説明

熱源ポンプの変流量制御装置

【課題】温度制御のみで熱源ポンプを変流量制御する。
【解決手段】負荷側装置と、複数の熱源側装置及び複数のINV付き熱源一次ポンプを含む熱源側熱媒搬送装置と、熱媒送り側管路及び熱媒還り側管路を連結するバイパス管路と、熱媒還り側管路の温度を計測する二次側熱媒還り温度計と、複数のINV付き熱源一次ポンプの入口温度を計測する一次側熱源還り温度計と、二次側熱媒還り温度計の計測温度を元に一次側熱源還り温度計の設定値を求める制御装置とを備え、制御装置は、二次側熱媒還り温度計で計測した熱媒還り温度(T1)に基づき、所定の差分(Tα)を差し引いた温度値(T1]pv−Tα)を、INV付き熱源一次ポンプの入口温度設定値(SP)として、カスケード制御で入力し、一次側熱源還り温度計の計測値が温度値(T1]pv−Tα)となるようにINV付き熱源一次ポンプの回転数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調設備における熱源ポンプの変流量制御装置として、建物の空調負荷状態の変動に応じて熱媒流量を可変制御する熱源設備であって、省エネルギー効果の高い熱源制御を行う一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調設備における熱源ポンプの変流量制御装置として、建物の空調負荷状態の変動に応じて熱媒流量を可変制御する熱源設備である一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムは各種知られている。
先ず、基本的な骨格をなす、一次・二次ポンプ方式熱源システムは、熱源装置(冷房専用では冷凍機、冷房及び暖房をする場合、例えば、ガスを再生駆動源とする冷温水発生機や、蒸気圧縮式冷凍サイクルのヒートポンプなどをいう)によって冷凍又は加熱された冷水又は温水(以下、熱媒と称する)を、往きヘッダ及び還りヘッダを接続部分として、熱源装置と熱源一次ポンプと往きヘッダ及び還りヘッダを繋ぐ配管により形成する一次側と、熱交換コイルに熱媒を通して建物の温調すべき空気と熱交換する空調機などからなる空調負荷と熱媒二次ポンプと往きヘッダ及び還りヘッダとを繋ぐ配管により形成する二次側とに流すものである。
【0003】
通常は、往きヘッダと還りヘッダとの間を連結するバイパス管があり、バイパス管を共通として一次側と二次側とを繋いだ系にした一次・二次ポンプ方式熱源システムが一般的である。
二次側において、空調負荷における熱交換量調整には二方弁が用いられることが非常に多く、多くの台数の空調機などからなる空調負荷が定格負荷でない部分負荷となる場合に、二次側では二方弁が絞られ、空調負荷へ送られる熱媒は少なくなり、二次ポンプを変流量としない場合は、バイパス管を余剰熱媒が流れて、熱媒の搬送動力が無駄である。
このせっかく二次側熱媒流量が部分負荷で絞られることを活かし、熱媒二次ポンプを変流量とし、熱源装置の変流量化対応による熱源一次ポンプ変流量化としたのが、一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムである。
但し、二つの変流量ポンプを直列に並べて制御するので、二つのポンプの流量マッチングが難しいシステムでもある。
【0004】
従来の一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムでは、熱源装置によって冷凍又は加熱された熱媒は、熱源一次ポンプにより往きヘッダへ圧送された後、熱媒二次ポンプにより(往き二次ヘッダがある場合は往き二次ヘッダを介して)送水管を経由して空調負荷へ圧送され、空調負荷に送られた熱媒は前記熱交換コイルなどで温調すべき空気と熱交換された後、還水管及び還りヘッダを経由して再び熱源装置に戻すように運転される。
そして、熱源一次ポンプによって搬送される熱媒の流量と、熱媒二次ポンプによって搬送される熱媒の流量とが平衡すると、往きヘッダ及び還りヘッダとを連結するバイパス管の流量はゼロとなる。
【0005】
一方、熱源一次ポンプによって搬送される熱媒の流量が、熱媒二次ポンプによって搬送される熱媒の流量よりも大きい場合は、バイパス管には往きヘッダから還水管へ向かう流れが形成される。逆に、熱媒二次ポンプによって搬送される熱媒の流量が、熱源一次ポンプによって搬送される熱媒の流量よりも大きい場合は、バイパス管には還水管から往きヘッダへ向かう流れが形成される。
省エネルギーの観点からは、前述のようにバイパス管を流れる熱媒の流量を無くす運転が望ましいため、従来の一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムの一例では、バイパス管に流量計を設け、流量計でバイパス管流量を常時計測し、計測値を熱源制御装置に入力演算し、バイパス管流量がゼロとなるように、熱媒一次ポンプの流量を制御する信号を出力するのがよいとするシステムがある。
【0006】
このように、負荷に応じて熱源一次ポンプの可変制御を行うにあたり、バイパス管に高価な流量計を設置して、流量調節計で流量から演算された出力信号により熱源一次ポンプ回転数制御を行う方式を採用し、基本的にバイパス管流量をゼロとする制御を行うが、これだけでは熱媒の送水温度や還水温度を所定の温度範囲に維持するという重要な要件が崩れる虞がある。
よって、立ち上がり時の制御動作などで、熱媒送水温度や還水温度の乱れに対する応答性を確保するため、熱媒の還り温度が所定値内にある場合、バイパス管流量が所定の「固定値」(前述のようにゼロではなく、実際の好適な制御では往きヘッダから還りヘッダへ向かう流れとして若干量)になるように熱源一次ポンプに流量の可変制御を行う信号を出力し、熱媒還り温度が所定範囲を逸脱する場合、上記バイパス管流量が固定値流量になるように熱源一次ポンプを可変制御するのを中止し、送水温度に基づいて熱源一次ポンプの流量を増加又は減少させるよう制御出力を出す、一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、従来の一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムとしての別な一例では、バイパス管には流量計を備えないが、空調負荷にて温調空気と熱交換済みの熱媒がまとめて還ってくる還りヘッダへ戻る管における熱媒流量を負荷流量として計測する流量計を設け、流量計によって計測された熱媒の流量から、現在運転している熱源装置1台当たりの按分流量を制御装置で演算して求め、按分流量に従って熱源一次ポンプ流量を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、熱媒二次ポンプと熱源一次ポンプとを1台にまとめた一次ポンプとする、別形式の変流量システムとして、一次ポンプ方式熱源変流量システムにおいての一例で、バイパス管に流量計を備えない代わりに、往きヘッダと還りヘッダとの間(バイパス管と並列)に差圧計を設け、空調負荷の二方弁が閉じ勝手になった際にバイパス管に多量の熱媒が無駄に流れないよう、流量計ではなく圧力計を用いてバイパス管の両端の差圧を見ることで、間接的にバイパス流量を監視し一次ポンプ流量(及びバイパス弁)制御をする技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3,365,997号公報
【特許文献2】特許4,173,981号公報
【特許文献3】特許3,652,974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、(1)二つのポンプを直列に並べてそれぞれ変流量制御する流量マッチングが難しいシステムにおいて、流量信号に基づいて制御することは、追っかけ制御が生じやすく制御がとても乱れやすいという問題点、(2)制御信号を発信する流量計が高価であるという問題点、(3)さらに、熱媒送水温度や還水温度の乱れに対する応答性を確保するために、熱源装置出口でせっかく往き温度が規定できている往き側へ還水を混合して往き温度を崩さないよう、往きヘッダから還りヘッダへ向かう流れを作るのはよいが、そのバイパス流量を「固定値」としていることで、変流量方式により変動の大きい実際流量と設定値との偏差が逆に激しく変動し、熱源一次ポンプの制御が乱れやすいという問題点、(4)そして、熱媒の還り温度が所定値内にある場合、バイパス管流量が所定の往きヘッダから還りヘッダへ向かう流れの流量「固定値」になるように熱源一次ポンプに流量の可変制御を行う信号を出力し、熱媒還り温度が所定範囲を逸脱する場合、上記バイパス管流量での熱源一次ポンプを可変制御するのを中止し、送水温度に基づいて熱源一次ポンプの流量を増加又は減少させるよう制御出力を出す、という場合分けでの切替制御を有することで、その複雑な制御系や切替え時に激しく流量変動する虞があるという問題点、という多数の問題点があった。
【0011】
また、特許文献2では、(1)還りヘッダへ戻る管における熱媒流量を負荷流量として計測する流量計を必要とし、且つもっとも大流量の個所で計測するので、口径が大きくなると非常に高価になる大口径流量計を必要とするコスト的な問題点、(2)流量計によって計測された熱媒の流量を、別な台数制御回路の演算結果である現在運転中の熱源装置台数の1台あたりの按分流量を求めるという複雑なロジックを要する制御装置を必要とする問題点、(3)さらに、そもそも按分流量は台数で除すればすぐ求まるものの、熱媒が流れるシステム要素ごとに流量変化と圧損変化との関係が一次関数的なのか、二次関数的なのか、n次関数的なのかが様々で、かつ定格絶対値も様々である系において、按分した流量をどう一次ポンプに信号として与えるかが問題であり、まともに考えると補正が複雑な制御ロジックが必要である問題点、という多数の問題点があった。
【0012】
