説明

熱現像写真感光材料及び画像形成方法

【課題】 現像への悪影響が強いため熱現像感光材料では使用ができなかった画像保存性改良剤を特殊なポリオレフィンワックスを用いたマイクロカプセルに内包することにより無害化し、かつ熱応答性が非常に高く、かつ被覆性、透明性に優れた特殊なポリマーを被覆剤として用いることにより、保存時の安定性が高いにも拘わらず、短い現像時間内に画像保存性改良剤を放出して還元銀及び有機銀塩の安定性を高めて画像保存性を画期的に高めた熱現像写真感光材料及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】 支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、有機銀塩、現像剤及び画像保存性改良剤を有する熱現像写真感光材料において、該画像保存性改良剤が該画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルとして含有することを特徴とする熱現像写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ハロゲン化銀を含有する熱現像写真感光材料(以後、熱現像感光材料又は感光材料ともいう)及び画像形成方法に関し、さらに詳しくは、画像保存性改良剤内包マイクロカプセルを含有する熱現像写真感光材料及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷製版や医療の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、さらに、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そして、このような要望に応える技術として、熱現像により、高解像度で鮮明な黒色画像を形成する技術は良く知られている。これらの写真材料は通常、80℃以上の温度で現像が行われるので熱現像写真感光材料と呼ばれている。
【0003】
このような熱現像写真感光材料は通常、還元可能な非感光性の銀塩(例えば有機銀塩)とその還元剤(現像剤)および光触媒(例えば感光性ハロゲン化銀)を有機バインダーマトリックス中に分散した状態で支持体上に感光層を形成し、常温で安定であるが、露光後高温に加熱すると露光された感光性ハロゲン化銀の触媒作用により還元可能な銀塩(酸化剤として作用する)と還元剤との間に酸化還元反応が起こり、露光光量に応じた画像銀を生成する。
【0004】
しかしながら、このタイプの熱現像写真感光材料は、還元剤と酸化剤が共存するために画像形成前、及び画像形成後の保存中に露光とは無関係に酸化還元反応が進み、カブリが発生しやすいことが知られている。また、画像形成後に室内光や観察光によりプリントアウトと称される還元銀が発生することが知られており、カブリと共に性能向上の大きな課題である。
【0005】
カブリは、感光性ハロゲン化銀の性質、保存時の環境、現像条件が複雑に絡み合って発生するため多種多様の改良方法が知られている。例えばカブリ防止剤として水銀化合物、チオスルホン酸類、スルフィン酸類、ジスルフィド化合物、ハロゲノ化合物、ポリハロゲン化合物、ロジウム塩、有機酸等が知られている。しかし、これらのカブリ防止剤は不安定な化合物が多く、長期保存での性能低下、露光部の光学濃度低下、画像形成後の変色等全ての要求性能を満足するものは得られていない。
【0006】
プリントアウトを抑制する技術としては、これまで様々なハロゲン化合物、感光性ハロゲン化銀粒子中に金属錯体、ポリハロゲン化合物を用いる方法が提案されている。これらの化合物はプリントアウト防止には効果があるものの、現像時に減感等の悪影響がでやすく、かつ銀塩を酸化する性質があるため、画像を漂白してしまう等の欠点を有している。
【0007】
熱現像感光材料においてハロゲン化銀の定着剤(アンモニウムチオサルフェート、ナトリウムチオサルフェート)のカプセルのアイデアが開示されている(例えば、特許文献1参照。)が、この定着剤を放出するために高い圧力が必須となって装置改良などコストアップとなり現像後は高活性の薬剤が存在するため画像の保存性は劣化する。
【0008】
熱現像感光材料の分野において銀塩との反応性が高い現像剤または有機銀塩をマイクロカプセルに内包することにより相互の反応を抑えて現像前の安定性を向上するアイデアが開示されて(例えば、特許文献2、3参照。)いる。熱応答性マイクロカプセルの壁材として、(1)ウレタン変性体、(2)アロファネート変性体、(3)イソシアヌレート変性体、(4)ビュレット変性体、(5)カルボジイミド変性体、(6)ブロックドイソシアネート及び(7)ポリメリックMDIより選択されたイソシアネート系化合物の少なくとも1種を用いると記載されているが、これらの材料では架橋構造を取るため熱による高速応答性は乏しく、感熱材料のようにカプセルの周囲に存在する化合物を強い熱エネルギーによりカプセルを破壊し内部の材料と接触させることは可能だが、カプセル内部に内包されている化合物を短時間に放出させることは難しい。
【0009】
有機銀による画像形成ではなく、潜像の有無を利用してポリマー画像を形成する感光性材料において、ハロゲン化銀、還元剤および重合性化合物が一緒に感光性マイクロカプセルに内包され、かつ別のマイクロカプセルに塩基もしくは塩基プレカーサーを収容した例も知られている。この例では熱応答性を向上するためにワックスの使用例も記載されて(例えば、特許文献4参照。)いる。しかしながら殆どのワックス材料は皮膜形成性に乏しく、カプセル壁の被覆性を高めることは非常に難しい。またワックス材料では通常透明性に乏しく感材の透明性を十分得ることも容易ではない。
【特許文献1】特開平8−82888号公報 (請求項2、実施例1〜4)
【特許文献2】特開平8−272034号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開平9−295456号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特公平6−19553号公報 (請求項2、3、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、現像への悪影響が強いため熱現像感光材料では使用ができなかった画像保存性改良剤を特殊なポリオレフィンワックスを用いたマイクロカプセルに内包することにより無害化し、かつ熱応答性が非常に高く、かつ被覆性、透明性に優れた特殊なポリマーを被覆剤として用いることにより、保存時の安定性が高いにも拘わらず、短い現像時間内に画像保存性改良剤を放出して還元銀及び有機銀塩の安定性を高めて画像保存性を画期的に高めた熱現像写真感光材料及び画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0012】
(請求項1)
支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、有機銀塩、現像剤及び画像保存性改良剤を有する熱現像写真感光材料において、該画像保存性改良剤が該画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルとして含有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
【0013】
(請求項2)
前記画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルの壁材が50〜150℃の範囲に融点を有する熱溶融性材料からなることを特徴とする請求項1記載の熱現像写真感光材料。
【0014】
(請求項3)
前記画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルの壁材がポリオレフィンワックスであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱現像写真感光材料。
【0015】
(請求項4)
前記画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルに用いる壁材の25℃におけるMEK(メチルエチルケトン)に対する溶解度が5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱現像写真感光材料。
【0016】
(請求項5)
前記画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルに用いる壁材のヘーズが、膜厚100μmにおいて20以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の熱現像写真感光材料。
【0017】
(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料を、レーザー光源を用いて露光した後、80℃から250℃で現像することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、カブリが低く、保存安定性が良好であり、現像後に銀色調に優れたハロゲン化銀写真感光材料及び熱現像写真感光材料を得た。特に、現像後得られた画像が経時でカブリ上昇したりすることがない熱現像感光材料を提供すること、高感度でカブリが低く、感光材料の保存安定性が良好なレーザーイメージャー用熱現像感光材料を得た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を更に詳しく説明する。本発明において、画像保存性改良剤とは具体的には酸性物質でありpKaが6.5以下の有機化合物、またはその塩を差す。これらの酸性物質は感光材料中にハロゲン化銀、有機銀塩と共存して保存すると減感、感光性の失活有機銀の難溶化による現像阻害を起こすが、現像・加熱時に放出することでプロトン供与性雰囲気を作り、現像剤、有機銀塩、ハロゲン化銀の安定化を促進したり、有機銀からカブリ現像サイトへの銀イオンの移動を制限するためと考えられる。
【0020】
画像保存性改良剤の例としては、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、マレイン酸、マロン酸、サリチル酸、フマル酸、酢酸ナトリウム、メタンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、メルカプト酢酸、コハク酸、コハク酸ナトリウム、フタル酸、テトラクロロフタル酸、フェニルチオ酢酸、フェノキシ酢酸、ピロメリット酸、メルカプトイミダゾール、及びそのナトリウム塩、メルカプトトリアゾール(例えば2−メルカプトトリアゾール)、メルカプトテトラゾール(例えば1−フェニル−2−メルカプトテトラゾール、及びそのナトリウム塩)、チオスルホン酸、チオジプロピオン酸等を挙げることが出来る。
【0021】
画像保存性改良剤の使用量としては、熱現像感光材料中に上記素材の質量として1.5g/m2以下であり、好ましくは0.01g/m2〜0.5g/m2である。
【0022】
本発明の画像保存性改良剤内包マイクロカプセルの壁材に用いるポリオレフィンワックスは、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ブタジエンアクリロニトリルゴム等のポリエチレン重合体、共重合またはそれらの混合物である。好ましくはポリオレフィンであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリオクテン等の重合体(ホモポリマ)やエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体が挙げられる。ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体が更に好ましく、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体が熱応答性の観点から特に好ましい。
【0023】
上記ポリオレフィンワックスは、例えばクラリアント社製ポリオレフィンワックスPP1302、PP1502、PP1602、PE2301、三井化学社製ハイワックス110P、420P、210P、220P、320P、410P、720P、4202E、東邦化学社製ポリエチレンラテックスS3121、S6254B、S9254、S3123、S3127、S7024、S6211、S8512、S3148等を挙げられる。高速で熱応答するためのマイクロカプセルの壁材として用いるポリオレフィンワックスの融点としては50〜150℃が好ましく、更に好ましくは保存安定性と放出性の観点から70℃〜110℃である。
