説明

熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート、発泡体およびその製造方法

【課題】低温の加熱で発泡することのできる、熱発泡性樹脂組成物および熱発泡性樹脂シートと、反発力に優れる発泡体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ベース樹脂と発泡性樹脂粒子と架橋剤とを含有し、発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂に熱膨張性物質が含有されている熱発泡性樹脂組成物から形成される熱発泡性樹脂シート1を、加熱により発泡させて、発泡体3を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート、発泡体およびその製造方法、詳しくは、各種産業分野で用いられる熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート、発泡体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱発泡性樹脂組成物は、樹脂および発泡剤を含有しており、加熱によりガスを発生させることにより、発泡可能であり、かかる発泡を利用して、各種産業分野に広く用いられている。
【0003】
例えば、常温で固体である成膜性樹脂および熱膨張カプセルを含有する加熱膨張性接着剤組成物を、複数の被着体の間に配置し、その後、それらを加熱して、成膜性樹脂を発泡および硬化させることによって、被着体同士を接着することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、ポリオレフィンおよび熱膨張性微小球を含有する補強剤組成物を、車体の鋼板に配置し、その後、それらを加熱して、ポリオレフィンを発泡および硬化させることによって、鋼板を補強することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、上記した特許文献1および2の熱発泡性樹脂組成物において、発泡剤として用いられる熱膨張性カプセルおよび熱膨張性微小球は、ガスバリアー性を有する熱可塑性樹脂からなる殻(シェル)と、その殻に内包される低沸点物質(コア、熱膨張剤)とを含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−106963号公報
【特許文献2】特開2004−244508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献1および特許文献2の熱発泡性樹脂組成物においては、成膜性樹脂およびポリオレフィンを発泡させるには、加熱によって、低沸点物質(コア)を熱膨張させるとともに、殻(シェル)を溶融または軟化させる必要がある。殻を十分に溶融または軟化させるためには、熱発泡性樹脂組成物を高温で加熱する必要がある。
【0008】
そのため、そのような熱発泡性樹脂組成物が配置される被着体または鋼板などの部材には、十分な耐熱性が必要とされる一方、かかる部材における耐熱性が不十分であれば、そのような部材(例えば、プラスチックなど)の保護の観点から、低温で加熱する必要があり、そのため、熱発泡性樹脂組成物の十分な発泡、さらには、それによる十分な接着または補強を図ることができないという不具合がある。
【0009】
さらに、発泡体の圧縮応力(反発力)を向上させる要求もある。
【0010】
本発明の目的は、低温の加熱で発泡および架橋することのできる、熱発泡性樹脂組成物および熱発泡性樹脂シートと、反発力に優れる発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、ベース樹脂と発泡性樹脂粒子と架橋剤とを含有し、前記発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂に熱膨張性物質が含有されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、120℃以下の加熱で発泡および架橋することが好適である。
【0013】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記ベース樹脂が、ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有しており、前記架橋剤によって架橋されることが好適である。
【0014】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、さらに、架橋促進剤を含有することが好適である。
【0015】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、前記熱発泡性樹脂組成物を、100℃で、30分間、加熱することにより発泡した発泡体の密度が、0.1〜1.0g/cmであることが好適である。
【0016】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記熱膨張性物質の沸点が、−160〜120℃であることが好適である。
【0017】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記発泡性樹脂粒子は、前記樹脂のモノマーを、前記熱膨張性物質の存在下で重合させることにより得られることが好適である。
【0018】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記樹脂が、ポリスチレンおよび/またはポリスチレンコポリマーであることが好適である。
【0019】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物では、前記発泡性樹脂粒子の含有割合が、前記ベース樹脂100質量部に対して、0.1〜350質量部であることが好適である。
【0020】
また、本発明の熱発泡性樹脂シートは、上記した熱発泡性樹脂組成物がシート状に形成されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の発泡体は、上記した熱発泡性樹脂組成物を加熱により発泡させることにより得られることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の発泡体は、上記した熱発泡性樹脂シートを加熱により発泡させることにより得られることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した熱発泡性樹脂組成物を、加熱により発泡させることを特徴としている。
【0024】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記した熱発泡性樹脂シートを、加熱により発泡させることを特徴している。
【0025】
