説明

熱気浴用の噴霧器

【課題】噴霧器を浴槽の縁等に定置し、しかも噴霧器から手を放した状態で、薬液を顔面に向かって連続して噴霧できる熱気浴用の噴霧器を提供する。
【解決手段】噴霧用の薬液を貯留する容器1と、容器1内を加圧する加圧ポンプ2と、貯留された薬液を霧化して噴射するノズル3とを備える。容器1とノズル3を接続する吐出流路31に、開閉状態を自己保持できる開閉弁35を設ける。ノズル3は、上下方向の噴射角度を変更できるよう容器1の蓋体7で上下回動自在に支持する。開閉弁35を開状態に切り換えることにより、容器1内に蓄圧した加圧空気の圧力で、霧化された薬液をノズル3から一定時間連続して噴霧供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を貯留した容器内を加圧ポンプで加圧して蓄圧したのち、貯留した薬液をノズルから霧状にして連続噴射できる熱気浴用の噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器系疾患の治療や予防法のひとつとして、「熱気浴」と呼ばれる温泉を利用した療法がある。これは、温泉の蒸気を閉じ込めた室内で呼吸することによって口や鼻から蒸気を吸い込み、喉や鼻の線毛運動を活発化させるものである。熱気浴を行なうには、専用の設備を備えた施設等に訪れる必要があるが、自宅の浴室で手軽に熱気浴と同等の効果を得られる家庭療法が提唱されている。
【0003】
上記の家庭療法では、シャワーで浴室内に湯気を発生させながら浴槽に湯を溜め、溜めた湯に体を沈めた状態で顔面に霧状の薬液を噴射して、霧化された薬液を吸い込む。薬液は、湯に少量の食塩を溶かし込んで形成するが、必要に応じてアロマオイル等の香料を少量加えて、リラックス効果を発揮させることもある。薬液を霧化して供給する噴霧器として、例えば特許文献1の手持ち型の蓄圧式の噴霧器が公知である。
【0004】
そこでは、取手と取付口部とが一体に形成された圧力容器本体と、取付口部を塞ぐ状態で圧力容器本体に組み付けられるポンプ機構などで噴霧器を構成している。ポンプ機構のハンドルを繰り返し押し込み操作することにより、圧力容器内に加圧された空気を蓄圧することができる。取付口部の側部にはノズルが突設されており、取手の近傍に設けた噴霧ボタンを押し下げることにより開閉弁を開弁して、圧力容器内の薬液を給液管を介してノズルへ送給し、ノズルで霧化した薬液を噴霧できる。同様の噴霧器は、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−173863号公報
【特許文献2】特開平10−052207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2の噴霧器は、ポンプ機構で加圧した空気を圧力容器内に蓄圧でき、噴射ボタンを押すだけで、噴霧液をノズルから一定時間、連続して噴霧することができる。また、小型であるので浴室内で邪魔になることもない。しかし、薬液を連続して噴霧するには、噴霧ボタンを連続して押し続ける必要がある。さらに、噴霧器のノズルを顔面と正対させ続ける必要がある。そのため、使用者は熱気浴を行なう間、片手で噴霧器を持ち続ける必要があり、操作が煩わしいうえリラックスできない。例えば、噴霧器を浴槽の縁に定置した状態で使用すると、噴霧ボタンを押し続けるだけでよいが、その場合にも、顔面がノズルと正対する姿勢を保持し続ける必要があり、リラックスできない。また全身を浴槽に沈めてリラックスした状態では、ノズルの噴霧位置と顔面位置とに高低差があり、さらに、ノズルの噴霧方向が一方向へ固定されているため、顔面をノズルと正対させるのが困難となる。
【0007】