【0024】
塗布溶剤に用いるMEKに対する耐溶剤性、及び疎水性の低分子を内包するための皮膜性の指針として求めたMEKに対する25℃における溶解度は100μmの薄膜を作製してMEKに24時間放置した後の質量変化から求めた値で5%以下が好ましく、更に好ましくは1%以下である。カプセルの光学特性、皮膜形成性の指針としてヘーズが重要であり、壁材の膜厚100μmにおいて20以下が好ましい。ヘーズについては種々の測定機が市販されており利用できるが、本明細書の実施例では下記装置で測定した。
東京電色株式会社製 MODEL T−2600DA濁度計(積分球光電散乱光度計)
《カプセルの作製方法》
本発明に係るカプセルは、感光材料の生フィルム保存性、現像性、画像保存性に影響を及ぼす化合物をカプセル化により安定に含有することを目的としているため、表面が実質的にポリオレフィンワックスで覆われることにより各種性能を発現できる。従って芯(コア)と表面皮膜(シェル)を有するコアシェル構造を取る方が好ましい。これらのマイクロカプセル作製方法については、例えば、最新マイクロカプセル化技術(近藤保監修イーティーエス1987)、マイクロカプセル−その製法・性質・応用(近藤保(著),小石真純(著))、三共出版1987、マイクロカプセル化学、OnePoint(13)近藤保(著)共立出版1985、マイクロカプセル−その機能と応用(近藤保(編集)日本規格協会、1991)を参考とすることができる。
【0025】
その作製方法としては、本発明に係る化合物を含有するコアを形成した後、ポリオレフィンワックスシェルを設ける方法と、コア及びシェルを同時に設ける方法が挙げられる。
【0026】
(a)コア作製後にシェルを設ける方法
コアは、目的とする化合物単体に低分子または高分子分散剤を加え必要に応じて溶剤を用いて、種々の分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、ジェットミル、オングミル、高速撹拌機、メディア分散機等)を用いて水、または溶剤中で乳化、分散することができる。その他ポリマーを用いる方法もある。例えば、化合物とポリマーを混練して分散剤の存在下、水、または溶剤中で分散しコア粒子を作製する方法、化合物とポリマー化合物を可溶な有機溶媒に溶解した後に、分散剤とともに水、または溶剤中で分散させることができる。有機溶剤を使用する場合は、通常更に常圧、または減圧で溶剤を除去する工程が加わる(液中乾燥法)。
【0027】
以上のようにして得られたコア粒子分散物にシェルを分散物として混合しコア表面にシェル粒子を沈積する方法が一般的である。シェルを沈積する方法として電解質、特に2価のMg++、Ca++(例えば塩化マグネシウム、塩化カルシウム等)を添加する方法。酸を添加する方法(塩酸、酢酸、クエン酸等)、温度を上げる方法、遠心分離で遠心力をかける方法等の分散性を劣化させる方法により促進でき、攪拌も重要な制御因子である。この方法では皮膜としての性能を向上するために沈積後に融点以上に加熱する方が好ましい。また、スプレードライヤー、減圧乾燥機等で加熱しながら分散体の水または溶剤を除去することにより、コア表面にシェル沈積、皮膜形成を同時に行う方法も可能である。その他、シェルの供給を融解液で行い、分散混合液の温度を下げることでコア表面にシェル皮膜形成する方法も可能である。
【0028】
(b)コアとシェルを同時に設ける方法
内包すべき化合物を、シェルとなるポリオレフィンワックスと加熱混合して溶解し、水または溶剤中で攪拌下冷却時にコアシェル構造を形成する方法がある。この方法では必要に応じて溶剤を用いることでコアシェルの構造をより明確にすることも可能である。有機溶剤は、更に常圧、または減圧で溶剤を除去するのが一般的であるが、高沸点溶剤の場合は安定性のために除去しない場合もある。得られた分散体は前記の様な方法で粉体にすることも可能である。
【0029】
化合物の粉体とポリオレフィンワックスの粉体を特殊な固体分散機で粉砕混合(乾式混合)し、化合物表面にポリオレフィンワックスのシェルを付着させた後、ポリオレフィンワックスの融点以上にしてシェルの皮膜を完成させる方法も可能である
カプセルに内包される化合物は必要に応じて中性塩、錯塩等の塩形成を行い用いることも可能であるし、熱溶剤として低融点の化合物を混合することもできる。また同種、異種の複数の機能性化合物を同時に混合してコアとすることも分散安定性の観点、及び多機能カプセルとして有効である。
【0030】
前記カプセルを分散体として得た場合、そのまま塗付液とすることも出来るが、塗付溶剤を変更する場合は水、または溶剤を除去する必要があり、このためには前記スプレードライヤ、フリーズドライヤー、減圧乾燥機、加熱乾燥機等が必要となる。
【0031】
《コア作製に用いるポリマー》
本発明ではコアに用いるポリマーとして、種々のものが使用可能であるが、好ましいポリマーとしては、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマーおよびエステル基を有するポリマーなどであり、特にアセタール基を含有するポリマー、中でもポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0032】
また、重合性エチレン性不飽和二重結合を有するビニルモノマーのラジカル重合によって得られたポリマーも好ましく用いられる。エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド類等のラジカル重合によって得られるポリマー、例えば、スチレン、アクリル酸メチル、或いはスチレンとアクリル酸エステルの共重合体ポリマー、例えばスチレン/メタクリル酸エチルヘキシル、スチレン/メタクリル酸エチルヘキシル/ヒドロキシエチルアクリレート等の共重合体ポリマー等が例としてあげられる。
【0033】
また、ポリマーも同種同士であっても異種であっても良く、平均重合度の異なるものや分子量分布の異なるもの等を組み合わせてもよい。
【0034】
《目的化合物とコアポリマーの比率》
化合物の性能を充分に出し、かつ安定に含浸するためには目的化合物とポリマーの比率は質量比で5:95から95:5まで任意の割合で混合できる。感光材料における性能から更に50:50以上が好ましい。
【0035】
本発明のカプセルを分散体として作製する場合、または感光材料作製時に水系、または溶剤系の分散液で塗付する場合に分散剤、または分散性のポリマーが必要になる。従ってカプセル内のコアまたはシェルを形成するポリマーの1部が分散性モノマーを有しても良い。
【0036】
《分散性のポリマー》
分散性のモノマーとしてはカルボン酸、スルホン酸などのアニオン性の解離性基を含有するモノマー、ポリエチレンオキシ鎖等を有する非イオン性分散性基含有型のモノマー、三級アミノ基などのカチオン性の解離性基を含有するモノマーが挙げられる。
【0037】
前記アニオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
【0038】
カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロトン酸、イタコン酸モノアルキルエステル(例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなど)、マレイン酸モノアルキルエステル(例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチルなど)などが挙げられる。
【0039】
スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸など)、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸など)、アクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸など)、メタクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−メタクルリアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸など)などが挙げられる。
【0040】
リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、メタクリロイルオキシエチルホスホン酸などが挙げられる。
【0041】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸が好ましく、更に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸等が挙げられる。
【0042】
また、非イオン性分散性基を含有するモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとカルボン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとスルホン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとリン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとイソシアネート基含有モノマーから形成されるビニル基含有ウレタン、ポリビニルアルコール構造を含有するマクロモノマーなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのエチレンオキシ部の繰り返し数としては、8〜50が好ましく、10〜30がより好ましい。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素原子数としては、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましい。
【0043】
前記カチオン性の解離性基を有するモノマーとしては、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、あるいはジアルキルアミノエチルメタクリレート、ジアルキルアミノエチルアタクリレートなどの3級アミノ基を有するモノマーが挙げられる。
【0044】
これらのモノマーは、前記ポリオレフィンワックスまたはコアポリマーと併用されてポリマーを形成することが出来る、配合はポリマーの目的(Tg調節、溶解性改良、分散物安定性等)に応じて適宜選択することができる。
【0045】
《界面活性剤》
また、乳化剤、分散剤、表面張力調整剤としては特に制限されるものではないが、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれの界面活性剤も用いることが出来る。
【0046】
乳化剤或いは分散剤として、好ましくは陰イオン性界面活性剤又は非イオン性が特によい。様々な条件を満足するために両方の活性剤を併用することも可能である。
【0047】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(例えば、コハク酸ジエチルヘキシル−2−スルホン酸ナトリウム塩)、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0048】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0049】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(たとえばエマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(たとえばニューポールPE−62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。その他に、界面活性剤としては、例えば花王(株)製の分散剤デモールSNB、MS、N、SSL、ST、P(商品名)もあげられる。
【0050】
