説明

熱物性解析装置及びこの装置を用いた熱物性解析方法

【課題】空間分解を高くしても精度よく被測定物の熱物性を解析・評価することができる熱物性解析装置及びこの装置を用いた解析方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、検出光出射手段20と検出光B2を測定部位11aまで導光する検出光用光学系40とを有して測定部位11aに検出光B2を照射する検出光照射手段を備え、検出光用光学系40は、光路長を変更するための光路長調節手段42と、その下流側に設けられ、内部に入射した前記検出光が全反射を繰り返して伝搬されることでこの検出光B2を所定の方向に出射する光導波路45と、を含み、光導波路45は、入射面45aが検出光B2の到達する位置で当該検出光B2が全反射条件で光導波路45内に入射可能な方向を向くように配設され、入射面45aの大きさが入射する検出光B2のビーム幅よりも大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物表面の測定部位に加熱光を照射して加熱し、この測定部位に検出光を反射させてこの反射光を受光し、その受光強度の変化から前記測定部位の温度変化を検出して熱物性についての解析を行う熱物性解析装置及び熱物性解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄い被測定物、例えば薄膜試料の熱物性についての解析評価のための測定方法として、特許文献1に記載された方法が知られている。この方法は、いわゆるサーモリフレクタンス法であり、共通の短パルスレーザが加熱光(加熱用パルス光)と検出光(検出用パルス光)とに分岐され、これら加熱光と検出光とが透明基板上に形成された薄膜試料における測定部位の表裏各面に照射されることにより熱拡散測定が行われる。
【0003】
具体的に、サーモリフレクタンス法では、短パルスレーザの分岐光のうち一方の加熱光が変調手段によって変調されると共に光学遅延手段(光路長調節手段)によって遅延されつつ測定部位の一方の面に照射され、他方の検出光が測定部位の他方の面に照射される。そして、測定部位の他方の面で反射された検出光が検出され、その検出信号(強度信号)における加熱光の変調成分が検出される。
【0004】
この状態で、光路長調節手段によって加熱光の遅延状態を変化させることで、測定部位の過渡的な温度変化(光学的反射率の変化)が測定され、その過渡的な温度変化(過渡温度応答)が解析されることによって測定部位(被測定物)の熱物性値が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−83113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、熱物性解析装置において高空間分解能が求められているが、そのためには、被測定物に照射される加熱光及び検出光を絞る、即ち、各光(加熱光及び検出光)のビーム幅を小さくする必要があった。また、測定部位において加熱光と検出光との照射位置がずれると、熱物性値を精度よく測定することができないため、高空間分解能の熱物性解析装置、即ち、加熱光及び検出光のビーム幅をそれぞれ小さくした熱物性解析装置においては、加熱光及び検出光を測定部位に導光する光学系の調整を極めて高精度に行わなければならなかった。
【0007】
しかし、前記の熱物性解析装置の光路長調節手段においては、加熱光の光路上に設けられた反射部材を移動させることで光路長の変更を行うため、この可動部分(反射部材等)の調整が極めて困難であった。これは、可動部分では、反射部材の移動によって機械誤差等に起因する反射部材の姿勢の変化が生じ、これにより加熱光の光軸がずれるためである。しかも、一方の光(加熱光)の光軸が僅かでもずれると、各光が細く絞られているために測定部位において加熱光と検出光との照射位置のずれが顕著に現れ、被測定物における加熱光での加熱部位の熱拡散等を検出光によって正確に測定できなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、空間分解を高くしても精度よく被測定物の熱物性を解析・評価することができる熱物性解析装置及びこの装置と用いた熱物性解析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、被測定物表面の測定部位に光を照射し、その反射光に基づいて前記被測定物の熱物性についての解析を行う熱物性解析装置であって、前記測定部位に加熱光を照射する加熱光照射手段と、前記測定部位に温度変化を検出するための検出光を照射する検出光照射手段と、前記測定部位からの前記検出光の反射光の強度を測定する反射光測定手段と、を備え、前記検出光照射手段は、前記検出光を前記測定部位まで導光する検出光用光学系を有し、前記検出光用光学系は、前記検出光の光路長を変更するための光路長調節手段と、前記検出光の光路上において前記光路長調節手段の下流側に設けられ、内部に入射した前記検出光が全反射を繰り返して伝搬されることでこの検出光を所定の方向に出射する光導波路と、を含み、前記光導波路は、前記検出光が当該光導波路内に入射可能な入射面を有し、この入射面が前記光路長調節手段からの検出光の到達する位置で当該検出光が当該光導波路内に全反射条件で入射可能な方向を向いた姿勢で配設されることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、光路長調節手段において光路長を変更したときに検出光の光軸のずれが生じても、その下流側に設けられる光導波路内に検出光が入射することによって測定部位に正確に導光される。具体的には、光導波路を光路長調節手段の下流側に設けることで、光路長調節手段において検出光の光軸のずれが生じても、この検出光が光導波路内に全反射条件で入射することにより当該光導波路から所定の方向に出射されるため、前記光軸のずれが解消する。
