説明

熱機関排気ガスの後処理に使用されるシステムの損傷を連続的に測定するための方法およびデバイス

本発明は、潤滑油、燃料、および/または少なくとも1つの使用潤滑油添加剤および/または燃料添加剤によって引き起こされる、内燃機関(2)からの排気ガスの後処理に使用される少なくとも1つのシステム(7)の損傷を連続的に測定するための方法に関する。発明の方法は、(i)後処理システム(7)に対するその影響が測定される潤滑油、燃料および/または添加剤を改質するために、規定量の少なくとも1つの放射性トレーサを使用し、(ii)後処理システム(7)に蓄積された排気ガスに由来する放射性トレーサの量を、後処理システム(7)に蓄積された放射性トレーサによって放射される放射線に感応する検出器(10)を使用して測定し、(iii)検出器(10)によって得られた測定値を、潤滑油、燃料および/または添加剤によって後処理システムにもたらされる損傷の程度に前記測定値を変換することができるプログラムされたコンピュータ(11)に伝送することにある。本発明は、また、発明の方法を実施するのに使用されるデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱機関排気ガスの後処理のためのシステムの損傷を連続的に測定するための方法およびデバイスに関する。より具体的には、本発明は、当該後処理システムの損傷に対する潤滑剤および/または燃料の影響(エフェクト)を連続的の監視することに関する。
【背景技術】
【0002】
これらの排気ガス後処理システム、特に微粒子を保持し、かつ/または窒素酸化物、炭素酸化物および残留炭化水素を除去するためのシステムは、環境、より具体的には大気環境(エアクオリティ)にとって有害な放出物を制限するために、熱機関の不可欠な構成要素になった。
【0003】
しかし、後処理システムの効率は、一定ではなく、その使用を通じて低下し、処理する燃焼ガスのタイプおよび質に応じて変化する。実際、ガスのある成分は、後処理システム内に定着し、それによってその効率を低下させる。
【0004】
後処理システムの効率の低下は、特に微粒子フィルタが損傷した場合には、該システムの性能を低下させ、燃料消費量を増加させるといった影響を機関の動作に及ぼしうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、自動車製造者、ならびに油、燃料および添加剤製造者の間では、当該技術分野において、内燃機関のための後処理システムの損傷を連続的に測定するための方法およびデバイスを有する必要性が感じられていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この分野において出願人が実施した研究は、燃料、潤滑油、および/または燃料および/または潤滑油に存在する添加剤によって引き起こされる熱機関の排気ガスの後処理のためのシステムの損傷を連続的に測定するための方法およびデバイスであって、特殊なデバイスの組立または分解を必要とせず、簡単かつ実証された装置を使用して、容易に実用化できる方法およびデバイスの開発に至った。
【0007】
より詳細には、本発明が提案する方法は、そのままの形、または排気ガスにおける残留生成物の形で見いだされる潤滑油、燃料および/または使用添加剤の、熱機関後処理システムに対してもたらされる損傷への影響を連続的に測定できるように設計されている。
【0008】
挙げることができる残留生成物の例としては、特に、油、燃料および/または添加剤の痕跡、油および添加剤の分解および燃焼生成物、ならびに燃料燃焼生成物が含まれる。
【0009】
その原理において、本発明は、潤滑油、燃料および/または添加剤を放射性トレーサで改質することにあり、後処理システムに蓄積された燃焼ガスの放射活性を機関の下流で測定するが、それはイオン化放射線に感応するプローブを使用して行われ、存在する残留生成物の量を測定することで、後処理システムの損傷の程度を測定する。
【0010】
従って、本発明の主たる目的は、潤滑油、燃料、および/または少なくとも1つの使用潤滑油添加剤および/または燃料添加剤によって引き起こされる、内燃機関からの排気ガスの後処理のための少なくとも1つのシステムの損傷を連続的に測定するための方法であって、
(i)既定量の少なくとも1つの放射性トレーサを使用して、後処理システムに対するその影響が測定される、潤滑油、燃料および/または添加剤を改質し、