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。又、高分子界面活性剤として、以下の水溶性樹脂を用いることができる。水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。高分子界面活性剤の例として、その他に、アクリル−スチレン系樹脂であるジョンクリル等(ジョンソン社)が挙げられる。これらの高分子界面活性剤は、2種以上併用することも可能である。
【0051】
これらの界面活性剤を使用する場合、単独又は2種類以上を混合して用いることが出来、分散体に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することにより、分散液または塗付液の表面張力を任意に調整することが出来る。長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤を分散液、または塗付液に添加してもかまわない。
【0052】
《カプセル分散溶媒》
本発明に係るカプセルの分散に用いられる有機溶媒について説明する。目的とする化合物を溶解し水または有機溶剤中で分散性を付与する溶剤であれば特に制限はない。
【0053】
具体的には、アルコール類(例えば、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フルフリルアルコール、アニルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、オクタデシルアルコール等)、エステル類(エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、酢酸フェノキシエチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸ベンジル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジウンデシル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、ジエチルマロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ(2−メトキシエチル)、セバシン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジオクチル、ケイ皮酸−3−ヘキセニル、クエン酸トリブチル等)、エーテル類(例えば、ブチルフェニルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ベンジルメチルケトン、ベンジルアセトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等)、炭化水素類(例えば、石油エーテル、石油ベンジル、テトラリン、デカリン、ターシャリーアミルベンゼン、ジメチルナフタリン等)、アミド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジブチルドデカンアミド等)、芳香族類(例えば、トルエン、キシレン等)が挙げられる。前記溶剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、水との混合溶剤であってもよい。
【0054】
前記溶剤の使用量としては、カプセルの安定な分散を可能にし、且つ、前記溶剤を除去するための脱溶媒と濃縮の工程の簡略化の観点から、前記樹脂100質量部に対し、10質量部〜2000質量部が好ましく、100質量部〜1000質量部がより好ましい。
【0055】
前記溶剤は、高沸点溶剤の場合カプセル内に残留するが、低沸点の場合は通常水に分散させた後除去する。水に対する溶解度が10質量%以下である場合、または、溶剤の蒸気圧が水より大きい場合には、カプセルの安定性から除去されるのが好ましい。前記溶剤の除去は、常圧〜減圧条件において10℃〜100℃で行うことができ、常圧条件において40℃〜100℃、あるいは減圧条件下において10℃〜50℃で行うのが好ましい。
【0056】
《熱溶剤》
本発明のカプセル中に熱溶剤を加えることで熱応答性を更に高めることができる、例えば天然ワックス(蜜ロウ、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、鯨ロウ、カンデリラワックス、ラノリン、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等)、ポリエチレンワックス誘導体、塩素化炭化水素、有機酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、チグリン酸、2−アセトナフトンベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸等)、有機酸エステル(例えば、上記した有機酸のグリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコール等のアルコールとのエステル等)、アルコール(例えば、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ドデセノール、ミリシルアルコール、テトラセノール、ヘキサデセノール、エイコセノール、ドコセノール、ピネングリコール、ヒノキオール、ブチンジオール、ノナンジオール、イソフタリルアルコール、メシセリン、テレアフタリルアルコール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ドコサンジオール、テトラコサンジオール、テレビネオール、フェニルグリセリン、エイコサンジオール、オクタンジオール、フェニルプロピレングリコール、ビスフェノールA、パラアルファクミルフェノール等)、ケトン(例えば、ベンゾイルアセトン、ジアセトベンゼン、ベンゾフェノン、トリコサノン、ヘプタコサノン、ヘプタトリアコンタノン、ヘントリアコンタノン、ヘプタトリアコンタノン、ステアロン、ラウロン、ジアニソール等)、アミド(例えば、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、テトラヒドロフラン酸アミド、エルカ酸アミド、ミリスチン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N′−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N′−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N′−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ブチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N′−システアリルセバシン酸アミド、N,N′−ジステアリルテレフタル酸アミド、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミド、フェナセチン、トルアミド、アセトアミド、オレイン酸2量体/エチレンジアミン/ステアリン酸(1:2:2のモル比)のような2量体酸とジアミンと脂肪酸の反応生成物テトラアミド等)、スルホンアミド(例えば、パラトルエンスルホンアミド、エチルベンゼンスルホンアミド、ブチルベンゼンスルホンアミド等)、シリコーン類(例えば、シリコーンSH6018(東レシリコーン)、シリコーンKR215、216、220(信越シリコーン)等)、クマロン類(例えば、エスクロンG−90(新日鐵化学)等)、コレステロール脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ベヘン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、メリシン酸コレステロール等)、糖類脂肪酸エステル(ステアリン酸サッカロース、パルミチン酸サッカロース、ベヘン酸サッカロース、ラウリン酸サッカロース、メリシン酸サッカロース、ステアリン酸ラクトース、パルミチン酸ラクトース、ミリスチン酸ラクトース、ベヘン酸ラクトース、ラウリン酸ラクトース、メリシン酸ラクトース等)が挙げられる。
【0057】
《カプセルの粒径》
本発明において、感光材料の光学特性を維持するためにカプセルの体積平均粒子径は、20nm〜2μmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは、100nm〜500nmの範囲である。
【0058】
《体積平均粒子径》
ここで、微粒子の体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求められる。体積平均粒子径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒子径で割ることで変動係数を求められる。或いは、動的光散乱法を利用して変動係数を求めることも出来る。例えば、大塚電子製レーザー粒径解析システムや、マルバーン社製ゼータサイザを用いて求めることが出来る。
【0059】
《粒子径の変動係数》
粒子径の変動係数は、粒子径の標準偏差を粒子径で割った値であるが、この値が大きいほど粒子径の分布が広いことを意味する。
【0060】
コアシェルの厚みの均一性を高め、粒子間の表面物性を均一化して粒子の凝集を低減させ、不用な光散乱を防止して画質の低下を抑制する効果を共に得る観点から、粒子径の変動係数は、80%未満が好ましく、更に好ましくは、50%以下であり、特に好ましくは、30%以下である。
【0061】
《コアシェル構造の評価方法》
着色微粒子が実際にコアシェル化されているかを評価することは重要である。本発明では後述するように、着色微粒子の個々の粒子径が2μm以下と非常に微小であるため、分析手法は分解能の観点から限られたものとなる。
【0062】
このような目的に沿う分析手法としては、TEM(透過型電子顕微鏡)、STEM(走査型透過電子顕微鏡)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AFM(原子間力顕微鏡)などが適用できる。TEMによりコアシェル化した微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、有機物である樹脂の種類のみではコントラスト差が小さい場合があるため、コアシェル化されているかどうかを評価するために、微粒子を、4酸化オスミウム、4酸化ルテニウム、クロロスルホン酸/酢酸ウラニル、硫化銀等を用いて染色することが好ましい。
【0063】
コアを溶解し、かつシェルを溶解しない溶剤で内包物の流出量から被覆の程度を実技的に求める方法もある。
【0064】
続いて、本発明の熱現像感光材料について説明する。
【0065】
本発明に係る有機銀塩は、還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸である。本発明において用いられる有機酸としては、脂肪族カルボン酸、炭素環式カルボン酸、複素環式カルボン酸、複素環式化合物等があるが、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環を有する複素環式カルボン酸等が好ましく用いられる。また、配位子が4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機銀塩錯体も有用である。
【0066】
このような有機酸銀塩の例としては、Research Disclosure(以降、RDと略す)第17029及び第29963に記載されている。中でも、脂肪酸の銀塩が好ましく用いられ、特に好ましく用いられるのは、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀である。
【0067】
前述の有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、等が好ましく用いられる。また、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法を用いることも可能である。
【0068】