【0011】
本発明に係る熱物性解析装置においては、前記検出光用光学系は、透過した光を屈折させて焦点に集光可能な集光手段を備え、前記集光手段は、前記光路長調節手段から前記光導波路に向う検出光が透過し且つ前記焦点が前記光導波路の入射面と略一致する位置に配置されること、が好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、光路長調節手段において生じる検出光の光軸のずれが大きくても、集光手段によって検出光が入射面側に屈折させられて光導波路内に入射することができる。
【0013】
この場合、前記集光手段が、光を集光可能な集光部と、この集光部における前記入射面の姿勢を維持しつつ当該集光部をその光軸に沿って移動させる移動手段と、を有する構成とすることで、光導波路の入射面に対する焦点の位置の調節が容易になる。
【0014】
前記検出光用光学系は、前記光導波路から前記測定部位に向う検出光の強度を測定する強度測定手段を備えること、が好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、光導波路を検出光が通過することによりその強度が変化しても、被測定物についての熱物性を精度よく解析・評価することができる。即ち、光導波路内を通過することにより生じた検出光の強度変化を強度測定手段によって検出し、その結果に基づいて反射光測定手段により測定した測定部位からの検出光の反射光強度を補正することにより、被測定物についての熱物性を精度よく解析・評価することができる。
【0016】
また、前記検出光用光学系は、前記光路上における前記光導波路の下流側に設けられ、前記検出光が通過することにより当該検出光を所定の偏光状態とする偏光手段を備えること、が好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、光導波路内で全反射を繰り返すことによりその偏光状態が変化した検出光を、この偏光手段を通過させることにより元の偏光状態(所定の偏光状態)に戻すことができる。
【0018】
尚、当該熱物性解析装置において、前記光導波路は、光ファイバにより構成されてもよい。光ファイバは可撓性を有するためその入射端及び出射端の配置の自由度が高く、これを用いることで熱物性解析装置における構成部品の配置の自由度が向上する。
【0019】
また、上記課題を解消すべく、本発明は、上記いずれかの熱物性解析装置を用いて被測定物の熱物性についての解析を行う熱物性解析方法であって、前記加熱光照射手段によって加熱光を前記測定部位に照射すると共に、前記検出光照射手段によって検出光を前記測定部位に照射する照射工程と、前記反射光測定手段によって前記測定部位からの前記検出光の反射光の強度を測定する測定工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
上記いずれかの熱物性解析装置を用いることで、照射工程において検出光用光学系の光路長調節手段で光路長を変更することにより検出光の光軸のずれが生じても、この検出光を測定部位に正確に照射することができる。その結果、被測定物についての熱物性を高分解能且つ高精度で解析・評価することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本発明によれば、空間分解を高くしても精度よく被測定物についての熱物性を解析・評価することができる熱物性解析装置及びこの装置を用いた熱物性解析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る熱物性解析装置の概略構成図である。
【図2】前記熱物性解析装置の光路遅延装置の動作及び検出光の光路を示す図である。
【図3】前記熱物性解析装置の導波路及び導波路用集光手段の概略を示す図である。
【図4】他実施形態に係る熱物性解析装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態に係る熱物性解析装置(以下、単に「解析装置」とも称する。)は、加熱光照射手段によって薄膜試料(被測定物)11の表面の測定部位11a(以下、単に「測定部位11a」とも称する。)に加熱光B1を照射すると共に検出光照射手段よって測定部位11aに温度変化を検出するための検出光B2を照射し、反射光測定手段により測定部位11aからの検出光強度を測定することにより、前記測定部位11aの温度変化を測定する(熱拡散測定を行う)サーモリフレクタンス法に基づく熱物性解析を行う装置である。尚、本実施形態の解析装置10は、1つのパルスレーザ21から周期的に出射(放射)される基幹パルスレーザ(基幹パルス光)B0を2分岐させて、その一方を加熱用パルス光(以下、単に「加熱光」とも称する。)B1、他方を検出用パルス光(以下、単に「検出光」とも称する。)B2としている。また、本実施形態に係る薄膜試料11は、基板12上に成膜されている。
【0025】
以下、具体的に説明する。
【0026】