(ii)後処理システムに蓄積された排気ガスに由来する放射性トレーサの量を、後処理システムに蓄積された放射性トレーサによって放射される放射線に感応する検出器を使用して測定し、
(iii)この検出器によって得られた測定値を、潤滑油、燃料および/または添加剤によって後処理システムにもたらされる損傷の程度にこれらの測定値を変換することができる、プログラムされたコンピュータ(programmed computer)に伝送することを特徴とする方法である。
【0011】
この方法を連続的に適用すると、本記述から浮上することになる多くの利点が提供される。これらの利点のなかでも、発明の方法は、特に、後処理システムの耐用期間(サービスライフ)を油、燃料および/または添加剤の関数としてより容易に測定することを可能にし、そのためその交換またはその再生の予測を可能にする。
【0012】
さらに、発明の方法は、所定の後処理システムに最も良く適応する潤滑剤、燃料および/または添加剤を簡単かつ比較的迅速に選択することを可能にする。したがって、当業者は、本発明による方法を採用して、後処理システムの損傷に対する残留生成物の影響を最小限に抑えることにより、それらの耐用期間を長くすることが可能である。
【0013】
本発明の範囲で使用される放射性トレーサは、後処理システムにおいて見いだされる量が、そのままの形、または残留生成物の形で前記システムに存在する油、燃料および/または添加剤に比例するように選択される。したがって、後処理システムに蓄積された放射性トレーサの測定量は、潤滑油、燃料および/または添加剤によって引き起こされる損傷の程度を正確に反映する。
【0014】
効果的な監視に必要とされる放射性トレーサの量は、特に放射性トレーサのタイプ(放射線タイプおよびエネルギー)、後処理システムに対する検出器の位置、ならびに後処理システム、および使用されるあらゆるスクリーンまたは遮蔽物の幾何学構造に依存することに留意されたい。
【0015】
放射活性の形(radioactive form)(すなわち定義上「放射活性」で、活性化を必要としない形)で標示された放射性トレーサを除いて、本発明の方法に使用される放射性トレーサは、一般には、機関油、燃料および添加剤と混合する前後に実行することが可能である活性化を必要とする、所謂最初は放射不活性の化学種(species)である活性可能化学種に基づくものである。この活性化は、当業者に知られている適切な条件で、粒子加速器を使用して、中性子、中性子源を備えた放射線、または陽子線により実行されうる。
【0016】
活性化に対する1つの実行可能な代替形態は、活性化すべき化学種を適切な量の媒介物(例えば、溶媒、または希釈油の如き希釈液等)に導入し、次いで得られた混合物を十分に活性化させ、最後に、それを機関油、燃料、または機関油または燃料に存在しうる添加剤と混合することである。
【0017】
放射性トレーサは、その放射線が測定可能となるように選択される必要があり、それが潤滑油に導入されるか、または燃料に導入されるかに応じて、広範なタイプを有することができる。
【0018】
発明の方法の第1の実施形態は、後処理システムの損傷に対する既定の潤滑油添加剤Adhの影響を監視することに関する。
【0019】
その組成が添加剤Adhと同一である少なくとも1つの活性可能化学種EAhiから放射性トレーサを選択することが可能である。この場合、油に導入された該量の活性化EAhi化学種が、同一量の添加剤Adhに取って代わることで、油の性能の改質を避ける。
【0020】
それらの添加剤と異なり、油の使用の特性に影響を与えず、後処理システムに見いだされる量が、添加剤Adhの影響との相関性を維持する他の添加剤EAhii化学種を使用することができる。
【0021】
標識が可能な化学種EAhiおよび/EAhiiは、特には、亜鉛、臭素、ナトリウム、モリブデン、リン、硫黄、銅、カルシウムおよびマグネシウム、またはこれらの元素の少なくとも1つを含む製品である。
【0022】
後処理システムに見いだされる量が、添加剤Adhの影響との相関性を維持する活性可能EAhii化学種の例として、カルシウムを含む洗剤、例えばスルホン酸カルシウムに導入すると、後処理システムにおいてカルシウム元素のような挙動を示し、それに対するカルシウムの影響を反映するストロンチウムについて言及することができる。
【0023】
