含み、第1物質と第2物質の中、少なくとも一つは、磁性物質である。
【0024】
前記第1物質または第2物質をなす金属は、遷移金属、ランタン族金属またはアクチニウム族金属である。より好ましくは、金属ナノ物質は、Co、Mn、FeまたはNiで構成された群から選択される遷移金属、またはNd、Gd、Tb、Dy、Ho、ErまたはSmから構成された群から選択されるランタン族またはアクチニウム族金属から選択されるか、またはその多成分混成構造体である。
【0025】
前記第1物質または第2物質をなす金属カルコゲンは、MまたはM(MまたはMは、それぞれ独立して、1族金属元素、2族金属元素、遷移金属元素、13族−15族元素の中の金属または半金属元素、ランタン族またはアクチニウム族金属元素から1種以上選択される元素、Aは、O、S、Se、Te、Poから選択される元素;0≦x≦32、0≦y≦32、0<z≦8)、またはその多成分混成構造体である。
【0026】
より好ましくは、前記金属カルコゲンは、MまたはMナノ物質(Ma=Ba, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, Hg, Nb, Mo, Zr, W, Pd, Ag, PtまたはAuから構成された群から選択される遷移金属、Ga, In, Sn, Pb, Biから構成された群から選択される13族−15族元素、またはGd, Tb, Dy, Ho, Er, SmまたはNdから構成された群から選択されるランタン族またはアクチニウム族金属元素から1種以上選択される元素、Mb=1族金属元素、2族金属元素、遷移金属元素、13族〜15族元素の中の金属及び半金属元素、ランタン族及びアクチニウム族金属元素から構成された群から1種以上選択される元素、Aは、O、S、Se、Te、Poから選択される元素;0≦x≦32、0<y≦32、0<z≦8)、またはその多成分混成構造体である。
【0027】
さらに好ましくは、金属カルコゲンは、MまたはM(Ma=Ba, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Nb, Pd, Ag, Pt及びAuから構成された群から選択される遷移金属元素、そしてGd, Tb, Dy, Ho, Er, Sm及びNdから構成された群から選択されるランタン族及びアクチニウム族元素から1種以上選択される元素、Mb=1族金属元素(LiまたはNa)、2族金属元素(Be, Ca, Mg, Sr, BaまたはRa)、13族元素(GaまたはIn)、14族元素(SiまたはGe)、15族元素(As、SbまたはBi)、16族元素(S, SeまたはTe)、遷移金属(Sr, Ti, V, Cu, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd, Ag, Cd,Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, AuまたはHg)、ランタン族及びアクチニウム族金属元素(La, Ce, Pr,Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, TmまたはYb)から構成された群から1種以上選択される元素;0<x≦16、0≦y≦16、0<z≦8)、またはその多成分混成構造体である。
【0028】
最も好ましくは、金属カルコゲンは、MhxFeyOz(Mh =Ba, Zn, Mn, Fe, CoまたはNiを含む遷移金属から選択される1種以上の金属元素; 0<x≦8, 0≦y≦8, 0≦z≦8)、ZnwMixFeyOz (Mi =1族元素、2族元素、13族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される1種以上の金属元素;0<w≦8, 0≦x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8)、またはMaxOy(Ma =Ba, Zn, Mn, Fe, CoまたはNiを含む遷移金属、Gd, Tb, Dy, HoまたはErを含むランタン族元素からなる群から選択される1種以上の金属元素、0<x≦16, 0≦y≦8)である。
【0029】
前記金属プニコゲンは、好ましくは、MまたはM(MまたはMは、それぞれ独立して、1族金属元素、2族金属元素、遷移金属元素、13族−14族元素の中の金属または半金属元素、ランタン族及びアクチニウム族金属元素から選択される元素、Aは、N、P、As、Sb、Biから選択される1種以上の元素;0<x≦40、0<y≦40、0<z≦8)、またはその多成分混成構造体である。
【0030】
より好ましくは、前記金属プニコゲンは、MまたはM(Mは、Ba, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, Hg, Nb, Mo, Zr, W, Pd, Ag, Pt及びAuから構成された群から選択される遷移金属元素、Ga, In, Sn, Pbから構成された群から選択される13、14族元素、またはGd, Tb, Dy, Ho, Er, Sm及びNdから構成された群から選択されるランタン族及びアクチニウム族金属元素から選択される元素、M=1族金属元素、2族金属元素、遷移金属元素、13族、14族元素の中の金属及び半金属元素、ランタン族及びアクチニウム族金属元素から構成された群から1種以上選択される元素、Aは、N、P、As、Sb、Biから選択される元素;0<x≦40、0<y≦40、0<z≦8)、またはその多成分混成構造体である。