解析装置10は、加熱光B1及び検出光B2の双方を出射する光出射手段20と、加熱光B1を薄膜試料11の測定部位11aまで導光する第1の光学系30と、検出光B2を測定部位11aまで導光する第2の光学系40と、測定部位11aからの反射検出光B2aの強度を測定する検出光測定手段60と、測定部位11aからの反射検出光B2aを検出光測定手段60まで導光する第3の光学系70と、コンピュータ80と、出力手段82と、ステージ13とを備える。
【0027】
光出射手段20は、所定周期のパルス光を出射するパルスレーザ21と、このパルスレーザ21から出射されたパルス光を加熱光B1と検出光B2とに分岐する第1ビームスプリッタ(分岐手段)22と、分岐したパルス光をそれぞれ所定の偏光方向に偏光する偏光素子101,102とを有する。
【0028】
パルスレーザ21は、所定周期で断続する数ピコ秒〜十ピコ秒程度の幅の単位パルス光PLで構成される基幹パルス光(基幹パルスビーム)B0を出射する光源である。例えば、本実施形態に係るパルスレーザ21は、波長が532nm、パルス幅が12ps、繰り返し周波数が80MHz、ビーム幅が1.4mmのパルス光(パルス状のビーム)B0を出力する。
【0029】
第1ビームスプリッタ22は、パルスレーザ21から出力される基幹パルス光B0を分岐させるもので、加熱光(加熱用パルス光)B1と検出光(検出用パルス光)B2とに2分岐させる。この第1ビームスプリッタ22は、基幹パルス光B0を分岐した後、加熱光B1を第1の光学系30に入射させると共に検出光B2を第2の光学系40に入射させる。本実施形態では、第1ビームスプリッタ22として偏光ビームスプリッタが用いられる。
【0030】
偏光素子101,102は、第1ビームスプリッタの下流側に配置される。第1ビームスプリッタ22で分岐された一方の光である加熱光B1は、偏光素子101を通過することによって第1の偏光方向に偏光される。また、第1ビームスプリッタ22で分岐された他方の光である検出光B2は、偏光素子102を通過することによって第2の偏光方向に偏光される。尚、第1の偏光方向と第2の偏光方向とでは偏光方向が異なり、例えば、互いに直交する。
【0031】
第1の光学系30は、ミラー31と、集光レンズ32と、第2ビームスプリッタ33とを有し、光出射手段20から出射された加熱光B1を測定部位11aまで導光する。この第1の光学系30は、加熱光B1を測定部位11aに対して垂直方向(即ち、薄膜試料11に対して法線方向)から照射するように導光する。また、第1の光学系30には、加熱光B1を強度変調するための変調手段34が設けられている。
【0032】
集光レンズ32は、第1の光学系30で導光される加熱光B1を測定部位11aに向けて集光するものである。この集光レンズ32は、その焦点位置が測定部位11aと一致するように配置されている。これにより、集光レンズ32によって集光された加熱光B1は、測定部位11aにおいて集束する。尚、本実施形態の集光レンズ32は、第2の光学系40及び第3の光学系70の一部もそれぞれ構成する。
【0033】
第2ビームスプリッタ33は、偏光ビームスプリッタであり、第2の偏光方向に偏光された光を透過させると共に第1の偏光方向の光を反射する。即ち、本実施形態の第2ビームスプリッタ33は、第2の偏光方向に偏光されている検出光B2を透過するが、第1の偏光方向に偏光されている加熱光B1を反射する。この第2ビームスプリッタ33は、当該第2ビームスプリッタ33で反射した加熱光B1を、その光軸が当該ビームスプリッタ33を通過した後の検出光B2の光軸と同軸又は略同軸となるように検出光B2に合流させる。尚、本実施形態の第2ビームスプリッタ33は、第3の光学系70の一部も構成する。この第3の光学系70における第2ビームスプリッタ33の作用については後述する。
【0034】
変調手段34は、変調器35と発振器36とを有し、変調器35が発振器36からの変調信号に基づいて加熱光B1を所定の周波数F1で強度変調する。本実施形態では、変調器35として音響光学変調器が用いられ、加熱光B1が200kHzで強度変調される。
【0035】
第2の光学系40は、ミラー41と、光路遅延装置(光路長調節手段)42と、導波路用集光手段(集光手段)50と、光導波路45と、導波路用偏光素子(偏光手段)46と、強度測定手段55と、集光レンズ32と、を有し、光出射手段20から出射された検出光B2を測定部位11aまで導光する。本実施形態の第2の光学系40は、検出光B2を測定部位11aに対して垂直方向から照射するように導光する。
【0036】
光路遅延装置42は、図2にも示されるように、加熱光B1と検出光B2との間で測定部位11aにおけるパルス光到達の時間差を生じさせるものであり、その時間差を例えばピコ秒オーダーの精度で調節可能(可変)である。この光路遅延装置42は、検出光B2の光路上で検出光B2を反射し、光路長を変更するために移動可能な反射部材43を備える。この反射部材43は、当該光路遅延装置42に入射してきた検出光B2を、当該検出光B2に対し、平行でその進行方向が反対となるように反射する。本実施形態の光路遅延装置42では、反射部材43として一対のミラーが用いられる。これら一対のミラー43は、各反射面が互いに直交するように配置される。尚、反射部材43は、一対のミラーに限定されず、プリズム等が用いられてもよい。
【0037】