知られている製品も活性可能EAhiを構成することができ、これらの製品としては、当業者に知られている通常の潤滑添加剤の系統、例えばチオリン酸亜鉛、スルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、石炭酸カルシウム、石炭酸マグネシウム、サリチル酸カルシウムおよびサリチル酸マグネシウム等が挙げられる。
【0024】
発明の方法の第2の実施形態は、後処理システムの損傷に対する機関潤滑油の影響を監視することに関する。
【0025】
本実施形態において、油に導入された放射性トレーサは、後処理システムに見いだされる量が、前記システムに対する油(例:油の痕跡、ならびにその燃焼および分解生成物)の影響に比例するように、当業者によって、活性可能EHi化学種のなかから選択される。
【0026】
第1の有利な変形によれば、標識することができる活性可能EHi化学種は、既に言及した活性可能EAhiおよび/またはEAhii化学種から選択される。この場合、後処理システムにおいて測定された放射活性も、油の影響、油の所定のAdh添加剤の影響、またはそれら両方を同時に反映することができる。第1の実施形態について既に述べたように、油に導入された当該量の活性化EAhi化学種が、同一量の油添加剤Adhに取って代わる。
【0027】
第2の変形によれば、油の使用の特性に影響を与えず、排気ガスの出口に蓄積された量が、機関油消費量との相関性を維持する他の活性可能EHi化学種を使用することが可能である。
【0028】
言及することができるこれらの活性化EHi化学種の例としては、例えばフッ素−18、臭素−82、ゲルマニウム−68、ゲルマニウム−69およびテクネチウム99−mの如きハロゲンのアイソトープが挙げられる。
【0029】
これらのEHi元素を単独で使用してもよいし、前記元素を含む製品の形で使用してもよく、媒介物に含めて導入することができる。例えば、テクネチウム99−mを過テクネチウム酸ナトリウムNaTcOの水溶液の形で油に導入することができる。
【0030】
炭素により大気から隔離されたナノスケール粒子の形でテクネチウム99−mを使用することもできる。1つの当該製品は、肺換気の臨床分析に広く使用されるTechnegazブランドに基づいて標示される。
【0031】
ゲルマニウム−68およびゲルマニウム−69は、例えば、これらのアイソトープの少なくとも1つを含むテトラアルキルゲルマニウムの形で、潤滑油に添加されうる。
【0032】
発明の方法の第3の実施形態は、後処理システムの損傷に対する所定の燃料(ガソリンまたはディーゼル)用Adc添加剤の影響を監視することに関する。
【0033】
その組成が、添加剤Adcの組成と同一である少なくとも1つの活性EAci化学種のなかから放射性トレーサを選択することができる。この場合、燃料性能の改質を避けるために、油に導入された当該量のEAci化学種が、同一量のAdc添加剤に取って代わる。
【0034】
燃料の使用の特性に影響を与えず、後処理システムに見いだされる量が、後処理システムに対するAdc添加剤の影響との相関性を維持する他の活性可能EAcii化学種を使用することも可能である。
【0035】
使用に適するこれら他のEAcii化学種は、例えば、潤滑活性剤の影響を監視するための放射性トレーサとして既に言及したEAhii化学種である。
【0036】
標識することができるEAciおよび/またはEAcii化学種は、例えば、マグネシウム、セリウム、カリウム、バリウムおよびカルシウムのような元素、ならびにこれらの元素の少なくとも1つを含む製品である。
【0037】
発明の方法の第4の実施形態は、後処理システムの損傷に対する燃料の影響を監視することに関する。
【0038】
この変形において、燃料に導入される放射性トレーサは、活性可能ECi化学種のなかから選択され、これらの化学種は、後処理システムに見いだされる量が、前記システムに対する燃料の影響に比例するように、当業者によって選択される。
【0039】
標識することができるECi化学種は、有利には、燃料添加剤の影響の監視に関して既に上述した活性可能EAci化学種、または燃料特性に対する影響を伴わずに、同じ目的で使用できる活性可能EAcii化学種から選択される。
【0040】
この場合、後処理システムにおいて測定された放射活性は、燃料の影響、所定のAdc添加剤の影響、または有利にはそれら両方を同時に反映することもできる。
