説明

熱画像データ保存装置

【課題】監視対象となる高温物が所定の撮像位置に位置したことを検出するための機械的リミットスイッチを用いず、それを設置するためのスペース及び作業コストが不要になる熱画像保存装置の提供。
【解決手段】熱画像2aを生成する熱画像生成手段2には、熱画像2aの処理を行う熱画像処理手段3が接続されている。熱画像処理手段3には、取鍋4が所定の撮像位置に位置した際に熱画像2a内で取鍋4が占める領域内の温度を監視して、領域内の温度が所定の検出用閾値以上である場合に、取鍋4が撮像位置に位置したことを検出する位置検出部30が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の軌道に沿って移動する高温物を撮像した熱画像のデータを保存する熱画像データ保存装置に関し、特に、高温物が所定の撮像位置に位置したことを熱画像に基づいて検出することで、機械的リミットスイッチを使用せずに高温物が同じ位置に存在する熱画像のデータを保存することができ、機械的リミットスイッチを設置するためのスペース及び作業コストを不要とすることができるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の装置としては、例えば下記の特許文献1等に示されている構成を挙げることができる。すなわち、従来装置では、監視対象となる高温物が所定の撮像位置に位置したことを検出するために、所定の撮像位置に高温物が位置した際に、その高温物と接触するように機械的リミットスイッチが設置されている。そして、この機械的リミットスイッチの動作により高温物が撮像位置に位置したことが検出された際に、高温物が撮像されて、その熱画像が保存される。このように高温物が所定の撮像位置に存在する熱画像が保存されることで、保存された熱画像を解析することにより、高温物の劣化及び異常を発見することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−54529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来装置では、監視対象となる高温物が所定の撮像位置に位置したことを検出するために機械的リミットスイッチを用いているので、機械的リミットスイッチを設置するためのスペース及び作業コストが必要となる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、機械的リミットスイッチを使用せずに同じ位置に高温物が存在する熱画像のデータを保存することができ、機械的リミットスイッチを設置するためのスペース及び作業コストを不要とする熱画像データ保存装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱画像データ保存装置は、所定の軌道に沿って移動する高温物を撮像した熱画像のデータを保存する熱画像データ保存装置であって、軌道を含む領域を撮像して熱画像を生成する熱画像生成手段と、熱画像生成手段に接続され、熱画像の処理を行う熱画像処理手段とを備え、熱画像処理手段は、高温物が所定の撮像位置に位置した際に熱画像内で高温物が占める領域内の温度を監視して、領域内の温度が所定の検出用閾値以上である場合に、高温物が撮像位置に位置したことを検出する位置検出部と、高温物が撮像位置に位置したことが位置検出部により検出された場合に、高温物が撮像位置に位置した際の熱画像のデータを保存する保存部とを含む。
【0007】
また、高温物が撮像位置に位置した際に熱画像内で高温物が占める領域内には、高温物が撮像位置に位置した際に高温物の移動方向に沿う高温物の一端が位置する第1位置と、高温物が撮像位置に位置した際に高温物の移動方向に沿う高温物の他端が位置する第2位置とが含まれており、位置検出部は、第1及び第2位置の温度を監視して、第1位置の温度が第1検出用閾値以上であるとともに、第2位置の温度が第2検出用閾値以上である場合に、高温物が撮像位置に位置したことを検出する。
また、位置検出部は、高温物が撮像位置に位置した際に熱画像内で高温物が占める領域全体の温度を監視して、領域全体の温度が検出用閾値以上である場合に、高温物が撮像位置に位置したことを検出する。
また、位置検出部は、高温物が撮像位置に位置した際に熱画像内で高温物が占める領域外の温度をさらに監視して、領域外の温度が誤検出防止用閾値以下であるとの条件がさらに満たされる場合に、高温物が撮像位置に位置したことを検出する。
また、高温物は、溶融金属を搬送する取鍋であり、位置検出部は、撮像位置に位置する取鍋が熱画像内において占める領域の下方において領域外の温度を監視する。
また、保存部は、高温物が撮像位置に位置したことが位置検出部により検出された場合、熱画像内で予め設定された位置の温度情報を熱画像のデータとして保存する。