【0031】
第1物質または第2物質をなす物質が合金である場合、好ましくは、前記合金は、MまたはM(M=Ba, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Nb, Mo, Zr, Te, W, Pd, Ag, PtまたはAuからなる群から選択される遷移金属元素、そしてGd、Tb、Dy、Ho、Er、SmまたはNdからなる群から選択されるランタン族及びアクチニウム族元素から1種以上選択される元素;MまたはMは、それぞれ独立して、1族金属元素、2族金属元素、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属元素、ランタン族及びアクチニウム族元素からなる群から1種以上選択される元素;0<x≦20、0<y≦20、0≦z≦20)である。好ましくは、MまたはM(Me、MfまたはMgは、それぞれ独立して、Co, Fe, Mn, Ni, Mo, Si, Al, Cu, Pt, Sm,B, Bi, Cu, Sn, Sb, Ga, Ge, Pd, In,Au,Ag,Yから構成された群から1種以上選択される元素;0<x≦20、0≦y≦20、0≦z≦20)である。
【0032】
本発明のより好ましい具現例によると、第1物質または第2物質は、
1)金属ナノ物質M(M = Ba, Cr, Mn, Fe, Co, Zn, Nb, Mo, Zr, Te, W, Pd, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, SmまたはNd)、
2)金属カルコゲンMhxFeyOz(Mh =Ba, Zn, Mn, Fe, Co及びNiから構成された群から選択される1種以上の遷移金属元素; 0<x≦8, 0≦y≦8, 0≦z≦8)、ZnxFeyOz (0<x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8)、ZnwMixFeyOz (Mi =1族元素、2族元素、13族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される1種以上の金属元素;0<w≦8, 0≦x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8であり)、またはMaxOy(Ma =Ba, Zn, Mn, Fe, CoまたはNiを含む遷移金属、Gd, Tb, Dy, HoまたはErを含むランタン族元素からなる群から選択される1種以上の金属元素、0<x≦16, 0≦y≦8)、または、
3)合金MexMfyまたはMexMfyMgz(Me, MfまたはMgは、それぞれ独立して、Co, Fe, Mn, Ni, Mo, Si, Al, Cu, Pt, Sm, B, Bi, Cu, Sn, Sb, Ga, Ge, Pd, In, Au, Ag,Yからなる群から1種以上選択される元素;0<x≦20, 0≦y≦20, 0≦z≦20)、
4)YCO5, MnBiまたはBaFe12O19
または、これらの多成分混成構造体である。
【0033】
さらに好ましくは、前記第1物質または第2物質は、それぞれ独立して、MhxFeyOz(Mh =Ba, Zn, Mn, Fe, CoまたはNi;0<x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8)、ZnxFeyOz (0<x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8)、ZnwMixFeyOz(Mi =1族元素、2族元素、13族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される1種以上の金属元素;0<w≦8, 0≦x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8)、YCO5、MnBiまたはBaFe12O19から一つ以上選択されることを特徴とする。
【0034】
本発明の好ましい具現例によると、前記第1物質及び第2物質は、いずれも1種以上の磁性物質を含む。この場合、好ましくは、第1物質及び第2物質の磁性物質は、互いに異なっている。
【0035】
本発明の好ましい具現例によると、第1物質と第2物質は、いずれもMhxFeyOz(Mh =Ba, Zn, Mn, Fe, Co及びNiから構成された群から選択される1種以上の金属、0≦x≦16, 0<y≦16, 0<z≦8)、ZnxFeyOz (0<x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8)、ZnwMixFeyOz(Mi =1族元素、2族元素、13族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される1種以上の元素;0<w≦16, 0≦x≦16, 0<y≦16, 0<z≦8)、YCO5、MnBiまたはBaFe12O19を含む。この場合、第1物質及び第2物質をなす磁性物質は、互いに異なっていることが好ましい。
【0036】