【0041】
しかし、燃料の使用の特性に対する影響を伴わず、排気ガスの出口に蓄積された量が、後処理システムに対する燃料の影響との相関性を維持する他のECii化学種を使用することも可能である。これらの化学種の例としては、ここでも、例えば臭素−82、フッ素−18、ゲルマニウム−68、ゲルマニウム−69およびテクネチウム99−mの如きハロゲンのアイソトープが挙げられる。
【0042】
これらの放射活性元素を単独で使用してもよいし、該当する原子を含む製品の形で使用してもよく、媒介物に含めて導入することが可能である。例えば、過テクネチウム酸ナトリウムNaTcO4の水溶液の形、または炭素によって大気から隔離されたナノメートル粒子の形で、テクネチウム99−mを燃料に導入することが可能である。
【0043】
後処理システムに蓄積された放射性トレーサの除去を簡潔化するために、臭素−82、ゲルマニウム−69またはテクネチウム99−mの如き単寿命放射元素を使用するのが好ましい。しかし、例えば後処理システムの下流で捕集する適切な除去方法を採用することによって、Sr、Zn、Ca、S、PおよびMgの如きより従来的な放射活性元素を含む化学種を使用することが可能である。
【0044】
使用する燃料、潤滑剤および/または添加剤のタイプに関連するその損傷の程度が測定される内燃機関の後処理システムは、様々なタイプであってもよい。本発明に関連して該当する主なタイプは、
(i)ディーゼル機関用一方向または二方向酸化触媒システム(COおよび/または炭化水素の削減)、およびガソリン機関用三方向酸化触媒システム(CO、窒素酸化物NOおよび炭化水素の削減)、
(ii)NOを除去するためのシステム(NOトラップ、またはNOを削減するための触媒)、および
(iii)微粒子フィルタシステム(触媒化または非触媒化)である。
【0045】
例えば、現在開発された技術の1つの微粒子フィルタは、排気ガスラインに接続される金属筐体に固定された多孔構造のフィルタ媒体で構成される少なくとも1つの濾過要素である。(「キャニング」と呼ばれる)フィルタの金属筐体に配置されたフィルタ媒体は、多孔質のセラミック要素で構成されうる。フィルタ媒体は、排気ガスがフィルタの入口端と出口端の間を横切り、排気ガスに存在する残留生成物の放射性トレーサの粒子を保持することができる。
【0046】
好ましくは、後処理システムに蓄積された放射性トレーサ粒子の検出器をシステムに隣接して配置することによって、測定を著しく容易にすることができることに留意されたい。
【0047】
この検出器は、液体または固体シンチレータタイプ(ヨウ化ナトリウムNaI(Tl)結晶、BGO結晶)、または半導体タイプ(ゲルマニウム結晶、CZT結晶)であってもよいイオン化放射線(ベータ、X−またはガンマ線)を検出するためのプローブである。
【0048】
これらのタイプの検出器は、本発明のよる方法の連続的な適用を可能にし、1秒間のオーダの極めて短時間でデータを取得することが可能である。
【0049】
さらに、検出器は、油、燃料または添加剤を改質する様々なトレーサの存在、ならびに燃焼ガスにおけるそれぞれの量を同時に検出することが可能であり、これによって、放射標識化学種の各々の量と、後処理システムに対する油、燃料および/または添加剤の影響とをそう感づけることが可能になることに留意されたい。
【0050】
次いで、検出された信号は、潤滑油、燃料および/または添加剤の影響を計算する一連の手段によって処理される。これらの手段は、特に、検出された信号を(例えば増幅器、フィルタおよびアナログ−デジタル変換器ADCで)処理する手段、パルス波高を分析する手段(例えば多重チャネルアナライザ)、および取得したデータを記憶、処理する手段(例えばPCタイプコンピュータ)を含む。
【0051】
本発明のさらなる主題は、潤滑油、燃料、および/または使用される少なくとも1つの潤滑油添加剤および/または燃料添加剤によって引き起こされる、内燃機関の排気ガスを後処理するための少なくとも1つのシステムの損傷を連続的に測定するためのデバイスであって、規定量の少なくとも1つの放射活性トレーサを潤滑油または燃料に導入する手段と、機関の下流にあって、機関に由来する燃焼ガスの後処理を行うための少なくとも1つのシステムとを備えたデバイスであって、