また、発泡体の製造方法は、120℃以下の温度で加熱することを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の熱発泡性樹脂組成物および熱発泡性樹脂シートによれば、発泡性樹脂粒子は、熱膨張性物質が中実の樹脂に含有されているので、低温の加熱でも、熱膨張性物質を膨張させることができる。
【0027】
さらに、熱発泡性樹脂組成物は、架橋剤を含有しているので、架橋剤によって、ベース樹脂を架橋することができる。
【0028】
そのため、本発明の発泡体の製造方法によれば、低温の加熱でも、ベース樹脂を確実に発泡させることができとともに、架橋剤によってベース樹脂を架橋することができる。
【0029】
すなわち、ベース樹脂を、架橋剤によって架橋し、発泡性樹脂粒子によって発泡させた発泡体は、同じベース樹脂を未架橋で発泡させた発泡体に比べて、反発力(圧縮応力)を向上させることができる。
【0030】
その結果、本発明の熱発泡性樹脂組成物から形成される熱発泡性樹脂シートを、低温の加熱、さらには、優れた反発力が要求される各種産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の発泡体の製造方法の一実施形態を説明するための断面図であり、(a)は、熱発泡性樹脂シートを中空部材の内部空間に配置する工程、(b)は、熱発泡性樹脂シートを加熱による発泡させる工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の熱発泡性樹脂組成物は、ベース樹脂と発泡性樹脂粒子と架橋剤とを含有している。
【0033】
本発明の熱発泡性樹脂組成物において、ベース樹脂は、例えば、ゴム、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の成分(マトリクス成分)を含有している。
【0034】
ゴムとしては、特に限定されず、例えば、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ポリイソブチレンゴム(PIB)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム、ポリアミドゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルゴム、ポリスルフィドゴムなどの合成ゴム、例えば、天然ゴム(NR)などが挙げられる。
【0035】
ゴムは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0036】
ゴムのうち、好ましくは、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)が挙げられる。
【0037】
スチレン系ゴムは、原料モノマーとして、スチレンを含む合成ゴムであって、特に制限されず、例えば、スチレン・ブタジエンランダム共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエンランダム共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体などのスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、例えば、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体などのスチレン・イソプレンゴムなどが挙げられる。
【0038】
好ましくは、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。
【0039】
スチレン系ゴムのスチレン含量は、例えば、10〜65質量%、好ましくは、20〜35質量%である。
【0040】
ニトリル系ゴムは、原料モノマーとして、アクリルニトリルなどのニトリル基含有モノマーを含む合成ゴムであって、例えば、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合により得られる合成ゴムであり、具体的には、アクリロニトリル・ブタジエンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンブロック共重合体などのアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。
【0041】
ニトリル系ゴムのニトリル(アクリロニトリル)含量は、例えば、10〜50質量%、好ましくは、20〜50質量%である。
【0042】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムは、エチレン、プロピレンおよびジエン類の共重合により得られる合成ゴムであり、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)に、さらにジエン類を共重合させることにより得られる。
【0043】
ジエン類としては、例えば、5−エチリデン−5−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0044】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムのエチレン含量は、例えば、40〜90質量%、好ましくは、45〜70質量%であり、ジエン含量は、例えば、1〜20質量%、好ましくは、3〜10質量%である。
【0045】
ブタジエンゴムは、ブタジエンの重合体を加硫することにより得られる合成ゴムである。
【0046】
天然ゴムとしては、例えば、生ゴム、例えば、生ゴムに素練り促進剤(例えば、ペンタクロロチオフェノールなど)を適量添加して、それらを素練りした素練りゴムが挙げられる。
【0047】
これらゴムの100℃におけるムーニー粘度は、例えば、0.5〜150ML1+4、好ましくは、1〜100ML1+4である。
【0048】
また、ゴムの重量平均分子量(GPC:標準ポリスチレン換算値)は、例えば、1,000〜1000000、好ましくは、10,000〜100,000である。
【0049】
また、ゴムの密度は、例えば、0.8〜2.1g/cm、好ましくは、0.85〜2.0g/cmである。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、熱可塑性エラストマーを含有し、例えば、スチレン系樹脂、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン・ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレートなどが挙げられる。
【0051】
熱可塑性樹脂は、単独使用または併用することができる。
【0052】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0053】