また、特許文献3では、バイパス管に流量計を備えない代わりに、往きヘッダと還りヘッダとの間(バイパス管と並列)に差圧計を設け、空調負荷の二方弁が閉じ勝手になった際にバイパス管に多量の熱媒が無駄に流れないよう、差圧計の計測値に基づいてバイパス弁も制御し、一次ポンプも制御する。前述のように、空調負荷が部分負荷となる場合に二次側では二方弁が絞られ、空調負荷へ送られる熱媒は少なくなるので、余剰熱媒をバイパス弁に流すべきところ、バイパス管にバイパス弁を設けてバイパス管に流さないようにするため複雑な制御が行われる。この技術において、余剰熱媒をゼロにするようにバイパス弁及び一次ポンプの両方を制御するのがとても困難であり、うまく制御できない場合には、余剰を流すというバイパス管の根本的機能が損なわれ、空調負荷の二方弁の流量制御に影響を生じさせ、空調負荷側の制御がうまくいかなくなるという大問題を有している。
以上の3例などでも示すように、従来の一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムは、高価な計測器を用いて、かつ複雑な制御を組まないと変流量制御が達成できないものであった。
【0013】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、熱源設備で元来必要な箇所に設置している安価な計測器である温度計を用いて簡単なカスケード制御を組むだけのことで、二次側の制御システムに影響されない熱源一次ポンプの変流量制御が達成され、かつ送水温度が保証可能な省エネルギーである一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムとしての、熱源ポンプの変流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、空調負荷熱量を空調負荷で処理しかつ空調負荷熱量に応じて変流量制御される負荷側装置に対し、往きヘッダ及び還りヘッダで接続される熱源側装置を有する一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムである熱源ポンプの変流量制御装置であって、前記熱源側装置は、前記負荷側装置の端部である前記往きヘッダに一次往き管路を介して接続する複数の熱源装置と、それぞれの熱源装置に対応して一次熱源還り管路を介して接続される複数のインバータ付き熱源一次ポンプと、一端をそれぞれ熱源装置に接続され、もう片端を前記還りヘッダに接続される一次熱源還り管路には、前記インバータ付き熱源一次ポンプと前記還りヘッダとの間に、それぞれ設けられた一次側熱源還り温度計と、前記一次側熱源還り温度計からの計測信号に基づいて前記インバータ付き熱源一次ポンプの流量制御を行う制御装置と、前記往きヘッダと前記還りヘッダとを接続するバイパス管路とで構成され、前記負荷側装置の前記空調負荷から前記還りヘッダに戻る二次側還り管路本管には、二次側熱媒還り温度計を設け、前記二次側熱媒還り温度計の計測値を前記制御装置に入力し、一次側熱源還り温度の設定値を前記二次側熱媒還り温度計の計測値に基づいて変更するカスケード制御を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1の熱源ポンプの変流量制御装置において、前記熱源側装置から往きヘッダを介して一定往き温度に保たれた熱媒を送給し、二次側熱媒還り温度と前記往き温度との差分より、一次側熱源還り温度と前記往き温度との差分を常に小さくすることで、前記バイパス管に前記往きヘッダから前記還りヘッダへ向かう流れを形成して、前記熱源側装置を流れる熱媒量を前記負荷側装置を流れる熱媒量と比べて多量(リッチ)に流すことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の熱源ポンプの変流量制御装置において、前記制御装置は、前記二次側熱媒還り温度計で計測した熱媒還り温度(T1)に基づき、冷房時には所定の差分(Tα)を減じた温度値(T1]pv−Tα)又は暖房時には所定の差分(Tα)を足した温度値(T1]pv+Tα)を演算算出し、一次側熱源還り温度(前記インバータ付き熱源一次ポンプの入口温度)の設定値として逐次設定するカスケード制御し、前記一次側熱源還り温度計で計測される熱媒温度が、前記温度値(T1]pv−Tα)又は前記温度値(T1]pv+Tα)となるように前記インバータ付き熱源一次ポンプの流量制御を行うことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3の熱源ポンプの変流量制御装置において、Tαが0.2℃〜0.5℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱源一次ポンプの変流量制御に流量計や圧力発信器などの高価な制御機器を用いずに温度制御のみで行うことができる。
本発明によれば、負荷側の還り温度を元に熱源入口温度の設定値を決定し、熱媒の変流量制御を行うので、複雑な制卸装置を必要としない。
【0017】
本発明によれば、往き還りヘッダ間のバイパス流量を最小にすることができるため、無駄な搬送動力を削減できる。
本発明によれば、構成機器が温度計測器、温度指示調節器、INVであるので、安価でかつ簡単に熱源を定流量機器から変流量機器へと更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1を示す説明図である。
【図2】図1における制御装置の構成図である。
【図3】図1における温度指示調節器からの出力と一次ポンプ出力との関係を示す図である。
【図4】図1における動作フローを示す図である。
【図5】図4における熱源運転台数の求め方を示す図である。
【図6】図1における二次側の往き還り温度差に変化が無く、二次側の流量が増加した場合について示す説明図である。
【図7】図6における温度指示調節器からの出力と一次ポンプ出力との関係を示す図である。
【図8】図1における二次側の還り温度が上昇し、二次側の流量に変化がない場合について示す説明図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1を示す説明図である。
【図10】図9における制御装置の構成図である。
【図11】図9における温度指示調節器からの出力と一次ポンプ出力との関係を示す図である。
【図12】図9における動作フローを示す図である。
【図13】図9における二次側の往き還り温度差に変化が無く、二次側の流量が増加した場合について示す説明図である。
【図14】図13における温度指示調節器からの出力と一次ポンプ出力との関係を示す図である。
【図15】図9における二次側の還り温度が低下し、二次側の流量に変化がない場合について示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1を示す説明図である。
本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1は、冷房用の熱源側装置10(一次側ともいう)と、負荷側装置20(二次側ともいう)とで構成されている。なお、本実施形態として示される冷房専用の冷凍機を有する場合は単独の実施形態となるが、後述する第二実施形態の熱源装置が本実施形態の冷凍機と共通であり、外気温度などから由来する冷房勝手と暖房勝手の季節の切替えで第一実施形態と第二実施形態とを共用する一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1も当然含むことはいうまでもない。
【0020】
冷房用の熱源側装置10は、2つの冷凍機(熱源装置)11a,11bと、一次往き管路12a,12bと、第1の往きヘッダ13と、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bと、一次熱源還り管路15a,15bと、還りヘッダ18と、バイパス管路19とを備えている。
2つの冷凍機(熱源装置)11a,11bは、それぞれ一次往き管路12a、12bを介して第一の往きヘッダ13に接続されている。
2つの冷凍機(熱源装置)11a,11bには、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bが、それぞれ一次熱源還り管路15a,15bを介して接続されている。
【0021】
一端をそれぞれ2つの冷凍機(熱源装置)11a,11bに接続される一次熱源還り管路15a,15bは、もう片端を還りヘッダ18に接続されている。一次熱源還り管路15a,15bには、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bと還りヘッダ18との間に、それぞれ一次側熱源還り温度計16a,16bが設けられている。
2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bと一次側熱源還り温度計16a,16bとは、温度指示調節器(制御装置)17a,17bにそれぞれ接続されている。
第一の往きヘッダ13と還りヘッダ18とは、バイパス管路19で接続されている。
これらの機器及び配管で一次側である熱源側装置10が構成される。
【0022】
一方、二次側である負荷側装置20は、第一の往きヘッダ13(一次側と共通)と、第二の往きヘッダ21と、3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cと、空調機などからなる複数の空調負荷24a、・・・24nと、二次側往き管路23と、二方弁25a、・・・25nと、二次側還り管路26と、還りヘッダ18(一次側と共通)とを備えている。
第二の往きヘッダ21は、第一の往きヘッダ13と対向して配置され、第一の往きヘッダ13と第二の往きヘッダ21との間には3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cが二次側往き管路23の一部を介して接続されている。