より好ましくは、第1物質または第2物質の一つは、YCO5、MnBi、BaFe12O19、CoFe2O4を含むことを特徴とする。
【0037】
本明細書で使用される用語、‘へテロ構造’は、互いに異なる特性を有する2物質以上が互いに結合して形成された構造を意味する。本発明のヘテロ構造ナノ物質は、当業界に公知された多様なヘテロ構造を有することができる。好ましくは、本発明のナノ物質は、コア−シェルまたはコア−多重シェルを含む0次元構造;バーコード、コア−シェル同軸(coaxial)棒、またはコア−多重シェル同軸棒を含む1次元構造;多成分シート形態を含む2次元構造;そしてダンベル構造、亜鈴構造、またはマルチポッド構造などを含む3次元構造を含む。最も好ましくは、本発明のナノ物質は、コア−シェルまたはコア−多重シェル構造を有する。
【0038】
本発明の熱放出ナノ物質は、好ましくは、1〜1000nm、より好ましくは、2〜500nmの大きさを有する。
【0039】
本発明のヘテロ構造のナノ物質は、大きさ、第1物質または第2物質の組成または比率を調節することにより、熱放出係数を調節することができる。例えば、コア−シェル構造の場合、シェルの厚さまたは層数を調節することにより、熱放出係数を調節することができる。
【0040】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のナノ物質は、2〜20000W/gのSLP(specific loss power)値を有して、より好ましくは、50〜10000W/g、さらに好ましくは、100〜5000W/g、最も好ましくは、200〜5000W/gの熱放出係数値を有する。
【0041】
本発明の好ましい具現例によると、ヘテロ構造のナノ物質に生物活性物質(例えば、抗体、蛋白質、抗原、ペプチド、核酸、酵素、細胞など)、または化学活性物質(例えば、単分子、高分子、無機物質、蛍光体、薬物など)が付着されて使用できる。
【0042】
前記生物活性物質は、抗体、蛋白質、抗原、ペプチド、核酸、酵素、細胞などを含む。好ましくは、蛋白質、ペプチド、DNA、RNA、抗原、ハプテン(hapten)、アビジン(avidin)、ストレプタビジン(streptavidin)、ニュートラビジン(neutravidin)、プロテインA、プロテインG、レクチン(lectin)、セレクチン(selectin)、ホルモン、インターロイキン、インターフェロン、成長因子、腫瘍壊死因子、エンドトキシン、リンフォトキシン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲン活性剤、加水分解酵素、酸化-還元酵素、分解酵素、異性化酵素と合成酵素などの生体活性酵素、酵素共因子または酵素抑制剤などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記化学活性物質は、多様な機能性単分子、高分子、無機支持体、蛍光有機物質あるいは薬物などを含む。
【0044】
前記単分子の例は、抗癌剤、抗生剤、ビタミン、葉酸を含む薬物、脂肪酸、ステロイド、ホルモン、プリン、ピリミジン、単糖類及び二糖類などを含むが、これらに限定されるものではない。前記単分子は、側鎖に-COOH, -NH2, -SH, -SS-, -CONH2, -PO3H, -OPO4H2, -PO2(OR1)(OR2) (R1, R2 = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -SO3H, -OSO3H, -NO2, -CHO, -COSH, -COX, -COOCO-, -CORCO- (R = ClHm, 0≦l≦3, 0≦m≦2l+1), -COOR, -CN, -N3, -N2, -NROH (R = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -NR1NR2R3 (R1,R2,R3 = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -CONHNR1R2 (R1, R2 = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -NR1R2R3X’ (R1, R2, R3 = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, X’ = F-, Cl-, Br-またはI-, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -OH, -SCOCH3, -F, -Cl, -Br, -I, -SCN, -NCO, -OCN, -エポキシ,-HN-NH2, -HC=CH-または-C≡C-群から選択される一つ以上の作用基を含むことを特徴とする。
【0045】
前記生体活性化学高分子の例は、デキストラン、カルボデキストラン、ポリサッカロイド、シクロデキストラン、プルラン、セルロース、デンプン、グリコゲン、カルボヒドレート、単糖類、二糖類またはオリゴ糖類、ポリホスファゲン、ポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリマレイン酸及びポリマレイン酸の誘導体、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリヒドロオキシブチレート、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコール、ポリ−L−リジン、ポリグリコリド、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルエーテルメタクリレートまたはポリビニールピロリドンなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0046】