本発明の目的は、使用者の位置や姿勢の如何にかかわらず、噴霧器を浴槽の縁等に定置し、しかも噴霧器から手を放した状態で、薬液を顔面に向かって連続して噴霧でき、従って、取り扱いが簡単な熱気浴用の噴霧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る熱気浴用の噴霧器は、噴霧用の薬液を貯留する容器1と、容器1内を加圧する加圧ポンプ2と、貯留された薬液を霧化して噴射するノズル3とを備えている。容器1とノズル3を接続する吐出流路31に、開閉状態を自己保持できる開閉弁35を設ける。ノズル3は、上下方向の噴射角度を変更できるよう容器1の蓋体7で上下回動自在に支持する。開閉弁35を開状態に切り換えることにより、容器1内に蓄圧した加圧空気の圧力で、霧化された薬液をノズル3から一定時間連続して噴霧供給できることを特徴とする。
【0009】
容器1は、上部に給水口6が開口してある容器本体5と、給水口6を開閉する蓋体7とで構成する。蓋体7に加圧ポンプ2とノズル3と開閉弁35を組み付ける。
【0010】
ノズル3の基端部に設けた回転軸25を、蓋体7で横軸回りに回動自在に支持して、ノズル3が回転軸25の回りに360度回転できるようにする。本発明において、回転軸25を蓋体7で横軸回りに回動自在に支持するとは、回転軸25の中心軸が水平である場合と、斜めに傾いている場合のいずれをも含むこととする。
【0011】
加圧ポンプ2は、蓋体7の内面に固定されるシリンダ12と、シリンダ12内を往復動するピストン13と、蓋体7を上下に貫通する状態でピストン13に固定されるピストンロッド14と、ピストンロッド14の上端に固定されるグリップ15とで構成する。ピストン13と蓋体7との間に、ピストン13を加圧操作方向へ向かって移動付勢するばね19を設ける。
【0012】
球殻状に形成した容器本体5の底面8を平坦壁で形成する。底面8にクッション9を固定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱気浴用の噴霧器では、ノズル3を蓋体7で上下回動自在に支持して、その噴射角度を上下方向に自由に変更できるようにした。また、容器1とノズル3を接続する吐出流路31に、開閉状態を自己保持できる開閉弁35を設けて、開閉弁35を開状態に切り換えた後は、容器1内に蓄圧した加圧空気の圧力で、霧化された薬液をノズル3から一定時間連続して噴霧供給できるようにした。従って、本発明の噴霧器によれば、浴槽の縁に定置した容器1の姿勢を調整し、さらにノズル3を使用者の顔面へ向かって指向させたのち、開閉弁35を開状態に切り換えるだけで、噴霧器から手を放した状態のままで、薬液を顔面に向かって連続して噴霧し、好適に熱気浴を行なえる。例えば、全身を浴槽に沈めてリラックスした状態であっても、使用者の顔面へ向かって薬液を的確に噴霧することができる。また、加圧ポンプ2で容器1内を加圧して蓄圧したのちは、開閉弁35を切り換え操作するだけでよいので、取り扱いが簡単な熱気浴用の噴霧器とすることができる。上記の一定時間とは、加圧ポンプ2を50回程度操作したときに7〜10分程度連続して薬液を噴霧できるようにするのがよい。
【0014】
容器本体5と蓋体7とで容器1を構成し、蓋体7に加圧ポンプ2とノズル3と開閉弁35を集約して組み付けると、容器本体5に加圧ポンプ2やノズル3などを組み付ける場合に比べて、容器本体5の構造を簡素化することができる。従って、容器本体5を耐圧容器として最適な容器形状にすることができ、噴霧器の信頼性と安全性とを向上できる。また、容器本体5のデザインの自由度も高くなる。
【0015】
ノズル3の基端部に設けた回転軸25を、蓋体7で横軸回りに回動自在に支持して、ノズル3を回転軸25の回りに360度回転できるようにすると、噴霧器と顔面の位置関係や高低差に応じて、ノズル3の噴射角度を自在に変更して的確に顔面に指向させることができる。従って、浴室等における熱気浴用の噴霧器の定置位置を、使用者の位置や姿勢との関係で自由に選定できる。
【0016】