第一の往きヘッダ13を一端とする二次側往き管路23は、3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cの圧送力により第二の往きヘッダ21から熱媒を、もう片端を複数の空調負荷24a、・・・24nに接続して圧送する。
【0023】
複数の空調負荷24a、・・・24nは、それぞれ二方弁(流量調整弁)25a、・・・25nを介して二次側還り管路26に接続されている。
一端を複数の空調負荷24a、・・・24nに接続した二次側還り管路26は、全ての空調負荷へ接続された枝管を集合させ本管となったところに、二次側熱媒還り温度計27を設け、もう片端を還りヘッダ18に接続されている。二次側熱媒還り温度計27は、温度指示調節器17a,17bに接続されている。
なお、二次側は、空調負荷24a、・・・24nに導入される熱媒温度として一定の温度を要求する変流量の負荷側装置で、以上の構成があれば何でもよいが、例えばの例として、インバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cの吐出である第二の往きヘッダ21における負荷側送水圧力に基づいた二次側変流量制御を示しておく。
【0024】
建物のどの方角にあるかや人員密度などにより、空調負荷24a、・・・24nのそれぞれが勝手な割合で部分負荷になり、二方弁25a,・・・25nはバラバラな開度となっている。その二方弁の総合的な開閉度合いを、インバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cの吐出圧の変化として捉え、インバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cの吐出である第二の往きヘッダ21における負荷側送水圧力を一定にする制御を基本に制御する。第二の往きヘッダ21に設けた圧力計29の計測値を図示しない圧力指示調整器に入力し演算してインバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cの流量を制御する。
二次側還り管路26は、全ての空調負荷へ接続された枝管を集合させ本管となったところに、二次側熱媒還り流量計28を設け、流量計測値を図示しない流量指示調節器に入力演算し、インバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cの台数を制御する。
二次側熱媒還り流量計28は、当然に本発明では必須の要素ではない。
【0025】
本実施形態において、温度指示調節器17a,17bは、例えば、図2に示すように、二次側熱媒の還り温度を計測する二次側熱媒還り温度計27で計測した温度(PV)を取り込み、二次側熱媒還り温度計27で計測した温度(PV)を元に一次側熱源還り温度計16a,16bの設定値(SP)を設定する演算部Aを備えている。
演算部Aは、一次側熱源還り温度計16a,16bの設定値(SP)を、二次側熱媒還り温度計27で計測した温度(PV)から任意の温度Tα(例えば、0.5℃)を減じた値(T1)pv−Tα)とするカスケード制御の演算を行う。
調節部Bは、一次側熱源還り温度計16a,16bの計測値(TR1]、TR2])が、演算部Aで演算された値(T1]pv−Tα)となるように、計測値(TR1]、TR2])と演算された設定値(T1]pv−Tα)との温度偏差に応じて、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を制御するインバータに2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を制御する指令を出力し、変流量制御を行う。
【0026】
ここで、本実施形態におけるTαの決め方について説明する。
Tαが0℃に近ければ近い程、バイパス流量は減少し(Tαが0℃の場合、定常時のバイパス流量は0になる)、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの搬送動力は押さえられるので、0℃に近い値は望ましい。
但し、空調負荷から戻ってくる還水流量や還水温度の乱れに対する応答性を確保するため、一次側(熱源側装置10)の流量が二次側(負荷側装置20)の流量より多い(リッチである)ことで、二次側(負荷側装置20)への送水温度を担保しているので、0℃にはできない。この担保のため、熱源装置としての全体系の応答性もあるが、計測機器である一次側熱源還り温度計16a,16bや、二次側熱媒還り温度計27の温度分解能、及び温度指示調節器17a,17bや信号伝送、操作器であるインバータを綜合した計装系の時定数やオフセットもあり、Tαの値は、例えば0.2℃以上が好適となってくる。
【0027】
例えば、二次側(負荷側装置20)の往き還り温度差が7℃(往き7℃−還り14℃)の場合、Tα=0.5℃とすると、一次側(熱源側装置10)の往き還り温度差が6.5℃(往き7℃−還り13.5℃)となるので、二次側(負荷側装置20)と一次側(熱源側装置10)の流量比は二次側往き還り温度差÷一次側往き還り温度差=(14℃−7℃)÷(13.5℃−7℃)=7℃÷6.5℃=1.08となり、二次側(負荷側装置20)流量を100%とすると、一次側(熱源側装置10)流量は108%、つまり、二次側(負荷側装置20)流量と比較して、8%分がバイパス流量(往きヘッダ→還りヘッダ)として発生する。
【0028】
Tαの値は、二次側(負荷側装置20)への往き温度と還り温度との温度差や温度計測のズレによって、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1を適用する現地で決定する。
例えば、バイパス流量は、二次側(負荷側装置20)への往き温度と還り温度との温度差が7℃(往き温度7℃−還り温度14℃)の場合、0.5℃(Tα)÷7℃(温度差)≒7%、二次側(負荷側装置20)への往き温度と還り温度との温度差が10℃(往き温度7℃−還り温度17℃)の場合、0.5℃(Tα)÷10℃(温度差)=5%、であり温度のズレを考慮しても概ね温度差の10%以下となる。
【0029】
一方、Tαの範囲は、0℃<Tα<二次側(負荷側装置20)の往き還り温度差となる。
例えば、二次側(負荷側装置20)の往き温度7℃、二次側(負荷側装置20)の還り温度14℃の場合は、14℃−7℃=7℃となり、Tαの上限は7℃となる。
また、Tα≦0℃の場合、二次側(負荷側装置20)の往き還り温度差より、一次側(熱源側装置10)の往き還り温度差が大きくなるので、二次側(負荷側装置20)の流量が多くなる。このため、リッチになるので、バイパス配管の流れが、還りヘッダ→往きヘッダとなり、二次側(負荷側装置20)の送水温度が、7℃よりも大きくなってしまう。
【0030】
図3は、調節部Bに基づく、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力を示す。
また、本実施形態では、二次側熱媒の還り温度から2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入口温度の温度指示調節器17a,17bの設定値を求める所定の差分Tα分の流量を第1の往きヘッダ13と還りヘッダ18との間のバイパス管路19を流すようにして、熱源側装置10の流量を二次側装置20の流量と比べて所定の差分Tα分の流量だけリッチにできる。
【0031】
このように構成された本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1では、先ず、以下の何れかの方法で、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの初期のポンプ周波数設定(最大周波数と最低周波数の設定)を行う。
(1)配管の圧力損失、冷凍機の機器圧力損失からインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの系の圧力損失を計算し、ポンプのP−Q線図から冷凍機の定格流量となるポンプ運転周波数(最大周波数)と冷凍機に必要な最低流量となるポンプ運転周波数(最低周波数)を設定する。
(2)仮設で設置できる流量計(例えば、超音波式の流量計)を試運転時に設置して、冷凍機の定格流量となるポンプ運転周波数(最大周波数)と冷凍機に必要な最低流量(最低周波数)となるポンプ運転周波数を設定する。
【0032】
次いで、通常の一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムと同様に、年間を通した建物の負荷変動に対応するため、2台以上の冷凍機(熱源装置)11a,11bを用いるので、例えば図4に示すように、ステップS1において、空調負荷熱量に応じた熱源運転台数演算が行われ、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの運転指令が出力される。
この運転台数演算は、冷凍機などの熱源装置に対して運転が不具合なく可能なよう予め定められている熱媒の最低通過流量を下回ることなく、かつ運転台数の追加運転時の立ち上がり時の流量や送水温度の変動を回避するように考慮しながら、例えば、図5に示すように、熱源装置の運転台数は、二次側(負荷側装置20)の流量や負荷熱量の大きさに基づいて判断される。この台数制御は1日のうちで頻度は低いものである。
次に、例えば、2つの冷凍機(熱源装置)11a,11bが決まると、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bが起動される(ステップS2)。
次に、所定の差分Tαが設定される(ステップS3)。
【0033】
次に、温度指示調節器17a,17bの演算部Aで、一次側冷凍機還り温度(TR1]sp=T1]pv−Tα,TR2]sp=T1]pv−Tα)を演算する(ステップS4)。
次に、調節部Bで、一次側熱源還り温度計16a,16bの計測値(TR1]sp,TR2]sp)が、演算部Aで演算された値(T1]pv−Tα)となるように、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を制御する(ステップS5)。
