説明

熱界面材料、並びに、その調製及び使用方法

硬化性組成物は(A)1分子当たり平均少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンベースポリマー、選択的に(B)1分子当たり平均少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する架橋剤、(C)触媒、(D)熱伝導性充填剤、及び(E)有機可塑剤を含有する。組成物を硬化し、熱伝導性シリコーンゲル又はゴムを形成することができる。熱伝導性シリコーンゴムはTIM1及びTIM2両方の用途において熱界面材用として有用である。硬化性組成物は湿式分注した後、(光)電子デバイスにおいてin situ硬化することができ、又は硬化性組成物は(光)電子デバイスへの設置前に硬化して支持体を含む若しくは含まないパッドを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は米国特許法第119条(e)に基づき2009年3月12日出願の米国仮特許出願第61/159,569号の優先権を主張する。米国仮特許出願第61/159,569号は本明細書に参照により組み入れる。
【0002】
本発明は熱界面材料(TIM)に関する。より具体的には、本発明は有機可塑剤、熱伝導性充填剤、及び硬化性シリコーン組成物を含む硬化性シリコーン組成物(「組成物」)を硬化することにより調製した硬化シリコーンを含むTIMに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体、トランジスタ、集積回路(IC)、個別素子、発光ダイオード(LED)、及び当技術分野において知られる他のもののような(光)電子部品は通常作動温度又は通常作動温度範囲内で作動するように設計されている。しかしながら、(光)電子部品の作動は熱を発生させる。十分な熱が除去されないと、(光)電子部品はその通常作動温度より大幅に高い温度で作動するだろう。過剰な温度は(光)電子部品の性能及びそれに関連するデバイスの作動に悪影響を及ぼし、平均故障間隔にマイナスの影響を与え得る。
【0004】
これらの問題を回避するため、(光)電子部品からヒートシンクへの熱伝導により熱を除去することができる。次に対流又は放射法いずれかの便利な手段によりヒートシンクを冷却することができる。熱伝導中、TIMでの(光)電子部品とヒートシンクとの間の表面接触により熱を(光)電子部品からヒートシンクへ移動させることができる(TIM1用途)。あるいは、TIMはヒートシンク及び(光)電子デバイスにおける別の部品、例えばふた又はカバーのようなヒートスプレッダと接触していてもよい(TIM2用途)。
【0005】
(光)電子部品及びヒートシンクの表面は一般的には完全に滑らかではなく、従って表面間の完全接触を得ることは困難である。表面間に熱伝導性の低い空隙ができ、熱の除去を妨げる。TIMを(光)電子部品及びヒートシンクの表面間に挿入することでこれらの隙間を埋め、効率的な熱移動を促進する。TIMの熱インピーダンスが低いほど(光)電子部品からヒートシンクへの熱流量は大きい。
【0006】
ほとんどのTIMは熱硬化性又は熱可塑性ポリマーマトリクスをベースとする。しかしながら、適合性ポリマーの熱伝導性はむしろ低く、一般的には0.15〜0.30W/mKの範囲内である。TIMの熱伝導性を増加するため、熱伝導性充填剤をポリマーマトリクスに添加することができる。これらの充填TIMの熱伝導性は充填剤粒径及び充填剤粒径分布により決定されるポリマーマトリクスにおける充填剤の熱伝導性及び充填剤の充填を含む各種要因によって決まる。
【0007】
TIMによる2つの基板間の熱移動の有効性は熱インピーダンス又は熱抵抗に関して表される。熱インピーダンス又は熱抵抗はTIMのバルク抵抗及びTIMと基板との間の界面抵抗の合計である。(光)電子産業には、(光)電子デバイスの耐用年数のため、高熱伝導性、低熱インピーダンス、及び所定の位置にとどまる能力を有するTIMを製造する継続的必要性がある。(光)電子産業には、熱伝導性を増加し、熱インピーダンスを減少させるため、低軟度、高圧縮性を有し、不純物の流出量の低いTIMを製造する継続的必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
組成物は熱界面材料用途に有用である。組成物は:
(A)1分子当たり平均少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンベースポリマー、
選択的に(B)1分子当たり平均少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する架橋剤、
(C)触媒、
(D)熱伝導性充填剤、及び
(E)有機可塑剤
を含む。
【0009】
熱界面材料の調製方法は:1)上述の組成物を熱経路に沿って間に配置し、(光)電子デバイスのような熱源から熱を放散させるステップ、及び2)組成物を硬化するステップを含むことができる。ステップ2)はステップ1)前又は後に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】界面材料の例の部分断面図である。
【図2】(光)電子デバイスの例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
すべての量、比、及び割合はとくに指示のない限り体積による。以下は本明細書に用いる定義のリストである。
【0012】
用語の定義及び使用
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ1つ又はそれ以上を意味する。
【0013】
「組み合わせ」とは、いずれかの方法によりまとめた2つ以上の要素を意味する。
【0014】
「有機可塑剤」とは、非シリコーン化合物を含有しない硬化シリコーンの圧縮永久ひずみと比較して硬化シリコーンの圧縮永久ひずみを低減する非シリコーン化合物を意味する。
【0015】
「可溶性」とは、組成物の成分を組み合わせる場合、得られる組み合わせが組成物を硬化する方法の間均質な混合物のままである、例えば、可塑剤が分離相を形成しないことを意味する。
【0016】
(W/m K)単位の熱伝導性(k)は厚さΔx及び面積Aを有する材料にわたり熱(Q)を移動させる能力に関連し、ΔTの温度差動をもたらし、下式により数学的に定義される。
【数1】

【0017】
(cm K/W)単位の熱インピーダンス(R)は2つの界面間の材料の熱移動の有効性に関連し、下式により数学的に定義される。
【数2】

【0018】
「表面処理」とは、いずれかの便利な化学的又は非反応性手段により充填剤粒子上のすべての、又は一部の反応基の反応性を小さくすることを意味する。
【0019】
組成物
組成物は、
(A)1分子当たり平均少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンベースポリマーと、
選択的に、(B)1分子当たり平均少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する架橋剤と、
(C)ヒドロシリル化反応触媒及び過酸化物硬化触媒から選択される触媒と、
(D)熱伝導性充填剤と、
(E)組成物の硬化を抑制しない、成分(A)に可溶性である有機可塑剤とを含む。
【0020】
組成物は、例えばヒドロシリル化又は過酸化物硬化により、硬化性であってもよい。ヒドロシリル化硬化性組成物には成分(B)が存在する。過酸化物硬化性組成物には成分(B)は選択的にある。
【0021】
・ヒドロシリル化硬化性組成物
ヒドロシリル化硬化性組成物は:100重量部の(A’)1分子当たり平均少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンベースポリマー;(B’)シラン又はシロキサンのような、1分子当たり平均少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する架橋剤;及び組成物の硬化を開始するのに十分な量の(C’)白金族金属触媒を含むことができるが、成分及び量は組成物を硬化することにより調製された硬化シリコーンがシリコーンゴムとなるように選択することができる。
【0022】
・成分(A’)ベースポリマー
ヒドロシリル化硬化性組成物の成分(A’)は1分子当たり平均少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンを含むことができる。成分(A’)は線状又は分岐構造を有することができる。成分(A’)はホモポリマー又はコポリマーであってもよい。脂肪族不飽和有機基はアルケニル、例えば、これらに限定されないが、ビニル、アリル、ブテニル、及びへキセニルであってもよい。不飽和有機基はアルキニル基、例えば、これらに限定されないが、エチニル、プロピニル、及びブチニルであってもよい。成分(A’)中の脂肪族不飽和有機基は末端、ペンダント、又は末端及びペンダント両方の位置にあってもよい。