また、熱画像処理手段は、熱画像内において高温物の移動方向に沿って互いに離間した2箇所の温度が所定の閾値以上となる順序を監視して、該順序に基づいて高温物の移動方向を検出する移動方向検出部をさらに含み、保存部は、高温物が撮像位置に位置したことが位置検出部により検出された場合に、移動方向検出部により検出された移動方向を熱画像のデータとともに保存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱画像データ保存装置によれば、位置検出部は、高温物が所定の撮像位置に位置した際に熱画像内で高温物が占める領域内の温度が所定の検出用閾値以上である場合に、高温物が撮像位置に位置したことを検出するので、高温物が所定の撮像位置に位置したことを熱画像に基づいて検出できる。これにより、機械的リミットスイッチを使用せずに高温物が同じ位置に存在する熱画像のデータを保存することができ、機械的リミットスイッチを設置するためのスペース及び作業コストを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による熱画像データ保存装置の構成を示すブロック図である。
【図2】撮像位置に位置した際の図1の取鍋を示す正面図である。
【図3】図1の熱画像処理手段による熱画像データ保存動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2による熱画像データ保存装置で用いる第3監視領域を示す説明図である。
【図5】図4の第3監視領域を用いた熱画像データ保存動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態3による熱画像データ保存装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6の熱画像処理手段による熱画像データ保存動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態4による熱画像データ保存装置で用いる監視領域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による熱画像データ保存装置1の構成を示すブロック図であり、図2は、撮像位置に位置した際の図1の取鍋4を示す正面図である。なお、図1では、取鍋4及び真空容器6を平面で示している。図1において、熱画像データ保存装置1は、カメラ2(熱画像生成手段)と、このカメラ2に接続された熱画像処理手段3とを有している。カメラ2は、赤外線を検知する赤外線素子を有するものであり、撮像領域2bにおける熱分布を示す熱画像2aを生成するものである。本実施の形態では、カメラ2は、取鍋4の軌道5を含む真空容器6の上方の領域を撮像するように配置されている(図1及び図2参照)。
【0011】
図2に示すように、取鍋4は、クレーン4aにより吊り下げられた上部開口円筒形状の容器体であり、所定の軌道5に沿ってステンレス溶鋼4b(図1参照)を搬送するものである。本実施の形態では、取鍋4は、転炉などの脱炭炉(図示せず)で粗脱炭されたステンレス溶鋼4bを真空容器6内まで搬送するとともに、真空容器6内で真空酸素吹錬されたステンレス溶鋼4bを連続鋳造設備(図示せず)まで搬送する。すなわち、取鍋4の移動には、真空容器6の上方から真空容器6内へと降下される移動と、真空容器6内から真空容器6の上方へと引上げられる移動とが含まれている。なお、本実施の形態では、高温物は取鍋4により構成され、溶融金属はステンレス溶鋼4bにより構成されている。
【0012】
図1に戻り、熱画像処理手段3は、例えばコンピュータ等の演算手段により構成されたものであり、カメラ2が生成した熱画像2aの処理を行うものである。熱画像処理手段3には、位置検出部30と保存部31とが含まれている。
【0013】
位置検出部30は、取鍋4が所定の撮像位置に位置した際に熱画像2a内で高温物4が占める領域内の温度を監視して、この領域内の温度が所定の検出用閾値以上である場合に、高温物4が撮像位置に位置したことを検出する。
【0014】
具体的には、位置検出部30は、図2に示すように高温物4が撮像位置に位置した際に熱画像2a内で高温物4が占める領域内に含まれる第1及び第2監視領域30a,30bの温度を監視して、第1監視領域30aの温度が第1検出用閾値以上であるとともに、第2監視領域30bの温度が第2検出用閾値以上である場合に、高温物4が撮像位置に位置したことを検出する。
【0015】
第1監視領域30aは、取鍋4が所定の撮像位置に位置した際に取鍋4の移動方向に沿う取鍋4の一端が位置する箇所(第1位置)に配置された領域であり、第2監視領域30bは、取鍋4が所定の撮像位置に位置した際に取鍋4の移動方向に沿う取鍋4の他端が位置する箇所(第2位置)に配置された領域である。本実施の形態のように取鍋4が上下方向に移動する場所に撮像位置を設けた場合には、取鍋4が撮像位置に位置した際に、第1監視領域30aに取鍋4の上端が位置し、第2監視領域30bに取鍋4の下端が位置する。これら第1及び第2監視領域30a,30bは、熱画像2aに含まれる複数のピクセルにより構成されたものである。
【0016】
各監視領域30a,30bの温度が各検出用閾値以上であるか否かは、例えば、各監視領域30a,30bに含まれるピクセルのうち、各検出用閾値以上の温度を示すピクセルの数が所定値を超えているか否か、又は各検出用閾値以上の温度を示すピクセルの割合が所定値を超えているか否か等により判断される。