光路遅延装置42は、一対のミラー43を搭載し、入射してくる検出光B2に対する一対のミラー43の姿勢を維持した状態で当該一対のミラー43を当該光路遅延装置42に入射してくる検出光B2の光軸方向(図1における矢印α方向)に移動させる移動ステージ44、及びこの移動ステージ44をコンピュータ80からの制御指令に従って駆動する駆動機構(図示せず)等を備えている。
【0038】
尚、光路遅延装置42は、反射部材43を移動させることにより光路長を変更する構成に限定されず、検出光B2の光路長を変更可能であれば他の構成であってもよい。
【0039】
導波路用集光手段50は、検出光B2の光路において光路遅延装置42の下流側に配置され、図3にも示されるように、入射用レンズ(集光部)51と、この入射用レンズ51を駆動する駆動機構(移動手段)52とを備える。この導波路用集光手段50は、光路遅延装置42において検出光B2の光軸のずれが生じたときに、この検出光B2を入射用レンズ51の光軸C側に屈折させる。本実施形態の導波路用集光手段50には、光導波路45の入射側の端部を保持可能な入射側移動ステージ53が設けられ、この入射側移動ステージ53に入射用レンズ51と駆動機構52とが配設されている。
【0040】
入射用レンズ51は、透過した光をその光軸C側に屈折させるレンズである。本実施形態では、光軸Cが光導波路(本実施形態では、光ファイバ)45の入射面(光ファイバのコアの入射側端面)45aとその中心で直交し、焦点が入射面45aと一致する位置及び姿勢で配置されている。尚、入射用レンズ51は、その焦点が入射面45aに略一致するように配置されていればよい。本実施形態においては、光軸C方向において入射面45aを挟んで前後1mm程度の範囲内に焦点が位置するように入射用レンズ51が配置されていればよい。また、この入射用レンズ51を透過した後、光導波路45内に入射する検出光B2のビーム幅は、約100μm以下となる。
【0041】
駆動機構52は、入射用レンズ51を保持し、当該入射用レンズ51における入射面45aの姿勢を維持しつつ当該入射用レンズ51をその光軸Cに沿って移動(図3の矢印β参照)させる機構である。この駆動機構52により、入射用レンズ51の入射面45aに対する焦点の位置を調節することが可能となる。
【0042】
入射側移動ステージ53は、光導波路45の入射側の端部を保持する保持部53aを備え、この保持部53aを入射用レンズ51に対して当該レンズ51の光軸Cと直交する方向に相対移動させることができる。具体的に、入射側移動ステージ53は、光導波路45の入射面45aを入射用レンズ51に対して上下方向(図3において上下方向)及び左右方向(図3において紙面と直交する方向)に相対移動させることができる。このように入射面45aに対して入射用レンズ51を相対移動可能に構成することで、入射面45aと入射用レンズ51との相対位置が光軸Cと直交する方向にずれたときに容易に修正することができる。
【0043】
光導波路45は、検出光B2の光路において入射用レンズ51の下流側に設けられ、内部に入射した検出光B2が全反射を繰り返して伝搬されることでこの検出光B2を所定の方向に出射するものである。具体的に、光導波路45は、検出光B2の伝搬方向に延びるコアと、このコアを外側から周方向に囲み、コアよりも屈折率の小さなクラッドとからなる。コアの一方端(図3において右端)には、検出光B2がコア内に入射する入射面45aが形成され、他方端(図3において左端)には、コア内に入射した検出光B2が外部に出射する出射面45bが形成されている。入射面45aの直径は、当該入射面45aから入射する検出光B2のビーム幅よりも大きい。これにより、検出光B2の光軸がずれても、当該検出光B2がコア内に入射し易くなる。本実施形態では、光導波路45として光ファイバが用いられる。具体的には、コア径約が100μmのマルチモード光ファイバ若しくはコア径が約10μmのシングルモード光ファイバが用いられる。
【0044】
この光導波路45では、コア内に入射した検出光B2がコアとクラッドとの境界面で全反射を繰り返しながら伝搬されることで、出射面45bから所定の方向(図3においては光導波路45の軸方向)に出射される。
【0045】
尚、コア内に入射した検出光B2は、所定回数以上、全反射を繰り返さないと出射面45bから所定の方向に出射されないため、光導波路45は、コア内に入射した検出光B2が出射面45bから所定の方向に出射されるような回数以上の全反射が繰り返される長さを有している。
【0046】
このように構成される光導波路45は、入射面45aが光路遅延装置42からの検出光B2の到達する位置で当該検出光B2が光導波路45(詳しくはコア内)に全反射条件で入射可能な方向を向き、且つ、光導波路45から出射された検出光B2が測定部位11aに到達できるような姿勢で配設される。尚、図1においては、光路遅延装置42から測定部位11aまで真っ直ぐに検出光B2が進むことができるため、光導波路45は、入射面45aを光路遅延装置42の検出光B2の出射部位に向けると共に出射面45bをその光軸が測定部位11aの法線方向と一致するように配設されている。
【0047】
本実施形態では、光導波路45として前記のような光ファイバが用いられている。光ファイバは可撓性を有するため配置の自由度が高く、当該光ファイバを光導波路45として用いることで解析装置10における構成部品の配置の自由度が向上する。
【0048】