【0034】
次に、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1における負荷変化に合わせた動作の説明を行う。
図6は、二次側の往き還り温度差に変化が無く、二次側の流量が増加した場合について示す。
本例では、熱源装置11aが定格冷却能力700RT、熱源装置11bが定格冷却能力800RTの場合について説明する。
図6(a)は、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1の初期状態を示す。
【0035】
二次側の負荷は750RTであり、このとき、冷水の往き温度は7℃、冷水の還り温度は14℃、二次側還り管路26の冷水流量は5,400L/minである。また、2つの冷凍機(熱源装置)11a,11bは出口温度を7℃とする冷水を生成しており、そのため、熱源装置11aでは、定格冷却能力700RTの50%の350RT、熱源装置11bでは、定格冷却能力800RTの50%の400RTで運転している。このとき、インバータ付き熱源一次ポンプ14aでは2,720L/minの冷水を送り、インバータ付き熱源一次ポンプ14bでは3,110L/minの冷水を送るように制御される。従って、冷水の流量は、5,830L/minとなる。
【0036】
第1の往きヘッダ13へ送られた7℃の冷水は、3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cによって第2の往きヘッダ21から二次側往き管路23を介して空調負荷24a,24b,・・・24nへ圧送され、二方弁(流量調節弁)25a,・・・25nを介して二次側還り管路26を介して5,400L/minの冷水が還りヘッダ18に戻される。
また、第1の往きヘッダ13から430L/minの7℃の冷水がバイパス管路19を介して還りヘッダ18に供給される。
【0037】
二次側熱媒還り温度計27で計測される冷水の還り温度(PV)は14℃である。
従って、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入り口温度は、14℃−Tα(0.5℃)=13.5℃である。
図6(b)は、図6(a)の状態から二次側の負荷が変動し、二次側の往き還り温度差に変化が無く、二次側の流量が増加した状態を示す。
ここでは、二次側の負荷が750RTから788RTへ増加し、二次側還り管路26の冷水の還り流量が5,400L/minから5,670L/minとなり、7℃の冷水のバイパス流量が430L/minから160L/minに減少した。
【0038】
一次側熱源還り温度計16a,16bによる還りヘッダ18内の温度が、13.5℃から13.8℃に上昇する。
そこで、温度指示調節器17a,17bは、図6(c)に示すように、一次側熱源還り温度計16a,16bによる還りヘッダ18内の温度が、14℃−Tα(0.5℃)=13.5℃になるまで、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を上昇させる指令を2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bに出力する。
【0039】
これによって、インバータ付き熱源一次ポンプ14aは、回転数を上げて、2,853L/minの還り冷水を熱源装置11aへ圧送し、熱源装置11aは368RTの仕事をして7℃の冷水を生成し、インバータ付き熱源一次ポンプ14bは、回転数を上げて、3,256L/minの還り冷水を熱源装置11bへ圧送し、熱源装置11bは420RTの仕事をして7℃の冷水を生成する。
また、7℃の冷水のバイパス流量を160L/minから439L/minに上昇する。
この制御は、一次側熱源還り温度計16a,16bによる還りヘッダ18内の温度が、14℃−Tα(0.5℃)=13.5℃になるまで行われる。
【0040】
図7は、図6における2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力例を示す。
図7(a)は、図6(a)における2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力例を示す。
ここでは、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力が60%でバランスすると仮定している。
また、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力の最大周波数を100%、最低周波数を50%とし、比例帯を5℃と仮定すると、冷水還り温度と2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力は、図7(a)のようになる。
【0041】
図7(b)は、図6(b)における2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力例を示す。
二次側(負荷側)の流量増加により、バイパス管路19の混合比が変化して、冷水の還り温度が上昇する。
SP=14℃−Tα(0.5℃)=13.5℃との偏差(13.5℃→13.8℃)が生じても、それにより2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力が60%から63%に上昇する。
【0042】
図7(c)は、図6(c)における2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力例を示す。
2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力が76.7%でPV=13.5℃になってバランスしたとする(水側の流量や熱量変化による)。
2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bのインバータ出力が63%がこの水側状態でSP=PV=13.5℃とバランスするので、比例帯5℃のまま左へ0.3℃(63%−60%=3%)分シフトする。
【0043】
図8は、二次側の還り温度が上昇し、二次側の流量に変化がない場合について示す。
本例では、熱源装置11aが定格冷却能力700RT、熱源装置11bが定格冷却能力800RTの場合について説明する。
図8(a)は、図6(a)と同様に、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1の初期状態を示す。詳細は、図6(a)と同じであるから省略するが、二次側(負荷側)の還り温度は14℃であるから、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの温度設定(SP)値は、13.5℃である。
図8(b)は、図8(a)の状態から二次側の負荷が変動し、二次側の還り温度が上昇し、二次側の流量に変化がない状態を示す。
【0044】
ここでは、二次側の負荷が750RTから857RTへ増加し、二次側還り温度計27の計測値が14℃から15℃に上昇する。
このように、二次側(負荷側)の流量に変化がなく、還り温度が14℃から15℃に変化するので、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの温度設定(SP)値は、13.5℃から14.5℃に変更する。
このとき、第1の往きヘッダ13からバイパス管路19を通して、還りヘッダ18に7℃の冷水が流入し、15℃の還り水とミキシングして14.4℃の還り水となり、{(7℃×430L/min)+(15℃×5,400L/min)}÷(430L/min+5,400L/min)=14.4℃として示されるように、一次側熱源還り温度計16a,16bによる還りヘッダ18内の温度が、13.5℃から14.4℃に上昇する。
【0045】
そこで、温度指示調節器17a,17bは、図8(c)に示すように、一次側熱源還り温度計16a,16bによる還りヘッダ18内の温度が、15℃−Tα(0.5℃)=14.5℃になるまで、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を下降させる指令を2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bに出力する。
これによって、インバータ付き熱源一次ポンプ14aは、回転数を下げて、2,688L/minの還り冷水を熱源装置11aへ圧送し、熱源装置11aは400RTの仕事をして7℃の冷水を生成し、インバータ付き熱源一次ポンプ14bは、回転数を下げて、3071L/minの還り冷水を熱源装置11bへ圧送し、熱源装置11bは457RTの仕事をして7℃の冷水を生成する。
【0046】
また、7℃の冷水のバイパス流量を430L/minから359L/minに減少する。
この制御は、一次側熱源還り温度計16a,16bによる還りヘッダ18内の温度が、15℃−Tα(0.5℃)=14.5℃になるまで行われる。
以上のように、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1では、負荷側冷水の還り温度(PV値)に基づき、所定の差分(Tα)を差し引いた温度値(T1]pv−Tα)を、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入口温度の温度指示調節器17a,17bの設定値(SP)にカスケード制御として入力し、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入口温度の温度指示調節器17a,17bの出力値に基づいてインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を制御して、変流量制御を行うことができる。