本発明においては、有機銀塩は平均粒径が1μm以下でありかつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の平均粒径とは、有機銀塩の粒子が、例えば、球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。平均粒径は、好ましくは0.01〜0.8μm、特に0.05〜0.5μmが好ましい。また、単分散とは、後述のハロゲン化銀の場合と同義であり、好ましくは単分散度が1〜30%である。本発明においては、有機銀塩が平均粒径1μm以下の単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで濃度の高い画像が得られる。さらに、有機銀塩は、平板状粒子が全有機銀の60個数%以上であることが好ましい。本発明において、平板状粒子とは平均粒径と厚さの比、いわゆる下記式で表されるアスペクト比(ARと略す)が3以上のものをいう。
【0069】
AR=平均粒径(μm)/厚さ(μm)
このような有機銀粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機又は高圧ホモジナイザなどで分散粉砕することが好ましい。上記予備分散で用いることのできる分散機としては、例えば、アンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。また、上記メディア分散機としては、例えば、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミルなどを挙げることができ、また高圧ホモジナイザとしては、例えば、壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができる。
【0070】
本発明に用いられる有機銀粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機銀粒子が接触する部材の材質として、例えば、ジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素などのセラミックス類又はダイヤモンドを用いることが好ましく、特にジルコニアを用いることが好ましい。
【0071】
本発明に用いられる有機銀粒子は、銀1gあたり0.01〜0.5mgのZrを含有することが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3mgのZrを含有する場合である。上記分散を行う際、バインダー濃度、予備分散方法、分散機運転条件、分散回数などを最適化することは、本発明に用いられる有機銀塩粒子を得る方法として非常に好ましい。
【0072】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるため及び良好な画質を得るために、平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を指す。又、ハロゲン化銀は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下となる粒子である。
【0073】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(平均粒径値)×100
感光性ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0074】
また、本発明において、もう一つの好ましい感光性ハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとし、垂直方向の厚みをhμmとした時のアスペクト比(r/h)が3以上のものをいう。その中でも好ましくは、アスペクト比が3〜50である。また、平板粒子の粒径は0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01μm〜0.08μmが好ましい。これらの平板粒子は、米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板粒子を得ることができる。
【0075】
感光性ハロゲン組成としては、特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法に基づいて調製することができる。
【0076】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には、周期表の6族から11族に属する金属イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0077】
これらの金属イオンは、金属錯体又は金属錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。これらの金属錯体又は金属錯体イオンとしては、下記一般式で表される6配位金属錯体が好ましい。
【0078】
一般式〔ML6m
式中、Mは周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子、mは0、−、2−、3−又は4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、例えば、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0079】
Mとしては、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)で好ましく、これらを含む遷移金属錯体イオンの具体例としては、〔RhCl63-、〔RuCl63-、〔ReCl63-、〔RuBr63-、〔OsCl63-、〔IrCl64-、〔Ru(NO)Cl52-、〔RuBr4(H2O)〕2-、〔Ru(NO)(H2O)Cl4-、〔RhCl5(H2O)〕2-、〔Re(NO)Cl52-、〔Re(NO)(CN)52-、〔Re(NO)Cl(CN)42-、〔Rh(NO)2Cl4-、〔Rh(NO)(H2O)Cl4-、〔Ru(NO)(CN)52-、〔Fe(CN)63-、〔Rh(NS)Cl52-、〔Os(NO)Cl52-、〔Cr(NO)Cl52-、〔Re(NO)Cl5-、〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2-、〔Ru(NS)Cl52-、〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2-、〔Os(NS)Cl(SCN)42-、〔Ir(NO)Cl52-、〔Ir(NS)Cl52-等が挙げられる。
【0080】
前述した金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンは、一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。
【0081】
これらの金属を提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、即ち、核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後の任意の段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。
【0082】
添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に、粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは、粒子内部に分布をもたせることができる。これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0083】
粒子表面に添加する時には、粒子形成直後又は物理熟成時途中、もしくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0084】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子は、粒子形成後に脱塩してもしなくてもよいが、脱塩を施す場合、例えば、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法により、水洗、脱塩することができる。
【0085】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られている硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法等を用いることができる。また、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0086】
前述の硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては、公知の化合物を用いることができるが、例えば、特開平7−128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては、例えば、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、及びコロイド状テルルなどを用いることができる。
【0087】
貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては、例えば、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許第2,448,060号、英国特許第618,061号などに記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0088】
還元増感法に用いられる化合物としては、例えば、アスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、ハロゲン化銀乳剤のpHを7以上又はpAgを8.3以下に保持して熟成することにより、還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより、還元増感することができる。
【0089】
本発明の熱現像感光材料には還元剤を内蔵させることが好ましい。本発明の熱現像感光材料に用いられる還元剤としては、一般に知られているものが挙げられ、例えば、フェノール類、2個以上のフェノール基を有するポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシベンゼン類、2個以上の水酸基を有するポリヒドロキシナフタレン類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン−5−オン類、ピラゾリン類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、ハイドロキノンモノエーテル類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等があり、さらに詳しくは例えば、米国特許第3,615,533号、同第3,679,426号、同第3,672,904号、同第3,751,252号、同第3,782,949号、同第3,801,321号、同第3,794,488号、同第3,893,863号、同第3,887,376号、同第3,770,448号、同第3,819,382号、同第3,773,512号、同第3,839,048号、同第3,887,378号、同第4,009,039号、同第4,021,240号、英国特許第1,486,148号、ベルギー特許第786,086号、特開昭50−36143号、同50−36110号、同50−116023号、同50−99719号、同50−140113号、同51−51933号、同51−23721号、同52−84727号、特公昭51−35851号に具体的に例示された還元剤等を挙げることができ、本発明は上記の公知な還元剤の中から適宜選択して使用することが出来る。選択方法としては、実際に還元剤を含む熱現像感光材料を作製し、その写真性能を直接評価することにより、還元剤の適否を確認する方法が最も効率的である。
【0090】