(i)このシステムに蓄積されたトレーサ粒子によって放射される放射線を測定するために、後処理システム付近、およびそこから距離をおいて設置された、放射活性トレーサによって放射される放射線に感応する検出器と、
(ii)検出器と機能的にリンクされ、検出器によって得られた測定値を、潤滑油、燃料および/または添加剤によって後処理システムにもたらされる損傷の程度に変換することができるプログラムされたコンピュータとを備えたことを特徴とするデバイスである。
【0052】
油、燃料および/または添加剤の残留生成物による損傷を受ける後処理システムを、機関の下流であって、燃焼ガスとの接触を可能にする任意の位置に配置することができる。よって、それを機関排気ガスライン上に位置づけることができる。
【0053】
機関を複数の後処理システムに結合することができる。例えば、ディーゼル機関は、二方向酸化触媒システムと、微粒子フィルタとを備えることができ、ガソリン機関は、三方向触媒システムと、NO除去システムとを備えることができる。
【0054】
排気ガスを大気中に放出させる前に、後処理システムそのものが微粒子フィルタでない場合は、残留する放射活性化学種を捕集するために、当該フィルタを、このシステムの下流の排気ライン上に必ず設けなければならない。
【0055】
本明細書に添付された図面は、本発明の実現例(実施例)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
まず、図1を参照する。
【0057】
本実施形態では、内燃機関2の潤滑油回路1へのバイパスとして、少なくとも1つの放射活性トレーサを含む所定の量の同量の潤滑油を導入するためのライン3が設けられる。
【0058】
機関2からの燃焼生成物は、ライン4を介して、上述したタイプのいずれかであってもよく、排気ガス中の放射活性トレーサの粒子が堆積されうる排気ガス後処理システム7に除去される。
【0059】
これらのガスは、ライン8を介して外部に除去される前に、ガスが大気中に放出される前に存在する最後の放射活性粒子を保持するのに好適な微粒子フィルタ9を通る。
【0060】
システム7のすぐ隣には、システム7に存在する潤滑油に導入された放射性トレーサ粒子の量を連続的に測定するのに使用される、イオン化放射線を検出するためのプローブ10が設けられる。
【0061】
プローブ10によって得られた測定値は、これらの測定値を、潤滑油によって引き起こされた後処理システム7の損傷の程度に変換することができるコンピュータ11に伝送される。
【0062】
上述したように、潤滑油に使用される放射性トレーサは、好ましくは、短寿命の放射活性化合物、特にテクネチウム−99mである。
【0063】
以下の実施例は、非制限的であり、本発明、およびその利点の実用化を示す。
【実施例1】
【0064】
本実施例では、四行程機関の排気ラインに配置された2つの異なる後処理システムの損傷を連続的に測定する。
【0065】
ここでは、中性子活性により標識された潤滑油添加剤の影響を分析する。
【0066】
これらの試験で使用される機関は、Hornetという商品名で知られる排気量600cmのHonda(登録商標)モータサイクル機関である。試験時間を短くするために、機関は、その油消費量が6000rpmの速度で約1リットル/時になるように設計されており、本来のエンジンの油消費量が極めて低くなっている。
【0067】
四行程機関油は、ELFブランドで市販されているモータサイクル油、タイプ4DXRatioである。
【0068】
活性化添加剤は、数時間にわたって熱中性子の流れに曝された二次DTPZn(ジチオリン酸亜鉛)である。その反応は、安定的なZn−64の一部を放射活性Zn−65(65Zn)に変換する。
【0069】
最終的な油は、メーカ仕様書に従って、標識(ラベルド)添加剤を含む全ての添加剤を配合することによって調製される。再生油の具体的な活性は、240kBq/リットルである。
【0070】
以下の後処理システムを使用する。
PSA2.2リットルHDI機関に合わせて設計された市販のRFタイプ微粒子フィルタ。
1.4リットルHDI機関が装備されたPeugeotまたはCitroen車両に設置された市販の酸化触媒。
【0071】
これらの2つの要素を機関出口に直列に配置し、酸化触媒をRFの上流に設置した(図1参照)。
【0072】