【0047】
また、負荷側冷水の還り温度(PV値)から2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入口温度の温度指示調節器17a,17bの設定値(SP)を求める所定の差分Tα℃分の流量を第1の往きヘッダ13と還りヘッダ18との間のバイパス管路19を流すようにして、一次側を二次側と比べて所定の差分Tα℃分の流量だけリッチに流すことができる。
また、過渡期には変動しても、バイパス管路19により冷凍機出口温度の低温冷水が所定の差分Δt℃分還りヘッダ18に流入するように温度制御され、そのときの負荷熱量に応じたインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14b流量を、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14b入口温度の温度指示調節器17a,17bの出力のみでその内収束するように制御可能である。
【0048】
また、負荷側冷水の還り温度の計測値PV、所定の差分Tα℃、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入口温度の設定値(SP)のバイパス管路19中のバイパス冷水と負荷側還り冷水との混合温度(PV−Tα)の予定調和、により、定常状態でのバイパス管路19を流れるバイパス冷水の、負荷熱量によらない所定の差分Tα分の流量確保へ収束する。
そのため、インバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入口温度の温度指示調節器17a,17bからの出力の比例帯の位置は、図3に示すように、全体の熱搬送量に応じて適宜自動的にシフトしていく。
また、二次側(負荷側装置20)への温度補償については、一次側(熱源側装置10)の流量が多い(リッチ)になることで担保している。
【0049】
また、制御に必要な計測点が二次側(負荷側装置20)の還り温度を計測する二次側熱媒還り温度計27と、一次側(熱源側装置10)の還り温度を計測する一次側熱源還り温度計16a,16bとの2つで済むため、制御に必要な観測点が少なく、さらに安価で分解能のよい計測器での制御となる。
また、二次側の還り温度に応じた設定替えをする単純なカスケード制御は、システムの運転中常時作動するのに何の障害もなく切り替えなどの複雑な条件も必要なく、二次側の還り温度から常にTα減じた値に2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入口温度になるようインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの流量を制御するだけでバイパス管を通じて還り側へ流れ込む往き温度の熱媒との還りヘッダ18における混合を自動で行えるよう制御するので、総体として、二次側の還り温度が低くなると、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を落として流量を制限し、二次側の還り温度が上がると、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を上げて流量を多くする制御になっており、本発明の目的である熱源装置出口温度の一定制御と合わせて、熱媒の設計温度差から、二次側の還り温度を設定値に近づける制御にもなっている。
【0050】
このように、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1では、二次側(負荷側装置20)の還り温度の変化で、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの温度設定(SP)値が変化し、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの入口温度(冷凍機入口温度)との偏差が0となるように2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bの回転数を常時制御することができる。
また、温度指示調節器17a,17bを、二次側還り温度により自動設定変更するだけで制御可能なので単純であり、従来のように特別な制御ロジックや補正に複雑な条件付けを必要とする複雑な制御を要するという問題は解消される。
【0051】
なお、本実施形態では、2つの冷凍機(熱源装置)11a,11bと2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14a,14bとで熱源側装置10を構成したが、本発明はこれに限らず、3台以上の熱源装置及びインバータ付き熱源一次ポンプで熱源側装置10を構成してもよい。
また、本実施形態では、負荷側装置20を、例えばの例として、熱媒二次ポンプの吐出である第二の往きヘッダにおける負荷側送水圧力に基づいた二次側変流量制御として、第2の往きヘッダ21と3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22a,22b,22cと、複数の空調負荷24a、・・・24nと、二次側往き管路23と、二方弁(流量調整弁)25a、・・・25nと、二次側還り管路26と、第二の往きヘッダ21に設けた圧力計29と、二次側熱媒還り流量計28とで構成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、前述のように、二次側は空調負荷24a、・・・24nに導入される熱媒温度を一定の温度を要求する変流量の負荷側装置で、二次側熱媒還り温度計27さえあれば、そのシステムはどのような制御で構成されていてもよい。
【0052】
(第二実施形態)
図9は、本発明の第二実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aを示す説明図である。
本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aは、暖房用の熱源側装置10A(一次側ともいう)と、負荷側装置20A(二次側ともいう)とで構成されている。なお、本実施形態として示される暖房専用の温水生成機を有する場合は単独の実施形態となるが、前述する第一実施形態の熱源装置が本実施形態の温水生成機と共通であり、外気温度などから由来する冷房勝手と暖房勝手の季節の切替えで第一実施形態と第二実施形態とを共用する一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1も当然含むことはいうまでもない。
暖房用の熱源側装置10Aは、2つの温水生成機(熱源装置、例えば、吸収式冷温水機やボイラ、空冷ヒートポンプチラーのような温水の生成が可能な装置)11Aa,11Abと、一次往き管路12Aa,12bAと、第1の往きヘッダ13Aと、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abと、一次熱源還り管路15Aa,15Abと、還りヘッダ18Aと、バイパス管路19Aとを備えている。
【0053】
2つの温水生成機(熱源装置)11Aa,11Abは、それぞれ一次往き管路12Aa,12Abを介して第1の往きヘッダ13Aに接続されている。
2つの温水生成機(熱源装置)11Aa,11Abには、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abが、それぞれ一次熱源還り管路15Aa,15Abを介して接続されている。
一端をそれぞれ熱源装置11Aa,11Abに接続される一次熱源還り管路15Aa,15Abは、もう片端を還りヘッダ18Aに接続されている。一次熱源還り管路15Aa,15Abには、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abと還りヘッダ18Aとの間に、それぞれ一次側熱源還り温度計16Aa,16Abが設けられている。
【0054】
2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abと一次側熱源還り温度計16Aa,16Abとは、温度指示調節器(制御装置)17Aa,17Abにそれぞれ接続されている。
第一の往きヘッダ13Aと還りヘッダ18Aとは、バイパス管路19Aで接続されている。
これらの機器及び配管で一次側である熱源側装置10Aが構成される。
【0055】
一方、二次側である負荷側装置20Aは、第一の往きヘッダ13A(一次側と共通)と、第二の往きヘッダ21Aと、3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acと、空調機などからなる複数の空調負荷24Aa,・・・24Anと、二次側往き管路23Aと、二方弁25Aa,・・・25Anと、二次側還り管路26Aと、還りヘッダ18A(一次側と共通)とを備えている。
第二の往きヘッダ21Aは、第一の往きヘッダ13Aと対向して配置され、第一の往きヘッダ13Aと第二の往きヘッダ21Aとの間には3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acが二次側往き管路23Aの一部を介して接続されている。
第一の往きヘッダ13Aを一端とする二次側往き管路23Aは、3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acの圧送力により第二の往きヘッダ21から熱媒を、もう片端を複数の空調負荷24Aa,・・・24Anに接続して圧送する。
【0056】
複数の空調負荷24Aa,・・・24Anは、それぞれ二方弁(流量調整弁)25Aa,・・・25Anを介して二次側還り管路26Aに接続されている。
