説明

熱活性化可能なフリーラジカル開始剤及び磁性粒子を含む複合材料

複合材料であって、− 有機過酸化物及び/又は不安定な炭素−炭素結合を有する開始剤からなる群から選択される1種以上の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤及び− コア−シェル構造を有する粒子を含み、前記コアが1種以上の磁性材料を含む一方、前記シェルが二酸化ケイ素を含む、複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱活性化可能なフリーラジカル開始剤及び磁性粒子を含む複合材料に関する。本発明は更に、この材料の製造方法、及びその使用に関する。
【0002】
ポリマーの架橋又は硬化のための熱活性化可能なフリーラジカル開始剤の使用が通常の実施である。有機過酸化物は本願明細書において最も重要である。架橋プロセスは熱的であり、これは架橋を意図する組成物全部を加熱しなければならないという欠点を有し、その結果、不経済なエネルギー入力である。架橋を意図する組成物全部は更に熱応力にかけられ、これはその性質に悪影響を及ぼし得る。最終的には、過酸化物の高感受性の性質にも言及しなければならず、これは特定の防止策を貯蔵の間及び架橋プロセスの間に取るべきであることを意味する。
【0003】
従って本発明の課題は、架橋を意図する組成物中に熱エネルギーの導入を更に効果的に又は控えめにする材料を提供することである。更なる課題は、この材料の製造方法の提供にある。
【0004】
本発明は、複合材料であって、
− 有機過酸化物及び/又は不安定な炭素−炭素結合を有する開始剤(C−C開始剤)からなる群から選択される1種以上の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤及び
− コア−シェル構造を有する粒子
を含み、該粒子のコアが1種以上の磁性材料を含む一方、シェルは二酸化ケイ素を含む、複合材料を提供する。
【0005】
本発明の目的のために、複合材料はこれらの成分の物理的混合物である。本発明による複合材料は粉末又はペースト、又は液体懸濁液又は液体分散液の形を取ってよいか、又は低粘度から高粘度までの成形可能な組成物であってよい。
【0006】
本発明による複合材料の特徴は、熱活性化可能な開始剤の高安定性が好ましくは保証されたことである。熱活性化可能な開始剤の濃度の低下は、一般的に、1ヶ月まで、6ヶ月まで、特に好ましくは12ヶ月まで、更に特に好ましくは2年以上の期間内に使用される開始剤の量の2%未満である。このことは、粒子が磁性材料を含み、これらの公知の特性は、例えば、一般に過酸化物を瞬時に又は長期間にわたって徐々に分解させることであるため、一層驚くことであり;従って、当業者は磁性成分及び過酸化物を含む複合材料を製造又は貯蔵できるとは考えなかったであろう。
【0007】
本発明の目的のために、熱活性化可能とは、フリーラジカルが熱的に形成されることを意味する。ポリマーの架橋の間の温度は、一般に、フリーラジカル開始剤及び架橋を意図するポリマーに応じて、約50℃〜250℃である。
【0008】
本発明の目的のために、コア−シェル構造を有する粒子は、
− シェルによって囲まれた単離された個々の粒子であり、
− 集まったコアのアグリゲートであり、その際、アグリゲートはシェルによって囲まれる及び/又は
− シェルによって集まったアグリゲートである
粒子である。アグリゲートは、例えば、焼結ネックによって、個々の堅く集まった粒子である。
【0009】
コア−シェル構造を有し且つ本発明による複合材料中に存在する粒子のシェルは、コアを囲む1つ以上のシェルであってよく、これらのシェルの少なくとも1つは二酸化ケイ素を含むか又はかなりの程度までそれで構成されている。コア−シェル構造を有する粒子が複数のシェルを有する場合、外部のシェルが、コアを完全に囲む二酸化ケイ素で作られた穴なしのシェルであることが有利である。
【0010】
比較的コアの近くに配置されたシェルは完全に穴なしである必要はない。これらのシェルは、例えば、シェル材料中に含まれる要素及びコア材料中に含まれる要素から構成された化合物を含んでよい。例えば、これは、コアが鉄又は鉄化合物を含む場合、ケイ酸鉄であってよい。
【0011】
ほとんど実質的にそれらで構成された表現は、このタイプの場合、シェルが典型的な異物をも含み得ることを意味する。これらの量は一般に、各場合にシェルを基準として、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満である。シェルの二酸化ケイ素は主に又はもっぱら非晶質二酸化ケイ素である。
【0012】
シェルの厚さは好ましくはナノメートルの範囲である。特に好ましい厚さは2〜500nmであってよく、更に特に好ましい厚さは5〜30nmであってよい。
【0013】
シェルは好ましくは実質的に無孔質であり且つ表面上に遊離のヒドロキシ基を有する。
【0014】
本発明による磁性材料は、常磁性、強磁性、フェリ磁性、又は超常磁性の材料、又はこれらの混合物である。好ましいのは、超常磁性の材料及びわずかな残留磁化を有する材料である。