【0023】
成分(A’)中の残りのケイ素結合有機基は脂肪族不飽和を含まない一価有機基であってもよい。これらの一価有機基は1〜20個の炭素原子、あるいは1〜10個の炭素原子を有することができ、その例としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル基;シクロペンチル及びシクロへキシルのようなシクロアルキル基;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのような芳香族基があるが、これらに限定されない。
【0024】
成分(A’)は、
式(VII):RSiO(RSiO)(RSiO)eSiR
式(VIII):RSiO(RSiO)(RSiO)SiR
又は、これらの組み合わせのポリオルガノシロキサンを含むことができる。
【0025】
式(VII)及び(VIII)中、各Rは単独で脂肪族不飽和を含まない一価有機基であり、各Rは単独で脂肪族不飽和有機基である。下付き文字dは少なくとも2の平均値を有し、あるいは下付き文字dは2〜2000の範囲の値を有することができる。下付き文字eは0又は正の数とすることができる。あるいは、下付き文字eは0〜2000の範囲の平均値を有することができる。下付き文字fは0又は正の数とすることができる。あるいは、下付き文字fは0〜2000の範囲の平均値を有することができる。下付き文字gは少なくとも2の平均値を有する。あるいは、下付き文字gは2〜2000の範囲の平均値を有することができる。Rに適した一価有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロペンチル及びシクロへキシルのようなシクロアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられるが、これらに限定されない。各Rは単独で脂肪族不飽和一価有機基である。Rの例としては、ビニル、アリル、及びブテニルのようなアルケニル基並びにエチニル及びプロピニルのようなアルキニル基がある。
【0026】
成分(A’)は、
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
viii)フェニル、メチル、ビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ix)ジメチルへキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)ジメチルへキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルへキセニルシロキサン)、
xi)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルへキセニルシロキサン)、
xiii)これらの組み合わせ、
のようなポリジオルガノシロキサンを含むことができる。
【0027】
対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡のような、成分(A’)として用いるのに適した液体ポリジオルガノシロキサンの調製方法は当技術分野において周知である。
【0028】
上述のポリジオルガノシロキサンに加えて、成分(A’)は本質的にRSiO1/2単位及びSiO4/2単位で構成されるMQ樹脂、本質的にRSiO3/2単位及びRSiO2/2単位で構成されるTD樹脂、本質的にRSiO1/2単位及びRSiO3/2単位で構成されるMT樹脂、本質的にRSiO1/2単位、RSiO3/2単位、及びRSiO2/2単位で構成されるMTD樹脂、又はこれらの組み合わせのような樹脂をさらに含むことができる。
【0029】
各Rは一価有機基である。Rにより表される一価有機基は1〜20個の炭素原子を有することができる。一価有機基の例としては、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されない。一価炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロへキシルのようなシクロアルキル;ビニル、アリル、ブテニル、及びへキセニルのようなアルケニル;エチニル、プロピニル、及びブチニルのようなアルキニル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
樹脂は平均3〜30モルパーセントの脂肪族不飽和有機基を含有することができる。脂肪族不飽和有機基はアルケニル基、アルキニル基、又はこれらの組み合わせであってもよい。樹脂中の脂肪族不飽和有機基のモルパーセントは樹脂中の不飽和基含有シロキサン単位のモル数の樹脂中のシロキサン単位の合計モル数に対する比に100をかけたものである。
【0031】
樹脂の調製方法は当技術分野において周知である。例えば、樹脂はDaudt他のシリカヒドロゾルキャッピングプロセスにより生成された樹脂コポリマーを少なくともアルケニル含有末端ブロック試薬で処理することにより調製することができる。Daudt他の方法は米国特許第2,676,182号に開示されている。
【0032】
簡潔に述べると、Daudt他の方法はシリカヒドロゾルを酸性条件下でトリメチルクロロシランのような加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンのようなシロキサン、又はこれらの混合物と反応させるステップ、並びにM及びQ単位を有するコポリマーを回収するステップを含む。得られるコポリマーは一般的に2〜5重量パーセントのヒドロキシル基を含有する。
【0033】
一般的には2重量パーセント未満のケイ素結合ヒドロキシル基を含有する樹脂はDaudt他の生成物を最終生成物中3〜30モルパーセントの不飽和有機基をもたらすのに十分な量の不飽和有機基含有末端ブロック剤及び脂肪族不飽和を含まない末端ブロック剤で反応させることにより調製することができる。末端ブロック剤の例としては、シラザン、シロキサン、及びシランが挙げられるが、これらに限定されない。適切な末端ブロック剤は当技術分野において知られ、米国特許第4,584,355号、第4,591,622号、及び第4,585,836号において例示されている。単一の末端ブロック剤又はこうした作用剤の混合物を用い、樹脂を調製することができる。
【0034】
成分(A’)は1つの単一ベースポリマー又は以下の特性:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位、及び配列の少なくとも1つが異なる2つ以上のベースポリマーを含む組み合わせとすることができる。
【0035】
・成分(B’)架橋剤
ヒドロシリル化硬化パッケージ中の成分(B’)は1分子当たり平均少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するシラン又はオルガノ水素ポリシロキサンであってもよい。ヒドロシリル化硬化性組成物中の成分(B’)の量は成分(B’)のSiH含量、成分(A’) の不飽和基含量、及び所望の組成物の硬化物の特性を含む各種要因によって決まるが、成分(B’)の量は0.3:1〜5:1の範囲の成分(B’)中のSiH基の成分(A’)中の脂肪族不飽和有機基に対するモル比(一般にSiH:Vi比と称される)をもたらすのに十分であってもよい。成分(B’)はホモポリマー又はコポリマーとすることができる。成分(B’)は線状、分岐、環状、又は樹脂構造を有することができる。成分(B’)中のケイ素結合水素原子は末端、ペンダント、又は末端及びペンダント両方の位置にあり得る。
【0036】
成分(B’)は、これらに限定されないが、HRSiO1/2、RSiO1/2、HRSiO2/2、RSiO2/2、RSiO3/2、及びSiO4/2単位を含むシロキサン単位を含むことができる。前式中、各Rは単独で脂肪族不飽和を含まない一価有機基から選択される。
【0037】
成分(B’)は式
(IX)RSiO(RSiO)(RHSiO)SiR
(X)RHSiO(RSiO)(RHSiO)SiRH、又は
これらの組み合わせの化合物を含むことができる。
【0038】