標識元素(亜鉛−65)の蓄積を連続的に測定するために、ガンマ放射線検出システムを後処理システムの近くに設置した。内蔵光電子増倍管を有する、7.62×7.62cm(3×3インチ)を測定する標準的なヨウ化ナトリウムNaI(T1)検出器で、測定回路の他の要素は、Canberraブランドモデル2007P荷(load)前置増幅器、2020分光増幅器(Canberra)、モデル8087ADC変換器(Canberra)、およびモデルS100多重チャネルカード(Canberra)である。
【0073】
これらの試験で使用したソフトウェアは、ガンマ分光測定用「Genie 2000」(Canberra)ソフトウェア、およびアトランティックヌクレアサービス(Atlantic Nuclear Services(ANS))(カナダ)が市販するMCS(多重チャネルサンプリング)解析ソフトウェア「IDSWear」を含む。このソフトウェアは、予め設定されたエネルギーウィンドウにおける各検出器の計数率(この場合は、実施されている試験に関連する1115keV亜鉛−65ピーク)の経時変化を監視するのに使用される。
【0074】
図2は、試験時の2つの後処理システムにおける亜鉛−65の蓄積を示す図である。汚染されておらず、不活性ガソリンが供給された機関を、t=10分の時間で開始させ、それぞれの速度(4000および6000rpm)で動作させた。
【0075】
x軸は、分単位の試験時間を示し、y軸は、酸化触媒および微粒子フィルタにおいて1秒間に検出されたガンマ線の数(本/秒)を示す。
【0076】
活性の増加は、微粒子フィルタの方がはるかに大きく(約16倍を上回る)ことが確認でき、これは、2つの後処理システムの全く異なる概念によって説明できる。
酸化触媒の場合は、触媒壁への亜鉛−65の堆積物によって位置決めがなされる(その負の影響(エフェクト)は化学的不活性化である)。
微粒子フィルタについては、フィルタの壁への捕集によって位置決めがなされる(灰の蓄積を引き起こすことにより、目詰まりを発生させる可能性がある)、フィルタは、極めて小さい粒子に対する優れた捕集効率を提供する。
【0077】
6000rpmの速度では、この速度で12分後の微粒子フィルタにおいて、220個/秒の計数率の増加が確認される。RFが、放射された亜鉛−65の約95%を保持することを考慮し、65Znによって放射される放射線(約0.4%)に対する計数回路の検出構造および効率を考慮することによって、毎時約1.2リットルの油のフィルタの通過量に対応する毎時約290kBqの機関放射率を算出することができる。この結果は、機関の実際の消費量と一致する。
【0078】
酸化触媒は、機関によって放出された65Zn荷(ロード)の約6%を保持していたことにも留意されたい。
【0079】
したがって、本例は、比較的単純な技術(酸化触媒の科学的不活性化)、または複雑な技術(微粒子フィルタと直列する触媒)の後処理システムの損傷を連続的に監視するための本発明による方法の実行可能性を明確に実証するものである。
【実施例2】
【0080】
本例は、微粒子フィルタタイプのディーゼル後処理システムにおける潤滑剤に由来する灰残渣の蓄積を監視することに関する。
【0081】
比活性が95kBq/mlである、(亜鉛−65を含む)中性子照射によって活性化されたDTPZnのサンプルに基づき、またストロンチウム−85を洗剤(スルホン酸カルシウム)に導入した試験サンプルを使用して、Zn−65の比活性が21.2kBq/lで、Sr−85の比活性が10.47kBq/lである50リットルの油を調製する(ストロンチウムは試験中に添加される)。
【0082】
かように標識された油を、排気微粒子フィルタが装備されたRenault Lagunaの2.2Lターボディーゼル機関のケースに導入する。ローラベンチに設置された車両は、機関による油の消費を促進するように選択された、予めプログラムされた471kmのサイクルを受ける。
【0083】
使用された機関は、汚染されておらず、不活性化燃料が供給される。10000km後に6回の油交換を行い、20000km後に1回の油交換を行った。技術的な理由により、60000kmの走行後にストロンチウム−85を添加した。5000km間隔で、全ての有機残渣の燃焼を可能にする再生段階後に微粒子フィルタを分解し、その重量を測定した。フィルタの初期質量が把握されているため、蓄積された無機残渣(灰残渣と呼ぶ)の質量が算出される。フィルタの亜鉛−65およびSr−85活性をも測定し、検出システムは、実施例1に記載されているものと類似している。