【0015】
好ましいのは、コア−シェル構造を有し且つ超常磁性(ネール緩和)だけでなくヒステリシスをも示す粒子である。これらの特性は、例えば、化学成分、粒径分布、粒子の形状、及びそれらの磁化率に依存する。
【0016】
好適なコア材料は、例えば、Fe、Co及びNiなどの純粋な金属、Fe及びガンマ−Feなどの酸化物、MgFe、MnFe及びCoFeなどのスピネル型の強磁性物質、さらにCoPt及びFePtなどの合金であってよい。
【0017】
本発明のある特定の実施態様において、コア材料は、ヘマタイト、マグネタイト及びマグヘマイトからなる群から選択される1種以上の酸化鉄、又はこれらの酸化鉄のうち2種又は3種の混合物を含むか又はそれらからなる。本発明による複合材料の誘導加熱のために特に有利な特性は、ヘマタイト、マグネタイト及びマグヘマイトを含むコア材料によって得られるものであり、その際、X線回析図は、各場合にコアを基準として、ヘマタイトの割合を1〜10質量%と決定し、マグネタイトの割合を20〜50質量%と決定し、且つマグヘマイトの割合を40〜75質量%と決定し、これらの割合が100質量%の合計を与えることを意図する。本発明の一有利な実施態様において、ヘマタイトの割合は4〜8質量%であり、マグネタイトの割合は35〜40質量%であり且つマグヘマイトの割合は50〜60質量%である。
【0018】
コア材料及びシェル材料の割合は、コア材料、シェルの厚さ、及び単離した又は凝集した粒子の構造に応じて広範囲で変化し得る。コア材料及びシェル材料の割合は一般にそれぞれの場合に10〜90質量%である。好ましいのは、50〜90質量%のコア材料及び10〜50質量%のシェル材料の割合を有するコア−シェル粒子である。
【0019】
コア−シェル粒子のBET表面積は5〜500m/g、好ましくは30〜300m/g、更に特に好ましくは40〜150m/gであってよい。粒子の平均直径は好ましくは5〜100nm、特に好ましくは30〜80nmである。本発明による粒子の比例分布の90%の分布は好ましくは5〜60nmである。
【0020】
本発明のある特定の実施態様において、コア−シェル構造を有する粒子は表面改質した形で存在してよい。本発明の目的のために、表面改質とは、粉末表面にあるヒドロキシ基の少なくとも一部が表面改質剤と反応して化学結合を形成することを意味する。この化学結合は好ましくは、共有結合、イオン結合又は配位結合であり、その際、表面改質剤と粒子との間に複合体が形成される。配位結合とは、複合体の形成を意味する。
【0021】
表面改質剤は、好ましくは、官能基として、カルボン酸基、塩化アシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、無水物基、アミド基、アミノ基、又はシラノール基を有する表面改質剤であってよい。
【0022】
特に有利な表面改質剤は、少なくとも1つの非加水分解性基又は1つのヒドロキシ基を有するシラン、特に少なくとも1つの非加水分解性部分をも有する加水分解性オルガノシランである。
【0023】
例は一般式RSiX4−aのシランであり、その式中、部分Rは同一又は異なり且つ非加水分解性基であり、部分Xは同一又は異なり且つ加水分解性基又はヒドロキシ基であり、aは1、2又は3の値を有する。aの値は好ましくは1である。一般式中の加水分解性基X(これらは同一であるか又は互いに異なる)の例は以下のものである:
− 水素又はハロゲン、F、Cl、Br又はI;
− アルコキシ、特にC−C−アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ及びブトキシ;
− アリールオキシ、特にC−C10−アリールオキシ、例えば、フェノキシ;
− アシルオキシ、特にC−C−アシルオキシ、例えば、アセトキシ又はプロピオニルオキシ;
− アルキルカルボニル、特にC−C−アルキルカルボニル、例えば、アセチル;
− アミノ、特にモノアルキルアミノ又はジアルキルアミノ、好ましくは各場合に炭素数1〜6であるアミノ。
【0024】
好ましい加水分解性部分は、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解性部分は、C−C−アルコキシ基、特にメトキシ及びエトキシである。
【0025】
同一であるか又は互いに異なってよい非加水分解性部分Rは、官能基を有する又は有していない非加水分解性部分Rであってよい。例えば、官能基を有していない非加水分解性部分Rは、以下のものであってよい:
− アルキル、特にC−C−アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル又はシクロヘキシル;
− アルケニル、特にC−C−アルケニル、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びブテニル;
− アルキニル、特にC−C−アルキニル、例えば、アセチレニル及びプロパルギル;