上記式(IX)及び(X)中、下付き文字hは0〜2000の範囲の平均値を有し、下付き文字iは2〜2000の範囲の平均値を有し、下付き文字jは0〜2000の範囲の平均値を有し、下付き文字kは0〜2000の範囲の平均値を有する。各Rは単独で一価有機基である。適切な一価有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロペンチル及びシクロへキシルのようなシクロアルキル;ビニル、アリル、ブテニル、及びへキセニルのようなアルケニル;エチニル、プロピニル、及びブチニルのようなアルキニル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられる。
【0039】
成分(B’)の例としては、
a)ジメチル水素シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
b)ジメチル水素シロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、
c)ジメチル水素シロキシ末端ポリメチル水素シロキサン、
d)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、
e)トリメチルシロキシ末端ポリメチル水素シロキサン、
f)本質的にH(CHSiO1/2単位及びSiO4/2単位で構成される樹脂、並びに
g)これらの組み合わせ
がある。
【0040】
成分(B’)は以下の特性:構造、平均分子量、粘度、シロキサン単位、及び配列の少なくとも1つが異なる2つ以上のオルガノ水素ポリシロキサンの組み合わせであってもよい。比較的低い重合度(例えば、3〜50の範囲のDP)を有するジメチル水素シロキシ末端ポリジメチルシロキサンは一般的に鎖延長剤と称され、成分(B’)の一部は鎖延長剤であってもよい。
【0041】
オルガノハロシランの加水分解及び縮合のような、成分(B’)として用いるのに適した線状、分岐、及び環状オルガノ水素ポリシロキサンの調製方法は当技術分野において周知である。成分(B’)として用いるのに適したオルガノ水素ポリシロキサン樹脂の調製方法も米国特許第5,310,843号、第4,370,358号、及び第4,707,531号に例示されるように周知である。
【0042】
・成分(C’)ヒドロシリル化触媒
ヒドロシリル化硬化性組成物の成分(C’)はヒドロシリル化触媒である。成分(C’)は、ヒドロシリル化硬化性組成物に硬化性組成物の重量に対して白金族金属0.1重量ppm〜1000重量ppm、あるいは1〜500重量ppm、あるいは2〜200重量ppm、あるいは5〜150重量ppmの範囲とすることができる量で添加される。
【0043】
適切なヒドロシリル化触媒は当技術分野において知られ、市販されている。成分(C’)は白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム若しくはイリジウム金属若しくはこれらの有機金属化合物、又はこれらの組み合わせから選択される白金族金属を含むことができる。成分(C’)の例としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及びマトリクス又はコアシェル型構造中にマイクロカプセル化した前記化合物の低分子量オルガノポリシロキサン又は白金化合物との錯体のような化合物がある。低分子量オルガノポリシロキサンの白金錯体としては、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体が挙げられる。これらの錯体は樹脂マトリクス中にマイクロカプセル化することができる。あるいは、触媒は1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体を含むことができる。触媒が低分子量オルガノポリシロキサンの白金錯体である場合、触媒の量は硬化性シリコーン組成物の重量に対して0.04%〜0.4%の範囲とすることができる。
【0044】
成分(C’)に適したヒドロシリル化触媒については、例えば、米国特許第3,159,601号、第3,220,972号、第3,296,291号、第3,419,593号、第3,516,946号、第3,814,730号、第3,989,668号、4,784,879号、第5,036,117号、及び第5,175,325号並びに欧州特許第0347895B号に記載されている。マイクロカプセル化したヒドロシリル化触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び米国特許第5,017,654号に例示されるように、当技術分野において知られている。
【0045】
・過酸化物硬化性組成物
あるいは、過酸化物硬化性組成物は:100重量部の(A”)ベースコポリマー、選択的に組成物を硬化するのに十分な量の(B”)架橋剤、及び組成物の硬化を促進するのに十分な量の(C”)過酸化物触媒を含むことができるが、成分及び量は組成物の硬化物をシリコーンゴムとすることができるように選択される。
【0046】
・成分(A”)ベースポリマー
過酸化物硬化パッケージの成分(A”)は、ヒドロシリル化硬化パッケージの成分(A’)としての上に記載したポリオルガノシロキサンのような、1分子当たり平均少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリジオルガノシロキサンを含むことができる。
【0047】
・任意の成分(B”)架橋剤
成分(B”)は、選択的に過酸化物硬化性組成物に添加し、この組成物を硬化することにより調製された硬化シリコーンの圧縮永久ひずみを向上(低減)させることができる架橋剤である。過酸化物硬化性組成物中の成分(B”)の量は成分(B”)のSiH含量、成分(A”) の不飽和基含量、及び所望の組成物の硬化物の特性を含む各種要因によって決まるが、成分(B”)の量は0.3:1〜5:1の範囲の成分(B”)中のSiH基の成分(A”)中の脂肪族不飽和有機基に対するモル比(一般にSiH:Vi比と称される)をもたらすのに十分であってもよい。組成物中の成分(B”)の量は成分(A”)100重量部当たり0〜15(重量)部の範囲とすることができる。成分(B”)は1分子当たり平均少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するポリジオルガノ水素シロキサンを含むことができる。成分(B”)の例としては、ヒドロシリル化硬化性組成物中の成分(B’)として記載したポリジオルガノ水素シロキサンがある。
【0048】
・成分(C”)触媒
過酸化物硬化性組成物中の成分(C”)は過酸化化合物を含む。組成物に添加する成分(C”)の量は成分(C”)について選択される特定の過酸化化合物によって決まるが、その量は成分(A”)100重量部当たり0.2〜5(重量)部の範囲とすることができる。成分(C”)に適した過酸化化合物の例としては、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化ジクミル、及びこれらの組み合わせ;並びにこうした過酸化物の過安息香酸第三級ブチルのような安息香酸化合物との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。適切な過酸化物硬化性組成物は当技術分野において知られ、例えば、米国特許第4,774,281号に開示されている。
【0049】
・熱伝導性充填剤
成分(D)は熱伝導性充填剤である。成分(D)は熱伝導性かつ導電性であってもよい。あるいは、成分(D)は熱伝導性かつ電気絶縁性であってもよい。成分(D)は窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、チタン酸バリウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、炭素繊維、ダイヤモンド、黒鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、金属微粒子、オニキス、炭化ケイ素、炭化タングステン、酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。成分(D)は金属充填剤、無機充填剤、溶融性充填剤、又はこれらの組み合わせを含むことができる。金属充填剤は金属の粒子及び粒子の表面上に層を有する金属の粒子を含む。これらの層は、例えば、粒子の表面上の金属窒化物層又は金属酸化物層であってもよい。適切な金属充填剤の例としては、アルミニウム、銅、金、ニッケル、銀、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属、あるいはアルミニウムの粒子がある。適切な金属充填剤の例としてはさらに、表面上に窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化銀、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される層を有する上記金属の粒子がある。例えば、金属充填剤は表面上に酸化アルミニウム層を有するアルミニウム粒子を含むことができる。