【0084】
図3は、車両の走行距離の関数としての、フィルタにおける灰残渣(円)の蓄積の監視、およびフィルタにおけるZn−65(点線)の蓄積の監視を示す図である。
【0085】
図4は、車両の走行距離の関数としての、フィルタにおけるZn−65(ドット)およびSr−85(サークル)の蓄積の監視を示す図である。本例において上述したZn−65およびSr−85の化学的形態を考慮すれば、これは、DTPZnからの亜鉛および洗剤からのカルシウムが、微粒子フィルタに同じ割合で蓄積されていたこと(これらの3つの成分は、いずれもフィルタに優先的に蓄積されていなかったこと)を証明する役割を果たす。
【0086】
図5は、フィルタに蓄積された灰残渣の質量と、車両走行時における同一フィルタのZn−65活性との関係を示す図である。したがって、本例は、活性化DTPznの形で使用されたZn−65の微粒子フィルタにおける蓄積の監視が、油の燃焼によって生成された微粒子フィルタ内の灰残渣の蓄積を表すことを明確に実証するものである。
【0087】
微粒子フィルタにおける活性を連続的に測定することができるため、潤滑剤の燃焼によって生成した灰残渣の蓄積によって引き起こされる微粒子フィルタの損傷を、短期間であっても、連続的かつ正確に測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】発明の方法の実用化を示す概略図である。
【図2】上記の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油、燃料、および/または少なくとも1つの使用潤滑油添加剤および/または燃料添加剤によって引き起こされる内燃機関(2)からの排気ガスの後処理のための少なくとも1つのシステム(7)の損傷を連続的に測定するための方法であって、
(i)既定量の少なくとも1つの放射性トレーサを使用して、前記後処理システム(7)に対するその影響が測定される前記潤滑油、前記燃料および/または前記添加剤を改質し、
(ii)前記後処理システム(7)に蓄積された排気ガスに由来する放射性トレーサの量を、前記後処理システム(7)に蓄積された前記放射性トレーサによって放射される放射線に感応する検出器(10)を使用して測定し、
(iii)この検出器(10)によって得られた測定値を、前記潤滑油、前記燃料および/または前記添加剤によって前記後処理システムにもたらされる損傷の程度にこれらの測定値を変換することができるプログラムされたコンピュータ(11)に伝送することを特徴とする方法。
【請求項2】
その影響が測定される前記潤滑油、前記燃料および/または前記添加剤を、Sr、Zn、Ca、S、Pおよび/またはMgを含む規定量の少なくとも1つの放射性トレーサで改質することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
その影響が測定される前記潤滑油、前記燃料および/または前記添加剤を、短寿命放射活性元素、特に臭素82、ゲルマニウム−69またはテクネチウム99−mを含む規定量の少なくとも1つの放射性トレーサで改質することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テクネチウム99−mは、過テクネチウム酸ナトリウムNaTcOの形で、前記油または前記燃料に導入されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲルマニウム−69は、テトラアルキルゲルマンの形で、前記油または前記燃料に導入されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記放射性トレーサは、この油への導入前に、中性子および/または陽子線によって活性化されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
潤滑油添加剤Adhによって引き起こされる内燃機関(2)の排気ガスの後処理のための少なくとも1つのシステム(7)の損傷の連続的測定は、前記添加剤Adhと同一組成を有し、同一量の前記活性剤Adhに取って代わる一定量の活性可能EAhi化学種を前記潤滑油に導入することによって実施されることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