一端を複数の空調負荷24Aa,・・・24Anに接続した二次側還り管路26Aは、全ての空調負荷へ接続された枝管を集合させ本管となったところに、二次側熱媒還り温度計27Aを設け、もう片端を還りヘッダ18Aに接続されている。二次側熱媒還り温度計27Aは、温度指示調節器17Aa,17Abに接続されている。
なお、二次側は、空調負荷24Aa,・・・24Anに導入される熱媒温度を一定の温度を要求する変流量の負荷側装置で、以上の構成があれば何でもよいが、例えばの例として、インバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acの吐出である第二の往きヘッダ21Aにおける負荷側送水圧力に基づいた二次側変流量制御を示しておく。
【0057】
建物のどの方角にあるかや人員密度などにより、空調負荷24Aa,・・・24Anのそれぞれが勝手な割合で部分負荷になり、二方弁25Aa,・・・25Anはバラバラな開度となっている。その二方弁の総合的な開閉度合いを、インバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acの吐出圧の変化として捉え、ポンプの吐出である第二の往きヘッダにおける負荷側送水圧力を一定にする制御を基本に制御する。第二の往きヘッダ21Aに設けた圧力計29Aの計測値を図示しない圧力指示調整器に入力し演算してインバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acの流量を制御する。
二次側還り管路26Aは、全ての空調負荷へ接続された枝管を集合させ本管となったところに、二次側熱媒還り流量計28Aを設け、流量計測値を図示しない流量指示調節器に入力演算し、インバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acの台数を制御する。
二次側熱媒還り流量計28Aは、当然に本発明では必須の要素ではない。
【0058】
本実施形態において、温度指示調節器17Aa,17Abは、例えば、図10に示すように、二次側熱媒の還り温度を計測する二次側熱媒還り温度計27Aで計測した温度(PV)を取り込み、二次側熱媒還り温度計27Aで計測した温度(PV)を元に一次側熱源還り温度計16Aa,16Abの設定値(SP)を設定する演算部Aaを備えている。
演算部Aaは、一次側熱源還り温度計16Aa,16Abの設定値(SP)を、二次側熱媒還り温度計27Aで計測した温度(PV)から任意の温度Tα(例えば、0.5℃)を足した値(T1)pv+Tα)とするカスケード制御の演算を行う。
調節部Baは、一次側熱源還り温度計16Aa,16Abの計測値(TR1]、TR2])が、演算部Aaで演算された値(T1)pv+Tα)となるように、計測値(TR1]、TR2])と演算された設定値(T1)pv+Tα)との温度偏差に応じて、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を制御するインバータに2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を制御する指令を出力し、変流量制御を行う。
【0059】
ここで、本実施形態におけるTαの決め方について説明する。
Tαが0℃に近ければ近い程、バイパス流量は減少し(Tαが0℃の場合、定常時のバイパス流量は0になる)、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの搬送動力は押さえられるので、0℃に近い値は望ましい。
但し、空調負荷から戻ってくる還水流量や還水温度の乱れに対する応答性を確保するため、一次側(熱源側装置10A)の流量が二次側(負荷側装置20A)の流量より多い(リッチである)ことで、二次側(負荷側装置20A)への送水温度を担保しているので、0℃にはできない。この担保のため、熱源装置としての全体系の応答性もあるが、計測機器である一次側熱源還り温度計16Aa,16Abや、二次側熱媒還り温度計27Aの温度分解能、及び温度指示調節器17Aa,17Abや信号伝送、操作器であるインバータを綜合した計装系の時定数やオフセットもあり、Tαの値は、例えば0.2℃以上が好適となってくる。
【0060】
例えば、二次側(負荷側装置20A)の往き還り温度差が7℃(往き45℃−還り38℃)の場合、Tα=0.5℃とすると、一次側(熱源側装置10A)の往き還り温度差が6.5℃(往き45℃−還り38.5℃)となるので、二次側(負荷側装置20A)と一次側(熱源側装置10A)の流量比は二次側往き還り温度差÷一次側往き還り温度差=(45℃−38℃)÷(45℃−38.5℃)=7℃÷6.5℃=1.08となり、二次側(負荷側装置20A)流量を100%とすると、一次側(熱源側装置10A)流量は108%、つまり、二次側(負荷側装置20A)流量と比較して、8%分がバイパス流量(往きヘッダ→還りヘッダ)として発生する。
【0061】
Tαの値は、二次側(負荷側装置20A)への往き温度と還り温度との温度差や温度計測のズレによって、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aを適用する現地で決定する。
例えば、バイパス流量は、二次側(負荷側装置20A)への往き温度と還り温度との温度差が7℃(往き温度45℃−還り温度38℃)の場合、0.5℃(Tα)÷7℃(温度差)≒7%、二次側(負荷側装置20A)への往き温度と還り温度との温度差が10℃(往き温度45℃−還り温度35℃)の場合、0.5℃(Tα)÷10℃(温度差)=5%、であり温度のズレを考慮しても概ね温度差の10%以下となる。
【0062】
一方、Tαの範囲は、0℃<Tα<二次側(負荷側装置20A)の往き還り温度差となる。
例えば、T1]pv+Tαが前提であれば、二次側(負荷側装置20A)の往き温度45℃、二次側(負荷側装置20A)の還り温度38℃の場合は、45℃−38℃=7℃となり、Tαの上限は7℃となる。
また、Tα≦0℃の場合、二次側(負荷側装置20A)の往き還り温度差より、一次側(熱源側装置10A)の往き還り温度差が大きくなるので、二次側(負荷側装置20A)の流量が多くなる。このため、リッチになるので、バイパス配管の流れが、還りヘッダ→往きヘッダとなり、二次側(負荷側装置20)の送水温度が、45℃よりも低くなってしまう。
【0063】
図11は、調節部Baに基づく、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力を示す。
また、本実施形態では、二次側熱媒の還り温度から2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入口温度の温度指示調節器17Aa,17Abの設定値を求める所定の差分Tα分の流量を第1の往きヘッダ13Aと還りヘッダ18Aとの間のバイパス管路19Aを流すようにして、熱源側装置10Aの流量を二次側装置20Aの流量と比べて所定の差分Tα分の流量だけリッチにできる。
【0064】
このように構成された本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aでは、先ず、以下の何れかの方法で、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの初期のポンプ周波数設定(最大周波数と最低周波数の設定)を行う。
(1)配管の圧力損失、冷凍機の機器圧力損失からインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの系の圧力損失を計算し、ポンプのP−Q線図から冷凍機の定格流量となるポンプ運転周波数(最大周波数)と冷凍機に必要な最低流量となるポンプ運転周波数(最低周波数)を設定する。
(2)仮設で設置できる流量計(例えば、超音波式の流量計)を試運転時に設置して、冷凍機の定格流量となるポンプ運転周波数(最大周波数)と冷凍機に必要な最低流量(最低周波数)となるポンプ運転周波数を設定する。
【0065】
次いで、通常の一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムと同様に、年間を通した建物の負荷変動に対応するため、2台以上の冷凍機(熱源装置)11Aa,11Abを用いるので、例えば図12に示すように、ステップS1において、空調負荷熱量に応じた熱源運転台数演算が行われ、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの運転指令が出力される。
この運転台数演算は、温水生成機などの熱源装置に対して運転が不具合なく可能なよう予め定められている熱媒の最低通過流量を下回ることなく、かつ運転台数の追加運転時の立ち上がり時の流量や送水温度の変動を回避するように考慮しながら、例えば、図5に示すように、熱源装置の運転台数は、二次側(負荷側装置20A)の流量や負荷熱量の大きさに基づいて判断される。この台数制御は1日のうちで頻度は低いものである。
次に、例えば、2つの温水生成機(熱源装置)11Aa,11Abが決まると、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abが起動される(ステップS2)。
次に、所定の差分Tαが設定される(ステップS3)。
【0066】
次に、温度指示調節器17Aa,17Abの演算部Aaで、一次側冷凍機還り温度(TR1]sp=T1]pv+Tα,TR2]sp=T1]pv+Tα)を演算する(ステップS4)。
次に、調節部Baで、一次側熱源還り温度計16Aa,16Abの計測値(TR1]sp,TR2]sp)が、演算部Aaで演算された値(T1]pv+Tα)となるように、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を制御する(ステップS5)。
【0067】
次に、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aにおける負荷変化に合わせた動作の説明を行う。