【0050】
無機充填剤の例としては、オニキス;アルミニウム三水和物;酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛のような金属酸化物;窒化アルミニウム及び窒化ホウ素のような窒化物;炭化ケイ素及び炭化タングステンのような炭化物;並びにこれらの組み合わせがある。あるいは、無機充填剤の例としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせがある。溶融性充填剤はBi、Ga、In、Sn、又はこれらの合金を含むことができる。溶融性充填剤は選択的にAg、Au、Cd、Cu、Pb、Sb、Zn、又はこれらの組み合わせをさらに含むことができる。適切な溶融性充填剤の例としては、Ga、In−Bi−Sn合金、Sn−In−Zn合金、Sn−In−Ag合金、Sn−Ag−Bi合金、Sn−Bi−Cu−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Sb合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Zn合金、及びこれらの組み合わせが挙げられる。溶融性充填剤は50℃〜250℃、あるいは150℃〜225℃の範囲の融点を有することができる。溶融性充填剤は共晶合金、非共晶合金又は純金属であってもよい。溶融性充填剤は市販されている。
【0051】
例えば、溶融性充填剤は米国ニューヨーク州ウチカのIndium Corporation of America、米国ロードアイランド州プロビデンスのArconium、及び米国ロードアイランド州クランストンのAIM Solderから入手することができる。アルミニウム充填剤は、例えば、米国イリノイ州ネーパービルのToyal America,Inc.及び米国カリフォルニア州ストックトンのValimet Inc.から市販されている。銀充填剤は米国マサチューセッツ州アトルバロのMetalor Technologies U.S.A.Corp.から市販されている。
【0052】
熱伝導性充填剤は当技術分野において知られ、市販されているが、例えば、米国特許第6,169,142号(4段落7〜33行)を参照されたい。例えば、CB−A20S及びAl−43−Meは昭和電工から市販の異なる粒径の酸化アルミニウム充填剤であり、AA−04、AA−2、及びAA18は住友化学から市販の酸化アルミニウム充填剤である。商標KADOX(登録商標)及びXX(登録商標)を有する酸化亜鉛のように、酸化亜鉛は米国ペンシルバニア州モナカのZinc Corporation of Americaから市販されている。
【0053】
熱伝導性充填剤粒子の形状はとくに限定されないが、円形又は球形粒子は粘度が組成物中の熱伝導性充填剤の高配合によって望ましくないレベルまで増加するのを防止することができる。
【0054】
成分(D)は単一の熱伝導性充填剤又は充填剤の粒子形状、平均粒径、粒径分布、及びタイプのような少なくとも1つの特性が異なる2つ以上の熱伝導性充填剤の組み合わせであってもよい。例えば、大きな平均粒径を有する第1酸化アルミニウム及び小さな平均粒径を有する第2酸化アルミニウムのような無機充填剤の組み合わせを用いることが望ましくあり得る。あるいは、例えば、大きな平均粒径を有する酸化アルミニウムの小さな平均粒径を有する酸化亜鉛との組み合わせを用いることが望ましくあり得る。あるいは、大きな平均粒径を有する第1アルミニウム及び小さな平均粒径を有する第2アルミニウムのような金属充填剤の組み合わせを用いることが望ましくあり得る。あるいは、アルミニウム及び酸化アルミニウム充填剤の組み合わせ;アルミニウム及び酸化亜鉛充填剤の組み合わせ;又はアルミニウム、酸化アルミニウム、及び酸化亜鉛充填剤の組み合わせのような金属及び無機充填剤の組み合わせを用いることが望ましくあり得る。大きな平均粒径を有する第1充填剤及び第1充填剤より小さな平均粒径を有する第2充填剤の使用は充填効率を向上させることができ、粘度を低減することができ、熱移動を向上させことができる。
【0055】
熱伝導性充填剤の平均粒径は成分(D)について選択される熱伝導性充填剤のタイプ、硬化性組成物に添加する正確な量、及び硬化物がTIMとして用いられる場合組成物の硬化物が用いられるデバイスのボンドライン厚さを含む各種要因によって決まるだろう。しかしながら、熱伝導性充填剤は0.1マイクロメーター〜80マイクロメーター、あるいは0.1マイクロメーター〜50マイクロメーター、あるいは0.1マイクロメーター〜10マイクロメーターの範囲の平均粒径を有することができる。
【0056】
組成物中の成分(D)の量は組成物について選択されるシリコーン硬化機構及び成分(D)について選択される熱伝導性充填剤を含む各種要因によって決まる。しかしながら、成分(D)の量は組成物の30体積%〜80体積%、50体積%〜75体積%の範囲とすることができる。理論に縛られることを望むことなしに、充填剤の量が80%より大きい場合、組成物は架橋していくつかの用途について不十分な寸法完全性を有する硬化シリコーンを形成し得、充填剤の量が30%より小さい場合、組成物から調製された硬化シリコーンはTIM用途について不十分な熱伝導性を有し得ると考えられる。
【0057】
・有機可塑剤
組成物は有機可塑剤(成分(E))を含有する。理論に縛られることを望むことなしに、有機可塑剤は組成物を硬化することにより調製された硬化シリコーンの圧縮永久ひずみ特性を向上させることができる。可塑剤は1分子当たり平均少なくとも1個の式(I)の基を有する。
【化1】


ここで、Rは水素原子又は一価有機基を表す。あるいは、Rは分岐又は線状一価炭化水素基を表すことができる。一価有機基は炭素原子4〜15個、あるいは炭素原子9〜12個のアルキル基のような分岐又は線状一価炭化水素基であってもよい。適切な可塑剤はアジペート、カルボキシレート、フタレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0058】
あるいは、可塑剤は1分子当たり平均少なくとも2個の、環状炭化水素中の炭素原子に結合した式(I)の基を有することができる。可塑剤は一般式(II)を有することができる。
【化2】


式(II)中、X基は3個以上の炭素原子、あるいは3〜15個の炭素原子を有する環状炭化水素基を表す。(下付き文字xは1〜12の範囲の値を有することができる。)X基は飽和又は芳香族であってもよい。各R”は単独で水素原子又は分岐若しくは線状一価有機基である。R”の一価有機基はメチル、エチル、又はブチルのようなアルキル基であってもよい。あるいは、R”一価有機基はエステル官能基であってもよい。各Rは単独で炭素原子4〜15個のアルキル基のような分岐又は線状一価炭化水素基である。
【0059】
式(II)の有機可塑剤の例は以下に示す式(III)、(IV)、(V)、又は(VI)を有することができる。
【化3】




式(III)、(IV)、(V)、及び(VI)中、Rは上述のとおりである。式(III)及び(IV)は式(III)中のシクロアルキル基及び式(IV)中のアリール基が非置換である場合を表す。式(V)及び(VI)は式(V)中のシクロアルキル基及び式(VI)中のアリール基を、式(III)のシクロアルキル基中又は式(IV)のアリール基中に示されるメンバー原子に結合した水素原子の1個以上がR’により表される別の一価有機基で置き換えられている有機基で置き換えることができることを示す。各R’はメチル、エチル、又はブチルのようなアルキル基であってもよい。あるいは、R’の一価有機基はエステル官能基であってもよい。
【0060】