ピストン13と蓋体7との間に、ピストン13を加圧操作方向へ向かって移動付勢するばね19を設けると、ピストン13を加圧操作するときの操作力を軽減することができる。従って、大径のピストンを使用することができ、少ない加圧操作回数で容器1内を目的の圧力に加圧し蓄圧することができる。
【0017】
球殻状に形成した容器本体5の底面8を平坦壁で形成し、底面8にクッション9を固定すると、容器本体5を腿の上に載置した状態で、ピストンロッド14を押し込み操作するような場合に、クッション9を介して容器本体5を支持できる。従って、腿にかかる圧力をクッション9で分散して痛みを和らげることができる。腿にアザ等ができることも効果的に防ぐことができる。また、容器本体5を床面や浴槽の縁に定置した状態で蓄圧する場合に、クッション9が滑り止め機能を発揮できるので、ピストンロッド14の押し込み操作を安定した状態で行なえる。浴槽の縁が傷つくこともない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る熱気浴用の噴霧器の縦断側面図である。
【図2】熱気浴用の噴霧器の正面図である。
【図3】蓋体部分の縦断側面図である。
【図4】加圧ポンプのピストンおよび逆止弁の構造を示す断面図である。
【図5】図3におけるA−A線断面図である。
【図6】開放弁の断面図である。
【図7】熱気浴用の噴霧器の使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例) 図1から図7は本発明に係る熱気浴用の噴霧器の実施例を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図1および図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0020】
図2に示すように、熱気浴用の噴霧器は、噴霧用の薬液を貯留する容器1と、容器1内を加圧して蓄圧するための加圧ポンプ2と、貯留された薬液を霧化して噴射するノズル3を主要部品にして構成してある。図1に示すように、容器1は球殻状の容器本体5と、容器本体5の上部の給水口6にねじ込み装着される蓋体7とで圧力容器として構成する。容器本体5の底面8は平坦壁で形成してあり、その下面側にはクッション9が接着固定してある。クッション9の形成素材としては、低反発性ウレタンや、ゴム、スポンジ等のマットを使用することができる。
【0021】
容器本体5および蓋体7は、加圧時の変形を防止するためにアクリル樹脂またはポリスチレン樹脂で形成する。容器1内の薬液の量を確認できるように容器本体5は透明材で形成する。噴霧用の薬液は、蓋体7を取り外して給水口6から注ぎ入れる。こののち蓋体7を給水口6にねじ込んで、両者6・7の接合面に設けたゴム製のシールリング10で容器1を密封する。
【0022】
図1および図3に示すように、加圧ポンプ2は蓋体7の内面に固定したシリンダ12と、シリンダ12内を往復動するピストン13と、蓋体7を上下に貫通する状態でピストン13に固定されるピストンロッド14などで手動ポンプとして構成してある。ピストンロッド14の上端には円盤状のグリップ15が固定してある。シリンダ12内には、上端が蓋体7に当接してピストン13を下方(加圧操作方向)に押し下げ付勢するばね19が設けてある。
【0023】
ピストン13に設けたシール溝16には、断面が円形のゴム製のシールリング17が嵌め込み装着してある。シール溝16の溝幅(上下幅)は、シールリング17の直径寸法よりも大きく設定してあり、ピストン13の対向周面の下縁からシール溝16の上壁にわたって、吸気口18が切り欠き形成してある。シリンダ12の底壁には通気口20が複数個開口してあり、通気口20の下面側にはゴム製の逆止弁21が組み付けてある。
【0024】