図13は、二次側の往き還り温度差に変化が無く、二次側の流量が増加した場合について示す。
本例では、熱源装置11Aaが定格暖房能力700RT、熱源装置11Abが定格暖房能力800RTの場合について説明する。
図13(a)は、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aの初期状態を示す。
【0068】
二次側の負荷は750RTであり、このとき、温水の往き温度は45℃、温水の還り温度は38℃、二次側還り管路26Aの冷水流量は5,400L/minである。また、2つの温水生成機(熱源装置)11Aa,11Abは出口温度を45℃とする温水を生成しており、そのため、熱源装置11Aaでは、定格暖房能力700RTの50%の350RT、熱源装置11Abでは、定格暖房能力800RTの50%の400RTで運転している。このとき、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aaでは2,720L/minの温水を送り、インバータ付き熱源一次ポンプ14Abでは3,110L/minの温水を送るように制御される。従って、温水の流量は、5,830L/minとなる。
【0069】
第1の往きヘッダ13Aへ送られた45℃の温水は、3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acによって第2の往きヘッダ21Aから二次側往き管路23Aを介して空調負荷24Aa,24Ab,・・・24Anへ圧送され、二方弁(流量調節弁)25Aa,・・・25Anを介して二次側還り管路26Aを介して5,400L/minの温水が還りヘッダ18Aに戻される。
また、第1の往きヘッダ13Aから430L/minの45℃の温水がバイパス管路19Aを介して還りヘッダ18Aに供給される。
【0070】
二次側熱媒還り温度計27Aで計測される温水の還り温度(PV)は38℃である。
従って、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入り口温度は、38℃+Tα(0.5℃)=38.5℃である。
図13(b)は、図13(a)の状態から二次側の負荷が変動し、二次側の往き還り温度差に変化が無く、二次側の流量が増加した状態を示す。
ここでは、二次側の負荷が750RTから788RTへ増加し、二次側還り管路26Aの温水の還り流量が5,400L/minから5,670L/minとなり、45℃の温水のバイパス流量が430L/minから160L/minに減少した。
【0071】
一次側熱源還り温度計16Aa,16Abによる還りヘッダ18A内の温度が、38.8℃から38.2℃に下降する。
そこで、温度指示調節器17Aa,17Abは、図13(c)に示すように、一次側熱源還り温度計16Aa,16Abによる還りヘッダ18A内の温度が、38℃+Tα(0.5℃)=38.5℃になるまで、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を上昇させる指令を2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abに出力する。
【0072】
これによって、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aaは、回転数を上げて、2,853L/minの還り温水を熱源装置11Aaへ圧送し、熱源装置11Aaは368RTの仕事をして45℃の温水を生成し、インバータ付き熱源一次ポンプ14Abは、回転数を上げて、3,256L/minの還り温水を熱源装置11Abへ圧送し、熱源装置11Abは420RTの仕事をして45℃の温水を生成する。
また、45℃の温水のバイパス流量を160L/minから439L/minに上昇する。
この制御は、一次側熱源還り温度計16Aa,16Abによる還りヘッダ18A内の温度が、38℃+Tα(0.5℃)=38.5℃になるまで行われる。
【0073】
図14は、図13における2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力例を示す。
図14(a)は、図13(a)における2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力例を示す。
ここでは、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力が60%でバランスすると仮定している。
また、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力の最大周波数を100%、最低周波数を50%とし、比例帯を5℃と仮定すると、冷水還り温度と2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力は、図14(a)のようになる。
【0074】
図14(b)は、図13(b)における2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力例を示す。
二次側(負荷側)の流量増加により、バイパス管路19Aの混合比が変化して、温水の還り温度が上昇する。
SP=38℃+Tα(0.5℃)との偏差(38.5℃→38.2℃)が生じても、それにより2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力が60%から63%に上昇する。
【0075】
図14(c)は、図13(c)における2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力例を示す。
2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力が63%でPV=38.5℃になってバランスしたとする(水側の流量や熱量変化による)。
2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abのインバータ出力が63%がこの水側状態でSP=PV=38.5℃とバランスするので、比例帯5℃のまま右へ0.3℃(63%−60%=3%)分シフトする。
【0076】
図15は、二次側の還り温度が下降し、二次側の流量に変化がない場合について示す。
本例では、熱源装置11Aaが定格冷却能力700RT、熱源装置11Abが定格冷却能力800RTの場合について説明する。
図15(a)は、図13(a)と同様に、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aの初期状態を示す。詳細は、図13(a)と同じであるから省略するが、二次側(負荷側)の還り温度は38℃であるから、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの温度設定(SP)値は、38.5℃である。
図15(b)は、図15(a)の状態から二次側の負荷が変動し、二次側の還り温度が上昇し、二次側の流量に変化がない状態を示す。
【0077】
ここでは、二次側の負荷が750RTから857RTへ増加し、二次側還り温度計27Aの計測値が38℃から37℃へ下降する。
このように、二次側(負荷側装置20A)の流量に変化がなく、還り温度が38℃から37℃に変化するので、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの温度設定(SP)値は、38.5℃から37.5℃に変更する。
このとき、第1の往きヘッダ13Aからバイパス管路19Aを通して、還りヘッダ18Aに45℃の温水が流入し、37℃の還り水とミキシングして37.6℃の還り水となり、{(45℃×430L/min)+(37℃×5,400L/min)}÷(430L/min+5,400L/min)=37.6℃として示されるように、一次側熱源還り温度計16Aa,16Abによる還りヘッダ18内の温度が、38.5℃から37.6℃に上昇する。
【0078】
そこで、温度指示調節器17Aa,17Abは、図15(c)に示すように、一次側熱源還り温度計16Aa,16Abによる還りヘッダ18A内の温度が、37℃+Tα(0.5℃)=37.5℃になるまで、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を下降させる指令を2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abに出力する。
これによって、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aaは、回転数を下げて、2,688L/minの還り冷水を熱源装置11Aaへ圧送し、熱源装置11Aaは400RTの仕事をして45℃の温水を生成し、インバータ付き熱源一次ポンプ14Abは、回転数を下げて、3071L/minの還り温水を熱源装置11Abへ圧送し、熱源装置11Abは457RTの仕事をして45℃の温水を生成する。
【0079】
また、45℃の温水のバイパス流量を430L/minから359L/minに減少する。
この制御は、一次側熱源還り温度計16Aa,16Abによる還りヘッダ18A内の温度が、37℃+Tα(0.5℃)=37.5℃になるまで行われる。
以上のように、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aでは、負荷側温水の還り温度(PV値)に基づき、所定の差分(Tα)を足した温度値(T1]pv+Tα)を、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入口温度の温度指示調節器17Aa,17Abの設定値(SP)にカスケード制御として入力し、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入口温度の温度指示調節器17Aa,17Abの出力値に基づいてインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を制御して、変流量制御を行うことができる。