前記生体活性無機物質の例は、金属酸化物、金属カルコゲン化合物、金属プニコゲン、無機セラミック物質、炭素物質、II/VI族、III/V族、及びIV族半導体、金属、またはこれの複合体などである。好ましくは、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、インジウムチンオキシド(ITO)、ナノチューブ、黒鉛、フラーレン、CdS, CdSe, CdTe, ZnO, ZnS, ZnSe, ZnTe, Si,GaAs, AlAs, Au, Pt, Ag, Cuなどがある。
【0047】
前記生体活性蛍光物質の例は、フルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ルシファーイエロー、B-フィトエリトリン、9-アクリジンイソチオシアネート、ルシファーイエローVS、4-アセトアミド-4’-イソチオ-シアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアトフェニル)-4-メチルクマリン、スクシニミジル-ピレンブチレート、4-アセトアミド-4’-イソチオ-シアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸誘導体、LCTM-Red 640、LCTM-Red 705、Cy5、Cy5.5、レサミン、イソチオシアネート、エリスロシンイソチオシアネート、ジエチルトリアミンペンタアセテート、1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホネート、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホネート、2-p-トルイジニル-6-ナフタレンスルホネート、3-フェニル-7-イソシアネートクマリン、9-イソチオシアネートアクリジン、アクリジンオレンジ、N-(p-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル)メレイミド、ベンゾオキサジアゾール、スチルベンまたはピレンなど、蛍光有機物質を含むが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明により開発されたナノ物質は、画期的に優れた熱放出係数を示すことにより、各種発熱装置に使用が可能であり、医生物学的目的としては、高温治療、または薬物放出などの用途に使用が可能である。より詳細には、本発明の熱放出ナノ物質は、癌治療、痛み緩和、血管治療、骨回復、薬物活性化、または薬物放出などの用途に使用できる。
【0049】
下記の実施例から分かるように、本発明の熱放出用ナノ物質は、大きく向上された熱放出係数を示し、従来の商用化されたFeridex(熱放出係数=78W/g)と比較しても、非常に高い熱放出係数(40倍増加された熱放出係数を示す;MnFe2O4@CoFe2O4, 3034W/g)を示す。本発明の温熱療法用ナノ物質の高い熱放出係数は、少ない量でも、標的とする細胞(例えば、癌細胞)を死滅させることができる。
【0050】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明の熱放出用組成物を含む温熱療法(hyperthermia)用組成物を提供する。
【0051】
本発明の温熱療法用組成物は、上述の本発明の熱放出ナノ物質を有効成分として含むため、その共通する内容は、本明細書の過度なる複雑性を避けるために、その記載を省く。
【0052】
本発明の温熱療法用組成物は、通常的に薬剤学的組成物として提供される。したがって、本発明の温熱療法用組成物は、薬剤学的に許容される担体を含む。薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、またはミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。適した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences(19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0053】
本発明の温熱療法用組成物は、非経口方式で投与されることが好ましい。非経口投与をする場合、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、または病巣内(intralesional)注入などで投与できる。本発明の組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により様々に処方できる。本発明の温熱療法用組成物は、治療学的有効量の熱放出用組成物を含む。用語‘治療学的有効量’は、治療目的の疾患を治療できる充分な量を意味し、一般に0.0001〜100mg/kgである。