熱硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。また、熱硬化性樹脂の密度は、例えば、1.0〜1.5g/cm、好ましくは、1.1〜1.4g/cmである。
【0054】
ベース樹脂における各成分は、単独使用または併用することができ、好ましくは、ゴムが単独使用される。
【0055】
本発明の熱発泡性樹脂組成物において、発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂に、熱膨張性物質が含有(含浸)されている。
【0056】
樹脂は、熱膨張性物質を均一に含有でき、さらには、加熱によって硬化しにくい樹脂が挙げられ、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0057】
熱可塑性樹脂は、ベース樹脂で例示した熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられ、好ましくは、スチレン系樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0058】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系モノマーを含有するモノマーを重合させることにより得られるスチレン系重合体(スチレン系ホモポリマー)である。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、および、α−メチルスチレン、環ハロゲン化スチレン、環アルキル化スチレン、2−ビニルトルエン、3−ビニルトルエン、4−ビニルトルエンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらスチレン系モノマーは、単独使用または2種以上併用される。スチレン系モノマーとして、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0059】
スチレン系重合体として、好ましくは、ポリスチレン(ポリスチレンホモポリマー)が挙げられる。
【0060】
また、スチレン系樹脂としては、例えば、上記したスチレン系モノマーと、スチレン系モノマーと共重合可能な共重合性モノマーとのスチレン系共重合体(ポリスチレンコポリマー)が挙げられる。共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸)と、炭素原子1〜8個を有するアルコールとのエステル(つまり、(メタ)アクリレート)、ジメチルフマレート、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニル、エチレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。これら共重合性モノマーは、単独使用または2種以上併用される。共重合性モノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエンが挙げられる。
【0061】
スチレン系共重合体として、好ましくは、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体(つまり、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体(MS)、および/または、アクリル酸メチル・スチレン共重合体)、アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)などが挙げられる。さらに好ましくは、MS、ASが挙げられる。
【0062】
MSは、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの、ブロックまたはランダム共重合体であり、(メタ)アクリル酸メチル含量が、例えば、10〜60質量%である。
【0063】
ASは、アクリロニトリルとスチレンとの、ブロックまたはランダム共重合体であり、アクリロニトリル含量が、例えば、10〜60質量%である。
【0064】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル(つまり、ポリアクリル酸メチルおよび/またはポリメタクリル酸メチル)、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピルなどが挙げられる。
【0065】
樹脂は、中実(つまり、中空ではない)形状をなし、その密度は、例えば、0.9〜2.0g/cm、好ましくは、1.0〜1.5g/cmである。
【0066】
また、樹脂のガラス転移温度は、例えば、50〜110℃、好ましくは、80〜90℃である。
【0067】
熱膨張性物質は、加熱により膨張する物質であって、具体的には、後述する特定の温度で膨張する、つまり、気化(蒸発あるいは沸騰)する物質であって、例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、不燃性ガスなどが挙げられる。
【0068】
炭化水素としては、飽和炭化水素、不飽和炭化水素が挙げられる。好ましく、飽和炭化水素が挙げられる。
【0069】
飽和炭化水素としては、例えば、直鎖状アルカン、分枝状アルカン、シクロアルカンなどが挙げられる。
【0070】
直鎖状アルカンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数1〜7の直鎖状アルカン(脂肪族炭化水素)が挙げられる。
【0071】
分枝状アルカンとしては、例えば、2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2,4−ジメチルペンタンなどの炭素数4〜7の分岐状アルカンが挙げられる。
【0072】
シクロアルカンとしては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの炭素数3〜7のシクロアルカンが挙げられる。
【0073】
飽和炭化水素として、好ましくは、直鎖状アルカンが挙げられる。
【0074】
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン(CCl)などのクロロ炭化水素、例えば、ジフルオロメタン(CF)などのフルオロ炭化水素、例えば、フロン22(商標、CHClF)、フロン12(商標、CCl)、フロン113(商標、CClFCClF)などクロロフルオロ炭化水素が挙げられる。
【0075】
不燃性ガスとしては、例えば、炭酸ガスなどが挙げられる。
【0076】
これら熱膨張性物質のうち、好ましくは、炭化水素が挙げられる。
【0077】
熱膨張性物質の沸点は、例えば、−160〜120℃、好ましくは、−50〜100℃、さらに好ましくは、−5〜70℃である。
【0078】
熱膨張性物質の沸点が上記した範囲を超える場合には、熱発泡性樹脂組成物の低温における発泡が困難となる場合がある。熱膨張性物質の沸点が上記した範囲に満たない場合には、熱膨張性物質を樹脂に均一に含有させることが困難となる場合がある。