− アリール、特にC−C10−アリール、例えば、フェニル及びナフチル、更に対応するアルカリル部分、例えば、トリル、ベンジル及びフェネチル。
【0026】
以下の表面改質剤が明示的に記載されてよい:CHSiCl、CHSi(OC、CHSi(OCH、CSiCl、CSi(OC、CSi(OCH、CSi(OC、(CO)SiCCl、(CHSiCl、(CHSi(OC、(CHSi(OH)、CSi(OCH、CSi(OC、CCHCHSi(OCH、(CSiCl、(CSi(OC、(イソ−CSiOH、CH=CHSi(OOCCH、CH=CHSiCl、CH=CH−Si(OC、CH=CHSi(OC、CH=CH−Si(OCOCH、CH=CH−CH−Si(OC、CH=CH−CH−Si(OC、CH=CH−CHSi(OOOCH、n−C13−CH−CH−Si(OC、n−C17−CHCH−Si(OC、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピル−トリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルジメチルクロロシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N’−(2’−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、ビス(ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン及び3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン。
【0027】
好ましくは表面改質剤として使用されてよい化合物は、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシル−トリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン及びアミノプロピルトリエトキシシランである。更に特に好ましいものは、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、及びジメチルポリシロキサンであってよい。
【0028】
別の特定の実施態様において、コア−シェル構造を有する粒子は鉄ケイ素系酸化物粒子であり、その際、
− 粒子のBET表面積は10〜80m/g、好ましくは30〜70m/g、特に好ましくは40〜60m/gであり;
− 粒子中の酸化鉄の含有率は、各場合にそれらのシェルを含む粒子を基準として、60〜90質量%、好ましくは75〜85質量%であり、二酸化ケイ素の含有率は10〜40質量%、好ましくは15〜25質量%であり、その際、鉄、ケイ素及び酸素の割合は、それらのシェルを含む粒子を基準として、少なくとも99質量%であり、
− コアは結晶質であり且つ酸化鉄はヘマタイト、マグネタイト及びマグヘマイトを含み;
− シェルは非晶質二酸化ケイ素からなり;
− シェルとコアとの間に、少なくとも1部に、ケイ素、鉄及び酸素の元素からなり、一般にケイ酸鉄である、1種以上の化合物が存在し;
− シェルの厚さが5〜20nmであり;
− 粒子の平均直径が5〜100nm、好ましくは30〜80nmである。
【0029】
コア−シェル構造を有する粒子と共に、第2の本発明による複合材料の実質的な成分は、1種以上の有機過酸化物、C−C開始剤、又は有機過酸化物及びC−C開始剤の混合物によって提供される。もっぱら有機過酸化物を含む複合材料が好ましい。
【0030】
有機過酸化物は、好ましくは、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアリールペルオキシド、ペルオキシカルボン酸、ペルオキシカルボン酸エステル、ジアシルペルオキシド、ペルオキシ炭酸エステル、ペルオキシジカーボネート、ケトンペルオキシド、ペルケタール及び/又はこれらの混合物からなる群から選択される。個別に以下のものを挙げてよい:
− ヒドロペルオキシド(R−O−O−H)、例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロペルオキシヘキサン;
− ジアルキル(及び/又は−アリール)ペルオキシド(R−O−O−R)、例えば、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン(3)−2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジ(2−tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、tert−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド;
− ペルオキシカルボン酸(R−C(O)−O−OH)、例えば、過酢酸、過ギ酸;