【0054】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、またはカプセル剤の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0055】
本発明の温熱療法用組成物は、特に、癌治療に有用である。例えば、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮頸部癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌及び尿管癌などのような多様な癌疾患において、癌細胞の死滅を効果的に誘導することができる。
【0056】
本発明の温熱療法用組成物は、適した投与経路で患者に投与された後、高周波の磁場が付加されて、これにより熱が発生される。1kHz乃至10MHzの振動数を有する電磁波の高周波の磁場が利用できる。
【発明の効果】
【0057】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下のようである:
(I)本発明の熱放出用ナノ物質は、ヘテロ構造を有する。
(ii)本発明の熱放出用ナノ物質は、大きく向上された熱放出係数(商用化されたFeridexより40倍増加)を示す。
(iii)本発明の熱放出用ナノ物質は、大きさ、第1物質または第2物質の組成または比率などを調節することにより、熱放出係数を調節することができる。
(iv)本発明の熱放出用ナノ物質は、熱放出用装置または目的で使用が可能であり、一例として、癌細胞の死滅に有効な効能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】合成されたフェライトナノ物質のTEMイメージである。図1のa〜dは、酸化鉄ナノ物質(Fe3O4)、e〜hは、マンガンフェライト(MnFe2O4)、i〜lは、ニッケルフェライト(NiFe2O4)、m〜pは、コバルトフェライト(CoFe2O4)であって、それぞれの大きさは、順に6、9、12及び15nmを有して、均一な大きさ分布度(δ<10%)を示す。
【図2】合成された亜鉛含有フェライトナノ物質のTEMイメージである。図2のa〜eは、多様な組成(x=0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)の亜鉛が含まれた酸化鉄ナノ物質であり、f〜jは、多様な組成(x=0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)の亜鉛が含まれたマンガンフェライトナノ物質である。全てのナノ物質の大きさは、15nmであり、均一な大きさ分布度(δ<10%)を示す。
【図3】合成された酸化鉄ナノ物質の交流磁場下で、時間による温度変化を示すグラフである。
【図4】合成された磁性ナノ物質(MFe2O4(M = Mn, Fe, Ni, Co)、Zn0.4Mn0.8Fe2O4、Zn0.4Fe0.8Fe2O4)の大きさ別、成分別の熱放出係数を測定したものである。
【図5】合成されたコア−シェルタイプへテロ磁性ナノ物質のTEMイメージである。
【図6】合成されたコア−シェルタイプへテロ磁性ナノ物質の熱放出係数を測定したものである。商用化されたナノ物質のFeridexとCLIOと比較した時、コア−シェルタイプのヘテロ磁性物質は、画期的に優れた熱放出効果を示すことが分かる。
【図7】合成されたコア−シェルタイプへテロ磁性ナノ物質と商用ナノ物質のFeridexの癌治療効果(癌細胞死滅率)を比較したものである。商用ナノ物質のFeridexと比較し、コア−シェルタイプへテロ磁性ナノ物質(MnFe2O4@CoFe2O4)の癌治療効果が8倍以上優れていることが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0060】
実施例1:大きさと組成が異なる磁性ナノ物質の製造
実施例で利用された金属酸化物ナノ物質は、本発明者らが出願した大韓民国特許第0604975号及びPCT/KR2004/003088に記載の方法によって合成した。ナノ粒子の前駆物質であるMCl2(M = Mn2+, Fe2+, Ni2+, Co2+, Zn2+)(Aldrich, USA)とFe(acac)3(Aldrich, USA)を、オレイン酸(Aldrich, USA)及びオレイルアミン(Aldrich, USA)がキャッピング分子としてそれぞれ4mmol含有されたトリオクチルアミン(Aldrich, USA)溶媒に全て添加した。次いで、アルゴン(Ar)下で200℃で反応して、再び300℃で反応した。このような方法で合成されたナノ物質は、過量のエタノールで沈殿させて、沈殿されたナノ物質を再びトルエンで再分散させてコロイド溶液を得た。ナノ物質の大きさは、反応に添加するオレイン酸とオレイルアミンのモル数を変化させると、容易に大きさを調節することができた。また、初期反応物であるFe(acac)3とMCl2(M = Mn2+, Fe2+, Ni2+, Co2+, Zn2+)の添加比率を変化させながら、同様に組成も容易に変化させることができた。
【0061】