潤滑油添加剤Adhによって引き起こされる内燃機関(2)の排気ガスの後処理のための少なくとも1つのシステム(7)の損傷の連続的測定は、前記油の使用の特性に影響を与えず、前記後処理システムにおいて確認され、測定された量が、前記添加剤Adhの影響と相関づけられる一定量の活性可能EAhii化学種を前記潤滑油に導入することによって実施されることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記添加剤Adhは、カルシウムを含む洗剤であり、活性化された形の前記EAhii化学種は、ストロンチウム−85であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
燃料によって引き起こされる内燃機関(2)の排気ガスの後処理のための少なくとも1つのシステム(7)の損傷の連続的測定は、燃料添加剤Adcと同一組成を有し、前記燃料における同一量の前記活性剤Adcに取って代わる一定量の活性可能EAci化学種を前記燃料に導入することによって実施されることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
潤滑剤によって引き起こされる内燃機関(2)の排気ガスの後処理のための少なくとも1つのシステムの損傷の連続的測定は、一定量の活性可能EAhiまたはEAhii化学種を前記潤滑油に導入することによって実施されることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
潤滑油、燃料、および/または使用される少なくとも1つの潤滑油添加剤および/または燃料添加剤によって引き起こされる、内燃機関(2)の排気ガスを後処理するための少なくとも1つのシステム(7)の損傷を連続的に測定するためのデバイスであって、規定量の少なくとも1つの放射活性トレーサを前記潤滑油または前記燃料に導入する手段(3)と、前記機関(2)の下流にあって、前記機関に由来する燃焼ガスの後処理を行うためのシステム(7)とを備えたデバイスであって、
(i)このシステムに蓄積されたトレーサ粒子によって放射される放射線を測定するために、前記後処理システム(7)の付近、およびそこから距離をおいて設置された、前記放射活性トレーサによって放射される放射線に感応する検出器(10)と、
(ii)前記検出器(10)と機能的にリンクされ、前記検出器によって得られた測定値を、前記潤滑油、前記燃料および/または前記添加剤によって前記後処理システムにもたらされる損傷の程度に変換することができるプログラムされたコンピュータ(11)とを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
前記後処理システム(7)は、酸化触媒システム、酸化炭素を除去または削減するためのシステム、および微粒子フィルタシステムよりなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記検出器(10)は、イオン化放射線を検出するためのプローブであることを特徴とする請求項12および13のいずれかに記載のデバイス。
【請求項15】
燃焼ガス排気ライン上において、前記後処理システム(7)と、これらのガスが大気中に放出される点との間に配置されたフィルタ(9)を備えることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−510030(P2006−510030A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564276(P2004−564276)
【出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003738
【国際公開番号】WO2004/061406
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(591187760)トタル、フイナ、エルフ、フランス (2)
【氏名又は名称原語表記】TOTAL FINA ELF FRANCE
【出願人】(505083173)デルタ、セルビス、アンデュストリエル、ソシエテ、ド、ペルソネ、ア、レスポンサビリテ、リミテ (1)
【氏名又は名称原語表記】DELTA SERVICES INDUSTRIELS SPRL
【Fターム(参考)】