− ペルオキシカルボン酸エステル(R−C(O)−O−O−R)、例えば、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチル2−エチルペルオキシ−ヘキサノエート、モノ−tert−ブチルペルオキシマレエート、ビス(2−ネオデカノイルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
− ジアシルペルオキシド(R−C(O)−O−O−C−(O)−R)、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、2、4−ジクロロベンゾイルペルオキシド;
− ペルオキシカーボネートエステル(R−O−C(O)−O−O−R)、例えば、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート;
− ペルオキシジカーボネート(R−O−C(O)−O−O−C(O)−O−R)、例えば、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート;
− ケトンペルオキシド、例えば、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,2,4,5,7,8−ヘキソキサシクロノナン;
− ペルケタール:2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ−tert−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン、エチル3,3−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブチレート;
− 他のペルオキシド化合物、例えば、3−tert−ブチルペルオキシ−3−フェニルフタリド、tert−ブチルペルオキシバレロラクトン。
【0031】
工業的な利用可能性の観点から、特に1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサ−3−イン、アセチルアセトンペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(tert−アミル)ペルオキシド、ジ(tert−ブチル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジスクシノイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、tert−アミル2−エチルペルオキシヘキサノエート、tert−アミルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、tert−アミルペルオキシベンゾエート、tert−アミルペルオキシネオデカノエート、tert−アミルペルオキシピバレート、tert−ブチルクミルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチル2−エチルペルオキシヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチル3,5,5−トリメチルペルオキシヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシアセテート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート及びtert−ブチルペルオキシピバレートを挙げてよい。
【0032】
有機過酸化物は、固体の形又は液体の形で非希釈で存在し得る。これはまた溶液の形で、エマルションの形で、懸濁液の形で又はペーストの形で溶媒と一緒に存在し得る。本発明の特に好ましい一実施態様において、有機過酸化物は液体過酸化物である。
【0033】
有機過酸化物の代わりに又はそれと一緒に、本発明による複合材料は、一般式Ph−RC−CR−Ph(式中、Phはフェニル基又は置換フェニル基であり且つR、R、R及びRはそれぞれ互いに独立して水素又はアルキル基である)を有する化合物からなる群から選択される、不安定な炭素−炭素結合を有する開始剤(C−C開始剤)を含み得る。典型的な例は、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンである。C−C開始剤として使用され得る他の化合物は、オリゴマーベンゾピナコールシリルエーテル、ベンズピナコールジシリルエーテルであり、これらはモノマーの又はオリゴマーの、ベンズピナコールジメチルエーテル、テトラフェニルエタン及びテトラフェニルエタンジニトリルである。
【0034】
本発明による複合材料について必須の2成分、コア−シェル構造を有する粒子及び熱活性化可能なフリーラジカル開始剤の存在する割合は、それぞれの場合に複合材料を基準として、好ましくはコア−シェル構造を有する粒子について0.1〜50質量%であり且つ熱活性化可能なフリーラジカル開始剤について0.1〜90質量%である。本発明による複合材料はもっぱらこれらの2成分で構成され得る。
【0035】