【0079】
発泡性樹脂粒子は、上記した樹脂のモノマーを、溶媒および熱膨張性物質の存在下で、重合させることにより得ることができる。あるいは、上記した樹脂のモノマーを、溶媒の不存在下で、かつ、熱膨張性物質の存在下で、重合させることにより得ることができる。
【0080】
好ましくは、樹脂のモノマーを、溶媒および熱膨張性物質の存在下で、重合させる。
【0081】
溶媒としては、例えば、水などの水性溶媒、例えば、トルエンなどの有機溶媒などが挙げられる。好ましくは、水性溶媒が挙げられる。
【0082】
具体的には、発泡性樹脂粒子は、モノマーを、分散剤が配合され、かつ、熱膨張性物質が吹き込まれた(流入された)水性溶媒中に、水分散させながら、懸濁重合させることにより得る。上記した重合方法によれば、樹脂に熱膨張性物質を均一に含有させることができる。
【0083】
このようにして得られる発泡性樹脂粒子は、中実の球状(ビーズ状)または中実のペレット状、好ましくは、中実のビーズ状に形成されている。
【0084】
発泡性樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、0.10〜4.0mm、好ましくは、0.15〜2.0mmである。
【0085】
発泡性樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲を超えると、意匠性および発泡性の均一性が低下する場合がある。発泡性樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲に満たないと、熱膨張性物質が容易に揮発してしまい、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
【0086】
そして、この発泡性樹脂粒子では、中実の樹脂に熱膨張性物質が含有されている。
【0087】
すなわち、発泡性樹脂粒子は、中実(中空でない)で粒状の樹脂の表面から内部にわたって、熱膨張性物質が浸透されている。
【0088】
熱膨張性物質の含有割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、1〜10質量部、好ましくは、2〜8質量部である。
【0089】
これにより、発泡性樹脂粒子では、低温、具体的には、例えば、120℃以下(具体的には、70〜120℃)、また、110℃以下(具体的には、70〜110℃)、さらには、100℃以下(具体的には、70〜120℃)の温度(熱膨張開始温度)で熱膨張が開始する。
【0090】
また、熱膨張後の発泡性樹脂粒子の密度は、例えば、0.005〜0.5g/cm、好ましくは、0.01〜0.1g/cmである。
【0091】
発泡性樹脂粒子の100℃における熱膨張倍率は、熱膨張性物質の含有割合にもよるが、例えば、2〜200倍、好ましくは、10〜100倍である。
【0092】
このような発泡性樹脂としては、市販品(発泡性ビーズ)を用いることができ、例えば、「スチロダイヤ」(発泡性ポリスチレンビーズ)、「ヒートポール」(発泡性アクリロニトリル・スチレン共重合体ビーズ)、「クリアポール」(発泡性メチルメタクリレート・スチレン共重合体ビーズ)(以上、JSP社製)、「エスレンビーズ」(発泡性ポリスチレンビーズ)、「PNビーズ」(特殊発泡ポリスチレンビーズ)(以上、積水化成品工業社製)、「カネパール」(発泡性ポリスチレンビーズまたは発泡性ポリメチルメタクリレートビーズ、カネカ社製)などが挙げられる。
【0093】
熱発泡性樹脂組成物において、発泡性樹脂粒子の配合割合は、ベース樹脂100質量部に対して、例えば、0.1〜350質量部、好ましくは、5〜320質量部である。
【0094】
発泡性樹脂粒子の配合割合が上記した範囲に満たないと、発泡倍率が過度に低くなり、ベース樹脂を十分に発泡させることができない場合がある。一方、発泡性樹脂粒子の配合割合が上記した範囲を超えると、発泡性樹脂粒子がベース樹脂から脱落する場合がある。
【0095】
架橋剤は、例えば、ベース樹脂を架橋する。好ましくは、後述する低温の温度(120℃以下の温度)で架橋反応する架橋剤が挙げられる。
【0096】
そのような架橋剤としては、例えば、硫黄、硫黄化合物(例えば、4、4’−ジチオジモルホリンなど)、セレン、酸化マグネシウム、一酸化鉛、有機過酸化物(例えば、クメンペルオキシド、ジメチルジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなど)、ポリアミン、オキシム(例えば、p−キノンジオキシム、p、p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなど)、ニトロソ化合物(例えば、p−ジニトロソベンゼンなど)、キノイド(例えば、ポリ−p−ジニトロソベンゼンなど)、樹脂(例えば、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物など)、アンモニウム塩(例えば、安息香酸アンモニウムなど)などが挙げられる。
【0097】
架橋剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0098】
架橋剤としては、低温架橋の観点から、好ましくは、硫黄が挙げられる。
【0099】
硫黄としては、例えば、粉末硫黄(微粉硫黄)、不溶性硫黄、表面処理硫黄、沈降硫黄コロイド硫黄などが挙げられる。好ましくは、粉末硫黄が挙げられる。
【0100】
粉末硫黄の平均粒子径は、例えば、45〜150μm、好ましくは、45〜100μmである。
【0101】
なお、架橋剤は、熱発泡性樹脂組成物が分割仕込み法で調製される場合には、適量のベース樹脂をバインダー成分(例えば、ゴムなどのベース樹脂)とともに、マスターバッチとして調製されることもできる。
【0102】
架橋剤の配合割合は、その種類によって架橋効率が異なるため、適宜選択されるが、例えば、ベース樹脂100質量部に対して、例えば、0.5〜60質量部、好ましくは、1〜40質量部、さらに好ましくは、1〜15質量部である。
【0103】
また、熱発泡性樹脂組成物には、架橋促進剤をさらに含有させることもできる。
【0104】