適切な可塑剤は当技術分野において知られ、市販されている。可塑剤としては、ビス(2−エチルヘキシル)テレフタレート;ビス(2−エチルヘキシル)−1,4−ベンゼンジカルボキシレート;2−エチルヘキシルメチル−1,4−ベンゼンジカルボキシレート;1,2シクロヘキサンジカルボン酸(分岐及び線状)ジノニルエステル;ビス(2−プロピルヘプチル)フタレート若しくはジ−(2−プロピルヘプチル)フタレート;ジイソノニルアジペート;トリオクチルトリメリテート;トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート);ジエチレングリコールジベンゾエート;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン;ジ(2−エチルヘキシル)フタレート;ビス(2−エチルヘキシル)アジペート;ジメチルフタレート;ジエチルフタレート;ジブチルフタレート;ジ−2−エチルヘキシルアジペート;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−エチルヘキシル)エステル;トリオクチルトリメリテート;トリエチレングリコールビス(2−エチレンヘキサノエート);ビス(2−エチルヘキシル)テレフタレート;ジエチレングリコールジベンゾエート;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン;1,2,3−トリアセトキシプロパン;脂肪酸エステル;及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。好適な可塑剤の例及びその市販供給源としては、以下表1に掲載するものが挙げられる。
【0061】
組成物に添加する可塑剤の量は選択される可塑剤のタイプ及び組成物の他の成分を含む各種要因によって決まる。可塑剤は組成物に可溶性であってもよい。可塑剤は可塑剤が組成物の硬化反応を抑制しないように選択することができる。しかしながら、可塑剤の量は後述するベースポリマー及び架橋剤の組み合わせに対して2重量%〜50重量%、あるいは3重量%〜25重量%の範囲とすることができる。理論に縛られることを望むことなしに、2重量%未満は組成物を硬化することにより調製された硬化シリコーンの圧縮永久ひずみを向上させるのに不十分であり得、50重量%を超えると組成物に不溶性であり得、安定性の損失又は組成物を硬化することにより調製された硬化シリコーンからの可塑剤の流出をもたらすと考えられる。
【0062】
【表1】

【0063】
・任意の成分
組成物は選択的に1つ以上の追加の成分をさらに含むことができる。追加の成分は(F)スペーサ、(G)補強又は増量充填剤、(H)充填剤処理剤、(I)接着促進剤、(J)媒体、(K)界面活性剤、(L)融剤、(M)酸受容体、(N)安定剤(例えば、ヒドロシリル化硬化剤、熱安定剤、又はUV安定剤)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0064】
・(F)スペーサ
成分(F)はスペーサである。スペーサは有機粒子、無機粒子、又はこれらの組み合わせを含むことができる。スペーサは熱伝導性、導電性、又は両方であり得る。スペーサは少なくとも25マイクロメーター〜125マイクロメーターの粒径を有することができる。スペーサはガラス又はポリマー(例えば、ポリスチレン)ビーズのような単分散ビーズを含むことができる。スペーサはアルミナ、窒化アルミニウム、噴霧金属粉末、窒化ホウ素、銅、及び銀のような熱伝導性充填剤を含むことができる。成分(F)の量は粒径分布、硬化性組成物又はそれから調製された硬化物の配置中にかける圧力、及び配置中の温度を含む各種要因によって決まる。しかしながら、組成物は0.05〜2%、あるいは0.1%〜1%の範囲の量の成分(F)を含有することができる。成分(F)を添加し、硬化性組成物の硬化物のボンドライン厚さを制御することができる。
【0065】
・(G)充填剤
成分(G)は補強及び/又は増量充填剤である。組成物中の成分(G)の量は成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)について選択される物質並びに組成物の最終用途を含む各種要因によって決まる。しかしながら、成分(G)の量は組成物の重量に対して0.1重量%〜10重量%の範囲とすることができる。適切な補強及び増量充填剤は当技術分野において知られ、その例としては、沈降及び粉砕シリカ、沈降及び粉砕炭酸カルシウム、石英、タルク、細断されたKEVLAR(登録商標)のような短繊維、又はこれらの組み合わせがある。
【0066】
・(H)充填剤処理剤
成分(D)の熱伝導性充填剤、成分(G)の補強及び/若しくは増量充填剤並びに/又は成分(F)のスペーサは、存在する場合、選択的に成分(H)処理剤で表面処理することができる。処理剤及び処理方法は当技術分野において知られているが、例えば、米国特許第6,169,142号(4段落42行〜5段落2行)を参照されたい。
【0067】
成分(H)の量は成分(D)及び(G)について選択される充填剤のタイプ及び量並びに充填剤がin situ又は組成物の他の成分と組み合わせる前の成分(H)で処理されるかどうかを含む各種要因によって変動することができる。しかしながら、組成物は0.1%〜2%の範囲の量の成分(H)を含むことができる。
【0068】
成分(H)は式:R10Si(OR11(4−m)を有するアルコキシシランを含むことができるが、下付き文字mは1、2、又は3であり、あるいはmは3である。各R10は単独で炭素原子1〜50個、あるいは炭素原子6〜18個の炭化水素基のような一価有機基である。R10の例としては、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシルのようなアルキル基;並びにベンジル、フェニル及びフェニルエチルのような芳香族基である。R10は飽和又は不飽和、分岐又は非分岐、及び非置換であり得る。R10は飽和、非分岐、及び非置換であり得る。
【0069】
各R11は炭素原子1〜4個、あるいは炭素原子1〜2個の非置換、飽和炭化水素基であってもよい。成分(H)のアルコキシシランの例としては、へキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせがある。
【0070】
アルコキシ官能性オリゴシロキサンを処理剤として用いることもできる。アルコキシ官能性オリゴシロキサン及びその調製方法は当技術分野において知られているが、例えば、欧州特許第1101167A2号を参照されたい。例えば、適切なアルコキシ官能性オリゴシロキサンとしては、式(R14O)Si(OSiR1213(4−n)を有するものが挙げられる。この式中、下付き文字nは1、2、又は3であり、あるいはnは3である。各R12は単独で炭素原子1〜10個の飽和及び不飽和一価炭化水素基から選択することができる。各R13は少なくとも11個の炭素原子を有する飽和又は不飽和一価炭化水素基とすることができる。各R14はアルキル基とすることができる。
【0071】
金属充填剤はオクタデシルメルカプタン他のようなアルキルチオール、並びにオレイン酸、ステアリン酸、チタネート、チタネート結合剤、ジルコネート結合剤、及びこれらの組み合わせのような脂肪酸で処理することができる。
【0072】
アルミナ又は不動態化した窒化アルミニウムの処理剤はアルコキシシリル官能性アルキルメチルポリシロキサン(例えば、R1516Si(OR17(4−o−p)の部分加水分解縮合物又は混合物の共加水分解縮合物)、又は加水分解性基がシラザン、アシルオキシ若しくはオキシモを含むことができる類似物質を含むことができる。これらのすべてにおいて、上記式中のR15のようなSiに連結した基は長鎖不飽和一価炭化水素又は一価芳香族官能性炭化水素である。各R16は単独で一価炭化水素基であり、各R17は単独で炭素原子1〜4個の一価炭化水素基である。上記式中、下付き文字oは1、2、又は3であり、下付き文字pは0、1、又は2であるが、ただし、o+pの合計は1、2、又は3である。当業者であれば不必要な実験なしに充填剤の分散を補助する特定の処理を最適化することができるだろう。
【0073】
・(I)接着促進剤
成分(I)は接着促進剤である。適切な接着促進剤は式R18Si(OR19(4−q)のアルコキシシランを含むことができるが、下付き文字qは1、2、又は3であり、あるいはqは3である。各R18は単独で一価有機官能基である。R18はグリシドキシプロピル若しくは(エポキシシクロへキシル)エチルのようなエポキシ官能基、アミノエチルアミノプロピル若しくはアミノプロピルのようなアミノ官能基、メタクリロキシプロピル、又は不飽和有機基とすることができる。各R19は単独で少なくとも1個の炭素原子を有する非置換、飽和炭化水素基である。R19は1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子を有することができる。R19の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、及びイソプロピルがある。
【0074】
適切な接着促進剤の例としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びグリシドキシプロピルトリメトキシシランのアルミニウムキレート又はジルコニウムキレートとの組み合わせが挙げられる。ヒドロシリル化硬化性組成物の接着促進剤の例は米国特許第4,087,585号及び米国特許第5,194,649号に記載されている。硬化性組成物は組成物の重量に対して2%〜5%の接着促進剤を含むことができる。