本発明による複合材料は、1種以上の架橋を意図するポリマー又は硬化を意図するポリマーをも含み得る。例えば、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、特に、LLDPE、LDPE、HDPE、ポリプロピレン、ポリブチレン、さらにそれらのコポリマー;エチレン−ビニルアセテート;ゴム、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エテン−プロペンゴム、スチレン−ブタジエンポリマー、ニトリルゴム、ポリブタジエン、シリコーンゴム;熱可塑性エラストマー、例えば、TPE−A、TPE−E、TPE−O、TPE−S、TPE−U、TPE−V;例えば、オルトフタル酸及びネオペンチルグリコールをベースとしたポリエステル樹脂;ジシクロペンタジエン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリレート及びメタクリレートを挙げてよい。
【0036】
本発明による複合材料中のポリマーの割合は、好ましくは、複合材料を基準として、1〜99.8質量%であってよい。
【0037】
特に、興味深い複合材料は、マスターバッチとして使用され得る材料であり、その際、それぞれの場合に複合材料を基準として、コア−シェル粒子の割合は1〜80質量%であり、熱活性化可能なフリーラジカル開始剤の割合は1〜80質量%であり、ポリマーの割合は1〜98質量%である。それぞれの場合に複合材料を基準として、20〜80質量%のコア−シェル粒子、20〜80質量%の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤、及び20〜80質量%のポリマーを含む実施態様が特に好ましい。
【0038】
本発明による複合材料は、架橋の程度又は硬化の程度を向上させる1種以上の物質をも含み得る。これらは例えば、多官能アクリレート及びメタクリレート、N,N−m−フェニレンジマレイミド、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン及び/又は1,3,5−トリアリルイソシアヌレートであってよい。
【0039】
本発明による複合材料は1種以上の溶媒も含み得る。これらは例えば、水、アルコール、ジオール、シリコーン油、C−C10アルカンであってよく、及び/又は芳香族化合物であってよい。
【0040】
本発明のある特定の実施態様において、複合材料は
a)1〜90質量%、好ましくは20〜80質量%の、有機過酸化物及び/又は不安定な炭素−炭素結合を有する開始剤からなる群から選択される1種以上の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤、
b)1〜90質量%、好ましくは5〜50質量%の、コア−シェル構造を有する粒子、その際、コアは1種以上の磁性材料を含む一方、シェルは二酸化ケイ素を含み、
c)0〜99質量%、好ましくは20〜80質量%の、架橋を意図する又は硬化を意図する1種以上のポリマー、
d)0〜90質量%の1種以上の溶媒、
e)0〜90質量%の、架橋の程度又は硬化の程度を向上させる1種以上の物質
からなり、その際、全てのパーセンテージは複合材料を基準とする。
【0041】
本発明は更に複合材料の製造方法であって、
a)1種以上の有機過酸化物、1種以上のC−C開始剤又は有機過酸化物及びC−C開始剤の混合物、
b)コア−シェル構造を有する粒子、
c)適切な場合、架橋を意図する又は硬化を意図するポリマー、
d)適切な場合、溶媒及び
e)適切な場合、架橋の程度又は硬化の程度を向上させる1種以上の物質
を混合する、前記製造方法を提供する。
【0042】
有機過酸化物又はC−C開始剤は、本願明細書では液体、固体、溶解した、乳化した又は懸濁した形で使用してよい。コア−シェル粒子は固体の形で又は分散した形で非希釈で使用してよい。
【0043】
当業者に公知のアセンブリを使用してよく、例はロールミル、混練システム、例えば、密閉式ミキサー、コニーダー、Zブレードミキサー、一軸及び多軸スクリュー押出プラント、粉末ミキサー、例えば、タンブルミキサー及びドラムミキサー、及び/又は撹拌機である。
【0044】
本発明は更に、ポリマーの架橋及び硬化のための本発明による複合材料の使用を提供する。ポリマーは、可能な複合材料の成分として挙げられたものと同じである。
【0045】
混合物の誘導加熱はここで行われる。本願明細書では誘導加熱とは、混合物を交流磁界又は電磁界に曝すことを意味する。100Hz〜100kHzの中周波数範囲内、又は10kHz〜60MHzの高周波数範囲内の通常の誘導子がこの目的に適している。本発明による複合材料はこのエネルギーの効果的な導入を可能にする。本願明細書で使用されるコア−シェル粒子のシェルは、エネルギーの導入を困難にすることなく、フリーラジカル開始剤の早期分解を抑制する。
【0046】
実施例
出発材料
コア−シェル粒子:
実施例1:第1の流れは、0.49kg/hのSiCl及び0.05kg/hのモノシランで出来た蒸気の形の混合物からなり、二流体ノズルによって室温(23℃)で得られるエアロゾルの形の第2の流れは、25質量パーセント濃度の塩化鉄(II)溶液(水中で、1.55kg/hの塩化鉄(II)に相当する)、及び吹き付けガスとしての5Nm/hの窒素からなり、これらの流れを反応器の混合帯域中に別々に導入する。