【0080】
また、負荷側温水の還り温度(PV値)から2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入口温度の温度指示調節器17Aa,17Abの設定値(SP)を求める所定の差分Tα℃分の流量を第1の往きヘッダ13Aと還りヘッダ18Aとの間のバイパス管路19Aを流すようにして、一次側を二次側と比べて所定の差分Tα℃分の流量だけリッチに流すことができる。
また、過渡期には変動しても、バイパス管路19Aにより温水生成器の高温温水が所定の差分Δt℃分還りヘッダに流入するように温度制御され、そのときの負荷熱量に応じたインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Ab流量を、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Ab入口温度の温度指示調節器17Aa,17Abの出力のみでその内収束するように制御可能である。
【0081】
また、負荷側冷水の還り温度の計測値PV、所定の差分Tα℃、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入口温度の設定値(SP)のバイパス管路19A中のバイパス温水と負荷側還り温水との混合温度(PV+Tα)の予定調和、により、定常状態でのバイパス管路を流れるバイパス温水の、負荷熱量によらない所定の差分Tα分の流量確保へ収束する。
そのため、インバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入口温度の温度指示調節器17Aa,17Abからの出力の比例帯の位置は、図11に示すように、全体の熱搬送量に応じて適宜自動的にシフトしていく。
また、二次側(負荷側)への温度補償については、一次側(熱源側装置10A)の流量が多い(リッチ)になることで担保している。
【0082】
また、制御に必要な計測点が二次側(負荷側装置20A)の還り温度を計測する二次側熱媒還り温度計27Aと、一次側(熱源側装置10A)の還り温度を計測する一次側熱源還り温度計16Aa,16Abとの2つで済むため、制御に必要な観測点が少なく、さらに安価で分解能のよい計測器での制御となる。
また、二次側の還り温度に応じた設定替えをする単純なカスケード制御は、システムの運転中常時作動するのに何の障害もなく切り替えなどの複雑な条件も必要なく、二次側の還り温度から常にTα減じた値に2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入口温度になるようインバータ付き熱源一次ポンプの流量を制御するだけでバイパス管を通じて還り側へ流れ込む往き温度の熱媒との還りヘッダ18Aにおける混合を自動で行えるよう制御するので、総体として、二次側の還り温度が低くなると、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を上げた流量を多くし、二次側の還り温度が上がると、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を下げて流量を制限する制御になっており、本発明の目的である熱源装置出口温度の一定制御と合わせて、熱媒の設計温度差から、二次側の還り温度を設計値に近づける制御にもなっている。
【0083】
このように、本実施形態に係る一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム1Aでは、二次側(負荷側装置20A)の還り温度の変化で、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの温度設定(SP)値が変化し、2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの入口温度(冷凍機入口温度)との偏差が0となるように2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abの回転数を常時制御することができる。
また、温度指示調節器17Aa,17Abを、二次側還り温度により自動設定変更するだけで制御可能なので単純であり、従来のように特別な制御ロジックや補正に複雑な条件付けを必要とする複雑な制御を要するという問題は解消される。
【0084】
なお、本実施形態では、二つの温水生成機(熱源装置)11Aa,11Abと2つのインバータ付き熱源一次ポンプ14Aa,14Abとで熱源側装置10Aを構成したが、本発明はこれに限らず、3台以上の熱源装置及びインバータ付き熱源一次ポンプで熱源側装置10Aを構成してもよい。
また、本実施形態では、負荷側装置20Aを、例えばの例として、熱媒二次ポンプの吐出である第二の往きヘッダにおける負荷側送水圧力に基づいた二次側変流量制御として、第2の往きヘッダ21Aと3つのインバータ付き熱媒二次ポンプ22Aa,22Ab,22Acと、複数の空調負荷24Aa,・・・24Anと、二次側往き管路23Aと、二方弁(流量調整弁)25Aa,・・・25Anと、二次側還り管路26Aと、第二の往きヘッダ21Aに設けた圧力計29Aと、二次側熱媒還り流量計28Aとで構成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、前述のように、二次側は空調負荷24Aa,・・・24Anに導入される熱媒温度を一定の温度を要求する変流量の負荷側装置で、二次側熱媒還り温度計27Aさえあれば、そのシステムはどのような制御で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,1A 一次・二次ポンプ方式熱源変流量システム
10,10A 熱源側装置
11a,11b 冷凍機(熱源装置)
11Aa,11Ab 温水生成機(熱源装置)
12a,12b,12Aa,12Ab 一次往き管路
13,13A 第1の往きヘッド
14a,14b,14Aa,14Ab インバータ付き熱源一次ポンプ
15a,15b,15Aa,15Ab 一次熱源還り管路
16a,16b,16Aa,16Ab 一次側熱源還り温度計
17a,17b,17Aa,17Ab 温度指示調節器(制御装置)
18,18A 還りヘッダ
19,19A バイパス管路
20,20A 負荷側装置
21,21A 第2の往きヘッダ
22a,22b,22c,22Aa,22Ab,22Ac インバータ付き熱媒二次ポンプ
24a,・・・24n,24Aa,・・・24An 空調負荷
23,23A 二次側往き管路
25a,・・・25n,25Aa,・・・25An 二方弁(流量調節弁)
26,26A 二次側還り管路
27,27A 二次側熱媒還り温度計
A,Aa 演算部
B,Bb 調節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調負荷熱量を空調負荷で処理しかつ空調負荷熱量に応じて変流量制御される負荷側装置に対し、往きヘッダ及び還りヘッダで接続される熱源側装置を有する一次・二次ポンプ方式熱源変流量システムである熱源ポンプの変流量制御装置であって、
前記熱源側装置は、
前記負荷側装置の端部である前記往きヘッダに一次往き管路を介して接続する複数の熱源装置と、
それぞれの熱源装置に対応して一次熱源還り管路を介して接続される複数のインバータ付き熱源一次ポンプと、
一端をそれぞれ熱源装置に接続され、もう片端を前記還りヘッダに接続される一次熱源還り管路には、前記インバータ付き熱源一次ポンプと前記還りヘッダとの間に、それぞれ設けられた一次側熱源還り温度計と、
前記一次側熱源還り温度計からの計測信号に基づいて前記インバータ付き熱源一次ポンプの流量制御を行う制御装置と、
前記往きヘッダと前記還りヘッダとを接続するバイパス管路とで構成され、
前記負荷側装置の前記空調負荷から前記還りヘッダに戻る二次側還り管路本管には、二次側熱媒還り温度計を設け、
前記二次側熱媒還り温度計の計測値を前記制御装置に入力し、一次側熱源還り温度の設定値を前記二次側熱媒還り温度計の計測値に基づいて変更するカスケード制御を行う
ことを特徴とする熱源ポンプの変流量制御。
【請求項2】
前記熱源側装置から往きヘッダを介して一定往き温度に保たれた熱媒を送給し、二次側熱媒還り温度と前記往き温度との差分より、一次側熱源還り温度と前記往き温度との差分を常に小さくすることで、前記バイパス管に前記往きヘッダから前記還りヘッダへ向かう流れを形成して、前記熱源側装置を流れる熱媒量を前記負荷側装置を流れる熱媒量と比べて多量(リッチ)に流すことを特徴とする請求項1記載の熱源ポンプの変流量制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記二次側熱媒還り温度計で計測した熱媒還り温度(T1)に基づき、冷房時には所定の差分(Tα)を減じた温度値(T1]pv−Tα)又は暖房時には所定の差分(Tα)を足した温度値(T1]pv+Tα)を演算算出し、一次側熱源還り温度(前記インバータ付き熱源一次ポンプの入口温度)の設定値として逐次設定するカスケード制御し、
前記一次側熱源還り温度計で計測される熱媒温度が、前記温度値(T1]pv−Tα)又は前記温度値(T1]pv+Tα)となるように前記インバータ付き熱源一次ポンプの流量制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱源ポンプの変流量制御装置。
【請求項4】
前記所定の差分(Tα)が0.2℃〜0.5℃であることを特徴とする請求項3に記載の熱源ポンプの変流量制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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