このような方法で合成されたナノ物質は、均一な大きさの球状を有しており、ナノ物質の特性は、TEM(Transmission Electron Microscopy)及びEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)で分析した。合成されたナノ物質のTEM写真は、図1及び図2に示されている。
【0062】
実施例2:大きさと組成が異なる磁性ナノ物質の熱放出係数比較
相異なる大きさと組成からなる磁性ナノ物質の熱放出係数を体系的に比較するために、同一な濃度条件下で、大きさと組成が相異なる磁性ナノ物質に高周波磁場を加えて、放出される熱量を測定した。磁性ナノ物質は、交流磁場(周波数:500kHz、電流:35A)において5cm直径のコイルに5mg/mL濃度の溶液状態で時間による温度変化を測定し(図3)、これに基づいて熱放出係数を測定することができた。
【0063】
ナノ物質の大きさまたは組成によって熱放出係数は変わるようになる。まず、大きさによる結果をみると、MnFe、NiFe物質の場合、大きさが増加するほど、熱放出係数が増加する傾向性を示した。しかしながら、Feは、6nmから12nmまでは増加するが、12nm以上では再び減少される結果を示した。CoFe物質の場合、9nm大きさ以上では減少して、15nmになると再び増加する結果を示した。
【0064】
また、同一な大きさでも、組成によって異なる結果を示すことが分かった。例えば、15nm大きさの酸化鉄とマンガンフェライトに亜鉛が添加された時、その熱放出係数が変わることが分かる。このような結果に基づいて分析した結果、熱放出係数に、大きさと組成が強く影響を与えることが分かる。
【0065】
ナノ物質の大きさと組成によって測定された熱放出係数は、図4に示した。
【0066】
実施例3:ヘテロ構造のナノ物質の製造(コア-シェル構造)
本実施例で利用された金属酸化物ナノ物質を含むヘテロ構造の熱放出ナノ物質は、全体15nmのコア−シェル大きさを有するフェライトナノ物質であって、本発明者らが出願した大韓民国特許第0604975号及びPCT/KR2004/003088に記載の方法によって合成した。
【0067】
まず、第1物質は、実施例1で提示した方法により合成されて、このような方法により合成された9nmのナノ物質を利用して、次のような実験方法を通じて15nm大きさのヘテロ構造コア−シェルナノ物質を合成することができる。9nm大きさを有するコアナノ物質を前駆物質のMCl2(M = Mn2+, Fe2+, Ni2+, Co2+, Zn2+)とFe(acac)3、そしてオレイン酸及びオレイルアミンがキャッピング分子としてそれぞれ4mmol含有されたトリオクチルアミン溶媒に全て添加した後、同一な方法によりアルゴン下で200℃で反応して、再び300℃で反応した。このような種子媒介方法(seed-mediated method)を利用して合成したナノ物質は、15nmのコア−シェル大きさを有する。分離過程は、コアナノ物質を合成する時と同一な方法で進行した。
【0068】
コア−シェルタイプへテロ構造ナノ物質は、使用する第1物質と選択する金属前駆物質の組成によって多様に変化する。例えば、CoFe2O4@Fe3O4, CoFe2O4@MnFe2O4, CoFe2O4@Zn0.4Fe0.6Fe2O4,CoFe2O4@Zn0.4Mn0.6Fe2O4, MnFe2O4@CoFe2O4, Fe3O4@CoFe2O4及びFe3O4@MnFe2O4を効果的に合成することができた。合成されたナノ物質は、均一な大きさの球状の形態を有しており、ナノ物質の特性は、TEM及びEDSで分析した。合成されたナノ物質のTEM写真は図5に示されている。
【0069】
実施例4:ヘテロ構造のナノ物質の熱放出係数分析
実施例3で合成されたナノ物質に対して、実施例2と同様な方法により熱放出係数を測定した。15nm大きさのCoFe2O4@Fe3O4, CoFe2O4@MnFe2O4, MnFe2O4@CoFe2O4, Fe3O4@CoFe2O4, CoFe2O4@Zn0.4Fe0.6Fe2O4及びCoFe2O4@Zn0.4Mn0.6Fe2O4を含む多様なナノ物質の熱放出係数を測定して、常用に販売されている磁性ナノ物質のFeridexやCLIOの熱放出係数と比較した。合成されたコア−シェルナノ物質の増加された熱放出係数と他の物質の熱放出係数との比較データは、図6に示されている。合成されたコア−シェル構造ナノ物質は、画期的に増加された熱放出係数を示しており、特に、MnFe2O4@CoFe2O4は、常用化されたナノ物質のFeridexと比較して40倍、CLIOと比較して10倍優れた熱放出係数を示す。
【0070】
実施例5:癌細胞の細胞死滅研究
増加された熱放出係数を有するナノ物質は、多様に応用できる。その中で一例として、癌細胞死滅に非常に効果的に使用できる。癌細胞は、正常細胞と異なって、一般に40〜50℃近くの温度を与える場合、死滅するようになる。このような事実に基づいて、増加された熱放出係数を有するナノ物質は、非常に少ない量を利用しても大きい熱を放出することができるため、癌細胞死滅に効果的である。したがって、このような効果を確認するために、既存に常用化されたFeridexと本発明で開発されたナノ物質を利用して、同一な量を細胞に処理した後、高周波磁場を加えた。その結果、大きい熱放出係数を示す新しいナノ物質(MnFe2O4@CoFe2O4)の場合、既存にナノ物質(Feridex)に比べ、卓越した癌細胞死滅効果を示した。
【0071】