【0017】
第1及び第2検出用閾値としては、撮像位置における通常の雰囲気温度よりも高い温度であって、ステンレス溶鋼4bを収容する取鍋4の最低外面温度以上の温度が設定される。例えば、第1監視領域30aの温度と比較される第1検出用閾値は60℃程度に設定され、第2監視領域30bの温度と比較される第2検出用閾値は100℃程度に設定される。これら第1及び第2検出用閾値は、互いに同じ値とされてもよい。
【0018】
なお、図2において第1監視領域30aが第2監視領域30bよりも小さく設定されているのは、取鍋4が撮像位置に位置した際に熱画像2a内でクレーン4aが占める領域が第1監視領域30aに含まれることを回避して、取鍋4自体の温度を監視できるようにするためである。
【0019】
保存部31は、取鍋4が撮像位置に位置したことが位置検出部30により検出された場合に、取鍋4が撮像位置に位置した際の熱画像2aのデータを保存する。このとき、保存部31は、熱画像2aの全体データ、及び熱画像2a内で予め設定された位置の温度情報を保存する。この予め設定された位置の温度情報とは、温度の傾向を監視するために管理者が任意に設定した位置の温度情報であり、例えば取鍋4内でスラグが存在する高さ位置における取鍋4の外面温度、及び取鍋4の底部側面部分の外面温度等である。このように、熱画像2aの全体データのみならず、予め設定された位置の温度情報も保存するように構成することで、熱画像2aのデータを解析する際に、人手により特定位置の温度情報を抽出する必要性を無くすことができるようにしている。また、この予め設定された位置の温度情報を用いて、当該位置の温度が所定値を超える場合に警報を発するように構成することもできる。
【0020】
次に、熱画像処理手段3の動作について説明する。図3は、図1の熱画像処理手段3による熱画像データ保存動作を示すフローチャートである。図において、熱画像処理手段3の電源が投入にされると、第1及び第2監視領域30a,30bの両方の温度が第1及び第2検出用閾値以上であるか否かが位置検出部30により判定される(ステップS10)。このとき、第1及び第2監視領域30a,30bのいずれか一方の温度が各検出用閾値よりも小さいと判定されると、第1及び第2監視領域30a,30bの両方の温度が第1及び第2検出用閾値以上となるまで上記判定が繰り返される。
【0021】
一方で、第1及び第2監視領域30a,30bの温度の判定時に、第1及び第2監視領域30a,30bの両方の温度が検出用閾値以上であると判定されると、取鍋4が撮像位置に位置していることが位置検出部30により検出され(ステップS11)、熱画像2aの全体のデータ、及び熱画像2a内で予め設定された位置の温度情報が保存部31により保存される(ステップS12,S13)。これらの熱画像2aのデータが保存されると、熱画像データ保存動作が終了される。この熱画像データ保存動作は、熱画像処理手段3の電源が投入されているときに繰り返し実施される。
【0022】
このような熱画像データ保存装置では、位置検出部30は、取鍋4が所定の撮像位置に位置した際に熱画像2a内で取鍋4が占める領域内の温度が所定の検出用閾値以上である場合に、取鍋4が撮像位置に位置したことを検出するので、取鍋4が所定の撮像位置に位置したことを熱画像2aに基づいて検出できる。これにより、機械的リミットスイッチを使用せずに取鍋4が同じ位置に存在する熱画像2aのデータを保存することができ、機械的リミットスイッチを設置するためのスペース及び作業コストを不要とすることができる。
【0023】
また、位置検出部30は、第1及び第2監視領域30a,30bの温度を監視して、第1監視領域30aの温度が第1検出用閾値以上であるとともに、第2監視領域30bの温度が第2検出用閾値以上である場合に、取鍋4が撮像位置に位置したことを検出するので、位置検出部30による温度監視領域を取鍋4の位置特定に十分な箇所に限定でき、熱画像2aの処理にかかる負荷を小さくできる。また、取鍋4の位置検出に意図しない物体が温度監視領域に含まれる可能性を低減でき、取鍋4の位置検出の精度を向上できる。
【0024】
さらに、保存部31は、高温物4が撮像位置に位置したことが位置検出部30により検出された場合、熱画像2a内で予め設定された位置の温度情報を熱画像2aのデータとして保存するので、熱画像2aのデータを解析する際に、人手により特定位置の温度情報を抽出する必要性を無くすことができ、利便性を向上できる。また、この予め設定された位置の温度情報を用いて、当該位置の温度が所定値を超える場合に警報を発するように構成することもできる。
【0025】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2による熱画像データ保存装置1で用いる第3監視領域30cを示す説明図であり、図5は、図4の第3監視領域30cを用いた熱画像データ保存動作を示すフローチャートである。なお、熱画像データ保存装置1の全体としての構成は、実施の形態1の構成と同様であるので、実施の形態2の構成の説明に図1も参照する。