また、光導波路45が可撓性を有する場合、入射側の端部と出射側の端部とを異なる移動ステージ53,153に保持させて入射側の端部と出射側の端部とを相対変位可能に構成することができる。具体的に、出射側移動ステージ153は、導波路用偏光素子46に対して上下方向(図3において上下方向)及び左右方向(図3において紙面と直交する方向)に相対移動させることができる。このように光導波路45の入射側端部と出射側端部とを異なる移動ステージ53,153にそれぞれ保持させて相対変位可能に構成することで、下流側に向けて出射する検出光B2の方向がずれたときに、入射側の端部位置を固定した状態で、出射側の端部のみを変位させ、検出光B2の方向のずれを容易に修正することができる。
【0049】
尚、光導波路45の具体的構成は限定されない。例えば、本実施形態では、光導波路45として光ファイバを用いているが、これに限定されず、光がxとy軸方向に閉じ込められ、z軸方向に細いビーム状で導波されるいわゆる3次元光導波路等を用いてもよい。
【0050】
導波路用偏光素子46は、検出光B2の光路上における光導波路45の下流側に設けられ、検出光B2が通過することにより当該検出光B2を所定の偏光状態にするものである。この導波路用偏光素子46は、光導波路を全反射を繰り返しつつ通過することにより偏光状態が変化した検出光B2を、元の偏光状態に戻すために設けられている。本実施形態では、検出光B2は、導波路用偏光素子46を通過することにより第2の偏光方向に偏光した状態となる。
【0051】
強度測定手段55は、光導波路45から測定部位11aに向う検出光B2の強度を測定するためのものであり、第3ビームスプリッタ56と、補正用光検出器57と、アンプ58と、を備える。この強度測定手段55により、光導波路45を通過する際に生じる検出光B2の強度変化が検出される。
【0052】
第3ビームスプリッタ56は、検出光B2の光路上における光導波路45の下流側に設けられ、検出光B2の一部をモニター用検出光b2として補正用光検出器57に向けて反射するものである。本実施形態では、第3ビームスプリッタ56としてビームサンプラーが用いられる。
【0053】
補正用光検出器57は、アンプ58に接続され、受光したモニター用検出光b2の強度を検出光強度信号としてアンプ58に出力するものである。この補正用光検出器57により検出された検出光B2の強度変化に基づいて、検出光測定手段60により測定された測定部位11aからの反射検出光B2aの強度が補正される。
【0054】
アンプ58は、コンピュータ80に接続され、補正用光検出器57から送られてきた検出光強度信号を増幅してコンピュータ80に出力する。
【0055】
検出光測定手段60は、測定部位11aからの反射検出光B2aを受光する光検出器61と、この光検出器61と発振器36とが接続されるロックインアンプ62と、を有する。
【0056】
光検出器61は、ロックインアンプ62に接続され、受光した反射検出光B2aの強度を熱反射信号として出力するものである。
【0057】
ロックインアンプ62は、光検出器61から出力される熱反射信号から変調手段34で変調した周波数成分を検出(抽出)するものである。ロックインアンプ62は、コンピュータ80と接続され、抽出した周波数成分をコンピュータ80に出力する。
【0058】
第2の光学系40における集光レンズ32は、導光される検出光B2を測定部位11aに向けて集光する。
【0059】
第3の光学系70は、集光レンズ32と、第2ビームスプリッタ33と、第4ビームスプリッタ71とを有し、測定部位11aで反射された反射検出光B2aを第2の光検出器61まで導光する。
【0060】
第3の光学系70における第2ビームスプリッタ33は、測定部位11aに対して垂直方向から入射した加熱光B1及び検出光B2の各反射光のうち、反射加熱光をミラー31側に反射すると共に反射検出光B2aを通過させる。これにより、測定部位11aで反射した反射加熱光と反射検出光B2aのうち反射検出光B2aのみを光検出器61に導光することができる。
【0061】
第4ビームスプリッタ71は、第2の光学系40により導光される検出光B2の光路上に配置されている。本実施形態の第4ビームスプリッタ71は、測定部位11aに対して垂直方向に光導波路45から当該測定部位11aに向って進む検出光B2を通過させると共に測定部位11aから同軸上に戻ってきた反射検出光B2aを光検出器61に向けて反射する。
【0062】
コンピュータ80は、種々の入力信号の解析処理等を行うと共に、解析装置10の各構成部位の制御等を行うものである。例えば、コンピュータ80は、検出光測定手段60で測定された反射検出光B2aの強度と、強度測定手段55において検出された光導波路45を検出光B2が通過することで生じた強度変化と、に基づき、薄膜試料11についての熱物性を解析・評価する。具体的には、コンピュータ80は、ロックインアンプ62で検出された周波数成分から検出光B2の前記強度変化の影響を取り除き、この取り除いた周波数成分から測定部位11aの温度変化を導出する。そして、コンピュータ80は、予め定められた解析規則に従って測定部位11aの温度変化から薄膜試料11の熱物性を解析・評価すると共にその解析結果を出力手段82へ送信する。
【0063】
出力手段82は、コンピュータ80での解析結果を外部へ出力するものである。本実施形態の出力手段82は、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、PDP等の表示手段で構成されているが、これに限定されず、プリンタ等の印刷手段や、他の装置等へ出力するように構成されてもよい。また、出力手段82は、これらを組み合わせたものでもよい。