グリップ15を掴んでピストンロッド14をシリンダ12から抜き出し操作すると、図3に示すように、シールリング17がシリンダ12との摩擦によってシール溝16の下方へ移動し、シール溝16の下側の溝壁で受け止められる。そのため、吸気口18はシールリング17で上下に区分される上区室と下区室とを連通した状態となる。従って、ピストンロッド14をシリンダ12から抜き出し操作する過程では、上区室から下区室に向かって空気が流入する。このとき、逆止弁21には負圧が作用しているので、通気口20は閉じられている。抜き出し操作は、ばね19の付勢力に抗して行なうことになるが、ピストンロッド14で容器1の全体を持ち上げるようにすると、薬液の重量によって容器1が下方に移動しようとするので、ばね19を抜き出し操作するときの負荷を軽減できる。
【0025】
ピストンロッド14をシリンダ12内に押し込み操作するときは、図4に示すようにシールリング17がシリンダ12との摩擦によってシール溝16の上方に移動し、上側の溝壁で受け止められる。この状態では、吸気口18の上端部分がシールリング17で塞がれるので、シールリング17で区分された下区室側は気密状となる。そのため、ピストンロッド14をシリンダ12内に押し込み操作すると、ピストン13より下側の区室を正圧状態にすることができる。
【0026】
ピストンロッド14の押し込み操作で下区室の圧力が上昇すると、図4に示すように、逆止弁21の周縁部分が下方に弾性変形して通気口20が開放され、容器1内に空気が流入し加圧される。ピストンロッド14の押し込み操作時には、ピストン13はばね19の付勢力を受けるので、より小さな操作力でピストンロッド14を押し込み操作できる。このように、ピストンロッド14を繰り返し押し込み操作することにより、容器1内の空気を加圧して蓄圧できる。
【0027】
図1に示すように、ノズル3は、先端に薬液を霧状にして噴射するノズルヘッド23を備えた中空筒状のノズル軸24と、蓋体7で水平軸回り(横軸回り)に回転可能に軸支される回転軸25と、ノズル軸24と回転軸25とを接続するノズル基部26とを一体に備えている。ノズル軸24は、ノズル基部26から容器本体5の球殻周面に向かって斜めに連出してある。このように、ノズル軸24を容器本体5の球殻周面へ向かって接線状に連出することにより、ノズル軸24が容器本体5と接当するのを防いで、ノズル3を回転軸25の回りに360度回転することができる。ノズル3は、回転軸25と後述するパッキン28の摩擦力によって、任意の回転位置に位置保持できる。ノズルヘッド23は、供給された薬液を空気とともに噴出して、微細な粒子の霧を生成する。このときの霧の粒子が微細であるほど、空気中に長時間浮遊させることができ、また、口や鼻の深部まで吸い込みやすくして、熱気浴の効果を高めることができる。
【0028】
回転軸25の軸心部分には液通路27が形成されており、この液通路27はノズル基部26からノズル軸24を経てノズルヘッド23に連通している。蓋体7には、筒状のパッキン28が埋設固定されており、このパッキン28に回転軸25を差し込むことにより、ノズル3は蓋体7で回転可能に軸支される。回転軸25の先端には、周回状に段部29が張り出し形成されており、この段部29でノズル3が抜け止め保持してある(図5参照)。
【0029】
蓋体7には、薬液をノズル3へ送給するための吐出流路31が設けてある。図1および図3に示すように、吐出流路31は、蓋体7の内面から周側面にわたってL字状に貫通する蓋内部の供給路32と、供給路32の入口側に接続されて、容器1の底部から薬液を吸い上げる導管33とで構成する。導管33の吸入口側には、異物の吸入を防ぐためのフィルタ34を設けてある。供給路32の出口側は、回転軸25の連結穴を介して液通路27に連続している。
【0030】
供給路32の水平通路の中途部には、供給路32を開閉する開閉弁35を設ける。開閉弁35は供給路32を開閉し、さらに薬液の流量を調整する丸軸状の弁本体36と、弁本体36を開閉し、同時に開弁量を調整する操作レバー37とで構成する。弁本体36は供給路32と直交する垂直の弁穴に挿嵌してあり、弁本体36と弁穴との摩擦力で、任意の開閉状態を自己保持できる。軸部36の上下中途部には、水平の調整孔38が貫通状に形成してある。供給路32と調整孔38とは同一軸線上に配置してあり、それぞれの孔径寸法は同一に設定してある。図3および図7に示すように、操作レバー37は、ノズル基部26の近傍の蓋体7の上面に配置してあり、その先端37aがノズル基部26の側へ向く状態のとき、弁本体36が全開状態となり、この位置から先端37aが90度回転した状態のとき、弁本体36が全閉状態となる。