【0026】
この実施の形態2では、位置検出部30は、取鍋4が撮像位置に位置した際に熱画像2a内において取鍋4が占める領域外に配置された第3監視領域30c(図4参照)の温度(領域外の温度)をさらに監視して、この第3監視領域30cの温度が所定の誤検出防止用閾値以下であるとの条件がさらに満たされた場合に、取鍋4が撮像位置に位置したことを検出するように構成されている(図5のステップS20参照)。換言すれば、実施の形態2の位置検出部30は、第3監視領域30cの温度が誤検出防止用閾値以下であるとの条件がさらに満たされなければ、取鍋4が撮像位置に位置したことを検出しない。
【0027】
ここで、実施の形態1で説明したように、取鍋4は上部開口を有する容器であり、例えば真空容器6を開放したとき等に、取鍋4の上部開口から大きな炎が吹き出ることもある。実施の形態1のように第1及び第2監視領域30a,30bの両方の温度が検出用閾値以上である場合に取鍋4が撮像位置に位置していることが検出される場合、取鍋4の開口から吹き出た炎が第1及び第2監視領域30a,30bの両方にかかった際に、取鍋4が撮像位置に位置していると誤検出される可能性もある。そこで、本実施の形態では、取鍋4が撮像位置に位置した際に熱画像2a内において取鍋4が占める領域外に配置された第3領域30aの温度が誤検出防止用閾値以下であるとの条件を取鍋4の位置検出に加えることで、上記のような誤検出が発生する可能性を低減している。
【0028】
特に、第3監視領域30cは、撮像位置に位置した取鍋4が熱画像2a内において占める領域の下方に位置するように第2領域30cに隣接して設けられている。仮に第3監視領域30cが取鍋4の上方の領域に設定されているとすると、取鍋4の上部開口から炎が吹き出ている場合に、炎の影響により取鍋4が撮像位置に位置していることを検出できなくなることも考えられる。そこで、上述のように第3監視領域30cを取鍋4の下方に配置することで、炎の影響により取鍋4が撮像位置に位置していることを検出できなくなることを回避している。
【0029】
なお、第3監視領域30cを取鍋4の下方に配置する構成は、撮像位置に位置した取鍋4から炎が吹き上がる場合に特に有用な構成であり、撮像位置に位置した取鍋4から炎が吹き上がる可能性が低い場合、及び他の高温物の位置検出を行う場合には、例えば熱画像2a内において高温物が占める領域の上方や側方等の他の位置に第3領域を配置してよい。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0030】
このような熱画像データ保存装置1では、位置検出部30は、取鍋4が撮像位置に位置した際に熱画像2a内で高温物4が占める領域外の第3監視領域30cの温度をさらに監視して、第3監視領域30cの温度が誤検出防止用閾値以下であるとの条件がさらに満たされる場合に、取鍋4が撮像位置に位置したことを検出するので、取鍋4から炎が吹き出るような場合でも、炎の影響により誤検出が発生する可能性を低減でき、熱画像2aのデータを保存する精度を向上できる。
【0031】
また、位置検出部30は、撮像位置に位置する取鍋4が熱画像2a内において占める領域の下方における第3監視領域30cの温度を監視するので、撮像位置に位置した取鍋4から炎が吹き上がる場合でも、取鍋4が撮像位置に位置していることをより確実に検出でき、取鍋4の位置検出精度をさらに向上できる。
【0032】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3による熱画像データ保存装置1の構成を示すブロック図であり、図7は、図6の熱画像処理手段3による熱画像データ保存動作を示すフローチャートである。この実施の形態3の構成は、実施の形態2の構成に移動方向検出部32が追加された構成である。移動方向検出部32は、第1及び第2監視領域30a,30bの温度が各検出用閾値以上となる順序を監視して、この順序に基づいて取鍋4の移動方向を検出する。
【0033】
すなわち、第1監視領域30aの温度が第1検出用閾値以上となった後に、第2監視領域30bの温度が第2検出用閾値以上となった場合、移動方向検出部32は、取鍋4が真空容器6の上方から降下していることを検出する。また、第2監視領域30bの温度が第2検出用閾値以上となった後に、第1監視領域30aの温度が第1検出用閾値以上となった場合、移動方向検出部32は、取鍋4が真空容器6内から引上げられていることを検出する。
【0034】
保存部31は、取鍋4が撮像位置に位置したことが位置検出部30により検出された場合に、移動方向検出部32により検出された移動方向を熱画像2aのデータとともに保存する(図7のステップS30参照)。その他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0035】
このような熱画像データ保存装置では、移動方向検出部32は、第1及び第2監視領域30a,30bの温度が各検出用閾値以上となる順序を監視して、この順序に基づいて取鍋4の移動方向を検出し、保存部31は、取鍋4が撮像位置に位置したことが位置検出部30により検出された場合に、移動方向検出部32により検出された移動方向を熱画像2aのデータとともに保存するので、保存部31により保存された熱画像2aのデータがどのタイミングのデータであるかをより確実に判別でき、熱画像2aのデータを解析する際の利便性を大幅に向上できる。