架橋促進剤は、アミン化合物を含み、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩(例えば、ナトリウム塩、亜鉛塩など)、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール化合物、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、亜鉛塩、銅、第二鉄塩など)、ジエチルジチオカルバミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、亜鉛塩、テルル塩など)、ジプロピルジチオカルバミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、亜鉛塩、テルル塩など)、ジブチルジチオカルバミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、亜鉛塩など)、ジベンジルジチオカルバミン酸塩(例えば、亜鉛塩など)、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸塩(亜鉛塩、ピペリジン塩など)、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸塩(例えば、亜鉛塩)などのジチオカルバミン酸化合物、例えば、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジンなどのグアニジン化合物、例えば、ベンゾチアジル−2−ジエチルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド化合物、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム化合物、例えば、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸化合物、例えば、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒドアンモニア化合物、例えば、n−ブチルアルデヒドアニリン、ブチルアルデヒドモノブチルアミンなどのアルデヒドアミン化合物、例えば、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレアなどのチオウレア化合物などが挙げられる。
【0105】
このような架橋促進剤は、単独使用または併用することができる。
【0106】
架橋促進剤としては、架橋速度などの観点から、好ましくは、ジチオカルバミン酸化合物、アルデヒドアミン化合物が挙げられる。
【0107】
架橋促進剤の配合割合は、耐ブルーム性、架橋速度などの観点から、例えば、ベース樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部、好ましくは、1〜5質量部である。
【0108】
また、熱発泡性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、粘着付与剤、充填剤、さらには、硬化剤、その他の発泡剤(発泡性樹脂粒子を除く発泡剤)、発泡促進剤、揺変剤、滑剤、顔料、スコーチ防止剤、安定剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、防カビ剤、難燃剤などの公知の添加剤を、適宜の割合で添加することもができる。
【0109】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂(テルペンフェノール共重合体、水素添加テルペン樹脂などを含む。)、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、石油系樹脂(例えば、C5脂肪族/C9芳香族共重合系石油樹脂、芳香族系石油樹脂などの炭化水素系石油樹脂など)、フェノール系樹脂などが挙げられる。
【0110】
これら粘着付与剤は、単独使用または併用することができ、好ましくは、石油系樹脂が挙げられる。
【0111】
粘着付与剤の軟化点は、例えば、50〜150℃、好ましくは、50〜130℃である。
【0112】
粘着付与剤の配合割合は、ベース樹脂100質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは、3〜15質量部である。
【0113】
充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、タルク、酸化チタン、シリカなどの酸化物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、例えば、炭酸カルシウム、例えば、硫酸バリウム、例えば、カーボンブラックなどが挙げられる。これら充填剤は、単独使用または併用することができ、好ましくは、酸化物、さらに好ましくは、酸化亜鉛(亜鉛華)が挙げられる。
【0114】
充填剤の平均粒子径は、例えば、0.01〜11μm、好ましくは、0.2〜1μmである。
【0115】
充填剤の配合割合は、ベース樹脂100質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは、1〜10質量部である。
【0116】
そして、熱発泡性樹脂組成物は、例えば、発泡性樹脂粒子と、ベース樹脂と、架橋剤と、必要により配合される架橋促進剤および添加剤とを、同時に配合することにより、調製する(一括仕込み法)。
【0117】
具体的には、上記した各成分を、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機などなどの混練機によって混練することにより、混練物として熱発泡性樹脂組成物を調製する。
【0118】
混練機による混練では、例えば、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)以上70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、ベース樹脂と発泡性樹脂粒子と架橋剤とを加熱する。
【0119】
あるいは、熱発泡性樹脂組成物は、次の分割仕込み法によって調製することもできる。
【0120】
分割仕込み法では、まず、ベース樹脂と、必要により添加される添加剤の一部(例えば、粘着付与剤)とを配合して、それらを混練機で混練することにより、第1の混練物を調製する。
【0121】
次いで、第1の混練物と、架橋剤(好ましくは、架橋剤のマスターバッチ)と、必要により添加される架橋促進剤および添加剤の残部(例えば、充填剤)とを配合して、それらを混練機で混練することにより、第2の混練物を調製する。
【0122】
なお、第2の混練物の調製において、架橋剤によって部分的に架橋反応が進行するため、調製された第2の混練物は、90℃で15分間維持した場合のトルクT15分が、90℃で30分間維持した場合のトルクT30分に比べて、例えば、小さくなる。詳しくは、それらの比(T15分/T30分)が、例えば、0.6以上1未満、好ましくは、0.6〜0.85であり、具体的には、T15分が、例えば、1.5〜12dN・m、好ましくは、2〜12dN・mであり、T30分が、例えば、2.5〜30dN・m、好ましくは、3〜15dN・mである。
【0123】
トルクが上記した範囲内あれば、次の第3の混練物の調製において、熱発泡性樹脂粒子を第2の混練物に均一に練り込み、熱発泡性樹脂粒子を第2の混練物に均一に分散させることができる。
【0124】
なお、トルクの測定方法は、実施例の評価で詳細に説明する。
【0125】
その後、第2の混練物と、発泡性樹脂粒子とを配合して、それらを混練することにより、第3の混練物を調製し、調製した第3の混練物を熱発泡性樹脂組成物として供する。