【0064】
ステージ13は、薄膜試料11が成膜された基板12を支持すると共にコンピュータ80からの制御指令に従って、薄膜試料11の位置を2次元方向(加熱光B1及び検出光B2の照射方向に対して垂直若しくはほぼ垂直な面の方向)に移動可能ないわゆるX−Yステージである。即ち、コンピュータ80によってステージ13を制御することにより、加熱光B1及び検出光B2の照射位置に薄膜試料11表面における所望の測定部位11aを位置合わせすることができる。
【0065】
以上のように構成される解析装置10では、以下のようにして薄膜試料11についての熱物性の解析・評価が行われる。
【0066】
薄膜試料11を成膜された基板12がステージ13上に設置される。加熱光B1及び検出光B2の照射位置に薄膜試料11表面における測定部位11aが位置するようにコンピュータ80によりステージ13が制御される。
【0067】
次に、光出射手段20によって加熱光B1と検出光B2とが出射される。加熱光B1は、第1の光学系30により導光されて測定部位11aに照射される一方、検出光B2は、第2の光学系40により導光されて測定部位11aに照射される。
【0068】
具体的に、パルスレーザ21により出射された基幹パルス光B0が第1ビームスプリッタ22により加熱光B1と検出光B2とに分岐される。このとき、第1ビームスプリッタ22により分岐された加熱光B1及び検出光B2が偏光素子101,102を通ることにより、加熱光B1は第1の偏光方向に偏光され、検出光B2は第2の偏光方向に偏光される。加熱光B1は、変調手段34により所定の周期F1で強度変調され、ミラー31、第2ビームスプリッタ33によって順に反射された後、集光レンズ32により集光されて測定部位11aに照射される。
【0069】
一方、検出光B2は、加熱光B1に対して所定のパルス光到達時間差で測定部位11aに到達するように光路遅延装置42によって光路長を調節されたあとに測定部位11aに照射される。さらに検出光B2は、光路遅延装置42によって光路長が変更され、若しくは変更されつつ、測定部位11aに照射される。
【0070】
詳細には、偏光素子102を通過して第2の偏光方向に偏光された検出光B2は、ミラー41によって光路遅延装置42内に入射する。この入射した検出光B2は、一対のミラー(反射部材)43によって反射され、入射方向と反対向きに光路遅延装置42から出射される。この出射された検出光B2は、入射用レンズ51の光軸Cを通って光導波路(本実施形態では、光ファイバ)45の入射面45aから光導波路45(コア)内に入射する。このようにして光導波路45内に入射した検出光B2は、加熱光B1に対して所定のパルス光到達時間差で測定部位11aに到達する。
【0071】
この状態で一対のミラー43が搭載された移動ステージ44が検出光B2の入射方向に沿って(図2の矢印α方向に)移動することで、検出光B2の光路長が変更される。詳しくは、一対のミラー43の移動に伴って光路遅延装置42内での検出光B2の光路長が変化し(図2では、光路長が移動ステージ44の移動距離の2倍変化する)、その結果、第2の光学系40における検出光B2の光路長を変化させることができる。
【0072】
このように一対のミラー43が移動すると、移動ステージ44及びその駆動機構の機械誤差や使用環境の影響等によって一対のミラー43の姿勢が僅かに変化する場合がある。その場合、光路遅延装置42から出射される光路遅延後の検出光B2の光軸がずれる(図2における破線参照)。この光軸のずれた検出光B2は、入射用レンズ51によって当該レンズ51の光軸C側、即ち、入射面45a側に屈折させられ、光導波路45の入射面45aに到達することができる。このように光路遅延装置42と光導波路45との間に入射用レンズ51を設けることで、光路遅延装置42において光路長を変更する際に検出光B2の光軸にずれが生じても、光導波路45内に当該検出光B2を入射させることが可能となる。これにより、光路長を変更する、即ち、移動ステージ44を移動させることによりミラー43の姿勢が変わっても、その度に検出光B2の光軸の調整をしなくても、検出光B2を光導波路45内に入射させることが可能となる。
【0073】
以上のように光導波路45に入射した検出光B2は、光導波路45内で全反射を繰り返しつつ伝搬され、出射面45bから出射される。このとき、光導波路45は、その内部に入射した検出光B2が全反射を繰り返すことにより一定の方向に出射できるため、光路遅延装置42からの検出光B2が光導波路45内に入射しさえすれば、常に一定の方向に向けて検出光B2を出射する。そのため、光路遅延装置42と測定部位11aとの間に光導波路45を設けることにより、光路遅延装置42で生じる検出光B2の光軸のずれを精度よく修正することが可能となる。しかも、入射用レンズ51を光導波路45の入射面45aの上流側に配置することにより、当該レンズ51がない場合に比べて、光路遅延装置42からの検出光B2の光軸のずれが大きくても光導波路45内に検出光B2を入射させることができる。
【0074】
出射面45bから出射された検出光B2は、光導波路45内で全反射を繰り返すうちにその偏光状態が変わっており、導波路用偏光素子46を通過することによって第2の偏光方向に偏光した状態に戻される。このように、導波路用偏光素子46によって、光導波路45を通過することにより偏光状態が変わった検出光B2の偏光状態を加熱光B1の偏光状態(第1の偏光方向)と異なる偏光状態(第2の偏光方向)にそろえることで、測定部位11aからの反射光(反射検出光B2a及び反射加熱光)から反射検出光B2aのみを分離し易くなる。