【0075】
・(J)媒体
成分(J)は溶剤又は希釈剤のような媒体である。成分(J)は、例えば、混合及び送達を補助するため、組成物の調製中に添加することができる。成分(J)のすべて又は一部は選択的に組成物が調製した後に除去することができる。
【0076】
・(K)界面活性剤
成分(K)は界面活性剤である。適切な界面活性剤としては、シリコーンポリエーテル、エチレンオキシドポリマー、プロピレンオキシドポリマー、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、他の非イオン性界面活性剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。組成物は組成物の重量に対して最大0.05%の界面活性剤を含むことができる。
【0077】
・(L)融剤
成分(L)は融剤である。組成物は組成物の重量に対して最大2%の融剤を含むことができる。カルボン酸及びアミンのような化学活性官能基を含有する分子を融剤として用いることができる。こうした融剤はコハク酸、アビエチン酸、オレイン酸、及びアジピン酸のような脂肪酸;安息香酸のような芳香族酸;トリエタノールアミン、アミンの塩酸塩、及びアミンの臭化水素酸塩のような脂肪族アミン及びその誘導体を含むことができる。融剤は当技術分野において知られ、市販されている。
【0078】
・(M)酸受容体
成分(M)は酸受容体である。適切な酸受容体としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。組成物は組成物の重量に対して最大2%の成分(M)を含むことができる。
【0079】
・(N)安定剤
成分(N)は安定剤である。ヒドロシリル化硬化性組成物の安定剤の例としては、メチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルへキシノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オル、1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシトリメチルシラン、メチル(トリス(1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ))シラン、及びこれらの組み合わせのようなアセチレンアルコール;メチルビニルシクロシロキサン、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラへキセニルシクロテトラシロキサン、及びこれらの組み合わせのようなシクロアルケニルシロキサン;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インのようなエンイン化合物;ベンゾトリアゾールのようなトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;テトラメチルエチレンジアミンのようなアミン;フマル酸ジアルキル、フマル酸ジアルケニル、フマル酸ジアルコキシアルキル;マレイン酸ジアリルのようなマレイン酸;並びにこれらの組み合わせがある。あるいは、安定剤はアセチレンアルコールを含むことができる。適切なヒドロシリル化硬化安定剤については、例えば、米国特許第3,445,420号、第3,989,667号、第4,584,361号、及び第5,036,117号により開示されている。
【0080】
組成物に添加する安定剤の量は用いられる特定の安定剤並びに架橋剤の組成及び量によって決まるだろう。しかしながら、ヒドロシリル化硬化安定剤の量はヒドロシリル化硬化性組成物の重量に対して、0.0025%〜0.025%の範囲とすることができる。
【0081】
当業者であれば、上述の組成物の成分を選択する際、本明細書に記載の特定の成分は2つ以上の機能を有することができるため、成分のタイプに重複があり得ることを認識するだろう。例えば、特定のアルコキシシランは充填剤処理剤として及び接着促進剤として有用であり得、脂肪酸エステルのような特定の可塑剤も充填剤処理剤として有用であり得る。当業者であれば、組成物の使用目的及び組成物が一液型又は多液型組成物として調製されるかどうかを含む各種要因に基づき、適当な成分及びその量を区別及び選択することができるだろう。
【0082】
組成物の調製方法
0.2〜7W/mKの範囲の熱伝導性を有する硬化シリコーンを形成するように組成物を処方することができる。熱インピーダンスは硬化シリコーンの厚さ並びに成分(D)について選択される充填剤の量及びタイプを含む各種要因によって決まる。
【0083】
組成物は周囲温度又は高温での混合のようないずれかの便利な手段によりすべての成分を組み合わせるステップを含む方法により調製することができる。組成物を高温で調製する場合、調製中の温度は組成物の硬化温度未満である。
【0084】
成分(H)が存在する場合、組成物は選択的に成分(D)(及び存在する場合成分(G))を成分(H)で表面処理し、その後その生成物を組成物の他の成分と混合することにより調製することができる。
【0085】
あるいは、例えば、成分(N)が存在しない場合又は組成物を使用前に長期間保存する場合、組成物は多液型組成物として調製することができる。多液型組成物では、架橋剤及び触媒は別々の部分に保存され、それらの部分は組成物の使用の直前に組み合わされる。例えば、二液型硬化性シリコーン組成物はベースポリマー、触媒、熱伝導性充填剤及び可塑剤を含む成分、並びに1つ以上の追加の成分を基剤部分において混合のようないずれかの便利な手段により組み合わせることにより調製することができる。硬化剤部分は架橋剤、ベースポリマー、熱伝導性充填剤及び可塑剤を含む成分、並びに1つ以上の追加の成分を混合のようないずれかの便利な手段により組み合わせることにより調製することができる。成分は選択される硬化機構に応じて周囲温度又は高温で組み合わせることができる。二液型硬化性シリコーン組成物を用いる場合、基剤の量の硬化剤に対する重量比は1:1〜10:1の範囲とすることができる。当業者であれば不必要な実験なしに硬化性組成物を調製することができるだろう。
【0086】
使用方法
上述の組成物を用い、TIMを形成することができる。TIMの形成方法は:
1)上述の組成物を熱源と放熱器との間に熱経路に沿って配置するステップ、及び
2)組成物を硬化するのに十分な温度まで組成物を加熱するステップ
を含み、これにより熱界面材料を形成する。ステップ1)において、組成物は熱源(例えば、(光)電子部品)及びその後放熱器に塗布することができ、組成物は放熱器及びその後熱源に塗布することができ、又は組成物は熱源及び放熱器に同時に塗布することができる。
【0087】
あるいは、本方法は
1)上述の組成物を硬化するステップと、その後、
2)ステップ1)の生成物を熱源と放熱器との間に熱経路に沿って配置するステップ
を含むことができる。ステップ2)では、ステップ1)の生成物は熱源(例えば、(光)電子部品)及びその後放熱器に塗布することができ、組成物は放熱器及びその後熱源に塗布することができ、又は組成物は熱源及び放熱器に同時に塗布することができる。本方法は選択的にステップ1)前に組成物を支持体に塗布するステップをさらに含む。本方法の生成物は界面材料である。
【0088】
界面材料は:I)上述の組成物を硬化することにより調製された硬化シリコーンを含むことができるが、硬化シリコーンは平坦な部材、半球の小さな塊、凸状部材、角錐、又は円錐として形成される。組成物は選択的にステップ1)前に支持体の表面に塗布することができる。支持体の例としては、炭素繊維メッシュ、金属箔、多孔性金属箔(メッシュ)、充填若しくは非充填プラスチック膜(例えばポリアミドシート、ポリイミドシート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリエチレンテレフタレートポリエステルシート、ポリスルホンシート、ポリエーテルイミドシート、又はポリフェニレンスルフィドシート)、又は織布若しくは不織布基板(例えばガラス繊維布、ガラス繊維メッシュ、又はアラミド紙)がある。組成物を支持体の2つの側面上に被覆することができる。界面材料はII)支持体の反対の硬化シリコーンの表面を覆う剥離シートをさらに含むことができる。
【0089】
界面材料100の例の断面を図1に示す。界面材料100は反対の表面上に硬化シリコーン102の層を有する支持体101を含む。硬化シリコーン102は上述の組成物を硬化することにより調製される。剥離ライナー103は硬化シリコーン102の層の露出表面を覆う。剥離ライナー103は保存及び輸送中表面を保護し、TIM用途の界面材料100の使用前に除去される。