【0126】
第1〜第3の混練物の調製時の温度は、適宜選択され、具体的には、第1の混練物の調製時の温度が、例えば、20〜150℃、好ましくは、20〜120℃である。
【0127】
また、第2の混練物の調製時の温度は、架橋剤および架橋促進剤の反応を抑制する温度であり、具体的には、例えば、20〜80℃、好ましくは、20〜55℃である。第2の混練物の調製時の温度が上記範囲を超えると、架橋反応が過度に進行し、第3の混練物を調製することができない場合がある。一方、第2の混練物の調製時の温度が上記範囲に満たないと、第2の混練物を調製することができない場合がある。
【0128】
さらに、第3の混練物の調製時の温度は、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)以上70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度である。第3の混練物の調製時の温度が上記範囲を超えると、熱発泡性樹脂シートを形成する前に発泡してしまう場合がある。
【0129】
なお、分割仕込み法における各成分の配合割合は、適宜設定され、とりわけ、第2の混練物に配合される架橋剤の配合割合は、第1の混練物100質量部に対して、例えば、0.5〜100質量部、好ましくは、1〜60質量部であり、架橋促進剤の配合割合は、第1の混練物100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、好ましくは、1〜30質量部であり、添加剤の残部(充填剤)の配合割合は、例えば、1〜300質量部、好ましくは、5〜100質量部である。
【0130】
また、第3の混練物に配合される発泡性樹脂粒子の配合割合は、第2の混練物100質量部に対して、例えば、1〜300質量部、好ましくは、5〜150質量部である。
【0131】
その後、調製した熱発泡性樹脂組成物を、例えば、カレンダー成形、押出成形、射出成形あるいはプレス成形などの成形方法によって、シート状などの所定形状に形成する。
【0132】
熱発泡性樹脂組成物の成形では、発泡性樹脂粒子の熱膨張開始温度未満、具体的には、常温(20℃)以上70℃未満の温度、好ましくは、20〜55℃の温度で、混練物を加熱する。
【0133】
また、シート状に形成する場合には、そのシートの厚みは、例えば、0.1〜10mmである。
【0134】
これによって、熱発泡性樹脂組成物をシートとして得ることができる。つまり、熱発泡性樹脂シートを得ることができる。
【0135】
そして、本発明の熱発泡性樹脂組成物によれば、発泡性樹脂粒子が、樹脂に熱膨張性物質が含有されてなるので、低温の加熱でも、熱膨張性物質を樹脂において均一に膨張させることができる。
【0136】
そのため、低温の加熱でも、ベース樹脂を確実に発泡させることができる。
【0137】
すなわち、この熱発泡性樹脂組成物は、例えば、120℃以下の温度(具体的には、70〜120℃)で発泡する。さらには、熱発泡性樹脂組成物は、110℃以下の温度(具体的には、70〜110℃)で発泡し、さらにまた、100℃以下の温度(具体的には、70〜100℃)でも発泡する。
【0138】
そして、熱発泡性樹脂組成物は、上記した所望の温度(低温)に加熱して、発泡させることができる。
【0139】
また、上記した発泡と同時に、熱発泡性樹脂組成物は、架橋剤を含有しているので、架橋剤によって、ベース樹脂が架橋される。それによって、架橋された発泡体を得ることができる。そのため、発泡体の反発力を向上させることができる。
【0140】
すなわち、ベース樹脂を、架橋剤によって架橋し、発泡性樹脂粒子によって発泡させた発泡体は、同じベース樹脂を、未架橋で、発泡性樹脂粒子によって発泡させた発泡体に比べて、反発力(圧縮応力)を向上させることができ、具体的には、強度比、すなわち、架橋された発泡体の30%圧縮応力CSの、未架橋の発泡体の30%圧縮応力CSに対する比(架橋発泡体の30%圧縮応力CS/未架橋発泡体の30%圧縮応力CS)が、例えば、1.1〜6である。
【0141】
その結果、本発明の熱発泡性樹脂組成物を、熱発泡性樹脂組成物が配置される部材(例えば、熱可塑性樹脂(プラスチック)などからなる樹脂成形品など)が損傷または劣化するおそれのない、低温の加熱により部材の空間または部材間の空間を埋める(充填する)ことができ、優れた反発力が要求される各種産業分野に用いることができる。
【0142】
例えば、上記した熱発泡性樹脂組成物が発泡した発泡体は、各種の部材の間または中空部材の内部空間に充填する各種産業分野の産業製品の充填材として用いることができる。
【0143】
図1は、本発明の発泡体の製造方法の一実施形態を説明するための断面図である。
【0144】
次に、中空部材の内部空間に発泡体を充填する方法について、図1を参照して説明する。
【0145】
図1において、中空部材2の内部空間12に発泡体3を充填するには、例えば、中空部材2の内部空間12に、熱発泡性樹脂組成物からなる熱発泡性樹脂シート1を設置する。なお、熱発泡性樹脂シート1は、中空部材2の内面に接触するように設置される。
【0146】
その後、設置された熱発泡性樹脂シート1を、上記した中空部材2とともに加熱し、熱発泡性樹脂シート1を発泡させることにより、発泡体3を形成する。これにより、形成された発泡体3によって、中空部材2の内部空間12を充填する。
【0147】
熱発泡性樹脂シート1の加熱方法としては、特に限定されず、例えば、熱発泡性樹脂シート1が設置された中空部材2を乾燥機(例えば、熱風乾燥機などのオーブン)の熱風雰囲気(空気)下に放置(保存)する方法、例えば、上記した中空部材2を、加熱された液体(熱媒体)に浸漬する方法、例えば、上記した中空部材2に遠赤外線を照射する方法、例えば、化学反応の反応熱を利用する方法などが挙げられる。
【0148】
なお、上記した中空部材2の内部空間12に発泡体3を充填する方法と同様にして、上記した各種の部材の間に発泡体3を充填することができる。
【0149】
そして、上記した充填材は、上記した部材または中空部材に対する、補強、制振(防振)、防音、防塵、断熱、緩衝、水密および気密、または、接着など、種々の効果を付与することができる。そのため、各種の部材の間または中空部材の内部空間に充填する、例えば、補強材、制振材(防振材)、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材、または、接着材など、各種の産業製品の充填材として、好適に用いることができる。
【0150】
とりわけ、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、例えば、自動車、電気製品、住宅製品などのシールに用いられる。その場合には、熱発泡性樹脂組成物から形成される熱発泡性樹脂シートを、自動車、電気製品または住宅製品の隙間に取り付けた後、発泡させる。これにより、発泡体により、かかる隙間を充填する。つまり、熱発泡性樹脂シートは、好ましくは、自動車外装シール材、電気製品シール材、住宅用シール材などとして、自動車、電気製品、住宅製品などの各種部材の隙間をシールするためのシール材として用いられる。そして、発泡体を、自動車、電気製品または住宅製品の防振材、防音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材などとして、防振、防音、防塵、断熱、緩衝、水密および気密することができる。