【0075】
導波路用偏光素子46を通過した検出光B2は、その一部(モニター用検出光b2)を第3ビームスプリッタ56により補正用光検出器57に向けて反射されつつ、第4ビームスプリッタ71、第2ビームスプリッタ33を順に通過する。この検出光B2は、第2ビームスプリッタ33において加熱光B1と合流し、この加熱光B1と共に集光レンズ32により集光されて測定部位11aに照射される。一方、第3ビームスプリッタ56により反射されたモニター用検出光b2は、補正用光検出器57に向う。このモニター用検出光b2を受光した補正用光検出器57は、その強度を測定し、その結果を検出光強度信号として出力する。この検出光強度信号は、アンプ58を経てコンピュータ80に送信される。これにより、光導波路45を通過することにより変化した検出光B2の強度が測定される。
【0076】
測定部位11aで反射された検出光(反射検出光)B2aは、第3の光学系70によって検出光測定手段60まで導光される一方、反射された加熱光(反射加熱光)B1aは第3の光学系70の途中でその進行を阻止される。即ち、反射検出光B2aが、第2ビームスプリッタ33を通過した後、第4ビームスプリッタ71により反射されて光検出器61に到達する一方、反射加熱光が、第2ビームスプリッタ33によってミラー31側に反射される。
【0077】
検出光測定手段60において、前記導光された反射検出光B2aの強度が測定され、その強度に基づいて薄膜試料11(測定部位11a)の熱物性が解析される。具体的に、光検出器61が受光した反射検出光B2aの強度が光検出器61から強度信号として出力される。この強度信号を受け取ったロックインアンプ62において、当該強度信号から変調手段34での強度変調の周期成分が検出され、コンピュータ80に送信される。コンピュータ80は、この周期成分を強度測定手段55において測定された光導波路45を通過することにより変化した検出光B2の強度変化に基づいて補正する。具体的には、コンピュータ80において、検出光B2の照射強度で測定部位11aにおける検出光B2の反射率の規格化(反射率/照射強度)を行う。
【0078】
コンピュータ80は、この補正された周期成分に基づき、薄膜試料11の熱物性を解析・評価し、その結果を出力手段82により外部に出力する。
【0079】
以上のように本実施形態の解析装置10では、光路遅延装置42において光路長を変更したときに検出光B2の光軸のずれが生じても、その下流側に設けられる光導波路45内に検出光B2が入射することによって測定部位11aに正確に導光される。具体的には、光導波路45を光路遅延装置42の下流側に設けることで、光路遅延装置42において検出光B2の光軸のずれが生じても、この検出光B2が光導波路45内に全反射条件で入射することで当該光導波路45から所定の方向に出射されるため、前記光軸のずれが解消する。これにより、高分解能を得るために光出射手段20から出射されるパルス光のビーム幅を小さくしても、測定部位11aにおける加熱光B1の照射位置と検出光B2の照射位置とが精度よく一致する。その結果、薄膜試料11の熱物性を高分解能且つ高精度で解析・評価することができる。
【0080】
また、第2の光学系40が光路遅延装置42と光導波路45との間に入射用レンズ51を備えることで、光路遅延装置42において生じる検出光B2の光軸のずれが大きくても、入射用レンズ51によって検出光B2が入射面45a側に屈折させられて光導波路45内に入射することができる。
【0081】
また、第2の光学系40が強度測定手段55を備えることで、光導波路45を検出光B2が通過することによりその強度が変化しても、薄膜試料11(測定部位11a)についての熱物性を精度よく解析・評価することができる。即ち、光導波路45内を通過することにより生じた検出光B2の強度変化を強度測定手段55によって測定し、その測定結果に基づいて検出光測定手段60により測定した測定部位11aからの反射検出光B2aの反射光強度を補正することにより、薄膜試料11についての熱物性を精度よく解析・評価することができる。
【0082】
また、第2の光学系40が光導波路45の下流側に導波路用偏光素子46を備えることで、光導波路45内で全反射を繰り返すことによりその偏光状態が変化した検出光B2を、この導波路用偏光素子46を通過させることにより元の偏光状態(第2の偏光方向に偏光した状態)に戻すことができる。
【0083】
尚、本発明の熱物性解析装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0084】
例えば、本実施形態の熱物性解析装置10では、測定部位11aに対して加熱光B1及び検出光B2が互いの光軸が一致するように照射されるが、図4に示されるように、検出光B2が測定部位11aに対して斜め方向から照射されてもよい。
【0085】
具体的に、解析装置110では、検出光B2を薄膜試料11の測定部位11aに対して斜め方向から照射し、当該測定部位11aで正反射した検出光(反射検出光)B2aを受光するように構成されている。
【0086】
詳細には、第2の光学系40において、導波路用偏光素子46の下流側にミラー47,49,及び集光レンズ48が配置されている。集光レンズ48は、測定部位11aに焦点が位置するように配置され、当該集光レンズ48を透過した検出光B2を測定部位11aに収束させる。また、第3の光学系70は、ミラー72,73を備え、測定部位11aで正反射した反射検出光B2aを光検出器61まで導光する。