【0090】
デバイスは、
a)熱源と、
b)請求項13〜17のいずれか1項に記載の熱界面材料と、
c)放熱器と
を備えるが、熱界面材料は熱源の表面からヒートスプレッダの表面まで延在する熱経路に沿って熱源と放熱器と間に配置される。
【0091】
図2は本明細書に記載するデバイス200の例の断面を示す。デバイス200ははんだボールアレイ211及びチップアンダーフィル209により基板(例えば、プリント回路基板)204に取り付けられた電子部品(集積回路(IC)チップとして図示する)103を含む。基板204はパッド210によって貼り付けられたはんだボール205を有する。第1界面材料(TIM1)206はICチップ203と金属カバー207との間に配置する。金属カバー207はヒートスプレッダの機能を果たす。第2界面材料(TIM2)202は金属カバー207とヒートシンク201との間に配置する。熱はデバイスが作動する際矢印208により表される熱経路に沿って移動する。
【0092】
本明細書に記載する方法及びデバイスでは、熱源は発光ダイオード(LED)、半導体、トランジスタ、集積回路、又は個別素子のような(光)電子部品を含むことができる。放熱器はヒートシンク、熱伝導板、熱伝導カバー、送風機、冷却剤循環システム、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【実施例】
【0093】
これらの実施例は当業者に本発明を示すことを意図するものであり、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。これらの実施例では試料を調製するのに以下の原材料を用いた。
成分A1)は300〜600センチポイズ(cP)の範囲の粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンとした。成分B1)はMeがメチル基を表す一般式MeSiO(MeHSiO)(MeSiO)SiMeのトリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチル水素シロキサン)コポリマーとした。成分C1)は1.4重量%の1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体、6.6重量%のテトラメチルジビニルジシロキサン、及び残部300〜600cPの範囲の粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンの混合物とした。成分D1)は米国イリノイ州ロックポートのToyal America,Inc.から商品名ABW−437で販売されるアルミニウム粉末とした。成分D1)は1重量%のn−オクチルトリエトキシシランで表面処理した。成分D2)もToyal America,Inc.から商品名ABY−499で販売されるアルミニウム粉末とした。成分D2)は1重量%のn−オクチルトリエトキシシランで表面処理した。成分D3)はZinc Corporation of Americaより商品名Kadox 911で販売される酸化亜鉛とし、1重量%のn−オクチルトリエトキシシランで表面処理した。成分D4)は昭和電工株式会社からAS−400として市販される酸化アルミニウムとした。成分D4)は1重量%のn−オクチルトリエトキシシランで表面処理した。成分E1)は1,2シクロヘキサンジカルボン酸、ジノニルエステル、分岐及び線状とした。成分E2)はジウンデシルフタレート(DUP)とした。成分F1)は安定剤、すなわちテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとした。
【0094】
(調製例1)
成分A1)を歯科用ミキサー上、10秒間、最高速度で混合しながら200グラムのカップに添加することにより二液型組成物試料を調製した。この成分に成分D1)、D2)、及びD3)の総量の75重量%を添加した。得られた組み合わせを混合間で冷却時間をおきながらそれぞれ5秒間最高速度で2回混合した。この手順を成分D1)、D2)、及びD3)の充填剤の残りの量で繰り返した。カップの側面を手作業でこすり、中身をもう1回5秒間最高速度で混合した。成分F1)をB液に添加した。成分E1)を最後の成分としてA液に添加した。
【0095】
得られた混合物は回転循環式ミキサーで15分間脱気し、室温まで冷却し、試料のA及びB液を形成した。表2の成分を上述のように組み合わせ、二液型組成物を生成した。
【0096】
【表2】

【0097】
同量の試料1のA液及び試料1のB液を混合及び硬化し、TIM試料1を試験直前に形成した。同量の試料2のA液及び試料2のB液を混合及び硬化し、可塑剤を含まない比較TIM試料2を試験直前に形成した。
【0098】
(実施例1及び比較例2)
TIM試料1及びTIM試料2の圧縮性を直径1/2インチの円形プローブを有するテクスチャーアナライザーを用いて評価した。各試料を異なる荷重にさらし、試料の厚さの変化をASTM Standard D575に従って測定した。結果は表3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
当業者であれば、ほとんどの(光)電子デバイスの作動圧力は最大40psiであることを認識するだろう。理論に縛られることを望むことなしに、(光)電子デバイスの40psiを超える圧力での作動はデバイスの耐用年数を低減し得ると考えられる。しかしながら、TIM試料1及び2の処方において、可塑剤を含有するTIM試料1は可塑剤を含有しない比較TIM試料2より一貫して良い圧縮を有した。
【0101】
試料1及び2を圧縮永久ひずみについても試験した。結果は100℃、25%ひずみの荷重下で2日後の永久変形(ひずみ)の割合として表した。試料1について、2日間25%のひずみを維持するには28psiを加えなければならなかった。試料1は0%の圧縮永久ひずみを有していた。試料2について、100℃で2日間25%のひずみを維持するには79psiを加えなければならなかった。試料2は23%の圧縮永久ひずみを有していた。
【0102】
(実施例3及び比較例4)
Sigmablendミキサーに成分A1)を添加することにより二液型組成物を調製した。この成分に成分D1)及びD4)の総量の75重量%を添加した。得られた組み合わせを混合間で冷却時間をおきながら最高速度で2回混合した。この手順を成分D1)及びD4)の充填剤の残りの量で繰り返した。成分E1)をA液に最後の成分として添加した。成分F1)をB液に最後の成分として添加した。容器の側面を手作業でこすり、中身をもう1回5秒間最高速度で混合した。
【0103】
得られた混合物は回転循環式ミキサーで15分間脱気し、室温まで冷却し、試料のA及びB液を形成した。表4の成分を上述のように組み合わせ、二液型組成物を生成した。
【0104】
【表4】

【0105】
A及びB液を1:1の比で混合し、100℃で0.5時間硬化した。可塑剤(成分E1)を省略した以外は上述のように比較試料4を調製した。組成物は分注するのが難しく、比較例4の組成物の硬化物は硬く、脆かった。
【0106】
(実施例5〜7及び比較例8〜10)
充填剤の量が異なる以外は実施例3及び比較例4のように試料を調製した。試料5は90重量%の充填剤及び10重量%のマトリクスを含有していた。試料6は92重量%の充填剤及び8重量%のマトリクスを含有していた。試料7は94.5重量%の充填剤及び5.5重量%のマトリクスを含有していた。比較試料8は90重量%の充填剤及び10重量%のマトリクスを含有していた。比較試料9は92重量%の充填剤及び8重量%のマトリクスを含有していた。比較試料10は94.5重量%の充填剤及び5.5重量%のマトリクスを含有していた。硬度をASTM Standard D2240に従ってShore 00スケール上で測定した。
【0107】
各試料について、200ccカートリッジに1:1比のA液及びB液を充填した。カートリッジをパージし、組成物を9インチの静的ミキサーによってモールド上に分注し、1インチの直径を有する250ミル厚のパックを生成した。パックを硬化し、硬度についてASTM Standard D2240に従って試験した。
【0108】
【表5】

【0109】
実施例5〜7及び比較例8〜10は可塑剤が実施例5〜7のそれぞれにおいて硬度を低減することを示す。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上述の組成物はTIM1又はTIM2用途に用いることができるTIMの形成に有用である。組成物は所定の位置において分注及び硬化することによりデバイスに熱経路に沿って間に配置することができる。あるいは、組成物を硬化し、パッドのような形状安定な界面材料を形成した後、ピックアンドプレース法によりデバイスに配置することができる。組成物中の有機可塑剤は可塑剤を含まない同じ組成物と比較して向上(低減)した圧縮永久ひずみの利点をもたらし、熱経路に沿った基板間の表面接触の向上を可能にし、これにより熱移動を向上させる。