【0151】
また、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、例えば、自動車の中空部材、具体的には、ピラーの制振、断熱、防音、補強に用いられる。その場合には、熱発泡性樹脂組成物から形成されるシート(熱発泡性樹脂シート)を、ピラーの内部空間に取り付けた後、加熱により発泡させる。そして、発泡体により、ピラーの内部空間を充填することにより、エンジンの振動および/または騒音、さらには、風きり音などが車室内に伝達されることを防止しながら、ピラーの補強を図ることができる。
【0152】
さらに、本発明の熱発泡性樹脂組成物は、例えば、自動車の構造部材、具体的には、車体鋼板、バンパ、インストルメントパネルなどの補強に用いられる。その場合には、まず、熱発泡性樹脂組成物から形成されるシート(熱発泡性樹脂シート)に、ガラスクロスなどから形成される拘束層を積層させることにより鋼板補強シートを作製する。次いで、作製した鋼板補強シートの熱発泡性樹脂シートを、上記した自動車の構造部材に貼着し、その後、加熱により発泡させる。そして、発泡体を備える鋼板補強シートにより、自動車の構造部材を補強することができる。
【0153】
一方、特許文献1の熱膨張性カプセルを混練して、混練物として熱発泡性樹脂組成物を調製する場合に、熱膨張性カプセルには、その混練時に、剪断力(シェア)がかかるので、シェルが破壊され、コアが流出し易くなる。その結果、混練物を加熱しても、樹脂を発泡させることが困難となる場合がある。
【0154】
しかしながら、本発明の発泡性樹脂粒子は、特許文献1のようなコアシェル構造でなく、熱膨張性物質が中実の樹脂に含有される構造であるので、かかる発泡性樹脂粒子に、混練時における剪断力(シェア)がかかっても、熱膨張性物質が流出することを防止することができる。
【0155】
そのため、混練物を加熱すれば、ベース樹脂を確実に発泡させることができる。
【0156】
さらに、上記した発泡と同時に、ベース樹脂を架橋することもできる。
【0157】
このようにして得られる発泡体(発泡直後の発泡体)は、その密度Dが、例えば、0.1〜1.0g/cm、好ましくは、0.1〜0.5g/cmである。なお、発泡体の密度は、JIS Z8807に準拠して測定される。
【0158】
発泡体の密度が上記した範囲外であれば、発泡体の充填性が低下する場合がある。
【0159】
また、発泡倍率ER(後述するER15分およびER30分を含む。)(つまり、熱発泡性樹脂組成物の発泡時の体積発泡倍率。発泡直後の発泡体の発泡倍率)が、例えば、2〜30倍、好ましくは、2〜20倍、さらに好ましくは、5〜16倍である。
【0160】
発泡倍率は、[熱発泡性樹脂組成物(発泡前の熱発泡性樹脂組成物)の密度]/[発泡体(発泡後の熱発泡性樹脂組成物)密度]として算出される。
【0161】
なお、上記した発泡体の密度は、加熱に伴い、次第に減少する。換言すれば、発泡体の発泡倍率は、発泡後の時間経過に伴って、次第に増大する。
【0162】
具体的には、発泡開始から15分経過後の発泡体の密度D15分が、例えば、0.1〜1/cm、好ましくは、0.1〜0.5g/cmであり、発泡開始から30分経過後の発泡体の密度D30分が、例えば、0.1〜1.0g/cm、好ましくは、0.1〜0.5g/cmである。
【0163】
さらに、発泡体の30%圧縮応力CSは、架橋条件および発泡条件によって変動するが、100℃で、15分間、加熱することにより発泡する場合の30%圧縮応力CS15分は、100℃で、30分間、加熱することにより発泡する場合の30%圧縮応力CS30分に比べて、好ましくは、大きく、その比(CS15分/CS30分)が、例えば、☆0.95〜5☆、好ましくは、1を超過し、3.5以下である。
【0164】
具体的には、CS15分が、例えば、10〜100N/cm、好ましくは、20〜100N/cmあり、CS30分が、例えば、90N/cm、好ましくは、20〜90N/cmである。
【0165】
発泡体の30%圧縮応力CSが上記範囲に満たない場合には、補強性が十分に得られない場合がある。
【0166】
なお、発泡体の30%圧縮応力CSは、次の実施例において、詳述する。
【実施例】
【0167】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0168】
実施例1〜19および比較例1〜5
表1〜表5の配合処方に従って、ゴムおよび粘着付与剤(実施例11〜19および比較例4、5を除く)を、ミキシングロールにて、100℃で、回転数20min−1、5分間混練して、第1の混練物を調製した。
【0169】
次いで、表1〜表5の配合処方に従って、第1の混練物、充填剤、架橋剤(比較例1〜5を除く)、および、架橋促進剤(比較例1〜5を除く)を、ミキシングロールにて、20℃で、回転数20min−1、5分間混練して、第2の混練物を調製した。
【0170】
その後、第2の混練物40質量部と、発泡性樹脂粒子20質量部とを、ミキシングロールにて、50℃で、回転数20min−1、5分間混練することにより、第3の混練物(熱発泡性樹脂組成物)を調製した。
【0171】
続いて、第3の混練物を、プレス成形機によって、50℃、圧力50MPaで、5分間プレスすることにより、厚み5mmの熱発泡性樹脂シートを形成した。
【0172】
(評価)
1. トルク(第2の混練物のT15分およびT30分
実施例1〜19で調製した第2の混練物について、回転振動粘弾性計(レオメーター、型番:MDR 2000P、Alpha Technologies社製)にて、下記の測定条件で、トルクを測定した。その結果を表1〜表5に示す。
【0173】
ダイ振幅速度:1.66Hz
加熱温度:90℃
測定時間:90℃に到達後から15分後および30分後
振幅角度:0.5±0.01度
2. 密度(D15分およびD30分)および発泡倍率(ER15分およびER30分
厚み5mmの熱発泡性樹脂シートを、直径20mmの円形状に打ち抜いてサンプルを作製し、その後、作製したサンプルを、100℃のオーブンに投入して、15分間加熱することにより、サンプルを発泡させて、発泡体を得た。
【0174】
発泡前(発泡前のサンプル)の密度、および、発泡後の発泡体の密度(D15分)を、JIS Z8807に準拠してそれぞれ測定し、それらから発泡倍率(ER15分)を算出した。
【0175】
また、加熱時間を30分間に変更して発泡体を得、かかる発泡体の密度(D30分)および発泡倍率(ER30分)をそれぞれ測定した。
【0176】
それらの結果を表1〜表5に示す。
3. 圧縮応力(反発力)