【0031】
図5に全閉状態を示しており、供給路32と調整孔38とは連通せず、供給路32は弁本体36で遮断されている。従って、ノズル3へ薬液が供給されることはない。操作レバー37を回転操作して供給路32と調整孔38とを連通させると、薬液がノズル3へ供給されで、ノズルヘッド23から霧化された薬液が噴射される。このとき、供給路32に臨む調整孔38の開口の度合を変化させることにより、供給路32を流れる薬液の流量が調整され、ノズルヘッド23から噴射される噴霧量を増減調整し、あるいは噴霧の到達距離を調整できる。
【0032】
図6に示すように、蓋体7の上面には容器1内の圧力を開放する、開放ボタン40を備えた開放弁41が設けてある。常態において、ゴム製の開放弁41は蓋体7に開口した逃がし孔42を塞いでいるが、開放ボタン40を押し込み操作すると、開放弁41が下向きに弾性変形して逃がし孔42が開放されるので、容器1の圧力を開放できる。圧力を開放して容器1内を大気圧にしておくと、加圧空気による応力が容器1に作用するのを解消できるので、容器1が早期に劣化するのを抑止できる。
【0033】
次に、熱気浴用の噴霧器の使用例を説明する。浴室は、予めシャワーを使って浴室内に湯気を充満させながら浴槽に湯を溜めておく。まず、蓋体7を取り外して、給水口6から薬液を注ぎ込む。薬液は湯に少量の食塩やアロマオイルを溶かし込んだものである。次に、蓋体7を給水口6にねじ込み固定したのち、開閉弁35を閉じた状態で、ピストンロッド14を繰り返し押し込み操作して、容器1内に加圧空気を送給し蓄圧する。容器本体5を腿の上に載置した状態で、ピストンロッド14を押し込み操作することができ、その場合には、クッション9を介して容器本体5を支持できるので、腿にかかる圧力を分散して痛みを和らげることができる。また、容器本体5を床面に定置した状態で蓄圧する場合には、クッション9が滑り止め機能を発揮できるので、ピストンロッド14の押し込み操作を安定した状態で行なうことができる。
【0034】
蓄圧が終了した後、図7に示すように、浴槽の縁や隅部に噴霧器を置き、ノズル3の噴霧方向を浴槽に浸かった状態の使用者の顔面に向かって指向させる。詳しくは、定置した容器1の姿勢を調整してノズル3を顔面に向かって指向させる。さらに、ノズル3の上下の噴射角度を調整して、ノズルヘッド23を顔面と正対させる。この状態で、操作レバー37を回転操作して薬液を噴霧し、霧化された薬液を浴室の蒸気と共に口や鼻から吸い込む。吸い込んだ霧状の薬液の刺激によって喉や鼻の線毛運動が活発化し、呼吸器疾患や花粉症の症状を改善することができる。因みに、容器1の内容量が750mlであるとき、その内部に6割前後の薬液を充填し、ピストンロッド14を50回程度押し下げ操作したときには、開閉弁35の開弁量にもよるが、7〜10分程度連続して薬液を噴霧できる。
【0035】
以上のように、本発明に係る熱気浴用の噴霧器によれば、噴霧器を浴槽の縁等に定置した状態で、しかも開閉弁35を開状態に切り換えたのちは、噴霧器から手を放した状態のままで、薬液を顔面に向かって連続して噴霧できる。また、使用者の位置や姿勢の如何にかかわらず、容器1の姿勢を調整し、さらにノズル3の噴霧方向を調整することにより、薬液を顔面に噴霧できるので、全体として取り扱いが簡単な熱気浴用の噴霧器を提供できる。薬液にアロマオイルが添加してある場合には、心身ともリラックスした状態で熱気浴を行なえる。熱気浴を終了する場合には、操作レバー37を回転操作して霧の噴霧を停止し、開放ボタン40を押し込んで容器1内の圧力を開放する。