上記還元剤の中で、有機銀塩として脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合の好ましい還元剤としては、2個以上のフェノール基がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にフェノール基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)又はアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したフェノール基の2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、例えば1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、6,6′−ベンジリデン−ビス(2,4−ジメチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1,5,5−テトラキス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2,4−エチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロパン等の米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号、英国特許第1,486,148号、特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号、特公昭51−35727号に記載されたポリフェノール化合物、米国特許第3,672,904号に記載されたビスナフトール類、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジニトロ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、4,4′−ジメトキシ−1,1′−ジヒドロキシ−2,2′−ビナフチル等、更に米国特許第3,801,321号に記載されているようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類、例えば、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール、特願2002−32225号明細書及び特開2003−315954号に記載されたポリフェノール化合物等を挙げることが出来る。特にに好ましくは、特願2002−32225明細書及び特開2003−315954号に記載されたポリフェノール化合物である。
【0091】
本発明の熱現像感光材料に使用される還元剤の適量は、使用する有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤により一様ではないが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルの範囲が適当である。又この範囲内においては、上述した還元剤を2種以上併用してもよい。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光層塗布液に添加し塗布することが、感光層塗布液の停滞時間による写真性能変動を小さくする上で好ましい。
【0092】
次に、本発明の熱現像感光材料の上記説明した項目を除いた構成要素について説明する。
【0093】
本発明の熱現像感光材料は、上述の有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、及び還元剤などを含有する画像形成層及び保護層をこの順に支持体上に積層させたもので、さらに、必要に応じて支持体と上記画像形成層との間に中間層を設置してなるものが好ましい。
【0094】
また、画像形成層とは反対の面には搬送性確保や、保護層とのブロッキング防止のためにバッキング層を設置した熱現像感光材料も好適に用いることができる。なお、各層は単一層でも良いし、組成が同一あるいは異なる2層以上の複数の層で構成されていても良い。
【0095】
また、本発明では上述の各層を形成するために、バインダー樹脂が好ましく用いられる。このようなバインダー樹脂としては、従来から用いられている透明又は半透明なバインダー樹脂を適時選択して用いることができ、そのようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸酪酸セルロー等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリルゴム共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリポロピレン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種以上の樹脂を併用して用いても良い。
【0096】
なお、前記バインダー樹脂は、本発明の目的を損なわない限り、保護層、中間層、あるいは必要な場合に設けられるバックコート層の各層に適時選択して用いることができる。尚、中間層やバックコート層には、活性エネルギー線で硬化可能なエポキシ樹脂やアクリルモノマーなどを層形成バインダー樹脂として使用しても良い。本発明では、以下に示す水系バインダー樹脂も好ましく用いられる。
【0097】
好ましい樹脂としては、水溶解性ポリマー又は水分散性疎水性ポリマー(ラテックス)を使用することができる。例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−イタコン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸部ニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル酸共重合体等である。これらは、水性の塗布液を構成するが、塗布後乾燥し、塗膜を形成する段階で均一な樹脂膜を形成するものである。これらを使用する場合には、有機銀塩、ハロゲン化銀、還元剤等を水性の分散液として、これらのラテックスと混合して均一な分散液とした後、塗布することで熱現像画像形成層を形成することができる。乾燥により、ラテックスは粒子が融合し均一な膜を形成する。更に、ガラス転位点が−20℃〜80℃のポリマーが好ましく、特に−5℃〜60℃が好ましい。ガラス転位点が高いと、熱現像する温度が高くなり、低いとカブリやすくなり、感度低下や軟調化を招くからである。水分散ポリマーは、平均粒子径が1nmから数μmの範囲の微粒子にして分散されたものが好ましい。水分散疎水性ポリマーはラテックスとよばれ、水系塗布のバインダーとして広く使用されている中で耐水性を向上させるというラテックスが好ましい。バインダーとして耐水性を得る目的のラテックス使用量は、塗布性を勘案して決められるが、耐湿性の観点からは多いほど好ましい。全バインダー質量に対するラテックスの比率は50〜100%が好ましく、特に80%〜100%が好ましい。
【0098】
本発明において、これらのバインダー樹脂としては、固形分量として、銀付量に対して0.25〜10倍の量、例えば、銀付量が2.0g/m2の場合、ポリマーの付き量は0.5〜20g/m2であることが好ましい。また、更に好ましくは銀付量の0.5〜7倍量、例えば、銀付量が2.0g/m2なら、1.0〜14g/m2である。バインダー樹脂量が銀付量の0.25倍以下では、銀色調が大幅に劣化し、使用に耐えない場合があるし、銀付量の10倍以上では、軟調になり使用に耐えなくなる場合がある。
【0099】
さらに、本発明に係る画像形成層には、上述した必須成分、バインダー樹脂以外に、必要に応じてカブリ防止剤、調色剤、増感色素、強色増感を示す物質(強色増感剤ともいう)など各種添加剤を添加してもよい。
【0100】
現像後の銀色調を改良する目的で添加される色調剤としては、例えば、イミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)、及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン);フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウム又は8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組み合わせ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、及びテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)を挙げることができ、好ましい色調剤としては、フタラゾン、フタラジンである。なお、色調剤は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、後述する保護層に添加しても良い。
【0101】
また、強色増感剤としては、RD第17643、特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されている化合物を適時選択して用いることができ、本発明では、下記一般式(M)で表される複素芳香族メルカプト化合物、実質的に前記のメルカプト化合物を生成する一般式(Ma)で表されるジスルフィド化合物を用いることができる。
【0102】
一般式(M)
Ar−SM
一般式(Ma)
Ar−S−S−Ar
一般式(M)において、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表し、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウムもしくはテルリウム原子を有する複素芳香環又は縮合複素芳香環を表す。複素芳香環は、好ましくは、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン又はキナゾリンである。また、一般式(Ma)において、Arは上記一般式(M)の場合と同義である。
【0103】
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有することができる。
【0104】
本発明に用いられる強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む乳剤層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲で用いるのが好ましく、特に銀1モル当たり0.01〜0.5モルの範囲にするのが好ましい。
【0105】
本発明に係る画像記録層には、ヘテロ原子を含む大環状化合物を含有させることができる。ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びセレン原子の少なくとも1種を含む9員環以上の大環状化合物が好ましく、12〜24員環がより好ましく、更に好ましいのは15〜21員環である。
【0106】
代表的な化合物としてはクラウンエーテルで、下記のPedersonが1967年に合成し、その特異な報告以来、数多く合成されているものである。これらの化合物は、C.J.Pederson、Journal of American chemical society vol,86(2495)、7017〜7036(1967)、G.W.Gokel、S.H,Korzeniowski、“Macrocyclic polyethr synthesis”、Springer−Vergal(1982)等に記載されている。
【0107】
本発明に係る画像形成層には上述した添加剤以外に、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤は、RD17029(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物が好ましく用いられる。
【0108】
本発明の熱現像感光材料には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。
【0109】
本発明に使用される有用な増感色素の具体例は、例えばRD17643IV−A項(1978年12月p.23)、同18431X項(1979年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。
【0110】