【0047】
この混合物を、反応器の燃焼帯域において7.9Nm/hの水素及び21Nm/hの空気の混合物を点火することによって生成される火炎中で反応させる。燃焼帯域中の反応混合物の滞留時間は約40msである。
【0048】
燃焼帯域に続く冷却帯域において、反応混合物を8kg/hの水を導入することによって332℃まで冷却する。
【0049】
得られた固体をフィルターで気体物質から分離する。
【0050】
実施例2は、四塩化ケイ素、モノシラン、水素及び空気の割合を変えることを除いて実施例1と同じである。
【0051】
表1は実施例1及び実施例2の反応パラメータを示し、表2は得られた粉末の物理化学値を示す。
【表1】

【表2】

【0052】
過酸化物:
工業用に純粋であると考えられる結晶の形のジクミルペルオキシド(DCUP、CAS 80−43−3)。
【0053】
白色の油状物中に粘液質化した形で75%の含有率で存在する、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサ−3−イン(DYBP−85−WO,CAS1068−27−5)。
【0054】
2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド(DCLBP−50−PSI、CAS133−14−2)、50%のシリコーン油中で粘液質化した結晶性過酸化物。
【0055】
2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP,CAS78−63−7)、工業用に純粋であると考えられる液体の形の過酸化物(約92%)。
【0056】
tert−ブチルペルベンゾエート(TBPB,CAS614−45−9)、工業用に純粋であると考えられる液体の形の過酸化物(約96%)。
【0057】
ポリマー:
LDPE:Lupolen 1800Sp,Basell,射出成形グレード,MFI 17−22;HDPE: Lupolen 4261A,Basell,パイプ押出グレード,MFI 2−4;EVA:Elvax(登録商標)PV1400,DuPont,光起電力用途の特別なグレード。
【0058】
実施例3:100gのtert−ブチルペルベンゾエート(液体成分)及び実施例1からの100gの粒子をブレードミキサー(Beken kneader)中で20分間混合すると、乾燥した、流動性で無塵の複合材料が得られる。
【0059】
実施例4:60gの実施例2からの粒子及び140gのtert−ブチルペルベンゾエート(液体成分)をブレードミキサー(Beken kneader)中で20分間混合すると、高粘度のペーストが得られる。
【0060】
実施例5:LDPE(Lupolen 1800Sp)、及びそれぞれ2%、3%及び10%の実施例1からの粒子及び過酸化物含有率(これはLDPEを基準として、それぞれ1%のジクミルペルオキシド(DCUP)及び更に1%の2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサ−3−イン(DYBP−85−WO)である)からなる複合材料を、25mmの実験室押出機(Collin社製、熱可塑性樹脂用スクリュー)中で115℃の溶融温度を用いてストランドダイによって70rpmで製造する。
【0061】
高周波の磁界におけるストランド部分の加熱:約75℃に予備加熱された、押出実施例(実施例5、1%のDYBP−85−WO)からの長さ3cmのストランド部分を、高周波の磁界(直径約4cmのテスラコイル、HF発電機、動力規格25kW〜650kHz、Celes)に配置する。発電機をその動力規格の50%を使用して10秒間運転し、次いでその動力規格の3%で50秒間運転する。最初の出力設定によってストランド片の表面温度は230℃まで上昇し、第2の出力設定によって該温度は徐々に245℃まで上昇する。所望の高程度の架橋がここで得られる。
【0062】
実施例6:100gの2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド(ペースト形態)及び100gの実施例1からの粒子を、ブレードミキサー(Beken kneader)中で20分間混合すると、乾燥した、流動性の25パーセント濃度の複合材料が得られる。
【0063】
実施例7:60ショアーのシリコーンゴムから得られる複合材料及び2質量%の実施例4からの複合材料の貯蔵安定性を試験する。2週間及び4週間後の流動計測定(Goettfert Viscoelastograph)は、架橋時間又は架橋効果の低下における有意な変化を示さない。トルクは、貯蔵による粘度の通常の僅かな増加によって、1.80Nmから1.87Nmまで僅かに上昇した。
【0064】
ジアシルペルオキシドが特に影響を受けやすい。従って、この複合材料は最大の潜在的な貯蔵困難性の例として考えられる。
【0065】