【0036】
上記の実施例以外に、複数種のノズルヘッド23をノズル軸24に選択的に取り付けることにより、霧の細かさや、噴出距離を選択することができる。また、上記の実施例では回転軸25を水平に配置したが、上下方向の噴霧角度が変更できる範囲で斜めに傾けて、ノズル3を蓋体7で斜めの横軸回りに回動自在に支持することができる。ノズル3は、その指向方向を自由に選択できる点で、回転軸25の回りに360度回転できることが好ましいが、少なくとも回転軸25の回りに90度以上回転できればよい。容器本体5や蓋体7に過度の圧力が作用するのを防止するために、蓋体7に安全弁を設けることができる。容器本体5は球殻状に形成する必要はなく、丸筒状や角筒状など自由に変更できる。熱気浴用の噴霧器は浴室で使用するのが好ましいが、家庭用のサウナ室でも使用することができる。開閉弁35は蓋体7に対してねじ込み装着することができ、そのねじ込み量の違いで供給路32を開閉し、あるいは開弁量を調整することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 容器
2 加圧ポンプ
3 ノズル
5 容器本体
6 給水口
7 蓋体
8 底面
9 クッション
12 シリンダ
13 ピストン
14 ピストンロッド
19 ばね
23 ノズルヘッド
24 ノズル軸
25 回転軸
31 吐出流路
35 開閉弁
36 弁本体
37 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧用の薬液を貯留する容器(1)と、容器(1)内を加圧する加圧ポンプ(2)と、貯留された薬液を霧化して噴射するノズル(3)とを備えており、
容器(1)とノズル(3)を接続する吐出流路(31)に、開閉状態を自己保持できる開閉弁(35)が設けられており、
ノズル(3)は、上下方向の噴射角度を変更できるよう容器(1)で上下回動自在に支持されており、
開閉弁(35)を開状態に切り換えることにより、容器(1)内に蓄圧した加圧空気の圧力で、霧化された薬液をノズル(3)から一定時間連続して噴霧供給できることを特徴とする熱気浴用の噴霧器。
【請求項2】
容器(1)が、上部に給水口(6)が開口してある容器本体(5)と、給水口(6)を開閉する蓋体(7)とで構成されており、
蓋体(7)に加圧ポンプ(2)とノズル(3)と開閉弁(35)が組み付けてある請求項1に記載の熱気浴用の噴霧器。
【請求項3】
ノズル(3)の基端部に設けた回転軸(25)を、蓋体(7)で横軸回りに回動自在に支持して、ノズル(3)が回転軸(25)の回りに360度回転できる請求項1または2に記載の熱気浴用の噴霧器。
【請求項4】
加圧ポンプ(2)が、蓋体(7)の内面に固定されるシリンダ(12)と、シリンダ(12)内を往復動するピストン(13)と、蓋体(7)を上下に貫通する状態でピストン(13)に固定されるピストンロッド(14)と、ピストンロッド(14)の上端に固定されるグリップ(15)とで構成されており、
ピストン(13)と蓋体(7)との間に、ピストン(13)を加圧操作方向へ向かって移動付勢するばね(19)が設けてある請求項1、2または3に記載の熱気浴用の噴霧器。
【請求項5】
球殻状に形成した容器本体(5)の底面(8)が平坦壁で形成されており、
底面(8)にクッション(9)が固定してある請求項2、3または4のいずれかひとつに記載の熱気浴用の噴霧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−234784(P2011−234784A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106373(P2010−106373)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(510124353)
【Fターム(参考)】