上記した15分間加熱することにより得られた発泡体を、厚み25mmのシート状に切り取って、切り取った発泡体の厚み方向の圧縮応力を圧縮試験機によって、測定した。
【0177】
すなわち、発泡体の厚みが7.5mm(つまり、圧縮前の厚みの30%の厚み)となるように、圧縮速度10mm/分で、発泡体を圧縮した時に、発泡体にかかる応力(圧力)を、発泡体の単位面積当たりの応力に換算し、これを30%圧縮応力(CS15分)(単位:N/cm)として得た。
【0178】
また、30分間加熱することにより得られた発泡体についても、上記と同様にして測定して、30%圧縮応力(CS30分)を得た。
【0179】
【表1】

【0180】
【表2】

【0181】
【表3】

【0182】
【表4】

【0183】
【表5】

なお、表1〜表5中、熱発泡性樹脂組成物の配合処方の欄の数値は、各成分の配合質量部数を示す。
【0184】
また、表1〜表5中、各成分の略称などを以下に詳説する。
SBR:スチレン・ブタジエンゴム:商品名「タフデン2003」、スチレン含量:25質量%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):33、旭化成社製
NR:商品名「INT3RSS Small Bale」、天然ゴム(素練りゴム)、Teck Bee Hang Co.,Ltd社製
EPDM:エチレン・プロピレン・ジエンゴム、商品名「エスプレンEPDM 505A」、エチレン含量50質量%、ジエン含量:9.5質量%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):47、住友化学社製
BR:ブタジエンゴム、商品名「JSR BR01」、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):45、JSR社製
NBR:アクリロニトリル・ブタジエンゴム、商品名「Nipol DN219」、ニトリル含量:33.5質量%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):27、日本ゼオン社製
石油系樹脂:商品名「ペトロタック 90HM」、C5脂肪族/C9芳香族共重合系石油樹脂、軟化点88℃、東ソー社製
酸化亜鉛:平均粒子径0.24〜0.30μm、充填剤
硫黄:アルファグランS-50EN EPDMをバインダーとする硫黄のマスターバッチ、硫黄含量:50質量%
2−メルカプトベンゾチアゾール:商品名「ノクセラーM」、架橋促進剤(加硫促進剤)、大内新興化学社製
ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛:商品名「ノクセラーZTC」、架橋促進剤(加硫促進剤)、大内新興化学社製
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛:商品名「ノクセラーPZ」、架橋促進剤(加硫促進剤)、大内新興化学社製
N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩:商品名「ノクセラーPPD」、架橋促進剤(加硫促進剤)、大内新興化学社製
アミン化合物:商品名「ノックマスターEGS」、大内新興化学社製
熱発泡性樹脂粒子:商品名「カネパールK−BS」、発泡性ポリスチレンビーズ(熱発泡性樹脂粒子)、熱膨張性物質:ブタン、沸点−0.5℃、平均粒子径0.6mm、カネカ社製
【符号の説明】
【0185】
1 シート(熱発泡性樹脂組成物、熱発泡性樹脂シート)
2 試験鋼板(中空部材)
3 発泡体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂と発泡性樹脂粒子と架橋剤とを含有し、
前記発泡性樹脂粒子は、中実の樹脂に熱膨張性物質が含有されていることを特徴とする、熱発泡性樹脂組成物。
【請求項2】
120℃以下の加熱で発泡および架橋することを特徴とする、請求項1に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ベース樹脂が、ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有しており、前記架橋剤によって架橋されることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、架橋促進剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱発泡性樹脂組成物を、100℃で、30分間、加熱することにより発泡した発泡体の密度が、0.1〜1.0g/cmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱膨張性物質の沸点が、−160〜120℃であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項7】
前記発泡性樹脂粒子は、前記樹脂のモノマーを、前記熱膨張性物質の存在下で重合させることにより得られることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂が、ポリスチレンおよび/またはポリスチレンコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項9】
前記発泡性樹脂粒子の含有割合が、前記ベース樹脂100質量部に対して、0.1〜350質量部であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物がシート状に形成されていることを特徴とする、熱発泡性樹脂シート。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物を加熱により発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項12】
請求項10に記載の熱発泡性樹脂シートを加熱により発泡させることにより得られることを特徴とする、発泡体。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱発泡性樹脂組成物を、加熱により発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載の熱発泡性樹脂シートを、加熱により発泡させることを特徴とする、発泡体の製造方法。
【請求項15】
120℃以下の温度で加熱することを特徴とする、請求項13または14に記載の発泡体の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2012−233132(P2012−233132A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104331(P2011−104331)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】