【0036】
なお、実施の形態3では、実施の形態2の構成に移動方向検出部32を追加するように説明しているが、実施の形態1の構成に移動方向検出部32を追加してもよい。すなわち、誤検出防止用閾値を用いた位置検出を行うか否かに拘わらず、移動方向検出部により高温物の移動方向を検出してよい。
【0037】
また、実施の形態3では、移動方向検出部32は、第1及び第2監視領域30a,30bの温度が各検出用閾値以上となる順序を監視すると説明しているが、移動方向検出部は、熱画像内において高温物の移動方向に沿って互いに離間した2箇所であれば、位置検出部が温度を監視する位置とは異なる箇所の温度を監視してもよい。すなわち、移動方向検出部が温度を監視するためだけの監視領域又は監視点を別途設けてもよい。また、移動方向検出部が使用する閾値は、位置検出部が使用する閾値と別の閾値としてもよい。
【0038】
さらに、実施の形態1〜3では、二次元的な広がりを有する第1〜第3監視領域30a〜30cの温度に基づいて、取鍋4が撮像位置に位置していることを検出するとともに、取鍋4の移動方向を検出するように説明しているが、このような複数のピクセルからなる領域の代りに、熱画像2aに含まれる点(1ピクセル)の温度に基づいて上記判断を行ってもよい。
【0039】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4による熱画像データ保存装置で用いる監視領域30dを示す説明図である。なお、熱画像データ保存装置1の全体としての構成は、実施の形態1の構成と同様であるので、実施の形態4の構成の説明に図1も参照する。実施の形態1の位置検出部30は、熱画像2a内に設けられた2つの監視領域30a,30bの温度に基づいて取鍋4が撮像位置に位置していることを検出していたが、この実施の形態4の位置検出部30は、取鍋4が所定の撮像位置に位置した際に熱画像2a内で取鍋4が占める領域全体を1つの監視領域30dとして温度を監視して、当該監視領域30dの温度が検出用閾値以上である場合に、高温物4が撮像位置に位置したことを検出する。
【0040】
監視領域30dの温度が所定の検出用閾値以上であるか否かは、例えば、監視領域30dに含まれるピクセルのうち、検出用閾値以上の温度を示すピクセルの数が所定値を超えているか否か、又は検出用閾値以上の温度を示すピクセルの割合が所定値を超えているか否か等により判断される。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0041】
このように、高温物4が撮像位置に位置した際に熱画像2a内で高温物4が占める領域全体の温度を監視して、領域全体の温度が検出用閾値以上である場合に、高温物4が撮像位置に位置したことを検出することも可能である。この構成を採る場合でも、機械的リミットスイッチを使用せずに取鍋4が同じ位置に存在する熱画像2aのデータを保存することができ、機械的リミットスイッチを設置するためのスペース及び作業コストを不要とすることができる。
【0042】
なお、実施の形態4の構成に実施の形態2の構成を組み合わせることも可能である。すなわち、実施の形態4ように、取鍋4が所定の撮像位置に位置した際に熱画像2a内で取鍋4が占める領域全体を1つの監視領域30dとして温度を監視する構成を採る場合でも、高温物4が撮像位置に位置した際に熱画像2a内で高温物4が占める領域外の温度をさらに監視して、領域外の温度が誤検出防止用閾値以下であるとの条件がさらに満たされる場合に、高温物4が撮像位置に位置したことを検出するように構成できる。
【0043】
また、実施の形態4の構成に実施の形態3の構成を組み合わせることも可能である。すなわち、実施の形態4のような構成を採る場合でも、移動方向検出部が、熱画像内において高温物の移動方向に沿って互いに離間した2箇所の温度が所定の閾値以上となる順序を監視して、該順序に基づいて取鍋4の移動方向を検出してもよい。
【0044】
また、実施の形態1〜4では取鍋4を監視対象としているが、例えば製鋼所内における混銑車(トピードカー)等、所定の軌道に沿って移動するものであって、雰囲気温度よりも高い熱を有することにより熱画像内において識別できる他の高温物を監視対象としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 熱画像データ保存装置
2 カメラ(熱画像生成手段)
2a 熱画像
3 熱画像処理手段
4b ステンレス溶鋼(溶融金属)
4 取鍋(高温物)
5 軌道
30 位置検出部
31 保存部
32 移動方向検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軌道(5)に沿って移動する高温物(4)を撮像した熱画像(2a)のデータを保存する熱画像データ保存装置であって、