【0087】
このような解析装置110によれば、加熱光B1の照射による測定部位11aの表面の温度変化によって当該測定部位11aの屈折率が変化し、この屈折率が変化した場合の当該測定部位11a表面での検出光B2の反射率の変化が入射角に依存するため、加熱光B1の照射による測定部位11aの表面での過渡温度応答(温度変化)を高感度(高N/S)で測定することが可能となる。その結果、測定時間の短縮や加熱光B1の低出力化による測定部位11a(薄膜試料11)のうけるダメージの低減、コストダウンを図ることが可能となる。
【0088】
また、上記実施形態では、検出光B2の光路上における光路遅延装置42と光導波路45との間に入射用レンズ51(導波路用集光手段50)が配置されているが、他の集光手段であってもよい。即ち、光路遅延装置42において検出光B2の光軸のずれが生じたときに、この検出光B2を光導波路45の入射面45a側に向けて屈折可能な集光手段であればよい。また、光路遅延装置42において検出光B2の光軸のずれが生じても、光導波路45内に入射可能であれば、導波路用集光手段50がなくてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 熱物性解析装置
11 薄膜試料(被測定物)
11a 測定部位
20 光出射手段(検出光出射手段)
30 第1の光学系
40 第3の光学系(検出用光学系)
42 光路遅延装置(光路長調節手段)
43 一対のミラー(反射部材)
45 光導波路
45a 入射面
50 導波路用集光手段
51 入射用レンズ(集光部)
55 強度測定手段
60 検出光測定手段
70 第3の光学系
B1 加熱光
b2 モニター用検出光
B2 検出光
B2a 反射検出光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物表面の測定部位に光を照射し、その反射光に基づいて前記被測定物の熱物性についての解析を行う熱物性解析装置であって、
前記測定部位に加熱光を照射する加熱光照射手段と、
前記測定部位に温度変化を検出するための検出光を照射する検出光照射手段と、
前記測定部位からの前記検出光の反射光の強度を測定する反射光測定手段と、を備え、
前記検出光照射手段は、前記検出光を前記測定部位まで導光する検出光用光学系を有し、
前記検出光用光学系は、前記検出光の光路長を変更するための光路長調節手段と、前記検出光の光路上において前記光路長調節手段の下流側に設けられ、内部に入射した前記検出光が全反射を繰り返して伝搬されることでこの検出光を所定の方向に出射する光導波路と、を含み、
前記光導波路は、前記検出光が当該光導波路内に入射可能な入射面を有し、この入射面が前記光路長調節手段からの検出光の到達する位置で当該検出光が当該光導波路内に全反射条件で入射可能な方向を向いた姿勢で配設されることを特徴とする熱物性解析装置。
【請求項2】
前記検出光用光学系は、透過した光を屈折させて焦点に集光可能な集光手段を備え、
前記集光手段は、前記光路長調節手段から前記光導波路に向う検出光が透過し且つ前記焦点が前記光導波路の入射面と略一致する位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の熱物性解析装置。
【請求項3】
前記集光手段が、光を集光可能な集光部と、この集光部における前記入射面の姿勢を維持しつつ当該集光部をその光軸に沿って移動させる移動手段と、を有することを特徴とする請求項2に記載の熱物性解析装置。
【請求項4】
前記検出光用光学系は、前記光導波路から前記測定部位に向う検出光の強度を測定する強度測定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱物性解析装置。
【請求項5】
前記検出光用光学系は、前記光路上における前記光導波路の下流側に設けられ、前記検出光が通過することにより当該検出光を所定の偏光状態とする偏光手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱物性解析装置。
【請求項6】
前記光導波路は、光ファイバにより構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱物性解析装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱物性解析装置を用いて被測定物の熱物性についての解析を行う熱物性解析方法であって、
前記加熱光照射手段によって加熱光を前記測定部位に照射すると共に、前記検出光照射手段によって検出光を前記測定部位に照射する照射工程と、
前記反射光測定手段によって前記測定部位からの前記検出光の反射光の強度を測定する測定工程とを備えることを特徴とする熱物性解析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−189468(P2012−189468A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53795(P2011−53795)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)
【Fターム(参考)】