実施例3で得られたコア−シェルタイプナノ物質の中、MnFe2O4@CoFe2O4の癌細胞治療効果を実験してみた。実施例3で合成されたナノ物質は、本研究室で発明した大韓民国特許第0604976号、大韓民国特許第0652251号、PCT/KR2004/003088、大韓民国特許第0713745号、PCT/KR2007/001001の方法により水溶化した。5mgのMnFe2O4@CoFe2O4を20mgのジメチルコハク酸(DMSA)が含まれたジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に入れて12時間反応した。その後、遠心分離機でナノ物質を落とした後、乾燥して、1M NaOHで滴定して水に溶かした。MnFe2O4@CoFe2O4ナノ物質を、HeLa細胞(1×10個)がある1mLの細胞培養液に最終濃度が0.5mg/mLになるように入れた後、5cm直径のコイルを利用して、交流磁場(周波数:500kHz、電流:35A)を5分間付加した。細胞の死滅率は、CCK−8方法を利用して測定した。MnFe2O4@CoFe2O4ナノ物質をHeLa細胞に処理した場合、80%以上の死滅率を示して、同一条件でFeridexの場合、10%の死滅率を示し、MnFe2O4@CoFe2O4ナノ物質の癌治療効果がFeridexと比較して8倍以上優れていることが分かる。既存商用化されたナノ物質と癌細胞死滅に対する比較データは、図7に示されている。
【0072】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属、金属カルコゲン、金属プニコゲン、合金またはこれらを含有する多成分混成構造体から1種以上選択された第1物質と、(b)金属、金属カルコゲン、金属プニコゲン、合金またはこれらを含有する多成分混成構造体から1種以上選択されて、前記第1物質に接合された第2物質と、を含み、前記第1物質または第2物質の中、少なくとも一つは、磁性物質を含むヘテロ構造(hetero-structure)のナノ物質を含む熱放出組成物。
【請求項2】
前記へテロ構造は、(I)コア−シェルまたはコア−多重シェルから構成された群から選択される0次元構造、(ii)バーコード、コア−シェル同軸(coaxial)棒、またはコア−多重シェル同軸棒から構成された群から選択される1次元構造、(iii)多成分シート形態を含む2次元構造、または(iv)ダンベル構造、亜鈴構造、またはマルチポッド構造から構成された群から選択される3次元構造であることを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項3】
前記へテロ構造は、コア−シェルまたはコア−多重シェルの0次元構造であることを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項4】
前記金属は、遷移金属、ランタン族またはアクチニウム族金属であることを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項5】
前記金属カルコゲンは、MまたはM(M及びMは、それぞれ独立して、1族金属元素、2族金属元素、遷移金属元素、13族−15族元素の中の金属または半金属元素、ランタン族またはアクチニウム族金属元素から1種以上選択される元素、Aは、O、S、Se、TeまたはPoから選択される元素;0≦x≦32、0≦y≦32、0<z≦8)、
またはその多成分混成構造体からなることを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項6】
前記金属プニコゲンは、
またはM(MまたはMは、それぞれ独立して、1族金属元素、2族金属元素、遷移金属元素、13族−14族元素の中の金属または半金属元素、ランタン族及びアクチニウム族金属元素から1種以上選択される元素、Aは、N、P、As、SbまたはBiから選択される元素;0≦x≦40、0≦y≦40、0<z≦8)、
またはその多成分混成構造体からなることを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項7】
前記合金は、MまたはM(M=Ba, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Nb, Mo, Zr, Te, W, Pd, Ag, PtまたはAuからなる群から選択される遷移金属元素、そしてGd、Tb、Dy、Ho、Er、SmまたはNdからなる群から選択されるランタン族及びアクチニウム族元素から1種以上選択される元素;MまたはMは、それぞれ独立して、1族金属元素、2族金属元素、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属元素、ランタン族及びアクチニウム族元素からなる群から1種以上選択される元素;0<x≦20、0<y≦20、0≦z≦20)、またはその多成分混成構造体からなることを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項8】
前記第1物質または第2物質は、
(I)金属ナノ物質M(M = Ba, Cr, Mn, Fe, Co, Zn, Nb, Mo, Zr, Te, W, Pd, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, SmまたはNd)、