【0111】
上述の組成物は汎用的であり、硬化してシリコーンゲル又はより高度に架橋したシリコーンゴムを形成するように処方することができる。例えば、硬化性組成物中の可塑剤の配合が高く、充填剤の配合が低いと、硬化物は分注可能なゲルであり得る。あるいは、充填剤の配合が低く、可塑剤の配合が高いと、可塑剤の流出をもたらさない。あるいは、組成物の硬化物はゲルよりも架橋されたシリコーンゴムであり得る。
【符号の説明】
【0112】
100 界面材料
101 支持体
102 熱伝導性硬化シリコーン
103 剥離ライナー
200 本発明によるデバイス
201 ヒートシンク
202 第2界面材料(TIM2)
203 電子部品
204 基板
205 はんだボール
206 第1界面材料(TIM1)
207 金属カバー
208 熱経路
209 チップアンダーフィル
210 パッド
211 はんだボールアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子当たり平均少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンベースポリマーと、
選択的に、(B)1分子当たり平均少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する架橋剤と、
(C)ヒドロシリル化反応触媒及び過酸化物硬化触媒から選択される触媒と、
(D)熱伝導性充填剤と、
(E)組成物の硬化を抑制しない、成分(A)に可溶性である有機可塑剤とを含む組成物。
【請求項2】
成分(D)が、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、チタン酸バリウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、炭素繊維、ダイヤモンド、黒鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、金属微粒子、オニキス、炭化ケイ素、炭化タングステン、酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせ、を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(E)が、1分子当たり平均少なくとも1個の下式の基を有する請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【化1】


ここで、Rが水素原子又は一価有機基を表す。
【請求項4】
成分(E)が、下式を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【化2】


ここで、Xは環状炭化水素基を表し、下付き文字xは3〜15の範囲の値を有し、各Rは単独で分岐又は線状一価炭化水素基であり、各R”は単独で分岐若しくは線状炭化水素原子又は一価有機基である。
【請求項5】
成分(E)が、ビス(2−エチルヘキシル)テレフタレート;ビス(2−エチルヘキシル)−1,4−ベンゼンジカルボキシレート;2−エチルヘキシルメチル−1,4−ベンゼンジカルボキシレート;1,2シクロヘキサンジカルボン酸(分岐及び線状)ジノニルエステル;ビス(2−プロピルヘプチル)フタレート若しくはジ−(2−プロピルヘプチル)フタレート;ジイソノニルアジペート;トリオクチルトリメリテート;トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート);ジエチレングリコールジベンゾエート;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン;ジ(2−エチルヘキシル)フタレート;ビス(2−エチルヘキシル)アジペート;ジメチルフタレート;ジエチルフタレート;ジブチルフタレート;ジ−2−エチルヘキシルアジペート;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−エチルヘキシル)エステル;トリオクチルトリメリテート;トリエチレングリコールビス(2−エチレンヘキサノエート);ビス(2−エチルヘキシル)テレフタレート;ジエチレングリコールジベンゾエート;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン;1,2,3−トリアセトキシプロパン;脂肪酸エステル;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(F)スペーサ、(G)補強又は増量充填剤、(H)充填剤処理剤、(I)接着促進剤、(J)媒体、(K)界面活性剤、(L)融剤、(M)酸受容体、(N)安定剤、及びこれらの組み合わせから選択される追加の成分を、さらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を、硬化することにより調製された硬化シリコーン。
【請求項8】
1)請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を熱源と放熱器との間に熱経路に沿って配置するステップと、
2)該組成物を硬化するのに十分な温度まで該組成物を加熱するステップと
を含み、これにより熱界面材料を形成する方法。
【請求項9】
1)請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を硬化するステップと、その後、
2)ステップ1)の生成物を熱源と放熱器との間に熱経路に沿って配置するステップと
を含む方法。
【請求項10】
ステップ1)前に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を支持体に塗布するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記熱源が、(光)電子部品を含む請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記放熱器がヒートシンク、熱伝導板、熱伝導カバー、送風機、又は冷却剤循環システムを含む請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
I)請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を硬化することにより調製された硬化シリコーンを含む界面材料において、該硬化シリコーンは平坦な部材、半球の小さな塊、凸状部材、角錐、又は円錐として形成される界面材料。
【請求項14】
前記組成物が支持体の表面上に被覆される請求項13に記載の界面材料。
【請求項15】
前記支持体が炭素繊維メッシュ、金属箔、多孔性金属箔、充填若しくは非充填プラスチック膜、又は織布若しくは不織布基板を含む請求項14に記載の界面材料。
【請求項16】
前記組成物が前記支持体の2つの側面上に被覆される請求項14に記載の界面材料。
【請求項17】
II)前記支持体の反対の前記硬化シリコーンの表面を覆う剥離シートをさらに含む請求項14に記載の界面材料。
【請求項18】
a)熱源と、
b)請求項13〜17のいずれか1項に記載の熱界面材料と、
c)放熱器とを備え、
前記熱界面材料は、前記熱源の表面から前記放熱器の表面まで延在する熱経路に沿って該熱源と該放熱器と間に配置されるデバイス。
【請求項19】
前記熱源が、(光)電子部品である請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
請求項13〜17のいずれか1項に記載の界面材料の、TIM1、TIM2、又はその両方からなる群から選択される用途における使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520375(P2012−520375A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554032(P2011−554032)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/066204
【国際公開番号】WO2010/104534
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】