実施例8:65部のEVA PV1400(DuPont)、15部のDHBP及び20部の実施例1からの粒子を、カム式混練機(Brabender,300cmのチャンバ)中で70℃で混練すると、無塵のゴム状の複合材料が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
− 有機過酸化物及び/又は不安定な炭素−炭素結合を有する開始剤からなる群から選択される1種以上の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤及び
− コア−シェル構造を有する粒子
を含み、前記コアが1種以上の磁性材料を含む一方、前記シェルが二酸化ケイ素を含む、複合材料。
【請求項2】
シェルの厚さが2〜500nmであることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記コアが酸化鉄を含むか又は前記酸化物からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
コア材料の割合が50〜90質量%であり、シェル材料の割合が10〜50質量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
コア−シェル粒子が表面改質されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
有機過酸化物が、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアリールペルオキシド、ペルオキシカルボン酸、ペルオキシカルボン酸エステル、ジアシルペルオキシド、ペルオキシ炭酸エステル、ペルオキシジカーボネート、ケトンペルオキシド、ペルケタール及び/又はこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
不安定な炭素−炭素結合を有する開始剤が一般式Ph−RC−CR−Ph(式中、Phはフェニル基又は置換フェニル基であり且つR、R、R及びRはそれぞれ互いに独立して、水素又はアルキル基である)を有する化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
それぞれの場合に複合材料を基準として、コア−シェル構造を有する粒子の割合が0.1〜60質量%であり、且つ熱活性化可能なフリーラジカル開始剤の割合が0.1〜90質量%であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
1種以上の架橋を意図するポリマー又は硬化を意図するポリマーを常に含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
それぞれの場合に複合材料を基準として、コア−シェル粒子の割合が20〜80質量%であり、熱活性化可能なフリーラジカル開始剤の割合が20〜80質量%であり且つポリマーの割合が20〜80質量%であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項11】
架橋の程度又は硬化の程度を向上させる1種以上の物質を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項12】
1種以上の溶媒を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項13】
a)1種以上の有機過酸化物、1種以上のC−C開始剤又は有機過酸化物及びC−C開始剤の混合物、
b)コア−シェル構造を有する粒子、
c)適切な場合、架橋を意図する又は硬化を意図するポリマー、
d)適切な場合、溶媒及び
e)適切な場合、架橋の程度又は硬化の程度を向上させる1種以上の物質
を混合することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項14】
ポリマーの架橋及び硬化のための請求項1から13までのいずれか1項に記載の複合材料の使用。

【公表番号】特表2012−530822(P2012−530822A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516612(P2012−516612)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057376
【国際公開番号】WO2010/149463
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【出願人】(509013482)ユナイテッド イニシエーターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】United Initiators GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Dr.−Gustav−Adolph−Strasse 3, D−82049 Pullach, Germany
【Fターム(参考)】