本発明においては、特に各種スキャナー光源の分光特性に適合した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えばA)アルゴンレーザー光源に対しては、特開昭60−162247号、特開平2−48653号、米国特許第2,161,331号、西独特許第936,071号、特開平5−11389号等に記載のシンプルメロシアニン類、B)ヘリウム−ネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号等に記載の三核シアニン色素類、特開平7−287338号に記載のメロシアニン類、C)LED光源及び赤色半導体レーザーに対しては特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類、D)赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、同60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、一般式(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類などが有利に選択される。
【0111】
これらの増感色素は単独に用いても、あるいはそれらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せでは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる増感色素とともにそれ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質をハロゲン化銀乳剤中に含んでもよい。
【0112】
本発明において、画像形成層は単層でも良く、組成が同一あるいは異なる複数の層で構成しても良い。なお、画像形成層の膜厚は通常10〜30μmである。
【0113】
次に、本発明の熱現像感光材料の層構成として必須である支持体と保護層について詳述する。
【0114】
本発明に係る光熱写真材料においては、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料又は顔料を含有させることが好ましい。
【0115】
本発明において用いられる染料としては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。
【0116】
例えば、本発明に係る光熱写真材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2001−83655号に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料(本明細書ではチオピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料(本明細書ではピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)、又スクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、又はピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0117】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシ基は解離していてもよい。以下本明細書ではこれらの色素を便宜的に一括してスクアリリウム染料とよぶ。なお、染料としては特開平8−201959号の化合物も好ましい。
【0118】
本発明の熱現像感光材料に用いられる支持体としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなるポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層してなる樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0119】
本発明に係る支持体は、後述の画像記録方法において、潜像形成後熱で現像して画像形成することから、フィルム状に延伸しヒートセットしたものが寸法安定性の点で好ましい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加してもよい。なお、支持体の厚みは、10〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0120】
本発明の熱現像感光材料に用いられる保護層としては、上述の画像形成層で記載したバインダー樹脂を必要に応じて選択して用いることができる。
【0121】
保護層に添加される添加剤としては、熱現像後の画像の傷つき防止や搬送性を確保する目的でフィラーを含有することが好ましく、フィラーを添加する場合の含有量は、層形成組成物中0.05〜30質量%含有することが好ましい。
【0122】
さらに、滑り性や帯電性を改良するため、保護層には潤滑剤、帯電防止剤を含有しても良い、このような潤滑剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、(変性)シリコーンオイル、(変性)シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ化カーボン、ワックス等を挙げることができ、また、帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子帯電防止剤、金属酸化物又は導電性ポリマー等、「11290の化学商品」化学工業日報社、p.875〜876等に記載の化合物、米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された化合物等を挙げることができる。さらに、本発明の目的を阻害しない範囲で、画像形成層に添加される各種添加剤を保護層に添加しても良く、これら添加剤の添加量は、保護層層形成成分の0.01〜20質量%程度が好ましく、更に好ましくは、0.05〜10質量%である。
【0123】
本発明において、保護層は単層でも良く、組成が同一あるいは異なるの複数層の層で構成しても良い。なお、保護層の膜厚は通常1.0〜5.0μmである。
【0124】
本発明では、上述の画像形成層、支持体及び保護層以外に、支持体と画像形成層との膜付を改良するための中間層を、また搬送性や帯電防止を目的としてバックコート層を設置しても良く、設置する場合の中間層の厚みは通常0.05〜2.0μmであり、バッキング層の厚みは通常0.1〜10μmである。
【0125】
本発明に係る画像形成層用塗布液、保護層用塗布液及び必要に応じて設置される中間層及びバッキング層用の各塗布液は、上述で述べた成分を、それぞれ溶媒に溶解若しくは分散して調製することができる。
【0126】
上記調製で用いることのできる溶媒としては、有機合成化学協会編の「溶剤ポケットブック」等に示されている溶解度パラメーターの値が6.0〜15.0の範囲のものであればよく、本発明に係る各層を形成する塗布液に用いることのできる溶媒としては、ケトン類として、例えば、アセトン、イソフォロン、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。アルコール類として、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール類として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。エーテルアルコール類として、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。エーテル類として、例えば、エチルエーテル、ジオキサン、イソプロピルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソプロピル等が挙げられる。炭化水素類としてn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。塩化物類として、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられるが、但し、本発明の効果を阻害しない範囲であればこれらに限定されない。
【0127】
また、これらの溶媒は、単独または数種類組合わせて使用できる。なお、熱現像感光材料中の上記溶媒の残留量は、塗布後の乾燥工程の温度条件等を適宜設定することにより調整でき、残存溶媒量は合計量で5〜1000mg/m2が好ましく、更に好ましくは、10〜300mg/m2である。
【0128】
塗布液を調製する際に、分散が必要な場合には、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、Sqegvariアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザ、超音波分散機、オープンニーダー、連続ニーダー等、従来から公知の分散機を適時選択して用いることができる。
【0129】
上述のようにして調製した塗布液を塗布するには、例えば、エクストルージョン方式の押し出しコータ、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等の、公知の各種コータステーションを適時選択して用いることができる。これらのコータの中で、形成層の厚みムラを無くすためには、エクストルージョン方式の押し出しコータやリバースロールコータ等のロールコータを用いることが好ましい。
【0130】
又、保護層を塗布する場合、画像形成層がダメージを受けないものであれば特に制限はないが、保護層形成塗布液に用いられる溶媒が、画像形成層を溶解する可能性がある場合には、上述したコータステーションの中で、エクストルージョン方式の押し出しコータ、グラビアロールコータ、バーコータ等を使用することができる。尚、これらの中でグラビアロールコータ、バーコータ等接触する塗布方法を用いる場合には、搬送方向に対して、グラビアロールやバーの回転方向は順転でもリバースでも良く、また順転の場合には等速でも、周速差を設けても良い。
【0131】
更に、各構成層を積層する際には、各層毎に塗布乾燥を繰り返してもよいが、ウェット−オン−ウェット方式で同時重層塗布して乾燥させても良い。その場合、例えば、リバースロールコータ、グラビアロールコータ、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、バーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレーコータ等とエクストルージョン方式の押し出しコータとの組み合わせにより塗布することができ、この様なウェット−オン−ウェット方式における重層塗布においては、下側の層が湿潤状態になったままで上側の層を塗布するので、上下層間の接着性が向上する。
【0132】
さらに、本発明では少なくとも画像形成層用塗布液を塗布した後、本発明の目的を有効に引き出すために、塗膜を乾燥させる温度を65〜100℃の範囲であることが好ましい。乾燥温度が65℃よりも低い場合は、反応が不十分であるため、経時による感度の変動が起こる場合が有り、また、100℃よりも高い場合には、製造直後の熱現像感光材料自身にかぶり(着色)を生じる場合がある為好ましくない。また、乾燥時間は乾燥時の風量により一概に規定できないが、通常2〜30分の範囲で乾燥させることが好ましい。
【0133】
なお、上述の乾燥温度は、塗布後直ぐに前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させても良いし、乾燥の際に生じる塗布液のマランゴニーや、温風の乾燥風によって生じる表面近傍が初期に乾燥することにより生ずるムラ(ユズ肌)を防止する目的からは、初期の乾燥温度を65℃よりも低温で行い、その後前述の温度範囲の乾燥温度で乾燥させても良い。
【0134】
以上、本発明の熱現像感光材料及びその好適な製造方法により、本発明の目的を達成することはできるが、さらに、画像記録方法を最適化することにより、干渉縞のない鮮明な画像を得ることができる。
【0135】
次いで、本発明の熱現像感光材料に好適な画像記録方法について詳述する。
【0136】
本発明で用いることのできる画像記録方法としては、露光面とレーザー光のなす角度、レーザーの波長、使用するレーザーの数により三つの態様に大別され、それらを単独で行っても良いし、二種以上の態様を組み合わせても良く、このような画像形成方法にすることで干渉縞のない鮮明な画像を得ることができる。
【0137】