(ii)金属カルコゲンMhxFeyOz(Mh =Ba, Zn, Mn, Fe, Co及びNiから構成された群から選択される1種以上の遷移金属元素; 0<x≦8, 0≦y≦8, 0≦z≦8)、ZnxFeyOz (0<x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8)、ZnwMixFeyOz (Mi =1族元素、2族元素、13族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される1種以上の金属元素;0<w≦8, 0≦x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8であり)、またはMaxOy(Ma=Ba, Zn, Mn, Fe, Co, Ni, Gd, Tb, Dy, Ho及びErからなる群から選択される1種以上の遷移金属またはランタン族元素、0<x≦16, 0≦y≦8)、
(iii)合金MexMfyまたはMexMfyMgz(Me, MfまたはMgは、それぞれ独立して、Co, Fe, Mn, Ni, Mo, Si, Al, Cu, Pt, Sm, B, Bi, Cu, Sn, Sb, Ga, Ge, Pd, In, Au, Ag及びYからなる群から1種以上選択される元素;0<x≦20, 0≦y≦20, 0≦z≦20)または
(iv)YCO5, MnBiまたはBaFe12O19であることを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項9】
前記第1物質または第2物質は、いずれも1種以上の磁性物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項10】
前記第1物質または第2物質の磁性物質は、互いに異なっていることを特徴とする、請求項9に記載の熱放出組成物。
【請求項11】
前記第1物質または第2物質は、それぞれ独立して、MhxFeyOz(Mh =Ba, Zn, Mn, Fe, Co及びNiから構成された群から選択される1種以上の金属、0≦x≦16, 0<y≦16, 0<z≦8)、ZnxFeyOz (0<x≦8, 0<y≦8, 0<z≦8)、ZnwMixFeyOz(Mi =1族元素、2族元素、13族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される1種以上の元素;0<w≦16, 0≦x≦16, 0<y≦16, 0<z≦8)、YCO5、MnBiまたはBaFe12O19であることを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項12】
前記第1物質または第2物質の一つは、YCO5、MnBi、BaFe12O19またはCoFe2O4を含むことを特徴とする、請求項11に記載の熱放出組成物。
【請求項13】
前記へテロ構造のナノ物質は、2〜20000W/gの熱放出係数値を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項14】
前記へテロ構造のナノ物質は、生物活性物質または化学活性物質が付着されたことを特徴とする、請求項1に記載の熱放出組成物。
【請求項15】
前記生物活性物質は、抗体、蛋白質、抗原、ペプチド、核酸、酵素、または細胞からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の熱放出組成物。
【請求項16】
前記化学活性物質は、単分子、高分子、無機物質、蛍光体、または薬物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の熱放出組成物。
【請求項17】
請求項1乃至15のいずれかに記載の熱放出組成物を含む温熱療法(hyperthermia)用組成物。
【請求項18】
請求項1乃至15のいずれかに記載の熱放出組成物を対象に投与する段階を含む温熱療法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−524860(P2011−524860A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510424(P2011−510424)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002661
【国際公開番号】WO2009/142438
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(506157422)インダストリー‐アカデミック・コオペレイション・ファウンデイション,ヨンセイ・ユニバーシティ (8)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY‐ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION, YONSEI UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】YONSEI UNIVERSITY, 134, SHINCHON‐DONG, SEODAEMUN‐GU, SEOUL 120‐749, KOREA
【Fターム(参考)】