前記軌道(5)を含む領域を撮像して前記熱画像(2a)を生成する熱画像生成手段(2)と、
前記熱画像生成手段(2)に接続され、前記熱画像(2a)の処理を行う熱画像処理手段(3)と
を備え、
前記熱画像処理手段(3)は、
前記高温物(4)が所定の撮像位置に位置した際に前記熱画像(2a)内で前記高温物(4)が占める領域内の温度を監視して、前記領域内の温度が所定の検出用閾値以上である場合に、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置したことを検出する位置検出部(30)と、
前記高温物(4)が前記撮像位置に位置したことが前記位置検出部(30)により検出された場合に、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置した際の前記熱画像(2a)のデータを保存する保存部(31)と
を含むことを特徴とする熱画像データ保存装置。
【請求項2】
前記高温物(4)が前記撮像位置に位置した際に前記熱画像(2a)内で前記高温物(4)が占める領域内には、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置した際に前記高温物(4)の移動方向に沿う前記高温物(4)の一端が位置する第1位置(30a)と、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置した際に前記高温物(4)の移動方向に沿う前記高温物(4)の他端が位置する第2位置(30b)とが含まれており、
前記位置検出部(30)は、前記第1及び第2位置(30a,30b)の温度を監視して、前記第1位置(30a)の温度が第1検出用閾値以上であるとともに、前記第2位置(30b)の温度が第2検出用閾値以上である場合に、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置したことを検出することを特徴とする請求項1記載の熱画像データ保存装置。
【請求項3】
前記位置検出部(30)は、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置した際に前記熱画像(2a)内で前記高温物(4)が占める領域全体の温度を監視して、前記領域全体の温度が前記検出用閾値以上である場合に、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置したことを検出することを特徴とする請求項1記載の熱画像データ保存装置。
【請求項4】
前記位置検出部(30)は、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置した際に前記熱画像(2a)内で前記高温物(4)が占める領域外の温度をさらに監視して、前記領域外の温度が誤検出防止用閾値以下であるとの条件がさらに満たされる場合に、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置したことを検出することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の熱画像データ保存装置。
【請求項5】
前記高温物(4)は、溶融金属(4b)を搬送する取鍋(4)であり、
前記位置検出部(30)は、前記撮像位置に位置する前記取鍋(4)が前記熱画像(2a)内において占める領域の下方において前記領域外の温度を監視することを特徴とする請求項4記載の熱画像データ保存装置。
【請求項6】
前記保存部(31)は、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置したことが前記位置検出部(30)により検出された場合、前記熱画像(2a)内で予め設定された位置の温度情報を前記熱画像(2a)のデータとして保存することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の熱画像データ保存装置。
【請求項7】
前記熱画像処理手段(3)は、前記熱画像(2a)内において前記高温物(4)の移動方向に沿って互いに離間した2箇所の温度が所定の閾値以上となる順序を監視して、該順序に基づいて前記高温物(4)の移動方向を検出する移動方向検出部(32)をさらに含み、
前記保存部(31)は、前記高温物(4)が前記撮像位置に位置したことが前記位置検出部(30)により検出された場合に、前記移動方向検出部(32)により検出された前記移動方向を前記熱画像(2a)のデータとともに保存することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の熱画像データ保存装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−76632(P2013−76632A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216522(P2011−216522)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【Fターム(参考)】