本発明において、画像記録方法として好適な態様としては、熱現像感光材料の露光面とレーザー光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザー光を用いて、走査露光により画像を形成することが挙げられる。このように、入射角を垂直からずらすことにより、仮に層間界面での反射光が発生した場合においても、画像形成層に達する光路差が大きくなることから、レーザー光の光路での散乱や減衰が生じて干渉縞が発生しにくくなる。なお、ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザー走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下であることをいう。
【0138】
また、本発明の画像記録方法におけるさらに好適な態様としては、露光波長が単一でない縦マルチレーザーを用いて、走査露光により画像を形成することが挙げられる。このような、波長に幅を有する縦マルチレーザー光で走査すると縦単一モードの走査レーザー光に比べ、干渉縞の発生が低減される。なお、ここで言う縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0139】
さらに、上述した画像記録方法において、走査露光に用いるレーザーとしては、一般によく知られている、ルビーレーザー、YAGレーザー、ガラスレーザー等の固体レーザー;He−Neレーザー、Arイオンレーザー、Krイオンレーザー、CO2レーザー、COレーザー、He−Cdレーザー、N2レーザー、エキシマーレーザー等の気体レーザー;InGaPレーザー、AlGaAsレーザー、GaAsPレーザー、InGaAsレーザー、InAsPレーザー、CdSnP2レーザー、GaSbレーザー等の半導体レーザー;化学レーザー、色素レーザー等を用途に併せて適時選択して使用できるが、請求項6に係る画像形成方法においては、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザーを好ましく用いることが特徴である。
【0140】
なお、レーザー・イメージャやレーザー・イメージセッタで使用されるレーザーにおいて、熱現像感光材料に走査されるときの熱現像感光材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザー光走査速度は熱現像感光材料固有のレーザー発振波長における感度とレーザーパワーによって、熱現像感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、以後マイクロカプセルを単にカプセルともいう。
【0142】
実施例1(カプセル1の製造)
工程(1):コア分散液の調製
クレアミックスCLM−0.8S(エムテクニク(株)社製)のポットに、30gのサリチル酸(関東化学社製)と30gのポリビニルブチラールBL−5(積水化学社製)、250gの酢酸エチルを加えて攪拌し溶解した、1.5gのドデシル硫酸ナトリウム(関東化学社製)をイオン交換水に溶解した水溶液600gを添加後、回転数20000rpmで5分間乳化した。その後、減圧下で溶剤を除去し、カプセルコア分散液約645gを得た。平均粒径320nm。コア粒子の平均粒径は、全てMalvern社製のZetasizer 1000HSで求めた。
【0143】
工程(2):カプセルの調製
上記で調製した、カプセルコア分散液620gにポリエチレンワックスを含む分散液であるS6254B(東邦化学工業(株)社製:固形分濃度25%)230gを加えた。80℃で1時間攪拌した後、室温まで戻し水200gを加えて薄めた液をスプレードライヤーを用いて中心温度100℃で乾燥しながら95gのカプセル粉末を得た。得られたカプセルのSEM(走査型電子顕微鏡写真)からカプセル被覆を確認した。平均粒径710nm。
【0144】
実施例2(カプセル2の製造)
工程(1):コア分散液の調製
クレアミックスCLM−0.8S(エムテクニク(株)社製)のポットに、30gのP−トルエンスルホン酸(関東化学社製)と30gのポリビニルブチラールBL−5(積水化学社製)、350gのトルエンを加えて攪拌・溶解した、5gのアクアロンKH−05(第一工業製薬社製:界面活性剤)をイオン交換水に溶解した水溶液900gを添加後、回転数20000rpmで7分間乳化した。その後、常圧で溶剤及び水を濃縮し、カプセルコア分散液約645gを得た。平均粒径130nm。
【0145】
工程(2):カプセルの調製
上記で調製した、カプセルコア分散液620gにポリエチレンワックスを含む分散液であるS3121(東邦化学工業(株)社製:固形分濃度25%)300gを加えた。更に水1000gを加えて薄めた液をスプレードライヤーを用いて中心温度110℃で乾燥しながら75gのカプセル粉末を得た。得られたカプセルのSEM(走査型電子顕微鏡写真)からカプセル被覆を確認した。平均粒径450nm。
【0146】
実施例3(カプセル3の製造)
100gのp−トルエンスルホン酸ナトリウム(関東化学社製)、150gのPP1302(クラリアント社製ポリオレフィンワックス)及び10gのエフトップEF−801((株)ジェムコ社製)、及び750gのMEK(メチルエチルケトン)を加えてクレアミックスCLM−0.8S(エムテクニク(株)社製)回転数20000rpmで10分間分散した。分散した後反応釜で加熱還流しながら30分攪拌後、ゆっくりと冷却することにより分散液の温度を室温まで戻しカプセルのMEK分散液を得た。減圧で溶剤を除去してカプセルのパウダーを得た。平均粒径430nm。
【0147】
実施例4(カプセル4の製造)
工程(1):コア分散液の調製
クレアミックスCLM−0.8S(エムテクニク(株)社製)のポットに、30gのフタル酸(関東化学社製)と30gの(アセトアセトキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/ステアリルメタクリレート=20/30/50のポリマー、質量平均分子量25000)、及び200gのトルエン、及び50gのTHF(テトラヒドロフラン)を入れて攪拌して、1gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(関東化学社製)をイオン交換水に溶解した水溶液600gを添加後、回転数20000rpmで10分間乳化した。その後、減圧下で溶剤を除去し、カプセルコア分散液約312gを得た。平均粒径405nm。
【0148】
工程(2):カプセルの調製
上記で調製した、カプセルコア分散液300gを攪拌下80℃に加熱し、更にPP1502(クラリアント社製ポリオレフィンワックス)100gを90℃で溶融した溶液を滴下した。全量滴下後30分した後、反応液の温度を下げて室温に戻してカプセルの分散液を得た。減圧で溶剤を除去してカプセルのパウダーを得た。得られたカプセルのSEM(走査型電子顕微鏡写真)からカプセル被覆を確認した。平均粒径560nm。
【0149】
実施例5(カプセル5の製造)
工程(1):コア分散液の調製
クレアミックスCLM−0.8S(エムテクニク(株)社製)のポットに、30gのp−トルエンスルホン酸(関東化学社製)と30gのポリビニルブチラールBL−5(積水化学社製)、及び400gのトルエン、及び50gのTHF(テトラヒドロフラン)を入れて攪拌して、1.5gのスルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(関東化学社製)をイオン交換水に溶解した水溶液700gを添加後、回転数20000rpmで10分間乳化した。その後、減圧下で溶剤を除去し、カプセルコア分散液約420gを得た。平均粒径490nm。
【0150】
工程(2):カプセルの調製
上記で調製した、カプセルコア分散液300gを攪拌下80℃に加熱し、更にPP2301(クラリアント社製ポリオレフィンワックス)100gを溶融した溶液を滴下した。全量滴下後30分した後、反応液の温度を下げて室温に戻してカプセルの分散液を得た。減圧で溶剤を除去してカプセルのパウダーを得た。得られたカプセルのSEM(走査型電子顕微鏡写真)からカプセル被覆を確認した。平均粒径1.5μm。
【0151】
比較例1
実施例1の工程(1)で得られるコア分散液に実施例1の工程(2)と同様の操作でMEKに溶解しやすく、透明性が低い材料であるパラフィンワックスを同量用いてコアシェル被覆を行った。
【0152】
平均粒径2.1μm SEM観察の結果表面に欠陥が多く、多数の粒子が集合した構造であることが分かった。得られたカプセルは散乱が大きく、かつMEKに対して容易に溶解するので溶剤を使用して塗付する熱現像感光材料には用いることができなかった。
【0153】
評価
(ヘーズの測定)
得られたカプセルのヘーズの測定は上述した通り、東京電色株式会社製 MODEL T−2600DA濁度計(積分球光電散乱光度計)を用い、結果を表1に示す。
【0154】
(カプセル皮膜性の評価)
得られたカプセルの皮膜性をSEMで観察し、更に、MEK中でカプセルの溶解が始まるまでの時間を求め、結果を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
表1から分かる様に本発明の実施例で製造したポリオレフィンワックスを用いたカプセルは皮膜性がよく、かつMEK耐久性にも優れた材料であることが分かる。特にMEK耐久性が1%以内で、かつヘーズが20以下のポリオレフィンワックスを用いたカプセルは特に性能が高かった。
【0157】
(乳剤中に含有させた時の評価)
〔下引済み写真用支持体の作製〕
〈PET下引済み写真用支持体の作製〉
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ175μmの、光学濃度で0.170(コニカ株式会社製デンシトメータPDA−65にて測定)に青色着色したPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、また反対側の面に下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層B−1とした。
【0158】
《下引塗布液a−1》
ブチルアクリレート(30質量%)
t−ブチルアクリレート(20質量%)
スチレン(25質量%)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(25質量%)
の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
C−1 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる
《下引塗布液b−1》
ブチルアクリレート(40質量%)
スチレン(20質量%)
グリシジルアクリレート(40質量%)
の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
C−1 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に下引上層A−2として、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に帯電防止機能をもつ下引上層B−2として塗設した。
【0159】
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる質量
C−1 0.2g
C−2 0.2g
C−3 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1lに仕上げる
《下引上層塗布液b−2》
C−4 60g
C−5を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
C−6 12g
ポリエチレングリコール(質量平均分子量600) 6g
水で1lに仕上げる
《バック面側塗布》
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社、CAB381−20)84.2gおよびポリエステル樹脂(Bostic社、VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に、溶解した液に、0.30gの赤外染料1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したF系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gとF系活性剤(大日本インク社、メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌しバック面側用の塗布液を調製した。
【0160】
このように調製した、バック面塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布、乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0161】
【化1】

【0162】
【化2】

【0163】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
A1
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
B1
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
C1
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
D1
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
E1
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
F1
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
G1
56%酢酸水溶液 18.0ml
H1
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n−(CH(CH3)CH2O)17−(CH2CH2O)m
(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットル加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0164】
この乳剤は平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0165】
次に上記乳剤に硫黄増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)240mlを加えさらにこの増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。
【0166】
《粉末有機銀塩Aの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5M/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0167】
次に1M/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。
【0168】
なお、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0169】
《予備分散液Aの調製》
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製、Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0170】
《感光性乳剤分散液1の調製》
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0171】
《安定剤液の調製》
1.0gの安定剤1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0172】
《赤外増感色素液Aの調製》
19.2mgの増感色素1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤2および365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのMEKに暗所にて溶解し赤外増感色素液Aを調製した。
【0173】
《添加液aの調製》
現像剤2を31.74gと1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの染料1をMEK60gに溶解し、実施例1で製造したカプセル1の2gをMEK60gに分散した溶液を加えて添加液aとした。
【0174】
《添加液bの調製》
3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し添加液bとした。
【0175】
《感光層塗布液の調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1(50g)およびMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、化学増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)1000μlを加え、2分後にかぶり防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した後に上記の有機化学増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、更に20分攪拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液を添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温してさらに30分攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)13.31gを添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。さらに攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液を得た。
【0176】
《マット剤分散液の調製》
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、7.5gのCAB171−15)をMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30min分散しマット剤分散液を調製した。
【0177】
《表面保護層塗布液の調製》
MEK(メチルエチルケトン)865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21)を4.5g、ビニルスルホン化合物(VSC)を1.5g、ベンズトリアゾールを1.0g、F系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)を1.0g、添加し溶解した。次に上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0178】
【化3】

【0179】
《感光層面側塗布》
前記感光層塗布液と表面保護層塗布液を押し出し(エクストルージョン)コーターを用いて同時に重層塗布することにより感光材料を作製した。塗布は、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様にしておこなった。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い、塗布試料(熱現像感光材料)No.1を得た。
【0180】
更に添加液aに分散したカプセル1の代わりに他のカプセル材料(表2に記載)を同量用いてNo.2〜No.4の試料を作製した。また比較として画像安定剤カプセルを全く入れない試料No.5及びp−トルエンスルホン酸を0.5g添加液aに添加した試料No.6を作製した。
【0181】
《露光及び現像処理》
上記のように作製した感光材料の乳剤面側から、高周波重畳にて波長800nm〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザーを露光源とした露光機によりレーザー走査による露光を与えた。この際に、感光材料の露光面と露光レーザー光の角度を75度として画像を形成した。
【0182】
「センシトメトリーの評価」
上記で作製した試料(熱現像感光材料)を633nmにピークを持つ干渉フィルターを介し、発光時間10-3秒のキセノンフラッシュ光で露光した。その後ヒートドラムを用いて115℃、15秒熱現像処理した。そしてその時のカブリ値の測定を行なった。また、濃度3.0を与える露光量の逆数を感度とし、試料No.5の感度を100とした相対感度で表す。
【0183】
「生保存性の評価」
内部が25℃、相対湿度55%に保たれた密閉容器中に塗布試料を3枚入れた後50℃で7日間経時した(強制経時)。この中の2枚めの試料と比較用経時(室温にて遮光容器中に保存)の試料とについて、上記センシトメトリーの評価と同じ処理を行い、カブリ部分の濃度を測定し、下式によりカブリの増加1を求め生保存性として評価を行った。
【0184】
(カブリの増加1)=(強制経時のカブリ)−(比較用経時のカブリ)
「画像保存性の評価」
センシトメトリーの評価と同じ処理をした2枚の試料を、1枚は35℃、相対湿度55%で50時間遮光保存し、もう1枚は35℃、相対湿度55%、照度8000ルクスの光源台で50時間照射した後、両者のカブリ部分の濃度を測定し、下式によりカブリの増加2を求め画像保存性として評価を行った。
【0185】
(カブリの増加2)=(光源台で照射したときのカブリ)−(遮光保存したときのカブリ)
「銀色調の評価」
銀色調の評価用として、現像後の濃度が1.5±0.05になるように露光現像した試料を作製した。この試料を色温度7700ケルビン、照度11600ルクスの光源台で10時間照射し、下記基準で銀の色調を評価した。品質保証上問題のないランクは4以上である。
【0186】
評価基準
5:純黒調で全く黄色みを感じない
4:純黒ではないが、ほとんど黄色みを感じない
3:部分的にわずかに黄色みを感じる
2:全面にわずかに黄色みを感じる
1:一見して黄色みが感じられる
以上の経過および結果を表2に示す。
【0187】
【表2】

【0188】
表2より、本発明の試料はカブリが低く、安定な生フィルム保存性を有しながら、かつ画像保存性が大幅に改良された優れた感光材料であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、有機銀塩、現像剤及び画像保存性改良剤を有する熱現像写真感光材料において、該画像保存性改良剤が該画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルとして含有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
【請求項2】
前記画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルの壁材が50〜150℃の範囲に融点を有する熱溶融性材料からなることを特徴とする請求項1記載の熱現像写真感光材料。
【請求項3】
前記画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルの壁材がポリオレフィンワックスであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱現像写真感光材料。
【請求項4】
前記画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルに用いる壁材の25℃におけるMEK(メチルエチルケトン)に対する溶解度が5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱現像写真感光材料。
【請求項5】
前記画像保存性改良剤を内包するマイクロカプセルに用いる壁材のヘーズが、膜厚100μmにおいて20以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の熱現像写真感光材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像写真感光材料を、レーザー光源を用いて露光した後、80℃から250℃で現像することを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2006−30236(P2006−30236A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204305(P2004−204305)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】